説明

エンジンとこのエンジンのためのエンジン取付構造とを具備した航空機エンジンアセンブリ

本発明は、航空機のためのエンジンアセンブリ(1)に関するものであって、エンジンと、エンジン懸架パイロン(4)と、を具備し、熱交換器システムを具備し、第2導出口が、後方側エンジン懸架部材よりも後方側において、構造ブロックとエンジンとの間に配置されている。さらに、熱交換器システムの第2導出口(112a)は、構造ブロック(34)とエンジン(2)との間において、熱交換器(114)に対して連結されかつ構造ブロック(34)を貫通している第2導出パイプ(124)上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、航空機ウィングとエンジンとの間に介装され得るよう構成されたエンジン懸架パイロンという技術分野に関するものであり、より詳細には、そのような懸架パイロンを具備したエンジンアセンブリに関するものである。
【0002】
本発明は、例えばターボジェットやターボプロップを具備したものといったようなすべてのタイプの航空機において、使用することができる。
【0003】
このタイプの懸架パイロンは、EMS(Engine Mounting Structure )とも称されるものであって、例えば、航空機ウィングの直下にターボエンジンを懸架するために使用することができる、あるいは、航空機ウィングの上方にターボエンジンを設置するために使用することができる。
【背景技術】
【0004】
そのような懸架パイロンは、例えばターボジェットといったようなエンジンと航空機ウィングとの間の連結インターフェースを形成し得るよう構成される。懸架パイロンは、関連するターボジェットによって生成された力を、航空機の構造に対して伝達する。懸架パイロンは、さらに、エンジンと航空機との間にわたっての、燃料システムや電力システムや油圧システムやエアシステムの流通を可能とする。
【0005】
パイロンは、一次構造とも称される剛直構造を備えている。剛直構造は、多くの場合、『ボックス』タイプのものとして構成される。言い換えれば、剛直構造は、力を伝達し得るよう、上下のスパーと、横方向リブによって互いに連結された2つの側方パネルと、からなるアセンブリとして、構成される。
【0006】
また、パイロンには、ターボジェットとパイロンの剛直構造との間に介装される取付システムが設けられている。この取付システムは、一般に、少なくとも2つのエンジン懸架部材を備えている。通常、2つのエンジン懸架部材の一方は、前方側懸架部材とされ、2つのエンジン懸架部材の他方は、後方側懸架部材とされる。
【0007】
さらに、取付システムは、エンジンによって生成されたスラスト力に対して対抗するためのデバイスを備えている。従来技術においては、このデバイスは、例えば、2つの側方連結ロッドの形態とされ、第1に、ターボジェットのファンケーシングの後方部分に対して連結され、第2に、エンジンケーシングに付設された後方側エンジン懸架部材に対して連結されている。
【0008】
同様に、懸架パイロンは、さらに、このパイロンの剛直構造と航空機ウィングとの間に介装される第2取付システムを備えている。この第2取付システムは、典型的には、2つまたは3つの懸架部材を備えている。
【0009】
最後に、パイロンには、空気力学的整形板を支持しつつ両システムを切り離したり支持したりするための二次構造が設けられている。この場合、下側かつ後方側の空気力学的整形板は、通常、ウィングの後端エッジから後方側に突出している。
【0010】
さらに、エンジンアセンブリには、熱交換器システムが設けられている。この熱交換器が従来的なタイプのものである場合には、つまり、エア/エアタイプのものである場合には、熱交換器に対して、高温エア導入口と、低温エア導入口と、航空機ウィング部材に対して連結されることとなる第1導出口と、後方側エンジン懸架部材よりも上流側においてパイロンの剛直構造の直上位置において開口することとなる第2導出口と、が連結される。第2導出口のこの特定の構成は、多くの欠点を有している。例えば、第2導出口を剛直構造よりも上へと引き出すために、パイロンの剛直構造を鉛直方向に貫通する導出パイプを設ける必要がある。このことは、明らかに、安全上の問題点を引き起こす。また、剛直構造を形成しているボックスに対してのアクセス性が悪いことに関連して、レイアウトが困難である。
【0011】
さらに、そのような構成の場合には、航空機ウィングの近傍において、第2導出口から、比較的高温のエアが噴出する。このことは、ウィングのところにおける空気力学的な流通状況を深刻に乱してしまう。したがって、この乱れによって、航空機の性能が低減されてしまう。
【0012】
従来技術においては、他のタイプのエンジンアセンブリが存在しており、特許文献1に開示されている。特許文献1においては、熱交換器の第2導出口は、エンジンケーシングと低温エア流の内部整流板との間のところにおいて、圧縮器ユニットの近傍で、開口する。それでもなお、熱交換器の低温エア導入口に対して連通するエンジン前端の近傍のところに第2導出口が特定的に配置されていることにより、第2導出口から導出された流体の使用を最適化することができない。
【特許文献1】欧州公開特許明細書第0 743 434号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の目的は、従来技術の各種態様に関連して上述したような様々な欠点を少なくとも部分的に克服し得るような航空機エンジンアセンブリを提供することであり、また、少なくとも1つのそのようなエンジンアセンブリを具備した航空機を提供することである。
【0014】
本発明は、上記目的を達成するものであり、本発明の目的は、航空機エンジンアセンブリであって、エンジンと、エンジン懸架パイロンと、を具備し、パイロンは、第1に、例えば下スパーといったような下側構造部材を有したボックスを備えて構成された一次構造とも称される剛直構造と、第2に、エンジンと剛直構造との間に介装された取付システムと、を備え、取付システムは、とりわけ、後方側エンジン懸架部材を備え、エンジンアセンブリは、さらに、熱交換器を備えた熱交換器システムを具備し、熱交換器に対しては、高温流体導入口と、低温エア導入口と、熱交換器が例えばエア/エアタイプのものである場合には航空機のウィングに対して連結されることとなる第1導出口と、少なくとも1つの第2導出口と、が連結される。第1導出口は、高温流体導入口に対して連通しており、少なくとも1つの第2導出口は、低温エア導入口に対して連通している。本発明においては、熱交換器システムからの各第2導出口は、ボックスとエンジンとの間に配置され、したがって、好ましくは、エンジンが航空機ウィングの下側に懸架される場合には、下スパータイプの下側構造部材の下方に配置され、各々の第2導出口は、後方側エンジン懸架部材よりも後方側に配置される。さらに、懸架パイロンの剛直構造は、さらに、ボックスとエンジンとの間においてボックスに対して固定された構造ブロックを備え、この構造ブロックは、後方側エンジン懸架部材に対しての取付インターフェースを備え、熱交換器システムからの第2導出口は、熱交換器に対して連結されかつ構造ブロックを貫通している第2導出パイプ上に設けられている。
