エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器
【課題】容易に高く形成することができる遮光壁を有し、当該遮光壁の遮光効果によって混色を防止することが可能なエレクトロルミネッセンス装置及び電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の有機EL装置1は、画素40に対応して配置された発光素子70を有する素子基板と、画素40に対応して配置された赤、緑、青の色要素34R,34G,34Bを有する封止基板とが接着剤28を介して貼り合わされてなる。画素間領域41には、色要素34と遮光部材32とからなる遮光壁33が形成されている。遮光壁33は、色要素34の表面に対して一定の高さTを有している。このため、遮光壁33は、ある画素40の発光素子70から射出された光のうち、これと隣接する画素40の色要素34に入射する光を遮光することができる。これにより、異なる色に対応する画素40の間の混色を防止することができる。
【解決手段】本発明の有機EL装置1は、画素40に対応して配置された発光素子70を有する素子基板と、画素40に対応して配置された赤、緑、青の色要素34R,34G,34Bを有する封止基板とが接着剤28を介して貼り合わされてなる。画素間領域41には、色要素34と遮光部材32とからなる遮光壁33が形成されている。遮光壁33は、色要素34の表面に対して一定の高さTを有している。このため、遮光壁33は、ある画素40の発光素子70から射出された光のうち、これと隣接する画素40の色要素34に入射する光を遮光することができる。これにより、異なる色に対応する画素40の間の混色を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素に対応して発光素子が形成された素子基板と、当該素子基板に対向して貼り合わされた封止基板とを有し、前記発光素子で発光した光を封止基板側から取り出す構成のエレクトロルミネッセンス装置に関する。また、当該エレクトロルミネッセンス装置を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成のエレクトロルミネッセンス(以下「EL」とも略す)装置は、トップエミッション型と呼ばれるEL装置に含まれ、封止基板の対向面には色要素が形成されている場合が多い。ここで色要素とは、入射した光のうち特定の波長成分を吸収することによって透過光を所定の色(例えば赤、緑、青等)とすることが可能な物質であり、カラーフィルタとも呼ばれる。色要素は、画素ごとに、当該画素の色に対応した色のものが配置される。封止基板に色要素が配置されていることによって、EL装置から取り出される光の色純度を向上させることができるとともに、視野角による色の変化を抑えることができ、また、外光の反射をある程度遮断することができる。
【0003】
一般に、色要素と色要素の間の領域、すなわち画素間に対応する領域には、隣接する画素の間での混色防止のため遮光層が形成されているが、発光素子から大きな角度をもって斜めに射出された光は遮光層を超えて隣接画素に入り、混色を起こすことがあった。また、基板間に異物が混入した場合に当該異物が発光素子に悪影響を与えないよう、基板間隔を大きくすると、上記混色はさらに起こりやすくなる。このような混色が起こると、広角からEL装置を観察したときに色相が変化するため、視角特性が悪化する。この現象を防止するための技術として、遮光層を色要素より厚く形成し、当該遮光壁によって混色を起こす斜めの光を遮光する技術が知られている(特許文献1参照)。本稿では、このような厚みをもった遮光層を「遮光壁」と呼ぶ。
【0004】
【特許文献1】特開2005−294057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮光壁のみを色要素に対して大幅に厚く(高く)形成することは技術的に困難であるという問題点があった。特に、上記した理由で基板間隔を大きくとる場合は、十分な遮光効果を得るためには遮光壁をその分だけ高く形成しなければならず、この問題点が顕著となる。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、容易に高く形成することができる遮光壁を有し、当該遮光壁の遮光効果によって混色を防止することが可能なエレクトロルミネッセンス装置、及び当該エレクトロルミネッセンス装置を搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された、少なくとも3種の異なる色のいずれかに対応する複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス装置であって、第1の基板と、前記第1の基板上に前記画素に対応して形成された、発光層を含む複数の発光素子と、前記第1の基板の前記発光素子が形成された面に対向して、接着剤を介して前記第1の基板と貼り合わされた透光性を有する第2の基板と、前記第2の基板の対向面に前記画素に対応して形成された、前記画素に対応する色の色要素と、前記第2の基板の対向面のうち、互いに隣接する前記画素の間の領域に形成された、前記色要素と、遮光性を有する遮光部材とがこの順に積層されてなる遮光壁とを有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第2の基板の対向面には、画素に応じて色要素が形成されているとともに、画素間領域には前記色要素より厚い(すなわち高さの高い)遮光壁が形成されている。この遮光壁は、色要素の上に遮光部材を重ねることによって形成されているため、容易に高く形成することができる。上記構成のエレクトロルミネッセンス装置において、第1の基板上に形成された発光素子から発せられた光は、その大部分が、対向する第2の基板上の色要素のうち、当該発光素子と同一の画素に形成された色要素に入射する。他方で、前記発光素子から隣接する画素の色要素に向かって斜めに射出された光は、前記遮光壁によって遮光される。このため、異なる色に対応する隣接画素間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。このように、上記構成によれば、容易に高く形成することができる遮光壁を有し、当該遮光壁の遮光効果によって混色を防止することが可能なエレクトロルミネッセンス装置が得られる。当該エレクトロルミネッセンス装置は、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。
【0009】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記遮光壁に含まれる前記色要素は、少なくとも2種の色の色要素が積層されてなることが好ましい。このような構成によれば、遮光壁は、2種又は3種以上の異なる色の色要素を重ね、その上にさらに遮光部材を積層することによって形成される。このような遮光壁は、容易に高く形成することができるため、例えば第1の基板と第2の基板の間隔を大きくとったとしても、混色の原因となる斜め方向に射出された光を効果的に遮光し、混色を防止することができる。
【0010】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記遮光壁は、前記色要素と前記遮光部材との間に配置された樹脂材料をさらに有することが好ましい。このような構成によれば、遮光壁は、1種、2種又は3種以上の異なる色の色要素を重ね、その上にさらに樹脂材料と遮光部材とをこの順に積層することによって形成される。このような遮光壁は、容易に高く形成することができるため、混色の原因となる斜め方向に射出された光をより効果的に遮光し、混色を防止することができる。
【0011】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記遮光壁は、対応する色が異なり、かつ互いに隣接する前記画素の間の領域に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、対応する色が互いに異なる隣接画素の間の領域に遮光壁が形成される。これらの互いに隣接する画素の一方から射出され、他方の画素の色要素に入射した光は必ず混色を引き起こすが、前記遮光壁はこのような光を遮光することができるので、混色を防止することができる。ここで、上記構成において、対応する色が同一である隣接画素の間の領域には、遮光壁は必ずしも設けなくてもよい。当該領域に遮光壁を設けない場合は、遮光壁の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0012】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記少なくとも3種の異なる色は、赤系の色、緑系の色、青系の色の3色であることが好ましい。このような構成のエレクトロルミネッセンス装置によれば、赤系の色、緑系の色、青系の色の発光の組み合わせによるカラー発光、又はカラー表示を行うことができる。また、容易に高く形成することができる遮光壁によって上記3色の相互間の混色が防止されるので、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。
