説明

エレベータ室内異常検知装置およびエレベータ室内異常検知方法

【課題】エレベータ室内で異常が発生した場合に、プライバシーの問題なく自動的にその異常を検知することを目的とする。
【解決手段】エレベータ室内異常検知装置は、エレベータ室16内を左カメラ17および右カメラ18によって撮影し、画像処理装置21によってエレベータ室16内の画像から人体10を表す被写体画像を認識するとともに、この被写体画像から人体10に関連する高さ、位置および数などの人体関連情報を算出し、算出された人体関連情報にもとづいて、人体10の状態が特定の状態となった場合に、エレベータ室16内にて人体10に異常が発生したと判断するので、監視者によるエレベータ室16内の映像(画像)の監視が不要となり、エレベータ室16内で異常が発生した場合に、プライバシーの問題なく自動的にその異常を検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影した撮影画像にもとづいてエレベータ室内に発生した異常を検知する異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エレベータ室内(エレベータかご内)を撮影可能に設置された防犯カメラからの撮影画像などにもとづいて、エレベータ室内に異常がないかを監視することが行われている。
【0003】
例えば、エレベータ室内に設置されたカメラから出力された信号を画像処理装置によって画像信号に変換し、この画像処理装置から出力された画像信号を電気通信回線を通じてデータ管理装置において記憶管理するとともに、このデータ管理装置によって画像信号のうちの特定の画像信号を必要に応じてパーソナルコンピュータやFAX等の特定の情報端末に電気通信回線を通じて配信するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、エレベータ室内にインターホン、モニタ、および防犯カメラを設置し、情報センターにインターホンと音声通信可能なヘッドホンセット、防犯カメラにより撮影した画像を表示するモニタ、および情報センターの内部を撮影してエレベータ室内のモニタに送信するカメラを設置し、乗客の操作によってサービス開始信号を送信する携帯端末装置からのサービス開始信号を受信すると、情報処理装置によってインターホンとヘッドホンセット、モニタとカメラ、および防犯カメラとモニタのうちの少なくともいずれか1組を接続して遠隔監視を行うものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−252540号公報
【特許文献2】特開2005−170552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に開示されている監視装置や防犯システムでは、これらの管理者(監視者)がエレベータ室内の映像を監視して異常の有無などを判断する必要があるため、人手を介さずに自動的に異常の発生を検知することができないという問題があった。また、不特定多数の人が利用するエレベータ室内の映像が監視されるため、プライバシーの問題が発生してしまうおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題を解消し、エレベータ室内で異常が発生した場合に、プライバシーの問題なく自動的にその異常を検知することができるエレベータ室内異常検知装置およびエレベータ室内異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータ室内異常検知装置は、エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影する撮影手段と、該撮影手段によって撮影されたエレベータ室内の画像から人体を表す被写体画像を認識する被写体画像認識手段と、該被写体画像認識手段によって認識された被写体画像から人体に関連する人体関連情報を算出する人体関連情報算出手段と、該人体関連情報算出手段によって算出された人体関連情報にもとづいて、人体の状態が特定の状態となった場合に、前記エレベータ室内にて該人体に異常が発生したと判断する異常判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記のように構成したことで、撮影されたエレベータ室内の画像から人体に関する人体関連情報を算出し、算出された人体関連情報にもとづいて人体の状態が特定の状態となった場合に人体に異常が発生したと判断することができるので、監視者によるエレベータ室内の映像(画像)の監視が不要となり、エレベータ室内で異常が発生した場合に、プライバシーの問題なく自動的にその異常を検知することができるようになる。
【0010】
人体関連情報算出手段が、人体関連情報として、人体の高さ、位置および数に関する情報を算出するように構成されていてもよい。このように構成すれば、算出する人体関連情報の項目を限定することができるので、人体関連情報の算出に関する処理負荷を減らして処理時間を短縮することができ、異常の検知を迅速に行うことができるようになる。
