説明

エレベータ装置

【課題】利用者の利便性を損なうことなく、待機階への走行時におけるピーク電力の抑制や消費電力低減を図ることができるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】乗りかご1が待機階になく乗り場呼びおよびかご行き先階登録がないときに待機エレベータと判定する待機エレベータ判定手段29と、待機エレベータと判定した乗りかご1の待機階を決定する待機階決定手段30と、待機エレベータが次の新規乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを算出する予測時間算出手段31と、待機エレベータの乗りかご1を予測時間TA内に待機階へと走行するときの速度および加速度を決定する速度・加速度決定手段32とを備え、速度・加速度決定手段32は、待機エレベータの乗りかご1を待機階へと走行する速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、待機状態の乗りかごを所定の待機階に移動させる方式のエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ装置では、呼びが途絶えた時点で乗りかごを最終サービス階に放置するものと、所定の待機階に移動させて待機させるものとがある。例えば、エレベータの呼びが途絶えた時点で、その時点より所定時間前までの間に発生した上昇方向乗り場呼びと下降方向乗り場呼びとの発生数を比較し、上昇方向乗り場呼びが多い場合は下層の所定の待機階に、一方、下降方向乗り場呼びが多い場合は上層の所定の待機階に乗りかごを待機させることにより、利用者の待ち時間を短くし、サービスの向上を図るもの(例えば、特許文献1を参照)や、単位時間毎の各階の乗り場呼び登録個数を曜日及び時間帯毎に記憶し過去並びに現在のデータのうち少なくとも一方のデータを用いて、各時間帯において最も乗り場呼び登録個数が多い階に乗りかごを待機させるもの(例えば、特許文献2を参照)や、各々の乗り場からの乗り場呼びの発生状況を、月別、時間別、曜日別等に記憶し、これらの学習データから各階の需要を予測し、需要の大きな階を求めてエレベータを待機させるもの(例えば、特許文献3を参照)が知られている。
【0003】
また、従来のエレベータ装置において、高層ビルで強風時に危険回避のため、基準階へ乗りかごを戻す運行制御を行うときに風速によっては低速でかごを動かすことが記載されている(例えば、特許文献4を参照)。さらに、呼び発生率の高い階に待機エレベータの乗りかごを事前配車する気配り制御で、該当階が複数ある場合は移動距離が短い階を選ぶことで省エネにも効果がある旨を述べたもの(例えば、特許文献5を参照)や、省エネ目標値を定め、実際の消費電力値と比較して目標値を超えないようにエレベータの速度制御定数を調整するもの(例えば、特許文献6を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−179681号公報
【特許文献2】特開昭57−121569号公報
【特許文献3】特開昭60−209475号公報
【特許文献4】実開昭62−121259号公報
【特許文献5】特開平10−36019号公報
【特許文献6】特開2007−55700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1〜3を含めた従来のエレベータ装置は、少なくとも一定の時間内でかご呼びが途絶え利用率が低下した状態を待機状態として検出したにも拘わらず、同状態における省エネ効果を十分に考慮していなかった。このため待機階を決定した後、省エネ効果をどのように実現しながら乗りかごを待機階まで走行するかということについては検討がなされていなかった。
【0006】
本発明の目的は、利用者の利便性を損なうことなく、待機階への走行時におけるピーク電力の抑制や消費電力低減を図ることができるようにしたエレベータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、乗りかごの昇降を制御するエレベータ制御装置と、上記乗りかごが待機階になく乗り場呼びおよびかご行き先階登録がないときに待機エレベータと判定する待機エレベータ判定手段と、前記待機エレベータと判定した前記乗りかごの待機階を決定する待機階決定手段と、前記待機エレベータの前記乗りかごを待機階へと走行する速度および加速度を決定する速度・加速度決定手段とを備えたエレベータ装置において、前記速度・加速度決定手段は、前記待機エレベータの前記乗りかごを待機階へと走行する速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくしたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、利用率が低下した状態を待機状態として検出すると同時に、待機階へと走行する速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくしているため、利用者の利便性を損なうことなく、速度または加速度の設定によって待機階への走行時におけるピーク電力の抑制や消費電力低減を図ったエレベータ装置を実現することができる。
【0009】
また本発明は、上述の構成に加えて、前記待機階決定手段は、過去の乗り場呼び発生頻度履歴からほぼ同時間帯における乗り場呼び発生頻度の高い階床を待機階として決定することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、過去の乗り場呼び発生頻度履歴からほぼ同時間帯における乗り場呼び発生頻度の高い階床を待機階として決定するため、統計的に乗り場呼び平均発生確率の高い階床の利用者を待たせることがないように乗りかごを配車し、そのときの速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくして同時に省エネ効果を高めることができる。
