説明

エレベータ

【課題】同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごの着床位置を適切に補正する。
【解決手段】乗りかごが目的階に着床すると、主制御装置8の着床誤差検出部8aは、乗りかご3の着床センサ7からのパルス信号の入力数をもとに、乗りかご3の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する。主制御装置8の駆動量計算部8bは、この検出した誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように乗りかご3の着床位置を補正するための駆動式そらせシーブ5a,5bの移動所要距離を計算する。そらせシーブ駆動装置6a,6bは、主制御装置8が計算した距離にしたがって駆動式そらせシーブ5a,5bを移動させて、巻き掛け先の連結用主ロープ12を湾曲させて当該連結用主ロープ12の下端部の高さを上方に補正することで、当該連結用主ロープ12の下端部に連結される乗りかご3の着床位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の駆動系により複数の乗りかごが昇降するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータ運行の高効率化を目的とした、マルチカーエレベータの開発が盛んとなってきている。マルチカーエレベータには種々の形式があり、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に開示されるように、連結機構により上下2台の乗りかごが一体となって動作する1シャフトダブルカーであるダブルデッキエレベータなどは既に実用化された一例である。
【0003】
また、常に一方向に循環する同一の駆動系に複数の乗りかごを取付けて運搬能力を高めた循環式エレベータや、駆動装置を挟んでロープの両端にそれぞれ乗りかごを1台ずつ取付け、2台の乗りかごがそれぞれ駆動装置の動きに応じて同時に上下するつるべ式のエレベータなどが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−223985号公報
【特許文献2】特開2000−221857号公報
【特許文献3】特開2007−331871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらマルチカーエレベータでは、ロープの経年劣化により変化する乗りかご位置をいかにして補正するかが重要な問題となる。従来のシングルカーエレベータでは、乗りかごは各駆動系について1台しかなく、その1台の乗りかごの位置のみを駆動系を制御することにより調整すればよかった。
【0006】
例えば、一般的なつるべ式エレベータの場合では、駆動系を挟んで乗りかごと吊り合い錘とがロープで連結されている。その為、乗りかご位置を調整する際には、その動作に応じて吊り合い錘の位置も上下するが、吊り合い錘の位置が多少上下しても客の乗車には影響がない。よって、シングルカーエレベータでは、乗りかご位置を補正する際に1台の乗りかごの位置のみを問題として捉えていればよかった。
【0007】
しかしながら、マルチカーエレベータでは、乗りかご位置の調整対象が2つ以上となる。そのため、一つの乗りかごのみの着床位置の調整を行なっても、同じ駆動系により昇降する他の乗りかごの位置が、前述したように調整した分だけずれてしまうことになる。その為、一つの乗りかごのみを着床制御している従来の方式では、マルチカーエレベータの全ての乗りかごの適切な着床制御を行なうことは困難である。
【0008】
また、同一の駆動系に複数台の乗りかごが連結され、各々の乗りかごが駆動系の動作に従って一様に同方向に循環して乗客を輸送する循環式エレベータにおいて、ある一つの乗りかごの着床位置を駆動系を制御することにより適切に制御したとする。
【0009】
この場合、他の乗りかごの着床位置が適切でない場合、この乗りかごの着床位置の補正も行なう必要があるが、この乗りかごの着床位置を補正すると、先に着床位置を制御した乗りかごの位置がずれてしまう。よって、循環式エレベータにおいては、複数台の乗りかごの着床位置を同時に制御することが挙げられるが、従来の機構では複数台の乗りかごの着床位置に同時に制御することは困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごの着床位置を適切に補正することが可能となるエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係わるエレベータは、ロープにより連結されて同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごと、前記複数台の乗りかごのいずれかについての、乗り場における着床誤差を検出する着床誤差検出手段と、前記着床誤差検出手段により検出した着床誤差をもとに、前記着床誤差の検出対象の乗りかごの上端部に連結されるロープの連結部分の高さを補正することで前記着床誤差を補正する着