説明

エンジンシステム

【課題】出力の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供する。
【解決手段】制御手段20が、触媒温度検出手段14の検出温度が三元触媒13の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になると、エンジン1の出力を低下させる又はエンジン1を停止すべくスロットルバルブ11を制御する出力低下処理を実行し、その出力低下処理の後、触媒温度検出手段14の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなると、エンジン1の出力を低下前の出力に上昇させる又はエンジン1を再起動すべくスロットルバルブ11を制御する出力復帰処理を実行するように構成されたエンジンシステムであって、制御手段20が、出力低下処理を実行したときは、スロットルバルブ11を開き且つ燃料供給弁10を閉じた状態で、エンジン1の起動用の起動用モータ8を作動させるクランキング処理を実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気路を通してエンジンの燃焼室に吸気される混合気の吸気量を調整するスロットルバルブと、前記吸気路に供給される燃料の供給量を調整して、前記燃焼室に吸気される混合気の空気過剰率を調整する燃料供給弁と、前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、その三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、エンジン負荷に応じて、前記エンジンの出力を調整し、且つ、前記エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記空気過剰率を前記ストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切り換えるべく、前記燃料供給弁及び前記スロットルバルブを制御する制御手段とを備え、その制御手段が、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記三元触媒の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になると、前記エンジンの出力を低下させる又は前記エンジンを停止すべく前記スロットルバルブを制御する出力低下処理を実行し、その出力低下処理の後、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記過熱防止用設定温度よりも低くなると、前記エンジンの出力を低下前の出力に上昇させる又は前記エンジンを再起動すべく前記スロットルバルブを制御する出力復帰処理を実行するように構成されたエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるエンジンシステムとして、例えば、圧縮機がエンジンにて駆動される圧縮式ヒートポンプ回路を備えたエンジン駆動式のヒートポンプシステムや、エンジンにて駆動される発電機を備えたエンジン駆動式の熱電併給システムが知られている。
このようなエンジンシステムでは、エンジン負荷に応じて、エンジンの出力が調整され、並びに、エンジン負荷に応じて、エンジンの燃焼モードが、混合気の空気過剰率をストイキ範囲内(例えば1.0程度)に設定するストイキ燃焼モードと混合気の空気過剰率をストイキ範囲よりも大きいリーン範囲(例えば1.4〜1.6)内に設定するリーン燃焼モードとに切り換え自在に構成されている。
【0003】
又、エンジンから排出される排ガス中の有害成分を浄化するために、エンジンからの排ガスが通流する排気路に三元触媒が排ガスの通過が自在に設けられ、又、三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段も設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
つまり、ストイキ燃焼モードは、リーン燃焼モードに比べて高出力が得られ、リーン燃焼モードは、ストイキ燃焼モードに比べて高効率が得られるので、エンジン負荷が大きい領域では、エンジンがストイキ燃焼モードで運転され、逆に、エンジン負荷が小さい領域では、エンジンがリーン燃焼モードで運転される。
【0004】
そして、燃焼室から排出される排ガスには、CO(一酸化炭素)及びHC(炭化水素)が含まれるが、ストイキ燃焼モードでは、燃焼室に吸気される混合気中に燃焼熱を奪う空気が少ないため、燃焼室での燃焼温度が高くなって排ガスの温度が高くなるので、排ガスにはNOx(窒素酸化物)が比較的多く含まれる。
一方、リーン燃焼モードでは、燃焼室に吸気される混合気中には燃焼熱を奪う空気が多くなるので、エンジンがストイキ燃焼モードで運転される場合に比べて、燃焼室での燃焼温度が低くなって排ガスの温度が低くなり、その結果、燃焼室から排出される排ガスに含まれるNOxは少ない。
そして、エンジンがストイキ燃焼モードで運転されるときは、三元触媒において、排ガスに含まれるNOxが還元されると共にCO及びHCが酸化されることになり、NOx、CO及びHCが同時に除去される。
一方、エンジンがリーン燃焼モードで運転されるときは、三元触媒において、主に、CO及びHCが酸化されて除去されることになり、又、排ガスには元々NOxが殆ど含まれていないので、NOxは排出量が規定値以下に抑えられる。
【0005】
ところで、エンジンの運転中に、三元触媒の温度が異常に上昇する場合がある。例えば、エンジンがストイキ燃焼モードで運転されていて排ガスの温度が高い状態で、排ガス中の酸化性成分と還元性成分との釣り合いが崩れて、還元性成分、即ち、CO及びHCが多くなると、CO及びHCが三元触媒で反応して三元触媒の温度が異常に上昇する。
そこで、上記の特許文献1には記載されてないが、三元触媒の過熱による劣化を抑制するために、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度以上になると、強制的にエンジンの出力を低下させる又はエンジンを停止すべくスロットルバルブを制御する出力低下処理を実行するように構成されている。
