説明

エンジン作業機

【課題】
本発明の目的は、ストップスイッチをエンジン停止状態からエンジン始動状態にしないままエンジンを始動させようとした時に発生する点火プラグ濡れなどによるエンジン始動不具合を回避できる携帯型エンジン動力作動機を提供すること。
【解決手段】
電流発生装置、ストップスイッチ及びアースにより構成される回路上にストップスイッチがエンジン停止状態であることを作業者に通知する報知手段を設け、作業者がスタータを引く動作によりクランク軸が回転すると、電流発生装置に発生した電流が報知手段を駆動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型エンジン作業機の始動に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンを用いた作業機として、チェンソー、刈払機、ブロワ、発電機などが知られている。
【0003】
このようなエンジンを用いた作業機においてエンジンを始動するためには、図2にあるようにエンジンを停止するためのストップスイッチがエンジン始動状態1bの状態にしてからスタータ装置を例えば複数回引くことによりクランク軸端に連結されたフライホイールマグネトを回転させ、電流発生装置2で発生した一次電流7をイグニッションコイル3の一次コイルに一気に流すあるいは一気に遮断することで、イグニッションコイル3の二次コイルに二次電流8が流れ点火プラグ4に火花が発生し、エンジンを始動させることができる。また停止する際には図3に示すようにストップスイッチをエンジン停止状態1aにすることにより、電流発生装置2で発生した一次電流7をアース5に流すことでエンジンを停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−144834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエンジン作業機においては、エンジン始動時にストップスイッチをエンジン停止状態1aからエンジン始動状態1bにしなくともリコイルスタータを引くことができ、ストップスイッチがエンジン停止状態1aであることに気付かずにリコイルスタータを引き続けると、点火プラグ4が点火しない状態でシリンダ内に燃料を供給し続けてしまい、点火プラグ4の電極が燃料により濡れ且つシリンダ内が燃料で満たされてしまうという問題があった。この状態では点火プラグ4を外して乾燥させ、またシリンダ内に溜まった燃料を排出するなどの処置を行わないとエンジンが始動しないため作業者に負担となっていた。
また、エンジン作業機にバッテリ等を取り付けた場合、長期間の保管を行うことが多い状況では常に容量が十分な状態で保っておくことが難しかった。
【0006】
本発明はかかる問題点を鑑みてなされたものであり、始動時の作業者の負担を軽減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係るエンジン作業機は、エンジンと、前記エンジンを始動するためのスタータと、前記エンジンの停止状態を保持するストップスイッチと、を備え、前記エンジンの内部に電流発生装置を有しているエンジン工具において、前記ストップスイッチの状態を作業者に知らせる報知手段を有し、前記報知手段は、前記電流発生装置によって発生する電力を用いて動作することを特徴とする。
【0008】
また、前記エンジンは、回転動作する出力軸と、前記出力軸に一体的に回転するよう接続されたフライホイールとを有し、前記電流発生装置は、前記フライホイールに設けられた磁性体と、前記フライホイール周辺に設けられた点火コイルとを有し、前記フライホイールの回転時に前記磁性体と前記点火コイルとが近接・離間することにより、電力を発生させるようにしてもよい。
【0009】
また、前記ストップスイッチは、前記電流発生装置とアースとを接続する回路を備え、前記電流発生装置で発生した電流をアースに逃がすことによりエンジンを停止状態に保持するものであり、前記報知手段は、前記回路上に配置されているようにしてもよい。
【0010】
また、前記報知手段は、発光体であってもよい。
【0011】
更に、前記報知手段は、警告音を発生するブザー装置であってもよい。
【0012】
また、前記報知手段は、前記ストップスイッチより前記スタータに近い位置に配設されていることが好ましい。





































【発明の効果】
【0013】
エンジン内部の発電機を利用した、ストップスイッチの状態報知手段を用いることで、始動時の作業者の負担を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジン工具の全体図
【図2】本発明の実施形態に係るエンジン工具のストップスイッチが停止状態び状態の回路図。