【0011】
異常判断手段が、人体関連情報算出手段によって算出された情報に応じた人体の高さが、あらかじめ設定された所定の閾値未満となる状態が所定期間以上継続した場合に、異常が発生したと判断するように構成されていてもよい。このように構成すれば、エレベータ室内で人体が倒れていることに伴う異常の検知を容易に行うことができるようになる。
【0012】
異常判断手段が、人体関連情報算出手段によって算出された情報に応じた人体の数が一つであるときに、この人体があらかじめ設定された滞在時間を超えてエレベータ室内に滞在している状態となった場合に、異常が発生したと判断するように構成されていてもよい。このように構成すれば、エレベータ室内に人体が長時間滞在していることに伴う異常の検知を容易に行うことができるようになる。
【0013】
異常判断手段が、人体関連情報算出手段によって算出された情報に応じた人体の数が二つであるときに、これら人体間の距離があらかじめ設定してある距離以下となる状態が所定期間以上継続した場合に、異常が発生したと判断するように構成されていてもよい。このように構成すれば、エレベータ室内にて人体同士が接近していることに伴う異常の検知を容易に行うことができるようになる。
【0014】
異常判断手段によって判断された判断結果に応じて、エレベータ室内での異常の発生を報知する異常報知手段をさらに備えた構成とされていてもよい。このように構成すれば、エレベータ室内で検知された異常の発生を即座に報知することができるので、緊急対応などの措置を迅速に図ることができるようになる。
【0015】
また、本発明に係るエレベータ室内異常検知方法は、エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影する撮影処理と、該撮影処理にて撮影されたエレベータ室内の画像から人体を表す被写体画像を認識する被写体画像認識処理と、該被写体画像認識処理にて認識された被写体画像から人体に関連する人体関連情報を算出する人体関連情報算出処理と、該人体関連情報算出処理にて算出された人体関連情報にもとづいて、人体の状態が特定の状態となった場合に、前記エレベータ室内にて該人体に異常が発生したと判断する異常判断処理と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エレベータ室内で異常が発生した場合に、プライバシーの問題なく自動的にその異常を検知することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のエレベータ室内異常検知装置およびエレベータ室内異常検知方法に係る一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係るエレベータ室内異常検知装置の機能的構成の例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、エレベータ室内異常検知装置は、撮影部11と、画像認識部12と、情報算出部13と、異常判断部14と、異常報知部15と、を備えて構成されている。
【0019】
撮影部11は、エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影する。この撮影部11は、具体的には、例えばエレベータ室内の天井部分に設置されたステレオカメラによって構成される。この場合、撮影部11により撮影される画像はステレオ画像となる。
【0020】
画像認識部12は、撮影部11によって撮影されたエレベータ室内のステレオ画像から被写体である人体を表す被写体画像を認識する。この画像認識部12は、具体的には、例えば画像処理装置によって構成される。したがって、画像認識部12では、撮影部11によりエレベータ室内全体を撮影したステレオ画像にもとづく画像演算処理が行われ、被写体画像が抽出されて認識される。
【0021】
情報算出部13は、画像認識部12によって認識された被写体画像から人体に関連する人体関連情報を算出する。この情報算出部13は、具体的には、例えば演算装置によって構成される。また、情報算出部13では、具体的には人体関連情報として、被写体画像から得られる人体の高さ、位置および数に関する情報を算出する。
【0022】
異常判断部14は、情報算出部13によって算出された人体関連情報にもとづいて、エレベータ室内の人体の状態が特定の状態となった場合に、エレベータ室内にて人体に異常が発生したと判断する。この異常判断部14は、具体的には、例えば情報処理装置によって構成される。
【0023】
異常報知部15は、異常判断部14によって判断された判断結果に応じて、エレベータ室内での異常の発生を報知する。この異常報知部15は、具体的には、例えば情報通信装置や音声入出力装置などによって構成される。
【0024】
