説明

エンジンの潤滑油量検出装置

【課題】エンジン回転数及び潤滑油の温度による影響を抑制しつつ、検出頻度と検出精度とを共に確保する。
【解決手段】油温Tを縦軸、エンジン回転数Nを横軸とする2次元平面上において、エンジン回転数N1〜N2、油温T1〜T2の範囲でエンジン回転数及び油温を独立変数として矩形状に設定される診断領域RAに対して、油温TがT1〜T2’(T2’<T2)の範囲では、エンジン回転数と油温との関係を一次関係の直線式で規定した領域判定閾値Ndよりもエンジン回転数Nが低い領域を、油温とエンジン回転数との間に相関関係を持たせた診断領域RBとして設定する。これにより、誤検出を生じる可能性が高い低油温・高回転の領域では診断を実施せず、中高回転・中高油温の常用域では診断頻度を確保して確実に油量異常を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのオイルパンに貯留される潤滑油の油量を検出するエンジンの潤滑油量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのオイルパンに貯留される潤滑油には規定量が定められており、エンジンの焼付きやオイル上がり等を防止してエンジンを良好に駆動するためには、潤滑油を規定量内に収める必要がある。このため、自動的に潤滑油量を検出するとともに、油量異常が発生しているときには運転者に対して警告を発するようにした装置が開発されている。
【0003】
このような装置は、オイルパン内の潤滑油の油面高さ(油面レベル)を検出することで油量異常を検出するものが一般的であるが、同一油量であっても運転状態に応じて油面レベルが変化する。このため、特許文献1には、潤滑油の温度に基づいて、潤滑油の油面レベルの検出値を補正し、補正後の油面レベルの値に基づいて潤滑油の消費量を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3205173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、潤滑油の油面レベルは、潤滑油の温度(油温)のみならず、エンジン回転数によっても変化する。油温及びエンジン回転数が一定の条件下では、油面レベルと油量とはほぼ比例関係にあるため、図7に示すように、油温及びエンジン回転数が一定の条件下で油面レベルを検出することで、油温・エンジン回転数の影響を受けることなく同一油量で同じ油面レベルを検出することができる。
【0006】
この場合、油温及びエンジン回転数が一定の条件下では条件を満たす機会が少なくなり、検出頻度が大幅に低下する。従って、或る程度の検出頻度を確保するためには、油温とエンジン回転数との双方の条件に幅を持たせる必要があるが、油温やエンジン回転数が変化した場合、油面レベルの検出値が同じであっても得られる油量に幅を持ってしまう。
【0007】
図8は、エンジン回転数一定の条件下で油温が高から低までの変化した場合の油面レベルと油量との関係を示しており、油温が低から高まで変化した場合、同じ油面レベルであっても油量幅Atでの油量を得ることになり、同じ油量でも油温が低い場合よりも油温が高い方が油面レベルが高い。これは、油温が高い方が潤滑油の体積膨張と粘度低下によりオイルパンへの戻りが速いためである。
【0008】
また、図9は、油温一定の条件下でエンジン回転数が高から低までの変化した場合の油面レベルと油量との関係を示しており、エンジン回転数が低から高まで変化した場合、同じ油面レベルであっても油量幅Anでの油量を得ることになり、同じ油量でもエンジン回転数が低い場合よりもエンジン回転数が高い方が油面レベルが低い。これは、エンジン回転数が高い方がオイルパンからの持ち出し油量が多いからである。
【0009】
更には、エンジン回転数も油温も独立に変化する条件では、検出の機会は最も多くなるものの、同じ油面レベルに対して油量幅が最も広がることになる。逆に言うと、同一油量で様々な油面レベルに変化する。
【0010】