床誤差補正手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごの着床位置を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における循環式エレベータのシステム構成例を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態における循環式エレベータの乗りかごの着床位置の補正処理の一例を示すフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態における循環式エレベータのシステム構成例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態における循環式エレベータの乗りかごの着床位置の補正処理の一例を示すフローチャート。
【図5】本発明の第3の実施形態における循環式エレベータのシステム構成例を示す図。
【図6】本発明の第3の実施形態における循環式エレベータの乗りかごの着床位置の補正処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における循環式エレベータのシステム構成例を示す図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態におけるエレベータは、同一の駆動系に複数台の乗りかごが接続され、各々の乗りかごが一様に同方向に循環して乗客を輸送する循環式エレベータである。このエレベータでは、各階床の乗り場の間隔は等しいとする。
【0015】
このエレベータの機械室には、図示しない巻き上げ機内蔵する主駆動装置1が設けられる。エレベータにおける最上段の乗りかごである乗りかご2は、主駆動装置1の巻き上げ機のモータ軸に設けられたシーブ10に巻き掛けられた主ロープ4を介して図示しないつり合いおもりに連結される。
【0016】
また、乗りかご2の底面の外側には連結用主ロープ12が取り付けられ、この連結用主ロープ12の下端部は、上から2段目の乗りかごである乗りかご3の上端部に連結される。乗りかご2,3は、巻き上げ機の駆動によるシーブ10の回転に伴い、つり合いおもりとともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0017】
また、機械室には、それぞれの乗りかごの運転を制御するための主制御装置8が設けられる。また、主駆動装置1は、シーブ10の回転角度に応じたパルス信号を主制御装置8に出力する。主制御装置8は、主駆動装置1からのパルス信号の積算カウント数と、目的階に対応する所定のパルス数とが一致した際に、乗りかごが目的階の着床位置に到着したとみなし、巻き上げ機の駆動を制御して乗りかごを停止させる。
【0018】
また、昇降路11内の各階床の乗り場付近には着床検出板9が設置される。また、乗りかご2,3には着床検出板9の位置を検出するための着床センサ7が昇降方向に沿って少なくとも3つ以上取り付けられる。それぞれの着床センサ7は着床検出板9と平行に位置すると、これを示すパルス信号を主制御装置8に出力する。
【0019】
主制御装置8は、着床誤差検出部8aおよび駆動量計算部8bを有する。着床誤差検出部8aは、それぞれの乗りかごの着床センサ7からのパルス信号の入力数の大小をもとに、当該パルス信号の送信元の乗りかごの、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する。具体的には、着床誤差検出部8aは、ある乗りかごの着床センサ7からのパルス信号の入力数が所定の値と一致している場合には、当該乗りかごの、乗り場における着床位置の誤差がないとし、所定の値と一致していない場合、つまり当該所定の値より大きい値だったり小さい値であったりする場合には、当該乗りかごの、乗り場における着床位置の誤差が生じているとし、パルス信号の入力数と前述した所定の値との差分をもとに当該誤差の値を検出する。
【0020】
また、駆動量計算部8bは、着床誤差検出部8aによる検出元の乗りかごの前述した着床位置の誤差の値をもとに、検出元の乗りかごの着床位置の補正のための駆動機構の駆動量を計算する。
【0021】
このエレベータでは、最上段、つまりシーブ10に巻き掛けられる主ロープ4に直接連なる乗りかごの着床位置を補正するために、主制御装置8からの制御にしたがって主駆動装置1により巻き上げ機を駆動することでシーブ10の回転角度を補正する。
【0022】
また、このエレベータでは、最上段以外の乗りかごの着床位置を補正するための駆動機構として、駆動式そらせシーブ5a,5bを設けている。
駆動式そらせシーブ5aは、各乗りかごの間の連結用主ロープ12の上部を乗り場側から巻き掛けるように設けられる。また、駆動式そらせシーブ5bは、各乗りかごの間の連結用主ロープ12の下部を乗り場側とは反対の位置から巻き掛けるように設けられる。
【0023】