【0013】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記発光素子は、当該発光素子が形成された前記画素に対応する色と同系の色の光を発し、前記遮光壁は、前記緑系の色に対応する前記画素と、当該画素に隣接する前記赤系の色又は前記青系の色の前記画素との間の領域に形成されていることが好ましい。このような構成のエレクトロルミネッセンス装置において、赤系の色、緑系の色、青系の色に対応する画素に形成された発光素子は、それぞれ赤系の色、緑系の色、青系の色の光を発する。また、緑系の色と赤系の色に対応する隣接画素、及び緑系の色と青系の色に対応する隣接画素の間の領域に遮光壁が形成されている。これらの互いに隣接する画素の一方から射出され、他方の画素の色要素に入射した光は必ず混色を引き起こすが、前記遮光壁はこのような光を遮光することができるので、混色を防止することができる。ここで、上記構成において、赤系の色と青系の色に対応する隣接画素の間の領域には、遮光壁は必ずしも設けなくてもよい。これは、赤系の色の画素において発せられた赤い光は、仮に隣接する青系の色の画素の色要素に入射したとしても当該色要素によって大部分が吸収され、同様に青系の色の画素において発せられた青い光は、仮に隣接する赤系の色の画素の色要素に入射したとしても当該色要素によって大部分が吸収されるためである。赤系の色の画素と青系の色の画素との間の領域に遮光壁を設けない場合は、遮光壁の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0014】
本発明の電子機器は、上記エレクトロルミネッセンス装置を搭載したことを特徴とする。このような電子機器は、上記エレクトロルミネッセンス装置によって、視角特性の良い高品位な表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、「エレクトロルミネッセンス装置」としての有機EL装置1を示す概略断面図である。この図に示すように、有機EL装置1は、基板10上に、反射膜12、絶縁層14、陽極としての画素電極16、正孔輸送層18、有機発光層20、電子輸送層22、陰極24、薄膜封止層26がこの順に積層されてなる素子基板と、ガラス基板30上に、赤、緑、青にそれぞれ対応する色要素34R,34G,34B(以下では色要素34R,34G,34Bをまとめて「色要素34」とも呼ぶ)、及び色要素34上に形成された遮光部材32が積層されてなる封止基板とを接着剤28を介して貼り合わせたものである。ここで、基板10が本発明における「第1の基板」に、ガラス基板30が「第2の基板」に、有機発光層20が「発光層」に、それぞれ対応する。有機EL装置1は、有機発光層20において発光した光を封止基板側から取り出す構成のいわゆるトップエミッション型の発光装置であり、観察者は、ガラス基板30の側から表示を観察する。上記のうち、反射膜12から陰極24までの構成要素からなる素子が発光素子70である。発光素子70は、各画素40ごとに形成されている。
【0017】
図2は、画素40の形状及び配置について説明するための、有機EL装置1の拡大平面図である。以下では、図2中のX軸に平行な方向を行方向、Y軸に平行な方向を列方向とも呼ぶ。この図に示すように、上記遮光部材32は、X軸及びY軸に平行な直線状の要素から構成された格子状に形成されている。そして、当該遮光部材32の格子が形作る矩形の領域のそれぞれが画素40に対応する。すなわち、画素40は、複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配置されている。なお、画素40と画素40の間の領域を以下では画素間領域41とも呼ぶ。上述の遮光部材32は、画素間領域41に形成されていることになる。
【0018】
各々の画素40は、列方向に長い長方形をしており、行方向に沿って画素40B,40G,40Rがこの順に連環するように配置されている。ここで、画素40B,40G,40Rは、それぞれ青系の色の発光、緑系の色の発光、赤系の色の発光を行う画素40である。各々の画素40には、対応する色の色要素34、すなわち色要素34B,34G,34Rが形成されている。画素40は、同色の画素40同士が列をなすように配置されている。なお、上述の図1は、有機EL装置1を、画素40を含む位置で図2中の行方向に沿って切断したときの断面図である。
【0019】
図1に示すように、画素間領域41に配置され、画素40を区画する遮光部材32は、色要素34の上に形成されている。ここで、画素間領域41における、色要素34及び遮光部材32を含む積層構造体を以下では遮光壁33とも呼ぶ。
【0020】
以下、図1中の各構成要素について詳述する。基板10は、ガラス基板や石英基板等の上に公知の技術を用いてTFT(Thin Film Transistor)素子や各種配線(TFT素子を駆動するためのデータ線、走査線等)、絶縁膜等が形成された、いわゆるTFT素子基板である。反射膜12は、アルミニウム又は銀からなる。画素電極16は、反射膜12上に、反射膜12との短絡を防止するためのSiNからなる絶縁層14を挟んで配置された、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極である。画素電極16は、各画素40に一つずつ配置されており、それぞれの画素電極16は、基板10に含まれるTFT素子を介して、データ線(不図示)に接続されている。陰極24は、マグネシウムと銀の合金をハーフミラー状態に形成したものであり、光反射性及び光透過性を兼ね備えている。
【0021】
画素電極16と陰極24との間には、正孔輸送層18、有機発光層20、電子輸送層22がこの順に積層されている。有機発光層20は、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質の層である。画素電極16と陰極24との間に電圧を印加することによって、有機発光層20には、正孔輸送層18から正孔が、また、電子輸送層22から電子が注入され、有機発光層20においてこれらが再結合したときに発光が行われる。有機発光層20からの光は、一部は直接陰極24を透過し、一部は反射膜12によって反射されてから陰極24を透過する。いずれにせよ、有機発光層20からの光は、陰極24を透過し、その後薄膜封止層26、接着剤28、色要素34、ガラス基板30を順に透過する。
【0022】
ここで、反射膜12及び陰極24は、いわゆる光共振器を構成している。このため、有機発光層20において発せられた光は、反射膜12と陰極24との間を往復し、共振波長の光だけが増幅されて封止基板側から取り出される。よって、ピーク強度が高く幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、有機EL装置1による発光の色再現性を向上させることができる。
【0023】
上記共振波長は、光共振器の長さを変えることによって調整可能である。有機EL装置1においては、画素電極16の厚さを変えることによって光共振器の長さを調整している。より詳細には、画素40B,40G,40Rにおいてこの順に画素電極16を厚くしていく構成により、光共振器の長さ、及び共振波長がこの順に長くなるようになっている。具体的には、画素40B,40G,40Rにおける画素電極16の厚さはそれぞれ20nm,50nm,90nmとなっている。これにより、共振波長は、画素40Bにおいては青色、画素40Gにおいては緑色、画素40Rにおいては赤色に相当する波長に設定される。この結果、陰極24からは、共振波長に応じて青、緑、または赤の光が選択的に射出される。
【0024】
陰極24を覆って形成された薄膜封止層26は、SiONからなる透光性を有する部材であり、有機EL素子70を保護するとともに、光共振器の形成のためにできた陰極24の段差を埋めて平滑にする役割を果たす。
【0025】
ガラス基板30上に形成された色要素34は、入射した光のうちの特定の波長成分を吸収することによって透過光を着色する部材である。色要素34は、例えば、色要素材料としての顔料を含む感光性樹脂を塗布して露光現像することにより形成される。色要素34を配置することによって、有機EL装置1から取り出される光の色純度が向上するとともに、視野角による色の変化を抑えることができ、かつ外光の反射をある程度遮断することができる。色要素34は、エポキシ樹脂からなる接着剤28を介して薄膜封止層26と対向している。
【0026】
色要素34に重ねて配置された遮光部材32は、光をほとんど透過させない黒色の樹脂であり、上述したように遮光壁33の一部を構成する。遮光部材32は、その材料となる樹脂を色要素34上に塗布した後に露光現像し、図2に示すような格子状にパターニングすることによって形成される。遮光壁33は、このように色要素34の上に遮光部材32を重ねることによって形成されているため、容易に高く形成することができる。以下では、遮光部材32の幅(すなわち遮光壁33の幅)をWとし、遮光部材32の、色要素34の表面からの高さをTとする。また、色要素34から陰極24までの距離をLとする。
【0027】
ここで、発光素子70から射出される光の振る舞いと、遮光壁33の作用及び効果について説明する。
【0028】
発光素子70から射出された光は、様々な角度をもって封止基板に入射する。以下では、図1に示すように、発光素子70からの光の射出角をθとする。この光の光路である接着剤28、色要素34、ガラス基板30の屈折率は概ね1.51であるので、射出角θが42°より大きな光はガラス基板30と空気層との界面で全反射され、観察者からは視認されない。よって、こうした光は仮に隣接画素40の異なる色の色要素に入射して混色を起こしたとしても、表示には影響を与えない。逆に、射出角が42°以下の光はガラス基板30から空気層に取り出されるので、観察者に視認され得る。こうした光が隣接画素40の異なる色の色要素に入射すると、混色を起こした状態で空気層に射出されるので、表示品位の低下を招く。
【0029】
遮光壁33は、ある画素40の発光素子70からθ≦42°を満たして射出した光のうち、隣接する画素40の色要素34に入射しようとする光を遮光する。そのために、遮光部材32は、その高さTが下記式(1)を満たすように形成されている。
tan42°≦W/(L−T) …(1)