【0011】
また本発明は、上述の構成に加えて、前記待機階決定手段は、過去の乗り場呼び発生頻度履歴からほぼ同時間帯における乗り場呼び発生頻度の高い階床を待機階として決定し、前記速度・加速度決定手段は、前記乗り場呼び発生頻度を複数に区分し、この区分のうち前記乗り場呼び発生頻度が小さいほど前記待機階に到着する速度および加速度の少なくとも一方を小さくしたことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、エレベータ装置を設置したビル特有の利用形態に即した速度および加速度で待機状態のエレベータを待機階へと移動することができ、しかも、乗り場呼び発生頻度を複数に区分し、区分毎に速度および加速度の少なくとも一方を調整することができるので、頻度が高い階床での乗り場呼びにすぐに応じたサービスを行うことができる。
【0013】
また本発明は、上述の構成に加えて、待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段を設け、前記速度・加速度決定手段は、前記予測時間内に前記待機階に到着する速度および加速度の少なくとも一方を選定するようにしたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、待機エレベータにおける乗り場呼び発生予測時間を算出し、この乗り場呼び発生予測時間内で乗りかごが待機階に到着するような速度または加速度もしくは両者を設定することができるようになる。従って、算出された乗り場呼び発生予測時間に応じて、つまり、その乗り場呼び発生予測時間が長いほど待機階への到着までに時間の余裕があるため、待機エレベータにおける乗りかごの速度および加速度を下げるように設定することができ、省エネ効果を高めることができる。
【0015】
また本発明は、上述の構成に加えて、待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段を設け、前記速度・加速度決定手段は、前記予測時間を複数に区分し、この区分のうち前記予測時間が長いほど前記待機階に到着する速度および加速度の少なくとも一方を小さくしたことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、速度および加速度は単純に下げるのではなく、乗り場呼び発生予測時間の区分毎に、それぞれの乗り場呼び発生予測時間内で待機エレベータが待機階に到着するような速度および加速度に設定することができるようになる。例えば、その乗り場呼び発生予測時間が長いほど待機階への到着までに時間の余裕があるため、待機エレベータにおける乗りかごの速度および加速度を下げるように設定することができ、省エネ効果を一層高めることができる。
【0017】
また本発明は、上述の構成に加えて、待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段と、前記待機エレベータ判定手段により待機エレベータと判定したときの前記乗りかごの位置と前記待機階間の移動距離を算出する距離算出手段と、前記予測時間と前記移動距離との比に応じて複数の区分を設け、前記速度・加速度決定手段は、前記区分に応じて前記待機階に走行する速度および加速度の少なくとも一方を選定したことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、乗り場呼び発生予測時間に対してより精度良く速度および加速度を設定して待機階へと到着させることができる。この結果、利用者への利便性を損なうことなく、つまり待ち時間の増大を生じることなくサービスを行うことができる。
【0019】
また本発明は、上述の構成に加えて、待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを算出する予測時間算出手段と、前記待機エレベータ判定手段により待機エレベータと判定されたときの前記乗りかごの位置と前記待機階間の移動距離XAを算出する距離算出手段と、XA/TAの比に応じて複数の区分を設け、前記速度・加速度決定手段は、XA/TAの比が小さくなるほど前記待機階に走行する速度および加速度の少なくとも一方を小さくしたことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、待機エレベータにおける乗りかごが次の乗り場呼び発生予測時間TA内に確実に待機階に到着できるように、速度指標(XA/TA)を用いることができる。また速度指標(XA/TA)区分毎に待機エレベータにおける乗りかごの速度および加速度を抽出することができ、より適切な速度および加速度を設定することが可能になる。
【0021】
また本発明は、上述の構成に加えて、複数の時間帯区分を有する時間帯検出手段を設け、前記待機エレベータ判定手段により待機エレベータと判定したときの時間を前記時間帯検出手段の時間帯区分に対応させ、前記速度・加速度決定手段は、前記時間帯区分毎にそれぞれ設定した速度および加速度の少なくとも一方を選定したようにしたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、電力ピーク抑制を重視したい時間区分では、最高速度の低減を優先するように速度および加速度を設定することができ、一方、それ以外の時間帯では、省電力を重視するために加速度の低減を優先するように速度および加速度を設定することができ、エレベータ利用者の利便性を損なうことなく、時間区分毎に望ましい速度または加速度の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるエレベータ装置によれば、利用率が低下した状態を待機状態として検出すると同時に、待機階へと走行する速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくしているため、同状態における省エネ効果を十分に考慮し、利用者の利便性を損なうことなく、待機階への走行時におけるピーク電力の抑制や消費電力低減を図ったエレベータ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態によるエレベータ装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したエレベータ装置の要部を拡大したブロック構成図である。