【0015】
よって、本発明のこの構成は、有利には、パイロンの剛直構造のボックスを貫通するような第2導出パイプを必要としない。なぜなら、エンジンがウィングの下側に懸架されるように構成されている場合には、第2エア導出口が、ボックスの下側構造部材の下方にあるからであり、このことは、熱交換器についても同様である。その結果、エンジンアセンブリの安全性が改良され、熱交換器システムの設置の容易さが改良される。さらに、本発明におけるこの格別の第2導出口の配置は、この第2導出口から導出されたエアが、もはや、ウィングのところにおける流通を妨害しないことを意味し、有利である。したがって、航空機の性能を、従来技術における実施態様の場合の性能と比較して、改良することができる。
【0016】
したがって、また、第2導出口が、後方側エンジン懸架部材を超えたところにおいて開口しており、後方側エンジン懸架部材の上流側のところにおける圧力よりもかなり大きな圧力のところにおいて開口していることは、理解されるであろう。その結果、熱交換器システムの低温エア導入口と第2導出口との間で得られる差圧は、この第2導出口のところにおける強い吸込のために、従来技術の場合の差圧よりも、かなり大きなものとなる。このことは、熱交換器システムを通してのエア流通量を、かなり増大させる。したがって、熱交換器システムの性能を向上させることができる。
【0017】
さらに、第2導出口が、後方側エンジン懸架部材よりも後方側に配置されていることを考慮すれば、この第2導出口を、エンジンジェット内において開口させることが、より容易なものとなる。同様に、追加的なスラスト力生成源として、この第2導出口から排出されるエアを使用することが、より容易なものとなる。
【0018】
したがって、パイロンは、また、懸架パイロンの剛直構造が、さらに、ボックスとエンジンとの間においてボックスに対して固定された構造ブロックを備えているようにして、形成される。構造ブロックは、エンジンが航空機ウィングの下側に懸架されるように構成されている場合には、ボックスの下側構造部材の下方に配置される。この場合、この構造ブロックは、下側構造ブロックと称され、後方側エンジン懸架部材に対しての取付インターフェースを備えている。
【0019】
よって、エンジンが航空機ウィングの下側に懸架されるように構成されている非制限的な場合には、この構成により、下側構造ブロックのおかげで、後方側エンジン懸架部材を、全体的に、ボックスよりも下側にオフセットすることができる。したがって、下側構造ブロックは、剛直構造と一体部材を形成し、ステムまたはシューと同等である。剛直構造がボックスだけから構成されていたような従来技術の場合には使用されることがなかったこのブロックの追加は、多くの利点を有している。特に、パイロンから懸架されたエンジンから、ボックスを離間させて配置することができる。その結果、ボックスに対して印加される温度条件が、後方側エンジン懸架部材に対しての取付インターフェースが直接的に下スパータイプの下側構造部材に対して配置されていた実施形態と比較して、大幅に低減される。したがって、熱的条件のこの低減により、剛直ボックスの製造に際して、例えば複合材料や例えば樹脂が含浸されたガラスファイバおよび/またはカーボンファイバといったような、熱に対してより敏感な材料を使用することができる。そのような場合、懸架パイロン全体に関しての重量を低減することができ、有利である。
【0020】
さらに、後方側エンジン懸架部材からの力の伝達の必要性によって本質的に決定される構造ブロックの構成と、支持対象をなすウィングに対してのウィングインターフェースに応じて主にサイズが決定されるボックスの構成と、を解離させるための手段が設けられる。この格別の特徴点は、ブロックの幅をボックスの幅よりも小さなものとし得ることを、意味する。これにより、狭い幅とされたブロックが二次的流通領域内に配置されていて、広い幅のボックスの下部に位置している限りにおいて、空気力学的な特性という観点から、かなりの利点が得られる。よって、後方側エンジン懸架部材のところにおける空気力学的な擾乱は、従来技術における場合と比較して、大幅に低減される。
【0021】
さらに、明らかに、ボックスの幾何形状が、もはや、エンジンケーシングの近傍に位置することの必要性によっては、影響されないことは、理解されるであろう。なぜなら、この機能は、このボックスに対して固定して追加された下側構造ブロックによって完全に提供し得るからである。その結果、ボックスの幾何形状を、かなり単純化することができる。特に、ボックスの下面を、剛直構造の一端から他端までにわたって、平面とすることができる。この点は、製造の観点から有利である。また、ボックスの重量が低減され、好ましくは最適化される。なぜなら、ボックスの下面は、有利には、もはや、エンジンケーシングに対して近接配置され得るような大きな幅のオフセット部分を有する必要がないからである。
【0022】
最後に、ボックスから下向きに突出していて剛直構造に対して短い長さ部分にわたってしか延在していないようなブロックにより、この下側構造ブロックを通して、ダクトまたは同様の部材を、容易に貫通させ得ることに、注意されたい。したがって、パイロンに対して提供されるこの可能性は、剛直構造の後方部分に対するアクセスを容易なものとすることができる。これに対し、従来技術においては、アクセスが比較的困難であるボックスを貫通させる必要があった。とりわけ、この特徴点は、熱交換器に対して連結されておりかつ構造ブロックを貫通している第2導出パイプ上に第2導出口が配置されるような熱交換器システムにおいて、特に有効である。この態様は、ブロックによって支持された後方側エンジン懸架部材の下流側に第2導出口を配置するに際しての、比較的単純な手法を形成する。
【0023】
好ましくは、第2導出口は、懸架パイロンの後方側空気力学的整流板の外壁のところにおいて開口し、後方側空気力学的整流板の全体は、後方側エンジン懸架部材よりも後方側に配置される。
【0024】
