説明

エレベータ装置

【課題】紐状体、例えば、ペットに繋がれた紐がエレベータの戸に挟まれた状態のまま、かごが走行を開始してしまうことを確実に防止することができるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】エレベータ出入口の両側に、複数の発光素子14及び受光素子13からなる光電センサを設置する。また、受光素子13を複数の区分に分割し、その区分毎に、受光素子13による受光量を検出する検出部15乃至18と、検出部15乃至18によって検出された区分毎の受光量に基づいて、出入口の異物の有無を判定する判定部19と、判定部19の判定結果に基づいて、エレベータの戸を開閉制御する戸駆動制御部20とを備える。そして、上記判定部19により、複数の区分のうち何れかの区分の受光量が第1所定値に満たない場合、及び、全区分の総受光量が第2所定値に満たない場合のそれぞれの場合において、出入口の異物有りを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペットに繋がれた紐等がエレベータの戸に挟まれたまま、かごが走行を開始してしまうことを防止するエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、集合住宅や複合商業施設等において、飼主がペットと共にエレベータを利用することが多くなっている。このような事情に鑑み、例えば、従来技術として、エレベータのかごの床面に多数の金属板を設置することにより、これらの金属板の通電状態に基づいて、ペットの乗り込みを検知できるようにしたエレベータも提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−1801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペットを連れてエレベータを利用する場合、戸閉動作が開始する直前に、ペットがかごの外に飛び出してしまうようなことも考えられる。特許文献1記載のものを含め、従来のエレベータでは、上述のようにペットとそのペットの飼主とがかごと乗場とに分かれた状態で戸閉されてしまうと、ペットの首輪に繋がれた紐がエレベータの戸に挟まれた状態でエレベータの走行が開始され、思わぬ事故に繋がる恐れがあった。
【0005】
なお、エレベータには、一般に、かご戸にセフティシューが設けられており、異物の挟まれや衝突を検出できるように構成されている。しかし、このセフティシューは、かご戸に対して戸開方向に移動されて初めて異物を検出できる構成であるため、小型犬に繋がれた細い紐のようなものがエレベータの戸に挟まれた場合には、検出できないことがあった。なお、このようなことは、ペットに繋がれた紐や綱の他にも、例えば、電化製品等に繋がれた電気コードや、警察官が犯人に繋いだロープのような紐状体がエレベータの戸に挟まれることによっても、同様に発生し得る。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、紐状体、例えば、ペットに繋がれた紐がエレベータの戸に挟まれた状態のまま、かごが走行を開始してしまうことを確実に防止することができるエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータの制御装置は、エレベータ出入口の一側に設けられ、出入口の所定の高さの範囲に渡って配置された複数の発光素子と、出入口の他側に設けられ、各発光素子に対応するように、出入口の所定の高さの範囲に渡って配置された複数の受光素子と、受光素子を複数の区分に分割し、その区分毎に、受光素子による受光量を検出する検出部と、検出部によって検出された区分毎の受光量に基づいて、出入口の異物の有無を判定する判定部と、判定部の判定結果に基づいて、エレベータの戸を開閉制御する戸駆動制御部と、を備え、判定部は、複数の区分のうち何れかの区分の受光量が第1所定値に満たない場合、及び、全区分の総受光量が第2所定値に満たない場合のそれぞれの場合において、出入口の異物有りを判定するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、紐状体、例えば、ペットに繋がれた紐がエレベータの戸に挟まれた状態のまま、かごが走行を開始してしまうことを確実に防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのドア装置を示す要部平面図、図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのドア装置を示す要部斜視図、図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置を示す要部構成図、図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の機能を説明するための図である。
【0011】
図1及び図2において、1はエレベータの乗場、2は乗場1に立設された乗場三方枠の縦柱、3は乗場三方枠及び乗場1の床面によって形成された乗場出入口、4a及び4bは乗場出入口3を開閉する乗場戸である。また、5はエレベータ昇降路内を昇降するかご、6はかご5の床面及び袖壁7によって形成されたかご出入口、8a及び8bはかご出入口を開閉するかご戸である。なお、上記乗場戸4a、4b及びかご戸8a、8bは、水平方向に移動して各出入口3及び6を開閉する両開き方式のものを示している。
【0012】