【図3】図1に示した乗り場呼び実績データ内の平均乗り場呼び発生比率データベースを模式的に示す説明図である。
【図4】図1に示した乗り場呼び実績データ内の平均乗り場呼び発生時間間隔データベースを模式的に示す説明図である。
【図5】図1に示した速度・加速度データ内に格納した速度・加速度設定テーブルを模式的に示す説明図である。
【図6】図5に示した電力ピーク抑制重視時間帯の速度特性図である。
【図7】図5に示した電力ピーク抑制重視時間帯の加速度特性図である。
【図8】図5に示した省電力重視時間帯の速度度特性図である。
【図9】図5に示した省電力重視時間帯の加速度特性図である。
【図10】定常走行時の速度および加速度の比較パターンを示す特性図である。
【図11】電力ピーク抑制重視時の速度および加速度の比較パターンを示す特性図である。
【図12】省電力重視時の速度および加速度の比較パターンを示す特性図である。
【図13】待機階への移動走行時における運行特性図である。
【図14】本発明の一実施の形態によるエレベータ装置の要部を示すブロック構成図である。
【図15】図14に示した速度・加速度データ内に格納した速度・加速度設定テーブルを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、エレベータ装置を示す全体構成図であり、乗りかご1と釣り合いおもり2とを結んだ主ロープ3をシーブ5に巻き掛け、モータ4に連結されたシーブ5を回転することにより乗りかご1を昇降する構成となっている。モータ4の回転制御は電力変換器6によって実行され、この電力変換器6をエレベータ制御装置7によって制御している。エレベータ制御装置7は、エレベータの主制御を担う主制御部8と、この主制御部8において入力または算出されたエレベータ関連の諸データを蓄えるデータ蓄積部9と、待機エレベータを待機階へと運転する待機エレベータ制御部10とによって構成している。
【0027】
主制御部8は、例えば、各階の乗り場に設置した乗り場呼び登録装置11A〜11Dを操作して登録した乗り場呼びデータ12と、乗りかご1内に設置したかご行き先階登録装置13を操作して登録したかご行き先データ14と、乗りかご1に設置した荷重センサ15によるかご内荷重データ16と、各階の人の動きを検出する画像センサ、赤外線センサ、光電センサなどの人流センサ17A〜17Dによって検出した各階の人流検出データ18と、モータ4の回転量を検出するエンコーダ19からのモータ回転量検出データ20とを取り込んで、乗り場呼びやかご行き先階登録に応じた乗りかご1の運行制御を実施している。
【0028】
データ蓄積部9は、要部拡大図である図2に示すように乗り場呼び登録装置11A〜11Dからの乗り場呼びデータ12に発生時刻、発生階、走行方向などの情報を付加して蓄積した乗り場呼び実績データ21と、かご行き先階登録装置13からのかご行き先データ14に発生時刻等の情報を付加して蓄積したかご行き先階実績データ22と、各階の人流センサ17A〜17Dからの人流検出データ18に基づいて蓄積した人流状況実績データ23と、乗りかご1の現在位置、速度、走行方向など乗りかごの現在状態を収集蓄積した現在かご状態データ24と、予め待機エレベータの待機階を指定する場合に設定する待機階設定テーブル25と、乗り場呼び実績データ21を使用して複数の時間帯区分毎に、走行方向、階床での乗り場呼びの平均発生確率をデータベース化した平均乗り場呼び発生比率データ26と、乗り場呼び実績データ21を使用して複数の時間帯区分毎に、走行方向、階床での乗り場呼びの平均発生時間をデータベース化した平均乗り場呼び発生時間間隔データ27と、この平均乗り場呼び発生時間間隔データ27を使用して次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを複数に区分すると共に、複数の時間帯区分に待機エレベータの乗りかご1を待機階へと走行するときの速度および加速度を設定した速度・加速度テーブル28などが蓄積されている。
【0029】
これらの各データは、主制御部8より検出された時点でデータ蓄積部9に記憶したり、初期の入力操作によってデータ蓄積部9に設定したりしている。尚、ここでは乗りかご1が1台の場合の構成を示しているが、群管理されたエレベータの場合では複数台の乗りかごを対象としても良く、複数台の乗りかごを対象とする場合はそれぞれの乗りかごについて以下のような制御を実施する。
【0030】
待機エレベータ制御部10は、待機エレベータかどうかを判定する待機エレベータ判定手段29と、待機エレベータと判定された場合にその待機階を決定する待機階決定手段30と、待機エレベータが次の新規乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを算出する予測時間算出手段31と、待機エレベータの乗りかごを予測時間TA内に待機階へと走行するときの速度および加速度を設定する速度・加速度決定手段32と、各手段30〜32がそれぞれの決定する際にそのときの時間帯区分を取り出す時間帯検出手段33とを有している。
【0031】
この待機エレベータ制御部10では、上述した各手段を用いながらその時点におけるエレベータの利用状況に応じて待機エレベータを決定し、その乗りかごを所定の待機階へと移動するが、そのときの乗りかごの速度および加速度の制御を実行する。
【0032】
