説明

エレベータ用ドア装置

【課題】本発明は、敷居上に長尺異物が存在しても、十分にその長尺異物を検出することができるエレベータ用ドア装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、上部がドアレール3に案内され下部が前記ドアレールと平行な敷居2に案内されて横方向に開閉するドア4A,4Bの戸当り側端部の高さ方向に沿って圧力検出手段11A,11Bを設けると共に、前記ドア4A,4Bの下端の戸当り側端部に位置し前記ドアの閉動作時に前記敷居2上の長尺異物14を前記圧力検出手段11A,11Bへ誘導する異物誘導手段12A,12Bを設けることで、ドアの閉動作時に、敷居2上にある長尺異物14を異物誘導手段12A,12Bにより圧力検出手段11A,11Bに誘導して検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ用ドア装置に係り、特に、ロープ等の可撓性長尺物や針金やパイプ等の棒状長尺物を含む長尺異物がドアに挟み込まれたことを検出できるエレベータ用ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、長尺異物がドアに挟み込まれたことを検出できるエレベータ用ドア装置は、例えば特許文献1に示すように、既に提案されている。
【0003】
特許文献1に示す構成は、ドアの全高に亘って異物検出装置を設けているが、ドアの下端と敷居との隙間に長尺異物が巻き込まれた場合、それを検出することができない問題がある。
【0004】
即ち、ドアの下端と敷居との隙間は、エレベータ協会標準(JEAS−207 標02−5)で6mm以下となるように規定されているが、ドア装置の製造や据付精度あるいは長期使用による出入口周辺構造の歪み等を考慮すると、その隙間を0mmにすることは不可能であり、通常初期隙間が5mm程度となるように製造されている。
【0005】
そのために、ドア下端の5mmの隙間に長尺異物が入り込んだ場合、ドアに設けた異物検出装置ではそれを検出できない問題がある。
【0006】
他方、特許文献2に示すように、ドアの戸当り側端部に面一となるように、ドア下端と敷居との隙間を塞ぐ遮蔽板を設け、仮に、ドア下端と敷居との隙間に対応する遮蔽板に異物が挟まった場合、ドアが完全に閉じられないので、異物検出装置の機能を有するドア閉じ確認スイッチが入らないので、乗かごの昇降を防止するものが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−262636号公報
【特許文献2】特開平9−12254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2に示す異物検出装置は、敷居上面で長尺異物を挟み込んだままドアが閉じた場合、僅かな遊びの範囲でドアが傾斜して異物検出装置の機能を有するドア閉じ確認スイッチが入ってしまう問題がある。このようなドア閉じ時のドアの僅かな傾斜は、物を挟み込んだ場合のほか、製造及び据付段階で稀に発生し、さらには長期使用による出入口周辺構造の歪み等に基づいて生じることがある。
【0009】
本発明の目的は、敷居上に長尺異物が存在しても、十分にその長尺異物を検出することができるエレベータ用ドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、上部がドアレールに案内され下部が前記ドアレールと平行な敷居に案内されて横方向に開閉するドアの戸当り側端部の高さ方向に沿って接触圧力を検出する圧力検出手段を設けると共に、前記ドアの下端の戸当り側端部に位置し前記ドアの閉動作時に前記敷居上の長尺異物を前記圧力検出手段へ誘導する異物誘導手段を設けたのである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、ドアの閉動作時に、敷居上にある長尺異物を異物誘導手段により圧力検出手段に誘導し、この圧力検出手段に誘導した長尺異物を挟み込ませることで、その圧力を検出し、その後の必要な動作を行わせるようにしたので、ドア下部隙間に巻き込まれた長尺異物の検出を不能にしたり、僅かなドアの傾きによって長尺異物の検出を不能にしたりすることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明によるエレベータ用ドア装置の第1の実施の形態を図1〜図5に示す両開きのエレベータ用ドア装置に基づいて説明する。
【0013】
両開きのエレベータ用ドア装置は、門型の出入口枠体1と、その下方に水平に配設された敷居2と、前記出入口枠1の上方に前記敷居2と平行に配設されたドアレール3と、このドアレール3に懸垂されて左右方向に案内されたドア4A,4Bとから構成されている。
【0014】
前記ドア4A,4Bは、その上端部を前記ドアレール3上を転動するローラ5を軸支したハンガー6によって夫々懸垂されており、下端部には前記敷居2の溝7内に臨むガイド手段8を備えている。このガイド手段8は、前記ドア4A,4Bに固定された支持金具9と、この支持金具によって支持され前記溝7内を摺動するガイドシュー10とを有している。
【0015】
上記構成とすることで、図示しない駆動手段の動力によって、前記ドア4A,4Bは左右に駆動され、出入口枠1を開閉する。
【0016】