9a及び9bはかご戸8a及び8bの各出入口側端部に上下に渡って設けられたセフティシューである。なお、図2は一方のセフティシュー9bを示している。セフティシュー9a及び9bは、かご戸8a及び8b裏面の各戸当り側端部に、かご戸8a及び8bの開閉方向に進退自在に設けられている。また、セフティシュー9a及び9bは、その一部が常時にかご戸8a及び8bの各戸当り側端面からかご出入口6側に突出するように配置されている。そして、このセフティシュー9a又は9bが戸閉動作時にかご戸8a及び8bに対して戸開方向に移動されることにより、検出スイッチ(図示せず)が動作されて、戸の反転動作が行われる。
【0013】
具体的に、セフティシュー9bは、その要部を支持する支持体10がリンク11によって支持されている。そして、上記支持体10は、リンク11の一端部が支持体10に、他端部がかご戸8bの裏面にそれぞれ回動自在に固定されることにより、かご戸8bの開閉方向に進退自在に支持される。また、上記支持体10には、その一部がかご戸8bの戸当り側端面からかご出入口6側に突出するように、突出部12が着脱自在に設けられている。この突出部12は、複数(実施の形態1においては、第1突出部12a乃至第4突出部12d)に分割構成されている。そして、第1突出部12a乃至第4突出部12dは、支持体10に適切に固定されることにより、全体として、上下方向に連続して一直線状に配置される。なお、第1突出部12a乃至第4突出部12dは、支持体10に対して、それぞれ独立して着脱自在な構成を有している。
【0014】
また、上記セフティシュー9a及び9bには、光電センサが備えられている。この光電センサは、セフティシュー9a及び9b間の異物の有無、即ち乗降客の有無を非接触で検出できる構成を有している。光電センサは、例えば、一方のセフティシュー9bに設けられた複数の受光素子13と、他方のセフティシュー9aに設けられた、各受光素子13に対応する複数の発光素子14とから構成される。かかる構成の光電センサでは、各発光素子14からのビームが、対応の受光素子13向けて出射されることにより、受光素子13の受光量に基づいて、乗降客の有無が判定される。
【0015】
具体的に、受光素子13は、かご出入口6の所定の高さの範囲に渡って配置されるように、セフティシュー9bの各突出部12a乃至12d内に、上下に連続するように複数配置されている。同様に、発光素子14も、かご出入口6の所定の高さの範囲に渡って配置されるように、セフティシュー9aの各突出部12a乃至12d内に、上下に連続するように複数配置されている。
【0016】
そして、第1検出部15乃至第4検出部18は、受光素子13が受光した光の量を、突出部12a乃至12d毎に検出する。即ち、受光素子13は複数の区分(実施の形態1においては、各突出部12a乃至12d)に分割され、この分割された区分毎に、受光素子13による受光量が検出される。具体的に、第1突出部12aに設けられた各受光素子13(第1区分)の受光量は第1検出部15によって、第2突出部12bに設けられた各受光素子13(第2区分)の受光量は第2検出部16によって、第3突出部12cに設けられた各受光素子13(第3区分)の受光量は第3検出部17によって、第4突出部12dに設けられた各受光素子13(第4区分)の受光量は第4検出部18によってそれぞれ検出される。
【0017】
そして、判定部19は、第1検出部15乃至第4検出部18によって検出された区分毎の受光量、並びに、全区分の総受光量に基づいて、セフティシュー9a及び9b間の異物の有無を判定する。具体的に、判定部19は、第1検出部15乃至第4検出部18によって検出された各受光量の何れかが第1所定値に満たない場合に、異物有りを判定する。また、判定部19は、第1検出部15乃至第4検出部18によって検出された受光量の合計が第2所定値に満たない場合に、異物有りを判定する。
【0018】
そして、戸駆動制御部20は、判定部19によって異物有りが判定されると、その異物が戸(乗場戸4a及び4b、かご戸8a及び8b)に挟まれたり衝突したりすることを回避するため、戸を反転動作させたり、戸閉速度を遅らせたりする等の制御を行う。
【0019】
この発明の実施の形態1によれば、紐状体、例えば、ペットに繋がれた紐がエレベータの戸に挟まれた状態のまま、かご5が走行を開始してしまうようなことを確実に防止することができるようになる。即ち、受光素子13を複数の区分に分割して、この区分毎に、受光素子13による受光量を検出するため、細い紐状体であっても、その有無を精度良く判定することが可能となる。
【0020】
例えば、ペットとそのペットの飼主とがかご5と乗場1とに分かれてしまった場合、発光素子14及び受光素子13間には、ペットに繋がれた細い紐しか存在しない。かかる場合、受光素子13の総受光量を基準にして異物の有無を判断すると、上記紐によって遮られる光が上記総受光量と比較して極僅かであるため、正確な判断が困難になるといった問題があった。
【0021】
これに対し、上記構成のエレベータ装置によれば、上記総受光量よりも小さな値である、区分毎の受光量を基準にして異物の有無を判断するため、判定精度を大幅に向上させることができる。一方、ペットの移動に伴い紐が上下方向に移動し、紐が各発光素子14の光を極短時間だけ遮るような場合でも、受光素子13の感度を上げることなく正確な判定を行うことができる。即ち、各区分(各突出部12a乃至12d)には、上下方向に連続する複数の受光素子13が備えられるため、上下動する紐を、各区分の受光素子13全体で捉えることによって、上記効果を得ることが可能となる。例えば、紐が第2区分の高さを縦断する場合、紐が第2区分の各受光素子13への光を遮断する時間が極僅かであっても、紐は第2区分の各受光素子13への光を順次遮断することになるため、第2区分全体の受光量で見れば容易に受光量の低下を確認できる。
