説明

エンジンオイルの劣化判定装置

【課題】エンジンオイルの劣化を精度良く判定して、エンジンオイルの交換時期を運転者等に的確に知らせる。
【解決手段】エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempの各パラメータ間の相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップに基づいて、ペンタン不溶解分の積算値を求めてオイル劣化を判定する(ステップST3〜ST6)。このように、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempのパラメータ毎に劣化指標を算出するのではなく、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempを含む複数のパラメータの相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップを用いてオイル劣化を判定することで、エンジンオイルの劣化を精度良く判定することが可能となり、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を潤滑するエンジンオイルの劣化を判定するエンジンオイルの劣化判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される内燃機関(以下、エンジンともいう)では、ピストン、クランクシャフト、コネクティングロッドなどの摺動各部をエンジンオイルにて潤滑している。このような潤滑用のエンジンオイルはエンジンの使用に伴って劣化する。
【0003】
エンジンオイルの劣化は、例えば、基油の酸化、粘度増加、摩耗防止剤や清浄分散剤などの添加剤の消耗、すす(Soot)などの燃焼生成物の外部からの混入などによって生じる。これらのいずれの場合でも、エンジンの性能を維持するためにはエンジンオイルの交換が必要である。
【0004】
エンジンオイルの交換時期を判定する方法として、下記の特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1に記載の技術では、エンジンオイルの劣化に関係するパラメータとして、油温、負荷、エンジン回転数を検出し、その検出した油温、負荷、エンジン回転数から特性曲線に基づいて劣化に関する評価係数を各パラメータごとに求め、それら評価係数BT、BL、BNにエンジン回転数を乗算する。そして、各評価係数を乗算した後のエンジン回転数を走行距離に換算して残存走行距離(次のオイル交換時期までの残り走行距離)を求めている。
【0005】
また、この種のエンジンオイルの劣化判定装置として、エンジンの運転状態に基づいてオイル劣化指標(例えば粘度、全塩基価、ペンタン不溶解分量など)を求め、そのオイル劣化指標を積算した積算値が所定の判定値を超えたときに、運転者等に警告を発する装置がある。
【特許文献1】特許第3493583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した特許文献1に記載の方法では、油温、負荷、エンジン回転数の各パレメータに対応する評価係数BT、BL、BNを個別に算出しているので、各パラメータの相互の関係が残存走行距離(エンジンオイル交換時期)に反映されず、エンジンオイルの劣化判定の精度が劣るという問題がある。また、走行距離に換算しているため、アイドリング停止時のオイル劣化を反映した劣化判定を行うことができない。
【0007】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、エンジンオイルの劣化を精度良く判定することができ、エンジンオイルの交換時期を運転者等に的確に知らせることが可能なエンジンオイルの劣化判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、機関回転数、負荷、油温の各パラメータ毎に劣化指標を算出するのではなく、機関回転数、負荷、油温を含む複数のパラメータの相互作用を考慮して、劣化指標の1つであるペンタン不溶解分を算出・積算することで、劣化判定の精度を高めている点に特徴がある。
【0009】
具体的には、内燃機関を潤滑するエンジンオイルの劣化を判定するエンジンオイルの劣化判定装置において、機関回転数、負荷、油温を含む内燃機関の運転状態を検出する検出手段と、前記内燃機関の運転状態の検出値に基づいてエンジンオイルの劣化を判定する判定処理手段とを備え、前記判定処理手段は、前記機関回転数、負荷、油温を含む内燃機関の運転状態をパラメータとして単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量を求めるためのマップであって、前記機関回転数、負荷、油温を含む複数のパラメータの相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップを有し、前記機関回転数、負荷、油温を含む内燃機関の運転状態の検出値に基づいて前記ペンタン不溶解分マップを参照してペンタン不溶解分の増加量を算出するとともに、その算出結果を経時的に積算し、その積算値が所定値を超えたときに警告を発することを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、機関回転数、負荷、油温を含む複数のパラメータ間の相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップに基づいて、ペンタン不溶解分の積算値を求めてオイル劣化を判定しているので、エンジンオイルの劣化を精度良く判定することができ、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。しかも、ペンタン不溶解分をオイル劣化指標としているので、粘度増加・すす・酸化によるオイル劣化を1つの指標で判定することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、機関回転数、負荷、油温を含む複数のパラメータの相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップを用いて、ペンタン不溶解分の増加量を算出するとともに、その算出結果を経時的に積算し、その積算値が所定値を超えたときに警告を発するように構成しているので、エンジンオイルの劣化を精度良く判定することができ、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。しかも、ペンタン不溶解分の増加量を経時的に積算した積算値に基づいてオイルの劣化を判定しているので、アイドリング停止時のオイル劣化を反映した、より正確なオイル劣化判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