先ず、待機エレベータ判定手段29は、制御対象の乗りかご1の乗り場呼びデータ12、かご行き先階データ14、現在かご状態データ24からの速度および走行方向などから、当該エレベータが待機状態か否かを判定する。具体的には、利用者に対する運行サービスが完了して待機状態にあるとき待機エレベータであり、乗り場呼びおよびかご行き先階登録がないこと、また停止状態で走行方向も無方向であり、さらに現在待機階にないことから待機エレベータと判定することができる。
【0033】
待機エレベータ判定手段29により制御対象の乗りかご1が待機エレベータと判定されると、待機階決定手段30は、その待機階を設定する。この待機階は、初期段階においてビル側で設定した待機階設定テーブル25を参照したり、平均乗り場呼び発生比率データ26から待機階を決定したりする。群管理されたエレベータの場合は全てのかご位置などのデータを参照しながら設定する。
【0034】
例えば、待機階決定手段30は、最も乗り場呼びが発生しやすいと予測される階を待機階と設定する場合は、時間帯検出手段33から現在時間に対応する時間帯区分を取り出し、過去の乗り場呼び実績データ21およびかご行き先階実績データ22などを用いてデータベース化した平均乗り場呼び発生比率データ26を参照する。図3に示した平均乗り場呼び発生比率データ26は、乗り場呼びの平均発生確率を示すもので、複数の時間帯区分35と交通流モード36を有し、各時間帯区分35毎に階床別の上昇方向および下降方向を有している。
【0035】
現在の時間帯区分35が「11:15−11:30」で、交通流モード36が「平常1モード」であるとすると、上昇方向と下降方向の和である階毎の乗り場呼び平均発生確率を比較する。このときの発生確率としては週当たりの発生確率もしくは時間当たりの発生確率などを使用する。ここでは、1階の上昇方向37の乗り場呼び平均発生確率が「0.28」で、他の階の乗り場呼び平均発生確率の和よりも大きな値となっているため、次に乗り場呼びが発生する最有力候補の1階を待機階として決定する。
【0036】
このような待機階の決定によれば、過去の乗り場呼び発生頻度履歴からほぼ同時間帯における乗り場呼び発生頻度の高い階床を待機階として決定するため、統計的に乗り場呼び平均発生確率の高い階床の利用者を待たせることがないように乗りかご1を配車することができる。
【0037】
次に、予測時間算出手段31は、乗り場呼び実績データ21等に基づいてデータベース化した平均乗り場呼び発生時間間隔データ27を用いて、次に新規登録される乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを算出する。この平均乗り場呼び発生時間間隔データ27は、模式的に示した図4に示すように複数の時間帯区分35と交通流モード36を有し、各時間帯区分35毎に階床別の上昇方向および下降方向の乗り場呼び平均発生時間を有している。予測時間算出手段31は、先ず、時間帯検出手段33から現在時間に対応する時間帯を取得し、この時間帯「11:15−11:30」における「平常1モード」の階毎における上昇方向および下降方向の呼び平均発生時間間隔を比較し、1階の上昇方向の呼び平均発生時間間隔38が「117秒」であり最小平均発生時間TBであることを判定する。
【0038】
この最小平均発生時間TBを予測時間TAとすることもできるが、ここでは、直前の乗り場呼びが発生した時点からの経過時間をタイマ34で計測しており、現時点までの経過時間TCが20秒とすると、発生時間TAはTB−TCとし、117秒−20秒=97秒として算出している。
【0039】
さらに他の実施の形態では、人流センサ17A〜17Dからの人流検出データ18に基づく人流状況実績データ23を参照し、エレベータ乗り場側への人流状況を考慮し、エレベータ乗り場側への人流を検出した場合、その人流センサの位置とエレベータ乗り場までの移動に要する予測時間17秒をさらに差し引いて、例えば、80秒を予測時間TAとすることもできる。また、上述した図3の平均乗り場呼び発生比率データ26から取得した待機階における乗り場呼び平均発生確率を予測時間TAに反映することもできる。
【0040】
図13は、乗りかご1の運行特性を示しており、横軸は時間を表し、縦軸は高さ方向の階床を表している。今、10階の位置に停止している乗りかご1に対して、待機階エレベータ判定手段29が待機エレベータと判定したとする。従来のエレベータ装置では、その後、通常運転時と同じ速度である通常運行特性51で示すように待機階へと移動することになる。しかし、ここでは予測時間算出手段31が次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを上述のように算出すると、移動開始時点50から低速運行特性52で待機階へと移動するようにする。低速運行特性52の具体的な設定については後述するが、予測時間TA内に待機階に到着するように通常運行特性51よりも低い速度および加速度の少なくとも一方を使用する。
【0041】
予測時間TAが従来の通常運行特性51による待機階への到着時間TD以下の場合は、通常運行特性51よりも低い速度および加速度の少なくとも一方を使用することはできないので、従来の通常運行特性51と同じ速度および加速度を使用する。
【0042】
このようなエレベータ装置によれば、待機エレベータにおける次の乗り場呼び発生するまでの予測時間TAを算出し、この予測時間TA内で乗りかご1が待機階に到着するような速度または加速度、あるいは両者を設定することができるようになる。従って、算出された予測時間TAに応じて、つまり、その予測時間TAが長いほど待機階への到着までに時間の余裕があるため、待機エレベータにおける乗りかご1の速度または加速度の少なくと一方を下げるように設定することができ、省エネ効果を高めることができる。
【0043】
また、乗り場呼び実績データ21を用いてデータベース化した図4の乗り場呼び発生時間間隔データ27を参照し、その時間帯区分に対応する乗り場呼び平均発生時間間隔を用いて予測時間TAを算出するようにしているため、エレベータ装置を設置したビル特有の利用形態に即した速度および加速度で待機状態のエレベータを待機階へと移動することができる。