このように、油面レベルの検出値から油量を検出する場合、エンジン回転数と油温との双方の条件に或る程度の幅を持たせることで検出の頻度を確保できるが、従来では、検出頻度を大きくすると、これに反して同一の油面レベルから検出される油量の幅が拡大してしまい、検出精度の低下を招く。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、エンジン回転数及び潤滑油の温度による影響を抑制しつつ、検出頻度と検出精度とを共に確保することのできるエンジンの潤滑油量検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるエンジンの潤滑油量検出装置は、エンジンのオイルパンに貯留される潤滑油の油面レベルに基づいて、前記潤滑油の油量を検出するエンジンの潤滑油量検出装置において、前記オイルパンにおける前記潤滑油の油面レベルを検出する油面センサと、前記エンジンの回転数と前記潤滑油の温度とが両者を互いに相関させて設定した設定領域内にあるか否かを調べ、前記油面センサの出力値に基づく油量検出処理を実施するか否かを判断する油量検出処理実施判断部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジン回転数及び潤滑油の温度による影響を抑制しつつ、検出頻度と検出精度とを共に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】潤滑油量検出装置を示す概略図
【図2】油面センサを示す概略図
【図3】潤滑油量検出に係る機能ブロック図
【図4】エンジン回転数及び油温の相関設定による油量幅の変化を示す説明図
【図5】診断領域の説明図
【図6】油量異常診断処理のフローチャート
【図7】一定の油温及びエンジン回転数での油面レベルと油量との関係を示す説明図
【図8】エンジン回転数を一定とした場合の油面レベルと油量との関係を示す説明図
【図9】油温を一定とした場合の油面レベルと油量との関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号10は、エンジン11の下部に装着されたオイルパン12の内部に貯留される潤滑油の油量を検出する潤滑油量検出装置を示している。オイルパン12の内部に貯留された潤滑油はエンジン11内で循環され、エンジン11内の各摺動部が潤滑されてエンジン11の駆動状態が良好に維持される。
【0016】
この潤滑油をエンジン11内に循環させるため、シリンダブロック13やシリンダヘッド14には油路が形成され、エンジン11には、オイルストレーナ15、図示しないオイルポンプ、オイルフィルタ、オイルクーラ等が組み付けられている。オイルポンプを駆動させることによりオイルストレーナ15から吸引された潤滑油は、オイルポンプを介してオイルクーラやオイルフィルタに導かれ、続いてシリンダブロック13やシリンダヘッド14の油路に導入される。そして、クランク機構や動弁機構を潤滑した潤滑油は、再びオイルパン12に戻される。
【0017】
また、潤滑油が貯留されるオイルパン12内には、潤滑油の油面レベルを検出する油面センサ16が設置されており、この油面センサ16の出力値に基づいて、潤滑油の油量を検出する油量検出処理がマイクロコンピュータを中心として構成される電子制御ユニット(ECU)50にて実施される。本実施の形態においては、ECU50における油量検出処理は、油面センサ16の出力値(油面レベルの検出値)から油面レベルの異常つまり潤滑油の油量異常を診断する処理として実施され、潤滑油量が適量範囲から外れたとき、油量警告灯30を点灯させ、運転者に警告を発する。尚、ECU50は、運転者の操作によってON,OFFされるイグニッションスイッチ1を介して電源2に接続されている。
【0018】
後述するように、油面レベルの異常診断に際しては、ECU50は、エンジン回転数と潤滑油の温度(油温)とを互いに相関させて設定した領域内で診断処理を実施し、診断の機会を確保しつつ、エンジン回転数及び油温による影響を抑制して検出精度の向上を図るようにしている。このため、ECU50は、エンジン11のクランク軸11aに軸着するクランクロータ11bの外周に対設されたクランク角センサ17からの信号と、オイルパン12内に臨まされた油温センサ18からの信号とを入力し、クランク角センサ17からの信号に基づくエンジン回転数と油温センサ18からの信号に基づく油温とによる領域が設定領域内にあるとき、油面レベルの異常診断を行う。
【0019】
ここで、油面センサ16の構成について説明する。油面センサ16は、本実施の形態においては、フロート式スイッチにより構成されており、潤滑油の適量範囲を定める上限レベルLhと下限レベルLlとを検出可能に構成されている。具体的には、図2に示すように、油面センサ16は中空の支持軸20を備え、この支持軸20に、磁石を備えた環状の上限フロート24と下限フロート25とが上下動自在に支持されている。
【0020】
支持軸20の両端には端部ストッパ21,22が組み付けられ、支持軸20の長手方向のほぼ中央には中間ストッパ23が組み付けられている。上限フロート24は端部ストッパ21と中間ストッパ23との間に配置され、下限フロート25は端部ストッパ22と中間ストッパ23との間に配置されている。
【0021】