まず、本発明のエンジンオイルの劣化判定装置を適用するエンジン(内燃機関)について説明する。
【0014】
−エンジン−
図1は本発明を適用するエンジンの概略構成を示す図である。なお、図1にはエンジンの1気筒の構成のみを示している。
【0015】
エンジン1は、多気筒ガソリンエンジンであって、燃焼室1aを形成するピストン1b及び出力軸であるクランクシャフト15を備えている。ピストン1bはコネクティングロッド16を介してクランクシャフト15に連結されており、ピストン1bの往復運動がコネクティングロッド16によってクランクシャフト15の回転へと変換される。
【0016】
クランクシャフト15には、外周面に複数の突起(歯)17a・・17aを有するシグナルロータ17が取り付けられている。シグナルロータ17の側方近傍にはクランクポジションセンサ27が配置されている。クランクポジションセンサ27は、例えば電磁ピックアップであって、クランクシャフト15が回転する際にシグナルロータ17の突起17aに対応するパルス状の信号(出力パルス)を発生する。
【0017】
エンジン1のシリンダブロック1cの下側には、エンジンオイルを貯留するオイルパン18が設けられている。このオイルパン18に貯留されたエンジンオイルは、エンジン1の運転時に、異物を除去するオイルストレーナを介してオイルポンプによって汲み上げられ、さらにオイルフィルタで浄化された後に、ピストン1b、クランクシャフト15、コネクティングロッド16などに供給され、各部の潤滑・冷却等に使用される。そして、このようにして供給されたエンジンオイルは、エンジン1の各部の潤滑・冷却等のために使用された後、オイルパン18に戻され、再びオイルポンプによって汲み上げられるまでオイルパン18内に貯留される。オイルパン18には、エンジンオイルの温度を検出する油温センサ22が配置されている。また、エンジン1のシリンダブロック1cには、エンジン水温(冷却水温)を検出する水温センサ21が配置されている。
【0018】
エンジン1の燃焼室1aには点火プラグ3が配置されている。点火プラグ3の点火タイミングはイグナイタ4によって調整される。イグナイタ4は、後述するECU(電子制御ユニット)100によって制御される。
【0019】
エンジン1の燃焼室1aには吸気通路11と排気通路12が接続されている。吸気通路11と燃焼室1aとの間に吸気バルブ13が設けられており、この吸気バルブ13を開閉駆動することにより、吸気通路11と燃焼室1aとが連通または遮断される。また、排気通路12と燃焼室1aとの間に排気バルブ14が設けられており、この排気バルブ14を開閉駆動することにより、排気通路12と燃焼室1aとが連通または遮断される。これら吸気バルブ13及び排気バルブ14の開閉駆動は、クランクシャフト15の回転が伝達される吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの各回転によって行われる。
【0020】
一方、吸気通路11には、エアクリーナ7、熱線式のエアフローメータ23、吸気温センサ24(エアフローメータ23に内蔵)、及び、エンジン1の吸入空気量を調整するための電子制御式のスロットルバルブ5が配置されている。スロットルバルブ5はスロットルモータ6によって駆動される。スロットルバルブ5の開度はスロットルポジションセンサ26によって検出される。エンジン1の排気通路12には、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ25及び三元触媒8が配置されている。
【0021】
そして、吸気通路11には、燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射弁)2が配置されている。インジェクタ2には、燃料タンクから燃料ポンプによって所定圧力の燃料が供給され、吸気通路11に燃料が噴射される。この噴射燃料は吸入空気と混合されて混合気となってエンジン1の燃焼室1aに導入される。燃焼室1aに導入された混合気(燃料+空気)は点火プラグ3にて点火されて燃焼・爆発する。この混合気の燃焼室1a内での燃焼・爆発によりピストン1bが往復運動してクランクシャフト15が回転する。以上のエンジン1の運転状態は、ECU100によって制御される。
【0022】
−ECU−
ECU100は、図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104などを備えている。
【0023】
ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、エンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0024】
これらCPU101、ROM102、RAM103、及び、バックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
【0025】
入力インターフェース105には、水温センサ21、油温センサ22、エアフローメータ23、吸気温センサ24、O2センサ25、スロットルポジションセンサ26、クランクポジションセンサ27、及び、イグニッションスイッチ28などが接続されている。出力インターフェース106には、インジェクタ2、点火プラグ3のイグナイタ4、スロットルバルブ5のスロットルモータ6、及び、オイル交換時期に至ったことを運転者等に通知(警告)するためのウォーニングランプ9などが接続されている。
【0026】
そして、ECU100は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU100は、下記のエンジンオイル劣化判定処理を実行する。
【0027】
−エンジンオイル劣化判定処理−
