説明

エレベータの音声報知装置

【課題】エレベータ運行中に異常が生じたときに、その異常の内容を含む情報をエレベータ利用者に報知し、その報知で異常が軽微なときにエレベータの利用者自身の行為でその異常を解消したり、その異常に対応したりすることが可能となるエレベータの音声報知装置を提供する。
【解決手段】かご操作盤22には、アナウンス装置27が設けられている。エレベータの異常検出時には、その異常の内容とその異常に対応するための内容を含む情報がエレベータの利用者に対して音声で報知される。例えば、ドアの開閉動作に異常が生じたときに、『ドアが動きません。ドアの溝にごみなどはありませんか。確認してください。ごみがあれば取り除いてください。』という音声によるアナウンスがかご6内に流れる。これに応じてエレベータの利用者が敷居の溝を確認し、その溝内のごみなどの異物を除去して修復することで、ドアが正常に動作し、通常運行の継続が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、エレベータの利用者に対して所要の情報を音声で報知するエレベータの音声報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建屋の昇降路内に吊り下げられたかごを備え、このかごが巻上機により駆動されて昇降路内で上下に昇降移動するように運行される。エレベータの運行状況は、運行監視手段により常時監視され、異常が発生した際にはその情報がエレベータを管理する管理センタに送られる。異常の情報が送信されたときには、管理センタの係員がエレベータの設置建屋に赴き、その異常についての点検が行なわれる。したがって、エレベータの利用者は係員が到着し、点検が終了するまでエレベータを利用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−126620号公報
【特許文献1】特許第4176429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管理センタに送られる異常の情報のうちには、軽微でエレベータの利用者が点検して修復することが可能な異常や、利用者自身の行動で生じる異常、例えば利用者がかご内でふざけて飛び跳ねることで生じるかごの異常振動などが含まれる。
【0005】
しかしながら、従来ではこのような軽微の異常が発生したときでも、管理センタの係員がエレベータの設置建屋まで出向いてエレベータを点検し、その点検が終了するまでエレベータを利用することができず、エレベータの利用者に対するサービス性やエレベータの運行効率が低下するという課題がある。
【0006】
そこで、この発明の実施形態は、エレベータの運行中に異常が生じたときに、その異常の内容を含む情報をエレベータの利用者に報知し、その報知で異常が軽微なときにエレベータの利用者自身の行為でその異常を解消したり、その異常に対応したりすることが可能となるエレベータの音声報知装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、エレベータの運行上の異常を検出する異常検出手段と、所定の音声データに基づいて音声を出力することで、エレベータの利用者に対して情報を報知する音声報知手段と、前記異常検出手段が異常を検出したときに、その異常の内容を含む情報を前記音声報知手段を通してエレベータの利用者に対して音声で報知する制御を行なう制御手段とを具備することを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、前記異常検出手段は、エレベータのドアの開閉異常を検出することが可能で、その検出に応じて前記制御手段が前記音声報知手段を制御して、ドアの異常内容とその異常原因を含む情報をエレベータの利用者に対して報知することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、前記異常検出手段は、エレベータのかごがエレベータホールに着床するときにそのかごとエレベータホールとの間に一定以上の段差が生じるときの段差異常を検出することが可能で、その検出に応じて前記制御手段が前記音声報知手段を制御して、段差異常の内容とその段差異常による注意を喚起する内容を含む情報をエレベータの利用者に対して報知することを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、前記異常検出手段は、エレベータのかご内の利用者の行動で生じるかごの一定以上の振動の異常を検出することが可能で、その振動異常の検出に応じて前記制御手段が前記音声報知手段を制御して、振動異常の内容とかご内の利用者に前記行動を止めるように警告する内容を含む情報をエレベータの利用者に対して報知することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係るエレベータの全体の構成を示す構成図。
