説明

エレベータの乗り場敷居装置

【課題】この発明は、敷居を簡易に据え付けられるとともに、敷居の下降を確実に防止できるエレベータの乗り場敷居装置を得る。
【解決手段】ベース板4の基部5が円形の穴7aに通されたアンカーボルト17を締着して固定され、敷居固定取付金8の底板部9が基部5上に重ねられ、細長の穴12aに通されたアンカーボルト17により上下方向に移動可能に固定されている。ジャッキボルト18が受け部6に固着されたナット19に螺合されて受け板部11を押圧可能に配設されている。さらに、敷居受け金13が取付腕14を敷居固定取付金8の側板部10に奥行き方向に移動可能に締着されている。そして、敷居受け金13の締結腕15が敷居の下面に対面し、ボルトにより敷居に締着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗り場の戸を案内する敷居装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗り場敷居装置は、出入り口の下縁部に配置され、下面に横断面鳩尾状をなす縦通溝が形成された敷居と、溝形に形成され、その底面が上下方向の溝穴を介してアンカーボルトにより出入り口の下縁部壁面に締結された第1取付具と、L字状の一辺からなる取付面を第1取付具の溝形の側壁からなる突出面に重合して配置されて突出面に沿う方向に移動可能に締結され、他片からなる締結面が敷居下面に対面するとともに中高に湾曲成形されている第2取付具と、縦通溝に係合され、縦通溝の長手方向に移動可能に設けられ、かつ締結面に設けられた溝穴に挿通されて第2取付具および敷居を締結した締結具と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公昭60−6535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの乗り場敷居装置では、敷居の据え付け時の芯出し作業において、第1取付具と第2取付具とを仮固定した後、第1取付具をハンマーで叩いて上下方向に移動させて敷居の上下方向の位置を調整していたので、敷居の据え付け調整が面倒で、長い作業時間が必要であった。
また、第1取付具は、アンカーボルトをその底面に設けられた上下方向の溝穴に通して壁面に締着して取り付けられているので、荷重が敷居にかかって、経年で敷居が下がり、段差が発生する恐れがあった。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、敷居を簡易に据え付けられるとともに、敷居の下降を確実に防止できるエレベータの乗り場敷居装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるエレベータの乗り場敷居装置は、乗り場の出入り口の下縁部に配設され、下面に開口する縦通溝が設けられた敷居と、基部が上記出入り口の下部の昇降路壁に該昇降路壁に沿う方向の移動を規制されてアンカーボルトにより締結され、該基部のアンカーボルト固定位置の下方位置から昇降路側に突設された受け部を有するベース板と、底板部が上記ベース板の基部に重ねて配置されて上下方向に移動可能に上記アンカーボルトにより締結され、該底板部のアンカーボルト固定位置の下方位置から上記受け部の上方位置で、かつ該受け部と相対するように突設された受け板部および該底板部のアンカーボルト固定位置の左右方向の少なくとも一側から突設されて上下方向に配置された側板部を有する敷居固定取付金と、L字状に成形され、該L字状の一辺が上記側板部に重ねて配置されて奥行き方向に移動可能に締結され、該L字状の他辺が上記敷居の下面に対面する敷居受け金と、上記縦通溝に係合され該縦通溝の長手方向に移動可能に設けられ、かつ上記敷居受け金のL字状の他辺に設けられた穴に挿通されて上記敷居と上記敷居受け金とを締結する締結具と、上記受け部に設けられて、上記受け部と上記受け板部との間隔を拡大して上記敷居固定取付金を上方に移動させる敷居固定取付金移動手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、ベース板の基部が昇降路壁に該昇降路壁に沿う方向の移動を規制されてアンカーボルトにより締結されているので、荷重が敷居にかかって、経年で敷居が下がるような不具合が未然に防止される。