なお、従来の一般的な構成、すなわち画素間領域41に色要素34と等しい高さの遮光部材32を配置する構成の有機EL装置においては、混色を防止するためには下記式(2)が要求されていた。
tan42°≦W/L …(2)
これと上記式(1)を比較すれば、本実施形態の有機EL装置1は、混色を起こさずに、長さL(ひいては、素子基板と封止基板との間隔)を遮光部材32の高さTの分だけ大きくとることが可能であることが分かる。具体的には、W=20μmとした場合、従来の構成では長さLが22μmを越えると混色が起こる一方で、本実施形態においては、例えばT=3μmとすれば、長さLを25μmにまで大きくすることができる。このように長さLを大きくとることができれば、基板間隔を大きくすることができ、基板間に大きな異物が混入した場合でも当該異物が発光素子70に影響を与えないようにすることができる。
【0030】
以上のように、遮光壁33は、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。このように、有機EL装置1は、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。
【0031】
(第2の実施形態)
続いて、図3の断面図を用いて第2の実施形態に係る有機EL装置1Aについて説明する。有機EL装置1Aは、遮光壁33の構成を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0032】
図3に示すように、有機EL装置1Aにおける遮光壁33は、2種の異なる色の色要素34と、その上に積層された遮光部材32とからなる。この遮光壁33は、以下のような製造方法によって製造される。すなわち、まずガラス基板30上の画素40Rに対応する領域及び画素40Rに隣接する画素間領域41に、色要素34Rを形成する。次に、画素40Gに対応する領域及び画素40Gに隣接する画素間領域41に、色要素34Gを形成する。このとき、画素40Rと画素40Gとの間の画素間領域41においては、色要素34Rと色要素34Gとが積層される。続いて、画素40Bに対応する領域及び画素40Bに隣接する画素間領域41に、色要素34Bを形成する。このとき、画素40Rと画素40Bとの間の画素間領域41においては、色要素34Rと色要素34Bとが積層され、画素40Gと画素40Bとの間の画素間領域41においては、色要素34Gと色要素34Bとが積層される。最後に、画素間領域41に遮光部材32を積層して遮光壁33が完成する。
【0033】
遮光壁33は、このように色要素34を2層に重ねた上に遮光部材32をさらに積層することによって形成されているため、色要素34が1層である場合に比べて高く形成することができる。また、遮光壁33の各構成要素の厚さ(高さ)は第1の実施形態と同様であるので、容易に高く形成することができる。
【0034】
有機EL装置1Aにおいても、こうした遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔を大きくとることができる。
【0035】
(第3の実施形態)
続いて、図4の断面図を用いて第3の実施形態に係る有機EL装置1Bについて説明する。有機EL装置1Bは、遮光壁33の構成を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0036】
図4に示すように、有機EL装置1Bにおける遮光壁33は、3種の異なる色の色要素34と、その上に積層された遮光部材32とからなる。この遮光壁33は、以下のような製造方法によって製造される。すなわち、まずガラス基板30上の画素40Rに対応する領域及びすべての画素間領域41に、色要素34Rを形成する。次に、画素40Gに対応する領域及びすべての画素間領域41に、色要素34Gを形成する。このとき、各画素間領域41においては、色要素34Rと色要素34Gとが積層される。続いて、画素40Bに対応する領域及びすべての画素間領域41に、色要素34Bを形成する。このとき、各画素間領域41においては、色要素34R、色要素34Gに重ねて色要素34Bが積層される。最後に、すべての画素間領域41に遮光部材32を積層して遮光壁33が完成する。
【0037】
遮光壁33は、このように色要素34を3層に重ねた上に遮光部材32をさらに積層することによって形成されているため、色要素34が1層又は2層である場合に比べて高く形成することができる。また、遮光壁33の各構成要素の厚さ(高さ)は第1の実施形態と同様であるので、容易に高く形成することができる。
【0038】
有機EL装置1Bにおいても、こうした遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔をさらに大きくとることができる。
【0039】
(第4の実施形態)
続いて、図5の断面図を用いて第4の実施形態に係る有機EL装置1Cについて説明する。有機EL装置1Cは、遮光壁33の構成を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0040】
図5に示すように、有機EL装置1Cにおける遮光壁33は、色要素34に重ねて樹脂材料31及び遮光部材32がこの順に積層された構成となっている。ここで、樹脂材料31は、遮光壁33をより高く形成するための部材であるので、その特性は特に問わない。遮光壁33の遮光性は遮光部材32によって担保されるので、樹脂材料31は透光性を有していてもよい。このため、一般にオーバーコートとして用いられる透明樹脂を用いることができる。もちろん、樹脂材料31は、遮光部材32と同様に遮光性を備えていてもよいし、あるいは色要素34と同様に透過光を着色させるものであってもよい。
【0041】
この遮光壁33は、以下のような製造方法によって製造される。すなわち、まずガラス基板30上に、第1の実施形態と同様に3色の色要素34を形成する。次に、画素間領域41に、色要素34に重ねて樹脂材料31を形成する。この工程は、例えばスピンコート法及びフォトリソグラフィー法によって行うことができる。最後に、樹脂材料31の上に遮光部材32を積層して遮光壁33が完成する。
【0042】
遮光壁33は、このように色要素34上に樹脂材料31及び遮光部材32をさらに積層することによって形成されているため、1層の色要素34及び遮光部材32から構成される場合に比べて高く形成することができる。また、遮光壁33の各構成要素の厚さ(高さ)は第1の実施形態と同様であるので、容易に高く形成することができる。
【0043】
有機EL装置1Cにおいても、こうした遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔をさらに大きくとることができる。
【0044】
なお、上記は、1層の色要素34の上に樹脂材料31及び遮光部材32を積層する構成であるが、これに代えて、第2の実施形態のように2層の色要素34を形成し、その上に樹脂材料31及び遮光部材32を積層する構成、あるいは第3の実施形態のように3層の色要素34を形成し、その上に樹脂材料31及び遮光部材32を積層する構成とすることもできる。こうした構成によれば、遮光壁33をさらに高く形成することができる。
【0045】
(第5の実施形態)
続いて、図6の断面図を用いて第5の実施形態に係る有機EL装置1Dについて説明する。有機EL装置1Dは、樹脂材料31の形成領域を除けば上記第4の実施形態の有機EL装置1Cと同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0046】
図6に示すように、有機EL装置1Dの遮光壁33は、色要素34に重ねて樹脂材料31及び遮光部材32が積層された構成となっている。ここで、樹脂材料31は、遮光壁33の一部としてだけでなく、色要素34の全体を覆って形成されており、色要素34を保護するとともに、平坦性を向上させる役割も果たしている。本実施形態の樹脂材料31には、透光性を有する部材が用いられる。
【0047】
有機EL装置1Dにおいても、遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔をさらに大きくとることができる。
【0048】
(第6の実施形態)
続いて、図7の平面図を用いて第6の実施形態に係る有機EL装置1Eについて説明する。有機EL装置1Eは、遮光部材32の形成領域を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0049】
図7に示すように、有機EL装置1Eにおいては、遮光部材32、及び遮光部材32を構成要素とする遮光壁33は、外周部分を除くと列方向にのみ形成され、行方向には形成されていない。換言すれば、互いに対応する色の異なる画素40の間の領域にのみ遮光部材32(遮光壁33)が形成されている。なお、有機EL装置1Eを、画素40を含む位置で図7中の行方向に沿って切断したときの断面図は、第1の実施形態の有機EL装置1と同様であり、図1に相当する。
【0050】
こうした構成においても、遮光壁33は混色を防止する効果を発揮し、有機EL装置1Eは、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。これは、混色が起こるのは互いに対応する色の異なる隣接する画素40の間に限られるところ、こうした隣接する画素40の間には混色を防止する遮光壁33が形成されているからである。このように、遮光壁33を部分的に形成する構成とすれば、遮光壁33の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁33の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0051】