なお、異常判断部14は、具体的には次のような場合にエレベータ室内で異常が発生したと判断する。すなわち、異常判断部14は、情報算出部13によって算出された情報に応じた人体の高さが、あらかじめ設定された所定の閾値未満となる状態が所定期間以上継続した場合に、人体が倒れていることに伴う異常が発生したと判断する。
【0025】
また、異常判断部14は、情報算出部13によって算出された情報に応じた人体の数が一つであるときに、この人体があらかじめ設定された滞在時間を超えてエレベータ室内に滞在している状態となった場合に、エレベータ室内に人体が長時間滞在していることに伴う異常が発生したと判断する。
【0026】
さらに、異常判断部14は、情報算出部13によって算出された情報に応じた人体の数が二つであるときに、これら人体間の距離があらかじめ設定してある距離以下となる状態が所定期間以上継続した場合に、エレベータ室内にて人体同士が接近していることに伴う異常が発生したと判断する。
【0027】
このように、本例のエレベータ室内異常検知装置では、エレベータ室内で上述したような各種の異常が発生した場合に、監視者による監視が不要な状態で自動的に異常の発生を検知することができるので、プライバシーの問題なくその異常の発生を検知して報知することが可能となる。
【0028】
次に、本実施の形態に係るエレベータ室内異常検知装置の構成について説明する。図2は、本発明の一実施の形態に係るエレベータ室内異常検知装置の構成の例を示す説明図である。図2に示すように、エレベータ室内異常検知装置は、画像処理装置21と、情報処理装置22と、通信装置23とを含んで構成され、エレベータ室16内の天井部に設置されて人体10を被写体とした画像を撮影する左カメラ17および右カメラ18と、エレベータ室16内の側壁部に設置されたマイク26と、スピーカ27とを備えている。
【0029】
左カメラ17および右カメラ18は、画像処理装置21と有線または無線によりそれぞれ接続され、マイク26およびスピーカ27は、通信装置23と有線または無線により接続されている。また、通信装置23は、外部の通信装置24と有線または無線により接続され、この通信装置24は管理装置25と接続されている。管理装置25は、マイク28およびスピーカ29と接続されている。なお、ここでは、各カメラ17,18、画像処理装置21、情報処理装置22および通信装置23は、例えばエレベータ側に配置され、通信装置24および管理装置25は、エレベータが設置された建物におけるエレベータ管理側に配置されている。
【0030】
画像処理装置21および情報処理装置22は、それぞれCPU、ROM、RAMなどを含む制御部を備えて構成され、通信装置23,24は、通信モジュールなどの通信インタフェース(I/F)を備えて構成されている。なお、画像処理装置21は、制御部とともに、GPU(Graphics Processing Unit)を備えて構成されていてもよい。
【0031】
このように構成されたエレベータ室内異常検知装置では、左カメラ17および右カメラ18で撮影されたエレベータ室16内の人体10を被写体とするステレオ画像が画像処理装置21に入力され、画像処理装置21にて人体10の画像を抽出・認識する画像処理が行われる。そして、情報処理装置22にて画像処理装置21からの情報にもとづいて、人体10の高さ、エレベータ室16内での人体10の位置および人数に関する情報などが算出され、算出された情報とあらかじめ設定されている各種情報との比較・演算処理が行われて、その結果に応じて異常の発生が検知される。
【0032】
通信装置23は、情報処理装置22からエレベータ室16内での異常の発生を示す警告信号が出力された場合に、その異常の種類などに応じてスピーカ27から警告音声を出力するように通信を行うとともに、マイク26からの音声の入力を受け付ける。また、通信装置23は、通信装置24に対して異常が発生したことを示す情報を送信し、通信装置24を介してこの情報を受信した管理装置25は、スピーカ29から警告音声を出力するとともに、マイク28を介して音声の入力を受け付ける。したがって、エレベータ室16内側と管理装置25側との間では、人体10に異常が発生した場合などにマイク26,28およびスピーカ27,29を介した音声通話を行うことが可能となる。
【0033】
なお、本実施の形態に係るエレベータ室内異常検知装置の図1に示した機能的構成のうち、撮影部11は、左カメラ17および右カメラ18によって、画像認識部12は、画像処理装置21によって、それぞれその機能を実現する。また、情報算出部13および異常判断部14は、情報処理装置22によって、異常報知部15は、通信装置23およびスピーカ27,29によって、それぞれその機能を実現する。
【0034】
さらに、上記エレベータ室内異常検知装置は、上述した画像処理装置21に情報処理装置22および通信装置23を含んだ構成とされていてもよく、また、画像処理装置21、情報処理装置22および通信装置23を一つの装置構成として一体的に構成されていてもよい。また、マイク26,28およびスピーカ27,29の他に、異常を報知する装置として警告灯やモニタとしての画像表示装置を備えて構成されていてもよい。
【0035】
