説明

エレベータのかごの戸ロック装置

【課題】この発明は、戸駆動装置の連結機構に依存しないが、戸駆動装置によって自動操作される機械的なかごの戸ロック装置を得る。
【解決手段】この発明では、かごが乗り場区域外にある時に、戸の開移動と一緒に移動する第1カムの移動力が第1ローラに伝達されると、スライダが第1カムの移動に連動してスライダロッドに沿って戸開方向に移動してスライダロッドをロック位置に保持し、戸の開移動と一緒に移動する静止ラッチがラッチに係合して戸の開動作を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降路の戸の移動とは無関係に、ロック解除区域である乗り場区域から外れた位置で、エレベータのかごの戸を機械的にロックする装置に関する。エレベータの自動戸は、一般的に、エレベータのかご上に配置された戸駆動装置によって開かれる。例えば、停電のために階間でかごが停止する場合、乗客が手動でかごの戸を無理やり開く。かごの戸のロック装置は、この手動による開放を防止するために適用される。
【背景技術】
【0002】
従来のかごの戸のロック装置は、かご室上のローラと、各階で昇降路内に取り付けられているランプとの接触によって動作される。これには、かごの移動中にローラが各階のランプに接触して、部品の摩耗および騒音が発生するという欠点があった。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されているように、手動でローラとランプとの間の隙間を形成するための手動ハンドルを追加して、かごの移動中にローラとランプとの間に隙間を確保するものがある。この解決策の欠点として、戸がもはや自動的に開かないで、乗り場であっても戸のロック機構を解除するための手動操作が必要となることである。
別の解決策が、例えば、特許文献4、特許文献5および特許文献6に記載されているように、かごの移動中にローラとランプとの間に隙間を保持するための何らかの電動アクチュエータを備えることに見出された。電動アクチュエータの欠点は、ロック動作に電力が必要なことである。
【0004】
そこで、例えば、特許文献7に記載されているように、かごの移動中にローラとランプとの間に隙間を保持するために、かごの戸と昇降路の戸との間の連結機構の移動を利用することが提案されている。
【0005】
この特許文献7に記載された従来のかごの戸のロック装置では、図28に示されるように、ロック31と、昇降路内の各階にあるランプ30と、ロック31を作動するリンク装置32とを有している。ロック31およびリンク装置32は、オーバーヘッド支持ビーム36に取り付けられている。リンク装置32は、作動レバー33を有している。作動レバー33は、階にあるとき、ローラ34を介してランプ30に当接する。作動レバー33は、リンク装置32に可動ピボット35によって回転可能に取り付けられている。ドア連結部38が懸架板37に取り付けられており、連結要素40がドア連結部38のベーン39に連結されている。
そして、戸が閉塞位置に達する前に、懸架板37の移動力がベーン39および連結要素40を介してリンク装置32に伝達され、ロック31を戸作動機構の駆動力を用いて作動させる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3659677号明細書
【特許文献2】英国特許第1047977号明細書
【特許文献3】英国特許第1265989号明細書
【特許文献4】独国特許第598407号明細書
【特許文献5】英国特許第2206331号明細書
【特許文献6】欧州特許第0426057号明細書
【特許文献7】欧州特許第0709334号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献7に記載された従来のかごの戸のロック装置では、ロック31の作動が戸駆動装置に依存する。そこで、かごの戸のロック機能を追加することは、既存の戸駆動装置の連結機構の変更が必要となるという欠点があった。
【0008】