なお、上記は第1の実施形態の有機EL装置1において遮光部材32の形成領域を変更したものであるが、同様の変更は、第2の実施形態から第5の実施形態のいずれかに係る有機EL装置1A,1B,1C,1Dについて行うこともできる。
【0052】
(第7の実施形態)
続いて、図8及び図9を用いて第7の実施形態に係る有機EL装置1Fについて説明する。図8は、有機EL装置1Fの拡大平面図、図9は、有機EL装置1Fを、画素40を含む位置で図8中の行方向に沿って切断したときの断面図である。有機EL装置1Fは、遮光部材32の形成領域を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0053】
図8及び図9に示すように、有機EL装置1Fにおいては、遮光部材32、及び遮光部材32を構成要素とする遮光壁33は、外周部分を除くと列方向にのみ形成され、かつ、画素40Gに隣接する画素間領域41に限って形成されている。すなわち、画素40Rと画素40Bの画素間領域41や、行方向に平行な画素間領域41には形成されていない。
【0054】
画素40Rと画素40Bの画素間領域41に遮光壁33が不要な理由は以下の通りである。すなわち、画素40Rから発せられた赤色の光は、仮に隣接する画素40Bの色要素34Bに入射したとしても、当該色要素34Bが赤色の光をほとんど透過しないことにより、ここで大部分が吸収される。同様に、画素40Bから発せられた青色の光は、仮に隣接する画素40Rの色要素34Rに入射したとしても、当該色要素34Rが青色の光をほとんど透過しないことにより、ここで大部分が吸収される。このように、画素40Rと画素40Bとの間では、一方の画素40R(40B)から他方の画素40B(40R)に入射した光は色要素34R又は色要素34Bによって吸収されるため、この画素間領域41に遮光壁33がない場合でも混色はほとんど起こらない。
【0055】
したがって、上記の構成においても、遮光壁33は混色を防止する効果を発揮し、有機EL装置1Fは、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。このように、遮光壁33を部分的に形成する構成とすれば、遮光壁33の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁33の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0056】
なお、上記は第1の実施形態の有機EL装置1において遮光部材32の形成領域を変更したものであるが、同様の変更は、第2の実施形態から第5の実施形態のいずれかに係る有機EL装置1A,1B,1C,1Dについて行うこともできる。
【0057】
また、本実施形態は、発光素子70から赤、緑、青のいずれかの色の光が射出される構成の有機EL装置に好適に用いることができる。このため、光共振器を利用した発光素子70に代えて、例えば、赤、緑、青のそれぞれの光を発することができる有機発光層20を含む発光素子70を備えた有機EL装置にも適用することができる。
【0058】
(第8の実施形態)
続いて、図10の断面図を用いて第8の実施形態に係る有機EL装置1Gについて説明する。有機EL装置1Gは、封止基板については上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では素子基板の構成の相違点を中心に説明する。
【0059】
図10に示すように、有機EL装置1Gの素子基板は、基板10上に、反射膜12、絶縁層14、陽極としての画素電極16、正孔輸送層18、有機発光層20、電子輸送層22、陰極24、薄膜封止層26がこの順に積層されてなる。ここで、第1の実施形態の有機EL装置1との構成の違いは、画素電極16の厚さがすべての画素40において均一である点、及び陰極24が透明なITOからなる点である。このため、発光素子70は、光共振器が内包されたものではなく、単に有機発光層20で発光した光を陰極24側から取り出す構成となっている。すなわち、各発光素子70は、同じ色相の光を発する。
【0060】
こうした構成の有機EL装置1Gにおいても、ある画素40で発光した光が斜めに進行して隣接する画素40の色要素34に入射すると、本来意図した画素40とは異なる画素40において、意図しない色の発光が行われることとなり、表示品位の低下を招く。遮光壁33は、上記斜めに進行する光を遮光し、こうした現象を防止することができる。
【0061】
なお、上記は第1の実施形態の有機EL装置1において素子基板の構成を変更したものであるが、同様の変更は、第2の実施形態から第6の実施形態のいずれかに係る有機EL装置1A,1B,1C,1D,1Eについて行うこともできる。
【0062】
(電子機器への搭載例)
上述した有機EL装置1(有機EL装置1Aから1Gを含む)は、例えば、図11に示すような「電子機器」としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部510及び操作ボタン520を有している。表示部510は、内部に組み込まれた有機EL装置1によって、操作ボタン520で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について、視角特性の良い、高品位な表示を行うことができる。
【0063】
なお、本発明を適用した有機EL装置1は、上記携帯電話機500の他、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器などの各種電子機器に用いることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0065】
(変形例1)
上記第1から第7までの各実施形態において、発光素子70は、光共振器を用いて赤、緑、青の各色の光を発するものであるが、これに代えて、赤、緑、青の各色を発する有機発光層20を用いた構成としてもよい。こうした構成の発光素子70と組み合わせた場合でも、遮光壁33は混色を防止する効果を発揮する。
【0066】
(変形例2)
上記各実施形態において、画素40及び色要素34は、赤、緑、青の3色に対応する構成であるが、これに代えて、4色以上の色に対応する構成としてもよい。例えば、赤、青、の2色に、青から黄までの色相の中で選択された2種の色を加えた4色に対応する構成とすることができる。後者の2色は、例えば緑及びシアンとすることができる。
【0067】
(変形例3)
上記各実施形態において、発光素子70に含まれる正孔輸送層18、電子輸送層22は、必要に応じて配置すればよく、必ずしも形成しなくてもよい。また、薄膜封止層26も、接着剤28が同様の機能を兼ねる場合は省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の拡大平面図。
【図3】第2の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図4】第3の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図5】第4の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図6】第5の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図7】第6の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図8】第7の実施形態に係る有機EL装置の拡大平面図。
【図9】第7の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図10】第8の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図11】本発明の電子機器の実施形態に係る携帯電話機の模式斜視図。
【符号の説明】
【0069】
1,1A〜1G…有機EL装置、10…「第1の基板」としての基板、12…反射膜、14…絶縁層、16…画素電極、18…正孔輸送層、20…有機発光層、22…電子輸送層、24…陰極、26…薄膜封止層、28…接着剤、30…「第2の基板」としてのガラス基板、31…樹脂材料、32…遮光部材、33…遮光壁、34,34R,34G,34B…色要素、40,40R,40G,40B…画素、70…発光素子、500…携帯電話機。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素に対応して発光素子が形成された素子基板と、当該素子基板に対向して貼り合わされた封止基板とを有し、前記発光素子で発光した光を封止基板側から取り出す構成のエレクトロルミネッセンス装置に関する。また、当該エレクトロルミネッセンス装置を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成のエレクトロルミネッセンス(以下「EL」とも略す)装置は、トップエミッション型と呼ばれるEL装置に含まれ、封止基板の対向面には色要素が形成されている場合が多い。ここで色要素とは、入射した光のうち特定の波長成分を吸収することによって透過光を所定の色(例えば赤、緑、青等)とすることが可能な物質であり、カラーフィルタとも呼ばれる。色要素は、画素ごとに、当該画素の色に対応した色のものが配置される。封止基板に色要素が配置されていることによって、EL装置から取り出される光の色純度を向上させることができるとともに、視野角による色の変化を抑えることができ、また、外光の反射をある程度遮断することができる。
【0003】
