説明

エンコーダ断線検出方法、エンコーダ断線検出装置、及びそれを備えた電力変換装置

【課題】
オープンコレクタ出力型のエンコーダを使用する場合、エンコーダ出力信号だけでは、断線の判別ができない。
【解決手段】
上記課題を解決するために、エンコーダ電源と、エンコーダ電源より高い電位を持つ電源と、エンコーダ側の過電圧防止用ダイオードを利用し、OUT電線が断線状態となると、エンコーダのOUT電線がエンコーダの電源電位より高い電位を持つ電位(+Vcc+α)となる。その電位差を検出し、電位レベルによりエンコーダ断線を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置などにおいて、エンコーダを使用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置等において、エンコーダを使用する場合に、エンコーダの断線を検出する方法が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−199110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ラインドライバ出力型エンコーダでは、A相とB相をそれぞれ反転させたAN相、BN相をエンコーダ側で生成し、それぞれが同相になった時点でエンコーダ線が断線したと判断している。オープンコレクタ出力型のエンコーダを使用する場合、エンコーダ側にてA相とB相をそれぞれ反転させた信号は生成できず、エンコーダ出力信号だけでは断線の判別ができない。
【0005】
よって、本発明においては、オープンコレクタ出力型エンコーダを使用する場合に、エンコーダの断線の判別ができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
オープンコレクタ出力型エンコーダ装置(以下エンコーダ)を使用する場合、エンコーダ電源と、エンコーダ電源より高い電位を持つ電源と、エンコーダ側の過電圧防止用ダイオードを使用することにより、エンコーダの断線の有無により、エンコーダの出力端子(OUT)に電位差が生じるため、この電位差を検出する事によって、エンコーダ断線を検出することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、オープンコレクタ出力型エンコーダでも断線を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に基づく実施例を以下図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明に基づく実施例の原理を説明する回路図である。
【0010】
図1では、特にオープンコレクタ出力型エンコーダを使用し、エンコーダ断線を検出する場合において、エンコーダ電源と、エンコーダ電源より高い電位を持つ電源と、エンコーダ側の過電圧防止用ダイオードを利用することを特徴とする。
【0011】
第1図に示すように、エンコーダ信号入力端子(IN)にエンコーダ接続線を介して接続されるエンコーダ出力端子(OUT)にエンコーダ電源(+Vcc)より高い電位を持つ電源(+Vcc+α)を供給する。エンコーダ接続線が正常な状態であれば、A点(エンコーダ信号入力端子(IN)、エンコーダ出力端子(OUT)と同電位となる)はエンコーダ電源電位(+Vcc)となる。
【0012】
エンコーダより高い電位を持つ電源(+Vcc+α)が抵抗21を介してA点に接続されている為、エンコーダ出力端子に接続された接続線が断線状態となると、A点の電位は、エンコーダ電源電位(+Vcc)よりも高い電位となる。当該エンコーダ電源電位(+Vcc)よりも高い電位とエンコーダ電源電位(+Vcc)との電位差を検出することによりエンコーダ出力端子に接続されるエンコーダ接続線の断線を検出する。
【0013】
なお、オープンコレクタ出力型エンコーダには、エンコーダの出力端子がノイズなどによって、予期せぬ高い電位となった場合に、内部の半導体素子を保護する為の過電圧防止用ダイオードが設けられているものがある。
【0014】
上記実施例において、エンコーダより高い電位を持つ電源(+Vcc+α)がエンコーダ出力端子に供給されることとなるが、前記過電圧防止用ダイオードが設けられていることによって、上述の保護機能に基づき、内部の半導体素子は保護されることとなる。
【0015】
また、図1では、エンコーダパルス検出用フォトカプラ8の両端に抵抗9を接続して電位を安定させ、エンコーダパルス検出用フォトカプラ8が誤動作しないようにしている。
【実施例2】
【0016】
図2に、本発明に基づく別の実施例を説明する。
【0017】
第2図に示すように、エンコーダ出力端子(OUT)にエンコーダ電源より高い電位を持つ電源(+24V)を接続する。エンコーダ出力端子に接続された接続線が正常な状態であれば、A点はエンコーダ電源電位(+15V)となる。上記図1にて説明したように、エンコーダ出力端子に接続された接続線が断線状態となると、A点(エンコーダ信号入力端子(IN)、エンコーダ出力端子(OUT)と同電位となる)はエンコーダ電源電位(+15V)より高い電位となる。図2においては、その電位と抵抗23及び抵抗24によって発生する基準電位との電位差をコンパレータにて検出し、エンコーダ接続線の断線を検出する。
【0018】
なお、過電圧防止用ダイオードの働きは、図1と同様である。
【0019】
また、図2では、エンコーダパルス検出用フォトカプラ19の両端に抵抗20を接続して電位を安定させ、エンコーダパルス検出用フォトカプラ19が誤動作しないようにしている。
【実施例3】
【0020】
また、図3は、本発明に基づく、実施例の全体構成図であり、インバータと呼ばれている電力変換装置70にてモータ40を駆動するシステムにおいて、モータ40に接続されたエンコーダ12のエンコーダ出力端子から得られるエンコーダ信号が入力されるエンコーダ断線検出装置16(上記図2にて説明したもの)を電力変換装置70の中に設けたものである。
【0021】
一般にインバータと呼ばれている電力変換装置70は、その構成部として、電源供給部からの交流電力を直流電力に変換する順変換部60、順変換部60の出力を平滑する平滑部62、直流電力を交流電力に変換する逆変換部64、少なくとも前記逆変換部64を制御する制御部66を有して、筐体80の中に収められているものである。
【0022】