そして、その出力低下処理の実行後、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなると、エンジンの出力を低下前の出力に上昇させる又はエンジンを再起動すべくスロットルバルブを制御する出力復帰処理を実行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−28066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエンジンシステムでは、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって出力低下処理が実行された場合、自然冷却によって三元触媒の温度が下がって、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなると、出力復帰処理が実行されることになる。
しかしながら、自然冷却によって、三元触媒の温度が過熱防止用設定温度以上の温度から過熱防止用設定温度よりも低い温度にまでに低下するには、長い時間がかかるので、従来のエンジンシステムでは、出力低下処理が実行された後、出力復帰処理が実行されるまでに長時間かかり、エンジンシステムの出力を安定化する上で改善の余地があった。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエンジンシステムは、吸気路を通してエンジンの燃焼室に吸気される混合気の吸気量を調整するスロットルバルブと、前記吸気路に供給される燃料の供給量を調整して、前記燃焼室に吸気される混合気の空気過剰率を調整する燃料供給弁と、前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、その三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、エンジン負荷に応じて、前記エンジンの出力を調整し、且つ、前記エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記空気過剰率を前記ストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切り換えるべく、前記燃料供給弁及び前記スロットルバルブを制御する制御手段とを備え、その制御手段が、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記三元触媒の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になると、前記エンジンの出力を低下させる又は前記エンジンを停止すべく前記スロットルバルブを制御する出力低下処理を実行し、その出力低下処理の後、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記過熱防止用設定温度よりも低くなると、前記エンジンの出力を低下前の出力に上昇させる又は前記エンジンを再起動すべく前記スロットルバルブを制御する出力復帰処理を実行するように構成されたものであって、
第1特徴構成は、前記制御手段が、前記出力低下処理を実行したときは、前記スロットルバルブを開き且つ前記燃料供給弁を閉じた状態で、前記エンジンの起動用の起動用モータを作動させるクランキング処理を実行するように構成されている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって出力低下処理が実行されたときは、スロットルバルブを開き且つ燃料供給弁を閉じた状態で、起動用モータを作動させるクランキング処理が実行される。
そのクランキング処理では、スロットルバルブが開き且つ燃料供給弁が閉じた状態で、起動用モータによりエンジンのクランクシャフトが回転させられるので、吸気路を通して空気が吸気されて、その吸気された空気が燃焼室から排気路に排出されて三元触媒を通過するので、その空気によって三元触媒が強制的に冷却される。
これにより、三元触媒の温度が過熱防止用設定温度以上の温度から過熱防止用設定温度よりも低い温度にまで低下するのが速められるので、出力復帰処理が実行されるまでの時間を短縮することができる。
従って、出力低下処理が実行されても、その実行後、出力復帰処理が実行されるまでの時間間隔を短くすることができるので、出力の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供することができるようになった。
【0011】
第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記制御手段が、前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換えるときに前記出力低下処理を実行した場合に、前記クランキング処理を実行するように構成されている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときに、触媒温度検出手段の検出温度が過熱防止用設定温度以上になって出力低下処理が実行されると、クランキング処理が実行される。
【0013】
つまり、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときは、以下に説明する理由により、三元触媒の温度が異常に上昇し易い。
即ち、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときには、エンジン負荷の低下に応じて、スロットルバルブにより燃焼室への混合気の吸気量が減少調整されると共に、燃料供給弁により、空気過剰率をリーン範囲内に増大変更すべく燃料の供給量が減少調整される。
このとき、例えば、混合気の吸気量の減少調整における減少率に比べて、燃料の供給量の減少調整における減少率が相対的に小さくなり易いので、排ガスの温度が高い状態で、排ガス中の酸化性成分と還元性成分との釣り合いが崩れて、還元性成分(CO及びHC)が多くなり易く、三元触媒の温度が異常に上昇し易い。
【0014】
しかも、エンジン負荷の低下に基づくストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードへの切り換えは、比較的高い頻度で行われる場合がある。
従って、従来のエンジンシステムでは、上述のように、出力低下処理が比較的高い頻度で行われると、出力低下処理が実行される度に、出力復帰処理が実行されるまでに長時間かかるので、エンジンシステムの出力の不安定性が一層顕著であった。
【0015】
そこで、本特徴構成のように、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えらえるときに出力低下処理が実行されると、クランキング処理が実行されるようにすると、出力低下処理が比較的高い頻度で行われても、各出力低下処理の後、速やかに出力復帰処理が実行される。
従って、出力の安定性をより一層向上することができるようになった。
【0016】