一般に、色要素と色要素の間の領域、すなわち画素間に対応する領域には、隣接する画素の間での混色防止のため遮光層が形成されているが、発光素子から大きな角度をもって斜めに射出された光は遮光層を超えて隣接画素に入り、混色を起こすことがあった。また、基板間に異物が混入した場合に当該異物が発光素子に悪影響を与えないよう、基板間隔を大きくすると、上記混色はさらに起こりやすくなる。このような混色が起こると、広角からEL装置を観察したときに色相が変化するため、視角特性が悪化する。この現象を防止するための技術として、遮光層を色要素より厚く形成し、当該遮光壁によって混色を起こす斜めの光を遮光する技術が知られている(特許文献1参照)。本稿では、このような厚みをもった遮光層を「遮光壁」と呼ぶ。
【0004】
【特許文献1】特開2005−294057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮光壁のみを色要素に対して大幅に厚く(高く)形成することは技術的に困難であるという問題点があった。特に、上記した理由で基板間隔を大きくとる場合は、十分な遮光効果を得るためには遮光壁をその分だけ高く形成しなければならず、この問題点が顕著となる。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、容易に高く形成することができる遮光壁を有し、当該遮光壁の遮光効果によって混色を防止することが可能なエレクトロルミネッセンス装置、及び当該エレクトロルミネッセンス装置を搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された、少なくとも3種の異なる色のいずれかに対応する複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス装置であって、第1の基板と、前記第1の基板上に前記画素に対応して形成された、発光層を含む複数の発光素子と、前記第1の基板の前記発光素子が形成された面に対向して、接着剤を介して前記第1の基板と貼り合わされた透光性を有する第2の基板と、前記第2の基板の対向面に前記画素に対応して形成された、前記画素に対応する色の色要素と、前記第2の基板の対向面のうち、互いに隣接する前記画素の間の領域に形成された、前記色要素と、遮光性を有する遮光部材とがこの順に積層されてなる遮光壁とを有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第2の基板の対向面には、画素に応じて色要素が形成されているとともに、画素間領域には前記色要素より厚い(すなわち高さの高い)遮光壁が形成されている。この遮光壁は、色要素の上に遮光部材を重ねることによって形成されているため、容易に高く形成することができる。上記構成のエレクトロルミネッセンス装置において、第1の基板上に形成された発光素子から発せられた光は、その大部分が、対向する第2の基板上の色要素のうち、当該発光素子と同一の画素に形成された色要素に入射する。他方で、前記発光素子から隣接する画素の色要素に向かって斜めに射出された光は、前記遮光壁によって遮光される。このため、異なる色に対応する隣接画素間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。このように、上記構成によれば、容易に高く形成することができる遮光壁を有し、当該遮光壁の遮光効果によって混色を防止することが可能なエレクトロルミネッセンス装置が得られる。当該エレクトロルミネッセンス装置は、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。
【0009】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記遮光壁に含まれる前記色要素は、少なくとも2種の色の色要素が積層されてなることが好ましい。このような構成によれば、遮光壁は、2種又は3種以上の異なる色の色要素を重ね、その上にさらに遮光部材を積層することによって形成される。このような遮光壁は、容易に高く形成することができるため、例えば第1の基板と第2の基板の間隔を大きくとったとしても、混色の原因となる斜め方向に射出された光を効果的に遮光し、混色を防止することができる。
【0010】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記遮光壁は、前記色要素と前記遮光部材との間に配置された樹脂材料をさらに有することが好ましい。このような構成によれば、遮光壁は、1種、2種又は3種以上の異なる色の色要素を重ね、その上にさらに樹脂材料と遮光部材とをこの順に積層することによって形成される。このような遮光壁は、容易に高く形成することができるため、混色の原因となる斜め方向に射出された光をより効果的に遮光し、混色を防止することができる。
【0011】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記遮光壁は、対応する色が異なり、かつ互いに隣接する前記画素の間の領域に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、対応する色が互いに異なる隣接画素の間の領域に遮光壁が形成される。これらの互いに隣接する画素の一方から射出され、他方の画素の色要素に入射した光は必ず混色を引き起こすが、前記遮光壁はこのような光を遮光することができるので、混色を防止することができる。ここで、上記構成において、対応する色が同一である隣接画素の間の領域には、遮光壁は必ずしも設けなくてもよい。当該領域に遮光壁を設けない場合は、遮光壁の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0012】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記少なくとも3種の異なる色は、赤系の色、緑系の色、青系の色の3色であることが好ましい。このような構成のエレクトロルミネッセンス装置によれば、赤系の色、緑系の色、青系の色の発光の組み合わせによるカラー発光、又はカラー表示を行うことができる。また、容易に高く形成することができる遮光壁によって上記3色の相互間の混色が防止されるので、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。
【0013】
上記エレクトロルミネッセンス装置において、前記発光素子は、当該発光素子が形成された前記画素に対応する色と同系の色の光を発し、前記遮光壁は、前記緑系の色に対応する前記画素と、当該画素に隣接する前記赤系の色又は前記青系の色の前記画素との間の領域に形成されていることが好ましい。このような構成のエレクトロルミネッセンス装置において、赤系の色、緑系の色、青系の色に対応する画素に形成された発光素子は、それぞれ赤系の色、緑系の色、青系の色の光を発する。また、緑系の色と赤系の色に対応する隣接画素、及び緑系の色と青系の色に対応する隣接画素の間の領域に遮光壁が形成されている。これらの互いに隣接する画素の一方から射出され、他方の画素の色要素に入射した光は必ず混色を引き起こすが、前記遮光壁はこのような光を遮光することができるので、混色を防止することができる。ここで、上記構成において、赤系の色と青系の色に対応する隣接画素の間の領域には、遮光壁は必ずしも設けなくてもよい。これは、赤系の色の画素において発せられた赤い光は、仮に隣接する青系の色の画素の色要素に入射したとしても当該色要素によって大部分が吸収され、同様に青系の色の画素において発せられた青い光は、仮に隣接する赤系の色の画素の色要素に入射したとしても当該色要素によって大部分が吸収されるためである。赤系の色の画素と青系の色の画素との間の領域に遮光壁を設けない場合は、遮光壁の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0014】
本発明の電子機器は、上記エレクトロルミネッセンス装置を搭載したことを特徴とする。このような電子機器は、上記エレクトロルミネッセンス装置によって、視角特性の良い高品位な表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、「エレクトロルミネッセンス装置」としての有機EL装置1を示す概略断面図である。この図に示すように、有機EL装置1は、基板10上に、反射膜12、絶縁層14、陽極としての画素電極16、正孔輸送層18、有機発光層20、電子輸送層22、陰極24、薄膜封止層26がこの順に積層されてなる素子基板と、ガラス基板30上に、赤、緑、青にそれぞれ対応する色要素34R,34G,34B(以下では色要素34R,34G,34Bをまとめて「色要素34」とも呼ぶ)、及び色要素34上に形成された遮光部材32が積層されてなる封止基板とを接着剤28を介して貼り合わせたものである。ここで、基板10が本発明における「第1の基板」に、ガラス基板30が「第2の基板」に、有機発光層20が「発光層」に、それぞれ対応する。有機EL装置1は、有機発光層20において発光した光を封止基板側から取り出す構成のいわゆるトップエミッション型の発光装置であり、観察者は、ガラス基板30の側から表示を観察する。上記のうち、反射膜12から陰極24までの構成要素からなる素子が発光素子70である。発光素子70は、各画素40ごとに形成されている。
【0017】
図2は、画素40の形状及び配置について説明するための、有機EL装置1の拡大平面図である。以下では、図2中のX軸に平行な方向を行方向、Y軸に平行な方向を列方向とも呼ぶ。この図に示すように、上記遮光部材32は、X軸及びY軸に平行な直線状の要素から構成された格子状に形成されている。そして、当該遮光部材32の格子が形作る矩形の領域のそれぞれが画素40に対応する。すなわち、画素40は、複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配置されている。なお、画素40と画素40の間の領域を以下では画素間領域41とも呼ぶ。上述の遮光部材32は、画素間領域41に形成されていることになる。