乗りかご3の上面には、そらせシーブ駆動装置6a,6bが設置される。そらせシーブ駆動装置6aは、駆動式そらせシーブ5aの回転部分全体の位置を乗り場側から当該乗り場に対向する昇降路壁面に近付くように水平方向に沿って移動させて当該駆動式そらせシーブ5aの回転軸の位置を当該水平方向に沿って移動させることで、連結用主ロープ12のうち駆動式そらせシーブ5aに巻き掛けられる部分の軌道を乗り場側から当該乗り場に対向する昇降路壁面に向かって湾曲させる。
【0024】
また、そらせシーブ駆動装置6bは、駆動式そらせシーブ5bの回転部分全体の位置を前述した昇降路壁面側から乗り場側に近付くように水平方向に沿って移動させて駆動式そらせシーブ5bの回転軸の位置を当該水平方向に沿って移動させることで、連結用主ロープ12のうち駆動式そらせシーブ5bに巻き掛けられる部分の軌道を前述した昇降路壁面側から乗り場側に向かって湾曲させる。
【0025】
この実施形態ではエレベータの設置段階における連結用主ロープ12は湾曲していないとする。また、このように駆動式そらせシーブ5a,5bに巻き掛けられる連結用主ロープ12を湾曲させても、シーブ10と、これに巻き掛けられる主ロープ4との位置関係はシーブ10と主ロープ4との間の摩擦により変化せず、連結用主ロープ12の下端部に連なる乗りかごより上の乗りかごの位置は変化しないものとする。
【0026】
次に、図1に示した構成のエレベータの動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態における循環式エレベータの乗りかごの着床位置の補正処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、上側の乗りかごである乗りかご2と、当該乗りかご2に対しロープで連結された下側の乗りかごである乗りかご3のそれぞれの着床位置の補正について説明するが、3台以上の乗りかごをロープにより連結させて、最上段以外の乗りかごの上部の連結用主ロープ12を駆動式そらせシーブ5a,5bにより巻き掛けるようにして、それぞれの乗りかごの着床位置を補正してもよい。
【0027】
まず、それぞれの乗りかごが目的階に着床すると(ステップS1)、主制御装置8の着床誤差検出部8aは、上かごである乗りかご2の着床センサ7からのパルス信号をもとに、乗りかご2の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する(ステップS2)。この実施形態では、着床時の乗りかごの床面の高さは乗り場の床面の高さと同じか、もしくは各種ロープの経年劣化による伸長により乗り場の床面の高さより低くなっているとする。
【0028】
また、主制御装置8の着床誤差検出部8aは、下かごである乗りかご3の着床センサ7からのパルス信号をもとに、乗りかご3の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する(ステップS3)。
【0029】
そして、主制御装置8の駆動量計算部8bは、ステップS2の処理で検出した、乗りかご2の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように乗りかご2の着床位置を補正するための巻き上げ機の駆動量を計算する(ステップS4)。
【0030】
また、主制御装置8の駆動量計算部8bは、ステップS3の処理で検出した、乗りかご3の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように乗りかご3の着床位置を補正するための駆動式そらせシーブ5aの駆動量である、乗り場側から昇降路壁面への水平方向の移動所要距離、および、駆動式そらせシーブ5bの駆動量である、昇降路壁面側から乗り場側での水平方向の移動所要距離を計算する(ステップS5)。
【0031】
主制御装置8は、ステップS4の処理で計算した巻き上げ機の駆動量を示す信号を主駆動装置1に出力する。主駆動装置1は、主制御装置8からの信号で示される駆動量にしたがって巻き上げ機を駆動させることで、シーブ10の回転角度を補正して乗りかご2の着床位置を補正する(ステップS6,S7)。
【0032】
また、主制御装置8は、ステップS5の処理で計算した駆動量を示す信号をそらせシーブ駆動装置6a,6bに出力する。そらせシーブ駆動装置6a,6bのそれぞれは、主制御装置8からの信号で示される駆動量にしたがって駆動式そらせシーブ5a,5bのそれぞれの回転部分の位置を移動させて、巻き掛け先の連結用主ロープ12を湾曲させる、もしくは湾曲の度合いを高めて当該連結用主ロープ12の下端部の高さを上方に補正することで、当該連結用主ロープ12の下端部に連結される乗りかご3の着床位置を上方に補正する(ステップS8,S9)。
【0033】
以上のように、本発明の第1の実施形態におけるエレベータでは、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごのうち、シーブに巻き掛けられる主ロープに直接連結されない乗りかごの上端部に連なる連結用主ロープを駆動式そらせシーブにより巻き掛けるようにし、この乗りかごの、乗り場における着床位置に誤差が生じている場合には、駆動式そらせシーブを移動させて巻き掛け先の連結用主ロープの軌道を湾曲させることで、連結用主ロープ下端部、つまり連結部分の高さを上方に補正して、他の乗りかごとの間の相対距離を補正することにより当該連結用主ロープの下端部に連結される乗りかごの着床位置を補正する。よって、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごのうちシーブに直接連結されない乗りかごの着床位置をシーブに直接連結される乗りかごと同様に、適切に補正することが出来る。
