説明

エンジン回転速度表示装置

【課題】エンジンがダメージを受ける可能性が高い状態と低い状態とを区別して適切にレッドゾーンの範囲を表示する。
【解決手段】エンジン回転速度が限界に近い領域であることを表すレッドゾーンを表示するレッドゾーン表示部S11と、検出されたエンジン回転速度が所定以上の時に、前記エンジンにかかる負担の大きさを自動的に識別し、前記エンジンにかかる負担の大きさに応じて前記レッドゾーンに関する表示形態を自動的に切り替えるレッドゾーン表示切り替え部S17とを備える。クラッチの接続有無と、エンジン回転速度が閾値Rthを超えた状態の継続時間との少なくとも一方を検出してエンジンの負担の大きさを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に搭載され、前記車両を駆動するエンジンの回転速度を逐次検出し、検出されたエンジン回転速度の情報をリアルタイムで可視表示するエンジン回転速度表示装置に関し、特にレッドゾーン表示のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の計器板上には、現在のエンジン回転速度(rpm)を表示するタコメータが搭載されている場合が多い。また、タコメータの文字板の目盛りの上限に近い箇所には、通常は赤い色で着色されたレッドゾーンと呼ばれる領域が設けられている。
【0003】
このようなタコメータのレッドゾーンは、エンジンの限界回転速度を表すために設けられている。すなわち、エンジン回転速度がレッドゾーンに入った状態で運転を行っているとエンジンの破壊に繋がる可能性がある。従って、運転者は必要に応じてタコメータの指示値を参照して、エンジン回転速度がなるべくレッドゾーンに入らないように注意しながら運転操作を行うことになる。
【0004】
また、タコメータのレッドゾーンは当然のことながら車両に搭載されたエンジンの形式や仕様の違いなどに応じて変化する。例えば、SOHCエンジン、DOHCエンジン、DOHCターボエンジン等のエンジン形式の違いによって、レッドゾーンのエンジン回転速度が例えば5000rpm以上、6000rpm以上、7000rpm以上のように変化する。
【0005】
そこで、例えば特許文献1においては、形式の異なるエンジンを搭載した様々な車両に対して共通のタコメータを使用可能にする技術を開示している。具体的には、レッドゾーンの表示範囲を複数の表示部に分割し、それぞれの表示部を実際のレッドゾーンに割り当てるかどうかを複数個の発光ダイオードの照明光のオンオフによって切り替えている。また、対象車種やエンジン形式の違いに対応して、コネクタ端子の接続状態を変更してレッドゾーンを切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−336127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来のタコメータにおいては、レッドゾーンの範囲を必ずしも適切に表示しているとは言えない。つまり、一般的なタコメータにおいては、該当する車両の通常の走行状態を想定し、搭載したエンジンの仕様に合わせてレッドゾーンの範囲を予め決定してあるので、通常の走行状態とは異なる状態では、レッドゾーンの範囲が適切とは言えない場合もある。
【0008】
例えば、運転者が車両の駆動系に備わっているクラッチを非接続の状態にしたままアクセルを踏み込んでエンジン回転速度を上げたような場合には、エンジンの出力軸に駆動系が接続されていないので、エンジンにかかる負荷は非常に小さくなる。従って、この場合は通常の走行状態で想定したレッドゾーンの範囲までエンジン回転速度を上げても、エンジンがダメージを受ける状態は生じにくい。従って、この場合はレッドゾーンの範囲が適切とは言えない。
【0009】
また、クラッチを接続状態にして車両を運転している状態であっても、短時間だけに限れば、エンジン回転速度をレッドゾーンの範囲まで上げたとしても問題は生じないのが普通である。従って、例えばサーキット場でレース走行を行うモータースポーツ愛好家やレーサーのように、車両やエンジンの特性を熟知している運転者の場合には、エンジンに大きな負担がかからない範囲で、エンジン回転速度をレッドゾーンの範囲まで上げるような運転操作を行う場合が多い。従って、この場合も運転者から見てレッドゾーンの範囲が適切であるとは限らない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンがダメージを受ける可能性が高い状態と低い状態とを区別して適切にレッドゾーンの範囲を表示することが可能なエンジン回転速度表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係るエンジン回転速度表示装置は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 車両に搭載され、前記車両を駆動するエンジンの回転速度を逐次検出し、検出されたエンジン回転速度の情報をリアルタイムで可視表示するエンジン回転速度表示装置であって、
エンジン回転速度が限界に近い領域であることを表すレッドゾーンを表示するレッドゾーン表示部と、
検出されたエンジン回転速度が所定以上の時に、前記エンジンにかかる負担の大きさを自動的に識別し、前記エンジンにかかる負担の大きさに応じて前記レッドゾーンに関する表示形態を自動的に切り替えるレッドゾーン表示切り替え部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載のエンジン回転速度表示装置であって、
前記レッドゾーン表示切り替え部は、検出されたエンジン回転速度が所定以上の時に、前記車両の駆動系を接続するクラッチの状態と、経過時間の長さとの少なくとも一方を監視して、前記エンジンにかかる負担の大きさを自動的に識別すること。
(3) 上記(1)に記載のエンジン回転速度表示装置であって、
前記レッドゾーン表示切り替え部は、前記エンジンにかかる負担の大きさに応じて、前記レッドゾーンの表示に関する表示色の色相、明度、彩度の少なくとも1つを自動的に切り替えること。
(4) 上記(1)に記載のエンジン回転速度表示装置であって、
前記レッドゾーン表示部は、グラフィック表示画面上に表示されるエンジン回転数目盛り上の予め定めた範囲の領域を、前記レッドゾーンとして、他の領域とは異なる表示形態でグラフィック表示すること。
