説明

エレベータのプライバシー保護システム

【課題】乗りかごに乗った利用者の任意の操作により、その乗りかごの移動位置を非表示にして、利用者がどの階で降りたかをエレベータ乗り場における第三者に知られることのないエレベータのプライバシー保護システムを提供することにある。
【解決手段】建物の各階のエレベータ乗り場には、乗りかご12の移動位置を逐次表示するかご位置表示灯が設けられている。乗りかご12内には、乗りかご12に乗った利用者が任意に操作するプライバシー保護ボタン(PBボタン)20が設けられている。プライバシー保護ボタン(PBボタン)20を操作すると、制御盤25による制御で各階のエレベータ乗り場のかご位置表示灯の機能が停止し、かご位置の表示が非表示となり、この状態で乗りかごが行先階に移動する。したがって、利用者が降りる乗りかごの行先階がエレベータ乗り場の第三者に知られることがなく、プライバシーが保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンションなどの建物に設置されるエレベータの利用者のプライバシーを守る保護システムに係り、特にエレベータ利用者が一人で乗りかごに乗り込んで自分の居住階に移動しようとするときに、その居住階をエレベータ乗り場の第三者に知られないようにするプライバシー保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各階のエレベータ乗り場には、乗りかごの位置を点灯表示するかご位置表示装置が設けられている。そして、エレベータ利用者が乗りかごに乗り、かご内操作盤の行先階ボタンを操作して行先階を登録すると、乗りかごがその登録された行先階に向って移動して目的の行先階で停止する。この際、エレベータ乗り場のかご位置表示装置には乗りかごの位置(階床)が逐次点灯表示され、したがって乗りかごが停止した階床をそのエレベータ乗り場において知ることができる。
【0003】
ところで、マンションなどの集合住宅において、特に一人住いの若い女性などにあっては、プライバシーを守り、犯罪を防止する観点から、一人で乗りかごに乗って自分の居住階に移動しようとするときに、第三者(不審者)に自分が降りる階床、つまり居住階を知られたくないと言う要望がある。
【0004】
このため、乗りかごに乗ったときに、かご内操作盤の各階床の行先階ボタンを操作し、乗りかごを各階で停止させ、自分が降りる階床が第三者に分からないようにする手段が採られることがある。しかしながら、この手段では、乗りかごが各階床で停止するため利便性に欠け、またエレベータの運行効率が大幅に低下していしまう。
【0005】
特開平7−25555号公報には、エレベータ利用者のプライバシーを保護するためのシステムが開示されている。このシステムは、ある階床で利用者が乗りかごに乗り、かご内操作盤を操作して目的の行先階を登録したときに、その行先階のエレベータ乗り場に第三者が待機しているような場合に、その旨を乗りかご内の利用者に報知し、この報知に基づいて行先階を変更することで、乗りかご内の利用者がエレベータ乗り場で第三者と出会うことを避けてプライバシーを保護するようにしたものである。
【特許文献1】特開平7−25555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開平7−25555号公報のものでは、乗りかごに乗った利用者がエレベータ乗り場で第三者と出会わないようにして利用者のプライバシーを保護するだけで、乗りかごに乗った利用者がどの階に向ったかをエレベータ乗り場における第三者に知られないようにするプライバシーについては保護されない。
【0007】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、乗りかごに乗った利用者の任意の操作により、その乗りかごの移動位置を非表示にして、利用者がどの階で降りたかをエレベータ乗り場における第三者に知られることのないエレベータのプライバシー保護システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、建物の各階のエレベータ乗り場に設けられ、乗りかごの移動位置を逐次表示するかご位置表示手段と、乗りかご内に設けられ、乗りかご内に乗った利用者が任意に操作するプライバシー保護ボタンと、前記乗りかごの運行を制御し、かつ前記プライバシー保護ボタンが操作されたときに、前記各階のエレベータ乗り場のかご位置表示手段の機能を停止させる制御を行なう制御手段とを具備することを特徴としている。
