説明

エレベーター装置

【課題】折畳み式点検作業台にかかる部品員数の低減を図ることのできるエレベーター装置の提供。
【解決手段】昇降路底部のピットに配置され、昇降路内機器の保守点検時に拡張される折畳み式点検作業台と、つり合いおもり3の下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガード12とを有するエレベーター装置において、スクリーンガード12の一部を、このスクリーンガード12が固定されるブラケットから取り外し可能とすると共に、取り外したスクリーンガード部材12aを折畳み式点検作業台の踏板として流用したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置に係り、特に、昇降路下方に配置された巻上機や制御装置を点検するのに好適なエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗りかご、及びつり合いおもりを駆動する巻上機や、その巻上機を制御する制御装置を昇降路内に配置した機械室レスのエレベーターが一般的なものとなっており、この種のエレベーターにあっては、前述した巻上機や制御装置は、昇降路下方の壁際に薄型のものを配置するようになっている。そして、このようなエレベーター装置において、巻上機や制御装置を保守点検するために、作業者の足場確保のための折畳み式点検作業台を昇降路下部に設置する案が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。なお、この点検作業台は、作業者が乗る足場となる踏板、踏板と固定側とを連結する受け材、及び踏板にかかる荷重を支持する支え棒が一体構造となっている。
【0003】
また、昇降路下方に配置された巻上機等の昇降路内機器を保守点検するときに、乗りかごが下降して作業者に衝突することを防止するため、固定手段によりつり合いおもりを昇降路に固定し、乗りかごの下降を阻止するものが挙げられる(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
さらに、昇降路下部のピット内にあって、つり合いおもりの予期せぬ下降により、つり合いおもりが作業者に接触することを防止するための有効な手段として、スクリーンガードを設けることが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−8335号公報(段落番号0012、0013、図2)
【特許文献2】特開2001−199647号公報(段落番号0009〜0013、図1)
【特許文献3】特開2004−161432号公報(段落番号0012〜0014、図2)
【特許文献4】特開2003−341950号公報(段落番号0013〜0015、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に記載される折畳み式点検作業台では、作業者が乗る踏板の大きさは、間口寸法として、作業内容を考慮し、巻上機の幅寸法以上に設定することが想定され、踏板、受け材、及び支え棒を一体構造とした場合、重量の観点から、拡張作業及び収納作業において作業者への負担を強いるという問題があった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、折畳み式点検作業台にかかる部品員数の低減を図ることのできるエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、建屋に形成される昇降路と、この昇降路内を昇降する乗りかごと、この乗りかごと反対方向に昇降するつり合いおもりと、前記乗りかご及び前記つり合いおもりの昇降を案内するガイドレールと、前記乗りかご及び前記つり合いおもりとを懸架する主索と、前記昇降路の底部近傍に設置される昇降路内機器と、これら昇降路内機器の保守点検時に、前記つり合いおもりを固定する固定手段と、前記昇降路底部のピットに配置され、前記昇降路内機器の保守点検時に拡張される折畳み式点検作業台と、前記つり合いおもりの下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガードとを有するエレベーター装置において、前記スクリーンガードの一部を、このスクリーンガードが固定されるブラケットから取り外し可能とすると共に、取り外したスクリーンガード部材を前記折畳み式点検作業台の踏板とすることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明では、昇降路内機器の保守点検を行う場合、固定手段によりつり合いおもりを固定し、この状態でブラケットからスクリーンガード部材を取り外す。一方、ピットに配置される折畳み式点検作業台を拡張すると共に、取り外したスクリーンガード部材を当該作業台の踏板として取り付ける。そして、作業者は作業台に乗り込み、昇降路内機器の保守点検を行う。なお、保守点検作業時に、クリーンガードの一部を取り外しても、つり合いおもりは固定手段により固定されていることから、安全を確保することができる。また、折畳み式点検作業台を用いた保守点検が終わったら、スクリーンガード部材を当該作業台から取り外すと共に、ブラケットに再度装着し、つり合いおもりの下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガードとして用いる。このように、既存の平板状のスクリーンガード部材を折畳み式点検作業台の踏板として流用することにより、折畳み式点検作業台にかかる部品員数の低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明は、前記ブラケットに、前記スクリーンガード部材の上部が係止されるフックを設けると共に、前記スクリーンガード部材の上部に、前記フックが挿通される孔を形成し、かつ、前記スクリーンガード部材の下部は、前記ブラケットにボルトを介して固定されることを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明では、スクリーンガード部材を折畳み式点検作業台の踏板として流用する場合、作業者はブラケットに装着状態となっているスクリーンガード部材下部のボルトを取り外すと共に、スクリーンガード部材上部をブラケットのフックから解放する。