説明

エンコーダ

【課題】位置検出信号を増設することなく可及的に精度よく故障を検出すること。
【解決手段】エンコーダは、周期が異なる位置検出信号としての電気信号を夫々発生させる複数系統の位置検出信号発生系(光源1、トラック3a〜3c、受光素子ユニット4a〜4c)と、複数系統の位置検出信号発生系が夫々発生させた位置検出信号に基づいて第1位置データを算出する第1演算部として機能する電気角第1算出部8および1回転内位置データ第1作成部9と、第1演算部よりも少ない系統の位置検出信号発生系が発生させた電気信号に基づいて第2位置データを算出する第2演算部として機能する電気角第2算出部11および1回転内位置データ第2作成部12と、第1位置データと第2位置データとの比較に基づいて自エンコーダが故障しているか否かを判定する故障判定部としての比較部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の1回転内位置を演算するエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダの故障を検出するための技術として、特許文献1には、位置検出信号PA、PBのパルス数とモータ極数Pとから推定した磁極位置と実際の磁極位置データPU、PV、PWとを比較し、その位置の差が許容範囲外で有れば故障と判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−105644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁極位置データは、位置検出の目的に使用されるものではないため、一般に、位置検出信号よりも分解能が低い。したがって、上記従来の技術は、故障の検出精度が低いという問題がある。
【0005】
また、故障検出の目的のために位置検出信号を増設する構成も考え得るが、そのような構成を採用すると、増設する位置検出信号毎に検出系などのハードウェアを追加する必要が生じる上に、増設した位置検出信号に対して振幅とオフセットとを理想の値に補正する補正係数を設定する必要が生じるため、製造面でのデメリットが大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、位置検出信号を増設することなく可及的に精度よく故障を検出することができるエンコーダを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、回転体の1回転内位置を演算するエンコーダであって、周期が異なる前記回転体にかかる位置検出信号を夫々発生させる複数系統の位置検出信号発生系であって、前記回転体の1回転につき1周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系と前記回転体の1回転につき複数周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系を含む複数系統の位置検出信号発生系と、前記回転体の1回転につき1周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系を含む前記複数系統の位置検出信号発生系が夫々発生させた位置検出信号に基づいて第1の1回転内位置を算出する第1演算部と、前記複数系統の位置検出信号発生系のうちの一部の、前記第1演算部よりも少ない数の系統の位置検出信号発生系が発生させた位置検出信号に基づいて第2の1回転内位置を算出する第2演算部と、前記第1の1回転内位置と前記第2の1回転内位置との比較に基づいて自エンコーダが故障しているか否かを判定する故障判定部と、を備え、前記第2演算部は、前記回転体の1回転につき複数周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系が発生させた位置検出信号に基づいて前記第2の1回転内位置を算出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるエンコーダは、既存の複数の位置検出信号のうちの一部の位置検出信号に基づいて故障検出のための比較用の位置データを作成できるので、位置検出信号を増設することなく可及的に精度よく故障を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態のエンコーダの構成例を示す図である。
【図2】図2は、光源とトラックと受光素子ユニットとの間の位置関係を説明する図である。
【図3】図3は、受光素子ユニットがトラックからの透過光に基づいて生成する電気信号を説明する図である。
【図4】図4は、トラックが示す機械角と電気角第1算出部が生成する電気角との関係を示す図である。
【図5】図5は、1回転内位置データ第1作成部が電気角を合成する様子を説明する図である。
【図6】図6は、1回転内位置データ第2作成部が第2位置データを生成する様子を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態のエンコーダの別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるエンコーダの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態のエンコーダの構成を示す図である。図示するように、実施の形態のエンコーダは、光源1と、モータの回転体としての回転軸2と、回転軸2に取り付けられ、3つのトラック(トラック3a、3b、3c)が形成されたスケールを有する回転板3と、受光素子ユニット4a〜4cとを備えている。光源1は、例えばLEDが採用され、光源1が放射する光はトラック3a〜3cの夫々に入射する。トラック3a〜3cの夫々に入射した光は、トラック3a〜3cの夫々によって変調せしめられ、夫々受光素子ユニット4a〜4cに入射する。受光素子ユニット4a〜4cは、入射した光を光電変換によって電気信号(位置検出信号)に変換する。