【0044】
次に、予測時間TAを用いて待機エレベータの速度または加速度を具体的に決定する方法について説明する。
【0045】
速度・加速度決定手段32は、現在の時間に対応する時間帯を時間帯検出手段33から取得し、予測時間算出手段31で算出した予測時間TAを用いて図5に示した速度・加速度設定テーブル28を参照し、通常運転時よりも小さな速度または加速度の少なくとも一方を取得する。この速度・加速度設定テーブル28は、複数に区分した時間帯と、複数に区分した予測時間TAとに応じて、待機エレベータにおける乗りかご1の速度(最高速度)および加速度をそれぞれ設定しているが、同図の速度および加速度を示す実際の数値は省略した表記としている。
【0046】
時間帯は、電力ピーク抑制が望まれる電力ピーク抑制重視時間帯39と、省電力が望まれる省電力重視時間帯40とに区分し、例えば「11:00〜15:00」として示す電力ピーク抑制が望まれる電力ピーク抑制重視時間帯39では、電力ピーク抑制を重視するために最高速度の低減を優先するように速度および加速度を設定している。一方、それ以外の時間帯である省電力重視時間帯40では、省電力を重視するために加速度の低減を優先するように速度および加速度を設定している。一方、予測時間TAは、30秒未満、30秒以上60秒未満、60秒以上120秒未満、120秒以上180秒未満、180秒以上とに区分している。
【0047】
電力ピーク抑制重視時間帯39では、予測時間TAが30秒を超える区分では速度低減を優先した速度v2〜v5とし、加速度Bdv/dt〜Edv/dtはやや低減した値として登録している。一方、省電力重視時間帯40では、予測時間TAが30秒を超える区分では加速度低減を優先した加速度Gdv/dt〜Jdv/dtとし、速度v7〜v10はやや低減した値として登録している。電力ピーク抑制重視時間帯39でも省電力重視時間帯40でも、予測時間TAが30秒以下の区分では、時間が短いために通常運転時よりも速度および加速度を小さくして走行することができないので、通常運転時と同じ速度および加速度を用いるものとして示している。
【0048】
また、予測時間TAは、各予測時間が長い区分ほど、速度および加速度を下げるようにそれぞれの値を設定している。ここで、速度および加速度は単純に下げるのではなく、後述する図13で示すように次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAまでに当該待機エレベータが待機階に到着するような速度および加速度に設定することが重要となる。図5に示した速度・加速度設定テーブル28の各値はこの条件を考慮して設定されている。
【0049】
上述した図5の速度・加速度設定テーブル28を用いながら速度・加速度決定手段32は、先ず変換した時間帯区分が電力ピーク抑制重視時間帯39または省電力重視時間帯40のいずれかに該当するのかを判定した後、判定した時間帯区分が電力ピーク抑制重視時間帯39に該当する場合は、この電力ピーク抑制重視時間帯39の下に予測時間算出手段31で算出した予測時間TAの区分に対応する速度および加速度を抽出する。一方、現在の時間帯が省電力重視時間帯40に該当する場合は、この省電力重視時間帯40の下に予測時間TAの区分に対応する速度および加速度を抽出する。
【0050】
ここでも速度・加速度設定テーブル28に代えて予測時間TAの値に応じて演算によって速度および加速度を算出してもよい。いずれの場合も、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAの値に応じて待機階への速度と加速度を得るため、予測時間TAが長いほど速度または加速度の少なくとも一方をより小さくして、待機階への走行時における省エネ効果を高めることができる。速度・加速度設定テーブル28は、エレベータの稼動初期に作成されてデータ蓄積部9内に保存することを想定しているが、事前に作成せずにその都度計算することによっても同じ処理を実施することができる。
【0051】
次に、図5に示した電力ピーク抑制重視時間帯39および省電力重視時間帯40で設定した速度および加速度の違いについて図6〜図9を用いて説明する。
【0052】
図6は、電力ピーク抑制重視時間帯39における待機運転時速度特性42を通常運転時速度特性41と比較して示す特性図であり、図7は同じく電力ピーク抑制重視時間帯39における待機運転時加速度特性44を通常運転時加速度特性43と比較して示す特性図である。図6に示した待機運転時速度特性42は、複数に区分した予測時間TA毎に速度が順次小さくなるようにしており、30秒以下を除いていずれの予測時間TAの区分でも通常運転時速度特性41より低い速度設定としている。図7に示した待機運転時加速度特性44は、同様に複数に区分した予測時間TA毎に加速度が順次小さくなるようにしており、30秒以下を除いていずれの予測時間TAの区分でも通常運転時加速度特性43よりもやや低い加速度を設定としている。しかし、図6に示した待機運転時速度特性42における予測時間TAの区分毎の速度低下率は、図7に示した待機運転時加速度特性44における予測時間TAの区分毎の速度低下率よりも大きくしている。
【0053】
従って、現在の時間帯が電力ピーク抑制重視時間帯39に該当する場合は、予測時間算出手段31で算出した予測時間TA、例えば97秒を用いて、図6に示した通常運転時速度特性41よりも低い速度の待機運転時速度特性42と、図7に示した通常運転時加速度特性43よりもやや低い待機運転加速度特性44とから待機運転時速度と待機運転時加速度を算出する。
【0054】
このため、速度・加速度決定手段32は、図5の速度・加速度設定テーブル28を使用して電力ピーク抑制重視時間帯39では、通常運転時よりも待機運転時の方が運転速度を低下することに重点が置かれ、電力ピーク抑制を重視するために最高速度の低減を優先するような速度および加速度が抽出される。