請求項2の発明は、前記制御手段が、乗りかごが一つの階で停止しているもとで前記プライバシー保護ボタンが操作されたときに、他の階のエレベータ乗り場でかご呼びの操作があったときには、そのかご呼びに応答せずに乗りかごの運行を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、乗りかごに乗った利用者の任意の操作により、その乗りかごの移動位置を非表示にして、利用者がどの階で降りたかをエレベータ乗り場における第三者に知られることがなく、したがって利用者のプライバシーを守れ、かつ防犯に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1にはマンションの各階のエレベータ乗り場1の外観を示してある。エレベータ乗り場1における壁面には三方枠2を備える乗降口3が設けられ、この乗降口3にその開閉用の乗り場ドア装置4が設けられている。乗り場ドア装置4は、例えば一対のドアパネル5が左右に移動して乗降口3を開閉する両開き式構造となっている。
【0012】
乗り場1の壁面には、三方枠2の側方に位置して乗り場操作盤7が据え付けられている。この乗り場操作盤7には、乗りかご12をエレベータ乗り場1に呼ぶためのかご呼びボタン8、及び乗りかご12の位置を表示するかご位置表示手段としてのかご位置表示灯9が設けられている。
【0013】
図2には乗りかご12の内部構造を示してある。乗りかご12は前面に出入口13を有し、この出入口13にその開閉用のかごドア装置14が設けられている。かごドア装置14は、一対のドアパネル15が左右に移動して出入口13を開閉する両開き式構造となっている。
【0014】
乗りかご12の前面壁には、出入口13の側方に位置してかご操作盤18が取り付けられている。このかご操作盤18には、乗りかご12の行先階を登録するための複数の行先階ボタン19、乗りかご12に乗った利用者が任意に操作するプライバシー保護ボタン(PBボタン)20、かごドア装置14を開閉操作するための開閉ボタン21、乗りかご12の位置を表示するかご位置表示灯22、及び非常時にエレベータ管理センタに緊急通報するための非常呼びボタン23が設けられている。また、乗りかご12の天井部には照明装置24が設けられている。
【0015】
乗り場操作盤7及びかご操作盤18は、図1及び図2に示すように、エレベータの運行を管理及び制御する制御手段としての制御盤25に接続されている。制御盤25は、例えば乗りかご12が昇降移動する昇降路(図示せず)内に設けられている。
【0016】
次に、このエレベータの動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0017】
例えば基準階としての1階に乗りかご12が着床して停止しているときに、その乗りかご12内にエレベータ利用者が乗り込むと(S1)、その利用者がプライバシー保護ボタン(PBボタン)20を操作したかが制御盤25により判断され(S2)、操作がないときには、次に利用者が行先階ボタン19を操作したかが判断され(S3)、操作があったときにはその行先階が登録され、この登録に応じて制御盤25による制御で、かごドア装置14が閉じ、乗りかご12が登録された行先階に向って移動し、その行先階で停止してかごドア装置14が開く通常運転が実行される(S4)。この通常運転時には、各エレベータ乗り場1におけるかご位置表示灯9に乗りかご12の移動位置が逐次表示される。
【0018】
一方、マンションの居住者が例えば深夜に一人で帰宅し、基準階の1階から乗りかご12に乗ったときに、自分の行先階(居住階)をエレベータ乗り場1の第三者に知られたくないような場合には、S2において、PBボタン20を操作する。この操作により、乗りかご12に乗った利用者がPBボタン20を操作したと制御盤25により判断される(S2)。引き続き、利用者が行先階ボタン19を操作したかが判断され(S5)、操作があったときにはその行先階が登録される。
行先階が登録されたときには、制御盤25による制御で各階のエレベータ乗り場1におけるかご位置表示灯9の機能が停止する。すなわち、各階のエレベータ乗り場1のかご位置表示灯9が消灯し、かご位置が非表示となる(S6)。
【0019】
次に、基準階である1階以外の他階のエレベータ乗り場1において、かご呼びボタン8の操作によるかご呼びがあるかが判断される(S7)。かご呼びがないときには、かごドア装置14が閉じ、乗りかご12がS5で登録された行先階に向って移動して停止する(S8)。そしてかごドア装置14が開き、利用者が降りる。この乗りかご12の運転時には、S6の処理により、各エレベータ乗り場1のかご位置表示灯9の機能が停止してかご位置が非表示となっており、したがってエレベータ乗り場1に第三者がいても、その第三者は利用者が乗った乗りかご12が何階で停止し、利用者が何階で降りたかを知ることができない。つまり、利用者の居住階が第三者に知られることがなく、利用者のプライバシーが保護される。なお、乗りかご12が行先階に向って移動するときには、かご操作盤18におけるかご位置表示灯22には乗りかご12の位置が逐次表示される。
