エンジンの自動停止制御装置
【課題】アイドルストップ制御が行われる車両において、エンジン10の自動停止時間が短くなる状況下においてエンジン10が自動停止されることで、エンジン10の燃費低減効果が低下するおそれがあること。
【解決手段】停車時間についての直近の3つの値が、2秒未満の時間であるショートストップ時間未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が、自動停止による燃費低減効果が得られるか否かの閾値となる規定時間未満になると予測する。そして、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジン10の次回の自動停止を禁止する。
【解決手段】停車時間についての直近の3つの値が、2秒未満の時間であるショートストップ時間未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が、自動停止による燃費低減効果が得られるか否かの閾値となる規定時間未満になると予測する。そして、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジン10の次回の自動停止を禁止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行速度が規定速度以下になるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合に車載エンジンを自動停止させるエンジンの自動停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後所定の再始動条件が成立した場合にエンジンを再始動させるいわゆるアイドルストップ制御が知られている。この制御によれば、エンジンの燃費低減効果の向上を図ることが可能となる。
【0003】
しかしながら、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止時間が短いと、エンジンの燃費低減効果が低下するおそれがある。
【0004】
こうした問題を解決すべく、下記特許文献1に見られるように、エンジンの再始動直後の自動停止動作を所定時間だけ禁止するものも知られている。詳しくは、過去のエンジンの自動停止回数に応じて、再始動直後の自動停止動作を禁止するための上記所定時間を変更している。これにより、エンジンの自動停止及び再始動が短時間に繰り返される等、エンジンの自動停止時間が短くなると想定される状況において、エンジンが自動停止されることを抑制することができ、エンジンの燃費低減効果の低下の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−200791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、エンジンの自動停止時間を十分に確保可能な状況であるにもかかわらずエンジンを自動停止させることができない等、エンジンの自動停止時間が短くなる状況であるか否かを適切に把握してエンジンを自動停止させることができないおそれがある。そしてこの場合、エンジンの燃費低減効果が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エンジンの燃費低減効果の低下を好適に抑制することのできるエンジンの自動停止制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、車両の走行速度が規定速度以下になるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合に車載エンジンを自動停止させるエンジンの自動停止制御装置において、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その履歴に基づき、前記エンジンの次回の自動停止時間が、該エンジンの自動停止によって燃費低減効果を得ることが可能な規定時間未満になるか否かを予測する処理を行う予測手段と、該予測手段によって前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測された場合、前記エンジンの次回の自動停止を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、その履歴によれば、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否か、すなわちエンジンの自動停止による燃費低減効果が得られるか否かを予測することが可能であることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が上記規定時間未満になるか否かを予測する。そして、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジンの次回の自動停止を禁止する。これにより、エンジンの自動停止時間が短くなると想定される状況下において、エンジンが自動停止される事態の発生を抑制することができ、ひいてはエンジンの燃費低減効果の低下を好適に抑制することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値が、予め定められた時間である信号停車時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明者らは、停車時間の計測値の履歴を調べた結果、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、その前回値が、信号停車時に想定される停車時間(信号停車時間)以上であると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。
【0013】
この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間の長短について予測する。これにより、エンジンが次回自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを高精度に予測することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値によれば、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測することが可能であることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記直近の複数の値を用いて予測する。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が上記ショートストップ時間以上になると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記態様にて予測する。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値によれば、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測することが可能であることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記直近の複数の値を用いて予測する。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、前記信号停車時間よりも短いショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、上記ショートストップ時間以上になると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記態様にて予測する。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値及び前々回値が予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、その前回値及び前々回値が連続して上記ショートストップ時間になると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記前回値及び前々回値を用いて予測する。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項4〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが1つ以下であることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0025】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての直近3つの値のうち、ショートストップ時間未満となるものが1つ以下であると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測する。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項3〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0027】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近3つの値が連続してショートストップ時間未満になると、エンジンの次回の自動停止時間が短くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記直近の3つの値がショートストップ時間未満になることに基づき、エンジンの次回の自動停止時間が短くなると予測する。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項3〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が前記ショートストップ時間よりも長い時間である信号停車時間以上となることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0029】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての直近3つの値のうち、ショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が信号停車時間以上であると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測する。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項3〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、4回前の値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0031】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての直近3つの値のうち、ショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての4回前の値がショートストップ時間未満であると、エンジンの次回の自動停止時間が短くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が短くなると予測する。
【0032】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の挙動を検出する車載センサの検出値に基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断する小回判断手段を更に備え、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0033】
市街地や郊外の幹線道路を車両が走行する状況下、交差点の信号で車両を停止させる場合には通常、停車時間又はエンジンの自動停止時間が長くなる傾向にある。これに対し、住宅地や田舎道などの信号がない道路(以下、非幹線道路)を車両が走行する状況下、非幹線道路の交差点等における一時停止の標識等に従って車両を一時停止させたり、安全確認のために車両を減速・徐行させたりする場合には通常、停車時間又はエンジンの自動停止時間が短くなる傾向にある。こうした点に鑑みれば、停車時間又は自動停止時間の履歴から、基本的には車両が幹線道路又は非幹線道路のいずれを走行中かを判断することが可能となる。
【0034】
しかしながら、幹線道路から非幹線道路へと車両が進入した直後においては、停車時間又は自動停止時間のこれまでの履歴に基づき、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができなくなる懸念がある。
【0035】
ここで、本発明者らは、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合、車両が小回りすることに着目した。この点に鑑み、上記発明では、車両が小回りしたと判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入したと判断し、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。これにより、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合であっても、その後自動停止時間が短くなる状況において、エンジンが自動停止される事態を抑制することができる。
【0036】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の走行速度が所定の低速度以下になると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0037】
幹線道路から非幹線道路に車両が小回りして進入する前には通常、車両が減速される。この点に鑑み、上記発明では、車両の走行速度が所定の低速度以下になると判断されて且つ、車両が小回りしたと判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入したと判断し、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。こうした上記発明によれば、車両が非幹線道路に進入したか否かの判断精度を向上させることができ、ひいては次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かの予測精度を向上させることができる。
【0038】
請求項14記載の発明は、請求項12又は13記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された直後の停車時間又は前記エンジンの自動停止時間が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になると判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0039】
曲率半径の小さい幹線道路を車両が走行する場合、車両が小回りによって幹線道路から非幹線道路に進入したと誤判断される懸念がある。ここで、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した後、非幹線道路において車両が一時停止される場合には、停車時間又はエンジンの自動停止時間が短くなる傾向にある。
【0040】
この点に鑑み、上記発明では、車両が小回りしたと判断された直後の停車時間又は自動停止時間が上記ショートストップ時間未満であると判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入したと判断する。そして、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。こうした上記発明によれば、車両が非幹線道路に進入したか否かの判断精度を向上させることができ、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かの予測精度を好適に向上させることができる。
【0041】
請求項15記載の発明は、請求項12〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが過半数になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、前記規定数の前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする。
【0042】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが過半数になると、エンジンの次回の自動停止時間が短くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、停車時間又は自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値を用いて、次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測することができる。
【0043】
こうした予測手法を用いる場合、車両が幹線道路から非幹線道路に進入した後、上記規定数の停車時間又は自動停止時間の取得が完了するまでは、次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができなくなる懸念がある。
【0044】
ここで、車両が小回りしたと判断された後、停車時間又は自動停止時間が短くなる状況は、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高い状況であると考えられる。
【0045】
この点に鑑み、上記発明では、車両が小回りしたと判断された後、停車時間又は自動停止時間がショートストップ時間未満になると判断される限り、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断する。そして、小回りしたと判断されてから上記規定数の停車時間又は自動停止時間が新たに取得されるまで、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になるとの予測を継続する。これにより、次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができないおそれのある期間において、エンジンが自動停止される事態の発生を抑制することができる。
【0046】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、3つの前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする。
【0047】
上記発明では、次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができないおそれのある期間、すなわち、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断されてから新たに3つの停車時間又は自動停止時間が取得されるまでの期間において、エンジンが自動停止される事態の発生を抑制することができる。
【0048】
請求項17記載の発明は、請求項12〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記小回判断手段は、前記車両の操舵輪を操舵すべくドライバによって操作される操舵部材の操舵量と、前記車両の外輪及び内輪のそれぞれの回転速度の差とのうち少なくとも1つに基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断することを特徴とする。
【0049】
上記発明では、車両の旋回に関する上記パラメータを用いることで、車両が小回りしたか否かを適切に判断することができる。
【0050】
請求項18記載の発明は、請求項12〜17のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の方向指示器が操作されると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0051】
車両が小回りによって幹線道路から非幹線道路に進入する場合には通常、ドライバによって方向指示器が操作される。この点に鑑み、上記発明では、方向指示器が操作されると判断されて且つ、車両が小回りしたと判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断し、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。こうした上記発明によれば、非幹線道路に車両が進入したか否かの判断精度をいっそう向上させることができ、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かの予測精度をより好適に向上させることができる。
【0052】
請求項19記載の発明は、請求項1〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記停止条件における前記規定速度は、0よりも高い速度であることを特徴とする。
【0053】
上記発明では、車両の走行中にもエンジンを自動停止させることで、アイドルストップ制御によるエンジンの燃費低減効果の更なる向上を図っている。ただし、エンジンの自動停止時間が短くなる状況下においてエンジンが自動停止される頻度が増大し、エンジンの燃費低減効果が低下する事態が発生しやすい。このため、上記発明は、上記予測手段及び禁止手段を備えるメリットが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる減速時IS制御の概要を示すタイムチャート。
【図3】同実施形態にかかるアイドルストップ制御による燃費低減効果の説明図。
【図4】同実施形態にかかる非幹線道路におけるアイドルストップ制御の一例を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる減速時IS制御のアイドルストップ回数等の計測結果を示す図。
【図6】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態にかかる幹線道路及び非幹線道路についての停車時間の頻度分布を示す図。
【図8】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図9】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図10】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図11】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図12】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図13】同実施形態にかかる燃費低減効果の影響を調べた結果を示すタイムチャート。