【図2】そのエレベータのかごの内部を後部から前方側を見たときの斜視図。
【図3】そのエレベータのエレベータホールの斜視図。
【図4】そのエレベータの制御回路の構成を示すブロック図。
【図5】そのエレベータの作用の流れを説明するためのフローチャート。
【図6】そのエレベータの他の作用の流れを説明するためのフローチャート。
【図7】そのエレベータのさらに異なる他の作用の流れを説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1には、エレベータの全体の構成を示してあり、建物の昇降路1の上部には機械室2が設けられ、この機械室2内に駆動装置としての巻上機3が設置されている。巻上機3はトラクションシーブ4を備え、このトラクションシーブ4にメインロープ5が巻き掛けられている。メインロープ5の両端側は昇降路1内に引き落とされ、その一方側の端末にかご6が、他端側の端末につり合い重り7がそれぞれ連結され、これらかご6及びつり合い重り7が昇降路1内に吊り下げられている。そして巻上機3が起動し、トラクションシーブ4が回転してメインロープ5が走行することによりかご6とつり合い重り7が昇降路1内で互いに逆方向に昇降移動する。機械室2にはエレベータの運行を制御する制御手段としての制御盤10が設けられ、この制御盤10により前記巻上機3が制御されてかご6が昇降移動する。
【0014】
建物の各階のエレベータホール13には昇降路1に通じる乗降口14が設けられ、これら乗降口14にそれぞれホールドア15が設置され、これらホールドア15により乗降口14が開閉される。
【0015】
かご6の前面にはかごドア16が設けられている。図2にはかご6の内部をその後部から前方側を見たときの外観を示してあり、かご6の前面には出入口17が設けられ、この出入口17の前面側にかごドア16が設置され、このかごドア16により出入口17が開閉される。
【0016】
図1に示すように、各エレベータホール13の乗降口14の下部及びかご6の出入口17の下部にはそれぞれ敷居18,19が取り付けられ、敷居18の上にホールドア15が、敷居19の上にかごドア16がそれぞれ設置され、これら敷居18,19に沿ってホールドア15,かごドア16が移動する。
【0017】
各エレベータホール13の乗降口14は、通常時にはホールドア15により閉鎖されている。そしてかご6が目的階のエレベータホール13に移動して停止する際に、かごドア16がそのエレベータホール13のホールドア15に係合し、この状態でかごドア16が駆動源により駆動され、かごドア16とホールドア15とが連動して戸開し、かご6に対する利用者の乗り降りが可能となる。利用者の乗り降りが終了した後には、かごドア16とホールドア15とが連動して戸閉し、かご6が次に目的階に向って移動する。
【0018】
かご6の内部には、図2に示すようにかご操作盤22が設けられ、このかご操作盤22に複数の行先階ボタン23、ドア開閉ボタン24、かご位置表示パネル25並びにスピーカー26が配設されている。かご操作盤22の内部には、各種の所定の音声データに基づいて各種の情報を前記スピーカー26を通して音声でアナウンスしてエレベータの利用者に報知する音声報知手段としてのアナウンス装置27が設けられている。
【0019】
また、図3に示すように、各階のエレベータホール13には、出入口17の側方に位置してホール操作盤30が設けられ、このホール操作盤30にかご呼びボタン31、かご位置表示パネル32並びにスピーカー33が配設されている。そしてこのかご操作盤22の内部には、各種の所定の音声データに基づいて各種の情報を前記スピーカー33を通して音声でアナウンスしてエレベータの利用者に報知する音声報知手段としてのアナウンス装置34が設けられている。
【0020】
かご操作盤22及びホール操作盤30はそれぞれ制御盤10に接続され、図4に示すようにかご操作盤22の行先階ボタン23、ドア開閉ボタン24、かご位置表示パネル25やホール操作盤30のかご呼びボタン31の各操作に応じる信号が制御盤10に送られ、その信号に応じてかご6の移動や停止、ホールドア15及びかごドア16の開閉動作などが制御盤10により制御される。また、制御盤10による制御で、かご6の移動方向や現在位置がかご操作盤22のかご位置表示パネル25及びホール操作盤30のかご位置表示パネル32にそれぞれ表示される。
【0021】