【0020】
S8で乗りかご12が停止して利用者が降りた後には、制御盤25による制御で乗りかご12が例えば基準階に帰着し(S9)、さらに各エレベータ乗り場1のかご位置表示灯9の機能の停止状態が解除され、かご位置表示灯9が点灯し(S10)、通常運転状態に戻る(S11)。
S7において、他階でのかご呼びがあると判断されたときには、そのかご呼びに応答せずに、乗りかご12がS5で登録された行先階に向って移動して停止する(S12)。この際、各エレベータ乗り場1のかご位置表示灯9の機能が停止してかご位置が非表示となっているから、利用者が乗った乗りかご12がどの階で停止し、利用者がどの階で降りたかを知ることができない。
【0021】
そして、他階でかご呼びがあっても、それに応答せずに乗りかご12が移動するから、乗りかご12が登録された行先階に移動する途中で停止して、乗りかご12に第三者が乗り込むようなことがなく、したがって乗りかご12内で利用者と第三者とが出会うことがなく、利用者のプライバシーが守られる。
乗りかご12が登録された行先階で停止し(S12)、利用者が乗りかご12から降りた後には、乗りかご12が基準階に帰着し(S13)、さらに各エレベータ乗り場1のかご位置表示灯9の機能の停止状態が解除され、かご位置表示灯9が点灯する(S14)。
この後、他階でのかご呼びに応答し(S15)、乗りかご12がそのかご呼びのエレベータ乗り場1に移動し、通常運転状態に戻る(S16)。
以上のように本実施形態によれば、乗りかご12に乗った利用者がプライバシー保護ボタン(PBボタン)20を操作することにより、各エレベータ乗り場1のかご位置表示灯9の機能を一時的に停止して乗りかご12の移動位置を非表示にすることができ、したがって利用者がどの階で降りたかをエレベータ乗り場1における第三者に知られることがなく、利用者のプライバシーを守れ、また防犯にも役立つ。
プライバシー保護ボタン(PBボタン)20の操作は任意であり、したがって例えば昼間などにおいて、乗りかご12に複数の利用者が乗り込んでエレベータを利用するような場合には、プライバシー保護ボタン(PBボタン)20を操作せずに通常運転で運行し、各階のエレベータ乗り場1で待機する利用者にかご位置を表示することが可能で、これにより各階のエレベータ乗り場1で待機する利用者に不便をかけるようなことを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態を示すエレベータ乗り場の外観斜視図。
【図2】この発明の一実施形態を示す乗りかごの内部構造の外観斜視図。
【図3】この発明の一実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0023】
1…エレベータ乗り場
3…乗降口
4…乗り場ドア装置
7…乗り場操作盤
8…かご呼びボタン
9…かご位置表示灯
13…出入口
14…かごドア装置
18…かご操作盤
19…行先階ボタン
20…プライバシー保護ボタン
25…制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各階のエレベータ乗り場に設けられ、乗りかごの移動位置を逐次表示するかご位置表示手段と、
乗りかご内に設けられ、乗りかご内に乗った利用者が任意に操作するプライバシー保護ボタンと、
前記乗りかごの運行を制御し、かつ前記プライバシー保護ボタンが操作されたときに、前記各階のエレベータ乗り場のかご位置表示手段の機能を停止させる制御を行なう制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータのプライバシー保護システム。
【請求項2】
前記制御手段は、乗りかごが一つの階で停止しているもとで前記プライバシー保護ボタンが操作されたときに、他の階のエレベータ乗り場でかご呼びの操作があったときには、そのかご呼びに応答せずに乗りかごの運行を制御することを特徴とする請求項1に記載のエレベータのプライバシー保護システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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