次に、本実施の形態に係るエレベータ室内異常検知処理手順について説明する。図3〜図5は、本実施の形態に係るエレベータ室内異常検知処理の例を示すフローチャートである。ここでは、上述した画像処理装置21が情報処理装置22および通信装置23の機能を備えたものとして説明する。
【0036】
図3に示すように、まず、画像処理装置21の制御部によって、異常検知プログラムが実行され、ROMなどの不揮発メモリにおける各種の設定情報や変数などが初期化される(ステップS101)。このステップS101の初期化処理では、具体的に次のような設定情報や変数などが初期化される。
【0037】
すなわち、初期化される設定情報としては、例えば、エレベータ室16内の床面16aから左カメラ17および右カメラ18までの高さh2(図2参照、以下同じ)と、第1閾値(高さ閾値)TL1(図2参照、以下同じ)と、第2閾値(高さ閾値)TL2(図2参照、以下同じ)と、接近距離と、倒れ設定時間と、接近設定時間と、滞在設定時間とが挙げられる。
【0038】
第1閾値TL1は、エレベータ室16内で立った状態である人体10を検出する際に用いられる閾値であり、例えば1mに設定される。第2閾値TL2は、エレベータ室16内で倒れた状態である人体10を検出する際に用いられる閾値であり、例えば20cmに設定される。したがって、例えば人体10の身長(高さ)がh1(図2参照、以下同じ)である場合は、この身長h1と第1閾値TL1および第2閾値TL2とを比較することで、人体の状態を検出することが可能となる。なお、接近距離は、エレベータ室16内の人体10が二人のときの人体10間の一般的な適正間隔を示す距離である。
【0039】
また、倒れ設定時間は、エレベータ室16内の人体10が倒れている状態(倒れ状態)であると判断するための時間である。接近設定時間は、上述したようにエレベータ室16内の人体10が二人であるときに、これら人体10間の間隔が設定された接近距離以下となっている状態(接近状態)であると判断するための時間である。滞在設定時間は、エレベータ室16内の人体10が一人であるときに、この人体10がエレベータ室16内に長時間滞在している状態(滞在状態)であると判断するための時間である。なお、これらの設定情報は、上記ステップS101での初期化処理とともに管理者などによって任意に設定可能となる。
【0040】
また、初期化される変数としては、例えば、上述した倒れ状態が継続している時間を計測するための倒れ状態タイマ用カウンタのカウンタ値と、接近状態が継続している時間を計測するための接近状態タイマ用カウンタのカウンタ値と、滞在時間を計測するための滞在タイマ用カウンタのカウンタ値と、エレベータ室16内に滞在している人体10の床面16aでの座標を保存するためのn人分の立ち位置を保存する立ち位置保存メモリのメモリ内容と、エレベータ室16内の人数を計測するための人数用カウンタのカウンタ値と、倒れ状態が検出中であることを示す倒れ検出中フラグと、接近状態が検出中であることを示す接近検出中フラグと、滞在状態が検出中であることを示す滞在検出中フラグとが挙げられる。上記ステップS101では、これらのカウンタ値がゼロクリアされ、これらのフラグがリセットされる。
【0041】
初期化されたら、制御部によって、不揮発メモリに保存されている各設定時間を参照して、倒れ状態タイマ用カウンタのカウンタ値と倒れ設定時間とを、また、接近状態タイマ用カウンタのカウンタ値と接近設定時間とを、さらに、滞在タイマ用カウンタのカウンタ値と滞在設定時間とを、それぞれ個別に比較して(ステップS102)、各カウンタ値が各設定時間を超えたか否かをそれぞれ個別に判断する(ステップS103)。
【0042】
判断結果により、カウンタ値が設定時間を超えたと判断された場合は(ステップS103のY)、制御部によって、超えたと判断された事象(倒れ状態、接近状態あるいは滞在状態)に関して異常が発生したと判断して通信装置23を介して異常を報知し(ステップS104)、左カメラ17および右カメラ18を駆動してエレベータ室16内を撮影する(ステップS105)。なお、このステップS104での異常報知処理では、例えば警告音声(アラーム音)がスピーカ27,29から出力される場合は、それぞれの事象によって異なる音声を出力するようにしてもよい。
【0043】
カウンタ値が設定時間を超えていないと判断された場合は(ステップS103のN)、上記ステップS105に移行してエレベータ室16内を左カメラ17および右カメラ18によって撮影する。エレベータ室16内を撮影したら、左カメラ17および右カメラ18から得られたステレオ画像の画像情報が画像処理装置21に入力され、制御部によって、このステレオ画像(左カメラ画像および右カメラ画像)をそれぞれ例えば縦横4画素のブロックに分割し(ステップS106)、分割した左カメラ画像と右カメラ画像を用いて公知の対応点探索を行って、視差を算出する(ステップS107)。
【0044】