【0055】
一方、図8および図9は、省電力重視時間帯40における待機運転時速度特性45と待機運転加速度特性46とを示す特性図である。図8に示した待機運転時速度特性45は、複数に区分した予測時間TA毎に速度が順次小さくなるようにしており、30秒以下を除いていずれの予測時間TAの区分でも通常運転時速度特性41よりやや低い速度設定としている。また図9に示した待機運転時加速度特性46は、同様に複数に区分した予測時間TA毎に速度が順次小さくなるようにしており、30秒以下を除いていずれの予測時間TAの区分でも通常運転時加速度特性43よりも低い加速度を設定としている。
【0056】
また、両者を比較すると、図8に示した待機運転時速度特性45は通常時速度特性41よりもやや低い速度の設定であるのに対して、図9に示した待機運転時加速度特性46は通常運転時加速度特性43よりも低い加速度の設定としている。
【0057】
電力ピーク抑制重視時間帯39と省電力重視時間帯40との違いは、図6と図8の比較から分かるように、電力ピーク抑制重視時間帯39に該当する場合には速度低減を優先して、電力ピークを抑制した待機運転時速度特性42を採用し、同様に、図7と図9の比較から分かるように、省電力重視時間帯40に該当する場合には加速度低減を優先して、省電力を実現する待機運転時加速度特性46を採用するようにしている。
【0058】
また、図6および図7に示した電力ピーク抑制を重視する場合は、横軸に示した予測時間TAが長くなるほど、速度および加速度を低減させる特性としているが、特に速度を優先的に下げる待機運転時速度特性42としている。言い換えると、電力ピーク抑制を重視するため、通常運転時速度特性41および通常運転時加速度特性43を基準とした場合、通常時の値に対する速度の低減比を加速度の低減比よりも大きくするような設定としている。電力ピーク抑制が重視される時間帯は、電力系統全体で見て総発電電力と総消費電力のバランスが逼迫する時間帯であり、電力系統内のエレベータ装置全体で電力ピークの抑制を図れば総消費電力が下がり、電力の需給バランスに余裕が生じるという大きな効果がある。
【0059】
これに対して、省電力重視時間帯40における待機運転時速度特性45と待機運転時加速度特性46は、図8および図9に示すように、省電力すなわち消費電力量低減を重視するため、特に待機運転時加速度特性46に従って加速度を優先的に下げる特性としている。つまり、通常時の値に対する加速度の低減比を速度の低減比よりも大きくするような設定としているため、消費電力量の低減を重視することができる。
【0060】
このようにして現在の時間帯が省電力重視時間帯40に該当する場合、速度・加速度決定手段32は、予測時間算出手段31で算出した予測時間TAを用いて、図5の速度・加速度設定テーブル28を参照するが、図8に示した通常運転時速度特性41よりもやや低い速度の待機運転時速度特性45から待機運転時の速度を抽出し、また図9に示した通常時加速度特性43よりも十分に低い待機運転時加速度特性46から待機運転時の加速度を抽出することになる。このため、省電力重視時間帯40では、通常運転時よりも待機運転時の方が加速度を低下することに重点が置かれ、加速度の低減を優先するような速度および加速度が抽出されて省電力が実現される。
【0061】
ところで、乗りかご1の走行時における消費電力pの算出式は近似的に概ね次の数式1で表すことができる。ここで、vは乗りかご1の速度(最高速度)、Σmは乗りかご1とかご内重量と釣り合いおもり2などの総重量、dv/dtは乗りかご1の加速度、△mは乗りかご1の総重量と釣り合いおもり2との重量差(アンバランス重量分)、gは重力加速度をそれぞれ表している。
【0062】
p=v×{(Σm)×(dv/dt)+△m×g}・・・(数式1)
同式から分かるように、乗りかご1の最高速度vを下げると消費電力pもそれに比例して下がる。従って、乗りかご1の最高速度vを下げることで電力ピークを低減することができる。
【0063】
図10〜図12は速度および加速度のそれぞれ異なる運行パターンを示している。図10に示した運行パターン47は通常走行時の最高速度vを水平線部で示し、加速度dv/dtを傾斜線部で示している。これに対して図11は電力ピーク抑制重視時間帯39における運行パターン48を示しており、最高速度vが運行パターン47の通常走行時よりも低減しているため、電力ピークも同様に低減することができる。しかし、運行パターン48のように乗りかご1の最高速度vを下げると走行時間は運行パターン47の通常走行時よりも増大するため、合計の消費電力量は同じとなる。
【0064】
また数式1から分かるように、乗りかご1の加速度dv/dtを下げても消費電力pを下げることができる。これは図12に示した運行パターン49のように傾斜線部で示す加速度dv/dtを運行パターン47の通常走行時よりも低減し、水平線部で示す最高速度vを通常走行時と同じにすると、図11に比べて走行時間の増大も抑えることができると共に、合計の消費電力量を抑えることできる。従って、省電力重視時間帯40の場合は運行パターン49のように加速度低減を優先するような加速度dv/dtを設定すればよい。
【0065】
このようにして、図5に示した速度・加速度設定テーブル28は、複数の時間帯区分および予測時間TAにおける複数の区分に応じて各速度および加速度の値を設定する。このとき電力ピーク抑制重視時間帯39では速度のみを通常運転時よりも小さくしたり、省電力重視時間帯40では加速度のみを通常運転時よりも小さくしたりすることもできるので、速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくすればよい。
【0066】