第3特徴構成は、上記第1又は第2特徴構成に加えて、
前記制御手段が、前記クランキング処理において、前記起動用モータを断続的に作動させるように構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、クランキング処理では、起動用モータが断続的に作動されて、空気が吸気路を通して断続的に吸気されるので、空気が断続的に三元触媒を通過する。
そして、空気が三元触媒を通過するときには三元触媒が効果的に冷却され、空気の通流が中断されるときには、三元触媒に残留している余り昇温していない空気によって三元触媒が効果的に冷却されるので、三元触媒の温度を比較的速やかに過熱防止用設定温度よりも低い温度にまで低下させることができて、出力復帰処理が実行されるまでの時間間隔を短くすることができる。
しかも、起動用モータを断続運転させるので、起動用モータの過熱を防止して耐久性の低下を回避することができる。
従って、起動用モータの耐久性の低下を回避しながら、出力低下処理が実行された後、出力復帰処理が実行されるまでの時間間隔を短くして、出力の安定性を向上することができるようになった。
【0018】
第4特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれか1つに加えて、
前記制御手段が、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記加熱防止用設定温度よりも低くなるまで、前記クランキング処理を実行するように構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、触媒温度検出手段の検出温度が加熱防止用設定温度よりも低くなるまで、クランキング処理が実行されるので、三元触媒の温度を極力速やかに過熱防止用設定温度にまで低下させることができて、出力復帰処理が実行されるまでの時間間隔を極力短くすることができる。ちなみに、クランキング処理では、起動用モータを連続的に作動させても良いし、断続的に作動させても良い。
従って、出力低下処理が実行された後、出力復帰処理が実行されるまでの時間を極力短縮して、出力の安定性を極力向上することができるようになった。
【0020】
第5特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれか1つに加えて、
前記エンジンにて駆動される圧縮機を有する圧縮式ヒートポンプ回路が設けられ、
前記エンジンに、前記圧縮式ヒートポンプにかかる空調負荷に応じたエンジン負荷がかかるように構成されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、エンジンを作動させると、そのエンジンにより圧縮機が駆動されて圧縮式ヒートポンプが作動し、冷房や暖房等の空調運転が行われる。
そして、空調負荷が低下するのに伴って、その空調負荷に応じたエンジン負荷が低下すると、エンジンの燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるが、そのときに出力低下処理が実行されても、クランキング処理が実行されるので、出力復帰処理が実行されるまでの時間間隔を短くすることができる。
従って、出力低下処理が実行されても、その実行後、出力復帰処理が実行されるまでの時間間隔を短くすることができるので、出力の安定性を向上し得るエンジン駆動式のヒートポンプシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】エンジン駆動式のヒートポンプシステムの全体構成を示すブロック図
【図2】制御動作のフローチャートを示す図
【図3】制御動作のフローチャートを示す図
【図4】制御動作のフローチャートを示す図
【図5】燃焼モード切換時のタイムチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、エンジンシステムは、混合気Mを燃焼室2で圧縮して燃焼させて駆動力を出力するエンジン1、そのエンジン1にて駆動される圧縮機31を有する圧縮式ヒートポンプ回路30、及び、エンジン負荷に応じてエンジン1の出力を制御する制御手段としての制御装置20等を備えて、エンジン駆動式のヒートポンプシステムとして構成されている。
【0024】
エンジン1の燃焼室2には、混合気Mを吸引する吸気路3、及び、エンジン1から排出される排ガスEが通流する排気路4が接続されている。
吸気路3には、混合器5を介して、天然ガス系都市ガス等の燃料ガスGを供給する燃料供給路6が接続されている。
そして、吸気路3の端部から吸気される空気Aと燃料供給路6から供給される燃料ガスGとが混合器5で混合されて、その混合気Mが吸気路3を通して燃焼室2に吸気され、燃焼室2において、その混合気Mが圧縮されると共に圧縮状態で点火プラグ(図示省略)にて点火されて燃焼・膨張することにより、クランクシャフト7が回転されて駆動力が出力され、燃焼により発生した排ガスEが排気路4を通して排気される。つまり、このエンジン1は、通常の4サイクル式に構成されている。
更に、このエンジン1には、クランクシャフト7にギア連結されて、バッテリ(図示省略)駆動によりクランクシャフト7を強制的に回転させてエンジン1を起動させるセルモータ8(起動用モータに相当する)、及び、クランクシャフト7の回転速度、即ち、エンジン1の回転速度を検出する回転速度センサ9が設けられている。
セルモータ8は、制御装置20により制御され、回転速度センサ9の検出情報は、制御装置20に入力されるように構成されている。
【0025】
燃料供給路6には、吸気路3に供給される燃料ガスGの供給量を調整して、燃焼室2に給気される混合気Mの空気過剰率を調整する燃料供給弁10が設けられ、吸気路3には、吸気路3を通して燃焼室2に吸気される混合気Mの吸気量を調整するスロットルバルブ11が設けられている。
排気路4には、排ガスEの酸素濃度を検出する酸素濃度センサ12、排ガスが通過自在な三元触媒13、及び、その三元触媒13を出た直後の排ガスEの温度を三元触媒13の温度として検出する触媒温度検出手段としての触媒温度センサ14が夫々設けられている。
燃料供給弁10及びスロットルバルブ11は、制御装置20により制御され、酸素濃度センサ12の検出情報、及び、触媒温度センサ14の検出情報は、夫々、制御装置20に入力されるように構成されている。
尚、酸素濃度センサ12は、排気路4において三元触媒13の上流側の箇所に設けられ、触媒温度センサ14は、排気路4において三元触媒13の下流側の箇所に設けられている。