一方、折畳み式点検作業台を用いた保守点検終了に応じて、スクリーンガード部材上部をブラケットのフックに係止し、スクリーンガード部材を位置決めし、次いで、スクリーンガード部材下部をボルトによりブラケットに固定する。このように、フックを用いてスクリーンガード部材の一部をブラケットに装着する構造とすることにより、スクリーンガード部材の着脱を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スクリーンガード部材と折畳み式点検作業台の踏板との共用化により、部品員数の低減を図り、ひいてはコストの低減を図ることができる。また、折畳み式点検作業台の拡張作業時、及び収納作業時には、当該作業台からスクリーンガード部材が取り外された状態となっているため、比較的軽量となっており、作業者にかかる負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用されるエレベーター装置の全体概略図である。
【図2】本発明のエレベーター装置の一実施例を示すつり合いおもり部斜視図である。
【図3】折畳み式点検作業台の拡張作業時の詳細斜視図である。
【図4】作業台の踏板としてスクリーンガード部材が取り付けられた状態を示す詳細斜視図である。
【図5】折畳み式点検作業台が収納された状態を示す詳細側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエレベーター装置の実施例を図に基づき説明する。
【0015】
エレベーター装置は、図1に示すように、建屋に形成される昇降路1と、この昇降路1内を昇降する乗りかご2と、この乗りかご2と反対方向に昇降するつり合いおもり3と、両端が昇降路上部に留め具4を介して固定されると共に、その中間位置に、乗りかご2及びつり合いおもり3を懸架する主索5と、昇降路1上部に配置され、主索5が巻き掛けられる頂部プーリー6と、昇降路1の底部近傍に設置され、主索5を駆動する巻上機7と、昇降路1の底部近傍に設置され、エレベーターの運転を制御する制御装置8と、昇降路1底部のピット1aに配置され、制御装置8の保守点検時に拡張される折畳み式点検作業台9とを備えている。なお、この実施例では、保守点検作業の対象となる昇降路内機器として、制御装置8を例にとり説明する。
【0016】
また、エレベーター装置は、図2に示すように、つり合いおもり3の昇降を案内するつり合いおもり用ガイドレール10と、昇降路内機器の保守点検時に、つり合いおもり3を固定する固定手段11と、つり合いおもり3の下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガード12と、このスクリーンガード12をつり合いおもり用ガイドレール10に固定するためのブラケット13と、何らかの理由で異常下降したつり合いおもり3を緩衝するバッファ14とを有している。
【0017】
固定手段11は、つり合いおもり用ガイドレール10に取り付けられる支持体11aと、つり合いおもり3の固定時に、つり合いおもり3側に設けられる図示しない孔と、支持体11a側に設けられる図示しない孔とに挿通されるロッド11bとから成っている。
【0018】
スクリーンガード12は、ブラケット部材13aとブラケット部材13bとの間に配置され、ブラケット13から取り外し可能なスクリーンガード部材12aと、ブラケット部材13bとブラケット部材13cとの間に固着されるスクリーンガード部材12bと、ブラケット部材13cとブラケット部材13dとの間に固着されるスクリーンガード部材12cとから成っている。なお、図2にあって、スクリーンガード部材12b及びスクリーンガード部材12cは、つり合いおもり3との関係を明確に示すため、便宜上、透明となっている。
【0019】
ブラケット部材13bには、スクリーンガード部材12aの上部が係止されるフック15が設けられている。
【0020】
スクリーンガード部材12aには、図3に示すように、その上部に、フック15が挿通される孔16が形成されると共に、その下部に、ブラケット部材13bに設けられる図示しない雌ねじと対向可能な孔17が形成されている。そして、スクリーンガード部材12bの下部は、ブラケット部材13aにボルト18を介して固定される。
【0021】
折畳み式点検作業台9は、図3乃至図5に示すように、昇降路1の壁面1bに、アンカーボルト19を介して固定される受け材9aと、上端が受け材9aに軸9bを介して支持される枠体9cと、一端が軸9dを介して枠体9cに取り付けられると共に、拡張時に、その他端が受け材9aに形成される切り欠き9eに嵌合され、枠体9cにかかる荷重を支持する支え棒9fとを備えており、拡張時には、枠体9cに、ブラケット13から取り外されたスクリーンガード部材12aが装着され、作業者が乗る足場となる。また、折畳み式点検作業台9には、図5に示すように、枠体9cが格納状態となったときに出力信号を出力する収納確認スイッチ20が設けられ、この収納確認スイッチ20の出力信号に応じて乗りかご1の昇降が許可されるようになっている。
【0022】
枠体9cには、スクリーンガード部材12aの孔16、17と対向する位置に、孔9c1が形成され、孔16、17と穴9c1とを対向させた状態で、ボルト18及び図示しないナットによりスクリーンガード部材12aを枠体9cに固定するようになっている。
【0023】