上限フロート24や下限フロート25は、潤滑油よりも比重の軽い材料によって形成されており、潤滑油の油面レベルに応じて、上限フロート24は端部ストッパ21と中間ストッパ23とにより区画される第1検出範囲R1内で上下動し、下限フロート25は端部ストッパ22と中間ストッパ23とにより区画される第2検出範囲R2内で上下動することになる。
【0022】
また、支持軸20の内部には上限スイッチである上限リードスイッチ26と下限スイッチである下限リードスイッチ27とが収容されている。上限リードスイッチ26は端部ストッパ21と中間ストッパ23との間に配置され、下限リードスイッチ27は端部ストッパ22と中間ストッパ23との間に配置されている。
【0023】
上限リードスイッチ26はECU50を介して電源2に接続され、下限リードスイッチ27は接地されており、上限リードスイッチ26と下限リードスイッチ27とは直列に接続されている。このように、相互に接続される電源2、ECU50、上限リードスイッチ26および下限リードスイッチ27により、潤滑油の油量異常を検出する異常検出回路28が形成されている。
【0024】
尚、上限リードスイッチ26は、上限フロート24が検出範囲R1の下端に移動したとき、つまり検出範囲R1の下端を設定する中間ストッパ23に接触したときに、上限フロート24の磁石24aにほぼ対面するように配置されている。また、下限リードスイッチ27は、下限フロート25が検出範囲R2の上端に移動したとき、つまり検出範囲R2の上端を設定する中間ストッパ23に接触したときに、下限フロート25の磁石25aにほぼ対面するように配置されている。
【0025】
このようなリードスイッチ26,27は以下のように作動する。フロート24,25に組み込まれた磁石24a,25aがリードスイッチ26,27に近づくと、リードスイッチ26,27の金属板に十分な磁力線が通過するようになり、金属板に作用する吸引力によってリードスイッチ26,27の接点が閉じられる一方、フロート24,25に組み込まれた磁石24a,25aがリードスイッチ26,27から離れると、金属板を通過していた磁力線が減少するようになり、金属板のばね力によってリードスイッチ26,27の接点が開かれる。
【0026】
従って、図2に実線で示すように、潤滑油が下限レベルLlまで低下したときには、下限フロート25の磁石25aが下限リードスイッチ27から離れるため、下限リードスイッチ27の接点が開く。また、図2に破線で示すように、潤滑油が上限レベルLhまで上昇したときには、上限フロート24の磁石24aが上限リードスイッチ26から離れるため、上限リードスイッチ26の接点が開く。そして、油面レベルが適量範囲内、つまり上限レベルLhと下限レベルLlとの間に保たれている場合には、上限フロート24および下限フロート25がそれぞれに対応するリードスイッチ26,27に接近した状態となるため、上限リードスイッチ26と下限リードスイッチ27との接点は共に閉じる。
【0027】
このように、潤滑油が適量範囲内に保たれる場合には、上限リードスイッチ26と下限リードスイッチ27とが共にオン状態に切り換えられ、異常検出回路28が通電状態となる。一方、潤滑油が適量範囲を超えて減少または増加している場合には、上限リードスイッチ26または下限リードスイッチ27がオフ状態に切り換えられ、異常検出回路28が遮断状態となる。そして、ECU50により異常検出回路28が遮断状態であると認識され、潤滑油の油量異常が発生していると診断された場合には、ECU50から油量警告灯30に点灯信号が出力され、油量異常が運転者に対して警告される。
【0028】
尚、油面センサとして上限フロートと下限フロートを有するものを開示したが、これに限られるものではなく、フロート式の油面センサであれば、どのような形態であっても良い。
【0029】
また、油面センサはフロート式に限らず、圧力式、超音波式、電波式等、油面検出が可能なものであれば、どのような形態であっても良い。さらに、運転者に警告する際の手段としては、油量警告灯30の点灯に限られることはなく、警告ブザーを鳴らすようにしても良い。
【0030】
前述したように、ECU50による油量異常の診断処理は、エンジン回転数と油温とを所定の相関関係で関連付けて設定される設定領域内で実施される。このため、ECU50は、潤滑油量検出に係る機能として、図3に示すように、診断実施判断部51と、油量異常診断部52とを備えている。診断実施判断部51は、油面センサ16の出力値に基づく油量検出処理を実施するか否かを判断する油量検出処理実施判断部として機能するものであり、本実施の形態においては、油量検出処理は、潤滑油の油量異常を油面レベルの異常として診断する診断処理である。油量異常診断部52は、油面センサ16の出力値から検出される油面レベルにより、潤滑油量が適量範囲内に保たれているか否かを診断する。