次に、制御部によって、算出した視差から、分割したブロックごとに被写体としての人体10までの距離を算出し(ステップS108)、床面16aから各カメラ17,18までの高さh2から人体10までの距離を減算して、各ブロックごとに床面16aからの高さを算出する(ステップS109)。
【0045】
各ブロックごとに床面16aからの高さを算出したら、制御部によって、不揮発メモリに保存してある第1閾値TL1を用いて各ブロックごとの高さを公知の2値化演算方法を利用して2値化し、2値画像を生成する(ステップS110)。このステップS110にて生成された2値画像については、第1閾値TL1以上のものを1とし、その他のものを0として、不揮発メモリなどに一時記憶する。
【0046】
そして、制御部によって、生成した2値画像を元画像を構成する全画面領域において輪郭線追跡し、1としたものが連結してまとまっている部分を示す塊状部分をすべて検出し(ステップS111)、すべて検出したか(すなわち、検出が終了したか)否かを判断する(ステップS112)。
【0047】
すべて検出したと判断した場合は(ステップS112のY)、制御部によって、検出したすべての塊状部分において人体10の一人の大きさに近似した円を塊状部分にはめ込み、はめ込めた数を検出人数として計測してエレベータ室16内の人数を算出する(ステップS113)。なお、このステップS113にて塊状部分にはめ込まれる円の直径は任意に設定可能であるが、人体10の一人分の大きさにおおよそ近似させた近似値を用いるのが好適である。
【0048】
人数を算出したら、図4に示すように、制御部によって、各円の中心を床面16aの座標に変換し、エレベータ室16内における人の立ち位置をすべて算出して(ステップS114)、算出した人の立ち位置を一つずつ前回までの立ち位置保存メモリのメモリ内容により示される人の立ち位置と比較する(ステップS115)。このステップS115での比較は、立ち位置保存メモリのメモリ内容により示される人の立ち位置に任意の許容幅をもたせておいて比較し、今回の人の立ち位置が立ち位置保存メモリのメモリ内容により示されるものに該当するかを判定することにより行われる。
【0049】
比較結果により、制御部によって、該当するものがあると判断した場合は(ステップS116のY)、エレベータ室16内における同一人が前回の立ち位置から今回の立ち位置に移動したことを検出した、すなわち、移動を追跡したと判断して、該当する立ち位置保存メモリのメモリ内容を今回の人の立ち位置で上書き保存し更新する(ステップS117)。
【0050】
一方、該当するものがないと判断した場合は(ステップS116のN)、制御部によって、立ち位置保存メモリのメモリ内容に今回の人の立ち位置を追加して更新し(ステップS118)、エレベータ室16内の人数が一人増えたと判断して人数用カウンタのカウンタ値をインクリメントする(ステップS119)。
【0051】
上記ステップS117での更新処理およびステップS119でのインクリメント処理の後、制御部によって、人の立ち位置をすべて比較したか否かを判断し(ステップS120)、すべて比較したと判断した場合は(ステップS120のY)、立ち位置保存メモリのメモリ内容で更新されなかったもの(未更新立ち位置)を削除し(ステップS121)、人数用カウンタのカウンタ値を削除した分だけデクリメントする(ステップS122)。すべて比較していないと判断した場合は(ステップS120のN)、上記ステップS115に移行して比較処理を継続する。
【0052】
次に、制御部によって、人数用カウンタのカウンタ値が1であるか否かを判断し(ステップS123)、カウンタ値が1であると判断した場合は(ステップS123のY)、滞在検出中フラグがONとなっているか否かを判断して(ステップS124)、ONとなっていないと判断した場合は(ステップS124のN)、滞在検出中フラグをONにセットした後、滞在タイマ用カウンタのカウントを開始して(ステップS125)、上記ステップS102に移行し処理を繰り返す。ONとなっていると判断した場合は(ステップS124のY)、同様に上記ステップS102に移行して処理を繰り返す。
【0053】
一方、人数用カウンタのカウンタ値が1でないと判断した場合は(ステップS123のN)、制御部によって、滞在検出中フラグをOFFにリセットした後、滞在タイマ用カウンタのカウント値をゼロクリアして(ステップS126)、人数用カウンタのカウンタ値が2であるか否かを判断する(ステップS127)。
【0054】
人数用カウンタのカウンタ値が2であると判断した場合は(ステップS127のY)、制御部によって、立ち位置保存メモリのメモリ内容を参照して、それぞれの人体10の人の立ち位置から人体10間の距離を算出し、算出した距離と不揮発メモリに保存してある接近距離とを比較して(ステップS128)、算出した距離が接近距離以下であるか否かを判断する(ステップS129)。
【0055】