【0034】
また、この実施形態では、連結用主ロープを湾曲させることで、乗りかご間の相対距離を変化させて乗りかごの着床位置を補正するので、着床位置の補正可能な範囲は、従来のダブルデッキエレベータなどの、かご室間の距離の補正可能範囲より広いという利点がある。
【0035】
加えて、この実施形態では、2つの駆動式そらせシーブを設け、それぞれの駆動式そらせシーブ5a,5bを反対方向から連結用主ロープ12に巻き掛けるようにして当該連結用主ロープ12の上部及び下部の軌道を湾曲させるようにしたので、連結用主ロープ12の軌道の湾曲後における当該連結用主ロープ12の下端部に接続される乗りかごの左右のバランスを適正に保つことが出来る。
【0036】
また、この実施形態では、エレベータの設置段階における連結用主ロープ12は湾曲していないと説明したが、これに限らず、乗りかご間の連結用主ロープ12の長さを乗りかご間の適正な間隔より予め長くした上で、設置段階において駆動式そらせシーブ5a,5bを連結用主ロープに巻き掛けて当該連結用主ロープ12の軌道を予め湾曲させるようにしてもよい。これにより、駆動式そらせシーブ5a,5bの移動により連結用主ロープ12の軌道を湾曲の程度を弱め、当該連結用主ロープの下端部に連なる乗りかごの床面の高さを加工させることができる。よって、ロープの経年変化以外の要因、例えばシーブ10と主ロープ4の間のスリップにより上から2段目以降の乗りかごの着床に誤差が生じた場合でも、この誤差をなくす補正を行なうことができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態における循環式エレベータのシステム構成例を示す図である。
このエレベータにおけるそれぞれの乗りかごは、ロープに直接接続される外かご20の内部に内かご21を有するものである。内かご21は、ロープに直接接続されず、実際に客が乗車するかごである。内かご21は、外かご20の内部の隙間の範囲で上下方向に沿って移動させて任意の高さに位置することが出来る。
【0038】
最上段の外かご20は、主駆動装置1が内蔵する巻き上げ機のモータ軸に設けられたシーブ10に巻き掛けられた主ロープ4を介してつり合いおもりに連結される。
また、最上段の外かご20の底面には連結用主ロープ12の上端部が取り付けられ、この連結用主ロープ12の下端部は上から2段目の外かご20の上端部に連結される。それぞれの外かご20は、巻き上げ機の駆動によるシーブ10の回転に伴い、つり合いおもりとともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0039】
また、機械室には、それぞれの外かご20の運転を制御するための主制御装置23が設けられる。また、主駆動装置1は、シーブ10の回転角度に応じたパルス信号を主制御装置23に出力する。
【0040】
主制御装置23は、主駆動装置1からのパルス信号の積算カウント数と、目的階に対応する所定のパルス数とが一致した際に、乗りかごが目的階の着床位置に到着したとみなし、巻き上げ機を制御してそれぞれの外かご20を停止させる。
【0041】
また、昇降路11内の各階床の乗場付近には着床検出板9が設置される。また、それぞれの外かご20には着床検出板9の位置を検出するための着床センサ7が昇降方向に沿って複数個取り付けられる。それぞれの着床センサ7は着床検出板9と平行に位置すると、これを示すパルス信号を主制御装置23に出力する。
【0042】
主制御装置23は、着床誤差検出部23aおよび駆動量計算部23bを有する。着床誤差検出部23aは、それぞれの外かご20の着床センサ7からのパルス信号の入力数をもとに、当該パルス信号の送信元の外かご20の内部の内かご21の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する。
【0043】
誤差が無い場合は、内かご21の床面の高さは乗り場の床面の高さに一致している。この実施形態では、内かご21の床面の高さは乗り場の床面の高さと同じか、もしくは各種ロープの経年劣化による伸長により乗り場の床面の高さより低いとする。
【0044】
駆動量計算部23bは、着床誤差検出部23aによる検出元の外かご20の内かご21の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該着床位置の補正のための駆動機構の駆動量を計算する。
【0045】
また、それぞれの外かご20の底面と内かご21の底面の間には、内かご21の床面の高さを補正するための内かご駆動装置22が設けられる。