また、ベース板の基部に重ねて配置された敷居固定取付金の底板部が上下方向に移動可能にアンカーボルトにより締結され、敷居固定取付金移動手段が受け部と受け板部との隙間を拡大できるように設けられている。そこで、敷居固定取付金移動手段により、受け部と受け板部との間の隙間が拡大させると、敷居固定取付金を上方向に移動させることができる。これにより、ハンマーを用いた敷居の上下方向の位置調整作業が不要となり、敷居を簡易に据え付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ乗り場敷居装置を昇降路側から見た正面図、図2は図1のII−II矢視断面図、図3はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ乗り場敷居装置の構成を説明する分解斜視図である。なお、図1において、便宜的に、出入り口1の間口方向を左右方向、出入り口1の高さ方向を上下方向(鉛直方向)、紙面に垂直の方向を奥行き方向とする。
【0009】
図1乃至図3において、敷居2は、下面に横断面鳩尾状の縦通溝2aが形成され、エレベータの乗り場の出入り口1の下縁部に配設されている。
ベース板4は、鋼板を屈曲成形され、矩形状の基部5と、基部5の一辺から直角に起立された受け部6と、から構成されている。このベース板4は、受け部6側を下方に向けて、基部5を出入り口1の下部に位置する昇降路壁3に密接して配設される。基部5には、アンカーボルト17が挿通される2つの円形の穴7aが、基部5の受け部6を挟む二辺間の中央位置、即ち基部5の左右方向の中央位置に、上下方向に互いに離間して穿設されている。また、受け部6は、基部5から昇降路側に突出し、かつ左右方向に延設され、ジャッキボルト18が挿入される1つの円形の穴7bが、左右方向の中央位置に穿設されている。さらに、ナット19が受け部6の外壁面に穴7bと同軸に固定されている。ここで、穴7a,7bの穴中心は、同一平面上に位置している。
【0010】
敷居固定取付金8は、鋼板を屈曲成形され、矩形状の底板部9と、底板部9の相対する両辺から直角に、かつ互いに平行に起立された一対の側板部10と、底板部9の残る二辺の一方の辺から直角に起立された受け板部11と、から構成されている。この敷居固定取付金8は、受け板部11側を下方に向けて、底板部9をベース板4の基部5上に載置して配設される。底板部9には、アンカーボルト17が挿通される2つの細長の穴12aが、一対の側板部10間の中央位置、即ち左右方向の中央位置で、穴の長軸方向を上下方向として、上下方向に互いに離間して穿設されている。この時、2つの穴12aの穴中心間隔が、ベース板4の基部5に穿設された2つの穴7aの穴中心間隔に一致している。受け板部11は、底板部9から昇降路側に突出し、かつ受け部6と相対して左右方向に延設されている。一対の側板部10は、底板部9から昇降路側に突出し、相対して平行に上下方向に延設されている。各側板部10には、2つの細長の穴12bが、穴の長軸方向を上下方向および左右方向に直交する奥行き方向として、上下方向に互いに離間して穿設されている。
【0011】
この敷居固定取付金8は、穴12a,7aに通したアンカーボルト17を締着して、ベース板4と共に昇降路壁3に固定される。また、ナット19に螺合されたジャッキボルト18の先端が受け板部11に当接している。ここで、ジャッキボルト18および受け部6に固着されたナット19が敷居固定取付金移動手段を構成する。
【0012】
敷居受け金13は、細長の鋼板を略L字状に屈曲成形され、L字状の一辺からなる平板状の取付腕14と、L字状の他辺からなり、その折り曲げ方向の中央位置が突出する凸状の湾曲板状の締結腕15と、から構成されている。取付腕14には、2つの円形の穴16aが、側板部10に穿設された2つの穴12bに対応するように穿設されている。また、締結腕15には、細長の穴16bが、穴の長軸方向を折り曲げ方向に一致させて穿設されている。そして、敷居受け金13は、取付腕14を側板部10の外壁面に沿わせ、穴12b,16aに挿通された締結ボルト20にナット21を締結して、敷居固定取付金8に取り付けられる。さらに、締結ボルト22が、頭部を敷居2の縦通溝2a内に位置させて、締結腕15の穴16bを挿通され、ナット23が締結ボルト22の締結腕15からの延出部に締着されている。なお、締結腕15の穴16bの長軸方向は、左右方向に一致している。締結ボルト22およびナット23が敷居2と敷居受け金13とを締結する締結具を構成する。
【0013】
