説明

エレベータのドア制御装置

【課題】経年変化によるスイッチの動作位置異常に、ドア開閉速度の減速を要することなく、かつ迅速に対応できるエレベータのドア制御装置の提供。
【解決手段】エレベータの出入口に開閉可能に設置されるドアの全開位置を検出する第1のスイッチ2と、ドア1の全閉位置を検出する第2のスイッチ3とを有するエレベータのドア制御装置において、第1のスイッチ2及び第2のスイッチ3の動作位置を記憶する記憶手段(RAM)と、第1のスイッチ2及び第2のスイッチ3の動作位置に基づきドア1の速度指令を作成する速度指令手段(MPU)とを設け、第1のスイッチ2及び第2のスイッチ3の動作位置の変化を検出し、ドア1の速度指令値の作成パターンを補正し、経年変化による第1のスイッチ2及び第2のスイッチ3の動作位置異常に、ドア開閉速度の減速を要することなく対応するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアに係るスイッチの動作位置異常に対応するエレベータのドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータのドア開端付近に配置され、ドアの全開位置を検出する第1のスイッチ、及び、ドア閉端付近に配置され、ドアの全閉位置を検出する第2のスイッチは、ドアの絶対位置を検出するためのスイッチであり、取付けに際して微小な調整を要する。また、エレベータ初期設置時にそれぞれのスイッチを正常な位置に取付けても、経年変化により取付け位置、即ち、動作位置が変化すると制御異常となり、戸当たり音の増大、ドア開端、及びドア閉端付近の速度異常が発生する。
【0003】
そこで、従来、戸開時のドアの減速開始位置を検出する開用減速開始点検出スイッチ(ODS)と前述した第1のスイッチとの距離、 戸閉時のドアの減速開始位置を検出する閉用減速開始点検出スイッチ(CDS)と前述した第2のスイッチとの距離をそれぞれ記憶し、あらかじめ設定した動作位置のデータと実際の動作位置のデータとの比較を行い、スイッチの動作位置の不良を検出するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3−152084号公報(第2頁〜第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したエレベータのドア制御装置では、エレベータのドア開閉に伴い、減速開始点検出スイッチが戸当たり側に変化したと判断した場合、ドア開閉速度を減速し異常に対応するようになっており、このドア開閉速度の減速に伴いエレベータのサービス機能低下を招くという問題があった。
【0005】
また、減速開始点検出スイッチが戸当たり発生側に移動したという異常が発生しても外部に報知されることなく運転が継続され、したがって、サービス機能低下が継続したままとなるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、経年変化によるスイッチの動作位置異常に、ドア開閉速度の減速を要することなく、かつ迅速に対応することのできるエレベータのドア制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、エレベータの出入口に開閉可能に設置されるドアの全開位置を検出する第1のスイッチと、前記ドアの全閉位置を検出する第2のスイッチとを有するエレベータのドア制御装置において、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置を記憶する記憶手段と、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置に基づき前記ドアの速度指令を作成する速度指令手段とを設け、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置の変化を検出し、前記ドアの速度指令値の作成パターンを補正することを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、第1のスイッチ及び第2のスイッチの動作位置の変化を検出し、この変化に応じてドアの速度指令値の作成パターンを補正することにより、経年変化によるスイッチの動作位置異常に、ドア開閉速度の減速を要することなく対応することができる。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置の変化は、エレベータ初期設置時における前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置からの距離に基づき判断することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明では、第1のスイッチ及び第2のスイッチの動作位置の変化を、エレベータ初期設置時における第1のスイッチ及び第2のスイッチの動作位置からの距離に基づき判断し、ドアの速度指令値の作成パターンに反映する。これにより、スイッチの動作位置の変化に応じた速度指令値とし、ドアの制御性能を適切なものに維持することができる。