【図3】本発明の実施形態に係るエンジンの電流発生装置の外観図。
【図4】従来技術におけるエンジン始動または運転時を示す回路図。
【図5】従来技術におけるエンジン停止時を示す回路図。
【図6】本発明の別の実施形態に係るエンジン工具のストップスイッチが停止状態の状態の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るエンジン工具について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンを駆動源として搭載した刈払機を示す外観図、図2は本発明の実施形態に係るエンジンの電流発生装置及び点火プラグ付近の回路図、図3は本発明の実施形態に係るエンジンの電流発生装置の外観図である。
【0017】
携帯式エンジン刈払機の一般的な構造は、図示しないドライブシャフトを内蔵する長尺パイプ11の一端にエンジン20、他端に刈刃取付部12及び回転刈刃13を配したものとなっている。長尺パイプ11の軸方向中間位置には作業者が刈払機を保持して作業を行うためのハンドルが取り付けられ、ハンドルの把持部には図示しない燃料供給機構と接続されたスロットルレバー10と、OFFの状態で点火プラグの動作を遮断することでエンジンを停止状態に保持するストップスイッチ1が配設されている。また、エンジン20の回転刈刃13の反対側には、作業者がスタータハンドルを引くことでクランク軸を手動で回転させ、エンジンの始動を行うスタータ装置9が取り付けられている。
【0018】
電流発生装置2は、クランクシャフト14に連結されたマグネトロータ15及びこのロータ15に対置された点火コイル3付きの固定子17により構成されている。マグネトロータ15には、一つの磁石18が両側を磁極片19で挟まれて固定されており、磁石18の回転軸芯に対称な位置にはマグネトロータ15のバランスをとるためのカウンターウェイトが取付けられている。固定子17には、一次と二次からなる点火コイル3が巻回されており、マグネトロータ15に対置されている(本明細書においては巻線と、巻線が巻回される鉄心を含めて点火コイル3と呼ぶ)。このマグネトロータ15が回転すると、対置された点火コイル3を含む固定子17の前面を、マグネトロータ15の所定の位置に取り付けられた磁石18が、エンジン20の圧縮工程の適切な時期に横切ってその点火コイル3に電圧を誘起させる。これにより一次コイル3に生じた電流の相互誘導作用によって、2次コイルが高電圧となり、点火プラグ4に放電し、点火プラグ4をスパークさせる。
【0019】
電流発生装置2と一次コイル側の回路には、電流発生装置2とアース5とを接続することで点火プラグ4を動作させないようにし、エンジンを停止状態に保持するための、ストップスイッチ1が設けられている。ストップスイッチ1は接続状態でエンジン停止状態1a、非接続状態でエンジン始動状態1bとして扱われる。電流発生装置2とストップスイッチ1の間には、発光体6を設けられており、ストップスイッチ1がエンジン停止状態1aの状態で、電流発生装置2によって電流が発生した際に発生する電流で発光可能に直列に配置されている。
【0020】
本構成によれば、ストップスイッチ1がエンジン停止状態1aでリコイルスタータを引くと電流発生装置2により発生した一次電流7はストップスイッチ1aを通ってアース5へと流れるが、その回路上に設けた発光体6にも電流が流れることで発光する。作業者はその発光によりストップスイッチ1がエンジン停止状態1aであることを認識し、ストップスイッチ1をエンジン停止状態1aから始動状態1bにした後に再度エンジンの始動動作を行うことが可能となる。
【0021】
以上の実施形態に係るエンジン作業機によれば、エンジン20と、エンジン20を始動するためのスタータ9と、エンジン20の停止状態を保持するストップスイッチ1と、を備え、エンジン20の内部に電流発生装置2を有しているエンジン工具において、ストップスイッチ1の状態(エンジン停止状態1a若しくはエンジン始動状態1b)を作業者に知らせる報知手段6を有し、報知手段6は、電流発生装置2によって発生する電流7を用いて動作するようにしたことにより、ストップスイッチ1をエンジン停止状態1aからエンジン始動状態1bにしないままエンジン20を始動させようとした時に発生する点火プラグ4の濡れなどによるエンジン始動不具合の発生を抑制できる。
【0022】
また、エンジン20は、回転動作する出力軸14と、出力軸に一体的に回転するよう接続されたマグネトロータ15とを有し、電流発生装置2は、マグネトロータ15に設けられた磁性体18と、マグネトロータ15周辺に設けられた点火コイル3とを有し、マグネトロータ15の回転時に磁性体18と点火コイル3とが近接・離間することにより、電流7を発生させることができるようにしたことで、エンジン20の駆動に用いている電流発生装置2を利用して報知手段6を駆動することができる。