このように構成された乗り場敷居装置では、敷居固定取付金8の底板部9に穿設された細長の穴12aの穴の長軸方向が上下方向に一致しているので、敷居固定取付金8は、アンカーボルト17に対して、穴12aの長軸方向に移動でき、敷居固定取付金8の上下方向の位置を調整できる。また、敷居固定取付金8の側板部10に穿設された細長の穴12bの長軸方向が奥行き方向に一致しているので、穴16aに通された締結ボルト20が穴12bの長軸方向に移動でき、敷居受け金13の奥行き方向の位置を調整できる。さらに、敷居2の縦通溝2aの溝方向が左右方向に一致しているので、敷居受け金13の敷居2に対する左右方向の位置を調整できる。これにより、上下方向、左右方向および奥行き方向の3つの方向の位置調整が可能となり、敷居2が、エレベータの乗り場の出入り口1の下縁部に、上面が出入り口1と同一面位置となるように配設できる。
【0014】
また、敷居受け金13の締結腕15に穿設された細長の穴16bの長軸方向が左右方向に一致し、かつ締結腕15が上に凸の湾曲形状に形成されている。そこで、敷居固定取付金8が上下方向に対して僅かに傾斜した状態で昇降路壁3に取り付けられても、敷居2の下面に対する締結腕15の接触位置が穴16bの長軸方向にずれるだけで、敷居2と締結腕15との接触状態は保たれるので、据え付け作業性が向上される。
【0015】
つぎに、このように構成された乗り場敷居装置の据え付け方法について説明する。
まず、下穴を昇降路壁3にあけ、アンカー本体(図示せず)を下穴に入れる。そして、打ち込み棒を使ってアンカー本体を打ち込む。これにより、アンカー本体のスリーブ拡張部が開脚して昇降路壁に食い込み、アンカー本体が固定される。
ついで、穴7aを下穴に合わせて、ベース板4の基部5を昇降路壁3に沿わせ、穴12aを穴7aに合わせて、敷居固定取付金8の底板部9を重ねる。そして、アンカーボルト17を穴12a,7aに通してアンカー本体に締着し、ベース板4および敷居固定取付金8を仮止めする。さらに、ジャッキボルト18をナット19に螺着し、その先端を敷居固定取付金8の受け板部11に当接させる。
【0016】
ついで、穴16aを側板部10の穴12bに重なるように、敷居受け金13を外側から各側板部10に沿わせる。そして、締結ボルト20を穴16a,12bに通し、ナット21を締結ボルト20の延出部に締着し、敷居受け金13を側板部10に仮止めする。
ついで、締結ボルト22を敷居2の縦通溝2a内に挿入し、締結腕15の穴16bに通し、ナット23を締結ボルト22の延出部を締着し、敷居2を敷居受け金13に仮止めする。
【0017】
その後、レンチなどを用いてジャッキボルト18を回して、ジャッキボルト18の受け部6からの延出量を変える。このとき、ベース板4は、円形の穴7aに挿通するアンカーボルト17により下方への移動が阻止される。これにより、敷居固定取付金8は、受け板部11がジャッキボルト18に押圧されて、アンカーボルト17を案内にして上方向に移動する。そして、敷居固定取付金8の上下方向の位置調整が完了すると、アンカーボルト17を増し締めし、敷居固定取付金8およびベース板4を昇降路壁3に固定する。
また、締結ボルト20を穴12b内をその長軸方向に移動させて、敷居受け金13を奥行き方向に移動する。そして、敷居受け金13の奥行き方向の位置調整が完了すると、ナット19を増し締めし、敷居受け金13を敷居固定取付金8に固定する。
また、締結ボルト22を縦通溝2a内を移動させて、締結ボルト22を敷居2と締結腕15との接触位置まで移動させる。そして、ナット23を増し締めし、敷居2と敷居受け金13とを固定する。
【0018】
このように、この実施の形態1によれば、ジャッキボルト18の受け部6からの延出量を変えるだけで、敷居2の上下方向の位置を調整できる。そこで、従来装置で行われていた第1取付具をハンマーで叩いて敷居の上下方向の位置を調整する作業が不要となり、敷居2の据え付け調整が極めて簡易となり、作業時間の短縮が図られ、乗り場敷居の据え付けや保守が容易となる。
【0019】
また、敷居2に作用する荷重は、敷居受け金13、敷居固定取付金8の受け板部11およびジャッキボルト18を介してベース板4で受けられている。そして、アンカーボルト17がベース板4の基部5に穿設された円形の穴7aを挿通して昇降路壁3に打設されたアンカー本体に締着されているので、ベース板5の上下方向の移動が阻止されている。そこで、荷重が敷居2にかかって、経年で敷居2が下がり、段差が発生することが確実に防止される。
【0020】