【0018】
各々の画素40は、列方向に長い長方形をしており、行方向に沿って画素40B,40G,40Rがこの順に連環するように配置されている。ここで、画素40B,40G,40Rは、それぞれ青系の色の発光、緑系の色の発光、赤系の色の発光を行う画素40である。各々の画素40には、対応する色の色要素34、すなわち色要素34B,34G,34Rが形成されている。画素40は、同色の画素40同士が列をなすように配置されている。なお、上述の図1は、有機EL装置1を、画素40を含む位置で図2中の行方向に沿って切断したときの断面図である。
【0019】
図1に示すように、画素間領域41に配置され、画素40を区画する遮光部材32は、色要素34の上に形成されている。ここで、画素間領域41における、色要素34及び遮光部材32を含む積層構造体を以下では遮光壁33とも呼ぶ。
【0020】
以下、図1中の各構成要素について詳述する。基板10は、ガラス基板や石英基板等の上に公知の技術を用いてTFT(Thin Film Transistor)素子や各種配線(TFT素子を駆動するためのデータ線、走査線等)、絶縁膜等が形成された、いわゆるTFT素子基板である。反射膜12は、アルミニウム又は銀からなる。画素電極16は、反射膜12上に、反射膜12との短絡を防止するためのSiNからなる絶縁層14を挟んで配置された、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極である。画素電極16は、各画素40に一つずつ配置されており、それぞれの画素電極16は、基板10に含まれるTFT素子を介して、データ線(不図示)に接続されている。陰極24は、マグネシウムと銀の合金をハーフミラー状態に形成したものであり、光反射性及び光透過性を兼ね備えている。
【0021】
画素電極16と陰極24との間には、正孔輸送層18、有機発光層20、電子輸送層22がこの順に積層されている。有機発光層20は、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質の層である。画素電極16と陰極24との間に電圧を印加することによって、有機発光層20には、正孔輸送層18から正孔が、また、電子輸送層22から電子が注入され、有機発光層20においてこれらが再結合したときに発光が行われる。有機発光層20からの光は、一部は直接陰極24を透過し、一部は反射膜12によって反射されてから陰極24を透過する。いずれにせよ、有機発光層20からの光は、陰極24を透過し、その後薄膜封止層26、接着剤28、色要素34、ガラス基板30を順に透過する。
【0022】
ここで、反射膜12及び陰極24は、いわゆる光共振器を構成している。このため、有機発光層20において発せられた光は、反射膜12と陰極24との間を往復し、共振波長の光だけが増幅されて封止基板側から取り出される。よって、ピーク強度が高く幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、有機EL装置1による発光の色再現性を向上させることができる。
【0023】
上記共振波長は、光共振器の長さを変えることによって調整可能である。有機EL装置1においては、画素電極16の厚さを変えることによって光共振器の長さを調整している。より詳細には、画素40B,40G,40Rにおいてこの順に画素電極16を厚くしていく構成により、光共振器の長さ、及び共振波長がこの順に長くなるようになっている。具体的には、画素40B,40G,40Rにおける画素電極16の厚さはそれぞれ20nm,50nm,90nmとなっている。これにより、共振波長は、画素40Bにおいては青色、画素40Gにおいては緑色、画素40Rにおいては赤色に相当する波長に設定される。この結果、陰極24からは、共振波長に応じて青、緑、または赤の光が選択的に射出される。
【0024】
陰極24を覆って形成された薄膜封止層26は、SiONからなる透光性を有する部材であり、有機EL素子70を保護するとともに、光共振器の形成のためにできた陰極24の段差を埋めて平滑にする役割を果たす。
【0025】
ガラス基板30上に形成された色要素34は、入射した光のうちの特定の波長成分を吸収することによって透過光を着色する部材である。色要素34は、例えば、色要素材料としての顔料を含む感光性樹脂を塗布して露光現像することにより形成される。色要素34を配置することによって、有機EL装置1から取り出される光の色純度が向上するとともに、視野角による色の変化を抑えることができ、かつ外光の反射をある程度遮断することができる。色要素34は、エポキシ樹脂からなる接着剤28を介して薄膜封止層26と対向している。
【0026】
色要素34に重ねて配置された遮光部材32は、光をほとんど透過させない黒色の樹脂であり、上述したように遮光壁33の一部を構成する。遮光部材32は、その材料となる樹脂を色要素34上に塗布した後に露光現像し、図2に示すような格子状にパターニングすることによって形成される。遮光壁33は、このように色要素34の上に遮光部材32を重ねることによって形成されているため、容易に高く形成することができる。以下では、遮光部材32の幅(すなわち遮光壁33の幅)をWとし、遮光部材32の、色要素34の表面からの高さをTとする。また、色要素34から陰極24までの距離をLとする。
【0027】
ここで、発光素子70から射出される光の振る舞いと、遮光壁33の作用及び効果について説明する。
【0028】
発光素子70から射出された光は、様々な角度をもって封止基板に入射する。以下では、図1に示すように、発光素子70からの光の射出角をθとする。この光の光路である接着剤28、色要素34、ガラス基板30の屈折率は概ね1.51であるので、射出角θが42°より大きな光はガラス基板30と空気層との界面で全反射され、観察者からは視認されない。よって、こうした光は仮に隣接画素40の異なる色の色要素に入射して混色を起こしたとしても、表示には影響を与えない。逆に、射出角が42°以下の光はガラス基板30から空気層に取り出されるので、観察者に視認され得る。こうした光が隣接画素40の異なる色の色要素に入射すると、混色を起こした状態で空気層に射出されるので、表示品位の低下を招く。
【0029】
遮光壁33は、ある画素40の発光素子70からθ≦42°を満たして射出した光のうち、隣接する画素40の色要素34に入射しようとする光を遮光する。そのために、遮光部材32は、その高さTが下記式(1)を満たすように形成されている。
tan42°≦W/(L−T) …(1)
なお、従来の一般的な構成、すなわち画素間領域41に色要素34と等しい高さの遮光部材32を配置する構成の有機EL装置においては、混色を防止するためには下記式(2)が要求されていた。
tan42°≦W/L …(2)
これと上記式(1)を比較すれば、本実施形態の有機EL装置1は、混色を起こさずに、長さL(ひいては、素子基板と封止基板との間隔)を遮光部材32の高さTの分だけ大きくとることが可能であることが分かる。具体的には、W=20μmとした場合、従来の構成では長さLが22μmを越えると混色が起こる一方で、本実施形態においては、例えばT=3μmとすれば、長さLを25μmにまで大きくすることができる。このように長さLを大きくとることができれば、基板間隔を大きくすることができ、基板間に大きな異物が混入した場合でも当該異物が発光素子70に影響を与えないようにすることができる。
【0030】
以上のように、遮光壁33は、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。このように、有機EL装置1は、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。
【0031】
(第2の実施形態)
続いて、図3の断面図を用いて第2の実施形態に係る有機EL装置1Aについて説明する。有機EL装置1Aは、遮光壁33の構成を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0032】
図3に示すように、有機EL装置1Aにおける遮光壁33は、2種の異なる色の色要素34と、その上に積層された遮光部材32とからなる。この遮光壁33は、以下のような製造方法によって製造される。すなわち、まずガラス基板30上の画素40Rに対応する領域及び画素40Rに隣接する画素間領域41に、色要素34Rを形成する。次に、画素40Gに対応する領域及び画素40Gに隣接する画素間領域41に、色要素34Gを形成する。このとき、画素40Rと画素40Gとの間の画素間領域41においては、色要素34Rと色要素34Gとが積層される。続いて、画素40Bに対応する領域及び画素40Bに隣接する画素間領域41に、色要素34Bを形成する。このとき、画素40Rと画素40Bとの間の画素間領域41においては、色要素34Rと色要素34Bとが積層され、画素40Gと画素40Bとの間の画素間領域41においては、色要素34Gと色要素34Bとが積層される。最後に、画素間領域41に遮光部材32を積層して遮光壁33が完成する。
【0033】
遮光壁33は、このように色要素34を2層に重ねた上に遮光部材32をさらに積層することによって形成されているため、色要素34が1層である場合に比べて高く形成することができる。また、遮光壁33の各構成要素の厚さ(高さ)は第1の実施形態と同様であるので、容易に高く形成することができる。
【0034】
有機EL装置1Aにおいても、こうした遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔を大きくとることができる。
【0035】
(第3の実施形態)