【図14】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図15】同実施形態にかかる幹線道路から非幹線道路への進入態様を示す図。
【図16】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示すフローチャート。
【図17】同実施形態にかかる非幹線道路に進入する場合の操舵量の計測結果を示す図。
【図18】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の一例を示すタイムチャート。
【図19】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図20】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図21】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図22】その他の実施形態にかかる操舵量及び車輪速差の相関を示す図。
【図23】その他の実施形態にかかる操舵量及び車輪速差の計測結果を示す図。
【図24】その他の実施形態にかかる操舵量及び車輪速差の相関を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置の第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0056】
図1に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0057】
図示されるように、エンジン10の各気筒には、エンジン10の燃焼室に燃料を噴射供給する電子制御式の燃料噴射弁12が備えられている。燃料噴射弁12から噴射された燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10の出力軸(クランク軸14)の回転力として取り出される。
【0058】
クランク軸14には、スタータ16が接続されている。スタータ16は、図示しないイグニッションスイッチのオンにより始動し、エンジン10を始動させるべく、クランク軸14に初期回転を付与する(クランキングを行う)。
【0059】
電子制御装置(以下、ECU18)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU18には、ユーザのアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量)を検出するアクセルセンサ20や、ユーザのブレーキペダルの踏み込み量(ブレーキ操作量)を検出するブレーキセンサ22、更には車両の走行速度を検出する車速センサ24の出力信号等が入力される。ECU18は、上記各センサからの入力信号に基づき、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁12による燃料噴射制御や、スタータ16による駆動制御等を行う。
【0060】
特にECU18は、エンジン10のアイドルストップ制御を行う。アイドルストップ制御は、エンジン10の運転中に所定の停止条件が成立する場合に、燃料噴射弁12からの燃料噴射の停止等によってエンジン10を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合に、スタータ16の駆動及び燃料噴射弁12からの燃料噴射の開始等によってエンジン10を再始動させるものである。本実施形態では、エンジン10の停止条件を、ブレーキ操作がなされているとの条件と、車両の走行速度が0よりも高い規定速度(例えば7〜20km/h)以下になるとの条件との論理積が真であるとの条件とする。一方、エンジン10の再始動条件を、ブレーキ操作がなされていないとの条件を含む条件とする。
【0061】
なお、ブレーキ操作がなされているか否かは、例えばブレーキセンサ22の出力値に基づくブレーキ操作量が0よりも大きいか否かで判断すればよい。また、車両の走行速度は、車速センサ24の出力値に基づき算出すればよい。
【0062】
ここで上記停止条件のうち、車両の走行速度についての条件は、アイドルストップ制御による燃費低減効果の更なる向上を図るために設定される条件である。以下、本実施形態にかかるアイドルストップ制御(以下、減速時IS制御)について、図2を用いて説明する。
【0063】
図2は、本実施形態にかかる減速時IS制御の一例を示したものである。詳しくは、図2(a)に、アクセル操作の推移を示し、図2(b)に、ブレーキ操作の推移を示し、図2(c)に、車両の走行速度Vの推移を示す。なお、図中、アクセル操作及びブレーキ操作の推移について、アクセルセンサ20の出力値に基づくアクセル操作量やブレーキ操作量が0よりも大きい場合を「ON」で示し、上記操作量が0となる場合を「OFF」で示している。また、図中の各推移は、車両が幹線道路を走行中に、交差点の信号で車両が停止した後、再び走行を開始する状況におけるものを示している。
【0064】
図示されるように、時刻t1においてブレーキ操作が開始されることで車両の走行速度Vが低下を開始し、その後時刻t2において車両の走行速度Vが上記規定速度Vα以下になることで、エンジン10が自動停止される。そしてその後、時刻t4において車両を走行させるべくブレーキ操作が解除されることで、エンジン10が再始動される。これに対し、停車してからエンジン10を自動停止させるアイドルストップ制御(以下、停車時IS制御)を採用する場合、時刻t3に車両が停車することでエンジン10が自動停止される。このように、減速時IS制御の自動停止時間(時刻t2〜t4)は、停車してからエンジン10を自動停止させるアイドルストップ制御(以下、停車時IS制御)を採用する場合の自動停止時間(時刻t3〜t4)よりも長くなる。これにより、エンジン10の燃費低減効果を向上させることが可能となる。
【0065】
ところで、エンジン10の自動停止時間が短いと、エンジン10の燃費低減効果が低下するおそれがある。以下、自動停止時間が燃費低減効果に及ぼす影響について、図3を用いて説明する。
【0066】
図3は、アイドルストップ制御時におけるエンジン10の燃料消費量等の推移の一例を示すものである。詳しくは、図3(a)に、クランク軸14の回転速度(エンジン回転速度NE)の推移を示し、図3(b)に、燃料噴射弁12からの燃料噴射量Qの推移を示し、図3(c)に、スタータ16の消費電力をエンジン10の燃料消費量に換算したものの推移を示す。
【0067】
図示される例では、時刻t1〜t2までの期間においてエンジン10が自動停止される。ここで市街地や郊外の幹線道路を車両が走行する状況下、交差点の信号で車両が停止する場合は通常、エンジン10が自動停止される期間における燃料噴射量Qの低減量QAが、エンジン10の始動性を向上させるための燃料噴射量Qの増大量である始動時増大量QBと、スタータ16の消費電力の燃料換算量QCとの加算値よりも多くなる。すなわち、エンジン10の自動停止時間を、燃料噴射量の低減量QAが上記加算値よりも多くなるような規定時間(換言すれば、エンジン10の自動停止によって燃費低減効果を得ることが可能な時間の下限値)以上とすると、エンジン10の自動停止による燃費低減効果を得ることが可能となる。なお本実施形態では、始動時増大量QBを、アイドル運転状態で4秒運転した場合のエンジン10の燃料消費量とし、上記燃料換算量QCを、アイドル状態で1秒運転した場合のエンジン10の燃料消費量とした。このため、上記規定時間を5秒とした。
【0068】
一方、住宅地や田舎道などの信号がない道路(以下、非幹線道路)を車両が走行する状況下、非幹線道路の交差点等における一時停止の標識等に従って車両を一時停止させたり、安全確認のために車両を減速・徐行させたりする場合には通常、2秒未満の短時間の停車や停車を伴わない減速(以下、ショートストップ)が繰り返される。この場合、エンジン10の自動停止時間が短くなることで、上記燃料噴射量Qの低減量QAが、始動時増大量QB及び上記燃料換算量QCの加算値よりも少なくなり、エンジン10の燃費低減効果を得ることができなくなる。
【0069】
特に、減速時IS制御が行われる車両においては、停車時IS制御が行われるものと比較して、非幹線道路におけるショートストップの発生頻度の増大によってエンジン10の自動停止時間が短くなる事態の発生が顕著となるおそれがある。以下、このことについて、図4及び図5を用いて説明する。
【0070】
図4に、非幹線道路で車両が一時停止する場合におけるアイドルストップ制御の一例を示す、詳しくは、図4(a―1)〜図4(c−1)及び図4(a―2)〜図4(c−2)のそれぞれは、先の図2(a)〜図2(c)に対応している。
【0071】
停車時IS制御が行われる車両の場合、停車しないとエンジン10の停止条件が成立しない。このため、図4(1)に示すように、例えば、停車期間(時刻t2〜t3)となってエンジン10が自動停止される以前のタイミング(時刻t1)でブレーキ操作が解除されることが多くなり、エンジン10の自動停止時間が短時間となる頻度は顕著とならない。
【0072】
これに対し、減速時IS制御が行われる車両の場合、停車に先立って停止条件が成立することから、エンジン10が自動停止され得る車両の走行速度領域が拡大されることで、エンジン10の自動停止後、停車する以前に再始動条件が成立する機会が増大する。このため、図4(2)に示すように、時刻t1においてエンジン10が自動停止された後、例えば停車する時刻t4以前の時刻t2や時刻t3においてブレーキ操作が解除されることでエンジン10が再始動されることで、エンジン10の自動停止時間が短時間となる頻度が顕著となる。
【0073】
ここで図5に、減速時IS制御による自動停止回数(アイドルストップ回数)等の計測結果を示す。詳しくは、図5(A)に、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合における減速時IS制御及び停車時IS制御のそれぞれについてのアイドルストップ回数の計測結果を示し、図5(B)に、減速時IS制御による全アイドルストップ回数のうち停車を伴うものの割合と、上記全アイドルストップ回数のうち自動停止時間が5秒未満となるものの割合とを示す。なお、図中、幹線道路比率とは、上記所定の走行経路の距離(幹線道路及び非幹線道路のそれぞれの走行距離の加算値)に対する非幹線道路の走行距離の割合である。
【0074】
図5(A)に示すように、減速時IS制御を採用することで、幹線道路比率が小さくなるほど、停車時IS制御に対するアイドルストップ回数の増大度合いが大きくなる。これは、図5(B)に示すように、幹線道路比率が小さいほど、停車を伴わないアイドルストップ回数が増大するためである。そして同図(B)に示すように、幹線道路比率が小さくなるほど、エンジン10の自動停止時間が5秒未満となる短時間のアイドルストップ回数が増大することで、エンジン10の燃費低減効果が低下する。
【0075】
こうした問題を解決すべく、本発明者らは、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合における停車時間を計測した。そして、計測された停車時間について詳細に分析した結果、停車時間の履歴によれば、次回の停車時間を予測することが可能であることを見出した。すなわち停車時間の履歴によれば、次回エンジン10を自動停止させた場合に停車時間が短くなるか否かを予測することが可能となる。
【0076】
そこで本実施形態では、停車時間の履歴に基づき、エンジン10の次回の自動停止時間が上記規定時間未満になるか否かを予測する停止時間予測処理を行い、自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジン10の自動停止を禁止する自動停止禁止処理を行う。これにより、エンジン10の燃費低減効果の低下の回避を図る。以下、図6〜図11を用いて、上記停止時間予測処理及び自動停止禁止処理について詳述する。
【0077】
図6に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示す。この処理は、ECU18によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお本実施形態では、停車時間は、停車毎に算出され、ECU18のメモリに記憶される。
【0078】
この一連の処理では、ステップS10〜S20において、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否か、すなわちエンジン10の自動停止による燃費低減効果を得られるか否かを予測する。詳しくは、まずステップS10において、前回の停車時間Tstopが、信号停車時間T1(例えば10秒)以上であるか否かを判断する。ここで信号停車時間T1は、幹線道路の交差点等における信号停車時に想定される停車時間であり、上記規定時間(5秒)よりも長い時間である。この処理は、前回の停車時間が信号停車時間T1以上であると、エンジン10の次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることに鑑み、前回の停車時間を用いて次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測するものである。以下、図7を用いて、この予測手法について説明する。
【0079】
図7は、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合に計測された停車時間を、幹線道路及び非幹線道路のそれぞれに分けて頻度分布として示したものである。詳しくは、図7(A)に、非幹線道路についての停車時間の頻度分布を示し、図7(b)に、幹線道路についての停車時間の頻度分布を示す。
【0080】
非幹線道路を走行する場合、ショートストップが繰り返される。このため、図7(A)に示すように、非幹線道路についての停車時間は、上記規定時間よりも短くて且つ予め定められた時間であるショートストップ時間Tshort(例えば2秒)未満が支配的となり、信号停車時間T1としての10秒以上にはならない結果となった。
【0081】
これに対し、図7(B)に示すように、幹線道路についての停車時間は、非幹線道路では発生しない信号停車時間T1としての10秒以上の停車時間が支配的となる結果となった。すなわち、前回の停車時間が信号停車時間T1以上であれば、車両が幹線道路を走行している蓋然性が高く、次回の停車時間が長くなる蓋然性が高くなる。このため、前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測することが可能となる。
【0082】
図6の説明に戻り、ステップS10において前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1未満であると判断された場合には、ステップS12に進み、前回及び前々回の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort以上であるか否かを判断する。この処理は、前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1未満となる場合、現在走行している道路が幹線道路及び非幹線道路のいずれであるかを前回の停車時間Tstopのみから高精度に予測することができないことに鑑みたものである。つまり、先の図7(A)中、非幹線道路についての停車時間がショートストップ時間Tshort以上となる停車(ロングストップ)がわずかながら発生している。これは、非幹線道路の交差点における往来車両の通過待ち等に起因するものである。また、先の図7(B)中、幹線道路においてショートストップが発生したり、停車時間が非幹線道路におけるものと重複する停車が発生したりしている。これは、停止から走行可への信号の切り替わりタイミングの直前において信号で停車したり、交差点を右左折するときに車両を減速させたり、交差点手前において前方の車両との距離を調節すべく減速したりすること等に起因するものである。
【0083】
ここで本発明者らは、停車時間の計測値の履歴を詳細に解析した結果、図8に示すように、前回及び前々回の停車時間が連続してショートストップ時間Tshort以上となるもののうち、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間である5秒以上となるものの割合が約80%であることを見出した。すなわちこの場合、エンジン10が次回自動停止される状況が、車両が幹線道路の信号で停止する状況となる蓋然性が高くなる。このため、前回の停車時間が信号停車時間T1未満となる場合であっても、前回及び前々回の停車時間を用いることで、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを高精度に予測することが可能となる。
【0084】
図6の説明に戻り、ステップS12において前回及び前々回の停車において少なくとも1回ショートストップが発生したと判断された場合には、前回及び前々回の停車時間のみを用いてエンジン10の次回の自動停止時間を予測することができないことに鑑み、ステップS14〜S18の処理を行う。ステップS14〜S18においては、停車時間についての直近の3つの値を用いて、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測する。
【0085】
詳しくは、ステップS14では、停車時間についての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが1つ以下であるか否か、すなわち直近の3回の停車のうちショートストップの発生回数が1回以下であるか否かを判断する。以下、この予測手法について、図9を用いて説明する。
【0086】
図9は、直近の3回の停車パターンについての頻度分布を示すものである。詳しくは、幹線道路及び非幹線道路のそれぞれについての停車パターンの頻度分布を示す。なお、図中、「S」はショートストップが発生したことを示し、「L」はロングストップが発生したことを示す。また、例えば「S→L→L」の表記は、ショートストップの発生後、ロングストップが2回連続して発生したことを示す。
【0087】
図示されるように、直近の3回の停車のうち、ショートストップが1回以下である停車パターンとなるものは、幹線道路においてのみ発生している。このため、このような停車パターンとなる場合、車両が幹線道路の信号で停止する状況となる蓋然性が高くなる。したがって、ショートストップが1回以下であることに基づき、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になることを高精度に予測することが可能となる。
【0088】
図6の説明に戻り、ステップS14において直近の3回の停車のうちショートストップが2回以上発生したと判断された場合には、ステップS16に進み、停車時間Tstopについての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が信号停車時間T1以上となるか否かを判断する。これは、直近の3回の停車のうちのロングストップの時間について、この時間が信号停車時間T1以上であるか否かによれば、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上確保できるという知見に基づくものである。詳しくは、図10に、直近の3回の停車のうちのロングストップの時間が信号停車時間T1以上である場合の頻度分布を、幹線道路及び非幹線道路のそれぞれについて示す。この結果によれば、ロングストップの時間が信号停車時間T1以上であれば、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上となる蓋然性が高くなる。したがって、直近の3回の停車のうちショートストップが2回である停車パターンは、幹線道路及び非幹線道路の双方において発生している(図9)ために、ショートストップであるかロングストップであるかによっては、上記予測を高精度に行うことができないものの、上記態様にて停車時間についての直近の3つの値を用いることで、上記予測を高精度に行うことが可能となる。
【0089】
図6の説明に戻り、ステップS16において否定判断された場合には、ステップS18に進み、停車時間Tstopについての直近の3つの値が、連続してショートストップ時間Tshort未満になるか否かを判断する。これは、先の図9に示すように、直近の3回の停車がショートストップとなるのは、非幹線道路においてのみであるため、その後もショートストップが繰り返される蓋然性が高くなることに基づくものである。
【0090】
ステップS18において否定判断された場合には、ステップS20に進み、停車時間Tstopについての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、4回前の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になるか否かを判断する。この処理は、停車時間の直近の3つの値を用いて次回の自動停止時間を予測することができない場合における次回の自動停止時間の予測手法である。この予測手法について説明すると、図11(A)に示すように、上記所定の走行経路に沿って車両を走行させる場合に計測された直近の4つに関する停車パターンの総数458回のうち、幹線道路において4回前の停車がショートストップとなるのは0〜1回である。すなわち、直近の4回の停車のうち、ロングストップが発生したのは偶然であると考えられるため、4回前の停車がショートストップである場合、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高くなる。
【0091】
一方、図11(B)に示すように、上記直近の4つの停車パターンの総数458回のうち、4回前の停車がロングストップとなるのは2〜3回と少ないものの、これらのうち、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上となる割合が高い。このため、直近の4回の停車のうち、4回前の停車がロングストップとなる場合、車両が幹線道路を走行している蓋然性が高くなる。これらに鑑み、ステップS20において否定判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測し、上記ステップS20において肯定判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測することが可能となる。
【0092】
図6の説明に戻り、上記ステップS10において前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1以上であると判断された場合や、上記ステップS12、S14、S16において肯定判断された場合、更にはステップS20において否定判断された場合には、エンジン10を自動停止させることで燃費低減効果が得られる旨判断し、ステップS22においてアイドルストップフラグFの値を「0」とするIS許可処理を行う。ここでアイドルストップフラグFの値は、「0」によってエンジン10の自動停止が許可されることを示し、「1」によってエンジン10の自動停止が禁止されることを示す。
【0093】
一方、上記ステップS18、S20において肯定判断された場合には、エンジン10を自動停止させると燃費低減効果が低下する旨判断し、ステップS24においてアイドルストップフラグFの値を「1」とするIS禁止処理を行う。これにより、エンジン10の停止条件が成立する場合であっても、エンジン10の自動停止が禁止される。