また、ベース板4が、基部5に穿設された2つの円形の穴7aに挿通されたジャッキボルト18により支持されているので、ベース板4の回動が阻止され、敷居2を長期的に安定して支持することができる。
また、穴7a,7bの穴中心が同一平面上に位置しているので、ジャッキボルト18の押し上げ力が、アンカーボルト17の配列方向の真下から敷居固定取付金8に作用する。そこで、敷居固定取付金8は、アンカーボルト17周りに回動することなく、上下方向に移動するので、敷居固定取付金8の上下方向の位置調整の作業負荷が軽減される。
【0021】
なお、上記実施の形態1では、2本のアンカーボルト17でベース板4を固定するものとしているが、アンカーボルト17の本数は2本に限定されるものではなく、1本でも、3本以上であっても良い。但し、ベース板4の安定した固定を考慮すれば、複数本のアンカーボルト17を用いることがよい。
また、上記実施の形態1では、1本のジャッキボルト18により敷居固定取付金8の上下方向の位置調整を行うものとしているが、ジャッキボルト18の本数は1本に限定されるものではなく、2本以上であっても良い。
【0022】
また、上記実施の形態1では、受け部6が基部5の一辺に屈曲成形されているものとしているが、受け部を基部の一面のアンカーボルト挿入用の穴の下方位置に溶接などにより突設してもよい。
また、上記実施の形態1では、側板部10が底板部9の相対する二辺に屈曲形成されているものとしているが、側板部を底板部の一面のアンカーボルト挿入用の穴の左右方向の両側に溶接などにより突設してもよい。
【0023】
また、上記実施の形態1では、敷居固定取付金移動手段がジャッキボルト18および受け部6に固着されたナット19により構成されているものとしているが、敷居固定取付金移動手段はこの構成に限定されるものではなく、例えばナットを受け板部に固着し、ジャッキボルトをそのナットに螺合させて、ジャッキボルトの延出端を受け部に当接させるようにしてもよい。
また、上記実施の形態1では、側板部10に細長の穴12bを設け、取付腕14に円形の穴16aを設けるものとしているが、側板部10に円形の穴を設け、取付腕に細長の穴を設けてもよい。
【0024】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置の据え付け状態を示す一部破断側面図、図5はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置の据え付け状態を示す要部拡大図、図6はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置に適用されるくさび板を示す斜視図、図7はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置に適用される敷居受け金を示す斜視図である。
【0025】
図4乃至図7において、敷居固定取付金8Aは、アンカーボルト17が挿通される細長の穴12aに代えて円形の穴12cを底板部9に穿設し、受け板部11を不要としている点を除いて、実施の形態1の敷居固定取付金8と同様に構成されている。敷居受け金13Aは、湾曲に成形された締結腕15に代えて締結腕15Aが形成されている点を除いて、実施の形態1の敷居受け金13と同様に構成されている。そして、締結腕15Aは、高さ位置が出入り口1側に向かって徐々に低くなる、奥行き方向に傾斜する平板状に形成され、受け腕25が締結腕15Aの出入り口1と反対側(昇降路側)の端部を上方に屈曲して形成されている。また、細長の穴16cが、穴の長軸方向を奥行き方向に一致させて締結腕15Aに穿設されている。さらに、受け腕25には、U字状の切り欠き26が穴16cの長軸方向に一致する位置に形成されている。
【0026】
くさび板27は、楔状の断面形状をなし、細長の穴28が穴の長軸方向を厚みの増減方向(傾斜方向)に一致させて穿設されている。さらに、ねじ穴29が、穴方向を穴28の長軸方向に一致させて穴28と外部とを連通するようにくさび板27の薄肉部側に形成されている。このくさび板27は、厚みの増減方向を奥行き方向に一致させ、かつ薄肉部側を出入り口1と反対側に向けて、敷居2の下面と締結腕15Aの上面との間に介装されている。そして、くさび板27は、縦通溝2a内から穴28,16cを通された締結ボルト22にナット23を締着して、敷居2と締結腕15Aとの間に加圧挟持されている。ここで、くさび板27は、締結腕15Aの上面に載置された際に、その上面が水平となるくさび形状に形成されている。