この構成は、空気力学的な観点から、極めて有利である。上述した整流板は、『シールド』や『後方側パイロン整流板』とも称されるものであるとともに、通常は、ウィングの後端から後方側へと突出するものであり、エンジンジェットによって衝撃され、これにより、無視できないようなドラッグ(あるいは、引きずり抵抗)を生成し、通常は、性能という点において、かなりの欠点をもたらす。よって、第2導出口を整流板の外壁のところにおいて開口させるという事実は、整流板をエア流によって包むことを意味し、これにより、エンジンから導出されるジェットから整流板を保護することができる。その結果、高温ジェットが下側後方側整流板を衝撃する量が低減することのために、ドラッグが、従来技術の場合と比較して、大幅に低減される。このことは、性能面から有利な結果をもたらす。
【0025】
この点に関し、熱交換器システムの性能を向上させ得るよう第2導出口から導出されるエアによるスラスト力の増大化と、エンジンジェットによる衝撃からの後方側空気力学的整流板の保護の増大化と、を同時に行い得るよう、第2導出口は、好ましくは、整流板の段部/ベースドラッグのところに、配置される。これにより、負圧を強調することができ、したがって、差圧をさらに増大させることができる。
【0026】
上記手法に対する1つの代替可能な手法においては、第2導出口を、懸架パイロンの後方側空気力学的整流板の内部で開口させることができる。この場合、エア抽出のために、整流板よりも後方側において開口するエア導出口を設けることができる。この開口は、可能であれば、制御可能な可動構造に対して関連づけられる。制御可能な可動構造は、その位置に応じて(その配置態様に応じて)、整流板の空気力学的形状を変更することができる。可動構造が好ましくはエア導出開口を横断して配置されているという構成においては、可動構造を制御することにより、整流板がかなりの量のエア取込を行い得るベースドラッグを形成し得る1つまたは複数のオフセット部分を形成する構成とされているか、あるいは、整流板が最小のドラッグしか引き起こさないようオフセット部分を有することなく実質的に連続した空気力学的形状を形成する構成とされているか、に依存して、整流板に設けられたエア導出開口を開閉することができる。
【0027】
これに代えて、熱交換器システムの第2導出口が後方側空気力学的整流板の内部で開口する場合には常に、後方側空気力学的整流板に、整流板の2つの側壁の前端に対して関節結合された2つの側方パネルを備えてなる制御可能な可動構造を設けることができ、この場合、これら2つの側方パネルの各々は、整流板の側壁に形成されたそれぞれ対応する開口を開閉し得るように構成される。
【0028】
また、2つの導出口を設けることができ、一方の導出口は、懸架パイロンの後方側空気力学的整流板の外壁のところにおいて開口し、他方の導出口は、この整流板の内部で開口し、これら2つの導出口は、空気の放出のために、交互的に使用することも、また、同時に使用することも、できる。
【0029】
また、好ましくは、熱交換器システムの第1導出口は、熱交換器に対して連結されかつ剛直構造のボックスを貫通している第1導出パイプ上に設けられる。この構成は、熱交換器がエア/エアタイプのものである場合に、かつ、第1導出口が航空機のウィング上に連結され得るように構成されている場合に、極めて最適である。それでもなお、熱交換器システムを通して流通し第1導出口から導出される流体が、ウィングおよび/または機体によって使用されるものではなく、エンジンやエンジンポッドや剛直パイロン構造によって使用されることを意図したものとされているような、他の実施態様をも、本発明が包含していることに、注意されたい。
【0030】
この点に関し、さらに、流体/エアタイプの熱交換器システムにおいては、高温流体導入口と第1導出口とを流れる流体は、エアと、オイルと、燃料と、からなるグループの中から選択されることに注意されたい。
【0031】
一般に、熱交換器は、後方側エンジン懸架部材よりも前方側において、ボックスとエンジンとの間に配置される。
【0032】
最後に、第2導出口の各々は、エンジン排気ノズルに隣接したところにおいてまたはエンジン排気ノズルの下流側のところにおいて、ボックスとエンジンとの間に配置されることが好ましい。
【0033】
本発明の他の目的は、上述したような少なくとも1つのエンジンアセンブリを具備した航空機である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の他の利点や特徴点は、本発明を何ら制限することのない以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0035】
以下の詳細な説明においては、添付図面を参照する。
【0036】
図1は、航空機のウィング3の下側に固定し得るよう構成された航空機エンジンアセンブリ1を示している。このアセンブリ1には、本発明の好ましい一実施形態をなす懸架パイロン4が設けられている。
【0037】
大まかには、エンジンアセンブリ1は、ターボジェット2と、懸架パイロン4と、を備えている。懸架パイロン4には、特に、剛直構造10と、取付システム11と、が設けられている。取付システム11は、複数のエンジン懸架部材6,8と、ターボジェット2によって生成されたスラスト力に対抗するためのデバイス9と、から構成されている。したがって、取付システム11は、エンジンと、剛直構造10と、の間に介装されている。指針として、アセンブリ1が、ポッド(この図面には図示されていない)によって囲まれていることに注意されたい。また、懸架パイロン4が、航空機ウィングの下側にアセンブリ1を確実に懸架し得るよう、他の一連の懸架部材(図示せず)を備えていることに注意されたい。
【0038】
以下の説明においては、慣例によって、X方向は、パイロン4の長手方向を表している。このX方向は、また、ターボジェット2の長手方向と同じと見なされる。このX方向は、ターボジェット2の長手方向軸線5に対して平行である。さらに、パイロン4に関しての横方向は、Y方向と称される。このY方向は、また、ターボジェット2の横方向と同じと見なすことができる。Z方向は、鉛直方向、すなわち、高さ方向である。これら3つの方向X,Y,Zは、互いに直交している。
【0039】
さらに、『前方側』および『後方側』という用語は、ターボジェット2によって印加されるスラスト力の結果としての航空機の進行の方向に関して、参照されるべきである。考えることである。この進行方向は、矢印7によって図示されている。
【0040】
図1においては、スラスト力対抗デバイス9と、エンジン懸架部材6,8と、懸架パイロン4の剛直構造10と、だけを見ることができる。例えば、航空機ウィングの下側に剛直構造10を懸架するための懸架手段といったような、すなわち、空気力学的整流板を支持しつつシステムの隔離保持を制御するための二次的構造といったような、パイロン4の他の構成部材は、従来技術で使用され当業者に公知の構成部材と同一のまたは同様の従来的部材である。よって、本発明に基づき格別の特徴点を有した下側後方側空気力学的整流板を除いては、それらについての詳細な説明を省略する。
【0041】
