説明

エンジンの冷却回路

【課題】エンジンへの通水を止めても、EGRクーラ内で冷却水の沸騰を起こすことが無いエンジンの冷却回路を提供する。
【解決手段】冷却回路1は、ウォーターポンプ9よりも下流側のエンジン冷却水供給水路8に接続されたEGR冷却水路11と、EGR冷却水路11に配設され、エンジン2の排気系から吸気系に再循環させる排気ガスを冷却するEGRクーラ12と、EGR冷却水路11の接続部よりも下流側のエンジン冷却水供給水路8に設けられた遮断バルブ14と、遮断バルブ14を制御する制御手段16とを備え、制御手段16は、エンジン2の暖機中は、エンジン2への通水を遮断する一方で冷却水をEGRクーラ12に流すべく、遮断バルブ14を閉とし、暖機中を除く通常運転時は、冷却水をエンジン2及びEGRクーラ12に流すべく、遮断バルブ14を開とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式エンジンの冷却回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なエンジン(内燃機関)では、図3に示すように冷却水が流れる。
【0003】
図3に示す冷却回路30では、エンジン31(シリンダヘッド33)の冷却水出口とサーモスタット34の冷却水入口とが第一エンジン冷却水戻し管35によって連通され、サーモスタット34の冷却水出口とラジエータ36の冷却水入口とが第二エンジン冷却水戻し管37によって連通されている。ラジエータ36の冷却水出口とウォーターポンプ38の吸込口とが第一エンジン冷却水供給管39で連通され、ウォーターポンプ38の吐出口とエンジン31(シリンダブロック32)の冷却水入口とが第二エンジン冷却水供給管40によって連通されている。第一エンジン冷却水戻し管35とEGRクーラ41の冷却水入口とが第一EGR冷却水管42によって連通されており、EGRクーラ41の冷却水出口と第一エンジン冷却水供給管39とが第二EGR冷却水管43によって連通されている。
【0004】
また、サーモスタット34とウォーターポンプ38とはバイパス管44によって連通されており、第一エンジン冷却水戻し管35内の冷却水温度が所定温度より低い場合には、サーモスタット34は自ずと閉となり、冷却水をラジエータ36には流さずにバイパス管44を介してウォーターポンプ38へと流すようになっている。
【0005】
この種のエンジンの冷却回路は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−151096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンの暖機中はウォーターポンプの吐出口をバルブによって遮断して、エンジン(シリンダブロック、シリンダヘッド)への通水を止めると、冷却水温度の上昇が早くなり、エンジンの暖機を早期に完了させ得る。しかし、特に図3に示す冷却回路の場合、ウォーターポンプの吐出口をバルブによって遮断すると、EGRクーラへの通水も止まるため、EGRクーラ内で冷却水の沸騰が起こる虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、エンジンへの通水を止めても、EGRクーラ内で冷却水の沸騰を起こすことが無いエンジンの冷却回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、エンジンの冷却水出口とラジエータの冷却水入口とがエンジン冷却水戻し水路により接続されると共に、前記ラジエータの冷却水出口と前記エンジンの冷却水入口とがエンジン冷却水供給水路により接続され、前記エンジン冷却水供給水路にウォーターポンプが配設される冷却回路であって、前記ウォーターポンプよりも下流側の前記エンジン冷却水供給水路に接続されたEGR冷却水路と、前記EGR冷却水路に配設され、前記エンジンの排気系から吸気系に再循環させる排気ガスを冷却するEGRクーラと、前記EGR冷却水路の接続部よりも下流側の前記エンジン冷却水供給水路に設けられた遮断バルブと、前記遮断バルブを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記エンジンの暖機中は、前記エンジンへの通水を遮断する一方で冷却水を前記EGRクーラに流すべく、前記遮断バルブを閉とし、前記暖機中を除く通常運転時は、冷却水を前記エンジン及び前記EGRクーラに流すべく、前記遮断バルブを開とするものである。
【0010】