内かご駆動装置22は、パンタグラフを有しており、このパンタグラフを上下させることで、内かご21の外かご20に対する上下方向の相対距離を変化させるものであり、この内かご駆動装置22の動作に応じて内かご21を他の外かご20の中の内かご21との間の距離を補正することができる。
【0046】
次に、図3に示した構成のエレベータの動作について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態における循環式エレベータの乗りかごの着床位置の補正処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、最上段の外かご20に対する内かご21の相対距離、および2段目の外かご20に対する内かご21の相対距離の補正について説明するが、3台以上の外かご20を連結用主ロープ12により連結させて、それぞれの外かご20に対する内かご21の相対距離を補正するようにしてもよい。
【0047】
まず、それぞれの乗りかごが目的階に着床すると(ステップS11)、主制御装置23の着床誤差検出部23aは、最上段、つまり上かご側の外かご20の着床センサ7からのパルス信号をもとに、上かご側の外かご20の内かご21の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する(ステップS12)。
【0048】
また、主制御装置23の着床誤差検出部23aは、上から2段目、つまり下かご側の外かご20の着床センサ7からのパルス信号をもとに、下かご側の内かご21の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する(ステップS13)。
【0049】
そして、主制御装置23の駆動量計算部23bは、ステップS12の処理で検出した、上かご側の内かご21の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように内かご21の床面の高さを補正するための巻き上げ機の駆動量を計算する(ステップS14)。
【0050】
また、主制御装置23の駆動量計算部23bは、ステップS13の処理で検出した、下かご側の内かご21の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように内かご21の床面の高さを補正するための内かご駆動装置22のパンタグラフの上下方向の駆動量を計算する(ステップS15)。
【0051】
主制御装置23は、ステップS14の処理で計算した駆動量を示す信号を主駆動装置1に出力する。主駆動装置1は、主制御装置23からの信号で示される駆動量にしたがって内かご駆動装置22のパンタグラフを駆動させることで、上かご側の内かご21を上下方向に移動させ、当該内かご21の、乗り場における着床位置を補正する(ステップS16,S17)。
【0052】
また、主制御装置23は、ステップS15の処理で計算した駆動量にしたがって内かご駆動装置22のパンタグラフを駆動させて、上かご側の内かご21を上下方向に移動させて、当該内かご21の、乗り場における着床位置を補正する(ステップS18,S19)。
【0053】
以上のように、本発明の第2の実施形態におけるエレベータでは、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごにおける、外かごの内部の内かごの乗り場における着床位置に誤差が生じている場合に、内かご駆動装置のパンタグラフを駆動させて、外かごに対する内かごの上下方向の相対距離を補正することで、内かごの乗り場における着床位置の誤差を補正する。よって、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごのうちシーブに直接連結されない乗りかごを含む各乗りかごの着床位置を適切に補正することが出来る。
【0054】
また、この実施形態において、シーブ10に巻き掛けられる主ロープ4に直接連なる最上段の外かご20の内かご21については、内かご21の、乗り場における着床位置を補正するための内かご駆動装置22を設ける代わりに、主制御装置23からの制御にしたがって主駆動装置1により巻き上げ機を駆動することでシーブ10の回転角度を補正することで着床位置を補正するようにしてもよい。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本発明の第3の実施形態における循環式エレベータのシステム構成例を示す図である。
このエレベータにおける最上段の乗りかご2は、主駆動装置1が内蔵する巻き上げ機のモータ軸に設けられたシーブ10に巻き掛けられた主ロープ4を介してつり合いおもりに連結される。
【0056】
また、乗りかご2,3の底面の外側には巻胴式巻き上げ機31が取り付けられる。この巻胴式巻き上げ機31は、当該巻胴式巻き上げ機31が取り付けられる乗りかごの一段下に位置する乗りかごの上端部に連結される連結用主ロープ12を巻き取る、もしくは巻き戻す。
【0057】
つまり、それぞれの乗りかごは、連結用主ロープ12および当該連結用主ロープ12を巻き取る巻胴式巻き上げ機31により連結される。乗りかご2,3は、巻き上げ機の駆動によるシーブ10の回転に伴い、つり合いおもりとともに互いに上下反対方向に昇降する。このエレベータでは、巻胴式巻き上げ機31により、最上段以外の乗りかごの着床位置を補正する。