【0012】
図2は、光源1とトラック3a〜3cと受光素子ユニット4a〜4cとの間の位置関係を説明する図である。なお、ここでは、煩雑を避けるために、トラック3a〜3cを代表してトラック3aを、受光素子ユニット4a〜4cを代表して受光素子ユニット4aを夫々挙げて説明する。図示するように、光源1の光軸上にトラック3aおよび受光素子ユニット4aが配設されており、トラック3aからの透過光が受光素子ユニット4aに入射するようになっている。トラック3aは、光を透過する透光部と光を遮光する遮光部とが回転方向に交互に設けられて構成されている。透光部と遮光部とは、スケールの回転に従って透過光の強度がsin波に従って変化するように例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式に基づいて配設されており、受光素子ユニット4aは、入射する光からsin波に従って変化する電気信号を生成する。
【0013】
トラック3a〜3cからスケールの1回転によって生成される電気信号の周期は、夫々異なっている。図3は、受光素子ユニット4a〜4cがトラック3a〜3cからの透過光に基づいて生成する電気信号を説明する図である。図示するように、受光素子ユニット4aは、スケール1回転当たり1周期(1波)の信号を生成することができる。受光素子ユニット4bは、スケール1回転当たり16周期(16波)の信号を生成することができる。受光素子ユニット4cは、スケール1回転当たり256周期(256波)の信号を生成する。
【0014】
即ち、光源1、トラック3a、および受光素子ユニット4aにより構成される位置検出信号発生系と、光源1、トラック3b、および受光素子ユニット4bにより構成される位置検出信号発生系と、光源1、トラック3c、および受光素子ユニット4cにより構成される位置検出信号発生系とは、夫々発生させる位置検出信号の周期が異なる。ここで、光源1、トラック3a、および受光素子ユニット4aで構成される位置検出信号発生系を1つの系統と定義し、光源1、トラック3b、および受光素子ユニット4bにより構成される位置検出信号発生系、ならびに光源1、トラック3c、および受光素子ユニット4cにより構成される位置検出信号発生系を、夫々別の系統と定義する。
【0015】
図1に戻り、受光素子ユニット4a〜4cからの電気信号は、増幅回路5a〜5cによって夫々増幅され、増幅された夫々の電気信号はマイクロコンピュータユニット(MCU)6に入力される。MCU6は、電気角第1算出部(電気角算出部)8、1回転内位置データ第1作成部(1回転内位置作成部)9、比較部(故障検出部)10、しきい値記憶部13、通信制御部14を備えている。なお、MCU6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/Oを備えており、ROM内に格納された所定のプログラムをCPUに実行させることによって上述の機能構成部(電気角第1算出部8、1回転内位置データ第1作成部9、比較部10、および通信制御部14)の機能を実現する。なお、しきい値記憶部13をROM上に確保し、しきい値記憶部13に予めしきい値(後述する)が設定されるようにしてもよい。また、しきい値記憶部13をRAM上に確保するようにし、動作開始時など所定のタイミングでしきい値記憶部13にしきい値が外部入力されるようにしてもよい。
【0016】
電気角第1算出部8は、増幅回路5a〜5cを介して入力された受光素子ユニット4a〜4cからの電気信号に基づいて、トラック毎の電気角を算出する。ここで、電気角とは、正弦波1周期で360度(即ち2πラジアン)となる信号をいう。例えば16波の信号の場合、スケールが機械角で360/16=22.5度回転するたびに1周期分の電気角が生成される。
【0017】
図4は、トラック3a〜3cが示す機械角と電気角第1算出部8が生成する電気角との関係を示す図である。図示するように、トラック3aにかかる電気信号からは機械角と一対一で対応する電気角が生成される。トラック3bにかかる電気信号からは機械角が1回転する間に16回転する電気角が生成される。トラック3cにかかる電気信号からは機械角が1回転する間に256回転する電気角が生成される。
【0018】
なお、電気角第1算出部8が精度よく電気角を求めることができるように、トラック3a〜3cの夫々に、sin波(PA)およびcos波(PB)をともに生成できるように2種類のパターンを夫々形成せしめ、受光素子ユニット4a〜4cに、夫々2種類のパターンの透過光から2つの電気信号を生成できるように受光素子アレイを具備せしめるようにしてもよい。これにより、電気角第1算出部8は、sin波にかかる電気信号の値をcos波にかかる電気信号の値で除した値にarctan関数を作用させることによって電気角を求めることができ、sin波にかかる電気信号にarcsin関数を作用させて電気角を求める場合に比して精度よく電気角を求めることができる。
【0019】