接近距離以下であると判断した場合は(ステップS129)、制御部によって、接近検出中フラグがONとなっているか否かを判断して(ステップS130)、ONとなっていないと判断した場合は(ステップS130のN)、接近検出中フラグをONにセットした後、接近状態タイマ用カウンタのカウントを開始して(ステップS131)、上記ステップS102に移行し処理を繰り返す。ONとなっていると判断した場合は(ステップS131のY)、同様に上記ステップS102に移行して処理を繰り返す。
【0056】
なお、上記ステップS127にて人数用カウンタのカウンタ値が2でないと判断した場合(ステップS127のN)および上記ステップS129にて接近距離以下でないと判断した場合(ステップS129のN)は、制御部によって、接近検出中フラグをOFFにリセットした後、接近状態タイマ用カウンタのカウント値をゼロクリアして(ステップS132)、同様に上記ステップS102に移行して処理を繰り返す。
【0057】
一方、上記ステップS112(図3参照)にて塊状部分の検出の結果、塊状部分がないと判断した場合は(ステップS112のN)、制御部によって、人数用カウンタのカウンタ値が0であるか否かを判断し(ステップS133)、カウンタ値が0であると判断した場合は(ステップS133のY)、同様に上記ステップS102に移行して処理を繰り返す。
【0058】
カウンタ値が0でないと判断した場合は(ステップS133のN)、倒れ状態検出処理を行うために、図5に示すように、制御部によって、人数用カウンタのカウンタ値が1であるか否かを判断し(ステップS134)、カウンタ値が1でないと判断した場合は(ステップS134のN)、上記ステップS101に移行して初期化処理を行い、以降の処理を繰り返す。
【0059】
カウンタ値が1であると判断した場合は(ステップS134のY)、制御部によって、不揮発メモリに保存してある第2閾値TL2を用いて各ブロックごとの高さを2値化し、2値画像を生成する(ステップS135)。このステップS135にて生成された2値画像については、第2閾値TL2以上のものを1とし、その他のものを0として、不揮発メモリなどに一時記憶する。
【0060】
そして、制御部によって、生成した2値画像を元画像を構成する全画面領域において輪郭線追跡し、1としたものが連結してまとまっている部分を示す塊状部分をすべて検出し(ステップS136)、すべて検出したか(すなわち、検出が終了したか)否かを判断する(ステップS137)。
【0061】
すべて検出したと判断した場合は(ステップS137のY)、制御部によって、検出した塊状部分が1個であるか否かを判断し(ステップS138)、1個であると判断した場合は(ステップS138のY)、倒れ検出中フラグがONとなっているか否かを判断して(ステップS139)、ONとなっていないと判断した場合は(ステップS139のN)、倒れ検出中フラグをONにセットした後、倒れ状態タイマ用カウンタのカウントを開始して(ステップS140)、上記ステップS102に移行し処理を繰り返す。
【0062】
一方、上記ステップS137にて塊状部分の検出の結果、塊状部分がないと判断した場合(ステップS137のN)および上記ステップS139にて倒れ検出中フラグがONとなっていると判断した場合(ステップS139のY)は、同様に上記ステップS102に移行して処理を繰り返す。また、上記ステップS138にて塊状部分が1個でないと判断した場合は(ステップS138のN)、上記ステップS101に移行して初期化処理を行い、以降の処理を繰り返す。
【0063】
このようにしてエレベータ室内異常検知処理を行うことにより、エレベータ室16内の人体10の倒れ状態、接近状態および滞在状態を自動的に判断することができるため、監視者による監視が不要な状態で自動的にエレベータ室16内での異常の発生を検知することが可能となる。
【0064】
なお、上述したエレベータ室内異常検知処理における各タイマの割り込み処理手順は、例えば次のようなものとなる。図6は、本実施の形態に係るエレベータ室内異常検知処理でのタイマ割り込み処理の例を示すフローチャートである。
【0065】
図6に示すように、まず、画像処理装置21の制御部によって、倒れ検出中フラグがONとなっているか否かを判断し(ステップS141)、ONとなっていると判断した場合は(ステップS141のY)、倒れ状態タイマ用カウンタのカウンタ値をカウントアップして(ステップS142)、接近検出中フラグがONとなっているか否かを判断する(ステップS144)。また、倒れ検出中フラグがONとなっていないと判断した場合は(ステップS141のN)、倒れ検出中フラグをOFFにリセットした後、倒れ状態タイマ用カウンタのカウント値をゼロクリアして(ステップS143)、上記ステップS144に移行する。
【0066】
接近検出中フラグがONとなっていると判断した場合は(ステップS144のY)、制御部によって、接近状態タイマ用カウンタのカウンタ値をカウントアップして(ステップS145)、滞在検出中フラグがONとなっているか否かを判断する(ステップS147)。また、接近検出中フラグがONとなっていないと判断した場合は(ステップS144のN)、接近検出中フラグをOFFにリセットした後、接近状態タイマ用カウンタのカウント値をゼロクリアして(ステップS146)、上記ステップS147に移行する。