排ガスEの酸素濃度を検出する酸素濃度センサとして、排気路4における三元触媒13の上流側に設けた酸素濃度センサ12に加えて、排気路4における三元触媒13の下流側の箇所に設けて、その酸素濃度センサの検出情報も制御装置20に入力されるように構成しても良い。
又、触媒温度センサ14は、三元触媒13の内部に設けても良い。
【0026】
圧縮式ヒートポンプ回路30には、圧縮機31に加えて、室外空気熱交換器32、室内機33及び膨張弁34、並びに、圧縮機31にて圧縮された冷媒の送出先を室外空気熱交換器32側と室内機33側とに切り換える四方弁35等を備えて構成されている。尚、室内機33及び膨張弁34は、空調対象空間内に設置される室内ユニットUiに装備され、室内機33及び膨張弁34以外の部材、即ち、エンジン1、圧縮機31、室外空気熱交換器32及び四方弁35等は、空調対象空間外に設置される室外ユニットUeに装備される。
圧縮機31は、動力伝達機構40によってエンジン1に伝動連結され、エンジン1の軸動力により圧縮機31を駆動して冷媒を圧縮することにより、後述するように、冷房運転や暖房運転等の空調運転を行うように構成されている。
動力伝達機構40は、エンジン1のクランクシャフト7に固定されたエンジン側プーリ41と、圧縮機31の駆動軸31aにクラッチ手段としての電磁クラッチ42を介して連結された圧縮機側プーリ43と、それらエンジン側プーリ41と圧縮機側プーリ43とにわたって巻回されたベルト44等を備えて構成されている。
電磁クラッチ42は、制御装置20により制御される。つまり、制御装置20により電磁クラッチ42のオンオフが切り換えられ、その電磁クラッチ42のオンオフの切り換えにより、エンジン1と圧縮機31との伝動連結が断続されて、エンジン1にエンジン負荷がかかる状態とエンジン負荷がかからない状態とに切り換えられるように構成されている。
【0027】
圧縮式ヒートポンプ回路30を冷房運転するときには、図1に実線で示すように、圧縮機31の吐出側が室外空気熱交換器32に接続され且つ圧縮機31の流入側が室内機33に接続されるように、四方弁35が切り換えられる。このように四方弁35が切り換えられると、圧縮機31にて圧縮された高温高圧の冷媒蒸気が室外空気熱交換器32にて放熱して凝縮し、その凝縮した冷媒液が膨張弁34を通過して低温低圧化して室内機33に流入して、その室内機33にて吸熱蒸発し、その蒸発した冷媒蒸気が圧縮機31に戻るといった形態で、冷媒がヒートポンプ回路30を循環することになる。
そして、室内機33において冷媒液が吸熱して蒸発する際に発生する冷熱を利用して、空調対象空間の冷房等を行うように構成される。
【0028】
一方、圧縮式ヒートポンプ回路30を暖房運転するときには、図1に破線で示すように、圧縮機31の吐出側が室内機33に接続され且つ圧縮機31の流入側が室外空気熱交換器32に接続されるように、四方弁35が切り換えられる。このように四方弁35が切り換えられると、圧縮機31にて圧縮された高温高圧の冷媒蒸気が室内機33にて放熱して凝縮し、その凝縮した冷媒液が膨張弁34を通過して低温低圧化して室外空気熱交換器32に流入して、その室外空気熱交換器32にて吸熱蒸発し、その蒸発した冷媒蒸気が圧縮機31に戻るといった形態で、冷媒がヒートポンプ回路30を循環することになる。
そして、室内機において冷媒蒸気が放熱して凝縮する際に発生する温熱を利用して、空調対象空間の暖房等を行うように構成される。
【0029】
つまり、上述のように、圧縮機31が動力伝達機構40によってエンジン1に伝動連結されることで、エンジン1には、圧縮式ヒートポンプ回路30の空調負荷に応じたエンジン負荷がかかることになる。
そして、制御装置20は、エンジン負荷、即ち、空調負荷に応じて、エンジン1の出力を調整し、且つ、空調負荷に応じて、燃焼室2で燃焼する混合気Mの空気過剰率をストイキ範囲内(例えば、1.0程度)に設定するストイキ燃焼モードと燃焼室2で燃焼する混合気Mの空気過剰率をストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内(例えば、1.4〜1.6)に設定するリーン燃焼モードとにエンジン1の燃焼モードを切り換えるべく、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11を制御するように構成されている。
【0030】
又、制御装置20は、触媒温度センサ14の検出温度が三元触媒13の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になると、スロットルバルブ11を閉じて燃焼室2への混合気Mの吸気を停止することにより、エンジン1を停止し、そのエンジン1の停止後、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなると、エンジン1を再起動するように構成されている。
つまり、この第1実施形態では、出力低下処理として、エンジン1を停止する処理を実行し、出力復帰処理として、エンジン1を再起動する処理を実行するように構成されている。
【0031】
説明を加えると、図示を省略するが、このエンジン駆動式のヒートポンプシステムのリモートコントローラには、空調目標温度を設定する温度設定部が備えられ、又、空調対象空間の温度を検出する室温センサが設けられている。これら温度設定部の設定情報及び室温センサの検出情報が制御装置20に入力されるように構成され、制御装置20は、温度設定部にて設定される空調目標温度と室温センサにて検出される空調対象空間の温度との偏差を空調負荷として求めるように構成されている。
【0032】
そして、エンジン1の目標回転速度として、空調負荷が所定負荷以上の定格負荷領域に対応して、ストイキ側回転速度範囲が設定され、空調負荷が所定負荷よりも小さい部分負荷領域に対応して、ストイキ側回転速度範囲よりも小さいリーン側回転速度範囲が設定されている。又、空調負荷が定格負荷領域のときは、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードに設定され、空調負荷が部分負荷領域のときは、エンジン1の燃焼モードがリーン燃焼モードに設定される。
【0033】
そして、制御装置20は、空調負荷が定格負荷領域のときは、空調負荷に応じて目標回転速度をストイキ側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がストイキ範囲内の空気過剰率に応じて設定されたストイキ側目標濃度(例えば、略ゼロ)になるように燃料ガスGの供給量を調整すべく、燃料供給弁10の開度を調整し、並びに、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が空調負荷に応じた目標回転速度になるように混合気Mの吸気量を調整すべく、スロットルバルブ11の開度を調整する。