本発明の目的は、戸駆動装置の連結機構に依存しないが、戸駆動装置によって自動操作される機械的なかごの戸のロック装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、エレベータのかごが乗場区域外にある時に該かごの引き戸をロックするエレベータのかごの戸ロック装置において、各乗場位置で昇降路内に取り付けられたランプと、上記かごに取り付けられたロック機構部と、を備えている。上記ロック機構部は、上記戸と一緒に移動する静止ラッチと、上記戸と一緒に移動する第1カムと、上記かごに取り付けられたレバー機構と、を備えている。上記レバー機構は、一端を上記かごに第1ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられて、戸開方向に水平に延びるロック位置と該ロック位置から上側に所定角度回動したロック解除位置とをとるスライダロッドと、上記スライダロッドが上記ロック位置にある時に上記静止ラッチと係合可能に、かつ、上記スライダロッドが上記ロック解除位置にある時に上記静止ラッチと係合しないように、該スライダロッドと一体に配設されたラッチと、上記スライダロッドに沿って移動可能に配設されたスライダと、上記第1ヒンジ点と上記スライダとの間の位置の下方に第2ヒンジ点周りに回転可能に配設された第1ローラと、一端を上記第1ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられ、かつ、他端を上記第2ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられて、上記第1および第2ヒンジ点間に架設された第1レバーと、一端を上記第2ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられ、他端を上記スライダに第3ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられて、上記第2および第3ヒンジ点間に架設された第2レバーと、上記スライダに上記第3ヒンジ点周りに回転自在に取り付けられた第2ローラと、を備えている。そして、上記かごが乗り場区域外にある時に、上記戸の開移動と一緒に移動する上記第1カムの移動力が上記第1ローラに伝達されると、上記スライダが上記第1カムの移動に連動して上記スライダロッドに沿って戸開方向に移動して上記スライダロッドを上記ロック位置に保持し、上記戸の開移動と一緒に移動する上記静止ラッチが上記ラッチに係合して該戸の開動作を阻止する。さらに、上記かごが乗り場区域内にある時に、上記戸の開移動と一緒に移動する上記第1カムの移動力が上記第1ローラに伝達されると、上記スライダが上記第1カムの移動に連動して上記スライダロッドに沿って戸開方向に移動して上記第2ローラを上記ランプに当接させ、その後の上記第1カムの移動により上記スライダロッドが上記ロック位置から上記ロック解除位置まで回動して上記静止ラッチを上記ラッチと係合することなく通過させ、上記戸の開動作を可能とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によるロック装置は、昇降路の戸の駆動機構から完全に独立しているので、任意形式の昇降路戸連結機構に適用することができる。また、電動式アクチュエータを伴わない機械的なレバー機構を採用しているので、ロック動作が電力を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施例を用いて本発明の基本的な概念および作用を説明する。
【0012】
実施例1.
図1は、本発明のロック装置の基本概念を示している。本ロック装置は、戸懸架装置10に取り付けられた部品、かご支持枠(図示せず)に取り付けられた部品、および昇降路(図示せず)内に静止状態で取り付けられた部品の3つの群に分けられる。戸懸架装置10に取り付けられた部品は、静止ラッチ16と第1カム9である。ランプ1は、各乗り場で昇降路内に静止した状態で取り付けられている。このランプ1は、戸の入口に隣接して配置されている。そして、ランプ1を戸枠の三方枠の背後に配置することによって、ガラス戸か、またはガラス昇降路の場合でも、外観に悪影響を及ぼさない。
【0013】