【0067】
滞在検出中フラグがONとなっていると判断した場合は(ステップS147のY)、制御部によって、滞在タイマ用カウンタのカウンタ値をカウントアップして(ステップS148)、本フローチャートによる一連の処理を終了する。また、滞在検出中フラグがONとなっていないと判断した場合は(ステップS147のN)、滞在検出中フラグをOFFにリセットした後、滞在タイマ用カウンタのカウント値をゼロクリアして(ステップS149)、本フローチャートによる一連の処理を終了する。
【0068】
以上説明したように、上述した一実施の形態では、エレベータ室16内を左カメラ17および右カメラ18によって撮影し、画像処理装置21によってエレベータ室16内の画像から人体10を表す被写体画像を認識するとともに、この被写体画像から人体10に関連する高さ、位置および数などの人体関連情報を算出し、算出された人体関連情報にもとづいて、人体10の状態が特定の状態となった場合に、エレベータ室16内にて人体10に異常が発生したと判断するようにしているので、監視者によるエレベータ室16内の映像(画像)の監視が不要となり、エレベータ室16内で異常が発生した場合に、プライバシーの問題なく自動的にその異常を検知することができる。
【0069】
また、上述した一実施の形態では、画像処理装置21(あるいは情報処理装置22)が、人体関連情報として、人体10の高さ、人体10の位置および人数に関する情報を算出するようにしているので、算出する人体関連情報の項目を限定し、人体関連情報の算出に関する処理負荷を減らして処理時間を短縮することができ、異常の検知を迅速に行うことができる。
【0070】
また、上述した一実施の形態では、画像処理装置21(あるいは情報処理装置22)が、人体10の高さh1が、あらかじめ設定された第2閾値TL2未満となる状態が倒れ設定時間以上継続した場合に、人体10が倒れ状態にあるという異常が発生したと判断するようにしているので、エレベータ室16内で人体10が倒れていることによる異常の検知を容易に行うことができる。
【0071】
また、上述した一実施の形態では、画像処理装置21(あるいは情報処理装置22)が、人体10の人数が一人であるときに、この人体10があらかじめ設定された滞在設定時間を超えてエレベータ室16内に滞在している状態となった場合に、エレベータ室16内で人体10が長時間滞在している状態にあるという異常が発生したと判断するようにしているので、エレベータ室16内に人体10が長時間滞在していることによる異常の検知を容易に行うことができる。
【0072】
また、上述した一実施の形態では、画像処理装置21(あるいは情報処理装置22)が、人体10の人数が二人であるときに、これら人体10間の距離があらかじめ設定してある接近距離以下となる状態が接近設定時間以上継続した場合に、人体10同士が接近している状態にあるという異常が発生したと判断するようにしているので、エレベータ室16内にて人体10同士が接近していることによる異常の検知を容易に行うことができる。
【0073】
さらに、上述した一実施の形態では、画像処理装置21(あるいは通信装置23)が判断結果に応じて、エレベータ室16内での異常の発生をスピーカ27,29などを介して報知するようにしているので、エレベータ室16内で検知された異常の発生を即座に報知することができるので、緊急対応などの措置を迅速に図ることができる。
【0074】
なお、上述した一実施の形態において、通信装置23が外部の通信ネットワーク等と接続され、エレベータが設置された建物とは異なる遠隔地に所在するエレベータを管理する管理会社や防犯セキュリティ上重要な警備会社などに設置された管理装置25との間で通信を行い、エレベータ室16内での異常の発生を検知可能な構成としてもよい。
【0075】
なお、上述した一実施の形態で説明したエレベータ室内異常検知法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータ等のコンピュータで実行することにより実現可能である。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されており、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行され得る。またこのプログラムは、インターネット等の通信ネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影した撮影画像にもとづいてエレベータ室内に発生した異常を検知する防犯システムやその防犯システムに用いられるパーソナルコンピュータ、携帯情報端末などに適用するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエレベータ室内異常検知装置の機能的構成の例を示す機能ブロック図である。
【図2】エレベータ室内異常検知装置の構成の例を示す説明図である。