【0058】
また、このエレベータでは、シーブ10に巻き掛けられる主ロープ4に直接連なる最上段の乗りかごについては、当該乗りかごの着床位置を補正するために、主制御装置32からの制御にしたがって主駆動装置1により巻き上げ機を駆動することでシーブ10の回転角度を補正する。
【0059】
また、機械室には、それぞれの乗りかごの運転を制御するための主制御装置32が設けられる。また、主駆動装置1は、シーブ10の回転角度に応じたパルス信号を主制御装置32に出力する。主制御装置32は、主駆動装置1からのパルス信号の積算カウント数と、目的階に対応する所定のパルス数とが一致した際に、乗りかごが目的階の着床位置に到着したとみなし、巻き上げ機を制御して乗りかごを停止させる。
【0060】
また、昇降路11内の各階床の乗場付近には着床検出板9が設置される。また、乗りかご2,3には着床検出板9の位置を検出するための着床センサ7が昇降方向に沿って複数個取り付けられる。それぞれの着床センサ7は着床検出板9と平行に位置すると、これを示すパルス信号を主制御装置32に出力する。
【0061】
主制御装置32は、着床誤差検出部32aおよび駆動量計算部32bを有する。着床誤差検出部32aは、それぞれの乗りかごの着床センサ7からのパルス信号の入力数をもとに、当該パルス信号の送信元の乗りかごの、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する。
【0062】
駆動量計算部32bは、着床誤差検出部32aによる検出元の乗りかごの前述した着床位置の誤差の値をもとに、検出元の乗りかごの着床位置の補正のための巻胴式巻き上げ機31の駆動量を計算する。
【0063】
次に、図5に示した構成のエレベータの動作について説明する。図6は、本発明の第3の実施形態における循環式エレベータの乗りかごの着床位置の補正処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、上側の乗りかごである乗りかご2と下側の乗りかごである乗りかご3のそれぞれの着床位置の補正について説明するが、3台以上の乗りかごを連結させて、最上段以外の乗りかごの上部の連結用主ロープ12を一段上の乗りかごに取り付けられる巻胴式巻き上げ機31により巻き取る、もしくは巻き戻すようにして、対象となる乗りかごの着床位置を補正することもできる。
【0064】
まず、それぞれの乗りかごが目的階に着床すると(ステップS21)、主制御装置32の着床誤差検出部32aは、上かごである乗りかご2の着床センサ7からのパルス信号をもとに、乗りかご2の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する(ステップS22)。
【0065】
また、主制御装置32の着床誤差検出部32aは、下かごである乗りかご3の着床センサ7からのパルス信号をもとに、乗りかご3の、乗り場における着床位置の誤差の値を検出する(ステップS23)。
【0066】
そして、主制御装置32の駆動量計算部32bは、ステップS22の処理で検出した、乗りかご2の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように乗りかご2の着床位置を補正するための巻き上げ機の駆動量を計算する(ステップS24)。
【0067】
また、主制御装置32の駆動量計算部32bは、ステップS23の処理で検出した、乗りかご3の、乗り場における着床位置の誤差の値をもとに、当該誤差がなくなるように乗りかご3の着床位置を補正するための巻胴式巻き上げ機31の駆動量を計算する(ステップS25)。
【0068】
主制御装置32は、ステップS24の処理で計算した駆動量を示す信号を主駆動装置1に出力する。主駆動装置1は、主制御装置32からの信号で示される駆動量にしたがって巻き上げ機を駆動させることでシーブ10の回転角度を補正して、乗りかご2の着床位置を補正する(ステップS26,S27)。
【0069】
また、主制御装置32は、ステップS25の処理で計算した駆動量をもとに着床誤差の検出対象の乗りかご3の一段上の乗りかごの巻胴式巻き上げ機31を駆動させて、連結用主ロープ12を巻き取る、もしくは巻き戻して当該連結用主ロープ12の下端部の高さを上方または下方に補正することで、当該連結用主ロープ12の下端部に連結される乗りかご3の着床位置を補正する(ステップS28,S29)。
【0070】
以上のように、本発明の第3の実施形態におけるエレベータでは、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごのうち、シーブに巻き掛けられる主ロープに直接連結されない乗りかごの上端部に連なる連結用主ロープを一段上の乗りかごの巻胴式巻き上げ機により巻き取る、もしくは巻き戻すことが可能な構成とし、乗りかごの、乗り場における着床位置に誤差が生じている場合には、巻胴式巻き上げ機を駆動させて連結用主ロープを巻き取る、もしくは巻き戻して、連結用主ロープ下端部の高さを上方または下方に補正することで、当該連結用主ロープの下端部に連結される乗りかご3の着床位置を補正することができる。よって、同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごのうちシーブに直接連結されない乗りかごの着床位置を適切に補正することが出来る。