【0027】
くさび板引き寄せボルト30は、切り欠き26を挿通してねじ穴29に螺着され、緩み止めナット31を締着して受け腕25に固定されている。ここで、受け腕25、ねじ穴29、くさび板引き寄せボルト30および緩み止めナット31がくさび板移動手段を構成している。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0028】
このように構成された乗り場敷居装置では、2つの円形の穴12cが敷居固定取付金8Aの底板部9に穿設されているので、敷居固定取付金8Aは、穴12cを挿通するアンカーボルト17により、昇降路壁3に沿った方向の移動を阻止されて、昇降路壁3に固定されている。また、くさび板引き寄せボルト30が切り欠き26を挿通してくさび板27のねじ穴29に螺着され、くさび板引き寄せボルト30に螺着された緩み止めナット31が受け腕25の外壁面に当接しているので、くさび板引き寄せボルト30を回転させることにより、くさび板27が締結腕15Aの上面である傾斜面上を移動される。これにより、くさび板27の上面、即ち敷居2の上下方向の位置を調整できる。
【0029】
また、上記実施の形態1と同様に、敷居固定取付金8Aの側板部10に穿設された細長の穴12bの長軸方向が奥行き方向に一致しているので、穴16aに通された締結ボルト20が穴12bの長軸方向に移動でき、敷居受け金13Aの奥行き方向の位置を調整できる。さらに、敷居2の縦通溝2aの溝方向が左右方向に一致しているので、敷居受け金13Aの敷居2に対する左右方向の位置を調整できる。
【0030】
このように、この実施の形態2においても、上下方向、左右方向および奥行き方向の3つの方向の位置調整が可能となり、敷居2を、エレベータの乗り場の出入り口1の下縁部に、上面が出入り口1と同一面位置となるように配設できる。
【0031】
つぎに、このように構成された乗り場敷居装置の据え付け方法について説明する。
まず、下穴を昇降路壁3にあけ、アンカー本体(図示せず)を穴に入れる。そして、打ち込み棒を使ってアンカー本体を打ち込む。これにより、アンカー本体のスリーブ拡張部が開脚して昇降路壁に食い込み、アンカー本体が固定される。
ついで、穴12cを下穴に合わせて、敷居固定取付金8Aの底板部9を昇降路壁3に沿わせる。そして、アンカーボルト17を穴12cに通してアンカー本体に締着し、敷居固定取付金8Aを固定する。
【0032】
ついで、穴16aを側板部10の穴12bに重なるように、敷居受け金13Aを外側から各側板部10に沿わせる。そして、締結ボルト20を穴16a,12bに通し、ナット21を締結ボルト20の延出部に締着し、敷居受け金13Aを側板部10に仮止めする。
ついで、くさび板引き寄せボルト30がねじ穴29に螺着されたくさび板27を受け腕25の上面に載置する。この時、くさび板引き寄せボルト30は、切り欠き26を挿通され、その頭部が昇降路側に延出し、緩み止めナット31が頭部と受け腕25との間に位置している。
ついで、締結ボルト22を敷居2の縦通溝2a内に挿入し、くさび板27の穴28および締結腕15Aの穴16cに通し、ナット23を締結ボルト22の延出部に締着し、敷居2を敷居受け金13Aに仮止めする。
【0033】
その後、締結ボルト20を穴12b内をその長軸方向に移動させて、敷居受け金13Aを奥行き方向に移動する。そして、敷居受け金13Aの奥行き方向の位置調整が完了すると、ナット21を増し締めし、敷居受け金13Aを敷居固定取付金8Aに固定する。
ついで、緩み止めナット31を回して受け腕25の外壁面に当接させ、くさび板引き寄せボルト30を回転させ、くさび板27を引き寄せる。これにより、くさび板27は、締結腕15Aの上面を移動し、敷居2の高さ位置が調整される。そして、敷居2の高さ位置の調整が完了すれば、緩み止めナット31を増し締めし、くさび板27を固定する。さらに、ナット23を増し締めし、敷居2と敷居受け金13Aとを固定する。
【0034】
このように、この実施の形態2によれば、くさび板引き寄せボルト30を回転させてくさび板27の移動量を変えるだけで、敷居2の上下方向の位置を調整できる。そこで、従来装置で行われていた第1取付具をハンマーで叩いて敷居の上下方向の位置を調整する作業が不要となり、敷居2の据え付け調整が極めて簡易となり、作業時間の短縮が図られる。
【0035】