前記エンジン冷却水戻し水路に設けられ、エンジン出口水温を検出するエンジン出口水温検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記エンジン出口水温検出手段により検出したエンジン出口水温が所定温度未満のとき、前記暖機中と判断し、前記エンジン出口水温検出手段により検出したエンジン出口水温が前記所定温度以上のとき、前記通常運転時と判断するものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンへの通水を止めても、EGRクーラ内で冷却水の沸騰を起こすことが無いという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの冷却回路のブロック図である。
【図2】ECUによる遮断バルブの制御フローを示す図である。
【図3】冷却水の流れの一例を示すエンジンの冷却回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1に示す本実施形態に係る冷却回路1においては、エンジン2は、シリンダブロック3とシリンダヘッド4とを有している。
【0015】
エンジン2(シリンダヘッド4)の冷却水出口とラジエータ5の冷却水入口とはエンジン冷却水戻し水路6により接続されており、エンジン冷却水戻し水路6には、サーモスタット7が配設されている。エンジン冷却水戻し水路6は、エンジン2の冷却水出口とサーモスタット7の冷却水入口とを連通する第一エンジン冷却水戻し管6aと、サーモスタット7の冷却水出口とラジエータ5の冷却水入口とを連通する第二エンジン冷却水戻し管6bとから構成されている。
【0016】
ラジエータ5の冷却水出口とエンジン2(シリンダブロック3)の冷却水入口とはエンジン冷却水供給水路8により接続されており、エンジン冷却水供給水路8には、ウォーターポンプ9が配設されている。エンジン冷却水供給水路8は、ラジエータ5の冷却水出口とウォーターポンプ9の吸込口とを連通する第一エンジン冷却水供給管8aと、ウォーターポンプ9の吐出口とエンジン2の冷却水入口とを連通する第二エンジン冷却水供給管8bとから構成されている。
【0017】
ウォーターポンプ9は、エンジン2のクランクシャフト等に連結され、クランクシャフト等の回転で駆動される機械式のものである。
【0018】
サーモスタット7とウォーターポンプ9とはバイパス管(バイパス水路)10によって接続されており、第一エンジン冷却水戻し管6a内の冷却水温度が所定温度(例えば、86℃)よりも低い場合には、サーモスタット7は自ずと閉となり、冷却水をラジエータ5には流さずにバイパス管10を介してウォーターポンプ9へと流すようになっている。
【0019】
第二エンジン冷却水供給管8b(つまり、ウォーターポンプ9よりも下流側のエンジン冷却水供給水路8)にEGR冷却水路11が接続されており、EGR冷却水路11には、エンジン2の排気系から吸気系に再循環させる排気ガスを冷却するEGRクーラ12が配設されている。EGR冷却水路11の戻し部は、第二エンジン冷却水戻し管6b(つまり、サーモスタット7よりも下流側のエンジン冷却水戻し水路6)に接続されている。EGR冷却水路11は、第二エンジン冷却水供給管8bとEGRクーラ12の冷却水入口とを繋ぐ第一EGR冷却水管11aと、EGRクーラ12の冷却水出口と第二エンジン冷却水戻し管6bとを繋ぐ第二EGR冷却水管11bとから構成されている。
【0020】
第一EGR冷却水管11a(つまり、EGRクーラ12よりも上流側のEGR冷却水路11)には、EGRクーラ12への水流量を制限する絞り部(絞り)13が設けられている。
【0021】
本実施形態では、第一EGR冷却水管11a(EGR冷却水路11)の接続部よりも下流側の第二エンジン冷却水供給管8b(エンジン冷却水供給水路8)に、エンジン側遮断バルブ(以下、遮断バルブという)14が配設されており、第一エンジン冷却水戻し管6a(つまり、サーモスタット7よりも上流側のエンジン冷却水戻し水路6)には、エンジン出口水温を検出するエンジン出口水温センサ(エンジン出口水温検出手段)15が配設されている。遮断バルブ14は、制御手段としてのECU(電子制御ユニット)16により開閉制御されるものである。
【0022】
EUC16は、エンジン2の暖機中は、エンジン2への通水を遮断する一方で冷却水をEGRクーラ12のみに流すべく、遮断バルブ14を閉とし、一方、エンジン2の暖機中を除く通常運転時(暖機完了)は、冷却水をエンジン2及びEGRクーラ12に流すべく、遮断バルブ14を開とするようになっている。
【0023】
本実施形態では、ECU16は、エンジン出口水温センサ15により検出されるエンジン出口水温が所定温度(例えば、80℃)未満のときにエンジン2が暖機中と判断し、一方、エンジン出口水温センサ15により検出されるエンジン出口水温が前述の所定温度以上のときにエンジン2の通常運転時と判断するようになっている。
【0024】
ECU16による遮断バルブ14の制御フローを図2により説明する。
【0025】