【0022】
また、図4に示すように、ペットのみがエレベータ出入口を通過したことを確実に検出できれば、ペットに繋がれた紐がエレベータの戸に挟まれるといった不具合を確実に防止できるようになる。したがって、ペット同伴時の運転モードと通常運転モードとが切換可能なエレベータ装置においては、ペット同伴時の運転モードが選択された際に、判定部19が、最下段の区分の受光量が第1所定値に満たない場合、及び、全区分の総受光量が第2所定値に満たない場合のそれぞれの場合において、エレベータ出入口の異物有りを判定するようにしても良い。
【0023】
また、上記構成のエレベータ装置では、受光素子13が、支持体10に着脱自在に設けられた各突出部12a及び12d内に配置されている。したがって、各突出部12a乃至12dや受光素子13が破損又は故障した場合に、各突出部12a乃至12dごと交換でき、保守性が向上する。なお、上述のように、受光素子13を各突出部12a乃至12dごと交換可能に構成するには、例えば、支持体10と各突出部12a乃至12dとの間をピンとコネクタとの着脱によって接続できるように構成し、結線作業を省略するようにしても良い。かかる構成によれば、作業に要する時間、即ちエレベータの停止時間を短くでき、サービスの低下を防止できる。
【0024】
なお、上記実施の形態1では、光電センサがセフティシュー9a及び9bに設けられた場合について説明したが、光電センサをかご戸8a及び8b、袖壁7、或いは乗場1側に設置しても、上記と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータのドア装置を示す要部平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータのドア装置を示す要部斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置を示す要部構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の機能を説明するための図である。
【符号の説明】
【0026】
1 乗場、 2 縦柱、 3 乗場出入口、 4a 乗場戸、 4b 乗場戸、
5 かご、 6 かご出入口、 7 袖壁、 8a かご戸、 8b かご戸、
9a セフティシュー、 9b セフティシュー、 10 支持体、 11 リンク、
12 突出部、 12a 第1突出部、 12b 第2突出部、
12c 第3突出部、 12d 第4突出部、 13 受光素子、 14 発光素子、
15 第1検出部、 16 第2検出部、 17 第3検出部、 18 第4検出部、
19 判定部、 20 戸駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ出入口の一側に設けられ、前記出入口の所定の高さの範囲に渡って配置された複数の発光素子と、
前記出入口の他側に設けられ、前記各発光素子に対応するように、前記出入口の所定の高さの範囲に渡って配置された複数の受光素子と、
前記受光素子を複数の区分に分割し、その区分毎に、前記受光素子による受光量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記区分毎の受光量に基づいて、前記出入口の異物の有無を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、エレベータの戸を開閉制御する戸駆動制御部と、
を備え、
前記判定部は、前記複数の区分のうち何れかの区分の受光量が第1所定値に満たない場合、及び、全区分の総受光量が第2所定値に満たない場合のそれぞれの場合において、前記出入口の異物有りを判定することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
ペット同伴時の運転モードと通常運転モードとが切換可能なエレベータ装置において、
判定部は、ペット同伴時の運転モードでは、最下段の区分の受光量が第1所定値に満たない場合、及び、全区分の総受光量が第2所定値に満たない場合のそれぞれの場合において、エレベータ出入口の異物有りを判定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
分割された各区分に、上下に連続する複数の受光素子が備えられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
受光素子は、エレベータ出入口の他側に対して、分割された区分毎に一体的に着脱自在で交換可能なことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項5】
エレベータのかご戸に進退自在に設けられたセフティシューの支持体と、
その一部が常時に前記かご戸の戸当り側端面から出入口側に突出するように、前記支持体に着脱自在に設けられ、全体として上下方向に一直線状に配置される複数の突出部と、
を備え、
受光素子は、前記突出部に設けられ、前記突出部ごと交換可能なことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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