ターボジェット2は、前方側の端部のところにおいて環状ファンダクト14を規定している大寸法のファンケーシング12と、このファンケーシング12の後方側に配置された小径の中央ケーシング16と、を備えている。中央ケーシング16は、ターボジェットのコアを収容している。最後に、中央ケーシング16の後方側には、この中央ケーシング16よりも大きな排気ケーシング17が延出されている。明らかなように、ケーシング12,16,17は、互いに固定されている。
【0042】
図1によって理解されるように、複数のエンジン懸架部材は、前方側エンジン懸架部材6と、後方側エンジン懸架部材8と、を備えて構成されている。後方側エンジン懸架部材8は、可能であれば、当該技術分野において公知なように、2つの後方側エンジン懸架部材半体を形成している。スラスト力対抗デバイス9は、例えば、2つの側方連結ロッド(側面図であることのために、図面上では、一方だけが見える)という態様のものとすることができる。側方連結ロッドは、第1に、ファンケーシング12の後方部分に対して連結され、第2に、剛直構造10上に取り付けられたスプレッダービーム20に対して連結される。
【0043】
前方側エンジン懸架部材6は、剛直構造10の取付部材15とファンケーシング12とに対して固定されたものであって、従来的に構成されており、ターボジェット2によって生成された力に対してY方向とZ方向とに沿ってのみ対抗することができる。したがって、X方向に沿って印加された力に対しては対抗することができない。指針として、この前方側エンジン懸架部材6は、好ましくは、ファンケーシング12の周縁部分内へと侵入する。
【0044】
後方側エンジン懸架部材8は、全体的に、排気ケーシング17と、パイロンの剛直構造10と、の間に介装されている。上述と同様に、後方側エンジン懸架部材8は、好ましくはターボジェット2によって生成された力に対してY方向とZ方向とに沿っては対抗し得るように構成されている。しかしながら、X方向に沿って印加された力に対しては対抗することができない。
【0045】
その結果、静的な構成とされたこの取付システム11においては、X方向に沿って印加された力に対しては、デバイス9によって対抗し、Y方向およびZ方向に沿って印加された力に対しては、前方側エンジン懸架部材6と後方側エンジン懸架部材8との双方によって対抗する。
【0046】
また、X方向まわりに印加されたモーメントに対しては、後方側エンジン懸架部材8によって鉛直方向に対抗し、Y方向まわりに印加されたモーメントに対しては、前方側エンジン懸架部材6と後方側エンジン懸架部材8との協働によって鉛直方向に対抗し、Z方向まわりに印加されたモーメントに対しては、前方側エンジン懸架部材6と後方側エンジン懸架部材8との協働によって横方向に対抗する。
【0047】
さらに図1に示すように、剛直構造10は、まず最初に、ボックス24を備えている。ボックス24は、この剛直構造10のX方向に沿った一端から他端までにわたって延在している。したがって、ボックス24は、剛直構造のメインボックスと称されるトーションボックスを形成する。ボックス24は、上スパー26と、下スパー28と、2つの側方パネル30(図1においては、1つだけが見えている)と、によって従来的に形成されている。パネル30の双方は、X方向に沿って、かつ、実質的にXZ平面内に、延在している。このボックス24の内部には、複数の横方向リブ32が、YZ平面に沿って、なおかつ、X方向において互いに離間して、配置されている。これらリブ32は、ボックス24の剛性を補強する。指針として、構成部材26,28,30の各々を、単一部材として形成し得ること、あるいは、隣接するセクションどうしを組み付けることによって形成し得ること、に注意されたい。隣接するセクションどうしは、可能であれば、互いに対して、わずかに傾斜させることができる。
【0048】
好ましくは、図1に明瞭に示すように、下スパー28は、長手方向の全体にわたって平面とされる。この平面は、XY平面に対してほぼ平行なものとされる、あるいは、XY平面に対してわずかに傾斜したものとされる。
【0049】
エンジンがウィングの下側に懸架される場合には、ボックス24の下側に配置されることのために下側構造ブロック34と称されるような構造ブロック34が、下スパー28の外表面上に固定されることとなる。それでもなお、詳細には説明しないけれども、エンジン2がウィング3の上側に設置されることも、本発明の範囲内であることに注意されたい。エンジン2がウィング3の上側に設置される場合には、構造ブロックは、ボックスの上スパー26上に固定されることとなる。
【0050】
ブロック34は、後方側エンジン懸架部材8に対しての取付インターフェース36を備えている。したがって、このインターフェース36は、スパー28が配置されている平面よりも下に配置される。インターフェース36は、好ましくは、XY平面に沿って配置される。後述するように、この取付インターフェースが、後方側エンジン懸架部材8の取付部分と協働し得るように構成されることに、注意されたい。
【0051】
その結果、Y方向に沿ったブロック34の幅がボックス24の幅よりも小さなものとされているこの構成により、ボックス24の下方において、後方側エンジン懸架部材8を下側へとオフセット(位置ズレ)させることができる。したがって、エンジン2を、ボックスからさらに離間させることができる。
【0052】
よって、ボックス24に対して印加される熱的応力は、比較的小さなものとされる。これにより、ボックス24を、複合材料から形成することが、あるいは、熱に対して敏感な他の任意の材料から形成することが、可能とされる。これにより、パイロン4全体に関しての重量を低減することができる。他方、ブロック34は、エンジン2に対して近接配置されることのために、より多くの熱的応力に曝されることとなり、金属材料から形成することができる、好ましくはチタンから形成することができる。
【0053】
さて、図2は、下スパー28の下側に固定される構造ブロック34を、全体的に示している。構造ブロック34は、2つの側面40を備えている。各側面には、上部のところに、下スパー28がなす平面と同じ平面をなすようにして、取付リブ42が設けられている。これにより、取付リブ42を下スパー28に対して接触させることができ、ブロック34をボックス24に対して取り付けることができる。この場合、この取付(あるいは、この固定)は、好ましくは、リブ42を貫通しつつ軸線44に沿って下スパー28に対して垂直に配置される複数のテンションボルトおよび複数の剪断ピン(図示せず)を使用して、行われる。これら取付手段(あるいは、これら固定手段)は、有利には、ブロック34と下スパー28との間の熱伝導を低減させることができる。このような熱伝導は、可能であれば、2つの構成部材24,34の間に絶縁リングまたは絶縁ワッシャを介装することにより、さらに低減させることができる。