【0034】
又、制御装置20は、空調負荷が部分負荷領域のときは、空調負荷に応じて目標回転速度をリーン側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン範囲内の空気過剰率に応じて設定されたリーン側目標濃度になるように燃料ガスGの供給量を調整すべく、燃料供給弁10の開度を調整し、並びに、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が空調負荷に応じた目標回転速度になるように混合気Mの吸気量を調整すべく、スロットルバルブ11の開度を調整する。
【0035】
三元触媒13は、例えば、アルミナ等の無機担体に白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分を担持して構成され、酸化性成分と還元性成分とがつりあった状態の理論当量比の排ガスEが通過することで、その排ガスEに含まれるNOx、CO及びHCの排出物を同時に除去するように構成されている。
つまり、エンジン1がストイキ燃焼モードで運転されるときは、排ガスEが三元触媒13を通過すると、その排ガスEに含まれるNOxが還元されると共に、CO及びHCが酸化されることになり、NOx、CO及びHCが同時に除去される。
一方、エンジン1がリーン燃焼モードで運転されるときは、排ガスEが三元触媒13を通過すると、主に、CO及びHCが酸化されて除去されることになり、又、排ガスEには元々NOxが殆ど含まれていないので、NOxは排出量が規定値以下に抑えられることになる。
【0036】
そして、三元触媒13の温度が異常に上昇する場合があるので、その三元触媒13の過熱による劣化を防止するために、上述のように、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になるとンジン1を停止し、その停止後、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなるとエンジン1を再起動するように、制御装置20が構成されているのである。
【0037】
そして、本発明は、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になってエンジン1が停止されると、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度よりも低くなってエンジン1が再起動されるまでの時間間隔を短くするようにしたものである。
つまり、制御装置20が、出力低下処理を実行したときは、スロットルバルブ11を開き且つ燃料供給弁10を閉じた状態で、セルモータ8を作動させるクランキング処理を実行するように構成されている。
【0038】
この実施形態では、制御装置20が、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときに出力低下処理を実行した場合に、クランキング処理を実行するように構成されている。
又、制御装置20が、クランキング処理において、セルモータ8を断続的に作動させるように構成されている。
更に、制御装置20が、触媒温度センサ14の検出温度が加熱防止用設定温度よりも低くなるまで、クランキング処理を実行するように構成されている。
【0039】
クランキング処理においてセルモータ8を断続的に作動させるに当たって、セルモータ8を作動させるためのクランキング用設定時間Hcが設定され、セルモータ8の作動を中断するための中断用設定時間Hwが設定されている。つまり、クランキング処理では、クランキング用設定時間Hcの間作動させ、中断用設定時間Hwの間停止させる形態で、セルモータ8が断続的に作動されることになる。
【0040】
制御装置20は、所定のコンピュータプログラムを実行することにより、上述のエンジン1の出力制御、燃焼モードの切換制御及びクランキング処理等を実行するように構成されている。
以下、制御装置20の制御動作について、説明を加える。
【0041】
先ず、エンジン1の出力制御及び燃焼モードの切換制御における全体の制御動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、本願における燃焼モード選択と三元触媒13の過熱防止を行うための基本的な制御である。
触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上か否かを判定して、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低い場合は、空調負荷が定格負荷領域か部分負荷領域かを判定する(ステップ#1,2)。
ステップ#2で空調負荷が定格負荷領域であると判定すると、空調負荷に応じて目標回転速度をストイキ側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がストイキ側目標濃度になると共に、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整して、リターンする(ステップ#3,4)。
つまり、燃焼モードがストイキ燃焼モードのときは、そのストイキ燃焼モードが継続されると共に、エンジン1の回転速度が空調負荷に応じた回転速度になるように回転速度調整が行われ、燃焼モードがリーン燃焼モードのときは、燃焼モードがストイキ燃焼モードに切り換えられると共に、エンジン1の回転速度が空調負荷に応じた回転速度になるように回転速度調整が行われることになる。
【0042】
ステップ#2で空調負荷が部分負荷領域であると判定すると、ステップ#5で現時点の燃焼モードがストイキ燃焼モードか否かを判定して、現時点の燃焼モードがストイキ燃焼モードでない、即ち、リーン燃焼モードのときは、空調負荷に応じて目標回転速度をリーン側回転速度範囲内で定めて、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン側目標濃度になると共に、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整して、リターンする(ステップ#6,7)。つまり、リーン燃焼モードが継続されると共に、エンジン1の回転速度が空調負荷に応じた回転速度になるように回転速度調整が行われることになる。
又、ステップ#5で、現時点の燃焼モードがストイキ燃焼モードであると判定すると、後述するように、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるストイキ→リーン切換処理を実行する(ステップ#8)。