【0023】
また、ストップスイッチ1は、電流発生装置2とアース5とを接続する回路を備え、電流発生装置2で発生した電流をアース5に逃がすことによりエンジン20を停止状態1aに保持するものであり、報知手段6は、回路上に配置されているようにしたことで、簡単な構成で報知手段6を構成することができる。
【0024】
また、報知手段6は、発光体としたことにより、騒音の激しい場所でも、作業者にストップスイッチ1の状態を知らせることができる。
【0025】
また、報知手段6は、警告音を発生するブザー装置であることにより、日中、ランプ等が見えにくい環境においても、作業者にストップスイッチ1の状態を知らせることができる。
【0026】
前記報知手段6は、ストップスイッチ1よりスタータ9に近い位置に配設されているため、始動動作を行う作業者に近い位置で、報知手段6が動作することが可能となる。
【0027】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本願では刈払機について説明したが、他の小型エンジンを用いる携帯用工具においても同様に適用できる。
【0028】
例えば、本発明では報知手段として発光体6を用いたが、警告音を発生するブザー装置であっても良い。これによれば、周囲が明るい状況であり発光体6の視認性が低下する状況であっても、良好に作業者がストップスイッチの状態を認識することが可能となる。尚、この場合、図5の第二の実施形態にて示すように、第一の実施形態における発光体6を置き換えるようにブザー装置16を配置してもよいし、発光体6と並列に配置して両方による報知手段としてもよい。
【0029】
また、電流発生装置2から報知手段6までの回路上には、電流発生装置2により発生した瞬間的な電流を平滑化する手段が設けられていてもよく、これによれば発生した一次電流7が流れる時間が短かくても、報知手段6に十分な時間だけ電力を供給することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:ストップスイッチ
1a:ストップスイッチのエンジン停止状態
1b:ストップスイッチのエンジン始動状態
2:電流発生装置
3:イグニッションコイル
4:点火プラグ
5:アース
6:発光体
7:一次電流
8:二次電流
9:スタータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンを始動するためのスタータと、
前記エンジンの停止状態を保持するストップスイッチと、を備え、
前記エンジンの内部に電流発生装置を有しているエンジン工具において、
前記ストップスイッチの状態を作業者に知らせる報知手段を有し、
前記報知手段は、前記電流発生装置によって発生する電力を用いて動作することを特徴とするエンジン工具。
【請求項2】
前記エンジンは、回転動作する出力軸と、
前記出力軸に一体的に回転するよう接続されたフライホイールとを有し、
前記電流発生装置は、前記フライホイールに設けられた磁性体と、
前記フライホイール周辺に設けられた点火コイルとを有し、
前記フライホイールの回転時に前記磁性体と前記点火コイルとが近接・離間することにより、電力を発生させることを特徴とする請求項1に記載のエンジン工具。
【請求項3】
前記ストップスイッチは、前記電流発生装置とアースとを接続する回路を備え、前記電流発生装置で発生した電流をアースに逃がすことによりエンジンを停止状態に保持するものであり、
前記報知手段は、前記回路上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジン工具。
【請求項4】
前記報知手段は、発光体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載のエンジン工具。
【請求項5】
前記報知手段は、警告音を発生するブザー装置であることを特徴とする請求項1若しくは請求項4に記載のエンジン工具。
【請求項6】
前記報知手段は、前記ストップスイッチより前記スタータに近い位置に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載のエンジン工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−174828(P2010−174828A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20546(P2009−20546)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】