先ず、ECU16は、ステップS1において、エンジン2が暖機中であるか否かを判定する。次いで、ステップS1においてエンジン2が暖機中である(YES)と判断した場合、ECU16は、ステップS2において遮断バルブ14を閉とし、本制御をリターンする。一方、ステップS1においてエンジン2が暖機中でない(NO;通常運転時)と判断した場合、ECU16は、ステップS3において遮断バルブ14を開とし、本制御をリターンする。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0027】
エンジン2の暖機中には、ECU16によって遮断バルブ14が閉とされ、エンジン2(シリンダブロック3、シリンダヘッド4)には冷却水が流れず、EGRクーラ12のみに冷却水が流れるようになる。この際、絞り部13によりEGRクーラ12への水流量は制限される。EGRクーラ12へはウォーターポンプ9の全水流量を流す必要はないので、EGRクーラ12への水流量を制限する。
【0028】
一方、エンジン2の通常運転時には、ECU16によって遮断バルブ14が開とされ、エンジン2(シリンダブロック3、シリンダヘッド4)、及びEGRクーラ12に冷却水が流れるようになる。この際、絞り部13によりEGRクーラ12への水流量は制限される。EGRクーラ12で要求される水流量がエンジン2で要求される水流量と比較して少ないので、EGRクーラ12への水流量を制限する。
【0029】
本実施形態によれば、エンジン2の暖機促進のため、エンジン2の暖機中は遮断バルブ14を遮断してエンジン2(シリンダブロック3、シリンダヘッド4)への通水を止めても、EGRクーラ12への通水は継続されるので、EGRクーラ12内の冷却水の沸騰を起こすことが無い。
【0030】
また、エンジン2への通水を止めてもEGRクーラ12内の冷却水の沸騰を起こすことが無く、遮断バルブ14の遮断時間を長くすることができるので、よりエンジン2の暖機を促進し、結果として燃費を良くすることができる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0032】
例えば、第二EGR冷却水管11b(つまり、EGRクーラ12よりも下流側のEGR冷却水路11)に絞り部13を配設しても良い。このようにしても、EGRクーラ12への水流量を制限することが可能である。
【0033】
さらに、本発明は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の各種エンジンの冷却回路に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 冷却回路
2 エンジン
5 ラジエータ
6 エンジン冷却水戻し水路
8 エンジン冷却水供給水路
9 ウォーターポンプ
11 EGR冷却水路
12 EGRクーラ
14 エンジン側遮断バルブ(遮断バルブ)
15 エンジン出口水温センサ(エンジン出口水温検出手段)
16 ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの冷却水出口とラジエータの冷却水入口とがエンジン冷却水戻し水路により接続されると共に、前記ラジエータの冷却水出口と前記エンジンの冷却水入口とがエンジン冷却水供給水路により接続され、前記エンジン冷却水供給水路にウォーターポンプが配設される冷却回路であって、
前記ウォーターポンプよりも下流側の前記エンジン冷却水供給水路に接続されたEGR冷却水路と、前記EGR冷却水路に配設され、前記エンジンの排気系から吸気系に再循環させる排気ガスを冷却するEGRクーラと、前記EGR冷却水路の接続部よりも下流側の前記エンジン冷却水供給水路に設けられた遮断バルブと、前記遮断バルブを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記エンジンの暖機中は、前記エンジンへの通水を遮断する一方で冷却水を前記EGRクーラに流すべく、前記遮断バルブを閉とし、
前記暖機中を除く通常運転時は、冷却水を前記エンジン及び前記EGRクーラに流すべく、前記遮断バルブを開とする
ことを特徴とするエンジンの冷却回路。
【請求項2】
前記エンジン冷却水戻し水路に設けられ、エンジン出口水温を検出するエンジン出口水温検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、
前記エンジン出口水温検出手段により検出したエンジン出口水温が所定温度未満のとき、前記暖機中と判断し、
前記エンジン出口水温検出手段により検出したエンジン出口水温が前記所定温度以上のとき、前記通常運転時と判断する
請求項1に記載のエンジンの冷却回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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