エンコーダ出力端子からエンコーダ接続線を経てエンコーダ断線検出装置16に入力された信号は、エンコーダ断線検出装置16から制御部66に入力される。従って、制御部は、入力されたエンコーダ情報に基づいて、モータ40を制御出来ることとなる。
【0023】
本発明の実施例によれば、エンコーダ断線検出装置16は、エンコーダ出力端子の電位変化を検出することにより、エンコーダ接続線の断線の有無を検出可能であり、当該検出結果は、制御部66に入力される構成となっている。従って、図3に示す実施例を使用するユーザは、制御部66の働きによる警告等の表示、警告音等によって、エンコーダ接続線の断線の有無を知ることが可能となるように出来る。
【0024】
図1、図2のエンコーダパルス検出用フォトカプラ8、エンコーダパルス検出用フォトカプラ19からの信号が、図3の電力変換装置70の制御部66に入力されることで、モータ40の駆動、制御が行われるように出来る。また、図2のフォトカプラ29からの信号が図3の制御部66に入力されることによって、図3に示す実施例を使用するユーザは、制御部66の働きによる警告等の表示、警告音等によって、エンコーダ接続線の断線の有無を知ることが可能となるようにも出来る。
【0025】
なお、上記実施例におけるエンコーダ断線検出装置を一般にフィードバック基板と呼ばれる基盤の内部に設けられるものであっても良い。前記フィードバック基板とは、エンコーダからの縁コード信号を検出し、モータを駆動する電力変換装置の制御部等に伝えるものである。
【0026】
従って、図1、2でのエンコーダ出力検出側5、エンコーダ出力検出側16を、前記フィードバック基板(図1、2には図示せず)の内部に設けるものであっても良い。
【0027】
また、このエンコーダ断線検出装置16は、単体として流通過程などにおいて、販売、譲渡されるものであっても良い。または、図3に示すように電力変換装置70の内部に前記フィードバック基板等とも含めエンコーダ断線検出装置16を設けて、電力変換装置70と一体となって、製造され、流通過程などにおいて、販売、譲渡されるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】原理を説明する回路図である。
【図2】一実施例を示す回路図である。
【図3】本発明に基づく、実施例の全体構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1 エンコーダ(1相のみ表示)
2 過電圧防止用ダイオード
3 オープンコレクタ
4 エンコーダ接続線
5 エンコーダ出力検出側
6 ダイオード
7 抵抗
8 フォトカプラ
9 抵抗
10 抵抗
11 抵抗
A 検出電位点
12 エンコーダ(A相のみ表示)
13 過電圧防止用ダイオード
14 オープンコレクタ
15 エンコーダ接続線
16 エンコーダ出力検出側
17 ダイオード
18 抵抗
19 フォトカプラ
20 抵抗
21 抵抗
22 ダイオード
23 抵抗
24 抵抗
25 抵抗
26 抵抗
27 コンパレータ
28 抵抗
29 フォトカプラ
30 抵抗
40 モータ
50 電源(商用電源等)
60 順変換部
62 平滑部62
64 逆変換部
66 制御部
70 電力変換装置
80 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンコレクタ出力型エンコーダのエンコーダ断線検出方法において
前記エンコーダのエンコーダ出力端子に接続されたエンコーダ接続線が接続されるエンコーダ信号入力端子にエンコーダ電源より高い電位を供給し、
前記エンコーダ接続線が断線した場合に、前記エンコーダ信号入力端子の電位が変化する事によって、前記エンコーダ接続線が断線したことを検出することを特徴とするエンコーダ断線検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエンコーダ断線検出方法において、
前記エンコーダ接続線が断線した場合に、前記エンコーダ信号入力端子の電位が前記エンコーダ装置の駆動電源電圧よりも高い電位に変化する事によって、前記エンコーダ接続線が断線したことを検出することを特徴とするエンコーダ断線検出方法。
【請求項3】
請求項1に記載のエンコーダ断線検出装置において、
前記エンコーダ接続線が断線した場合に、前記エンコーダ信号入力端子の電位が前記エンコーダ装置の駆動電源電圧よりも高い電位に変化する事によって、前記エンコーダ接続線が断線したことを検出することを特徴とするエンコーダ断線検出装置。
【請求項4】
オープンコレクタ出力型エンコーダ装置のエンコーダ出力端子に接続されたエンコーダ接続線が接続されるエンコーダ信号入力端子と、
前記エンコーダ信号入力端子にエンコーダ電源より高い電位を供給するエンコーダ断線検出電源と
を有するエンコーダ断線検出装置において、
前記エンコーダ接続線が断線した場合に、前記エンコーダ信号入力端子の電位が変化する事によって、前記エンコーダ接続線が断線したことを検出することを特徴とするエンコーダ断線検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載のエンコーダ断線検出装置において、
所定の基準電位を発生する基準電位発生部と、
前記エンコーダ信号入力端子に基づく電位と前記所定の基準電位とを比較するコンパレータを設け、
前記コンパレータの出力の変化によって、前記エンコーダ接続線が断線したことを検出することを特徴とするエンコーダ断線検出装置。
【請求項6】
直流電力を交流電力に変換する逆変換部と、
前記逆変換部を制御する制御部と、
少なくとも前記逆変換部と前記制御部を支持する筐体と、
モータに接続されたエンコーダからのエンコーダ信号が入力されるエンコーダ信号入力端子を有し、
前記エンコーダ信号入力端子に入力されるエンコーダ信号に基づいてモータを駆動する電力変換装置であって、
前記エンコーダ信号入力端子の電位変化に対応する電位変化を検出するエンコーダ断線検出装置を設け、
当該エンコーダ断線検出装置の検出に基づいて、
エンコーダ信号入力端子に接続された接続線の断線の有無を検出することを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−128843(P2006−128843A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311717(P2004−311717)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】