まず、エンジンオイル劣化判定処理に用いるペンタン不溶解分マップについて説明する。
【0028】
ペンタン不溶解分マップは、図4に示すように、エンジン1の運転条件のうち、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempをパラメータとして、単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量dPrを求めるためのマップである。
【0029】
この例に用いるペンタン不溶解分マップは、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempの各パラメータ間の相互作用を考慮し、それらエンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempの相互作用が反映されるように、単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量dPrを予め実験・計算等によって求めてマップ化したものである。具体的には、エンジン1のベンチテストにおいて、例えば、油温Tempを一定とした条件でエンジン回転数Neと負荷Tqとを変化させてエンジン運転領域内の各種条件で単位時間あたりのペンタン不溶解分の増加量を測定する、という処理を油温の各種条件毎に実施し、この測定で得られた測定値をマップ化したものであり、ECU100のROM102内に記憶されている。
【0030】
この例のペンタン不溶解分マップでは、エンジン回転数Neが高くなるほど単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量dPrが高くなり、負荷Tqが高くなるほど単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量dPrが高くなるように設定されている。さらに、油温Tempが高くなるほど単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量dPrが高くなるように設定されている。
【0031】
次に、エンジンオイル劣化判定処理を図3のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
ステップST1において、エンジン1が始動しているか否かを判定し、エンジン1が始動していないときには、このルーチンを一旦終了する。エンジン1が始動している場合はステップST2に進む。
【0033】
ステップST2では、次回始動時警告フラッグがONであるか否かを判定する。いま、エンジンオイルの交換初期(エンジンオイルが新品)のときには、ペンタン不溶解分の積算値Prは初期値「0」であり、次回始動時警告フラッグはOFFであるので、ステップST3に進む。
【0034】
ステップST3においては、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempを含むエンジン運転条件を検出する。エンジン回転数Neは、クランクポジションセンサ27の出力信号から読み込む。負荷Tqは、エアフローメータ23の検出信号から得られる吸入空気量に基づいて検出する。油温Tempは、オイルパン18に配置した油温センサ22の出力信号から読み込む。
【0035】
ステップST4では、上記ステップST3で検出したエンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempに基づいて、図4のペンタン不溶解分マップを参照してペンタン不溶解分の増加量dPrを算出し、その算出したペンタン不溶解分増加量を積算してペンタン不溶解分積算値Prを求める。ペンタン不溶解分積算値Prの初期値は「0」である。
【0036】
次に、ステップST5において、イグニッションスイッチ28がOFF(IG OFF)であるか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合(イグニッションスイッチ28がONである場合)、ステップST3に戻ってエンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempを検出し、それらエンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempに基づいて、図4に示すペンタン不溶解分マップから得られるペンタン不溶解分の増加量dPrを積算してペンタン不溶解分積算値Prを求める(ステップST4)。このようなエンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempの検出(ステップST3)、及び、ペンタン不溶解分積算値Prの算出(ステップST4)は、イグニッションスイッチ28がOFF(ステップST5の判定結果が肯定判定)となるまで、所定時間毎(例えば数ms毎)に順次繰り返して実行される。
【0037】
次に、イグニッションスイッチ28がOFF(ステップST5の判定結果が肯定判定)となると、ステップST6において、現在のペンタン不溶解分積算値Prが劣化限界値Pr0を超えているか否かを判定し、その判定結果が否定判定である場合は、エンジン1が停止した後に(ステップST7が肯定判定)、このルーチンを一旦終了する。
【0038】
以上のステップST1〜ステップST7までの処理は、エンジン1が始動する毎に順次実施され、図5に示すように、エンジン1の運転時間の増大にともなってペンタン不溶解分積算値Prが増加していく。そして、エンジン1の運転時間が長くなって、ペンタン不溶解分積算値Prが劣化限界値Pr0を超えると(ステップST6の判定結果が肯定判定:Pr>Pr0)、ステップST8において次回始動時警告フラグをONにする。なお、ステップST6に用いる劣化限界値Pr0は、ペンタン不溶解分の積算値Prとオイル交換時期との関係などを考慮し、予め実験・計算等によって経験的に求めた値を設定する。
【0039】
以上のようにして、次回始動時警告フラグがONになった後、次回のエンジン始動時には、ステップST2の判定結果が肯定判定となるので、ステップST9においてウォーニングランプ9を点灯して、運転者等にオイル交換時期である旨の警告を発する。
【0040】