このエレベータには、その運行時における各種の異常を検出する異常検出手段37が設けられ、この異常検出手段37が異常を検出したときにその信号が制御盤10に送られる。そして制御盤10には、異常検出手段37から送られる異常の信号に応じて、かご操作盤22やホール操作盤30のアナウンス装置27,34を駆動する駆動回路部38が設けられている。
【0022】
次に、作用について説明する。
【0023】
例えばエレベータの運行中において、かご6が所定の階床のエレベータホール13に着床してホールドア15及びかごドア16が開閉するときに、その開閉動作に異常が生じたときには、図5に示すフローチャートの流れの処理が行なわれる。
【0024】
すなわち、エレベータの運行中において、かご6が所定の階床に着床し(S1)、この着床後にホールドア15及びかごドア16が開閉するときに、その開閉動作に異常があるかが異常検出手段37により判断される(S2)。この際、敷居18,19にごみなどの異物が詰まっていてその開閉動作に異常が生じていると、異常検出手段37から異常検出の信号が制御盤10に出力される(S3)。
【0025】
異常検出の信号が制御盤10に出力されると、制御盤10の駆動回路部38からかご操作盤22のアナウンス装置27及びかご6が着床したエレベータホール13におけるホール操作盤30のアナウンス装置34に駆動信号が出力され(S4)、その各アナウンス装置27,34が動作する(S5)。すなわち、スピーカー26,33を通して異常の内容とその異常を解消するための内容を含む情報がエレベータの利用者に対して報知される(S6)。例えば『ドアが動きません。ドアの溝にごみなどはありませんか。確認してください。ごみがあれば取り除いてください。』という音声によるアナウンスがかご6内及びエレベータホール13に流れ、エレベータの利用者に報知される。
【0026】
これに応じてエレベータの利用者が敷居18,19の溝を確認し、その溝内のごみなどの異物を除去して修復すると(S7)、ドアが正常に動作し、通常運行(S8)が継続される。
【0027】
S7において、異物の除去による修復が行なわれなかったときには、前記異常の内容がエレベータの管理センタに通報される(S9)。また、S2において、ドアの開閉動作に異常がないときには、そのままドアが正常に動作し、通常運行(S8)が継続される。
【0028】
このように、異常が軽微のときに、その異常の内容をエレベータの利用者に音声で報知することで、その利用者自身により異常を回復するための修復作業を促すことができる。そして、その利用者による修復作業で、管理センターの係員が出向くことなく、エレベータを通常運行させることができる。したがって、エレベータの運行が長時間に渡って中断することがなく、エレベータの利用者に対するサービス性やエレベータの運行効率を高めることができる。
【0029】
一方、エレベータの運行中において、かご6がエレベータホール13に着床する際に、そのかご6の床面とエレベータホール13の床面との間に一定以上の段差が生じる異常が発生したときには、図6に示すフローチャートの流れの処理が行なわれる。
【0030】
すなわち、かご6が所定のエレベータホール13の階床に着床(S1)したときに、そのかご6の床面とエレベータホール13の床面との間に一定以上の段差が生じているかが異常検出手段37により判断される(S2)。そして異常検出手段37により段差異常発生と判断されると、異常検出手段37から異常検出の信号が制御盤10に出力される(S3)。
【0031】
異常検出の信号が制御盤10に出力されると、制御盤10の駆動回路部38からかご操作盤22のアナウンス装置27及びかご6が着床したエレベータホール13におけるホール操作盤30のアナウンス装置34に駆動信号が出力され(S4)、その各アナウンス装置27,34が動作する(S5)。すなわち、スピーカー26,33を通して異常の内容とその異常に対応するための内容を含む情報がエレベータの利用者に対して報知される(S6)。例えば『段差が生じています。足元に注意してください。』という音声によるアナウンスがかご6内及びエレベータホール13に流れ、エレベータの利用者に報知される。
【0032】
この音声によるアナウンスで注意が喚起され、エレベータの利用者は段差に注意を払いながら安全に乗り降りをすることができる。この後、ドアが閉じかご6が次の目的階に向って移動する通常運行(S7)が継続される。
S2において、段差異常の発生がないと判断されたときには、そのまま通常運行(S7)が継続される。
【0033】
さらに、エレベータの運行中において、かご6に乗った利用者が例えば悪ふざけで飛び跳ね、かご6に一定以上の振動(異常振動)が生じたときには図7に示すフローチャートの流れの処理が行なわれる。
【0034】