レバー機構25は、かご支持枠に取り付けられ、かご支持枠上で静止した第1ヒンジ点15を有する。このレバー機構25は、基本的に3本のレバーからなる。2本のレバーである第1レバー11およびスライダロッド3が第1ヒンジ点15にヒンジ連結されている。第1ローラ7が第1レバー11の反第1ヒンジ点15側の端部に第2ヒンジ点8で取り付けられている。スライダ4がスライダロッド3に沿って移動するように取り付けられている。第2ローラ5が第3ヒンジ点17でスライダ4に取り付けられている。残る1本のレバーである第2レバー6が一端を第2ヒンジ点8に、他端を第3ヒンジ点17にヒンジ連結されている。ラッチ2がスライダロッド3に取り付けられている。
【0014】
ここで、本ロック装置の具体的構成を図2乃至図6に基づいて説明する。図2および図3はかごが乗り場に着床して戸が閉じられている状態を示している。
戸懸架装置10は、図示していないが、かご室の出入り口上部外壁に配設されたドアレールに、戸の開閉方向に走行自在に取り付けられている。そして、ブラケット19が戸懸架装置10の上部側に取り付けられ、カムブラケット18がブラケット19の下部に位置するように戸懸架装置10に取り付けられている。
【0015】
静止ラッチ16は、ブラケット19の上部に取り付けられている。そして、図示していないが、シムが静止ラッチ16とブラケット19との間に当てられ、適当なロック距離が得られるように静止ラッチ16の高さを簡易に調整できるようになっている。第1カム9は、一対の傾斜部9a,9cと、一対の傾斜部9a,9c間を連結する平坦部9bとを有する。この第1カム9が、傾斜部9aを戸開方向に向け、平坦部9bを水平として、カムブラケット18の上部に取り付けられている。そして、シム24が第1カム9とカムブラケット18との間に当てられ、第1カム9の高さを簡易に調整できるようになっている。また、カムブラケット18にスロット18aが設けられており、第1カム9の水平位置を簡易に調整できるようになっている。
【0016】
ヒンジブロック12が、第1ヒンジ点15でヒンジ結合されている。スライダロッド3とラッチ2とが、ともにヒンジブロック12に取り付けられている。スライダ4は、ヒンジブロック12に当接する標準設定位置にある。この標準設定位置では、ラッチ2およびスライダロッド3が水平位置にあり、ランプ1とスライダ4に取り付けられた第2ローラ5との間に隙間(標準設定ギャップ)が存在する。このように、スライダ4が標準設定位置にある時には、かごの移動中に第2ローラ5とランプ1との接触騒音が発生することはない。スライダ4が標準設定位置にある時に、第1ローラ7が第1カム9の傾斜部9aにまさに接触するように、第1カム9が取り付けられている。スイッチ接点14がラッチ2に取り付けられており、ラッチ2が図示の水平位置にあるとき、スイッチ13に接触する。図示のスイッチ接点14およびスイッチ13は、一例にすぎない。他の形式の安全スイッチを同様に適用することができる。
【0017】
ランプブラケット27が、乗り場の戸枠(図示せず)にスロット27aに通されたボルトにより締着固定される。ランプ1は、スロット27bに通されたボルトによりランプブラケット27に締着固定される。このランプブラケット27の形状は、もちろん、乗り場の戸枠によって決まり、図4乃至図6に図示される構造に制限されない。また、ランプ1の位置は、ランプブラケット27に形成された長穴のスロット27a,27bの長手方向、すなわち、第1ローラ7とランプ1との間のギャップを調整するための戸の移動方向に平行な方向と、昇降路内の静止部品とかごと一緒に移動する部品との間の隙間を調整するための戸の移動方向に垂直な方向との2方向に調整されることができる。また、ランプ1の垂直位置は、必要に応じて、ランプブラケット27と乗り場の戸枠との間にシムを介装することによって調整できる。
【0018】
まず、本ロック装置のロック解除区域内(乗り場区域内)での動作について説明する。