本実施例にあっては、通常時、スクリーンガード部材12aの上部はブラケット部材13bのフック15に係止されると共に、スクリーンガード部材12aの下部はボルト18によりブラケット部材13aに固定され、つり合いおもり3の下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガード12として用いられる。なお、通常時、折畳み式点検作業台9は、図5に示すように収納された状態となっており、収納確認スイッチ20が投入されて出力信号が出力され、乗りかご1の昇降が許可されている。
【0024】
そして、制御装置8の保守点検を行う場合、まず、つり合いおもり3を最下位置とし、固定手段11によりつり合いおもり3を固定する。即ち、つり合いおもり3側に設けられる図示しない孔と、支持体11a側に設けられる図示しない孔とを対向させた状態でこれらの孔にロッド11bを挿通し、つり合いおもり3を固定する。この後、作業者はブラケット13に装着状態となっているスクリーンガード部材12a下部のボルト18を取り外すと共に、スクリーンガード部材12aをフック15の形状に沿って回動させつつ移動することで、スクリーンガード部材12a上部をフック15から解放する。次いで、作業者は折畳み式点検作業台9の枠体9cを持ち上げて水平とし、この状態で支え棒9fを受け材9aに形成される切り欠き9eに嵌合し、枠体9cを水平状態に保つ。
【0025】
次に、取り外したスクリーンガード部材12aを枠体9cに嵌め込むと共に、スクリーンガード部材12aの孔16、17と枠体9cの孔9c1とを対向させた状態で、ボルト18及び図示しないナットによりスクリーンガード部材12aを枠体9cに固定する。このようにして折畳み式点検作業台9を拡張した状態で、作業者は折畳み式点検作業台9に乗り込み、制御装置8の保守点検を行う。なお、保守点検作業時に、スクリーンガード12の一部を取り外しても、つり合いおもり3は前述したように固定手段11により固定されていることから、安全を確保することができる。
【0026】
そして、折畳み式点検作業台9を用いた保守点検が終わったら、前述と逆の手順でスクリーンガード部材12aを枠体9cから取り外すと共に、ブラケット13に再度装着し、つり合いおもり3の下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガード12として用いる。また、図5に示すように、折畳み式点検作業台9が収納されると、収納確認スイッチ20が投入されて出力信号が出力され、乗りかご1の昇降が許可される。このような収納確認スイッチ20を設けることにより、枠体9cが格納されていない状態では、乗りかご1を平常運転に戻すことができないため、何らかの異常により乗りかご1が動くことを防止し、作業員の安全をより確実に確保することが可能である。
【0027】
本実施例によれば、既存の平板状のスクリーンガード部材12aを折畳み式点検作業台9の踏板として流用することにより、部品員数の低減を図り、ひいてはコストの低減を図ることができる。また、折畳み式点検作業台9の拡張作業時、及び収納作業時には、当該作業台9から踏板となるスクリーンガード部材12aが取り外された状態となっているため、比較的軽量となっており、作業者にかかる負担を軽減することができる。また、フック15を用いてスクリーンガード部材12aの一部をブラケット13に装着する構造とすることにより、スクリーンガード部材12aの着脱を容易に行うことができる。
【0028】
なお、前述した実施例では、フック15を用いてスクリーンガード部材12aの一部をブラケット13に装着する構造としたが、本発明はこれに限らず、他の手段によりスクリーンガード部材をブラケットに着脱可能に装着するようにしても良い。また、保守点検の対象を制御装置8とした例で説明したが、巻上機7に対しても同等の折畳み式点検作業台を設けることにより、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 昇降路
1a ピット
1b 壁面
2 乗りかご
3 つり合いおもり
4 留め具
5 主索
6 頂部プーリー
7 巻上機
8 制御装置
9 折畳み式点検作業台
9a 受け材
9b 軸
9c 枠体
9c1 孔
9d 軸
9e 切り欠き
9f 支え棒
10 つり合いおもり用ガイドレール
11 固定手段
11a 支持体
11b ロッド
12 スクリーンガード
12a、12b、12c スクリーンガード部材
13 ブラケット
13a、13b、13c、13d ブラケット部材
14 バッファ
15 フック
16、17 孔
18 ボルト
19 アンカーボルト
20 収納確認スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋に形成される昇降路と、この昇降路内を昇降する乗りかごと、この乗りかごと反対方向に昇降するつり合いおもりと、前記乗りかご及び前記つり合いおもりの昇降を案内するガイドレールと、前記乗りかご及び前記つり合いおもりとを懸架する主索と、前記昇降路の底部近傍に設置される昇降路内機器と、これら昇降路内機器の保守点検時に、前記つり合いおもりを固定する固定手段と、前記昇降路底部のピットに配置され、前記昇降路内機器の保守点検時に拡張される折畳み式点検作業台と、前記つり合いおもりの下降領域への作業者の侵入を抑制するスクリーンガードとを有するエレベーター装置において、
前記スクリーンガードの一部を、このスクリーンガードが固定されるブラケットから取り外し可能とすると共に、取り外したスクリーンガード部材を前記折畳み式点検作業台の踏板とすることを特徴としたエレベーター装置。
【請求項2】
前記ブラケットに、前記スクリーンガード部材の上部が係止されるフックを設けると共に、前記スクリーンガード部材の上部に、前記フックが挿通される孔を形成し、かつ、前記スクリーンガード部材の下部は、前記ブラケットにボルトを介して固定されることを特徴とした請求項1記載のエレベーター装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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