続いて、図4の断面図を用いて第3の実施形態に係る有機EL装置1Bについて説明する。有機EL装置1Bは、遮光壁33の構成を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0036】
図4に示すように、有機EL装置1Bにおける遮光壁33は、3種の異なる色の色要素34と、その上に積層された遮光部材32とからなる。この遮光壁33は、以下のような製造方法によって製造される。すなわち、まずガラス基板30上の画素40Rに対応する領域及びすべての画素間領域41に、色要素34Rを形成する。次に、画素40Gに対応する領域及びすべての画素間領域41に、色要素34Gを形成する。このとき、各画素間領域41においては、色要素34Rと色要素34Gとが積層される。続いて、画素40Bに対応する領域及びすべての画素間領域41に、色要素34Bを形成する。このとき、各画素間領域41においては、色要素34R、色要素34Gに重ねて色要素34Bが積層される。最後に、すべての画素間領域41に遮光部材32を積層して遮光壁33が完成する。
【0037】
遮光壁33は、このように色要素34を3層に重ねた上に遮光部材32をさらに積層することによって形成されているため、色要素34が1層又は2層である場合に比べて高く形成することができる。また、遮光壁33の各構成要素の厚さ(高さ)は第1の実施形態と同様であるので、容易に高く形成することができる。
【0038】
有機EL装置1Bにおいても、こうした遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔をさらに大きくとることができる。
【0039】
(第4の実施形態)
続いて、図5の断面図を用いて第4の実施形態に係る有機EL装置1Cについて説明する。有機EL装置1Cは、遮光壁33の構成を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0040】
図5に示すように、有機EL装置1Cにおける遮光壁33は、色要素34に重ねて樹脂材料31及び遮光部材32がこの順に積層された構成となっている。ここで、樹脂材料31は、遮光壁33をより高く形成するための部材であるので、その特性は特に問わない。遮光壁33の遮光性は遮光部材32によって担保されるので、樹脂材料31は透光性を有していてもよい。このため、一般にオーバーコートとして用いられる透明樹脂を用いることができる。もちろん、樹脂材料31は、遮光部材32と同様に遮光性を備えていてもよいし、あるいは色要素34と同様に透過光を着色させるものであってもよい。
【0041】
この遮光壁33は、以下のような製造方法によって製造される。すなわち、まずガラス基板30上に、第1の実施形態と同様に3色の色要素34を形成する。次に、画素間領域41に、色要素34に重ねて樹脂材料31を形成する。この工程は、例えばスピンコート法及びフォトリソグラフィー法によって行うことができる。最後に、樹脂材料31の上に遮光部材32を積層して遮光壁33が完成する。
【0042】
遮光壁33は、このように色要素34上に樹脂材料31及び遮光部材32をさらに積層することによって形成されているため、1層の色要素34及び遮光部材32から構成される場合に比べて高く形成することができる。また、遮光壁33の各構成要素の厚さ(高さ)は第1の実施形態と同様であるので、容易に高く形成することができる。
【0043】
有機EL装置1Cにおいても、こうした遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔をさらに大きくとることができる。
【0044】
なお、上記は、1層の色要素34の上に樹脂材料31及び遮光部材32を積層する構成であるが、これに代えて、第2の実施形態のように2層の色要素34を形成し、その上に樹脂材料31及び遮光部材32を積層する構成、あるいは第3の実施形態のように3層の色要素34を形成し、その上に樹脂材料31及び遮光部材32を積層する構成とすることもできる。こうした構成によれば、遮光壁33をさらに高く形成することができる。
【0045】
(第5の実施形態)
続いて、図6の断面図を用いて第5の実施形態に係る有機EL装置1Dについて説明する。有機EL装置1Dは、樹脂材料31の形成領域を除けば上記第4の実施形態の有機EL装置1Cと同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0046】
図6に示すように、有機EL装置1Dの遮光壁33は、色要素34に重ねて樹脂材料31及び遮光部材32が積層された構成となっている。ここで、樹脂材料31は、遮光壁33の一部としてだけでなく、色要素34の全体を覆って形成されており、色要素34を保護するとともに、平坦性を向上させる役割も果たしている。本実施形態の樹脂材料31には、透光性を有する部材が用いられる。
【0047】
有機EL装置1Dにおいても、遮光壁33によって、発光素子70から隣接する画素40の色要素34に向かって斜めに射出された光のうち、空気層に取り出される可能性のある光を遮光することができる。このため、異なる色に対応する隣接画素40の間での混色が起きにくく、広角から観察しても色相が変化しにくい。また、遮光壁33を高く形成することができるため、上記の遮光機能を保ったまま、基板間隔をさらに大きくとることができる。
【0048】
(第6の実施形態)
続いて、図7の平面図を用いて第6の実施形態に係る有機EL装置1Eについて説明する。有機EL装置1Eは、遮光部材32の形成領域を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0049】
図7に示すように、有機EL装置1Eにおいては、遮光部材32、及び遮光部材32を構成要素とする遮光壁33は、外周部分を除くと列方向にのみ形成され、行方向には形成されていない。換言すれば、互いに対応する色の異なる画素40の間の領域にのみ遮光部材32(遮光壁33)が形成されている。なお、有機EL装置1Eを、画素40を含む位置で図7中の行方向に沿って切断したときの断面図は、第1の実施形態の有機EL装置1と同様であり、図1に相当する。
【0050】
こうした構成においても、遮光壁33は混色を防止する効果を発揮し、有機EL装置1Eは、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。これは、混色が起こるのは互いに対応する色の異なる隣接する画素40の間に限られるところ、こうした隣接する画素40の間には混色を防止する遮光壁33が形成されているからである。このように、遮光壁33を部分的に形成する構成とすれば、遮光壁33の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁33の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0051】
なお、上記は第1の実施形態の有機EL装置1において遮光部材32の形成領域を変更したものであるが、同様の変更は、第2の実施形態から第5の実施形態のいずれかに係る有機EL装置1A,1B,1C,1Dについて行うこともできる。
【0052】
(第7の実施形態)
続いて、図8及び図9を用いて第7の実施形態に係る有機EL装置1Fについて説明する。図8は、有機EL装置1Fの拡大平面図、図9は、有機EL装置1Fを、画素40を含む位置で図8中の行方向に沿って切断したときの断面図である。有機EL装置1Fは、遮光部材32の形成領域を除けば上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0053】
図8及び図9に示すように、有機EL装置1Fにおいては、遮光部材32、及び遮光部材32を構成要素とする遮光壁33は、外周部分を除くと列方向にのみ形成され、かつ、画素40Gに隣接する画素間領域41に限って形成されている。すなわち、画素40Rと画素40Bの画素間領域41や、行方向に平行な画素間領域41には形成されていない。
【0054】
画素40Rと画素40Bの画素間領域41に遮光壁33が不要な理由は以下の通りである。すなわち、画素40Rから発せられた赤色の光は、仮に隣接する画素40Bの色要素34Bに入射したとしても、当該色要素34Bが赤色の光をほとんど透過しないことにより、ここで大部分が吸収される。同様に、画素40Bから発せられた青色の光は、仮に隣接する画素40Rの色要素34Rに入射したとしても、当該色要素34Rが青色の光をほとんど透過しないことにより、ここで大部分が吸収される。このように、画素40Rと画素40Bとの間では、一方の画素40R(40B)から他方の画素40B(40R)に入射した光は色要素34R又は色要素34Bによって吸収されるため、この画素間領域41に遮光壁33がない場合でも混色はほとんど起こらない。
【0055】
したがって、上記の構成においても、遮光壁33は混色を防止する効果を発揮し、有機EL装置1Fは、視角特性の良い高品位な発光を行うことができる。このように、遮光壁33を部分的に形成する構成とすれば、遮光壁33の材料の使用量を削減することができるとともに、遮光壁33の形成工程を短縮あるいは簡素化することができる。
【0056】
なお、上記は第1の実施形態の有機EL装置1において遮光部材32の形成領域を変更したものであるが、同様の変更は、第2の実施形態から第5の実施形態のいずれかに係る有機EL装置1A,1B,1C,1Dについて行うこともできる。
【0057】
また、本実施形態は、発光素子70から赤、緑、青のいずれかの色の光が射出される構成の有機EL装置に好適に用いることができる。このため、光共振器を利用した発光素子70に代えて、例えば、赤、緑、青のそれぞれの光を発することができる有機発光層20を含む発光素子70を備えた有機EL装置にも適用することができる。
【0058】