【0011】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記ドアの速度指令値を変更するとき、前記ドアの異常状態を外部に報知する報知手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明では、ドアの速度指令値を変更する際、報知手段により外部にドアの異常状態を報知する。これによって、経年変化によるスイッチの動作位置異常に装置側で対応しつつ、保守作業を外部に促し異常状態の抜本的解消を早期に実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、経年変化によるスイッチの動作位置異常に、ドア開閉速度の減速を要することなく対応することができ、これによって、エレベータのサービス機能を保持することができる。また、報知手段により外部にドアの異常状態を報知することにより、経年変化によるスイッチの動作位置異常に装置側で対応しつつ、保守作業を外部に促し異常状態の抜本的解消を早期に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るエレベータのドア制御装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係るエレベータのドア制御装置の一実施形態を示す全体構成ブロック図、図2はエレベータのドアの開閉動作を、横軸にドアの移動距離、縦軸にドア速度として示した説明図、図3は第1のスイッチ及び第2のスイッチの動作位置の異常を判定するためのフローチャートである。
【0016】
エレベータは図1に示すように、エレベータの出入口に開閉可能に設置されるドア1と、このドア1の全開位置を検出する第1のスイッチ、即ち、開端検出スイッチ2(以後OLSと称す。)と、ドア1の全閉位置を検出する第2のスイッチ、即ち、閉端検出スイッチ3(以後CLSと称す)とが設置されている。また、ドア1を駆動するモータ4と、モータ4を駆動制御するMPU5と、MPU5の周辺回路であるRAM6と、入出力バッファ(I/O)7と、モータ4に取付けられ、モータ4の回転速度を検出し、入出力バッファ7を介して回転速度信号をMPU5に出力する回転速度検出手段8とを備えている。そして、OLS2及びCLS3の動作信号、エレベータ制御装置9から出力されるドア1の開指令信号及び閉指令信号が入出力バッファ7を経由してMPU5に入力されるようになっている。なお、前述したOLS2及びCLS3の動作位置を記憶する記憶手段は、RAM6からなるとともに、OLS2及びCLS3の動作位置に基づきドア1の速度指令を作成する速度指令手段は、MPU5からなっている。
【0017】
本実施形態にあっては、エレベータ据付け後、ドア1に設置されているOLS2及びCLS3の調整を行い、図2に示すように、OLS2及びCLS3が正常に取付けられている場合の速度パターンを正常速度パターン10とする。そして、正常速度パターン10であるときの、OLS動作位置11、CLS動作位置12の位置を、モータ4の回転速度検出手段8からの検出信号を入出力バッファ7を経由してMPU5に入力し、ドア位置データに変換を行い、RAM6にデータを初期設定時データとして保存する。更に、OLS2及びCLS3の初期設定時データに対して、現時点のOLS2及びCLS3の位置データが正常であるかどうかを判断するためのOLS設定許容範囲13及びCLS設定許容範囲14を作成する。即ち、OLS2及びCLS3の動作位置の変化は、エレベータ初期設置時におけるOLS2及びCLS3の動作位置からの距離に基づき判断されるとともに、速度指令値をOLS2及びCLS3の動作位置の変化に応じたものとし、ドア1の制御性能を適切なものに維持するようになっている。
【0018】
経年変化などにより、例えば、OLS動作位置11が開端側に変化し、OLS動作位置11がOLS設定許容範囲13の範囲外となるとドア1の減速が遅れ、戸当たり音の増大が生じサービス機能低下に繋がる。また、例えば、CLS動作位置12が閉端側から離れる方向に変化し、CLS動作位置12がCLS設定許容範囲14の範囲外となるとドア1の開き始めの速度が遅く、サービス機能低下に繋がる。そこで、本実施形態では、OLS動作位置11が開端側に変化してOLS設定許容範囲13の範囲外となると、OLS位置異常と判断し、正常速度パターン10からOLS動作位置異常時速度パターン15に補正し、戸当たり音の増大を防止する。一方、CLS動作位置12が閉端側から離れる方向に変化してCLS設定許容範囲14の範囲外となると、CLS位置異常と判断し、正常速度パターン10からCLS動作位置異常時速度パターン16に補正する。
【0019】