図7乃至図9は、かごの戸がロック解除区域内で、第2ローラ5がランプ1に接触するまで、部分的に開いている時のロック装置を示している。この場合、戸は、戸が閉じている場合における第2ローラ5とランプ1との間の標準設定ギャップに等しい距離だけ開いている。第1カム9が、図7および図8中右方向に戸と一緒に移動して、第1ローラ7を押し付ける。その結果、ヒンジ連結された第1レバー11は、図7および図8中、反時計回りに回転しなければならない。この第1レバー11の回転が、第2ヒンジ点8を移動させる。第2レバー6はこの同じ第2ヒンジ点8を共用している。そして、第2レバー6は固定長さであるため、第2レバー6の他方のヒンジ点である第3ヒンジ点17も同様に移動しなければならない。この同じ第3ヒンジ点17を共用するスライダ4は、第2レバー6によって力Fで押し付けられる。力Fの垂直成分である力FRVは、第1ヒンジ点15を中心にした、FRVに第3ヒンジ点17から第1ヒンジ点15までの距離を掛けた値に等しい反時計回りのトルクを生じる。レバー機構25全体の重力FCOMは、第1ヒンジ点15を中心にした、FCOMにレバー機構25の質量中心(COM)から第1ヒンジ点15までの水平距離を掛けた値に等しい時計回りのトルクを生じる。ここで、レバー機構25の質量およびCOMは、時計回りのトルクが反時計回りのトルクより大きくなるように構成されている。そのため、ラッチ2が回転する代わりに、スライダ4が取り付けられた第2ローラ5とともに、第2ローラ5がランプ1に接触するまで、スライダロッド3に沿ってランプ1の方向に移動する。すなわち、ラッチ2およびスライダロッド3は、第2ローラ5がランプ1に接触するまで、ロック位置に保持される。
【0019】
この時、スライダ4は、図8に示されるように、ヒンジブロック12から遠ざかるように移動する。そして、第2ローラ5とランプ1との間には、隙間が全く残っていない。
【0020】
図10および図11は、かごの戸がロック解除区域内で、ラッチが解除された状態で、部分的に開いている時のロック装置を示している。
【0021】
第2ローラ5がランプ1に接触し、第3ヒンジ点17のそれ以上の水平移動が防止される。連続した戸開き移動中に、第1カム9の傾斜部9aが第1ローラ7を押し続けると、第1ローラ7が第1カム9の傾斜部9aから上部の平坦部9bに載るまで、第1レバー11が回転し続ける。レバー機構25の構造上、第3ヒンジ点17は上方に移動する選択以外にない。そこで、この同じ第3ヒンジ点17を共用しているスライダ4も上方に押し進められる。スライダロッド3は、かご支持枠上に静止状態に配置された第1ヒンジ点15にヒンジ連結されている。そのため、スライダ4の上向きの移動の結果として、スライダロッド3が第1ヒンジ点15を中心にして反時計回りに回転する。そこで、スライダロッド3にリンク連結されたラッチ2も、反時計回りに回転する。これにより、ラッチ2およびスライダロッド3が、ロック位置からロック解除位置まで上側に所定角度回動し、静止ラッチ16がラッチ2を通過することができる。
【0022】
この時、スイッチ接点14は、図11に示されるように、もはやスイッチ13に接触しない。
【0023】
そして、静止ラッチ16およびブラケット19がラッチ2を通過して、これらの部品間の干渉が十分に防止されるまで、第1ローラ7は第1カム9の平坦部9bに留まる。つまり、ラッチ2およびスライダロッド3が、ロック解除位置に保持される。そして、第1ローラ7が平坦部9bを経て傾斜部9cに移ると、ラッチ2およびスライダロッド3が、ロック解除位置からロック位置に戻される。
【0024】
ついで、本ロック装置のロック解除区域外(乗り場区域外)での動作について説明する。
図12乃至図15は、かごの戸がロック解除区域外で部分的に開いている時を示している。この状態は、例えば、乗客が階間で戸を手動で開く場合に相当する。
【0025】
かごの戸がロック解除区域内にある場合、図10および図11に示されるように、連続した戸開き移動中、第2ローラ5がランプ1に接触した後、第3ヒンジ点17が上方に移動する。
しかし、図12乃至図15に示されるように、かごの戸がロック解除区域外にある場合、ランプ1が存在していないので、連続した戸開き移動中、第3ヒンジ点17が上方に移動することはない。そこで、スライダ4は、力Fの水平成分である力FRHにより、静止ラッチ16がラッチ2の背後に引っ掛かるまで、スライダロッド3に沿って移動し続ける。つまり、ラッチ2およびスライダロッド3は、ロック位置に保持される。そして、静止ラッチ16が戸懸架装置10に取り付けられているので、静止ラッチ16がラッチ2の背後に引っ掛かると、戸懸架装置10はそれ以上開き続けることができない。
【0026】
実施例2.