【0094】
なお、ステップS22、24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0095】
図12に、上記停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を減速時IS制御に採用することによる種々の影響を調べた結果を示す。詳しくは、図12(A)に、上記所定の走行経路における全アイドルストップ回数のうち、停車時間が規定時間(5秒)以上となるアイドルストップ回数の割合である正答率と、幹線道路比率との関係を示し、図12(B)に、上記所定の走行経路を走行した場合における停車時IS制御の燃料消費量を基準としたときの減速時IS制御の燃料消費量である燃費改善率と、幹線道路比率との関係を示す。なお、図中、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を採用した場合の結果を「●」で表記し、これら処理を採用しない場合の結果を「×」で表記した。
【0096】
図12(A)に示すように、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行わない場合、幹線道路比率が低くなると、ショートストップが増大することに起因して正答率が低くなる。これに伴い、図12(B)に示すように、幹線道路比率が低いと、燃費改善率が低くなる。
【0097】
これに対し、停止時間予測処理等を行う場合、幹線道路比率が高い領域において正答率を高い値に維持しつつ、幹線道路比率が低い領域における正答率の低下を抑制することができる。このため、幹線道路比率が高い領域における燃費改善率を維持しつつ、幹線道路比率が低い領域における燃費改善率が過度に低下する事態を回避することができる。
【0098】
なお、図12は、一般道を利用して行った計測結果であるため、ここで、上記停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を減速時IS制御に採用することが、所定の走行モード(例えばNEDCモード、JC08モード、LA#4モード)における燃費低減効果に及ぼす影響について一応検討しておく。詳しくは、LA#4モードにて調べた結果を図13に示す。詳しくは、図13(a)に、LA#4モードでの車両の走行速度の推移を示し、図13(b)に、図13(a)のβ部分についての推移を示す。
【0099】
図13(b)では、燃費低減効果を得られることからエンジン10を自動停止させるべき部分に「●」を表記した。また、自動停止させるべき部分において実際に自動停止させることができた部分(正判断)に「○」を表記し、燃費低減効果が得られないことから自動停止させるべきでない部分において自動停止させた部分(誤判断)に「×」を表記した。これらの計測結果から、停止時間予測処理等の有無によらず、エンジン10が自動停止される部分に変化がないため、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理がLA#4モードにおける燃費低減効果に及ぼす影響は非常に小さい。
【0100】
このように本実施形態では、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行うことで、減速時IS制御におけるエンジン10の燃費低減効果の低下を好適に回避することができる。
【0101】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0102】
(1)前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1以上になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する停止時間予測処理を行った。これにより、エンジン10が次回自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを高精度に予測することができる。
【0103】
(2)停止時間予測処理として、前回及び前々回の停車時間がショートストップ時間Tshort以上になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満となるか否かを高精度に予測することができる。
【0104】
(3)停止時間予測処理として、停車時間についての直近の3つの値が、ショートストップ時間Tshort未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0105】
(4)停止時間予測処理によってエンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジン10の次回の自動停止を禁止する自動停止禁止処理を行った。これにより、エンジン10の自動停止時間が短くなると想定される状況下において、エンジン10が自動停止される事態の発生を抑制することができ、ひいてはエンジン10の燃費低減効果の低下を好適に回避することができる。
【0106】
(5)停止時間予測処理として、停車時間についての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが1つ以下であると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0107】
(6)停止時間予測処理として、停車時間についての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が信号停車時間T1以上となると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0108】
(7)停止時間予測処理として、停車時間について、直近の3つの値のうちショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、4回前の停車時間がショートストップ時間Tshort未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0109】
(8)車両の走行速度Vが0よりも高い規定速度Vα以下になるとの条件をエンジン10の停止条件に含めた。この場合、エンジン10の自動停止時間が短くなる状況下においてエンジン10が自動停止されやすく、エンジン10の燃費低減効果が低下する事態が発生しやすい。このため、車両の走行速度についての上記条件をエンジン10の停止条件に含む本実施形態は、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の利用価値が高い。
【0110】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0111】
図14に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図14において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0112】
図示されるように、クランク軸14の回転力は、デファレンシャルギア26や図示しないドライブシャフト等を介して駆動輪28(左右の後輪)に伝達される。
【0113】
車室内には、操舵輪30(操舵可能な左右の前輪)を操舵するためのハンドル32が設けられている。操舵輪30の切れ角θtireは、ハンドル32の操舵量に応じて定まる。より具体的には、操舵量が大きいほど切れ角θtireが大きくなる。
【0114】
各車輪(駆動輪28及び操舵輪30)付近には、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ34a〜34dが設けられている。なお、本実施形態では、左前輪、右前輪、左後輪及び右後輪のそれぞれの回転速度を検出する車輪速センサをそれぞれ、FLセンサ34a、FRセンサ34b、RLセンサ34c及びRRセンサ34dと称すこととする。
【0115】
方向指示灯を点滅させるべくドライバによって操作される方向指示器36や、ハンドル32の操舵量を検出する操舵量センサ38、操舵輪30の切れ角θtireを検出する切れ角センサ40、更には各車輪速センサ34a〜34d等の出力信号は、ECU18に入力される。
【0116】
ところで、幹線道路から非幹線道路に車両が進入すると、これまでの停車時間Tstopの履歴に基づき、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを適切に予測することができなくなることがある。これは、車両が非幹線道路に進入したと判断するためには、非幹線道路における少なくとも直近3回の停車時間Tstopが必要となることによるものである。
【0117】
次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを適切に予測することができないと、車両が非幹線道路に進入してから、直近3回の停車時間TstopがECU18のメモリ(記憶手段)に記憶されるまでの期間に自動停止条件が成立する場合、エンジン10が自動停止されることとなる。すなわち、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する毎に、その後車両がショートストップする状況であっても、エンジン10の自動停止が最大3回続けて許可されることとなる。そしてこの場合、エンジン10の燃費低減効果が低下する。
【0118】
ここで、本発明者らは、図15に示すように、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合、車両が右折又は左折するために、車両が小回りする(車両の旋回角が大きくなる)ことに着目した。そして、この小回りが、ハンドル32の操舵量が大きくされることで実現されることに着目した。そして、こうした着目から、幹線道路から非幹線道路に車両が進入したことを判断するためのパラメータとして、操舵量を用いることが可能であるとの知見を得た。
【0119】
そこで、本実施形態では、ハンドル32の操舵量に基づき車両が小回りしたと判断されたことを条件として、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いと判断し、エンジン10の次回の自動停止を禁止する。これにより、非幹線道路に車両が進入した後において、車両がショートストップされる状況であっても、エンジン10が自動停止される事態の抑制を図る。
【0120】
図16に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示す。この処理は、ECU18によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図16において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。また、後述する非幹線進入フラグFθ及びカウンタCの初期値は「0」とされる。さらに、本実施形態では、ショートストップ時間Tshortを4秒としている。
【0121】
この一連の処理では、ステップS26において、非幹線進入フラグFθの値が「1」であるか否かを判断する。ここで、非幹線進入フラグFθは、「1」によって車両が幹線道路から非幹線道路に進入した蓋然性が高いとの最終的な判断がされたことを示し、「0」によって車両が非幹線道路に進入した蓋然性が低いと判断されたことを示す。
【0122】
ステップS26において否定判断された場合には、ステップS28に進み、操舵量センサ38の出力値から算出される操舵量θsteerのピーク値の絶対値が規定操舵量γ(>0)以上になるとの条件、車両の走行速度Vが所定の低速度Vβ以下になるとの条件、及び方向指示器36が操作されているとの条件の論理積が真であるとの条件が成立したとの情報(履歴情報)が、ECU18のメモリに記憶されているか否かを判断する。
【0123】
この処理は、後述するステップS30の処理と合わせて、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いか否かを判断するための処理である。ここで、上記ピーク値とは、基準となる操舵量θsteer(例えば、車両が直進走行する場合の操舵量「0」)と、右折時又は左折時の操舵量θsteerの最大値との差分である。
【0124】
上記操舵量θsteerに関する条件は、車両が小回りしたか否かを判断するための基本となる条件である。以下、図17を用いて、操舵量θsteerに基づき小回りを判断可能な理由について説明する。
【0125】
図17は、種々の走行状態における操舵量θsteerのピーク値の計測結果である。詳しくは、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させる状況下において、幹線道路を走行する場合の上記ピーク値(図中「■」にて表記)、及び幹線道路からこれに略直交する非幹線道路に進入する場合のピーク値(図中「○」にて表記)のそれぞれを計測された順に示している。なお、これらデータと合わせて、非幹線道路を走行する場合のピーク値(図中「●」にて表記)、及び非幹線道路から幹線道路に戻る場合のピーク値(図中「△」にて表記)も併せて示す。また、図中、★1にて示すデータは、曲率半径が過度に小さい幹線道路を走行した場合のものであるため、ピーク値が大きくなっている。
【0126】
図示されるように、左折時及び右折時の双方において、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合の操舵量θsteerのピーク値「○」の絶対値は、幹線道路を走行する場合のピーク値「■」の絶対値と比較して大きい傾向にある。このため、操舵量θsteerのピーク値によれば、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いか否かを判別することが可能となる。なお、上記規定操舵量γは、幹線道路から非幹線道路に進入する場合のピーク値と、幹線道路におけるピーク値とを判別可能な値に設定される。
【0127】
また、上記車両の走行速度Vに関する条件は、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いか否かの判断精度を向上させるためのものである。ここで、判断精度を向上できる理由は、車両が非幹線道路に進入する際には通常、車両が減速されることによるものである。なお、本実施形態では、上記所定の低速度Vβは、上記規定速度Vαよりも高い速度に設定される。
【0128】
さらに、方向指示器36に関する条件は、上記走行速度Vに関する条件と同様に、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いか否かの判断制度を向上させるためのものである。つまり、操舵量θsteerのピーク値の絶対値が大きくなる場合であっても、幹線道路から非幹線道路に進入する状況ではなく、曲率半径の小さな幹線道路を走行する状況となることがある。この場合、非幹線道路を走行中であると誤判断されるおそれがある。このため、方向指示器36に関する条件を設定することで、誤判断を回避して上記判断精度を向上させる。
【0129】
図16の説明に戻り、上記ステップS26やステップS28において肯定判断された場合には、ステップS30に進み、前回の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満であるか否かを判断する。この処理が設けられる理由は、次の2つである。
【0130】
第1の理由は、上記ステップS28の方向指示器36に関する条件と同様に、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いか否かの判断精度を更に向上させるためである。つまり、先の図15に示すように、小回りした直後の非幹線道路においては、交差点の一時停止の標識等に従って車両がショートストップする蓋然性が高くなる。このため、上記ステップS28における上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断される状況下において、本ステップでショートストップすると判断された場合、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いとの最終的な判断をする。
【0131】
第2の理由は、車両が非幹線道路を継続して走行している蓋然性が高い状況であるか否かを判断するためである。
【0132】
なお、ステップS30において2度(又は3度)続けて肯定判断された場合や、非幹線進入フラグFθが「1」とされる状況下、ステップS30において否定判断された場合には、メモリに記憶された上記履歴情報を消去する。
【0133】
ステップS30において肯定判断された場合には、ステップS32に進み、非幹線進入フラグFθを「1」とする。この処理は、後述するステップS34、S36の処理と合わせて、上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断される状況下において上記ステップS30で最初に肯定判断された後、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを適切に予測することができないおそれのある期間において、エンジン10が自動停止される事態の発生を抑制するためである。
【0134】
つまり、上述したように、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを予測するためには、車両が非幹線道路に進入してからの3つの停車時間Tstopが必要とされる。このため、車両が非幹線道路に進入した後であっても、新たに3つの停車時間Tstopの取得(メモリへの記憶)が完了するまでは、次回の自動停止時間を適切に予測することができなくなる懸念がある。
【0135】
ここで、上記ステップS28において肯定判断された後、停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になる状況は、車両が非幹線道路を継続して走行している蓋然性が高い状況であると考えられる。このため、上記ステップS28において肯定判断された後、新たに3つの停車時間Tstopがメモリに記憶されるまで、後述するステップS24の処理に導く処理を行う。
【0136】
続くステップS34では、カウンタCの値を1インクリメントする。
【0137】
続くステップS36では、カウンタCの値が「2」以下であるか否かを判断する。この処理は、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを予測するために必要な停車時間Tstopが、上記ステップS28で肯定判断されてから、メモリに3つ記憶されたか否かを判断するための処理である。これは、非幹線道路に進入してからの停車時間が3つあれば、ステップS26〜S36の一連の処理を離脱して、ステップS18の処理において非幹線道路を走行しているか否かを判断することができることに鑑みたものである。
【0138】
ステップS36において肯定判断された場合には、ステップS24に進み、IS禁止処理を行う。
【0139】
一方、上記ステップS30や上記ステップS36において否定判断された場合には、ステップS38に進み、非幹線進入フラグFθ及びカウンタCの値を初期化する(「0」にする)。すなわち、上記履歴情報がメモリに記憶された後、直近の3回の停車時間Tstopがメモリに記憶されたと判断された場合や、車両が非幹線道路を継続して走行している蓋然性が高い状況でないと判断された場合、非幹線進入フラグFθ及びカウンタCの値を初期化する。
【0140】
上記ステップS28において否定判断された場合や、ステップS38の処理が完了した場合には、ステップS10に進む。
【0141】
なお、ステップS22、24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0142】
図18に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の一例を示す。詳しくは、図18(a)、図18(b)は、先の図2(b),図2(c)に対応している。また、図18(c)に、操舵量θsteerの推移を示し、図18(d)に、非幹線進入フラグFθの値の推移を示し、図18(e)に、アイドルストップフラグFの値の推移を示す。
【0143】
図示される例では、幹線道路において、停車時間Tstop(時刻t1〜t2)が信号停車時間T1以上となる停車がなされる。そしてその後、車両が走行を開始し、幹線道路から非幹線道路に進入すべく、車両が減速されるとともに、ハンドル32が操作される。これにより、時刻t3において、車両の走行速度Vが所定の低速度Vβ以下になる状況下、操舵量θsteerのピーク値が規定操舵量γ(例えば250°)以上になると判断されることで、上記履歴情報がメモリに記憶される。
【0144】
その後、時刻t4において非幹線道路への進入が完了し、その直後の時刻t5において、ブレーキ操作がなされる状況下、車両の走行速度Vが規定速度Vα以下になると判断されることで、エンジン10が自動停止される。その後、ブレーキ操作が解除される時刻t6においてエンジン10が再始動される。この際、車両がショートストップ(短時間停車)したと判断されることで、非幹線進入フラグFθ及びアイドルストップフラグFの値が「1」とされてエンジン10の自動停止が禁止される。このため、その後時刻t7において自動停止条件が再び成立するものの、上記履歴情報がメモリに記憶された後、停車時間Tstopがメモリに3つ記憶されていないと判断され、エンジン10の自動停止が禁止される。
【0145】
図19〜図21に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を、減速時IS制御に採用することによる種々の影響を調べた結果を示す。
【0146】
まず、図19に、正答率及び燃費改善率と、幹線道路比率との関係を示す。なお、図中、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を採用した場合の結果を「●」で表記し、先の第1の実施形態にかかる停止時間予測処理等を採用した場合の結果を「□」で表記し、これら処理を採用しない場合の結果を「×」で表記した。
【0147】
図19(A)に示すように、操舵量θsteer等を用いて非幹線道路への進入を判断する手法を採用することにより、先の第1の実施形態における手法と比較して、正答率が向上している。特に、幹線道路から非幹線道路への進入頻度の高い幹線道路比率(20〜80%)において、正答率の向上度合いが大きくなっている。これにより、同図(B)に示すように、幹線道路比率が高い領域における燃費改善率を維持しつつ、幹線道路比率が低い領域における燃費改善率が過度に低下する事態を回避する(0付近とする)ことができる。
【0148】
なお、先の第1の実施形態の手法を採用した場合の正答率について、先の図12(A)に示す結果(「○」にて表記)と、図19(A)に示す結果(「□」にて表記)が相違するのは、ショートストップ時間Tshortを2秒から4秒に変更したこと等の影響によるものである。
【0149】
次に、図20に、本実施形態にかかる減速時IS制御による全アイドルストップ回数のうち、自動停止時間が5秒未満となるものの割合の計測結果を示す。
【0150】