OLS2及びCLS3の動作位置の異常は次のようにして判定される。図3に示すように、手順S1としてドア開指令がONし、CLS3の動作信号がMPU5に入力されると、手順S2としてCLS動作位置12の位置データが正常であるか、即ち、CLS設定許容範囲14の範囲内にあるかどうかの判定を行う。このとき、例えば、CLS動作位置12が閉端側から離れる方向に変化し、CLS動作位置12の位置データがCLS設定許容範囲14の範囲外にあり異常であることが判定されると、手順S4に示すようにCLS位置異常フラグをONとする。CLS位置異常フラグがONすると、手順S5として次回のドア開閉時からはCLS位置データ補正を行い、図2に示したように、正常速度パターン10からCLS動作位置異常時速度パターン16に変更する。また、手順S6に示すように位置データ異常を外部に発報し、CLS3の取付け位置の再調整を促す。
【0020】
一方、手順S2における判定の結果、正常である場合、次へ進み、OLS2の動作信号がMPU5に入力されることに応じて、手順S3としてOLS動作位置11の位置データが正常であるか、即ち、OLS動作位置11がOLS設定許容範囲13の範囲内にあるかどうかの判定を行う。このとき、例えば、OLS動作位置11が開端側に変化し、OLS動作位置11がOLS設定許容範囲13の範囲外にあり異常であることが判定されると、手順S7に示すようにOLS位置異常フラグをONとする。OLS位置異常フラグがONすると、手順S8として次回のドア開閉時からはOLS位置データ補正を行い、図2に示したように、正常速度パターン10からOLS動作位置異常時速度パターン15に変更する。また、手順S6に示すように位置データ異常を外部に発報し、OLS2の取付け位置の再調整を促す。
【0021】
本実施形態によれば、経年変化によるOLS2及びCLS3の動作位置異常に、ドア開閉速度の減速を要することなく対応することができ、これによって、エレベータのサービス機能を保持することができる。また、外部にドア1の異常状態を報知することにより、経年変化によるOLS2及びCLS3の動作位置異常に装置側で対応しつつ、保守作業を外部に促し異常状態の抜本的解消を早期に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るエレベータのドア制御装置の一実施形態を示す全体構成ブロック図である。
【図2】エレベータのドアの開閉動作を、横軸にドアの移動距離、縦軸にドア速度として示した説明図である。
【図3】第1のスイッチ及び第2のスイッチの動作位置の異常を判定するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1 ドア
2 開端検出スイッチ(第1のスイッチ)
3 閉端検出スイッチ(第2のスイッチ)
4 モータ
5 MPU
6 RAM
7 入出力バッファ
8 回転速度検出手段
9 エレベータ制御装置
10 正常速度パターン
11 OLS動作位置
12 CLS動作位置
13 OLS設定許容範囲
14 CLS設定許容範囲
15 OLS動作位置異常時速度パターン
16 CLS動作位置異常時速度パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの出入口に開閉可能に設置されるドアの全開位置を検出する第1のスイッチと、前記ドアの全閉位置を検出する第2のスイッチとを有するエレベータのドア制御装置において、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置を記憶する記憶手段と、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置に基づき前記ドアの速度指令を作成する速度指令手段とを設け、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置の変化を検出し、前記ドアの速度指令値の作成パターンを補正することを特徴としたエレベータのドア制御装置。
【請求項2】
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置の変化は、エレベータ初期設置時における前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチの動作位置からの距離に基づき判断することを特徴とした請求項1記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項3】
前記ドアの速度指令値を変更するとき、前記ドアの異常状態を外部に報知する報知手段を備えたことを特徴とした請求項1記載のエレベータのドア制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−292577(P2009−292577A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146965(P2008−146965)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】