【0043】
ステップ#1で、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上であると判定すると、スロットルバルブ11を閉じて燃焼室2への混合気Mの吸気を停止することにより、エンジン1を停止し、その後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、セルモータ8を作動させてエンジン1を再起動する再起動処理を実行して、リターンする(ステップ#9〜11)。
制御装置20は、図2に示すフローチャートに基づく制御動作を、予め設定されたサイクル時間で繰り返し実行する。
【0044】
ちなみに、ステップ#11のエンジン再起動処理では、セルモータ8を作動させた状態で、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がエンジン停止前に設定されていた燃焼モードに応じた値になり、且つ、混合気Mの吸気量が所定の起動用吸気量になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整し、セルモータ8を停止させても回転速度センサ9にてエンジン1の回転が検出されて、エンジン1の起動が確認されると、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がエンジン停止前に設定されていた燃焼モードに応じた値になり、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度が目標回転速度になるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整する。
【0045】
次に、エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるストイキ→リーン切換処理について、説明する。
制御装置20は、空調負荷が定格負荷領域から部分負荷領域に変化して、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオフにしてエンジン1にエンジン負荷がかからないようにし、且つ、エンジン1の回転速度をストイキ燃焼モードに対応するストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン燃焼モードに対応するリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、電磁クラッチ42をオンにしてエンジン1にエンジン負荷をかけるように構成されている。
ちなみに、この実施形態では、切換用回転速度Raは、ストイキ側回転速度範囲の下限値に設定されている。
【0046】
次に、図3及び図4に示すフローチャート及び図5に示すタイムチャートに基づいて、ストイキ→リーン切換制御における制御動作を説明する。このフローチャートは、本願において、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になってエンジン1が停止されたときにエンジン1が再起動されるまでの時間間隔を短くするための制御である。ちなみに、図5において、(a)は、エンジン1の回転速度R及びトルク夫々の時間経過に伴う変動を示し、(b)は、触媒温度センサ14の検出温度Tの時間経過に伴う変動を示し、(c)は、混合気Mの空気過剰率の時間経過に伴う変動を示す。
【0047】
図3に示すように、先ず、制御装置20は、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオフにした後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならないかを監視しながら、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度をストイキ側目標濃度に維持し、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Raになるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整する(ステップ#21〜24)。ちなみに、ΔRは微小な値に設定される。つまり、燃焼モードがストイキ燃焼モードに維持される状態で、エンジン1の回転速度が切換用回転速度Raに調整される。
【0048】
触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならない状態で、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが切換用回転速度Ra±ΔRの範囲に入ると 触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならないかを監視しながら、酸素濃度センサ12にて検出される排ガスEの酸素濃度がリーン側目標濃度になり、且つ、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rpになるように、燃料供給弁10及びスロットルバルブ11の開度を調整する(ステップ#25〜27)。
触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上にならない状態で、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度Rが目標回転速度Rp±ΔRの範囲に入ると、電磁クラッチ42をオンして(ステップ#28)、リターンする。
【0049】
ステップ#23で触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上になると、スロットルバルブ11を閉じてエンジン1を停止する(ステップ#29)。
エンジン1の停止後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、セルモータ8を作動させて再起動処理を実行し、電磁クラッチ42をオンにした後(ステップ#30,31,28)、リターンする。
【0050】
ステップ#26で触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上になると、スロットルバルブ11を閉じてエンジン1を停止した後、図4に示すフローチャートに基づいて、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるまでクランキング処理を実行し(ステップ#32、33)、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、セルモータ8を作動させて再起動処理を実行し、電磁クラッチ42をオンにした後(ステップ#34,28)、リターンする。