【0031】
詳細には、診断実施判断部51は、エンジン回転数Nと油温Tとが所定の相関関係で設定された設定領域内にあるか否かを調べ、この領域内にあるとき、油量異常診断部52に診断実施を指示し、設定領域外のとき、油量異常診断部52に診断中止を指示する。診断を実施する診断領域は、潤滑油の油温とエンジン回転数とを独立変数としてそれぞれの範囲を設定した領域ではなく、油温とエンジン回転数とを互いに相関させて設定した領域とする。
【0032】
ここでは、エンジン回転数及び油温が一定の条件下で、油面センサ16で検出する油面レベルと油量とがほぼ比例関係にあるとき、診断を実施するエンジン回転数と油温の範囲を、図4に示すように、エンジン回転数NL〜NH(NL<NH)の範囲、油温TL〜TH(TL<TH)の範囲として説明する。
【0033】
このとき、エンジン回転数と油温とを独立変数として診断領域を設定すると、一定の条件(エンジン回転数NL且つ油温TL)下で油量Qの油面レベルPが一意的に決定されるのに対して、エンジン回転数と油温とを独立変数として設定した診断領域内で検出される油面レベルPから得られる油量は、油量幅A1すなわちエンジン回転数NL且つ油温THに対応する油量からエンジン回転数NH且つ油温TLに対応する油量までの幅を持つことになる。逆に言えば、同じ油量Qに対しては、油面レベルは油面検出幅B1をもって検出されることになる。
【0034】
従って、本実施の形態においては、診断領域を設定する際に油温とエンジン回転数との間に相関関係を持たせ、油温が低いときは高いエンジン回転数では診断を実施せず、油温が高くなるとエンジン回転数の幅を広げて診断を実施するような領域設定を行う。このような領域設定により、図4に示すように、油面センサ16で検出される油面レベルPに対応する油量の幅を、油量幅A1から油量幅A2(A2<A1)に狭めることができる。同じ油量Qに対しては、検出される油面レベルの幅を、油面検出幅B1から油面検出幅B2(B2<B1)に狭めることができる。
【0035】
具体的には、油温Tを縦軸、エンジン回転数Nを横軸とする2次元領域において、エンジン回転数N1〜N2、油温T1〜T2の範囲でエンジン回転数及び油温を独立変数として矩形状に設定される図5(a)の診断領域RAに対して、図5(b)に示すような診断領域RBを設定する。診断領域RBは、油温T(T1〜T2’;T2’<T2)の範囲では、エンジン回転数Nが以下の(1)式で示す回転数(領域判定閾値)Ndよりも低い領域を、油温とエンジン回転数との間に相関関係を持たせた診断領域として設定するものである。
Nd=a×T+b …(1)
【0036】
(1)式は、エンジン回転数と油温との関係を一次関係の直線式で規定しており、直線式の傾きa、切片bは、それぞれ、以下の(2),(3)式で決定される。
a=(N2−N1)/(T2’−T1) …(2)
b=(N1×T2’−N2×T1)/(T2’−T1) …(3)
【0037】
例えば、T1=60[°C]、T2’=100[°C]、N1=1000[rpm]。N2=2500[rpm]とするとき、油温T1〜T2’(T2’<T2;例えば、T2=120[°C])の範囲で、傾きa=37.5、切片b=−1250の直線よりも上側の領域を診断領域として、潤滑油の油量異常の診断を実施する。
【0038】
これにより、誤検出を生じる可能性が高い低油温・高回転の領域では、診断を実施しないことで誤診断を回避し、中高回転・中高油温の常用域では、診断頻度を確保して確実に油量異常を検出することができる。また、低油温の領域でも、診断頻度をそれ程低下させることなく検出精度を確保することができ、短時間、短距離の運転に対応することができる。
【0039】
油量異常診断部52は、診断実施判断部51からの診断実施指示により、油面センサ16からの信号に基づいて油面レベルの異常つまり潤滑油の油量異常を診断する。潤滑油が上限レベルLhを上回る場合や下限レベルLlを下回る場合、つまり潤滑油量が適量範囲から外れる場合には、油面センサ16内に収容される異常検出回路28が遮断状態となるため、この異常検出回路28の遮断状態を認識したとき、油量異常と判定して油量警告灯30を点灯させる。
【0040】
以上の機能は、具体的には、ECU50で実行される油量異常診断のプログラム処理にて実現される。次に、ECU50にて実行される油量異常診断のプログラム処理について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0041】