【0054】
さらに、ブロック34は、さらに、2つの側面40の間に配置された1つまたは複数の横方向リブ46を備えている。横方向リブ46は、好ましくは、YZ平面に沿った向きで配置される。
【0055】
取付インターフェース36は、2つの側面40の下部50によって形成されている。取付インターフェース36は、可能であれば、複数のリブ46のうちの1つのリブと組み合わせて形成され、好ましくは、フレームという態様のものとされる。よって、側面40の2つの下部50と関連リブ46の下部とによって形成された取付インターフェース36は、全体的に、Y方向に沿って延在する水平方向ストリップを形成する。この水平方向ストリップ上に、後方側エンジン懸架部材8の取付ボディ38が、好ましくはボルトによって、固定される。
【0056】
この取付ボディ38は、公知のタイプのものであって、この取付ボディをボックスの下スパー28上に直接的に取り付けていた従来技術において使用されていたものと実用的に同じ構成のものである。よって、取付ボディ38は、クレビス52を形成する。クレビス52に対しては、シャックル(図示せず)が関節結合される。シャックルは、エンジンに対して固定される取付部材に対して関節結合され得るように構成される。
【0057】
さらに、スプレッダービーム20の取付部材(あるいは、固定部材)54も、また、2つの側面40の間に配置され、好ましくは、取付ボディ38よりも前方側に配置されている。この場合、取付部材54は、スプレッダービーム20の旋回軸体56を備えている。この旋回軸体56は、2つのスラスト力対抗ロッド9の各端部に対して、関節結合されている。
【0058】
最後に、ブロック34を、二次的剛直ボックスという態様のものとし得ること、および、ブロック34が、その二次的剛直ボックスを前端および後端のところにおいて閉塞し得るよう、側面40に対して固定された前方閉塞プレート(図示せず)および後方閉塞プレート(図示せず)を備え得ること、に注意されたい。
【0059】
図3に示すように、エンジンアセンブリ1は、さらに、熱交換器システム104を備えている。熱交換器システム104は、全体的に、低温エア導入口106と、高温エア導入口108と、を備えて構成されている。低温エア導入口106は、好ましくは、ボックス24の下方において、エンジンポッド(図示せず)のファン部分とスラスト力反転部分との間の連接部分の上流側のところに、配置されている。より詳細には、環状ファンダクトからの導出口のところに配置されている。これにより、低温エア導入口106は、環状ファンダクトから低温エアを導入することができる。高温エア導入口108は、エンジン2の中央ケーシング(図示せず)上に直接的に連結されている。低温エア導入口106は、低温エアパイプ110の前端に位置しており、高温エア導入口108は、高温エアパイプ112の前端に位置している。これらパイプ110,112は、他端のところにおいて、熱交換器114に対して連結されている。熱交換器114は、後方側エンジン懸架部材8および構造ブロック34の下流側において、ボックス24とエンジン2との間に配置されている。熱交換器114として、当業者に公知の任意の構成のものを使用し得ることに注意されたい。
【0060】
さらに、システム104は、ウィングに対して連結し得るよう構成された第1導出口116を備えている。これにより、氷結防止機能、キャビンの空調機能、等を行うことができる。この導出口116は、第1導出パイプ120の一端のところに位置している。第1導出パイプ120の他端は、熱交換器114に連結されている。ウィングに対して連結し得るよう、このパイプ120は、ボックス24を貫通するようにして配置される。好ましくは、図3に示すように、鉛直方向にボックス24を貫通するようにして配置される。
【0061】
最後に、熱交換器システム104には、第2導出口122aが設けられている。第2導出口122aは、第2導出パイプ124の一端のところに位置している。第2導出パイプ124の他端は、熱交換器114に対して連結されている。ここで、第1導出口が、高温エア導入口に対して連通していること、および、第2導出口が、低温エア導入口に対して連通していること、に注意されたい。
【0062】
図3は、さらに、ボックス24のための熱保護システム58を示している。熱保護システム58は、好ましくは、全体的に、下スパー28の下方にわたって延在する通風パイプ60を備えている。しかしながら、熱保護システム58は、本発明の一部を構成するものではない。したがって、これ以上の説明を省略する。
【0063】
本発明の格別の特徴点の1つは、エンジンが航空機ウィングの下側に懸架される場合に、第2導出口122aが、後方側エンジン懸架部材8の後方側に、かつ、ボックス24のスパー28の下方に、位置しているという事実に基づく。この目的のために、図3によって理解されるように、パイプ124は、構造ブロックを横断しつつ長手方向に延在する用にして、構成されている。この構成は、ブロック34のX方向に沿った長さが短いことのために、実際には比較的容易である。
【0064】
さらに、図3は、パイロン4上に設置された複数の空気力学的整流板のうちの1つを示している。このような整流板は、より詳細には、後方側空気力学的整流板として、あるいは、下側後方側空気力学的整流板として、あるいは、シールドとして、あるいは、後方側パイロン整流板として、公知なものである。この整流板66は、好ましくはボックス24の下方に配置されており、全体的に後方側エンジン懸架部材8よりも後方側に位置しており、そして、通常は、ウィング3の後端エッジに向けて後方向きに突出している。したがって、整流板66は、パイロンの剛直構造の一部を構成するものではなく、ボックス24の下方にかつブロック34の後方側に固定された支持部材68によって、剛直構造10に対して連結されている。整流板66の前方側下端は、公知なように、エンジン2の排気ノズルの上部に対してほぼ接線的である。
【0065】
この好ましい実施形態においては、パイプ124は、ブロック34を超えて延在しており、整流板66の内部にまで侵入している。これにより、このパイプの第2導出口122aは、例えば、整流板66の前方部分の近傍に配置されている。この目的のために、整流板66の内部に侵入する前に、パイプ124は、整流板66を支持している支持部材68を貫通している。よって、図3には図示されていないけれども、第2導出口122aが、エンジン排気ノズルに対向していることが好ましい、あるいは、エンジン排気ノズルの下流側に位置していることが好ましい。
【0066】
図4は、上記実施形態の代替可能な実施態様を示している。図4においては、第2導出パイプ124は、整流板66の内部へと侵入しているのではなく、ブロック34の下流側のところに、湾曲部分すなわちエルボーを備えている。これにより、パイプ124は、支持部材68に沿って下側に延在することができる。