一方、前記ドア4A,4Bの戸当り側端部には、その全高に亘って圧力検出手段11A,11Bが設けられている。この圧力検出手段11A,11Bは、例えばドア開閉方向に隙間を介しドアの全高に亘って対向配置された可撓性の箔状電極とこれらを通常時には間隔をもって対向保持させる周知の絶縁弾性体(いずれも図示せず)から構成されており、箔状電極からは図示しない信号線が引き出され、図示しないエレベータ制御装置に接続されている。
【0017】
さらに、各ドア4A,4Bの下端部の戸当り側端部には、異物誘導手段12A,12Bが設けられている。これら異物誘導手段12A,12Bは、ガイド手段8の支持金具9に固定された塞ぎ板である。この塞ぎ板は、各ドア4A,4Bの下端の戸当り側端部に位置して前記ドア4A,4Bと前記敷居2との隙間を塞ぐものである。また、図2に示すように、この塞ぎ板のドア閉じ方向側下端は、前記敷居2の溝7内に位置すると共に、前記圧力検出手段11A,11Bの先端よりもドア閉じ方向に突出している。そして、この塞ぎ板は、前記敷居2の溝7内のドア閉じ方向側下端から前記圧力検出手段11A,11Bの先端に至る上向きの傾斜部13A,13Bを有している。このほか、図3に示すように、異物誘導手段12A,12Bである塞ぎ板は、平面的に見て敷居2の溝7の幅方向に、互いに変位して設けられており、ドア4A,4Bが全閉したとき干渉しないようにしている。
【0018】
上記構成の両開きのエレベータ用ドア装置において、図1に示すように、敷居2上に長尺異物14、例えば、ペット犬のチェーン等からなるリードが存在していた場合、ドア閉じ動作の過程で、一方あるいは両方のドアの異物誘導手段12A,12Bが、リードをドア閉じの中央側に次第に移動させて行く。この移動の過程で、ペット犬の飼い主が気付いてリードを手繰り寄せるか手放して敷居2上からリードを撤去すれば各ドア4A,4Bは全閉して乗かごは昇降を開始する。しかしながら、飼い主が気付かず、リードがドア閉じの中央側に至った場合、両側の異物誘導手段12A,12Bが、図5に示すように、出入口進行方向から見て、その傾斜部13A,13Bが交差することによって、リードは掬い上げられ、圧力検出手段11A,11Bの間に誘導される。誘導されたリードは、ドア閉じ動作によって圧力検出手段11A,11Bの少なくとも一方を撓ませ、それによって異物の存在が検出される。圧力検出手段11A,11Bからの検出信号は制御装置に送られて、乗かごあるいは乗り場側に設けた案内手段(スピーカや表示装置)を介して警報を発すると共に、乗かごを昇降させる信号の出力を停止させる。これにより、リードをドア4A,4Bに挟み込んだまま乗かごを昇降させるために発生する各種事故を防止することができる。
【0019】
ところで、上記実施の形態において、異物誘導手段12A,12を塞ぎ板としたことで、敷居2とドア4A,4B間の隙間を塞ぐことができるので、防炎、防火仕様のエレベータ用ドア装置には好適である。しかし、防炎、防火仕様のエレベータ用ドア装置以外では、異物誘導手段12A,12を板状に形成させる必要はなく、その場合には傾斜部13A,13Bが形成できる部材をガイド手段8に支持させればよい。
【0020】
さらに、前記傾斜部13A,13Bの角度は任意であるが、ドアの閉じ状態や乗客の乗降を考慮して決定すればよい。また、傾斜部13A,13Bは必ずしも、直線状に形成する必要はなく、ドア移動方向に沿った凹曲状に形成してもよい。
【0021】
以上に実施の形態では、板状の異物誘導手段12A,12Bを敷居2の幅方向にずらして設けたものであるが、長尺異物14の救い上げを容易にするために、図6に示す第1の変形例のように、例えば、ドア4A側の板状の異物誘導手段12Aをドア4Aの圧さ方向の中央部から突出させ、ドア4B側の板状の異物誘導手段12Bを、中央の異物誘導手段12Aを挟み込むように、2つの誘導手段12B1,12B2を突出させればよい。
【0022】
さらに、以上の実施の形態は、異物誘導手段12A,12Bをガイド手段8の支持金具9を利用して固定したものであるが、図7に示す第2の変形例のように、支持金具9を戸当り側に突出させ、この突出した支持金具9を異物誘導手段12A,12Bとすることも可能である。その場合には、全閉時の緩衝を防止するために、各ドア4A,4Bの支持金具9の突出させる部分を、敷居2の幅方向で互いに逆方向に変位させた後、突出させるようにすればよい。
【0023】
ところで、以上の実施の形態は、異物誘導手段12A,12Bをガイド手段8に固定したものであるが、ドア4A,4Bの下部に直接固定してもよいのは勿論である。
【0024】
また、以上の実施の形態は、がごドアに関するものであるが、乗り場ドアに関しても同様なことが云える。
【0025】
以上の実施の形態はまた、ドア4の戸当り側端部の全高に亘って圧力検出手段11を設けているが、異物誘導手段によって誘導された異物を圧力検出手段11で検出できればよいので、ドア4の戸当り側端部の一部にのみ圧力検出手段11を設けるようにしてもよい。
【0026】
さらに、以上の実施の形態は、両開きのエレベータ用ドア装置を一例に説明したが、片開きのエレベータ用ドア装置にも適用できることは云うまでもない。その場合には、一方側のドアの戸当り側と、このドアと対向する出入口枠の戸当り部分に、圧力検出手段と異物誘導手段とを上記実施の形態にしたがって設けて対応することで、両開きのエレベータ用ドア装置と同じように長尺異物の検出を行うことができる。