【図3】エレベータ室内異常検知処理の例を示すフローチャートである。
【図4】エレベータ室内異常検知処理の例を示すフローチャートである。
【図5】エレベータ室内異常検知処理の例を示すフローチャートである。
【図6】エレベータ室内異常検知処理でのタイマ割り込み処理の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
11 撮影部
12 画像認識部
13 情報算出部
14 異常判断部
15 異常報知部
16 エレベータ室
17 左カメラ
18 右カメラ
21 画像処理装置
22 情報処理装置
23,24 通信装置
25 管理装置
26,28 マイク
27,29 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影する撮影手段と、
該撮影手段によって撮影されたエレベータ室内の画像から人体を表す被写体画像を認識する被写体画像認識手段と、
該被写体画像認識手段によって認識された被写体画像から人体に関連する人体関連情報を算出する人体関連情報算出手段と、
該人体関連情報算出手段によって算出された人体関連情報にもとづいて、人体の状態が特定の状態となった場合に、前記エレベータ室内にて該人体に異常が発生したと判断する異常判断手段と、を備えた
ことを特徴とするエレベータ室内異常検知装置。
【請求項2】
前記人体関連情報算出手段は、前記人体関連情報として、前記人体の高さ、位置および数に関する情報を算出する
請求項1記載のエレベータ室内異常検知装置。
【請求項3】
前記異常判断手段は、前記人体関連情報算出手段によって算出された情報に応じた人体の高さが、あらかじめ設定された所定の閾値未満となる状態が所定期間以上継続した場合に、異常が発生したと判断する
請求項2記載のエレベータ室内異常検知装置。
【請求項4】
前記異常判断手段は、前記人体関連情報算出手段によって算出された情報に応じた人体の数が一つであるときに、該人体があらかじめ設定された滞在時間を超えて前記エレベータ室内に滞在している状態となった場合に、異常が発生したと判断する
請求項2記載のエレベータ室内異常検知装置。
【請求項5】
前記異常判断手段は、前記人体関連情報算出手段によって算出された情報に応じた人体の数が二つであるときに、該人体間の距離があらかじめ設定してある距離以下となる状態が所定期間以上継続した場合に、異常が発生したと判断する
請求項2記載のエレベータ室内異常検知装置。
【請求項6】
前記異常判断手段によって判断された判断結果に応じて、前記エレベータ室内での異常の発生を報知する異常報知手段をさらに備えた
請求項1から請求項5のうちいずれかに記載のエレベータ室内異常検知装置。
【請求項7】
エレベータ室内を複数の異なる位置から撮影する撮影処理と、
該撮影処理にて撮影されたエレベータ室内の画像から人体を表す被写体画像を認識する被写体画像認識処理と、
該被写体画像認識処理にて認識された被写体画像から人体に関連する人体関連情報を算出する人体関連情報算出処理と、
該人体関連情報算出処理にて算出された人体関連情報にもとづいて、人体の状態が特定の状態となった場合に、前記エレベータ室内にて該人体に異常が発生したと判断する異常判断処理と、を含む
ことを特徴とするエレベータ室内異常検知方法。
【請求項8】
前記人体関連情報算出処理では、前記人体関連情報として、前記人体の高さ、位置および数に関する情報を算出する
請求項7記載のエレベータ室内異常検知方法。
【請求項9】
前記異常判断処理では、前記人体関連情報算出処理にて算出された情報に応じた人体の高さが、あらかじめ設定された所定の閾値未満となる状態が所定期間以上継続した場合に、異常が発生したと判断する
請求項7記載のエレベータ室内異常検知方法。
【請求項10】
前記異常判断処理では、前記人体関連情報算出処理にて算出された情報に応じた人体の数が一つであるときに、該人体があらかじめ設定された滞在時間を超えて前記エレベータ室内に滞在している状態となった場合に、異常が発生したと判断する
請求項7記載のエレベータ室内異常検知方法。
【請求項11】
前記異常判断処理では、前記人体関連情報算出処理にて算出された情報に応じた人体の数が二つであるときに、該人体間の距離があらかじめ設定してある距離以下となる状態が所定期間以上継続した場合に、異常が発生したと判断する
請求項7記載のエレベータ室内異常検知方法。
【請求項12】
前記異常判断処理にて判断された判断結果に応じて、前記エレベータ室内での異常の発生を報知する異常報知処理をさらに含む
請求項7から請求項11のうちいずれかに記載のエレベータ室内異常検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−143654(P2008−143654A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333033(P2006−333033)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】