【0071】
また、この第3の実施形態では、巻胴式巻き上げ機31を駆動させて連結用主ロープ12を巻き取る、もしくは巻き戻して、連結用主ロープ12の下端部の高さを上方または下方に補正することで、当該連結用主ロープ12の下端部に連結される乗りかご3の着床位置を補正するので、ロープの経年変化以外の要因、例えばシーブ10と主ロープ4の間のスリップにより上から2段目以降の乗りかごの着床位置に誤差が生じた場合でも、この誤差をなくす補正を行なうことができる。
【0072】
また、この実施形態では、連結用主ロープ12を巻き取る、もしくは巻き戻すことで、乗りかご間の相対距離を変化させて乗りかごの着床位置を補正するので、着床位置の補正可能な範囲は、従来のダブルデッキエレベータなどの、かご室間の距離の補正可能範囲より広いという利点がある。
【0073】
なお、前述した各実施形態は、本発明を循環式エレベータに適用した場合について説明したものであるが、これに限らず、同一の駆動系により複数台の乗りかごが昇降するエレベータであれば、例えば、駆動系を挟んでロープの両端にそれぞれ乗りかごを取付け、これらの乗りかごのそれぞれが駆動装置の動きに応じて互いに上下するつるべ式のエレベータにも本発明を適用することが可能である。この場合、シーブに巻き掛けられるロープに直接連結される乗りかごが複数となるので、少なくとも一方については、前述した実施形態における上から2段目以降の乗りかごと同様に、駆動系とは別の機構により当該乗りかごの床面の高さを補正する構成とすればよい。
【0074】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…主駆動装置、2,3…乗りかご、4…主ロープ、5a,5b…駆動式そらせシーブ、6…そらせシーブ駆動装置、7…着床センサ、8,23,32…主制御装置、8a,23a,32a…着床誤差検出部、8b,23b,32b…駆動量計算部、9…着床検出板、10…シーブ、11…昇降路、12…連結用主ロープ、20…外かご、21…内かご、22…内かご駆動装置、31…巻胴式巻き上げ機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープにより連結されて同一の駆動系により昇降する複数台の乗りかごと、
前記複数台の乗りかごのいずれかについての、乗り場における着床誤差を検出する着床誤差検出手段と、
前記着床誤差検出手段により検出した着床誤差をもとに、前記着床誤差の検出対象の乗りかごの上端部に連結されるロープの連結部分の高さを補正することで前記着床誤差を補正する着床誤差補正手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記着床誤差補正手段は、
前記着床誤差検出手段による着床誤差の検出対象の乗りかごの上端部に連なるロープを巻き掛けて、回転軸を所定の第1の水平方向に沿って移動させることで当該ロープの軌道を湾曲させる第1の駆動式シーブ、および前記ロープを前記第1の駆動式シーブによる巻き掛け部分の高さと重複しない高さで巻き掛けて、回転軸を前記第1の水平方向の反対の方向である所定の第2の水平方向に移動させることで当該ロープの軌道を湾曲させる第2の駆動式シーブにより前記ロープの連結部分の高さを補正することで前記着床誤差を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記駆動系に直接連なる乗りかごとは異なる、前記着床誤差検出手段による着床誤差の検出対象の乗りかごの上端部に取り付けられるロープと、
前記着床誤差の検出対象の乗りかごの一段上の乗りかごの底面側に取り付けられ、前記ロープを巻き取る巻胴式巻き上げ機とをさらに備え、
前記着床誤差補正手段は、
前記着床誤差検出手段により検出した着床誤差をもとに、前記着床誤差の検出対象の乗りかごの上端部に連なるロープの巻き取り状態を前記一段上の乗りかごの巻胴式巻き上げ機により制御して前記ロープの連結部分の高さを補正することで前記着床誤差を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記複数台の乗りかごのうち、前記駆動系に直接連なる乗りかごについての、乗り場における着床誤差を検出する第2の着床誤差検出手段と、
前記第2の着床誤差検出手段により検出した着床誤差をもとに、前記駆動系に直接連なる乗りかごの上端部に連なるロープの巻き上げ位置を補正することで前記第2の着床誤差検出手段により検出した着床誤差を補正する第2の着床誤差補正手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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