図16乃至図19において、ブラケット22は、水平フランジ22aと、垂直フランジ22bと、を有し、スライダ4の上部に取り付けられている。ブラケット21は、2つの異なった高さに水平に屈曲した第1フランジ21aおよび第2フランジ21bを有し、レバーアッセンブリ支持プレート26に取り付けられている。そして、レバーアッセンブリ支持プレート26に最も近い第1フランジ21aが、水平フランジ22aと同じ水平高さに位置している。また、図16に示されるように、スライダ4がヒンジブロック12に最も近い位置にある標準設定位置では、第1フランジ21aと水平フランジ22aとの間には無視できる程度の水平方向のギャップが存在する。そして、垂直フランジ22bが第1フランジ21aと第2フランジ21bとの間に位置している。
【0027】
スライダ4が標準設定位置に位置している状態で、戸が開けられると、第1ローラ7が第1カム9の傾斜部9aに沿って押し上げられる。この第1ローラ7の作動が、ラッチ2を図16中第1ヒンジ点15を中心に反時計回りに回転させる力を発生する。この力により、ラッチ2が回転し始めると、ブラケット22の水平フランジ22aがほとんど直接的に第1フランジ21aに当接する。水平フランジ22aが第1フランジ21aに当接することによる反力が、ブラケット22に加わり、スライダ4をスライダロッド3に沿って図16中右方向に移動させる。そこで、スライダ4が何らかの原因でスライダロッド3にくっついていたとしても、上述の反力がスライダ4をスライダロッド3から解き放すように作用し、ラッチ2を回転させることなく、スライダ4が移動できる。ここで、第1フランジ21aおよび水平フランジ22aがスライダ移動力発生手段を構成している。
【0028】
そして、スライダ4がスライダロッド3に沿って、図18および図19に示される標準設定ラッチ位置まで移動する。この標準設定ラッチ位置では、垂直フランジ22bが第2フランジ21bの真下に位置し、両フランジ21b、22b間には僅かの垂直方向のギャップが存在する。ここで、この標準ラッチ位置は、静止ラッチ16が全閉位置からラッチ2に当接するまでのスライダ4の移動経路の最終部分に相当する。そして、第2フランジ21bおよび垂直フランジ22bが回動阻止手段を構成している。
なお、他の構成は上記実施例1と同様に構成されている。
【0029】
ここで、ロック解除区域内での通常の戸の開動作では、垂直フランジ22bが第2フランジ21bに達する前に、第2ローラ5がランプ1に当接する。これにより、ラッチ2が回転し、ロックが解除される。
また、ロック解除区域外で戸を開く場合、垂直フランジ22bが第2フランジ21bの下部を通って移動する。その時点から、垂直フランジ22bが第2フランジ21bに当たることで、ラッチ2の回転が制限される。そして、静止ラッチ16がラッチ2の背後に引っ掛かるまで移動し、戸のそれ以上の開動作が阻止される。両フランジ21b,22b間のギャップは、かごの傾斜及び設置許容誤差の最悪の場合を考慮して設定される。
【0030】
実施例3.
図20乃至図24において、第1カム9はカムブラケット18の上部に取り付けられている。さらに、第2カム20が第1カム9の上部に取り付けられている。そして、シム24が第1カム9とカムブラケット18との間に介装され、第1および第2カム9,20の垂直位置を同時に調整できるようになっている。第1および第2カム9,20は、戸の移動中にレバー機構25が第1および第2カム9,20間につかえないように組み合わせられる。
なお、他の構成は上記実施例2と同様に構成されている。
【0031】
戸閉まり移動において、第1ローラ7が第1カム9の傾斜部9cから平坦部9bに載り、スライダロッド3がロック位置からロック解除位置まで回動される。そして、第1ローラ7が平坦部9bに沿って移動し、スライダロッド3がロック解除位置に保持される。そして、第1ローラ7が傾斜部9aに到達すると、ラッチ2およびスライダロッド3が自重により第1ヒンジ点15を中心にして時計回りに回転する。これにより、第1ローラ7が傾斜部9aに沿って下降し、スライダ4がスライダロッド3に沿ってヒンジブロック12の方向に移動する。そして、スライダ4がヒンジブロック12に近接し、ラッチ2およびスライダロッド3が水平位置(ロック位置)となる標準設定位置に戻る。
【0032】
この時、ラッチ2およびスライダロッド3が自重により第1ヒンジ点15を中心にして時計回りに回転せず、標準設定位置に戻らない場合が生じても、ローラ軸部材23の延出部が第2カム20の傾斜部20aに接触する。そして、戸閉まり移動が続いて、ローラ軸部材23の延出部が傾斜部20aに沿って強制的に下降し、第2ヒンジ点8が下方へ移動する。この第2ヒンジ点8を共用している第1および第2レバー11,6は一緒に移動しなければならない。さらに、第2レバー6とスライダ4とが同じ第3ヒンジ点17を共用している。そこで、第2レバー6の移動がスライダ4を標準設定位置に押し戻す。従って、スライダロッド3は、戸の閉動作の移動経路の最終部分で、リンク連結されたラッチ2とともに、第1ヒンジ点15を中心にして時計回りに回転し、水平位置(ロック位置)に戻る。
【0033】
このように、実施例3によれば、戸が閉まった状態では、スライダ4が確実に標準設定位置に戻される。
【0034】
実施例4.