図示されるように、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行わない場合、幹線道路比率が小さいほど、全アイドルストップ回数のうち自動停止時間が5秒未満となるものの割合が増大する。これに対し、操舵量θsteer等を用いた停止時間予測処理を行う場合には、全アイドルストップ回数のうち自動停止時間が5秒未満となるものの割合が低下し、その低下度合いは、幹線道路比率が小さいほど大きくなる。このため、自動停止時間が5秒未満となるものの割合を、幹線道路(幹線道路比率=100%)における割合付近まで低下させることができ、エンジン10の燃費低減効果の低下を好適に抑制することができる。
【0151】
続いて、図21に、エンジン10が再始動されてから次に自動停止されるまでの車両の走行距離(走行距離間隔)、及びエンジン10が再始動されてから次に自動停止されるまでの時間(走行時間間隔)の計測結果を示す。
【0152】
図示されるように、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行わない場合、幹線道路比率が小さいほど、走行距離間隔及び走行時間間隔の双方が短くなる傾向になる。このため、幹線道路比率が小さいほど、エンジン10が頻繁に自動停止され、ドライバビリティが低下する懸念がある。
【0153】
これに対し、操舵量θsteer等を用いた停止時間予測処理を行うことで、走行距離間隔及び走行時間間隔が伸長し、その伸長度合いは、幹線道路比率が小さいほど大きくなる傾向になる。これにより、非幹線道路においてエンジン10が頻繁に自動停止される事態を抑制することができ、ドライバビリティの低下を回避することができる。
【0154】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の効果と合わせて、以下の効果が得られるようになる。
【0155】
(9)上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断されて且つ、前回の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する停止時間予測処理を行った。これにより、幹線道路から非幹線道路に車両が進入したことを適切に判断することができる。すなわち、エンジン10が次回の自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを高精度に予測することができる。
【0156】
(10)上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断される状況下、停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になると判断される限り、新たに3つの停車時間Tstopがメモリに記憶されたと判断されるまで、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測した。これにより、車両が非幹線道路に進入してから、エンジン10が次回自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを適切に予測可能となるまでの期間において、エンジン10の自動停止を適切に禁止することができる。
【0157】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0158】
・エンジン10の停止条件としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、車両の走行速度についての条件を、車両の走行速度Vが0であるとの条件としてもよい。この場合、エンジン10の自動停止時間が短時間となる事態の発生頻度は小さいものの、停止時間予測処理等によれば、エンジン10の自動停止時間が規定時間未満となる事態の発生頻度を更に低減させることができる。また例えば、上記停止条件を、停車してから所定時間経過したとの条件としてもよい。この条件は、ユーザの停車意思を極力把握しつつエンジン10を自動停止させることで、エンジン10の自動停止時間が短時間となる事態の発生を回避するためのものである。
【0159】
更に例えば、上記停止条件を、停車して且つブレーキ系統の油圧(例えばマスタシリンダ圧)やブレーキ操作量が所定以上であるとの条件としてもよい。この条件は、ドライバに停車意思がある場合には通常、ブレーキ操作量が大きくなってブレーキ油圧が上昇することに鑑み、ドライバの停車意思を適切に把握するためのものである。
【0160】
・エンジン10の再始動条件としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、アクセル操作がなされているとの条件を含む条件としてもよい。ここでアクセル操作がなされているか否かは、例えばアクセル操作量が0よりも大きいか否かで判断すればよい。
【0161】
・上記各実施形態では、停車時間の履歴を用いてエンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測したがこれに限らない。例えばエンジン10の自動停止時間の履歴を用いてもよい。ここで自動停止時間の履歴を用いた具体的な予測手法について説明すると、エンジン10の停止条件として車両の走行速度が0になるとの条件を含む条件を採用して停車時間と自動停止時間とを略同一とし、エンジン10の自動停止が禁止される(先の図6のステップS24の処理が実行される)毎に、ECU18のメモリに記憶されている自動停止時間の履歴を初期化する処理を行えばよい。こうした手法によれば、停車時間の履歴を用いた手法と比較して、エンジン10の自動停止時間が規定時間未満となる頻度が多くなるおそれがあるものの、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理による燃費低減効果を得ることはできる。
【0162】
なお、エンジン10の自動停止時間の履歴を用いる場合、先の図6又は図16のステップS10〜S20や、図16のステップS30において、停車時間Tstopに代えて自動停止時間を用いることとなる。
【0163】
・エンジンの次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測する手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、停車時間について、先の図6のステップS12〜S20の処理に代えて、直近の4つの値のうち半数が、ショートストップ時間Tshort以上になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測してもよい。もっとも、直近の複数の値としては、4つの値に限らず、3回であっても5回以上であってもよい。
【0164】
・エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になるとの予測を継続する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いとの最終的な判断がされた後(非幹線進入フラグFθが「1」にされた後)、停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になると判断される限り、新たに3回の停車時間Tstopが取得される(メモリに記憶される)まで、次回の自動停止時間が規定時間未満になるとの予測を継続してもよい。これは、直近4回の停車時間Tstopのうち、3つ以上(過半数)がショートストップ時間Tshort未満であれば、非幹線道路を走行中であると判断可能なことに基づくものである。
【0165】
・上記各実施形態では、規定時間がショートストップ時間Tshortよりも長かったがこれに限らない。例えば、規定時間がショートストップ時間Tshortと同一の時間であったり、規定時間がショートストップ時間Tshortよりも短かったりしてもよい。この場合であっても、例えばショートストップ時間Tshortが2秒となるのに対して規定時間が1.6秒となるとき、先の図7(A)の計測結果から停車時間がショートストップ時間Tshortになるもののうち1秒未満のものが支配的であるため、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測される場合にエンジン10の自動停止を禁止することで、燃費低減効果の低下を回避することができる。なお、ショートストップ時間Tshortを3秒とするなど2秒及び4秒以外とすることも可能である。
【0166】
・アイドルストップ制御手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、上記自動停止禁止処理によってエンジン10の自動停止が禁止されて停車される状況下、停車してから長時間(所定時間)経過したと判断されたり、ドライバに停車意思があると判断されたりする場合には、エンジン10の自動停止を許可してもよい。これにより、エンジン10の自動停止によって本来燃費低減効果が得られると想定される状況において、何らかの要因によって次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測されてエンジン10の自動停止が禁止される場合であっても、エンジン10の燃費低減効果の低下を極力抑制することができる。なお、停車意思があるか否かは、例えばブレーキ系統の油圧が規定圧以上であるか否かに基づき判断すればよい。
【0167】
・車両外部との情報通信を行わずに車両の挙動を検出する車載センサ(操舵量センサ38)の検出値に基づき、車両が小回りしたか否かを判断する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、切れ角センサ40の出力値から算出される切れ角θtireに基づき小回りしたか否かを判断してもよい。具体的には、切れ角θtireのピーク値の絶対値が規定値以上になると判断された場合、車両が小回りしたと判断すればよい。また、例えば、車両の旋回角速度を検出する手段(例えばヨーレートセンサ)を備え、このセンサの検出値の時間積分値から算出される車両の旋回角(ヨー角)の絶対値が規定角以上になると判断された場合、車両が小回りしたと判断してもよい。
【0168】
さらに、例えば、互いに対角位置にある車輪の回転速度差の絶対値が閾値以上になることに基づき、車両が小回りしたか否かを判断してもよい。ここで、対角位置にある上記回転速度差とは、FLセンサ34aの出力値から算出される左前輪の回転速度と、RRセンサ34dの出力値から算出される右後輪の回転速度との差(以下、FL―RR車輪速差)、及びFRセンサ34bの出力値から算出される右前輪の回転速度と、RLセンサ34cの出力値から算出される左後輪の回転速度との差(以下、FR―RL車輪速差)のうち少なくとも1つである。以下、図22を用いて、これら車輪速差によって小回りしたか否かを判断可能な理由を説明する。
【0169】
図22に、幹線道路及び非幹線道路が混在した所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合におけるFL―RR車輪速差及びFR―RL車輪速差と操舵量θsteerのピーク値との関係を示す。なお、図中、FL―RR車輪速差は、左前輪の回転速度から右後輪の回転速度を減算した値であり、FR―RL車輪速差は、右前輪の回転速度から左後輪の回転速度を減算した値である。
【0170】
図示されるように、右折時において操舵量θsteerのピーク値の絶対値が大きくなるほど、FL―RR車輪速差が大きくなり、左折時において操舵量θsteerのピーク値の絶対値が大きくなるほど、FR―RL車輪速差が大きくなる傾向にある。すなわち、上記ピーク値の絶対値とこれら車輪速差とが正の相関を有している。このため、FL−RR車輪速差やFR−RL車輪速差を用いて、車両が小回りしたか否かを判断することができる。
【0171】
なお、図23に示すように、右折時及び左折時の双方において、FR−RL車輪速差及びFL−RR車輪速差の双方が略同一のタイミングで極大値となる傾向がある。このため、これら車輪速差の絶対値のうち大きいほうが上記閾値以上になることに基づき、車両が小回りしたと判断してもよい。これにより、車両の小回りの検出精度を向上させることができる。
【0172】
また、車両が小回りしたか否かを判断するパラメータとしては、互いに対角位置にある車輪の回転速度差に限らず、前輪同士の回転速度差や、後輪同士の回転速度差を用いてもよい。
【0173】
具体的には、図24(A)に示すように、左前輪の回転速度から右前輪の回転速度を減算した値(FL―FR車輪速差)、及び右前輪の回転速度から左前輪の回転速度を減算した値(FR―FL車輪速差)のうち少なくとも1つを上記パラメータとして用いてもよい。また、図24(B)に示すように、左後輪の回転速度から右後輪の回転速度を減算した値(RL―RR車輪速差)、及び右後輪の回転速度から左後輪の回転速度を減算した値(RR―RL車輪速差)のうち少なくとも1つを上記パラメータとして用いてもよい。この場合、操舵量θsteerのピーク値と車輪速差との相関が、先の図22に示したものよりも小さいものの、前輪同士の回転速度差や後輪同士の回転速度差によって車両が小回りしたか否かを判断することはできる。なお、この手法は、車輪速センサが前輪のみ又は後輪のみに備えられる車両への適用が有効である。
【0174】
・幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いか否かを最終的に判断する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、操舵量θsteerのピーク値の絶対値が、規定操舵量γ以上になるとの条件のみが成立したとの履歴情報がメモリに記憶されていると判断された場合、非幹線道路に進入した蓋然性が高いと最終的に判断してもよい。この場合、例えば、車両が幹線道路から非幹線道路に進入した直後の自動停止条件が成立する状況下において、迅速にエンジン10の自動停止を禁止することができる。特に、こうした判断手法は、非幹線道路への出入りや、非幹線道路において右左折の多い集配業務に使用される車両(例えば宅配車両)への適用が有効である。
【0175】
ここで、このような車両においては、非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断された後、次に車両が幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断されるまで、エンジン10の自動停止の禁止を継続させてもよい。すなわち、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断された後、車両が幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断された場合、エンジン10の自動停止を許可してもよい。これにより、例えば上記車両が住宅地における非幹線道路を巡回走行する状況下において、エンジン10の再始動時の騒音に起因して、近隣住宅に不快な思いをさせることを抑制できる。
【0176】
なお、この場合、非幹線道路から幹線道路に出た直後は、エンジン10の自動停止が禁止されることが想定される。このような状況下においては、その後少なくとも前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1以上になると1回判断されるまで自動停止が許可されないことが想定される。この場合、非幹線道路から幹線道路へと車両が出た後、例えば高速で長時間走行する等、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断される状況が継続されるにもかかわらず、次回の自動停止時間が短くなると誤って予測されるおそれがある。そして、この場合、非幹線道路を出てから長時間経過したにもかかわらず、自動停止が行われないことから、ドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0177】
こうした問題を解決すべく、非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断された後、車両の走行速度の履歴に基づき幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断された場合、エンジン10の自動停止を許可するのが望ましい。ここで、走行速度の履歴を用いた判断手法としては、具体的には、例えば、車両の走行速度が所定の高速度(非幹線道路においては想定し得ない高速度、例えば50〜60km/h)以上になると判断された場合、幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断すればよい。
【符号の説明】
【0178】
10…エンジン、16…スタータ、18…ECU(エンジンの自動停止制御装置の一実施形態)、24…車速センサ、36…方向指示器、38…操舵量センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行速度が規定速度以下になるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合に車載エンジンを自動停止させるエンジンの自動停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止させ、その後所定の再始動条件が成立した場合にエンジンを再始動させるいわゆるアイドルストップ制御が知られている。この制御によれば、エンジンの燃費低減効果の向上を図ることが可能となる。
【0003】
しかしながら、アイドルストップ制御によるエンジンの自動停止時間が短いと、エンジンの燃費低減効果が低下するおそれがある。
【0004】
こうした問題を解決すべく、下記特許文献1に見られるように、エンジンの再始動直後の自動停止動作を所定時間だけ禁止するものも知られている。詳しくは、過去のエンジンの自動停止回数に応じて、再始動直後の自動停止動作を禁止するための上記所定時間を変更している。これにより、エンジンの自動停止及び再始動が短時間に繰り返される等、エンジンの自動停止時間が短くなると想定される状況において、エンジンが自動停止されることを抑制することができ、エンジンの燃費低減効果の低下の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−200791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、エンジンの自動停止時間を十分に確保可能な状況であるにもかかわらずエンジンを自動停止させることができない等、エンジンの自動停止時間が短くなる状況であるか否かを適切に把握してエンジンを自動停止させることができないおそれがある。そしてこの場合、エンジンの燃費低減効果が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エンジンの燃費低減効果の低下を好適に抑制することのできるエンジンの自動停止制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、車両の走行速度が規定速度以下になるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合に車載エンジンを自動停止させるエンジンの自動停止制御装置において、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その履歴に基づき、前記エンジンの次回の自動停止時間が、該エンジンの自動停止によって燃費低減効果を得ることが可能な規定時間未満になるか否かを予測する処理を行う予測手段と、該予測手段によって前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測された場合、前記エンジンの次回の自動停止を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、その履歴によれば、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否か、すなわちエンジンの自動停止による燃費低減効果が得られるか否かを予測することが可能であることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が上記規定時間未満になるか否かを予測する。そして、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジンの次回の自動停止を禁止する。これにより、エンジンの自動停止時間が短くなると想定される状況下において、エンジンが自動停止される事態の発生を抑制することができ、ひいてはエンジンの燃費低減効果の低下を好適に抑制することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値が、予め定められた時間である信号停車時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明者らは、停車時間の計測値の履歴を調べた結果、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、その前回値が、信号停車時に想定される停車時間(信号停車時間)以上であると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。
【0013】