また、敷居2に作用する荷重は、くさび板27および敷居受け金13Aを介して敷居固定取付金8Aで受けられている。そして、アンカーボルト17が敷居固定取付金8Aの底板部9に穿設された円形の穴12cを挿通して昇降路壁3に打設されたアンカー本体に締着されているので、敷居固定取付金8Aの上下方向の移動が阻止されている。そこで、荷重が敷居2にかかって、経年で敷居2が下がり、段差が発生することが確実に防止される。
また、敷居固定取付金8Aの底板部9に穿設した円形の穴12cにアンカーボルト17を通して敷居固定取付金8Aを固定するようにしているので、ベース板4が不要となり、構成の簡素化が図られる。
【0036】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係るエレベータ乗り場敷居装置の据え付け状態を示す要部拡大図、図9はこの発明の実施の形態3に係るエレベータ乗り場敷居装置に適用される敷居受け金を示す斜視図である。
【0037】
図8および図9において、敷居受け金13Bは、締結腕15Aに代えて締結腕15Bが形成されている点を除いて、実施の形態2の敷居受け金13Aと同様に構成されている。そして、締結腕15Bは、切り欠き26に代えてねじ穴32が受け腕25に形成されている点を除いて、締結腕15Aと同様に構成されている。
くさび板27Aは、ねじ穴29に代えて、溝穴33を薄肉部に下面側に開口するように形成し、穴方向を穴28の長軸方向とする貫通穴34を溝穴33と外部とを連通するように薄肉部に形成している点を除いて、上記実施の形態2のくさび板27と同様に構成されている。
【0038】
くさび板引き寄せボルト30は、ねじ穴32に螺着され、その延出端を貫通穴34に挿入されている。そして、C形軸用クリップ35が溝穴33内に挿入されているくさび板引き寄せボルト30の部位に装着されている。これにより、くさび板引き寄せボルト30は桑日板27Aに回転自在に連結される。ここで、受け腕25、ねじ穴32、溝穴33、貫通穴34、C形軸用クリップ35およびくさび板引き寄せボルト30がくさび板移動手段を構成している。
なお、他の構成は上記実施の形態2と同様に構成されている。
【0039】
この実施の形態3では、くさび板引き寄せボルト30を回転させることにより、くさび板27Aが受け腕25側に引き寄せる。これにより、くさび板27Aは、締結腕15Bの上面を移動し、敷居2の高さ位置が調整される。
従って、この実施の形態3においても、上記実施の形態2と同様の効果が得られる。
【0040】
なお、上記各実施の形態では、敷居は、乗り場の出入り口の左右方向の両側下部を昇降路壁に支持されているものとしているが、敷居の支持箇所は、左右方向の両側の2箇所に限定されるものではなく、3箇所以上であっても良い。この場合、敷居の支持箇所は、左右方向に関して均等に配置されることが望ましい。
また、上記各実施の形態では、敷居固定取付金は一対の側板部が底板部に設けられているものとして説明しているが、いずれか一方の側板部のみを備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ乗り場敷居装置を昇降路側から見た正面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータ乗り場敷居装置の構成を説明する分解斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置の据え付け状態を示す一部破断側面図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置の据え付け状態を示す要部拡大図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置に適用されるくさび板を示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係るエレベータ乗り場敷居装置に適用される敷居受け金を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るエレベータ乗り場敷居装置の据え付け状態を示す要部拡大図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係るエレベータ乗り場敷居装置に適用される敷居受け金を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 出入り口、2 敷居、2a 縦通溝、4 