すなわち、かご6の移動中あるいは着床停止中において、かご6に異常振動が発生したかが異常検出手段37により判断される(S1)。そして異常検出手段37により異常振動の発生があると判断されると、異常検出手段37から異常検出の信号が制御盤10に出力される(S2)。
【0035】
異常検出の信号が制御盤10に出力されると、制御盤10の駆動回路部38からかご操作盤22のアナウンス装置27に駆動信号が出力され(S3)、アナウンス装置27が動作する(S4)。すなわち、スピーカー26を通して異常の内容とその異常に対応するための内容を含む情報がエレベータの利用者に対して報知される(S5)。例えば『エレベータが異常に振動しました。飛び跳ねないでください。故障の原因になります。』という音声によるアナウンスがかご6内に流れ、エレベータの利用者に報知される。
【0036】
この報知(警告)により、かご6内の利用者は飛び跳ねる悪ふざけを止めるようになり、エレベータの故障への発展を防止することができる。そしてかご6は通常運行(S6)が継続される。
S1において、異常振動の発生がないと判断されたときには、そのまま通常運行(S6)が継続される。
【0037】
このように、この発明の実施形態によれば、エレベータの運行中に異常が生じたときに、その異常の内容を含む情報をエレベータの利用者に報知し、その報知で異常が軽微なときにエレベータの利用者自身の行為でその異常を解消したり、その異常に対応したりすることが可能となり、したがってエレベータの運行が長時間に渡って中断することがなく、エレベータの利用者に対するサービス性やエレベータの運行効率を高めることができる。
【0038】
なお、以上において説明したこの発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この発明の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。その実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…昇降路
3…巻上機
5…メインロープ
6…かご
10…制御盤
13…エレベータホール
15…ホールドア
16…かごドア
18.19…敷居
22…かご操作盤
23…行先階ボタン
24…ドア開閉ボタン
26…スピーカー
27…アナウンス装置
30…ホール操作盤
31…かご呼びボタン
33…スピーカー
34…アナウンス装置
37…異常検出手段
38…駆動回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運行上の異常を検出する異常検出手段と、
所定の音声データに基づいて音声を出力することで、エレベータの利用者に対して情報を報知する音声報知手段と、
前記異常検出手段が異常を検出したときに、その異常の内容を含む情報を前記音声報知手段を通してエレベータの利用者に対して音声で報知する制御を行なう制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータの音声報知装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、エレベータのドアの開閉異常を検出することが可能で、その検出に応じて前記制御手段が前記音声報知手段を制御して、ドアの異常内容とその異常原因を含む情報をエレベータの利用者に対して報知することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの音声報知装置。
【請求項3】
前記異常検出手段は、エレベータのかごがエレベータホールに着床するときにそのかごとエレベータホールとの間に一定以上の段差が生じるときの段差異常を検出することが可能で、その検出に応じて前記制御手段が前記音声報知手段を制御して、段差異常の内容とその段差異常による注意を喚起する内容を含む情報をエレベータの利用者に対して報知することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの音声報知装置。
【請求項4】
前記異常検出手段は、エレベータのかご内の利用者の行動で生じるかごの一定以上の振動の異常を検出することが可能で、その振動異常の検出に応じて前記制御手段が前記音声報知手段を制御して、振動異常の内容とかご内の利用者に前記行動を止めるように警告する内容を含む情報をエレベータの利用者に対して報知することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの音声報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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