この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間の長短について予測する。これにより、エンジンが次回自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを高精度に予測することができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値によれば、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測することが可能であることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記直近の複数の値を用いて予測する。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が上記ショートストップ時間以上になると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記態様にて予測する。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値によれば、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測することが可能であることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記直近の複数の値を用いて予測する。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、前記信号停車時間よりも短いショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、上記ショートストップ時間以上になると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記態様にて予測する。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値及び前々回値が予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、その前回値及び前々回値が連続して上記ショートストップ時間になると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを、上記前回値及び前々回値を用いて予測する。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項4〜7のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが1つ以下であることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0025】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての直近3つの値のうち、ショートストップ時間未満となるものが1つ以下であると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測する。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項3〜8のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0027】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、直近3つの値が連続してショートストップ時間未満になると、エンジンの次回の自動停止時間が短くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記直近の3つの値がショートストップ時間未満になることに基づき、エンジンの次回の自動停止時間が短くなると予測する。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項3〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が前記ショートストップ時間よりも長い時間である信号停車時間以上となることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0029】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての直近3つの値のうち、ショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が信号停車時間以上であると、エンジンの次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測する。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項3〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、4回前の値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0031】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての直近3つの値のうち、ショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、停車時間又はエンジンの自動停止時間についての4回前の値がショートストップ時間未満であると、エンジンの次回の自動停止時間が短くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にてエンジンの次回の自動停止時間が短くなると予測する。
【0032】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の挙動を検出する車載センサの検出値に基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断する小回判断手段を更に備え、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0033】
市街地や郊外の幹線道路を車両が走行する状況下、交差点の信号で車両を停止させる場合には通常、停車時間又はエンジンの自動停止時間が長くなる傾向にある。これに対し、住宅地や田舎道などの信号がない道路(以下、非幹線道路)を車両が走行する状況下、非幹線道路の交差点等における一時停止の標識等に従って車両を一時停止させたり、安全確認のために車両を減速・徐行させたりする場合には通常、停車時間又はエンジンの自動停止時間が短くなる傾向にある。こうした点に鑑みれば、停車時間又は自動停止時間の履歴から、基本的には車両が幹線道路又は非幹線道路のいずれを走行中かを判断することが可能となる。
【0034】
しかしながら、幹線道路から非幹線道路へと車両が進入した直後においては、停車時間又は自動停止時間のこれまでの履歴に基づき、エンジンの次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができなくなる懸念がある。
【0035】
ここで、本発明者らは、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合、車両が小回りすることに着目した。この点に鑑み、上記発明では、車両が小回りしたと判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入したと判断し、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。これにより、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合であっても、その後自動停止時間が短くなる状況において、エンジンが自動停止される事態を抑制することができる。
【0036】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の走行速度が所定の低速度以下になると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0037】
幹線道路から非幹線道路に車両が小回りして進入する前には通常、車両が減速される。この点に鑑み、上記発明では、車両の走行速度が所定の低速度以下になると判断されて且つ、車両が小回りしたと判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入したと判断し、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。こうした上記発明によれば、車両が非幹線道路に進入したか否かの判断精度を向上させることができ、ひいては次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かの予測精度を向上させることができる。
【0038】
請求項14記載の発明は、請求項12又は13記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された直後の停車時間又は前記エンジンの自動停止時間が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になると判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0039】
曲率半径の小さい幹線道路を車両が走行する場合、車両が小回りによって幹線道路から非幹線道路に進入したと誤判断される懸念がある。ここで、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した後、非幹線道路において車両が一時停止される場合には、停車時間又はエンジンの自動停止時間が短くなる傾向にある。
【0040】
この点に鑑み、上記発明では、車両が小回りしたと判断された直後の停車時間又は自動停止時間が上記ショートストップ時間未満であると判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入したと判断する。そして、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。こうした上記発明によれば、車両が非幹線道路に進入したか否かの判断精度を向上させることができ、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かの予測精度を好適に向上させることができる。
【0041】
請求項15記載の発明は、請求項12〜14のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが過半数になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、前記規定数の前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする。
【0042】
本発明者らは、停車時間又はエンジンの自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが過半数になると、エンジンの次回の自動停止時間が短くなる蓋然性が高くなることを見出した。この点に鑑み、上記発明では、停車時間又は自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値を用いて、次回の自動停止時間が短くなるか否かを予測することができる。
【0043】
こうした予測手法を用いる場合、車両が幹線道路から非幹線道路に進入した後、上記規定数の停車時間又は自動停止時間の取得が完了するまでは、次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができなくなる懸念がある。
【0044】
ここで、車両が小回りしたと判断された後、停車時間又は自動停止時間が短くなる状況は、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高い状況であると考えられる。
【0045】
この点に鑑み、上記発明では、車両が小回りしたと判断された後、停車時間又は自動停止時間がショートストップ時間未満になると判断される限り、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断する。そして、小回りしたと判断されてから上記規定数の停車時間又は自動停止時間が新たに取得されるまで、エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になるとの予測を継続する。これにより、次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができないおそれのある期間において、エンジンが自動停止される事態の発生を抑制することができる。
【0046】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、3つの前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする。
【0047】
上記発明では、次回の自動停止時間が短くなるか否かを適切に予測することができないおそれのある期間、すなわち、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断されてから新たに3つの停車時間又は自動停止時間が取得されるまでの期間において、エンジンが自動停止される事態の発生を抑制することができる。
【0048】
請求項17記載の発明は、請求項12〜16のいずれか1項に記載の発明において、前記小回判断手段は、前記車両の操舵輪を操舵すべくドライバによって操作される操舵部材の操舵量と、前記車両の外輪及び内輪のそれぞれの回転速度の差とのうち少なくとも1つに基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断することを特徴とする。
【0049】
上記発明では、車両の旋回に関する上記パラメータを用いることで、車両が小回りしたか否かを適切に判断することができる。
【0050】
請求項18記載の発明は、請求項12〜17のいずれか1項に記載の発明において、前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の方向指示器が操作されると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする。
【0051】
車両が小回りによって幹線道路から非幹線道路に進入する場合には通常、ドライバによって方向指示器が操作される。この点に鑑み、上記発明では、方向指示器が操作されると判断されて且つ、車両が小回りしたと判断されたことに基づき、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断し、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する。こうした上記発明によれば、非幹線道路に車両が進入したか否かの判断精度をいっそう向上させることができ、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かの予測精度をより好適に向上させることができる。
【0052】
請求項19記載の発明は、請求項1〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記停止条件における前記規定速度は、0よりも高い速度であることを特徴とする。
【0053】
上記発明では、車両の走行中にもエンジンを自動停止させることで、アイドルストップ制御によるエンジンの燃費低減効果の更なる向上を図っている。ただし、エンジンの自動停止時間が短くなる状況下においてエンジンが自動停止される頻度が増大し、エンジンの燃費低減効果が低下する事態が発生しやすい。このため、上記発明は、上記予測手段及び禁止手段を備えるメリットが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる減速時IS制御の概要を示すタイムチャート。
【図3】同実施形態にかかるアイドルストップ制御による燃費低減効果の説明図。
【図4】同実施形態にかかる非幹線道路におけるアイドルストップ制御の一例を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかる減速時IS制御のアイドルストップ回数等の計測結果を示す図。
【図6】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示すフローチャート。
【図7】同実施形態にかかる幹線道路及び非幹線道路についての停車時間の頻度分布を示す図。
【図8】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図9】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図10】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図11】同実施形態にかかる各停車パターンの頻度分布を示す図。
【図12】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図13】同実施形態にかかる燃費低減効果の影響を調べた結果を示すタイムチャート。
【図14】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図15】同実施形態にかかる幹線道路から非幹線道路への進入態様を示す図。
【図16】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示すフローチャート。
【図17】同実施形態にかかる非幹線道路に進入する場合の操舵量の計測結果を示す図。
【図18】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の一例を示すタイムチャート。
【図19】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図20】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図21】同実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の効果を示す図。
【図22】その他の実施形態にかかる操舵量及び車輪速差の相関を示す図。
【図23】その他の実施形態にかかる操舵量及び車輪速差の計測結果を示す図。
【図24】その他の実施形態にかかる操舵量及び車輪速差の相関を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる制御装置の第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0056】
図1に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0057】
図示されるように、エンジン10の各気筒には、エンジン10の燃焼室に燃料を噴射供給する電子制御式の燃料噴射弁12が備えられている。燃料噴射弁12から噴射された燃料の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10の出力軸(クランク軸14)の回転力として取り出される。
【0058】
クランク軸14には、スタータ16が接続されている。スタータ16は、図示しないイグニッションスイッチのオンにより始動し、エンジン10を始動させるべく、クランク軸14に初期回転を付与する(クランキングを行う)。
【0059】
電子制御装置(以下、ECU18)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU18には、ユーザのアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量)を検出するアクセルセンサ20や、ユーザのブレーキペダルの踏み込み量(ブレーキ操作量)を検出するブレーキセンサ22、更には車両の走行速度を検出する車速センサ24の出力信号等が入力される。ECU18は、上記各センサからの入力信号に基づき、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁12による燃料噴射制御や、スタータ16による駆動制御等を行う。
【0060】
特にECU18は、エンジン10のアイドルストップ制御を行う。アイドルストップ制御は、エンジン10の運転中に所定の停止条件が成立する場合に、燃料噴射弁12からの燃料噴射の停止等によってエンジン10を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合に、スタータ16の駆動及び燃料噴射弁12からの燃料噴射の開始等によってエンジン10を再始動させるものである。本実施形態では、エンジン10の停止条件を、ブレーキ操作がなされているとの条件と、車両の走行速度が0よりも高い規定速度(例えば7〜20km/h)以下になるとの条件との論理積が真であるとの条件とする。一方、エンジン10の再始動条件を、ブレーキ操作がなされていないとの条件を含む条件とする。
【0061】
なお、ブレーキ操作がなされているか否かは、例えばブレーキセンサ22の出力値に基づくブレーキ操作量が0よりも大きいか否かで判断すればよい。また、車両の走行速度は、車速センサ24の出力値に基づき算出すればよい。
【0062】
ここで上記停止条件のうち、車両の走行速度についての条件は、アイドルストップ制御による燃費低減効果の更なる向上を図るために設定される条件である。以下、本実施形態にかかるアイドルストップ制御(以下、減速時IS制御)について、図2を用いて説明する。
【0063】
図2は、本実施形態にかかる減速時IS制御の一例を示したものである。詳しくは、図2(a)に、アクセル操作の推移を示し、図2(b)に、ブレーキ操作の推移を示し、図2(c)に、車両の走行速度Vの推移を示す。なお、図中、アクセル操作及びブレーキ操作の推移について、アクセルセンサ20の出力値に基づくアクセル操作量やブレーキ操作量が0よりも大きい場合を「ON」で示し、上記操作量が0となる場合を「OFF」で示している。また、図中の各推移は、車両が幹線道路を走行中に、交差点の信号で車両が停止した後、再び走行を開始する状況におけるものを示している。
【0064】
図示されるように、時刻t1においてブレーキ操作が開始されることで車両の走行速度Vが低下を開始し、その後時刻t2において車両の走行速度Vが上記規定速度Vα以下になることで、エンジン10が自動停止される。そしてその後、時刻t4において車両を走行させるべくブレーキ操作が解除されることで、エンジン10が再始動される。これに対し、停車してからエンジン10を自動停止させるアイドルストップ制御(以下、停車時IS制御)を採用する場合、時刻t3に車両が停車することでエンジン10が自動停止される。このように、減速時IS制御の自動停止時間(時刻t2〜t4)は、停車してからエンジン10を自動停止させるアイドルストップ制御(以下、停車時IS制御)を採用する場合の自動停止時間(時刻t3〜t4)よりも長くなる。これにより、エンジン10の燃費低減効果を向上させることが可能となる。
【0065】
ところで、エンジン10の自動停止時間が短いと、エンジン10の燃費低減効果が低下するおそれがある。以下、自動停止時間が燃費低減効果に及ぼす影響について、図3を用いて説明する。
【0066】
図3は、アイドルストップ制御時におけるエンジン10の燃料消費量等の推移の一例を示すものである。詳しくは、図3(a)に、クランク軸14の回転速度(エンジン回転速度NE)の推移を示し、図3(b)に、燃料噴射弁12からの燃料噴射量Qの推移を示し、図3(c)に、スタータ16の消費電力をエンジン10の燃料消費量に換算したものの推移を示す。
【0067】
図示される例では、時刻t1〜t2までの期間においてエンジン10が自動停止される。ここで市街地や郊外の幹線道路を車両が走行する状況下、交差点の信号で車両が停止する場合は通常、エンジン10が自動停止される期間における燃料噴射量Qの低減量QAが、エンジン10の始動性を向上させるための燃料噴射量Qの増大量である始動時増大量QBと、スタータ16の消費電力の燃料換算量QCとの加算値よりも多くなる。すなわち、エンジン10の自動停止時間を、燃料噴射量の低減量QAが上記加算値よりも多くなるような規定時間(換言すれば、エンジン10の自動停止によって燃費低減効果を得ることが可能な時間の下限値)以上とすると、エンジン10の自動停止による燃費低減効果を得ることが可能となる。なお本実施形態では、始動時増大量QBを、アイドル運転状態で4秒運転した場合のエンジン10の燃料消費量とし、上記燃料換算量QCを、アイドル状態で1秒運転した場合のエンジン10の燃料消費量とした。このため、上記規定時間を5秒とした。
【0068】