また、前述のように、個々の位置検出信号発生系は、振幅とオフセットとを理想の値に補正する補正係数の設定を必要とするが、位置検出信号発生系毎の補正係数は電気角第1算出部8に予め設定されているものとする。なお、後述の電気角第2算出部11は、トラック3bにかかる電気角を演算するが、電気角第2算出部11にもトラック3bにかかる補正係数が予め設定されているものとする。トラック3bにかかる補正係数は、電気角第1算出部8と電気角第2算出部11とで共用することができることはいうまでもない。
【0020】
1回転内位置データ第1作成部9は、電気角第1算出部8が生成したトラック3a〜3cにかかる電気角を合成して、1回転内の位置データを作成する。
【0021】
図5は、1回転内位置データ第1作成部9が電気角を合成する様子を説明する図である。ここでは、一例として、トラック3a〜3cにかかる電気角は夫々10ビットの分解能で記述され、電気角の合成によって18ビットの分解能の位置データが得られるものとしている。
【0022】
図5に示すように、トラック3aにかかる電気角、トラック3bにかかる電気角、トラック3cにかかる電気角は、位置データのMSB、MSBから5ビット目、MSBから9ビット目を夫々最上位ビットとする合計10ビットのデータを夫々有している。1回転内位置データ第1作成部9は、MSBから4ビット目までをトラック3aにかかる電気角から取得し、5ビット目から8ビット目までをトラック3bにかかる電気角から取得し、9ビット目から18ビット目までをトラック3cにかかる電気角から取得して、位置データを作成する。夫々のトラックにかかる電気角は、上位ビットのほうが下位ビットよりも検出精度がよい。上述のように、最終的に、高分解能でかつどのビットでも高い検出精度が担保された位置データを得ることができる。
【0023】
図1に戻り、トラック3aにかかる増幅後の電気信号は、2つに分岐され、分岐先がMCU6およびMCU7の夫々に入力される。MCU6に入力された電気信号は、上述のように、1回転内位置データ第1作成部9が位置データを作成するために用いられる。MCU7に入力された電気信号は、前記位置データとは別に故障検出用の位置データを作成するために用いられる。以降、1回転内位置データ第1作成部9が作成する位置データを第1位置データ、MCU7にて作成される位置データを第2位置データということとする。
【0024】
MCU7は、電気角第2算出部11および1回転内位置データ第2作成部12を備えている。なお、MCU7は、MCU6と同様にCPU、ROM、RAM、I/Oを備えており、ROM内に格納された所定のプログラムをCPUに実行させることによって電気角第2算出部11および1回転内位置データ第2作成部12の機能を実現する。
【0025】
電気角第2算出部11は、増幅回路5bから送られてくるトラック3bにかかる電気信号からトラック3bにかかる電気角を算出する。トラック3bにかかる電気角は、電気角第1算出部8が算出するトラック3bにかかる電気角と同じものであってもよいし、電気角第1算出部8が算出するトラック3bにかかる電気角とは異なるビット数(例えば14ビット)で記述されるものであってもよい。
【0026】
1回転内位置データ第2作成部12は、トラック3bにかかる電気角に基づいて、第2位置データを生成する。
【0027】
図6は、1回転内位置データ第2作成部12がトラック3bにかかる電気角から第2位置データを生成する様子を示す図である。前述のように、トラック3bにかかる電気角が16回転が機械角の1回転に相当する。そこで、図示するように、電気角第2算出部11は、電気角の回転した累積数をカウントしてカウント値を作成し、カウント値と入力された電気信号から生成されたトラック3bにかかる電気信号とに基づいて第2位置データを生成する。即ち、電気角第1算出部8は、上位4ビットをトラック3aにかかる電気角から取得して第1位置データを生成したが、電気角第2算出部11は、トラック3bにかかる電気角の回転の数をカウントすることにより第2位置データの上位4ビットを取得する。なお、電気角第2算出部11は、カウント値が16に到達するとカウント値をゼロリセットするようにしてもよいし、カウント値をゼロリセットせずにカウント値の下位4ビットのみを使用するようにしてもよい。
【0028】
MCU6に備えられる比較部10は、第1位置データと第2位置データとの差分と、しきい値記憶部13に予め格納されているしきい値との比較に基づいて、自エンコーダの故障検出を行う。具体的には、比較部10は、第1位置データと第2位置データとの差分が前記しきい値を越えていない場合、故障が検出されなかった旨の通知を通信制御部14に通知し、第1位置データと第2位置データとの差分が前記しきい値を越えている場合、故障が検出された旨の通知を通信制御部14に通知する。
【0029】
通信制御部14は、第1位置データに前記比較部10から受信した通知を付してシリアル通信データを生成し、生成したシリアル通信データを外部の制御機器に送信する。シリアル通信データを受信した制御機器は、当該受信したデータに含まれる通知を参照することによって、本エンコーダが故障しているか否かを判定することができる。
【0030】