この実施例4では、図25に示されるように、第1カム9Aの平坦部9bが、静止ラッチ16がラッチ2を通過する時点から戸全開時までの戸の移動経路全体で、第1ローラ7と接する長さに形成されている。
なお、他の構成は上記実施例1と同様に構成されている。
【0035】
図25では、戸全開状態のロック装置を点線で示し、戸全閉状態のロック装置を実線で示している。
【0036】
このように、戸の全開状態から実際に閉じられるまでの戸の移動経路全体で、第1ローラ7が第1カム9Aの平坦部9bに接しているので、スライダロッド3が第1ヒンジ点15を中心にして反時計回りに所定角度回転した状態(ロック解除位置)が保持される。そこで、スイッチ13も開かれており、スイッチ13の長寿命が図られる。
また、第1ローラ7と第1カム9Aとの接触が、重力、あるいは重量にばね力を加えたもので保持されるようになっている。これにより、第1ローラ7と第1カム9Aとの接触状態の保持が廉価な構造で実現できる。
【0037】
実施例5.
この実施例5では、図26に示されるように、第1カム9Aの平坦部9bおよび第2カム20Aの平坦部20bが、静止ラッチ16がラッチ2を通過する時点から戸全開時までの戸の移動経路全体で、第1ローラ7と接する長さに形成されている。
なお、他の構成は上記実施例3と同様に構成されている。
【0038】
図26では、戸全開状態のロック装置を点線で示し、戸全閉状態のロック装置を実線で示している。
【0039】
このように、戸の全開状態から実際に閉じられるまでの戸の移動経路全体で、第1ローラ7が第1カム9Aの平坦部9bと第2カム20Aの平坦部20bとの間に位置しているので、スライダロッド3が第1ヒンジ点15を中心にして反時計回りに所定角度回転した状態(ロック解除位置)が保持される。そこで、スイッチ13も開かれており、スイッチ13の長寿命が図られる。
また、第1ローラ7が第1および第2カム9A,20Aの形状関係により平坦部9b,20b間に強制的に位置されるので、かごの衝撃移動時にも、スライダロッド3のロック解除位置が確実に保持される。そこで、かごの衝撃移動時に、スイッチ13が閉成されることも未然に防止される。
【0040】
なお、第1および第2カム9A,20Aの形状関係は図26に示されるものに限定されるものではなく、他の形状関係であってもよい。
【0041】
実施例6.
この実施例6では、図27に示されるように、戸閉じ経路の終了時、第1カム9が第1ローラ7に接触しない形状に形成されている。
なお、他の構成は上記実施例1と同様に構成されている。
【0042】
図27では、戸全開状態のロック装置を点線で示し、戸全閉状態のロック装置を実線で示している。
【0043】
この実施例6では、戸閉じ経路の終了時、即ちスライダ4が標準設定位置にあるとき、第1カム9が第1ローラ7に接触しない形状に形成されているので、第1カム9の水平位置の調整が必要なくなり、第1カム9の設置が簡単になる。
【0044】
本発明は、上記実施例1〜6に制限されるものではなく、特許請求の範囲内で更に変更できることは言うまでもないことである。
このように、本発明によって得られる利点には、
・ロックの動作に電力が必要ない、
・現場での設置が容易である、
・メンテナンスの必要性が低い、
・昇降路戸駆動装置に依存していない、
・かごの戸のヘッダ内部に入口に隣接して、即ち戸枠の三方枠の背後に取り付けられて、ガラス戸やガラス昇降路の場合でも、外観に影響を及ぼさない
ということが含まれる。
【0045】
電動式アクチュエータを伴わない比較的簡単なレバー機構が適用され、そのため、ロック動作は電力の存在に依存しない。
現場での設置が非常に簡単である。ほとんどの設置作業を、作業環境が現場より遥かに良好である工場で行うことができる。かご支持枠に取り付けられる部品および戸懸架装置10に取り付けられる部品は、すべて工場で取り付けることができる。ランプブラケット27も、工場で乗り場戸枠に取り付けることができる。ランプ1は、現場で非常にうまく取り付けることができる。
【0046】
現場では、いくらかの考えられる部品位置調整だけが残る。これらは以下のものである。昇降路内の静止部品との間に十分な隙間を保持するために、第2ローラ5の位置を戸の移動横行に垂直な方向に調整する必要が生じる場合がある。この場合、第2ローラ5の取付部の背後にシムを追加するか、シムを取り外すかによって簡単に行うことができる。
【0047】
戸を中央に配置した後、戸の移動方向に平行な方向の第1カム9,9Aの位置を調整する必要が生じる場合がある。この場合、カムブラケット18内のスロット18aによって簡単に行うことができる。また、第2ローラ5とランプ1との間のギャップを変更するために、戸の移動方向に平行な方向のランプ1の位置を調整する必要が生じる場合がある。この場合、1つのランプ1を適切な位置に設置し、このランプ位置を全ての乗り場でのランプ位置決め用の下げ振り線の位置として利用すれば、簡単に行うことができる。
メンテナンスの必要性が低い。本ロック装置では、軸受の潤滑だけが必要であり、定期的にロック動作の目視検査を行えばよい。
【0048】
本ロック装置は、昇降路の戸の駆動機構から完全に独立しているので、任意形式の昇降路戸連結機構に適用することができる。多くの場合、昇降路戸連結機構が認定済みの昇降路戸ロック装置の一部であるので、これは利点である。昇降路戸ロック装置の変更は、新しい認定を必要とする場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごが乗り場に着床して戸が閉じられている状態を模式的に示す概略図である。