ベース板、5 基部、6 受け部、8,8A 敷居固定取付金、9 底板部、10 側板部、11 受け板部、13,13A,13B 敷居受け金、14 取付腕、15,15A,15B 締結腕、17 アンカーボルト、18 ジャッキボルト(敷居固定取付金移動手段)、19 ナット(敷居固定取付金移動手段)、22 締結ボルト(締結具)、23 ナット(締結具)、25 受け腕(くさび板移動手段)、27,27A くさび板、29 ねじ穴(くさび板移動手段)、30 くさび板引き寄せボルト(くさび板移動手段)、31 緩み止めナット(くさび板移動手段)、32 ねじ穴(くさび板移動手段)、33 溝穴(くさび板移動手段)、35 C形軸用クリップ(くさび板移動手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り場の出入り口の下縁部に配設され、下面に開口する縦通溝が設けられた敷居と、
基部が上記出入り口の下部の昇降路壁に該昇降路壁に沿う方向の移動を規制されてアンカーボルトにより締結され、該基部のアンカーボルト固定位置の下方位置から昇降路側に突設された受け部を有するベース板と、
底板部が上記ベース板の基部に重ねて配置されて上下方向に移動可能に上記アンカーボルトにより締結され、該底板部のアンカーボルト固定位置の下方位置から上記受け部の上方位置で、かつ該受け部と相対するように突設された受け板部および該底板部のアンカーボルト固定位置の左右方向の少なくとも一側から突設されて上下方向に配置された側板部を有する敷居固定取付金と、
L字状に成形され、該L字状の一辺が上記側板部に重ねて配置されて奥行き方向に移動可能に締結され、該L字状の他辺が上記敷居の下面に対面する敷居受け金と、
上記縦通溝に係合され該縦通溝の長手方向に移動可能に設けられ、かつ上記敷居受け金のL字状の他辺に設けられた穴に挿通されて上記敷居と上記敷居受け金とを締結する締結具と、
上記受け部と上記受け板部との間隔を拡大して上記敷居固定取付金を上方に移動させる敷居固定取付金移動手段と、
を備えていることを特徴とするエレベータの乗り場敷居装置。
【請求項2】
上記敷居固定取付金移動手段は、上記受け部又は上記受け板部に螺合されたジャッキボルトであることを特徴とする請求項1記載のエレベータの乗り場敷居装置。
【請求項3】
乗り場の出入り口の下縁部に配設され、下面に開口する縦通溝が設けられた敷居と、
底板部が上記出入り口の下部の昇降路壁に該昇降路壁に沿う方向の移動を規制されてアンカーボルトにより締結され、該底板部のアンカーボルト固定位置の左右方向の少なくとも一側から突設されて上下方向に配置された側板部を有する敷居固定取付金と、
L字状に成形され、該L字状の一辺が上記側板部に重ねて配置されて奥行き方向に移動可能に締結され、該L字状の他辺が上記敷居の下面との隙間を上記出入り口側に向かって漸次大きくなる傾斜面に形成された敷居受け金と、
上記敷居の下面と上記敷居受け金のL字状の他辺との間に配設されたくさび板と、
上記縦通溝に係合され該縦通溝の長手方向に移動可能に設けられ、かつ上記くさび板に設けられた穴および上記敷居受け金のL字状の他辺に設けられた穴に挿通されて上記敷居、上記くさび板および上記敷居受け金を締結する締結具と、
上記くさび板を上記敷居受け金のL字状の他辺に沿って奥行き方向に移動させるくさび板移動手段と、
を備えていることを特徴とするエレベータの乗り場敷居装置。
【請求項4】
上記くさび板移動手段は、上記敷居受け金のL字状の他辺の先端部から上方に突設された受け腕と、上記受け腕に回転自在に支持され、その先端が上記くさび板に螺合されたくさび板引き寄せボルトと、を備えていることを特徴とする請求項3記載のエレベータの乗り場敷居装置。
【請求項5】
上記くさび板移動手段は、上記敷居受け金のL字状の他辺の先端部から上方に突設された受け腕と、上記受け腕に螺合されて、その先端が上記くさび板に回転自在に連結されたくさび板引き寄せボルトと、を備えていることを特徴とする請求項3記載のエレベータの乗り場敷居装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−143615(P2008−143615A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329547(P2006−329547)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】