【0067】
さらなるエルボーすなわちさらなる湾曲部分が設けられる。これにより、このパイプ124の端部を、整流板66の前方下部と排気ノズル70の上部との間に、位置させることができる。よって、この構成においては、第2導出口122bは、整流板66の外壁のところにおいて開口しており、好ましくは、整流板の側部または下部のところにおいてなおかつノズル70の突出端部72の下流側のところにおいて開口している。さらに、第2導出口122bは、好ましくは、整流板66の外壁上に形成された不連続部分および/またはオフセット部分(図示せず)のところに、配置されている。これにより、ベースドラッグを引き起こすことができ、したがって、パイプ124から導出されるエアの負圧を強調することができる。このことは、明らかに、大きな差圧を得ることに寄与し、熱交換器システム104の性能向上に寄与する。
【0068】
また、整流板66の外壁のところにおける第2導出口122bの格別の位置に基づき、整流板66がエア流によって包まれることとなり、これにより、整流板66がエンジンジェットから保護されることに注意されたい。このことは、有利には、高温ジェットが整流板66を衝撃することによって引き起こされるドラッグを低減する。
【0069】
第2導出パイプ124から導出されたエアを使用することによって有利にはスラスト力が生成されることのために、第2導出口122aが整流板66の内部で開口するという上記態様においては、整流板のところで開口するエア導出口の存在が、必要とされる。
【0070】
図5aおよび図5bは、空気力学的整流板66の後方部分の形成に関する第1手法を示している。後方部分には、上述したエア導出口86が設けられる。
【0071】
この実施形態においては、開口86が、制御可能な可動構造88に対して連結されていることがわかる。制御可能な可動構造88は、その位置の関数として、整流板66の空気力学的形状を変更することができる。この構造88は、好ましくは、オジーブ(ogive )形状または類似の形状とされている。この構造88は、空気力学的な延出位置とも称されるような後方位置とされた時には、開口86から突出する。これにより、図5aに示すように、整流板66の側壁90a,90bから空気力学的に延出することができる。この構造88は、例えばこの構造88に対して連結された駆動手段96といったような手段によって、好ましくはX方向に対してほぼ平行とされた方向92に沿っての並進移動を、せすることができる。この構造88により、オフセット部分を有しておらずドラッグ(あるいは、引きずり抵抗)が小さいようなほぼ連続的な空気力学的形状の整流板66を得ることができる。指針として、このような空気力学的位置は、好ましくは、航空機の高速飛行時に使用される。
【0072】
図5bは、退避した取込位置とも称される前方位置とされた可動構造88を示している。図5bにおいては、この構造88は、ほぼ全体的に、開口86から退避されている(すなわち、引っ込められている)。これにより、開口86の横断面積が、大きなものとされている。このことは、特に、整流板66の側壁90a,90bの空気力学的延出がもはや確保されていないことを意味する。これにひきかえ、空気力学的な断裂部分98a,98bが、これら2つの側壁90a,90bの各々の後方端部のところに、現れている。これにより、側壁90a,90bの外表面上を通過するエア流によってベースドラッグが引き起こされる。このようなベースドラッグは、開口86から導出されたエアの取込を増大させる。この結果、保護システム58の効率を増大させる。
【0073】
その結果、この取込位置は、好ましくは、航空機の低速飛行時に使用される。低速時には、オフセット部分98a,98bによって引き起こされるドラッグは、大きなものではなく、オフセット部分98a,98bによって生成される取込は、差圧を増大させることができる。差圧は、オフセット部分98a,98bが存在しない場合には、航空機が低速であることにより、小さなものとなるであろう。
【0074】
図6は、空気力学的整流板66の後方部分の形成に関する第2手法を示している。この場合にも、整流板66の後方部分には、エア導出開口86が設けられている。
【0075】
この実施形態においては、開口86が可動構造88に対して連結されているものの、可動構造88は、オジーブという態様のものではなく、2つのパネル100a,100bとされている。これら2つのパネル100a,100bは、それぞれの後端のところにおいて、好ましくはY方向に対して平行なものとされた軸線102に沿って、互いに関節結合されている。これらパネル100a,100bは、開口86から恒久的に突出している。
【0076】
実線で示しているような空気力学的延出位置とも称される張出位置においては、2つのパネル100a,100bは、それぞれの前端が、整流板66の側壁90a,90bの後端に対して当接している。この状態では、2つのパネル100a,100bは、側壁の空気力学的な延長部分を形成している。この構造88は、例えばこの構造88に対して連結された駆動手段96といったような駆動手段によって、軸線102回りの回転を制御し得るものとされている。したがって、この構造88を使用することにより、オフセット部分を有しておらずドラッグ(あるいは、引きずり抵抗)が小さいようなほぼ連続的な空気力学的形状の整流板66を得ることができる。
【0077】
図6において破線で示しているような退避された取込位置とも称される収縮位置においては、2つのパネル100a,100bの前端は、回転によって互いに接近しており、これにより、それぞれ対応する側壁90a,90bの後端からは、かなり離間している。このことは、特に、開口86の断面積が大きなものとなっていること、および、整流板66の側壁90a,90bの空気力学的延出がもはや確保されていないことを意味する。これにひきかえ、空気力学的な断裂部分98a,98bが、これら2つの側壁90a,90bの各々の後方端部と、それぞれ対応するパネル100a,100bと、の間のところに、現れている。これにより、側壁90a,90bの外表面上を通過するエア流によってベースドラッグが引き起こされる。
【0078】
上述したような2つの代替可能な実施態様を使用することに関連した1つの利点は、可動構造88の位置すなわち状況に依存して、開口86の断面積を可変とし得ることである。整流板の開口の断面積を変更することによって第2導出口から導出されるエア量を制御し得ることにより、この目的のために設けられる必要があったバルブを省略することができる。そのようなバルブは、従来技術においては、熱交換器システムの上流側に配置されていた。
【0079】