(第8の実施形態)
続いて、図10の断面図を用いて第8の実施形態に係る有機EL装置1Gについて説明する。有機EL装置1Gは、封止基板については上記第1の実施形態の有機EL装置1と同じであるので、以下では素子基板の構成の相違点を中心に説明する。
【0059】
図10に示すように、有機EL装置1Gの素子基板は、基板10上に、反射膜12、絶縁層14、陽極としての画素電極16、正孔輸送層18、有機発光層20、電子輸送層22、陰極24、薄膜封止層26がこの順に積層されてなる。ここで、第1の実施形態の有機EL装置1との構成の違いは、画素電極16の厚さがすべての画素40において均一である点、及び陰極24が透明なITOからなる点である。このため、発光素子70は、光共振器が内包されたものではなく、単に有機発光層20で発光した光を陰極24側から取り出す構成となっている。すなわち、各発光素子70は、同じ色相の光を発する。
【0060】
こうした構成の有機EL装置1Gにおいても、ある画素40で発光した光が斜めに進行して隣接する画素40の色要素34に入射すると、本来意図した画素40とは異なる画素40において、意図しない色の発光が行われることとなり、表示品位の低下を招く。遮光壁33は、上記斜めに進行する光を遮光し、こうした現象を防止することができる。
【0061】
なお、上記は第1の実施形態の有機EL装置1において素子基板の構成を変更したものであるが、同様の変更は、第2の実施形態から第6の実施形態のいずれかに係る有機EL装置1A,1B,1C,1D,1Eについて行うこともできる。
【0062】
(電子機器への搭載例)
上述した有機EL装置1(有機EL装置1Aから1Gを含む)は、例えば、図11に示すような「電子機器」としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部510及び操作ボタン520を有している。表示部510は、内部に組み込まれた有機EL装置1によって、操作ボタン520で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について、視角特性の良い、高品位な表示を行うことができる。
【0063】
なお、本発明を適用した有機EL装置1は、上記携帯電話機500の他、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器などの各種電子機器に用いることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0065】
(変形例1)
上記第1から第7までの各実施形態において、発光素子70は、光共振器を用いて赤、緑、青の各色の光を発するものであるが、これに代えて、赤、緑、青の各色を発する有機発光層20を用いた構成としてもよい。こうした構成の発光素子70と組み合わせた場合でも、遮光壁33は混色を防止する効果を発揮する。
【0066】
(変形例2)
上記各実施形態において、画素40及び色要素34は、赤、緑、青の3色に対応する構成であるが、これに代えて、4色以上の色に対応する構成としてもよい。例えば、赤、青、の2色に、青から黄までの色相の中で選択された2種の色を加えた4色に対応する構成とすることができる。後者の2色は、例えば緑及びシアンとすることができる。
【0067】
(変形例3)
上記各実施形態において、発光素子70に含まれる正孔輸送層18、電子輸送層22は、必要に応じて配置すればよく、必ずしも形成しなくてもよい。また、薄膜封止層26も、接着剤28が同様の機能を兼ねる場合は省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図2】第1の実施形態に係る有機EL装置の拡大平面図。
【図3】第2の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図4】第3の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図5】第4の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図6】第5の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図7】第6の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図8】第7の実施形態に係る有機EL装置の拡大平面図。
【図9】第7の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図10】第8の実施形態に係る有機EL装置の断面図。
【図11】本発明の電子機器の実施形態に係る携帯電話機の模式斜視図。
【符号の説明】
【0069】
1,1A〜1G…有機EL装置、10…「第1の基板」としての基板、12…反射膜、14…絶縁層、16…画素電極、18…正孔輸送層、20…有機発光層、22…電子輸送層、24…陰極、26…薄膜封止層、28…接着剤、30…「第2の基板」としてのガラス基板、31…樹脂材料、32…遮光部材、33…遮光壁、34,34R,34G,34B…色要素、40,40R,40G,40B…画素、70…発光素子、500…携帯電話機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された、少なくとも3種の異なる色のいずれかに対応する複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス装置であって、
第1の基板と、
前記第1の基板上に前記画素に対応して形成された、発光層を含む複数の発光素子と、
前記第1の基板の前記発光素子が形成された面に対向して、接着剤を介して前記第1の基板と貼り合わされた透光性を有する第2の基板と、
前記第2の基板の対向面に前記画素に対応して形成された、前記画素に対応する色の色要素と、
前記第2の基板の対向面のうち、互いに隣接する前記画素の間の領域に形成された、前記色要素と、遮光性を有する遮光部材とがこの順に積層されてなる遮光壁と
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記遮光壁に含まれる前記色要素は、少なくとも2種の色の色要素が積層されてなることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記遮光壁は、前記色要素と前記遮光部材との間に配置された樹脂材料をさらに有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記遮光壁は、対応する色が異なり、かつ互いに隣接する前記画素の間の領域に形成されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記少なくとも3種の異なる色は、赤系の色、緑系の色、青系の色の3色であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記発光素子は、当該発光素子が形成された前記画素に対応する色と同系の色の光を発し、
前記遮光壁は、前記緑系の色に対応する前記画素と、当該画素に隣接する前記赤系の色又は前記青系の色の前記画素との間の領域に形成されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された、少なくとも3種の異なる色のいずれかに対応する複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス装置であって、
第1の基板と、
前記第1の基板上に前記画素に対応して形成された、発光層を含む複数の発光素子と、
前記第1の基板の前記発光素子が形成された面に対向して、接着剤を介して前記第1の基板と貼り合わされた透光性を有する第2の基板と、
前記第2の基板の対向面に前記画素に対応して形成された、前記画素に対応する色の色要素と、
前記第2の基板の対向面のうち、互いに隣接する前記画素の間の領域に形成された、前記色要素と、遮光性を有する遮光部材とがこの順に積層されてなる遮光壁と
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記遮光壁に含まれる前記色要素は、少なくとも2種の色の色要素が積層されてなることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記遮光壁は、前記色要素と前記遮光部材との間に配置された樹脂材料をさらに有することを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記遮光壁は、対応する色が異なり、かつ互いに隣接する前記画素の間の領域に形成されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記少なくとも3種の異なる色は、赤系の色、緑系の色、青系の色の3色であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエレクトロルミネッセンス装置であって、
前記発光素子は、当該発光素子が形成された前記画素に対応する色と同系の色の光を発し、
前記遮光壁は、前記緑系の色に対応する前記画素と、当該画素に隣接する前記赤系の色又は前記青系の色の前記画素との間の領域に形成されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−220395(P2007−220395A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37581(P2006−37581)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]