一方、住宅地や田舎道などの信号がない道路(以下、非幹線道路)を車両が走行する状況下、非幹線道路の交差点等における一時停止の標識等に従って車両を一時停止させたり、安全確認のために車両を減速・徐行させたりする場合には通常、2秒未満の短時間の停車や停車を伴わない減速(以下、ショートストップ)が繰り返される。この場合、エンジン10の自動停止時間が短くなることで、上記燃料噴射量Qの低減量QAが、始動時増大量QB及び上記燃料換算量QCの加算値よりも少なくなり、エンジン10の燃費低減効果を得ることができなくなる。
【0069】
特に、減速時IS制御が行われる車両においては、停車時IS制御が行われるものと比較して、非幹線道路におけるショートストップの発生頻度の増大によってエンジン10の自動停止時間が短くなる事態の発生が顕著となるおそれがある。以下、このことについて、図4及び図5を用いて説明する。
【0070】
図4に、非幹線道路で車両が一時停止する場合におけるアイドルストップ制御の一例を示す、詳しくは、図4(a―1)〜図4(c−1)及び図4(a―2)〜図4(c−2)のそれぞれは、先の図2(a)〜図2(c)に対応している。
【0071】
停車時IS制御が行われる車両の場合、停車しないとエンジン10の停止条件が成立しない。このため、図4(1)に示すように、例えば、停車期間(時刻t2〜t3)となってエンジン10が自動停止される以前のタイミング(時刻t1)でブレーキ操作が解除されることが多くなり、エンジン10の自動停止時間が短時間となる頻度は顕著とならない。
【0072】
これに対し、減速時IS制御が行われる車両の場合、停車に先立って停止条件が成立することから、エンジン10が自動停止され得る車両の走行速度領域が拡大されることで、エンジン10の自動停止後、停車する以前に再始動条件が成立する機会が増大する。このため、図4(2)に示すように、時刻t1においてエンジン10が自動停止された後、例えば停車する時刻t4以前の時刻t2や時刻t3においてブレーキ操作が解除されることでエンジン10が再始動されることで、エンジン10の自動停止時間が短時間となる頻度が顕著となる。
【0073】
ここで図5に、減速時IS制御による自動停止回数(アイドルストップ回数)等の計測結果を示す。詳しくは、図5(A)に、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合における減速時IS制御及び停車時IS制御のそれぞれについてのアイドルストップ回数の計測結果を示し、図5(B)に、減速時IS制御による全アイドルストップ回数のうち停車を伴うものの割合と、上記全アイドルストップ回数のうち自動停止時間が5秒未満となるものの割合とを示す。なお、図中、幹線道路比率とは、上記所定の走行経路の距離(幹線道路及び非幹線道路のそれぞれの走行距離の加算値)に対する非幹線道路の走行距離の割合である。
【0074】
図5(A)に示すように、減速時IS制御を採用することで、幹線道路比率が小さくなるほど、停車時IS制御に対するアイドルストップ回数の増大度合いが大きくなる。これは、図5(B)に示すように、幹線道路比率が小さいほど、停車を伴わないアイドルストップ回数が増大するためである。そして同図(B)に示すように、幹線道路比率が小さくなるほど、エンジン10の自動停止時間が5秒未満となる短時間のアイドルストップ回数が増大することで、エンジン10の燃費低減効果が低下する。
【0075】
こうした問題を解決すべく、本発明者らは、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合における停車時間を計測した。そして、計測された停車時間について詳細に分析した結果、停車時間の履歴によれば、次回の停車時間を予測することが可能であることを見出した。すなわち停車時間の履歴によれば、次回エンジン10を自動停止させた場合に停車時間が短くなるか否かを予測することが可能となる。
【0076】
そこで本実施形態では、停車時間の履歴に基づき、エンジン10の次回の自動停止時間が上記規定時間未満になるか否かを予測する停止時間予測処理を行い、自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジン10の自動停止を禁止する自動停止禁止処理を行う。これにより、エンジン10の燃費低減効果の低下の回避を図る。以下、図6〜図11を用いて、上記停止時間予測処理及び自動停止禁止処理について詳述する。
【0077】
図6に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示す。この処理は、ECU18によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお本実施形態では、停車時間は、停車毎に算出され、ECU18のメモリに記憶される。
【0078】
この一連の処理では、ステップS10〜S20において、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否か、すなわちエンジン10の自動停止による燃費低減効果を得られるか否かを予測する。詳しくは、まずステップS10において、前回の停車時間Tstopが、信号停車時間T1(例えば10秒)以上であるか否かを判断する。ここで信号停車時間T1は、幹線道路の交差点等における信号停車時に想定される停車時間であり、上記規定時間(5秒)よりも長い時間である。この処理は、前回の停車時間が信号停車時間T1以上であると、エンジン10の次回の自動停止時間が長くなる蓋然性が高くなることに鑑み、前回の停車時間を用いて次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測するものである。以下、図7を用いて、この予測手法について説明する。
【0079】
図7は、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合に計測された停車時間を、幹線道路及び非幹線道路のそれぞれに分けて頻度分布として示したものである。詳しくは、図7(A)に、非幹線道路についての停車時間の頻度分布を示し、図7(b)に、幹線道路についての停車時間の頻度分布を示す。
【0080】
非幹線道路を走行する場合、ショートストップが繰り返される。このため、図7(A)に示すように、非幹線道路についての停車時間は、上記規定時間よりも短くて且つ予め定められた時間であるショートストップ時間Tshort(例えば2秒)未満が支配的となり、信号停車時間T1としての10秒以上にはならない結果となった。
【0081】
これに対し、図7(B)に示すように、幹線道路についての停車時間は、非幹線道路では発生しない信号停車時間T1としての10秒以上の停車時間が支配的となる結果となった。すなわち、前回の停車時間が信号停車時間T1以上であれば、車両が幹線道路を走行している蓋然性が高く、次回の停車時間が長くなる蓋然性が高くなる。このため、前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測することが可能となる。
【0082】
図6の説明に戻り、ステップS10において前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1未満であると判断された場合には、ステップS12に進み、前回及び前々回の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort以上であるか否かを判断する。この処理は、前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1未満となる場合、現在走行している道路が幹線道路及び非幹線道路のいずれであるかを前回の停車時間Tstopのみから高精度に予測することができないことに鑑みたものである。つまり、先の図7(A)中、非幹線道路についての停車時間がショートストップ時間Tshort以上となる停車(ロングストップ)がわずかながら発生している。これは、非幹線道路の交差点における往来車両の通過待ち等に起因するものである。また、先の図7(B)中、幹線道路においてショートストップが発生したり、停車時間が非幹線道路におけるものと重複する停車が発生したりしている。これは、停止から走行可への信号の切り替わりタイミングの直前において信号で停車したり、交差点を右左折するときに車両を減速させたり、交差点手前において前方の車両との距離を調節すべく減速したりすること等に起因するものである。
【0083】
ここで本発明者らは、停車時間の計測値の履歴を詳細に解析した結果、図8に示すように、前回及び前々回の停車時間が連続してショートストップ時間Tshort以上となるもののうち、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間である5秒以上となるものの割合が約80%であることを見出した。すなわちこの場合、エンジン10が次回自動停止される状況が、車両が幹線道路の信号で停止する状況となる蓋然性が高くなる。このため、前回の停車時間が信号停車時間T1未満となる場合であっても、前回及び前々回の停車時間を用いることで、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを高精度に予測することが可能となる。
【0084】
図6の説明に戻り、ステップS12において前回及び前々回の停車において少なくとも1回ショートストップが発生したと判断された場合には、前回及び前々回の停車時間のみを用いてエンジン10の次回の自動停止時間を予測することができないことに鑑み、ステップS14〜S18の処理を行う。ステップS14〜S18においては、停車時間についての直近の3つの値を用いて、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測する。
【0085】
詳しくは、ステップS14では、停車時間についての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが1つ以下であるか否か、すなわち直近の3回の停車のうちショートストップの発生回数が1回以下であるか否かを判断する。以下、この予測手法について、図9を用いて説明する。
【0086】
図9は、直近の3回の停車パターンについての頻度分布を示すものである。詳しくは、幹線道路及び非幹線道路のそれぞれについての停車パターンの頻度分布を示す。なお、図中、「S」はショートストップが発生したことを示し、「L」はロングストップが発生したことを示す。また、例えば「S→L→L」の表記は、ショートストップの発生後、ロングストップが2回連続して発生したことを示す。
【0087】
図示されるように、直近の3回の停車のうち、ショートストップが1回以下である停車パターンとなるものは、幹線道路においてのみ発生している。このため、このような停車パターンとなる場合、車両が幹線道路の信号で停止する状況となる蓋然性が高くなる。したがって、ショートストップが1回以下であることに基づき、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になることを高精度に予測することが可能となる。
【0088】
図6の説明に戻り、ステップS14において直近の3回の停車のうちショートストップが2回以上発生したと判断された場合には、ステップS16に進み、停車時間Tstopについての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が信号停車時間T1以上となるか否かを判断する。これは、直近の3回の停車のうちのロングストップの時間について、この時間が信号停車時間T1以上であるか否かによれば、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上確保できるという知見に基づくものである。詳しくは、図10に、直近の3回の停車のうちのロングストップの時間が信号停車時間T1以上である場合の頻度分布を、幹線道路及び非幹線道路のそれぞれについて示す。この結果によれば、ロングストップの時間が信号停車時間T1以上であれば、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上となる蓋然性が高くなる。したがって、直近の3回の停車のうちショートストップが2回である停車パターンは、幹線道路及び非幹線道路の双方において発生している(図9)ために、ショートストップであるかロングストップであるかによっては、上記予測を高精度に行うことができないものの、上記態様にて停車時間についての直近の3つの値を用いることで、上記予測を高精度に行うことが可能となる。
【0089】
図6の説明に戻り、ステップS16において否定判断された場合には、ステップS18に進み、停車時間Tstopについての直近の3つの値が、連続してショートストップ時間Tshort未満になるか否かを判断する。これは、先の図9に示すように、直近の3回の停車がショートストップとなるのは、非幹線道路においてのみであるため、その後もショートストップが繰り返される蓋然性が高くなることに基づくものである。
【0090】
ステップS18において否定判断された場合には、ステップS20に進み、停車時間Tstopについての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、4回前の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になるか否かを判断する。この処理は、停車時間の直近の3つの値を用いて次回の自動停止時間を予測することができない場合における次回の自動停止時間の予測手法である。この予測手法について説明すると、図11(A)に示すように、上記所定の走行経路に沿って車両を走行させる場合に計測された直近の4つに関する停車パターンの総数458回のうち、幹線道路において4回前の停車がショートストップとなるのは0〜1回である。すなわち、直近の4回の停車のうち、ロングストップが発生したのは偶然であると考えられるため、4回前の停車がショートストップである場合、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高くなる。
【0091】
一方、図11(B)に示すように、上記直近の4つの停車パターンの総数458回のうち、4回前の停車がロングストップとなるのは2〜3回と少ないものの、これらのうち、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上となる割合が高い。このため、直近の4回の停車のうち、4回前の停車がロングストップとなる場合、車両が幹線道路を走行している蓋然性が高くなる。これらに鑑み、ステップS20において否定判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測し、上記ステップS20において肯定判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測することが可能となる。
【0092】
図6の説明に戻り、上記ステップS10において前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1以上であると判断された場合や、上記ステップS12、S14、S16において肯定判断された場合、更にはステップS20において否定判断された場合には、エンジン10を自動停止させることで燃費低減効果が得られる旨判断し、ステップS22においてアイドルストップフラグFの値を「0」とするIS許可処理を行う。ここでアイドルストップフラグFの値は、「0」によってエンジン10の自動停止が許可されることを示し、「1」によってエンジン10の自動停止が禁止されることを示す。
【0093】
一方、上記ステップS18、S20において肯定判断された場合には、エンジン10を自動停止させると燃費低減効果が低下する旨判断し、ステップS24においてアイドルストップフラグFの値を「1」とするIS禁止処理を行う。これにより、エンジン10の停止条件が成立する場合であっても、エンジン10の自動停止が禁止される。
【0094】
なお、ステップS22、24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0095】
図12に、上記停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を減速時IS制御に採用することによる種々の影響を調べた結果を示す。詳しくは、図12(A)に、上記所定の走行経路における全アイドルストップ回数のうち、停車時間が規定時間(5秒)以上となるアイドルストップ回数の割合である正答率と、幹線道路比率との関係を示し、図12(B)に、上記所定の走行経路を走行した場合における停車時IS制御の燃料消費量を基準としたときの減速時IS制御の燃料消費量である燃費改善率と、幹線道路比率との関係を示す。なお、図中、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を採用した場合の結果を「●」で表記し、これら処理を採用しない場合の結果を「×」で表記した。
【0096】
図12(A)に示すように、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行わない場合、幹線道路比率が低くなると、ショートストップが増大することに起因して正答率が低くなる。これに伴い、図12(B)に示すように、幹線道路比率が低いと、燃費改善率が低くなる。
【0097】
これに対し、停止時間予測処理等を行う場合、幹線道路比率が高い領域において正答率を高い値に維持しつつ、幹線道路比率が低い領域における正答率の低下を抑制することができる。このため、幹線道路比率が高い領域における燃費改善率を維持しつつ、幹線道路比率が低い領域における燃費改善率が過度に低下する事態を回避することができる。
【0098】
なお、図12は、一般道を利用して行った計測結果であるため、ここで、上記停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を減速時IS制御に採用することが、所定の走行モード(例えばNEDCモード、JC08モード、LA#4モード)における燃費低減効果に及ぼす影響について一応検討しておく。詳しくは、LA#4モードにて調べた結果を図13に示す。詳しくは、図13(a)に、LA#4モードでの車両の走行速度の推移を示し、図13(b)に、図13(a)のβ部分についての推移を示す。
【0099】
図13(b)では、燃費低減効果を得られることからエンジン10を自動停止させるべき部分に「●」を表記した。また、自動停止させるべき部分において実際に自動停止させることができた部分(正判断)に「○」を表記し、燃費低減効果が得られないことから自動停止させるべきでない部分において自動停止させた部分(誤判断)に「×」を表記した。これらの計測結果から、停止時間予測処理等の有無によらず、エンジン10が自動停止される部分に変化がないため、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理がLA#4モードにおける燃費低減効果に及ぼす影響は非常に小さい。
【0100】
このように本実施形態では、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行うことで、減速時IS制御におけるエンジン10の燃費低減効果の低下を好適に回避することができる。
【0101】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0102】
(1)前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1以上になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する停止時間予測処理を行った。これにより、エンジン10が次回自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを高精度に予測することができる。
【0103】
(2)停止時間予測処理として、前回及び前々回の停車時間がショートストップ時間Tshort以上になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満となるか否かを高精度に予測することができる。
【0104】
(3)停止時間予測処理として、停車時間についての直近の3つの値が、ショートストップ時間Tshort未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0105】
(4)停止時間予測処理によってエンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測された場合、エンジン10の次回の自動停止を禁止する自動停止禁止処理を行った。これにより、エンジン10の自動停止時間が短くなると想定される状況下において、エンジン10が自動停止される事態の発生を抑制することができ、ひいてはエンジン10の燃費低減効果の低下を好適に回避することができる。
【0106】
(5)停止時間予測処理として、停車時間についての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが1つ以下であると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0107】
(6)停止時間予測処理として、停車時間についての直近の3つの値のうち、ショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が信号停車時間T1以上となると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0108】
(7)停止時間予測処理として、停車時間について、直近の3つの値のうちショートストップ時間Tshort未満となるものが2つあって且つ、4回前の停車時間がショートストップ時間Tshort未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する処理を行った。これにより、エンジン10の次回の自動停止時間が短くなるか否かを高精度に予測することができる。
【0109】
(8)車両の走行速度Vが0よりも高い規定速度Vα以下になるとの条件をエンジン10の停止条件に含めた。この場合、エンジン10の自動停止時間が短くなる状況下においてエンジン10が自動停止されやすく、エンジン10の燃費低減効果が低下する事態が発生しやすい。このため、車両の走行速度についての上記条件をエンジン10の停止条件に含む本実施形態は、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の利用価値が高い。
【0110】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0111】
図14に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図14において、先の図1に示した部材と同一の部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0112】
図示されるように、クランク軸14の回転力は、デファレンシャルギア26や図示しないドライブシャフト等を介して駆動輪28(左右の後輪)に伝達される。
【0113】
車室内には、操舵輪30(操舵可能な左右の前輪)を操舵するためのハンドル32が設けられている。操舵輪30の切れ角θtireは、ハンドル32の操舵量に応じて定まる。より具体的には、操舵量が大きいほど切れ角θtireが大きくなる。
【0114】