さて、図7aおよび図7bには、空気力学的整流板66からエアを抽出するための第3手法が示されている。この場合には、整流板の後方部分に導出開口は設けられない。そうではなく、2つの開口105a,105bが、整流板66の側壁90a,90b上に配置されている。指針として、これらの開口105a,105bは、整流板66のうちの、X方向に沿った中央領域あるいはその近傍に、配置することができる。
【0080】
この実施形態においては、可動構造88が、全体的に、2つの側方パネルおよび/またはフラップ101a,101bという態様のものとされている。2つの側方パネルおよび/またはフラップ101a,101bの各々の前端は、好ましくはZ方向に対して平行なものとされたそれぞれ対応する軸線103a,103bに沿って、整流板66の側壁90a,90bに対して、関節結合されている。
【0081】
実線で示しているような空気力学的位置とも称される畳み込み位置においては、2つのパネル101a,101bは、それぞれの後端が、整流板66の側壁90a,90bに対して当接している。この状態では、2つのパネルは、側壁の空気力学的な延長部分を形成している。この構造88は、例えばこの構造に対して連結された駆動手段(図示せず)といったような駆動手段によって、それぞれ対応する軸線回りの回転を制御し得るものとされている。したがって、この構造88を使用することにより、オフセット部分を有しておらずドラッグ(あるいは、引きずり抵抗)が小さいようなほぼ連続的な空気力学的形状の整流板66を得ることができる。したがって、この畳み込み位置においては、各側方パネル101a,101bは、整流板66の側壁90a,90bに形成されたそれぞれ対応する開口105a,105bを閉塞する。
【0082】
図7bにおいて破線で示しているようなエア放出位置とも称される張出位置においては、2つのパネル101a,101bの後端は、それぞれ対応する軸線103a,103b回りの回転によって張り出されており、これにより、それぞれ対応する側壁90a,90bからは、離間している。このことは、特に、整流板66の側壁90a,90bの空気力学的延出がもはや確保されていないことを意味し、また、特に、整流板66内に位置したエアが、側壁90a,90bと、側方パネル101a,101bの後端と、の間に形成された自由空間を通って逃げ得ることを意味している。したがって、2つの側方パネルおよび/またはフラップ101a,101bの張出は、上述したような開口105a,105bを形成し、当然のことながら、有利な取込効果を引き起こすことができる。
【0083】
側方パネル/側方フラップ101a,101bというこの手法は、図7bに概略的に示すような互いに協働する2つの導出口122a,122bを使用することが決定された場合に、特に選択される。
【0084】
1つの採用されたシステム(図示せず)を使用することにより、導出口122aと導出口122bとのいずれかを使用することによって、あるいは、導出口122aと導出口122bとの双方を同時に使用することによって、エアの放出を行うことができる。この点に関し、導出口122aが、好ましくは、故障時や大流量(航空機が低速)時に使用されること、また、導出口122bが、好ましくは、巡航時や小流量(航空機が高速)時に使用されること、に注意されたい。
【0085】
明らかなように、当業者であれば、単に非制限的な例示によって上述したような航空機エンジンアセンブリ1に対して、様々な修正を行うことができる。この点に関し、パイロン4は、航空機ウィングの下側に懸架されるものとして構成されているけれども、パイロン4は、また、航空機ウィングの上側に取り付けられるように構成することもできる点に言及しておくことは、重要である。
【0086】
さらに、本発明において使用される熱交換器システムは、本発明の範囲を逸脱することなく、エア/エアタイプのもの以外の任意のタイプのものとすることができ、特に、燃料/エアタイプのものや、オイル/エアタイプのもの、とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の好ましい一実施形態による航空機エンジンアセンブリを示す側面図であって、理解の明瞭化のために、熱交換器システムのボックスの図示が意図的に省略されている。
【図2】図1のエンジンアセンブリの懸架パイロンの剛直構造に属する下側構造ブロックを拡大して示す斜視図である。
【図3】図1のアセンブリの一部を示す斜視図であって、熱交換器システムを示している。
【図4】図1〜図3に示す好ましい実施形態の代替可能な実施形態をなす航空機エンジンアセンブリを示す側面図である。
【図5a】図3のアセンブリに属する懸架パイロンの後方側空気力学的整流板の後方部分を示す平面図であって、導出口のところにおける整流板からのエア取込を増減させ得る制御可能な可動構造をより詳細に示している。
【図5b】図3のアセンブリに属する懸架パイロンの後方側空気力学的整流板の後方部分を示す平面図であって、導出口のところにおける整流板からのエア取込を増減させ得る制御可能な可動構造をより詳細に示している。
【図6】図5aおよび図5bと同様の図であって、制御可能な可動構造に関する代替可能な実施形態を示している。
【図7a】図4と同様の図であって、他の代替可能な実施形態でもって、後方側空気力学的整流板に対して、制御可能な可動構造が付設されている。
【図7b】図7aにおけるVII−VII線に沿った矢印視断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 航空機エンジンアセンブリ
2 エンジン
3 ウィング
4 エンジン懸架パイロン
8 後方側エンジン懸架部材
10 剛直構造
11 取付システム
24 ボックス
34 構造ブロック
36 取付インターフェース
66 後方側空気力学的整流板
70 エンジン排気ノズル
86 エア導出開口
88 制御可能な可動構造
90a 側壁
90b 側壁
101a 側方パネル
101b 側方パネル
104 熱交換器システム
105a 開口
105b 開口
106 低温エア導入口
108 高温流体導入口
114 熱交換器
116 第1導出口
120 第1導出パイプ
122a 第2導出口
122b 第2導出口
124 第2導出パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機エンジンアセンブリ(1)であって、
エンジン(2)と、エンジン懸架パイロン(4)と、を具備し、
前記パイロンが、
第1に、ボックス(24)を有して構成された剛直構造(10)と、
第2に、前記エンジン(2)と前記剛直構造(10)との間に介装された取付システム(11)と、
を備え、
前記取付システム(11)が、とりわけ、後方側エンジン懸架部材(8)を備え、
前記エンジンアセンブリが、さらに、熱交換器(114)を備えた熱交換器システム(104)を具備し、