【0027】
このほか、異物誘導手段をガイド手段8あるいはドア4A,4Bに一体に設けた例を説明したが、ドアの閉動作時に、ドアの移動力を利用したり、専用の駆動装置を駆動させたりして昇降あるいは回転動作して異物を掬い上げ、掬い上げた長尺異物を圧力検出手段まで誘導する異物誘導手段を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるエレベータ用ドア装置の第1の実施の形態を示すドア閉じ中の正面図。
【図2】図1に示すドアの下部を示す拡大図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2のA−A線に沿う縦断拡大図。
【図5】図1のエレベータ用ドア装置のドア閉じ真際を示す正面図。
【図6】異物誘導手段の第1の変形例を示す図3相当図。
【図7】異物誘導手段の第2の変形例を示す図3相当図。
【符号の説明】
【0029】
1…出入口枠体、2…敷居、3…ドアレール、4A,4B…ドア、5…ローラ、6…ハンガー、7…溝、8…ガイド手段、9…支持金具、10…ガイドシュー、11A,11B…圧力検出手段、12A,12B…異物誘導手段、12B1,12B2…誘導手段、13A,13B…傾斜部、14…長尺異物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部がドアレールに案内され下部が前記ドアレールと平行な敷居に案内されて横方向に開閉するドアと、このドアの戸当り側端部の高さ方向に沿って設けられ接触圧力を検出する圧力検出手段と、前記ドアの下端の戸当り側端部に位置し前記ドアの閉動作時に前記敷居上の長尺異物を前記圧力検出手段へ誘導する異物誘導手段とを備えたことを特徴とするエレベータ用ドア装置。
【請求項2】
上部がドアレールに案内され下部が前記ドアレールと平行な敷居に案内されて横方向に開閉するドアと、このドアの戸当り側端部の高さ方向に沿って設けられ接触圧力を検出する圧力検出手段と、前記ドアの下端の戸当り側端部に位置し前記ドアの閉動作によって敷居上の長尺異物を前記圧力検出手段へ誘導する異物誘導手段とを備えたことを特徴とするエレベータ用ドア装置。
【請求項3】
上部がドアレールに案内され下部が前記ドアレールと平行な敷居に案内されて横方向に開閉するドアと、このドアの戸当り側端部の高さ方向に沿って設けられ接触圧力を検出する圧力検出手段と、前記ドアの下端の戸当り側端部に位置し前記ドアの閉動作によって前記敷居上の長尺異物を前記圧力検出手段へ誘導する異物誘導手段とを備え、この異物誘導手段は、下端が前記敷居の溝内に位置していると共に前記圧力検出手段よりもドア閉じ方向に突出しており、かつ前記敷居の溝内の下端から前記圧力検出手段に至る上向きの傾斜部を有していることを特徴とするエレベータ用ドア装置。
【請求項4】
上部がドアレールに案内され下部が前記ドアレールと平行な敷居に案内されて横方向に開閉するドアと、このドアの戸当り側端部の高さ方向に沿って設けられ接触圧力を検出する圧力検出手段と、前記ドアの下端の戸当り側端部に位置して前記ドアと前記敷居との隙間を塞ぐ塞ぎ板とを備え、この塞ぎ板のドア閉じ方向側下端は、前記敷居の溝内に位置して前記圧力検出手段よりもドア閉じ方向に突出しており、かつ前記塞ぎ板は、前記敷居の溝内のドア閉じ方向側下端から前記圧力検出手段に至る上向きの傾斜部を有して異物誘導手段を構成していることを特徴とするエレベータ用ドア装置。
【請求項5】
対向するドアの戸当り側端部に設けられた各異物誘導手段は、前記敷居の幅方向に互いに変位して設けられていることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のエレベータ用ドア装置。
【請求項6】
前記異物誘導手段は、前記ドアに取付けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のエレベータ用ドア装置。
【請求項7】
前記異物誘導手段は、前記ドア下端に設けられ前記敷居の溝内に臨むガイド手段に取付けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載のエレベータ用ドア装置。
【請求項8】
前記ドアは両開きのドアであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のエレベータ用ドア装置。
【請求項9】
前記ドアは片開きのドアであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のエレベータ用ドア装置。
【請求項10】
前記異物誘導手段は、ドア閉じ時に前記ドアの戸当り側端部が当接するドア枠側にも設けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は9記載のエレベータ用ドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−326699(P2007−326699A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160784(P2006−160784)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】