各車輪(駆動輪28及び操舵輪30)付近には、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ34a〜34dが設けられている。なお、本実施形態では、左前輪、右前輪、左後輪及び右後輪のそれぞれの回転速度を検出する車輪速センサをそれぞれ、FLセンサ34a、FRセンサ34b、RLセンサ34c及びRRセンサ34dと称すこととする。
【0115】
方向指示灯を点滅させるべくドライバによって操作される方向指示器36や、ハンドル32の操舵量を検出する操舵量センサ38、操舵輪30の切れ角θtireを検出する切れ角センサ40、更には各車輪速センサ34a〜34d等の出力信号は、ECU18に入力される。
【0116】
ところで、幹線道路から非幹線道路に車両が進入すると、これまでの停車時間Tstopの履歴に基づき、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを適切に予測することができなくなることがある。これは、車両が非幹線道路に進入したと判断するためには、非幹線道路における少なくとも直近3回の停車時間Tstopが必要となることによるものである。
【0117】
次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを適切に予測することができないと、車両が非幹線道路に進入してから、直近3回の停車時間TstopがECU18のメモリ(記憶手段)に記憶されるまでの期間に自動停止条件が成立する場合、エンジン10が自動停止されることとなる。すなわち、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する毎に、その後車両がショートストップする状況であっても、エンジン10の自動停止が最大3回続けて許可されることとなる。そしてこの場合、エンジン10の燃費低減効果が低下する。
【0118】
ここで、本発明者らは、図15に示すように、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合、車両が右折又は左折するために、車両が小回りする(車両の旋回角が大きくなる)ことに着目した。そして、この小回りが、ハンドル32の操舵量が大きくされることで実現されることに着目した。そして、こうした着目から、幹線道路から非幹線道路に車両が進入したことを判断するためのパラメータとして、操舵量を用いることが可能であるとの知見を得た。
【0119】
そこで、本実施形態では、ハンドル32の操舵量に基づき車両が小回りしたと判断されたことを条件として、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いと判断し、エンジン10の次回の自動停止を禁止する。これにより、非幹線道路に車両が進入した後において、車両がショートストップされる状況であっても、エンジン10が自動停止される事態の抑制を図る。
【0120】
図16に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の手順を示す。この処理は、ECU18によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図16において、先の図6に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。また、後述する非幹線進入フラグFθ及びカウンタCの初期値は「0」とされる。さらに、本実施形態では、ショートストップ時間Tshortを4秒としている。
【0121】
この一連の処理では、ステップS26において、非幹線進入フラグFθの値が「1」であるか否かを判断する。ここで、非幹線進入フラグFθは、「1」によって車両が幹線道路から非幹線道路に進入した蓋然性が高いとの最終的な判断がされたことを示し、「0」によって車両が非幹線道路に進入した蓋然性が低いと判断されたことを示す。
【0122】
ステップS26において否定判断された場合には、ステップS28に進み、操舵量センサ38の出力値から算出される操舵量θsteerのピーク値の絶対値が規定操舵量γ(>0)以上になるとの条件、車両の走行速度Vが所定の低速度Vβ以下になるとの条件、及び方向指示器36が操作されているとの条件の論理積が真であるとの条件が成立したとの情報(履歴情報)が、ECU18のメモリに記憶されているか否かを判断する。
【0123】
この処理は、後述するステップS30の処理と合わせて、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いか否かを判断するための処理である。ここで、上記ピーク値とは、基準となる操舵量θsteer(例えば、車両が直進走行する場合の操舵量「0」)と、右折時又は左折時の操舵量θsteerの最大値との差分である。
【0124】
上記操舵量θsteerに関する条件は、車両が小回りしたか否かを判断するための基本となる条件である。以下、図17を用いて、操舵量θsteerに基づき小回りを判断可能な理由について説明する。
【0125】
図17は、種々の走行状態における操舵量θsteerのピーク値の計測結果である。詳しくは、幹線道路及び非幹線道路が混在する所定の走行経路に沿って車両を走行させる状況下において、幹線道路を走行する場合の上記ピーク値(図中「■」にて表記)、及び幹線道路からこれに略直交する非幹線道路に進入する場合のピーク値(図中「○」にて表記)のそれぞれを計測された順に示している。なお、これらデータと合わせて、非幹線道路を走行する場合のピーク値(図中「●」にて表記)、及び非幹線道路から幹線道路に戻る場合のピーク値(図中「△」にて表記)も併せて示す。また、図中、★1にて示すデータは、曲率半径が過度に小さい幹線道路を走行した場合のものであるため、ピーク値が大きくなっている。
【0126】
図示されるように、左折時及び右折時の双方において、幹線道路から非幹線道路に車両が進入する場合の操舵量θsteerのピーク値「○」の絶対値は、幹線道路を走行する場合のピーク値「■」の絶対値と比較して大きい傾向にある。このため、操舵量θsteerのピーク値によれば、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いか否かを判別することが可能となる。なお、上記規定操舵量γは、幹線道路から非幹線道路に進入する場合のピーク値と、幹線道路におけるピーク値とを判別可能な値に設定される。
【0127】
また、上記車両の走行速度Vに関する条件は、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いか否かの判断精度を向上させるためのものである。ここで、判断精度を向上できる理由は、車両が非幹線道路に進入する際には通常、車両が減速されることによるものである。なお、本実施形態では、上記所定の低速度Vβは、上記規定速度Vαよりも高い速度に設定される。
【0128】
さらに、方向指示器36に関する条件は、上記走行速度Vに関する条件と同様に、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いか否かの判断制度を向上させるためのものである。つまり、操舵量θsteerのピーク値の絶対値が大きくなる場合であっても、幹線道路から非幹線道路に進入する状況ではなく、曲率半径の小さな幹線道路を走行する状況となることがある。この場合、非幹線道路を走行中であると誤判断されるおそれがある。このため、方向指示器36に関する条件を設定することで、誤判断を回避して上記判断精度を向上させる。
【0129】
図16の説明に戻り、上記ステップS26やステップS28において肯定判断された場合には、ステップS30に進み、前回の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満であるか否かを判断する。この処理が設けられる理由は、次の2つである。
【0130】
第1の理由は、上記ステップS28の方向指示器36に関する条件と同様に、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いか否かの判断精度を更に向上させるためである。つまり、先の図15に示すように、小回りした直後の非幹線道路においては、交差点の一時停止の標識等に従って車両がショートストップする蓋然性が高くなる。このため、上記ステップS28における上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断される状況下において、本ステップでショートストップすると判断された場合、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いとの最終的な判断をする。
【0131】
第2の理由は、車両が非幹線道路を継続して走行している蓋然性が高い状況であるか否かを判断するためである。
【0132】
なお、ステップS30において2度(又は3度)続けて肯定判断された場合や、非幹線進入フラグFθが「1」とされる状況下、ステップS30において否定判断された場合には、メモリに記憶された上記履歴情報を消去する。
【0133】
ステップS30において肯定判断された場合には、ステップS32に進み、非幹線進入フラグFθを「1」とする。この処理は、後述するステップS34、S36の処理と合わせて、上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断される状況下において上記ステップS30で最初に肯定判断された後、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを適切に予測することができないおそれのある期間において、エンジン10が自動停止される事態の発生を抑制するためである。
【0134】
つまり、上述したように、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを予測するためには、車両が非幹線道路に進入してからの3つの停車時間Tstopが必要とされる。このため、車両が非幹線道路に進入した後であっても、新たに3つの停車時間Tstopの取得(メモリへの記憶)が完了するまでは、次回の自動停止時間を適切に予測することができなくなる懸念がある。
【0135】
ここで、上記ステップS28において肯定判断された後、停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になる状況は、車両が非幹線道路を継続して走行している蓋然性が高い状況であると考えられる。このため、上記ステップS28において肯定判断された後、新たに3つの停車時間Tstopがメモリに記憶されるまで、後述するステップS24の処理に導く処理を行う。
【0136】
続くステップS34では、カウンタCの値を1インクリメントする。
【0137】
続くステップS36では、カウンタCの値が「2」以下であるか否かを判断する。この処理は、次回の自動停止時間が規定時間未満になるか否かを予測するために必要な停車時間Tstopが、上記ステップS28で肯定判断されてから、メモリに3つ記憶されたか否かを判断するための処理である。これは、非幹線道路に進入してからの停車時間が3つあれば、ステップS26〜S36の一連の処理を離脱して、ステップS18の処理において非幹線道路を走行しているか否かを判断することができることに鑑みたものである。
【0138】
ステップS36において肯定判断された場合には、ステップS24に進み、IS禁止処理を行う。
【0139】
一方、上記ステップS30や上記ステップS36において否定判断された場合には、ステップS38に進み、非幹線進入フラグFθ及びカウンタCの値を初期化する(「0」にする)。すなわち、上記履歴情報がメモリに記憶された後、直近の3回の停車時間Tstopがメモリに記憶されたと判断された場合や、車両が非幹線道路を継続して走行している蓋然性が高い状況でないと判断された場合、非幹線進入フラグFθ及びカウンタCの値を初期化する。
【0140】
上記ステップS28において否定判断された場合や、ステップS38の処理が完了した場合には、ステップS10に進む。
【0141】
なお、ステップS22、24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0142】
図18に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理の一例を示す。詳しくは、図18(a)、図18(b)は、先の図2(b),図2(c)に対応している。また、図18(c)に、操舵量θsteerの推移を示し、図18(d)に、非幹線進入フラグFθの値の推移を示し、図18(e)に、アイドルストップフラグFの値の推移を示す。
【0143】
図示される例では、幹線道路において、停車時間Tstop(時刻t1〜t2)が信号停車時間T1以上となる停車がなされる。そしてその後、車両が走行を開始し、幹線道路から非幹線道路に進入すべく、車両が減速されるとともに、ハンドル32が操作される。これにより、時刻t3において、車両の走行速度Vが所定の低速度Vβ以下になる状況下、操舵量θsteerのピーク値が規定操舵量γ(例えば250°)以上になると判断されることで、上記履歴情報がメモリに記憶される。
【0144】
その後、時刻t4において非幹線道路への進入が完了し、その直後の時刻t5において、ブレーキ操作がなされる状況下、車両の走行速度Vが規定速度Vα以下になると判断されることで、エンジン10が自動停止される。その後、ブレーキ操作が解除される時刻t6においてエンジン10が再始動される。この際、車両がショートストップ(短時間停車)したと判断されることで、非幹線進入フラグFθ及びアイドルストップフラグFの値が「1」とされてエンジン10の自動停止が禁止される。このため、その後時刻t7において自動停止条件が再び成立するものの、上記履歴情報がメモリに記憶された後、停車時間Tstopがメモリに3つ記憶されていないと判断され、エンジン10の自動停止が禁止される。
【0145】
図19〜図21に、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を、減速時IS制御に採用することによる種々の影響を調べた結果を示す。
【0146】
まず、図19に、正答率及び燃費改善率と、幹線道路比率との関係を示す。なお、図中、本実施形態にかかる停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を採用した場合の結果を「●」で表記し、先の第1の実施形態にかかる停止時間予測処理等を採用した場合の結果を「□」で表記し、これら処理を採用しない場合の結果を「×」で表記した。
【0147】
図19(A)に示すように、操舵量θsteer等を用いて非幹線道路への進入を判断する手法を採用することにより、先の第1の実施形態における手法と比較して、正答率が向上している。特に、幹線道路から非幹線道路への進入頻度の高い幹線道路比率(20〜80%)において、正答率の向上度合いが大きくなっている。これにより、同図(B)に示すように、幹線道路比率が高い領域における燃費改善率を維持しつつ、幹線道路比率が低い領域における燃費改善率が過度に低下する事態を回避する(0付近とする)ことができる。
【0148】
なお、先の第1の実施形態の手法を採用した場合の正答率について、先の図12(A)に示す結果(「○」にて表記)と、図19(A)に示す結果(「□」にて表記)が相違するのは、ショートストップ時間Tshortを2秒から4秒に変更したこと等の影響によるものである。
【0149】
次に、図20に、本実施形態にかかる減速時IS制御による全アイドルストップ回数のうち、自動停止時間が5秒未満となるものの割合の計測結果を示す。
【0150】
図示されるように、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行わない場合、幹線道路比率が小さいほど、全アイドルストップ回数のうち自動停止時間が5秒未満となるものの割合が増大する。これに対し、操舵量θsteer等を用いた停止時間予測処理を行う場合には、全アイドルストップ回数のうち自動停止時間が5秒未満となるものの割合が低下し、その低下度合いは、幹線道路比率が小さいほど大きくなる。このため、自動停止時間が5秒未満となるものの割合を、幹線道路(幹線道路比率=100%)における割合付近まで低下させることができ、エンジン10の燃費低減効果の低下を好適に抑制することができる。
【0151】
続いて、図21に、エンジン10が再始動されてから次に自動停止されるまでの車両の走行距離(走行距離間隔)、及びエンジン10が再始動されてから次に自動停止されるまでの時間(走行時間間隔)の計測結果を示す。
【0152】
図示されるように、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理を行わない場合、幹線道路比率が小さいほど、走行距離間隔及び走行時間間隔の双方が短くなる傾向になる。このため、幹線道路比率が小さいほど、エンジン10が頻繁に自動停止され、ドライバビリティが低下する懸念がある。
【0153】
これに対し、操舵量θsteer等を用いた停止時間予測処理を行うことで、走行距離間隔及び走行時間間隔が伸長し、その伸長度合いは、幹線道路比率が小さいほど大きくなる傾向になる。これにより、非幹線道路においてエンジン10が頻繁に自動停止される事態を抑制することができ、ドライバビリティの低下を回避することができる。
【0154】
以上詳述した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の効果と合わせて、以下の効果が得られるようになる。
【0155】
(9)上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断されて且つ、前回の停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測する停止時間予測処理を行った。これにより、幹線道路から非幹線道路に車両が進入したことを適切に判断することができる。すなわち、エンジン10が次回の自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを高精度に予測することができる。
【0156】
(10)上記履歴情報がメモリに記憶されていると判断される状況下、停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になると判断される限り、新たに3つの停車時間Tstopがメモリに記憶されたと判断されるまで、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測した。これにより、車両が非幹線道路に進入してから、エンジン10が次回自動停止される状況が、自動停止によって燃費低減効果が低下する状況であるか否かを適切に予測可能となるまでの期間において、エンジン10の自動停止を適切に禁止することができる。
【0157】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0158】
・エンジン10の停止条件としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、車両の走行速度についての条件を、車両の走行速度Vが0であるとの条件としてもよい。この場合、エンジン10の自動停止時間が短時間となる事態の発生頻度は小さいものの、停止時間予測処理等によれば、エンジン10の自動停止時間が規定時間未満となる事態の発生頻度を更に低減させることができる。また例えば、上記停止条件を、停車してから所定時間経過したとの条件としてもよい。この条件は、ユーザの停車意思を極力把握しつつエンジン10を自動停止させることで、エンジン10の自動停止時間が短時間となる事態の発生を回避するためのものである。
【0159】
更に例えば、上記停止条件を、停車して且つブレーキ系統の油圧(例えばマスタシリンダ圧)やブレーキ操作量が所定以上であるとの条件としてもよい。この条件は、ドライバに停車意思がある場合には通常、ブレーキ操作量が大きくなってブレーキ油圧が上昇することに鑑み、ドライバの停車意思を適切に把握するためのものである。
【0160】
・エンジン10の再始動条件としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、アクセル操作がなされているとの条件を含む条件としてもよい。ここでアクセル操作がなされているか否かは、例えばアクセル操作量が0よりも大きいか否かで判断すればよい。
【0161】
・上記各実施形態では、停車時間の履歴を用いてエンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測したがこれに限らない。例えばエンジン10の自動停止時間の履歴を用いてもよい。ここで自動停止時間の履歴を用いた具体的な予測手法について説明すると、エンジン10の停止条件として車両の走行速度が0になるとの条件を含む条件を採用して停車時間と自動停止時間とを略同一とし、エンジン10の自動停止が禁止される(先の図6のステップS24の処理が実行される)毎に、ECU18のメモリに記憶されている自動停止時間の履歴を初期化する処理を行えばよい。こうした手法によれば、停車時間の履歴を用いた手法と比較して、エンジン10の自動停止時間が規定時間未満となる頻度が多くなるおそれがあるものの、停止時間予測処理及び自動停止禁止処理による燃費低減効果を得ることはできる。
【0162】
なお、エンジン10の自動停止時間の履歴を用いる場合、先の図6又は図16のステップS10〜S20や、図16のステップS30において、停車時間Tstopに代えて自動停止時間を用いることとなる。
【0163】
・エンジンの次回の自動停止時間が規定時間以上になるか否かを予測する手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、停車時間について、先の図6のステップS12〜S20の処理に代えて、直近の4つの値のうち半数が、ショートストップ時間Tshort以上になると判断された場合、エンジン10の次回の自動停止時間が規定時間以上になると予測してもよい。もっとも、直近の複数の値としては、4つの値に限らず、3回であっても5回以上であってもよい。
【0164】
・エンジンの次回の自動停止時間が規定時間未満になるとの予測を継続する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いとの最終的な判断がされた後(非幹線進入フラグFθが「1」にされた後)、停車時間Tstopがショートストップ時間Tshort未満になると判断される限り、新たに3回の停車時間Tstopが取得される(メモリに記憶される)まで、次回の自動停止時間が規定時間未満になるとの予測を継続してもよい。これは、直近4回の停車時間Tstopのうち、3つ以上(過半数)がショートストップ時間Tshort未満であれば、非幹線道路を走行中であると判断可能なことに基づくものである。
【0165】
・上記各実施形態では、規定時間がショートストップ時間Tshortよりも長かったがこれに限らない。例えば、規定時間がショートストップ時間Tshortと同一の時間であったり、規定時間がショートストップ時間Tshortよりも短かったりしてもよい。この場合であっても、例えばショートストップ時間Tshortが2秒となるのに対して規定時間が1.6秒となるとき、先の図7(A)の計測結果から停車時間がショートストップ時間Tshortになるもののうち1秒未満のものが支配的であるため、次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測される場合にエンジン10の自動停止を禁止することで、燃費低減効果の低下を回避することができる。なお、ショートストップ時間Tshortを3秒とするなど2秒及び4秒以外とすることも可能である。