図1に示した速度・加速度決定手段32は、予測時間算出手段31で算出した予測時間TAを受け取ると、時間帯検出手段33を用いながら速度・加速度設定テーブル28を参照し、待機エレベータの乗りかご1を待機階へと移動するときの速度および加速度を決定する。決定した速度および加速度の値は、当該待機エレベータに対する速度指令および加速度指令として主制御部8へ伝送され、主制御部8は当該待機エレベータの電力変換器6を通して速度および加速度を制御しながら乗りかご1を待機階へと移動する。
【0067】
このようなエレベータ装置によれば、待機エレベータにおける乗りかご1を待機階へ移動するとき、電力ピーク抑制重視時間帯39と省電力重視時間帯40とに時間帯を区分し、この区分毎に速度および加速度を設定しているため、電力ピーク抑制を重視したい時間区分では、最高速度の低減を優先するように速度および加速度を設定することができ、一方、それ以外の時間帯では、省電力を重視するために加速度の低減を優先するように速度および加速度を設定することができ、時間帯に応じて電力ピーク抑制や消費電力量の低減を図ることができる。
【0068】
また、予測時間TAを複数に区分し、これら区分毎に速度および加速度を制御するようにしたため、予測時間TA内に所定の待機階に到着するように予測時間TAの長さに応じて乗りかご1の走行速度または加速度の少なくとも一方を下げることができるので、次の乗り場呼びを行うエレベータ利用者への影響は無く、エレベータ利用者の利便性を損なうことがない。このような制御は、待機エレベータにおいて待機階へ走行する場合に行われるので、待機エレベータのため乗りかご1内に乗客はおらず、また乗り場呼びがまだ生じていない待機階への走行時であるため、速度や加速度低減によって乗車時間を変化させてしまっても、乗り場の利用者が待ち時間の変化による影響を受けることがない。
【0069】
尚、予測時間TAは、初期段階の実績を参考にして事前に設定することもできるし、累積する実績データによって変更を加えることもできる。また、待機階へ移動する乗りかご1の速度および加速度は、予測時間算出手段31によって算出した予測時間TAを多少超えるものを選択したとしても、ほぼ同様の効果を期待できるので、他の方式の予測時間算出手段31を採用することもできる。
【0070】
例えば、図5では予測時間TAを複数区分に分け、これらの区分毎に速度および加速度を設定したが、待機エレベータにおける乗りかご1を待機階へ移動するとき、その時間またはその時間の交通状態における乗り場呼び発生時間間隔、乗り場呼び発生頻度(単位は、例えば回/分など)、エレベータの利用頻度、ビルの交通量を指標にしても良い。例えば、その時間の交通状態における乗り場呼び発生時間間隔を用いれば、その乗り場呼び発生時間間隔が長いほどその長さに応じて速度および加速度を下げるような設定にすればよい。また発生頻度、利用頻度、交通量であれば、発生頻度、利用頻度、交通量が小さいほどその頻度や交通量に応じて速度および加速度を下げるような設定にすればよい。
【0071】
図14は、本発明の他の実施の形態によるエレベータ装置を示しており、先の実施の形態との同等物には同一符号を付けて詳細な説明を省略し、相違部分についてのみ説明する。
【0072】
待機エレベータにおける乗りかご1を待機階へと移動するときの速度および加速度の設定方法が異なり、データ蓄積部9内に階床高さなどのデータを格納した階床データ53と、この階床データ53を用いて待機エレベータにおける乗りかご1の現在位置と待機階までの移動距離XAを算出する距離算出手段54と、既に予測時間算出手段31により算出した予測時間TAと距離算出手段54で求めた移動距離XAとを用いてXA/TAで求められる速度指標を算出する速度指標算出手段55とを設け、データ蓄積部9内の速度・加速度設定テーブル28としては速度指標算出手段55による速度指標に基づいて対応する速度および加速度を抽出するために変更を加えている。
【0073】
つまり、速度・加速度設定テーブル28は、図15に示すように縦方向の区分は速度指標(XA/TA)であり、定格速度×0.25未満、定格速度×0.25以上で定格速度×0.5未満、定格速度×0.5以上で定格速度×0.75未満、定格速度×0.75以上で定格速度未満、および定格速度以上の5つに区分し、横方向は時間帯11:00〜15:00で示す電力ピーク抑制重視時間帯39と、その他の時間帯である省電力重視時間帯40とに区分し、それぞれの速度指標に対応する速度vおよび加速度dv/dtを設定している。
【0074】
例えば、電力ピーク抑制重視時間帯39では速度指標が定格速度×0.25以上で定格速度×0.5未満の場合、速度はv4で、加速度はDdv/dtであり、速度v4を定格速度×0.6に設定すれば予測時間TAより前に待機階に到着できる。各速度および加速度の具体的な値は、このような考えに基づいてそれぞれ設定すればよい。それ以外の考え方、例えば電力ピーク抑制重視時間帯39や省電力重視時間帯40などは、図5の場合と全く同じである。その後、速度・加速度決定手段32により速度・加速度設定データ28から抽出して決定した速度および加速度は、速度指令および加速度指令として主制御部8へ伝送し、当該待機エレベータをはこの指令に従って走行される。
【0075】
このようなエレベータ装置によれば、図13で示したような状況で、待機エレベータにおける乗りかご1が次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TA内により確実に待機階に到着できるように、速度指標算出手段55による速度指標を用いることができる。具体的には、待機エレベータにおける乗りかご1の現在位置と待機階との移動距離XA、例えば、図13では10階から1階までの移動距離XAと、予測時間TA内に待機階に到着できる速度の目安となる速度指標(XA/TA)を求め、図15を参照しながら算出した速度指標(XA/TA)に従って待機エレベータにおける乗りかご1の速度および加速度を抽出することができる。待機エレベータにおける乗りかご1の現在位置と待機階との距離情報を加えることで、より適切な速度および加速度を設定することが可能になる。
【0076】