ここで、ウォーニングランプ9を点灯した後においても、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempの検出(ステップST3)、及び、ペンタン不溶解分積算値Prの算出(ステップST4)は、次回始動時警告フラグがOFFとなるまで、エンジン始動毎に順次繰り返して実行される。また、ウォーニングランプ9を点灯した後、エンジンオイルの交換が実施されるまでは、次回始動時警告フラグはONの状態が維持される。そして、オイル交換が実施され、例えばリセットスイッチ(図示せず)が操作されたときに、次回始動時警告フラグをOFFにするとともに、ペンタン不溶解分積算値Prを初期値「0」に戻す。
【0041】
このような初期化が行われた後、再度、ステップST1〜ステップST7の処理がエンジン始動毎に順次実行され、ステップST4で算出されるペンタン不溶解分積算値Prが運転時間の増大にともなって増加していき(図5参照)、そのペンタン不溶解分積算値Prが劣化限界値Pr0を超えた時点で、次回始動時警告フラグをONにし、次回のエンジン始動時にウォーニングランプ28を点灯する、という処理が順次繰り返される。
【0042】
以上のエンジンオイル劣化判定処理によれば、エンジン回転数Ne、負荷Tq、油温Tempの各パラメータ間の相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップに基づいて、ペンタン不溶解分の積算値を求めてオイル劣化を判定しているので、エンジンオイルの劣化を精度良く判定することができ、エンジンオイルの交換時期を運転者等に適切に知らせることができる。また、ペンタン不溶解分をオイル劣化指標としているので、粘度増加・すす・酸化によるオイル劣化を1つの指標で判定することができる。さらに、ペンタン不溶解分の増加量を経時的に積算した積算値に基づいてオイルの劣化を判定しているので、アイドリング停止時のオイル劣化を反映した、より正確なオイル劣化判定を行うことができる。
【0043】
−他の実施形態−
以上の例では、エンジンの運転状態のうち、エンジン回転数、負荷、油温を検出し、それらエンジン回転数、負荷、油温の各検出値に基づいてペンタン不溶解分マップを参照してペンタン不溶解分の積算値を算出しているが、これに限られることなく、エンジン回転数、負荷、油温に加えて、エンジンの冷却水温などの他のエンジン運転状態を検出し、それらエンジン回転数、負荷、油温、冷却水温を含むエンジン運転状態の検出値に基づいてペンタン不溶解分の積算値を算出するようにしてもよい。この場合、水温など他のパラメータとエンジン回転数、負荷、油温との相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップを用いてペンタン不溶解分の積算値を算出する。
【0044】
以上の例では、運転者等にオイル交換時期である旨を警告する手段として、ウォーニングランプを点灯しているが、これに限られることなく、ウォーニングランプの点滅、あるいはLEDや液晶などを用いてメッセージを表示する等の他の手段によって運転者等に警告を発するようにしてもよい。
【0045】
また、ペンタン不溶解分積算値Prから残存走行距離(次のオイル交換時期までの残り走行距離)を求め、その残存走行距離を、常時または使用者の要求などに応じて、アナログ方式またはディジタル方式の表示装置に表示してもよい。
【0046】
以上の例では、ガソリンエンジンのエンジンオイルの劣化判定に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えばLPG(液化石油ガス)やLNG(液化天然ガス)などの他の燃料とする点火方式のエンジンのエンジンオイルの劣化判定にも適用可能であり、また、筒内直噴型エンジンのエンジンオイルの劣化判定にも適用可能である。さらに、点火方式のエンジンに限られることなく、ディーゼルエンジンなどのエンジンオイルの劣化判定にも本発明を適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のエンジンオイルの判定装置を適用するエンジンの一例を示す概略構成図である。
【図2】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】ECUが実行するエンジンオイル劣化判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】図3のエンジンオイル劣化判定処理で用いるペンタン不溶解分マップを示す図である。
【図5】ペンタン不溶解分の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン
2 インジェクタ
3 点火プラグ
5 スロットルバルブ
6 スロットルモータ
9 ウォーニングランプ
18 オイルパン
22 油温センサ
23 エアフローメータ
27 クランクポジションセンサ
100 ECU(判定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を潤滑するエンジンオイルの劣化を判定するエンジンオイルの劣化判定装置であって、機関回転数、負荷、油温を含む内燃機関の運転状態を検出する検出手段と、前記内燃機関の運転状態の検出値に基づいてエンジンオイルの劣化を判定する判定処理手段とを備え、
前記判定処理手段は、前記機関回転数、負荷、油温を含む内燃機関の運転状態をパラメータとして単位時間当たりのペンタン不溶解分の増加量を求めるためのマップであって、前記機関回転数、負荷、油温を含む複数のパラメータの相互作用を考慮したペンタン不溶解分マップを有し、前記機関回転数、負荷、油温を含む内燃機関の運転状態の検出値に基づいて前記ペンタン不溶解分マップを参照してペンタン不溶解分の増加量を算出するとともに、その算出結果を経時的に積算し、その積算値が所定値を超えたときに警告を発することを特徴とするエンジンオイルの劣化判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−50972(P2008−50972A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226476(P2006−226476)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】