なお、以上の説明においては、第2位置データを故障検出用とし、第1位置データを外部の制御機器に送信するものとして説明したが、第1位置データを故障検出用とし、第2位置データを外部に送信するようにしてもよい。また、故障検出用の位置データを複数生成し、第1位置データと複数の故障検出用の位置データとの比較に基づいて故障を検出するようにしてもよい。故障検出用の位置データを複数生成する場合、比較部10は、故障検出用の位置データと第1位置データとの差分が1つでもしきい値を越えたときに故障が検出された旨の通知を発行するようにしてもよいし、2以上の故障検出用の位置データと第1位置データとの差分がしきい値を越えたときに故障が検出された旨の通知を発行するようにしてもよい。また、2以上の故障検出用の位置データが互いに一致し、当該2以上の故障検出用の位置データと第1位置データとの差分がしきい値以上である場合には、当該2つの故障検出用の位置データを外部に送信するように構成することも可能である。
【0031】
また、第1位置データを生成するための機能構成部(電気角第1算出部8、1回転内位置データ第1作成部9)と第2位置データを生成するための機能構成部(電気角第2算出部11、1回転内位置データ第2作成部12)とを夫々異なるMCUで実現するように構成したが、図7に示すように、同一のMCU6を用いて実現するようにしてもよい。第1位置データを生成するための機能構成部と第2位置データを生成するための機能構成部とを夫々異なるMCUで実現することによって、夫々の位置データの信頼性を向上させ、その結果として故障判定結果の信頼性を向上させることができる。また、実施の形態のエンコーダの機能構成部をMCUを用いて実現するようにしたが、機能構成部の一部または全部をハードウェア回路により実現するようにしても構わない。
【0032】
また、第2位置データをトラック3bにかかる電気信号に基づいて生成するとして説明したが、トラック3aまたはトラック3cにかかる電気信号に基づいて生成するようにしても構わない。トラック3aにかかる電気信号に基づいて生成する場合には、1回転内位置データ第2作成部12は、電気角第2算出部11が生成した電気角をそのまま第2位置データとして出力するようにしてもよい。また、第2位置データを、トラック3a〜3cにかかる電気信号のうちの何れか2つを合成することによって生成するようにしても構わない。
【0033】
また、トラック3a〜3cは、sin波の電気信号が得られるパターンを有しているものとして説明したが、M系列乱数符号など、0、1の2値符号で表された直列符号が得られるパターンを具備するように構成してもよい。その場合には、電気角第1算出部8および電気角第2算出部11は、受信した電気信号をデコードして夫々電気角を算出するように構成してもよい。
【0034】
また、1波、16波、256波の周期を有するトラックを備えるものとして説明したが、トラックの数および周期は以上の説明に限定されない。
【0035】
また、位置検出信号(電気信号)の生成方式は、光源1と受光素子ユニット4a〜4cを用いた光学式の生成方式を採用するものとして説明したが、磁気式や電磁誘導式の生成方式を採用するようにしてもよい。また、トラック毎に異なる生成方式で位置検出信号を生成するようにしてもよい。例えば磁気式の生成方式は温度にかかる外乱に強く、光学式の生成方式は磁界にかかる外乱に強い。トラック毎に異なる生成方式を採用することにより、夫々の長所が組み合わされ、さらに信頼性を向上させることができるようになる。
【0036】
また、比較部10による第1位置データと第2位置データとの比較の頻度については特に言及しなかったが、第1位置データ(または第2位置データ)の演算周期毎に比較を行うようにしてもよいし、複数演算周期毎に比較を行うようにしてもよい。
【0037】
また、第1位置データと第2位置データを一回転内位置として、比較部10にて比較実施したが、1回転内位置データ第1作成部9、1回転内位置データ第2作成部12とも回転数の累積数をカウントすることで多回転数を比較することができるようになる。
【0038】
また、通信制御部14では、比較部10から受信した通知を第1データに付してシリアル通信データを作成したが、比較部10から受信した通知を第2データを付してシリアル通信データを作成してもよく、また第1データまたは第2データを含まずに比較部10から受信した通知を含めたシリアル通信データを作成する構成としてもよい。
【0039】
以上述べたように、本発明の実施の形態によれば、周期が異なる位置検出信号としての電気信号を夫々発生させる複数系統の位置検出信号発生系(光源1、トラック3a〜3c、受光素子ユニット4a〜4c)と、複数系統の位置検出信号発生系が夫々発生させた位置検出信号に基づいて第1位置データを算出する第1演算部として機能する電気角第1算出部8および1回転内位置データ第1作成部9と、第1演算部よりも少ない系統の位置検出信号発生系が発生させた電気信号に基づいて第2位置データを算出する第2演算部として機能する電気角第2算出部11および1回転内位置データ第2作成部12と、第1位置データと第2位置データとの比較に基づいて自エンコーダが故障しているか否かを判定する故障判定部としての比較部10と、を備えるように構成したので、位置検出のための信号に基づいて故障検出のための比較用の位置データを作成でき、かつ、既存の複数の位置検出信号から位置検出信号を新たに増設することなく故障検出を行うことができるようになる。したがって、位置検出信号を増設することなく可及的に精度よく故障を検出することができるようになる。
【0040】