また、先の実施の形態の場合に比べて、待機エレベータにおける乗りかご1の待機階への移動距離XAも加えて速度および加速度を設定しているため、予測時間TAに対してより精度良く速度および加速度を設定して待機階へと到着させることができる。この結果、利用者への利便性を損なうことなく、つまり待ち時間の増大を生じることなく、電力ピークの抑制や消費電力量の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 乗りかご
2 釣り合いおもり
3 主ロープ
4 モータ
5 シーブ
6 電力変換器
7 エレベータ制御装置
8 主制御部
9 データ蓄積部
10 待機エレベータ制御部
11A〜11D 乗り場呼び装置
12 乗り場呼びデータ
13 かご行き先階登録装置
14 かご行き先階データ
15 荷重センサ
16 かご内荷重データ
17A〜17D 人流センサ
18 人流検出データ
19 エンコーダ
20 モータ回転量検出データ
21 乗り場呼び実績データ
22 かご行き先階実績データ
23 人流状況実績データ
24 現在かご状態データ
25 待機階設定データ
26 平均乗り場呼び発生比較データ
27 平均乗り場呼び発生時間間隔データ
28 速度・加速度設定データ
29 待機エレベータ判定手段
30 待機階決定手段
31 予測時間算出手段
32 速度・加速度決定手段
33 時間帯検出手段
34 タイマ
35 時間帯
36 交通流モード
37 平均乗り場呼び発生確率
38 乗り場呼び平均発生時間間隔
39 電力ピーク抑制重視時間帯
40 省電力重視時間帯
41 通常運転時速度特性
42 待機運転時速度特性
43 通常時加速度特性
44 待機運転時加速度特性
45 待機運転時速度特性
46 待機運転時加速度特性
47 運行パターン
48 運行パターン
49 運行パターン
50 移動開始時点
51 通常運行特性
52 低速運行特性
53 階床データ
54 距離算出手段
55 速度指標算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの昇降を制御するエレベータ制御装置と、上記乗りかごが待機階になく乗り場呼びおよびかご行き先階登録がないときに待機エレベータと判定する待機エレベータ判定手段と、前記待機エレベータと判定した前記乗りかごの待機階を決定する待機階決定手段と、前記待機エレベータの前記乗りかごを待機階へと走行する速度および加速度を決定する速度・加速度決定手段とを備えたエレベータ装置において、
前記速度・加速度決定手段は、前記待機エレベータの前記乗りかごを待機階へと走行する速度および加速度の少なくとも一方を通常運転時よりも小さくしたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記待機階決定手段は、過去の乗り場呼び発生頻度履歴からほぼ同時間帯における乗り場呼び発生頻度の高い階床を待機階として決定したことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記待機階決定手段は、過去の乗り場呼び発生頻度履歴からほぼ同時間帯における乗り場呼び発生頻度の高い階床を待機階として決定し、前記速度・加速度決定手段は、前記乗り場呼び発生頻度を複数に区分し、この区分のうち前記乗り場呼び発生頻度が小さいほど前記待機階に到着する速度および加速度の少なくとも一方を小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段を設け、前記速度・加速度決定手段は、前記予測時間内に前記待機階に到着する速度および加速度の少なくとも一方を選定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段を設け、前記速度・加速度決定手段は、前記予測時間を複数に区分し、この区分のうち前記予測時間が長いほど前記待機階に到着する速度および加速度の少なくとも一方を小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間を算出する予測時間算出手段と、前記待機エレベータ判定手段により待機エレベータと判定したときの前記乗りかごの位置と前記待機階間の移動距離を算出する距離算出手段と、前記予測時間と前記移動距離との比に応じて複数の区分を設け、前記速度・加速度決定手段は、前記区分に応じて前記待機階に走行する速度および加速度の少なくとも一方を選定したことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
待機エレベータと判定した後、次の乗り場呼びが発生するまでの予測時間TAを算出する予測時間算出手段と、前記待機エレベータ判定手段により待機エレベータと判定されたときの前記乗りかごの位置と前記待機階間の移動距離XAを算出する距離算出手段と、XA/TAの比に応じて複数の区分を設け、前記速度・加速度決定手段は、XA/TAの比が小さくなるほど前記待機階に走行する速度および加速度の少なくとも一方を小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
複数の時間帯区分を有する時間帯検出手段を設け、前記待機エレベータ判定手段により待機エレベータと判定したときの時間を前記時間帯検出手段の時間帯区分に対応させ、前記速度・加速度決定手段は、前記時間帯区分毎にそれぞれ設定した速度および加速度の少なくとも一方を選定したようにしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項9】
電力ピーク抑制重視時間帯に該当する場合には速度低減を優先し、省電力重視時間帯に該当する場合には加速度低減を優先するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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