【図2】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごが乗り場に着床して戸が閉じられている状態を示す正面図である。
【図3】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごが乗り場に着床して戸が閉じられている状態を示す側面図である。
【図4】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるランプの取り付け状態を説明する斜視図である。
【図5】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるランプの取り付け状態を説明する側面図である。
【図6】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるランプの取り付け状態を説明する正面図である。
【図7】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域内で、ローラがランプに接触するまで、部分的に開いている状態を模式的に示す概略図である。
【図8】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域内で、ローラがランプに接触するまで、部分的に開いている状態を示す正面図である。
【図9】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域内で、ローラがランプに接触するまで、部分的に開いている状態を示す側面図である。
【図10】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域内で、ラッチが解除された状態で、部分的に開いている状態を模式的に示す概略図である。
【図11】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域内で、ラッチが解除された状態で、部分的に開いている状態を示す正面図である。
【図12】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域外で部分的に開いている状態を模式的に示す概略図である。
【図13】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域外で部分的に開いている状態を示す正面図である。
【図14】図13のA部拡大図である。
【図15】この発明の実施例1に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域外で部分的に開いている状態を示す側面図である。
【図16】この発明の実施例2に係るエレベータのかごの戸ロック装置の標準設定位置での状態を示す正面図である。
【図17】この発明の実施例2に係るエレベータのかごの戸ロック装置の標準設定位置での状態を示す側面図である。
【図18】この発明の実施例2に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域外で部分的に開いている状態を示す正面図である。
【図19】この発明の実施例2に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるかごの戸がロック解除区域外で部分的に開いている状態を示す側面図である。
【図20】この発明の実施例3に係るエレベータのかごの戸ロック装置における戸の閉動作状態を示す正面図である。
【図21】図20のB部拡大図である。
【図22】この発明の実施例3に係るエレベータのかごの戸ロック装置における戸の閉動作状態を示す側面図である。
【図23】この発明の実施例3に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるカムの取り付け構造を説明する正面図である。
【図24】この発明の実施例3に係るエレベータのかごの戸ロック装置におけるカムの取り付け構造を説明する側面図である。
【図25】この発明の実施例4に係るエレベータのかごの戸ロック装置を模式的に示す概略図である。
【図26】この発明の実施例5に係るエレベータのかごの戸ロック装置を模式的に示す概略図である。
【図27】この発明の実施例6に係るエレベータのかごの戸ロック装置を模式的に示す概略図である。
【図28】従来のエレベータのかごの戸ロック装を模式的に示す構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごが乗場区域外にある時に該かごの引き戸をロックするエレベータのかごの戸ロック装置において、
各乗場位置で昇降路内に取り付けられたランプと、
上記かごに取り付けられたロック機構部と、を備え、
上記ロック機構部は、
上記戸と一緒に移動する静止ラッチと、
上記戸と一緒に移動する第1カムと、
上記かごに取り付けられたレバー機構と、を備え、
上記レバー機構は、
一端を上記かごに第1ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられて、戸開方向に水平に延びるロック位置と該ロック位置から上側に所定角度回動したロック解除位置とをとるスライダロッドと、
上記スライダロッドが上記ロック位置にある時に上記静止ラッチと係合可能に、かつ、上記スライダロッドが上記ロック解除位置にある時に上記静止ラッチと係合しないように、該スライダロッドと一体に配設されたラッチと、