前記熱交換器(114)に対しては、高温流体導入口(108)と、低温エア導入口(106)と、前記高温流体導入口(108)に対して連通している第1導出口(116)と、前記低温エア導入口(106)に対して連通している少なくとも1つの第2導出口(122a,122b)とが、連結され、
前記熱交換器システム(104)からの前記各第2導出口(122a,122b)が、前記ボックス(24)と前記エンジン(2)との間に配置され、
このようなエンジンアセンブリにおいて、
前記各第2導出口(122a,122b)が、前記後方側エンジン懸架部材(8)よりも後方側に配置され、
前記懸架パイロン(4)の前記剛直構造(10)が、さらに、前記ボックス(24)と前記エンジン(2)との間において前記ボックス(24)に対して固定された構造ブロック(34)を備え、
この構造ブロック(34)が、前記後方側エンジン懸架部材(8)に対しての取付インターフェース(36)を備え、
前記熱交換器システム(104)からの前記第2導出口(122a,122b)が、前記熱交換器(114)に対して連結されかつ前記構造ブロック(34)を貫通している第2導出パイプ(124)上に設けられていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記第2導出口(122b)が、前記懸架パイロン(4)の後方側空気力学的整流板(66)の外壁のところにおいて開口し、
前記後方側空気力学的整流板(66)の全体が、前記後方側エンジン懸架部材(8)よりも後方側に配置されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項3】
請求項1記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記第2導出口(122a)が、前記懸架パイロン(4)の後方側空気力学的整流板(66)の内部で開口し、
前記後方側空気力学的整流板(66)の全体が、前記後方側エンジン懸架部材(8)よりも後方側に配置されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項4】
請求項3記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記後方側空気力学的整流板(66)が、制御可能な可動構造(88)を備え、
この可動構造(88)に関連したエア導出開口(86)が、前記可動構造の位置すなわち状況に依存して、前記整流板(66)の空気力学的形状を変更し得るものとされていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項5】
請求項4記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記可動構造(88)が、前記エア導出開口(86)を横断して配置されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項6】
請求項3記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記後方側空気力学的整流板(66)が、制御可能な可動構造(88)を備え、
この可動構造(88)が、前記整流板(66)の2つの側壁(90a,90b)の前端に対して関節結合された2つの側方パネル(101a,101b)を備え、
これら2つの側方パネル(101a,101b)の各々が、前記整流板(66)の前記側壁(90a,90b)に形成されたそれぞれ対応する開口(105a,105b)を開閉し得るように構成されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項7】
請求項1記載のエンジンアセンブリ(1)において、
2つの導出口(122a,122b)が設けられ、
一方の導出口(122b)が、前記懸架パイロン(4)の後方側空気力学的整流板(66)の外壁のところにおいて開口し、
前記後方側空気力学的整流板(66)の全体が、前記後方側エンジン懸架部材(8)よりも後方側に配置され、
他方の導出口(122a)が、前記懸架パイロン(4)の前記後方側空気力学的整流板(66)の内部で開口していることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記熱交換器システム(104)からの前記第1導出口(116)が、前記熱交換器(114)に対して連結されかつ前記剛直構造(10)の前記ボックス(24)を貫通している第1導出パイプ(120)上に設けられていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項9】
請求項8記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記第1導出口(116)が、航空機のウィング(3)上に連結され得るように構成されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記熱交換器(114)が、前記後方側エンジン懸架部材(8)よりも前方側において、前記ボックス(24)と前記エンジン(2)との間に配置されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記熱交換器システム(104)が、流体/エアタイプのものとされ、
前記高温流体導入口(108)と前記第1導出口(116)とを流れる流体が、エアと、オイルと、燃料と、からなるグループの中から選択されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のエンジンアセンブリ(1)において、
前記第2導出口(122a,122b)の各々が、エンジン排気ノズル(70)に隣接したところにおいてまたはエンジン排気ノズル(70)の下流側のところにおいて、前記ボックス(24)と前記エンジン(2)との間に配置されていることを特徴とするエンジンアセンブリ。
【請求項13】
航空機であって、
請求項1〜12のいずれか1項に記載された少なくとも1つのエンジンアセンブリを具備していることを特徴とする航空機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公表番号】特表2009−510314(P2009−510314A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532764(P2008−532764)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066740
【国際公開番号】WO2007/036522
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)