尚、ステップ#31,34のエンジン再起動処理の制御動作は、ステップ#11のエンジン再起動処理と同様である。
【0051】
クランキング処理では、図4に示すように、燃料供給弁10を閉弁し、且つ、スロットルバルブ11の開度をその開度調整範囲における最大開度に調整した状態で、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるかを監視しながら、セルモータ8の作動開始時からの経過時間Hがクランキング用設定時間Hcに達するまで、回転速度センサ9にて検出されるエンジン1の回転速度がクランキング用回転速度Rcになるようにセルモータ8を作動させる(ステップ#41〜44)。
【0052】
クランキング用設定時間Hcの間、セルモータ8を作動させても、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くならないときは、セルモータ8を停止した後、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるかを監視しながら、セルモータ8の停止後の経過時間Hが中断用設定時間Hwに達するまで待機する。
中断用設定時間Hwの間、待機しても、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くならない場合は、ステップ#42に戻って、再び、セルモータ8を作動させる。
このように、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるかを監視しながら、クランキング用設定時間Hcの間作動させ、中断用設定時間Hwの間停止させる形態で、セルモータ8が断続的に作動される。
【0053】
そして、ステップ#43で、セルモータ8の作動中に触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、セルモータ8を停止した後(ステップ#48)、リターンし、ステップ#46で、セルモータ8の停止中に触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなると、リターンする。
【0054】
図5のタイムチャートに示すように、混合気Mの空気過剰率がストイキ範囲内(例えば1)に維持された状態で、エンジン1の回転速度Rがストイキ側回転速度範囲の下限値に設定される切換用回転速度Raに低下されても、三元触媒13の温度Tは、エンジン1がストイキ燃焼モードで運転される状態での通常の温度近辺に維持される。
そして、その状態で、混合気Mの空気過剰率がリーン範囲内(例えば1.6)に変更されて、燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられると、三元触媒13の温度が上昇する。そして、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Ts以上になると、エンジン1が停止される。
【0055】
本発明では、このようにエンジン1が停止されると、上述のように、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるまでクランキング処理が実行される。
そして、クランキング処理が実行されると、スロットルバルブ11が開かれ且つ燃料供給弁10が閉じられた状態で、セルモータ8によりエンジン1のクランクシャフト7が回転させられるので、吸気路3を通して空気Aが吸気されて、その吸気された空気Aが燃焼室2から排気路4に排出されて三元触媒13を通過するので、その空気Aによって三元触媒13が強制的に冷却される。
【0056】
図5においては、クランキング処理が実行された場合の触媒温度センサ14の検出温度Tの変動を実線で示し、クランキング処理が実行されない場合の触媒温度センサ14の検出温度Tの変動を破線で示す。クランキング処理が実行されることにより、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるまでの時間を短縮できることが分かる。
この実施形態では、セルモータ8をクランキング用設定時間Hcの間作動させる処理を3回繰り返した後、中断用設定時間Hw待機している間に、触媒温度センサ14の検出温度Tが過熱防止用設定温度Tsよりも低くなるので、エンジン1がリーン燃焼モードで再起動される。従って、エンジン1の燃焼モードがストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えられるときにエンジン1が停止されても、三元触媒13の温度Tが過熱防止用設定温度Tsにまで低下するのが速められるので、エンジン1が再起動されるまでの時間を短縮することができる。
【0057】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) 制御装置20を構成するに、上記の実施形態では、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときに出力低下処理を実行した場合に、クランキング処理を実行するように構成したが、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときに実行した出力低下処理に限らず、出力低下処理を実行すると、必ずクランキング処理を実行するように構成しても良い。
【0058】
(ロ) 上記の実施形態では、クランキング処理において、セルモータ8を断続的に作動させるように構成したが、セルモータ8を連続的に作動させるように構成しても良い。
【0059】
(ハ) 上記の実施形態では、触媒温度センサ14の検出温度が加熱防止用設定温度よりも低くなるまで、クランキング処理を実行するように構成したが、触媒温度センサ14の検出温度に関係なく、予め設定した設定時間の間、クランキング処理を実行するように構成しても良い。ちなみに、この設定時間は、例えば、触媒温度センサ14の検出温度が加熱防止用設定温度以上になってエンジン1が停止されてから、触媒温度センサ14の検出温度が加熱防止用設定温度よりも低くなるまでに要すると考えられる時間よりも多少短い時間に設定する。
【0060】
(ニ) エンジン1の燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるための制御形態は、上記の実施形態で説明した制御形態、即ち、燃焼モードをストイキ燃焼モードに維持した状態で、電磁クラッチ42をオフにし、且つ、エンジン1の回転速度を切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整し、続いて、電磁クラッチ手段42をオンする制御形態に限定されるものではない。