【0166】
・アイドルストップ制御手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、上記自動停止禁止処理によってエンジン10の自動停止が禁止されて停車される状況下、停車してから長時間(所定時間)経過したと判断されたり、ドライバに停車意思があると判断されたりする場合には、エンジン10の自動停止を許可してもよい。これにより、エンジン10の自動停止によって本来燃費低減効果が得られると想定される状況において、何らかの要因によって次回の自動停止時間が規定時間未満になると予測されてエンジン10の自動停止が禁止される場合であっても、エンジン10の燃費低減効果の低下を極力抑制することができる。なお、停車意思があるか否かは、例えばブレーキ系統の油圧が規定圧以上であるか否かに基づき判断すればよい。
【0167】
・車両外部との情報通信を行わずに車両の挙動を検出する車載センサ(操舵量センサ38)の検出値に基づき、車両が小回りしたか否かを判断する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、切れ角センサ40の出力値から算出される切れ角θtireに基づき小回りしたか否かを判断してもよい。具体的には、切れ角θtireのピーク値の絶対値が規定値以上になると判断された場合、車両が小回りしたと判断すればよい。また、例えば、車両の旋回角速度を検出する手段(例えばヨーレートセンサ)を備え、このセンサの検出値の時間積分値から算出される車両の旋回角(ヨー角)の絶対値が規定角以上になると判断された場合、車両が小回りしたと判断してもよい。
【0168】
さらに、例えば、互いに対角位置にある車輪の回転速度差の絶対値が閾値以上になることに基づき、車両が小回りしたか否かを判断してもよい。ここで、対角位置にある上記回転速度差とは、FLセンサ34aの出力値から算出される左前輪の回転速度と、RRセンサ34dの出力値から算出される右後輪の回転速度との差(以下、FL―RR車輪速差)、及びFRセンサ34bの出力値から算出される右前輪の回転速度と、RLセンサ34cの出力値から算出される左後輪の回転速度との差(以下、FR―RL車輪速差)のうち少なくとも1つである。以下、図22を用いて、これら車輪速差によって小回りしたか否かを判断可能な理由を説明する。
【0169】
図22に、幹線道路及び非幹線道路が混在した所定の走行経路に沿って車両を走行させた場合におけるFL―RR車輪速差及びFR―RL車輪速差と操舵量θsteerのピーク値との関係を示す。なお、図中、FL―RR車輪速差は、左前輪の回転速度から右後輪の回転速度を減算した値であり、FR―RL車輪速差は、右前輪の回転速度から左後輪の回転速度を減算した値である。
【0170】
図示されるように、右折時において操舵量θsteerのピーク値の絶対値が大きくなるほど、FL―RR車輪速差が大きくなり、左折時において操舵量θsteerのピーク値の絶対値が大きくなるほど、FR―RL車輪速差が大きくなる傾向にある。すなわち、上記ピーク値の絶対値とこれら車輪速差とが正の相関を有している。このため、FL−RR車輪速差やFR−RL車輪速差を用いて、車両が小回りしたか否かを判断することができる。
【0171】
なお、図23に示すように、右折時及び左折時の双方において、FR−RL車輪速差及びFL−RR車輪速差の双方が略同一のタイミングで極大値となる傾向がある。このため、これら車輪速差の絶対値のうち大きいほうが上記閾値以上になることに基づき、車両が小回りしたと判断してもよい。これにより、車両の小回りの検出精度を向上させることができる。
【0172】
また、車両が小回りしたか否かを判断するパラメータとしては、互いに対角位置にある車輪の回転速度差に限らず、前輪同士の回転速度差や、後輪同士の回転速度差を用いてもよい。
【0173】
具体的には、図24(A)に示すように、左前輪の回転速度から右前輪の回転速度を減算した値(FL―FR車輪速差)、及び右前輪の回転速度から左前輪の回転速度を減算した値(FR―FL車輪速差)のうち少なくとも1つを上記パラメータとして用いてもよい。また、図24(B)に示すように、左後輪の回転速度から右後輪の回転速度を減算した値(RL―RR車輪速差)、及び右後輪の回転速度から左後輪の回転速度を減算した値(RR―RL車輪速差)のうち少なくとも1つを上記パラメータとして用いてもよい。この場合、操舵量θsteerのピーク値と車輪速差との相関が、先の図22に示したものよりも小さいものの、前輪同士の回転速度差や後輪同士の回転速度差によって車両が小回りしたか否かを判断することはできる。なお、この手法は、車輪速センサが前輪のみ又は後輪のみに備えられる車両への適用が有効である。
【0174】
・幹線道路から非幹線道路に車両が進入した蓋然性が高いか否かを最終的に判断する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、操舵量θsteerのピーク値の絶対値が、規定操舵量γ以上になるとの条件のみが成立したとの履歴情報がメモリに記憶されていると判断された場合、非幹線道路に進入した蓋然性が高いと最終的に判断してもよい。この場合、例えば、車両が幹線道路から非幹線道路に進入した直後の自動停止条件が成立する状況下において、迅速にエンジン10の自動停止を禁止することができる。特に、こうした判断手法は、非幹線道路への出入りや、非幹線道路において右左折の多い集配業務に使用される車両(例えば宅配車両)への適用が有効である。
【0175】
ここで、このような車両においては、非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断された後、次に車両が幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断されるまで、エンジン10の自動停止の禁止を継続させてもよい。すなわち、車両が非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断された後、車両が幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断された場合、エンジン10の自動停止を許可してもよい。これにより、例えば上記車両が住宅地における非幹線道路を巡回走行する状況下において、エンジン10の再始動時の騒音に起因して、近隣住宅に不快な思いをさせることを抑制できる。
【0176】
なお、この場合、非幹線道路から幹線道路に出た直後は、エンジン10の自動停止が禁止されることが想定される。このような状況下においては、その後少なくとも前回の停車時間Tstopが信号停車時間T1以上になると1回判断されるまで自動停止が許可されないことが想定される。この場合、非幹線道路から幹線道路へと車両が出た後、例えば高速で長時間走行する等、車両が非幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断される状況が継続されるにもかかわらず、次回の自動停止時間が短くなると誤って予測されるおそれがある。そして、この場合、非幹線道路を出てから長時間経過したにもかかわらず、自動停止が行われないことから、ドライバに違和感を与えるおそれがある。
【0177】
こうした問題を解決すべく、非幹線道路に進入した蓋然性が高いと判断された後、車両の走行速度の履歴に基づき幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断された場合、エンジン10の自動停止を許可するのが望ましい。ここで、走行速度の履歴を用いた判断手法としては、具体的には、例えば、車両の走行速度が所定の高速度(非幹線道路においては想定し得ない高速度、例えば50〜60km/h)以上になると判断された場合、幹線道路を走行している蓋然性が高いと判断すればよい。
【符号の説明】
【0178】
10…エンジン、16…スタータ、18…ECU(エンジンの自動停止制御装置の一実施形態)、24…車速センサ、36…方向指示器、38…操舵量センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行速度が規定速度以下になるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合に車載エンジンを自動停止させるエンジンの自動停止制御装置において、
停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その履歴に基づき、前記エンジンの次回の自動停止時間が、該エンジンの自動停止によって燃費低減効果を得ることが可能な規定時間未満になるか否かを予測する処理を行う予測手段と、
該予測手段によって前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測された場合、前記エンジンの次回の自動停止を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とするエンジンの自動停止制御装置。
【請求項2】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値が、予め定められた時間である信号停車時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項4】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項5】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする請求項2記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項6】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、前記信号停車時間よりも短いショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項5記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項7】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値及び前々回値が予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項8】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが1つ以下であることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項9】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項10】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が前記ショートストップ時間よりも長い時間である信号停車時間以上となることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項11】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、4回前の値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3〜10のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項12】
前記車両の挙動を検出する車載センサの検出値に基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断する小回判断手段を更に備え、
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項13】
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の走行速度が所定の低速度以下になると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項12記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項14】
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された直後の停車時間又は前記エンジンの自動停止時間が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になると判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項12又は13記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項15】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが過半数になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、前記規定数の前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする請求項12〜14のうちいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項16】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、3つの前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする請求項15記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項17】
前記小回判断手段は、前記車両の操舵輪を操舵すべくドライバによって操作される操舵部材の操舵量と、前記車両の外輪及び内輪のそれぞれの回転速度の差とのうち少なくとも1つに基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断することを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項18】
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の方向指示器が操作されると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項19】
前記停止条件における前記規定速度は、0よりも高い速度であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項1】
車両の走行速度が規定速度以下になるとの条件を含む所定の停止条件が成立した場合に車載エンジンを自動停止させるエンジンの自動停止制御装置において、
停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その履歴に基づき、前記エンジンの次回の自動停止時間が、該エンジンの自動停止によって燃費低減効果を得ることが可能な規定時間未満になるか否かを予測する処理を行う予測手段と、
該予測手段によって前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測された場合、前記エンジンの次回の自動停止を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とするエンジンの自動停止制御装置。
【請求項2】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値が、予め定められた時間である信号停車時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする請求項1記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項4】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項5】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値に基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるか否かを予測する処理を行うことを特徴とする請求項2記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項6】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の複数の値のうち半数以上が、前記信号停車時間よりも短いショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項5記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項7】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、その前回値及び前々回値が予め定められた時間であるショートストップ時間以上になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項8】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが1つ以下であることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項9】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項10】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間についての直近の3つの値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、それら以外の値が前記ショートストップ時間よりも長い時間である信号停車時間以上となることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間以上になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項11】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値のうち予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが2つあって且つ、4回前の値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項3〜10のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項12】
前記車両の挙動を検出する車載センサの検出値に基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断する小回判断手段を更に備え、
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項13】
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の走行速度が所定の低速度以下になると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項12記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項14】
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された直後の停車時間又は前記エンジンの自動停止時間が、予め定められた時間であるショートストップ時間未満になると判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項12又は13記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項15】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、過去の3以上の規定数の値のうち、予め定められた時間であるショートストップ時間未満となるものが過半数になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、前記規定数の前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする請求項12〜14のうちいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項16】
前記予測手段は、前記予測する処理として、停車時間又は前記エンジンの自動停止時間について、直近の3つの値が前記ショートストップ時間未満になることに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うものであって且つ、前記小回りしたと判断された後、前記停車時間又は前記自動停止時間が前記ショートストップ時間未満になると判断される限り、3つの前記停車時間又は前記自動停止時間が新たに取得されるまで、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になるとの予測を継続することを特徴とする請求項15記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項17】
前記小回判断手段は、前記車両の操舵輪を操舵すべくドライバによって操作される操舵部材の操舵量と、前記車両の外輪及び内輪のそれぞれの回転速度の差とのうち少なくとも1つに基づき、前記車両が小回りしたか否かを判断することを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項18】
前記予測手段は、前記予測する処理として、前記車両の方向指示器が操作されると判断されて且つ、前記小回判断手段によって小回りしたと判断されたことに基づき、前記次回の自動停止時間が前記規定時間未満になると予測する処理を行うことを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【請求項19】
前記停止条件における前記規定速度は、0よりも高い速度であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載のエンジンの自動停止制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−132425(P2012−132425A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36767(P2011−36767)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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