上記スライダロッドに沿って移動可能に配設されたスライダと、
上記第1ヒンジ点と上記スライダとの間の位置の下方に第2ヒンジ点周りに回転可能に配設された第1ローラと、
一端を上記第1ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられ、かつ、他端を上記第2ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられて、上記第1および第2ヒンジ点間に架設された第1レバーと、
一端を上記第2ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられ、他端を上記スライダに第3ヒンジ点周りに回動可能に取り付けられて、上記第2および第3ヒンジ点間に架設された第2レバーと、
上記スライダに上記第3ヒンジ点周りに回転自在に取り付けられた第2ローラと、を備え、
上記かごが乗り場区域外にある時に、上記戸の開移動と一緒に移動する上記第1カムの移動力が上記第1ローラに伝達されると、上記スライダが上記第1カムの移動に連動して上記スライダロッドに沿って戸開方向に移動して上記スライダロッドを上記ロック位置に保持し、上記戸の開移動と一緒に移動する上記静止ラッチが上記ラッチに係合して該戸の開動作を阻止し、
上記かごが乗り場区域内にある時に、上記戸の開移動と一緒に移動する上記第1カムの移動力が上記第1ローラに伝達されると、上記スライダが上記第1カムの移動に連動して上記スライダロッドに沿って戸開方向に移動して上記第2ローラを上記ランプに当接させ、その後の上記第1カムの移動により上記スライダロッドが上記ロック位置から上記ロック解除位置まで回動して上記静止ラッチを上記ラッチと係合することなく通過させ、上記戸の開動作を可能とするように構成されていることを特徴とするエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項2】
上記第2ローラは、上記戸の全閉時に上記ランプと接触しないことを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項3】
上記第1カムは、上記かごが乗り場区域内にある時に、上記静止ラッチを上記ラッチと係合することなく通過させる時のみ上記スライダロッドを上記ロック解除位置まで回動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項4】
上記第1カムは、上記かごが乗り場区域内にある時に、上記静止ラッチの上記ラッチを通過する時から戸全開時までの上記戸の移動経路全体で、上記スライダロッドを上記ロック解除位置に保持するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項5】
上記レバー機構は、上記スライダを上記スライダロッドに沿って移動させる駆動力が、上記スライダロッドを上記ロック位置から上記ロック解除位置に回動させる回動力より大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項6】
上記ランプが、昇降路の戸枠の三方枠の背後で、かつ、入口に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項7】
上記戸と一緒に移動する第2カムを備え、上記第2カムは、上記戸の閉動作の移動経路の最終部分で、上記第1ローラと協働して、上記スライダロッドを上記ロック解除位置から上記ロック位置に回動させる駆動力を発生させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項8】
上記第1ローラの軸部材が上記第2カムに接触するように延出され、軸部材が上記第2カムの移動に連動して該第2カムに接触しつつ移動して上記スライダロッドを上記ロック解除位置から上記ロック位置に回動させる駆動力を発生させることを特徴とする請求項7記載のエレベータのかごとロック装置。
【請求項9】
上記レバー機構は、上記戸の開動作の開始時、上記スライダロッドの上記ロック位置から上記ロック解除位置への回動力を上記スライダの上記スライダロッドに沿った移動力に変換するスライダ移動力発生手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。
【請求項10】
上記レバー機構は、上記かごが乗り場区域外にある時に、上記静止ラッチが全閉位置から上記ラッチに係合する位置に移動するまでの上記スライダの移動経路の最終部分の間、上記スライダロッドの上記ロック位置から上記ロック解除位置への回動動作を阻止する回動阻止手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのかごの戸ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2008−528399(P2008−528399A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520540(P2006−520540)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001638
【国際公開番号】WO2006/080094
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】