例えば、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、先ず、燃焼モードをストイキ燃焼モードに維持し且つ電磁クラッチ42をオンに維持した状態で、エンジン1の回転速度を切換用回転速度に調整した後、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整する制御形態でも良い。
【0061】
あるいは、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるタイミングになると、電磁クラッチ42をオンに維持した状態で、即、燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換え、且つ、エンジン1の回転速度をリーン側回転速度範囲の回転速度に調整する制御形態でも良い。
【0062】
(ホ) 上記の実施形態では、触媒温度センサ14の検出温度が過熱防止用設定温度以上になったときに実行する出力低下処理として、エンジン1を停止するように構成したが、エンジン1の回転速度を低下させてエンジン1の出力を低下させるように構成しても良い。
このようにエンジン1の回転速度を低下させるときの低下目標回転速度は、エンジン1の安定運転が可能な条件で極力低速に設定して、排ガス量を極力少なくすることにより、三元触媒13の温度が極力速く低下するようにする。
この場合の出力復帰処理は、エンジン1の回転速度を低下前の回転速度に戻すことにより、エンジン1の出力を低下前の出力に上昇させるように構成することになる。
【0063】
(ヘ) 燃焼モードをストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードに切り換えるときに、電磁クラッチ42をオフにする制御動作を実行するタイミングは、エンジン1の回転速度をストイキ側回転速度範囲の下限値又はその下限値に近い値に設定される切換用回転速度に調整する制御動作の前でも後でも良い。
【0064】
(ト) 本発明を適用可能なエンジンシステムの具体例は、上記の実施形態の如きエンジン駆動式のヒートポンプシステムに限定されるものではなく、種々の構成のエンジンシステムに適用可能である。
例えば、エンジン1にて駆動される発電機を有するエンジン駆動式の熱電併給システムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、出力の安定性を向上し得るエンジンシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン
2 燃焼室
3 吸気路
4 排気路
8 セルモータ(起動用モータ)
10 燃料供給弁
11 スロットルバルブ
13 三元触媒
14 触媒温度センサ(触媒温度検出手段)
20 制御装置(制御手段)
30 圧縮式ヒートポンプ回路
31 圧縮機
E 排ガス
G 燃料
M 混合気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気路を通してエンジンの燃焼室に吸気される混合気の吸気量を調整するスロットルバルブと、前記吸気路に供給される燃料の供給量を調整して、前記燃焼室に吸気される混合気の空気過剰率を調整する燃料供給弁と、前記エンジンからの排ガスが通流する排気路に排ガスが通過自在に設けられた三元触媒と、その三元触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、エンジン負荷に応じて、前記エンジンの出力を調整し、且つ、前記エンジン負荷に応じて、前記燃焼室で燃焼する混合気の空気過剰率をストイキ範囲内に設定するストイキ燃焼モードと前記空気過剰率を前記ストイキ範囲よりも大きいリーン範囲内に設定するリーン燃焼モードとに前記エンジンの燃焼モードを切り換えるべく、前記燃料供給弁及び前記スロットルバルブを制御する制御手段とを備え、
その制御手段が、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記三元触媒の過熱を防止するための過熱防止用設定温度以上になると、前記エンジンの出力を低下させる又は前記エンジンを停止すべく前記スロットルバルブを制御する出力低下処理を実行し、その出力低下処理の後、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記過熱防止用設定温度よりも低くなると、前記エンジンの出力を低下前の出力に上昇させる又は前記エンジンを再起動すべく前記スロットルバルブを制御する出力復帰処理を実行するように構成されたエンジンシステムであって、
前記制御手段が、前記出力低下処理を実行したときは、前記スロットルバルブを開き且つ前記燃料供給弁を閉じた状態で、前記エンジンの起動用の起動用モータを作動させるクランキング処理を実行するように構成されているエンジンシステム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記燃焼モードを前記ストイキ燃焼モードから前記リーン燃焼モードに切り換えるときに前記出力低下処理を実行した場合に、前記クランキング処理を実行するように構成されている請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記クランキング処理において、前記起動用モータを断続的に作動させるように構成されている請求項1又は2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記触媒温度検出手段の検出温度が前記加熱防止用設定温度よりも低くなるまで、前記クランキング処理を実行するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記エンジンにて駆動される圧縮機を有する圧縮式ヒートポンプ回路が設けられ、
前記エンジンに、前記圧縮式ヒートポンプにかかる空調負荷に応じたエンジン負荷がかかるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207578(P2012−207578A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73452(P2011−73452)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】