また、第2演算部は、スケール1回転につき複数周期(16周期)の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系(光源1、トラック3b、および受光素子ユニット4b)が発生させた位置検出信号を当該位置検出信号が1周する毎にカウントし、当該位置検出信号が示す電気角と当該位置検出信号にかかるカウント値とに基づいて前記第2の1回転内位置を算出する、ように構成したので、夫々異なる手法で作成した位置データの比較に基づいて故障検出を行うことができるので、故障検出の信頼性を向上させることができるようになる。
【0041】
なお、第2演算部は、スケール1回転につき1周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系(光源1、トラック3a、および受光素子ユニット4a)が発生させた位置検出信号に基づいて第2位置データを生成することができる。このようにすることによって、当該位置検出信号が1周する毎にカウントする必要がなくなるので、スケール1回転につき複数周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系が発生させた位置検出信号に基づいて第2位置データを算出する場合に比べて簡単な構成で故障検出を行うことができるようになる。
【0042】
また、比較部10は、第1位置データと第2位置データとの差分が予め設定されたしきい値を越える場合、自エンコーダが故障していると判定し、前記差分が前記しきい値を越えない場合、自エンコーダが故障していないと判定する、ように構成したので、精度よく故障を検出することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 光源、2 回転軸、3 回転板、3a〜3c トラック、4a〜4c 受光素子ユニット、5a〜5c 増幅回路、6,7 MCU、8 電気角第1算出部、9 1回転内位置データ第1作成部、10 比較部、11 電気角第2算出部、12 1回転内位置データ第2作成部、13 しきい値記憶部、14 通信制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の1回転内位置を演算するエンコーダであって、
周期が異なる前記回転体にかかる位置検出信号を夫々発生させる複数系統の位置検出信号発生系であって、前記回転体の1回転につき1周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系と前記回転体の1回転につき複数周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系を含む複数系統の位置検出信号発生系と、
前記回転体の1回転につき1周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系を含む前記複数系統の位置検出信号発生系が夫々発生させた位置検出信号に基づいて第1の1回転内位置を算出する第1演算部と、
前記複数系統の位置検出信号発生系のうちの一部の、前記第1演算部よりも少ない数の系統の位置検出信号発生系が発生させた位置検出信号に基づいて第2の1回転内位置を算出する第2演算部と、
前記第1の1回転内位置と前記第2の1回転内位置との比較に基づいて自エンコーダが故障しているか否かを判定する故障判定部と、
を備え、
前記第2演算部は、前記回転体の1回転につき複数周期の位置検出信号を発生させる位置検出信号発生系が発生させた位置検出信号に基づいて前記第2の1回転内位置を算出する、
ことを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記故障判定部は、前記第1の1回転内位置と前記第2の1回転内位置との差分が所定のしきい値を越える場合、自エンコーダが故障していると判定し、前記差分が前記所定のしきい値を越えない場合、自エンコーダが故障していないと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記複数系統の位置検出信号発生系のうちの二つの位置検出信号発生系は、夫々位置検出信号の発生方式が異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記第1演算部は、前記複数系統の位置検出信号発生系が夫々発生させた位置検出信号に基づいて系統毎の電気角を演算する電気角算出部と、
前記電気角算出部が演算した系統毎の電気角を合成して前記第1の1回転内位置を算出する1回転内位置作成部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記所定のしきい値は不揮発性メモリに記録されたことを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記所定のしきい値は外部入力されることを特徴とする請求項2に記載のエンコーダ。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33058(P2013−33058A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222116(P2012−222116)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2012−502790(P2012−502790)の分割
【原出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】