図6のフローチャートに示す油量異常診断処理は、所定時間或いは所定周期毎に実行されるプログラム処理であり、先ず、ステップS1において、潤滑油の油温Tが低温側の設定温度T1以上か否かを調べる。その結果、T<T1の低油温状態である場合には、ステップS1からステップS9へ分岐して診断無しと判断し、本処理を抜ける。
【0042】
一方、ステップS1においてT≧T1の場合には、ステップS2で油温Tが高温側の設定温度T2’以上か否かを調べる。T<T2’の場合、ステップS2からステップS3へ進んでエンジン回転数Nが低回転側の設定回転数N1以上か否かを調べ、N<N1の場合、ステップS9の診断無しの判定を経て本処理を抜け、N≧N1の場合、ステップS4へ進む。
【0043】
ステップS4では、エンジン回転数Nが油温Tとの相関関係によって規定される前述の(1)式の回転数(領域判定閾値)Nd以下である条件を満たすか否かを調べる。N>Ndの場合、ステップS4からステップS9の診断無しの判定を経て本処理を抜け、N≦Ndの場合、ステップS4からステップS8へ進んで診断を実施する。すなわち、前述の図5(b)に示すように、エンジン回転数Nが領域判定閾値Ndを超えている場合には診断領域RB外となるため、診断を実施せず、エンジン回転数Nが領域判定閾値Nd以下の場合、診断領域RB内となるため、診断を実施する。
【0044】
一方、ステップS2においてT≧T2’の場合には、ステップS2からステップS5へ進み、油温Tが設定温度T2(T2>T2’)以下か否かを調べる。ステップS5において、T>T2の場合、図5(b)の診断領域RB外となるため、診断を実施することなく(ステップS9)本処理を抜け、T≦T2の場合、ステップS6,S7で、低回転側の設定回転数N1及び高回転側の設定回転数N2による条件を調べる。
【0045】
その結果、N≧N1且つステップS7でN≦N2の条件を満足する場合、図5(b)の診断領域RB内となるため、ステップS6,S7からステップS8へ進んで診断を実施する。ステップS6においてN<N1、或いはステップS7においてN>N2の場合には、図5(b)の診断領域RB外となるため、診断を実施することなく(ステップS9)本処理を抜ける。
【0046】
このように本実施の形態においては、エンジン回転数及び油温が両者を互いに相関させて設定した診断領域内にあるか否かにより異常診断処理を実施するか否かを判断するので、誤検出を生じる可能性が高い領域での誤診断を防止しならが常用域で診断頻度を確保して確実に油量異常を検出することができる。また、短時間、短距離の低油温状態での運転が多い場合であっても、診断頻度を低下させることなく検出幅を小さくすることができ、検出精度の向上に寄与することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 潤滑油量検出装置
11 エンジン
12 オイルパン
16 油面センサ
17 クランク角センサ
18 油温センサ
50 電子制御ユニット
51 診断実施判断部(油量検出処理実施判断部)
52 油量異常診断部
N エンジン回転数
Nd 回転数(領域判定閾値)
RB 診断領域
T 油温

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのオイルパンに貯留される潤滑油の油面レベルに基づいて、前記潤滑油の油量を検出するエンジンの潤滑油量検出装置において、
前記オイルパンにおける前記潤滑油の油面レベルを検出する油面センサと、
前記エンジンの回転数と前記潤滑油の温度とが両者を互いに相関させて設定した設定領域内にあるか否かを調べ、前記油面センサの出力値に基づく油量検出処理を実施するか否かを判断する油量検出処理実施判断部と
を備えることを特徴とするエンジンの潤滑油量検出装置。
【請求項2】
前記設定領域は、前記エンジンの回転数と前記潤滑油の温度との一次関係式を用いて設定される領域であることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの潤滑油量検出装置。
【請求項3】
前記油量検出処理は、前記潤滑油の油量異常を前記油面レベルの異常として診断する診断処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの潤滑油量検出装置。
【請求項4】
前記油面センサは、前記潤滑油の油面レベルに応じて上下動するフロートと、該フロートの上下動に応じて開閉されるスイッチとを備えるフロート式スイッチであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエンジンの潤滑油量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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