【0012】
上記(1)の構成のエンジン回転速度表示装置によれば、ユーザは検出されたエンジン回転速度と表示されるレッドゾーンの表示形態との関係から、エンジンにかかる負担の大きさをある程度把握することが可能である。つまり、エンジンがダメージを受ける可能性が高い状態か否かを区別できるので、ユーザから見て適切な状態でレッドゾーンを表示できる。
上記(2)の構成のエンジン回転速度表示装置によれば、エンジンにかかる負担の大小を自動的に識別できる。すなわち、クラッチが接続されていない状態であれば、エンジン回転速度が所定以上の高速であっても負荷が小さいのでダメージを受ける可能性が低い。また、クラッチが接続されている時にエンジン回転速度が所定以上の高速になったとしても、その状態がごく短時間だけであれば、ダメージを受ける可能性が低い。
上記(3)の構成のエンジン回転速度表示装置によれば、ユーザはレッドゾーンの表示色の違いによりエンジンにかかる負担の大小を容易に識別できる。
上記(4)の構成のエンジン回転速度表示装置によれば、グラフィック表示により前記レッドゾーンを表示するので、レッドゾーンの表示色など表示形態を容易に変更できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエンジン回転速度表示装置によれば、車両に搭載されたタコメータの文字板上で、エンジンがダメージを受ける可能性が高い状態と低い状態とを区別して適切にレッドゾーンの範囲を表示することが可能になる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のエンジン回転速度表示装置のレッドゾーン表示制御を表すフローチャートである。
【図2】図1に示した制御の変形例を表すフローチャートである。
【図3】実施形態のエンジン回転速度表示の状態遷移の具体例を示す正面図である。
【図4】図1に示したエンジン回転速度表示装置を含むメータパネル表示装置のハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のエンジン回転速度表示装置に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
本実施形態におけるエンジン回転速度表示装置のレッドゾーン表示制御の概要が図1に示されており、本実施形態のエンジン回転速度表示の状態遷移の具体例が図3に示されている。また、図1に示した制御の変形例が図2に示されている。
【0018】
本実施形態のエンジン回転速度表示装置は、例えば図4に示すような構成のメータパネル表示装置10の一部分として車両のダッシュボードに配置され、エンジン回転計32としてこの車両のエンジン回転速度(rpm:一般的にはエンジン回転数と呼ばれる)の実測値を常時表示する。
【0019】
図4に示すように、メータパネル表示装置10は読み出し専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)11、インタフェース12、インタフェース13、CPU電源部14、マイクロコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)20、グラフィックコントローラ21、フレームメモリ22、Xドライバ23、Yドライバ24、LCD(Liquid Crystal Display)電源部25、および液晶表示器(TFT−LCD:Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)26を備えている。
【0020】
マイクロコンピュータ20は、予め用意されたプログラムを実行し、メータパネル表示装置10の機能を実現するために必要な様々な処理を行う。例えば、図1や図2に示した処理もマイクロコンピュータ20が実行する。
【0021】
読み出し専用メモリ11は、マイクロコンピュータ20が実行するプログラムの内容や予め用意された固定データなどを保持している。例えば、図1のステップS13やS16でマイクロコンピュータ20が参照する閾値を表す固定データを読み出し専用メモリ11上に保持しておいても良い。
【0022】
インタフェース12は、車両側のイグニッションスイッチの状態を表す信号(IGN+)をマイクロコンピュータ20に入力する。
【0023】
インタフェース13は、マイクロコンピュータ20と車両側の各種制御装置(ECU:Electric Control Unit)との間で通信を行うために利用される。具体的には、車速、エンジン回転速度、燃料残量、冷却水温、クラッチ接続の有無等の現在の様々な車両状態を表すデータが、ほぼリアルタイムのデータとして車両側からマイクロコンピュータ20に入力される。
【0024】
CPU電源部14は、車両側のプラス側電源ライン(+B)から供給される直流電力を入力してマイクロコンピュータ20の動作に必要な直流電圧(Vcc)を生成する。また、必要に応じてリセット信号を生成したり、マイクロコンピュータ20から出力されるスリープ信号に従って電力供給を抑制するための動作も行う。
【0025】
液晶表示器26は、液晶デバイスにより構成された多数の微小表示セルをX方向およびY方向に並べて配置されたカラーの二次元表示画面を有している。多数の微小表示セルの表示状態をセル毎に個別に制御することにより、二次元表示画面上に図形、文字、画像等の所望の情報をグラフィック表示することができる。
【0026】
液晶表示器26の表示画面のY方向の走査位置は、Yドライバ24の出力により順次に切り替わる。Yドライバ24は、グラフィックコントローラ21から出力される垂直同期信号に同期して、Y方向の走査位置を順次に切り替える。
【0027】
Xドライバ23は、グラフィックコントローラ21から出力される水平同期信号に同期して液晶表示器26の表示画面のX方向の走査位置を順次に切り替える。また、Xドライバ23はグラフィックコントローラ21から出力されるRGB各色の画像データを走査位置の表示セルに与えて画面中の表示内容を制御する。
【0028】
グラフィックコントローラ21は、マイクロコンピュータ20から入力される様々な命令に従って、様々なグラフィック要素を液晶表示器26の画面上に表示する。実際には、画素毎の表示内容を保持するフレームメモリ22に対して、マイクロコンピュータ20又はグラフィックコントローラ21が表示データを書き込みグラフィックの描画を行う。また、液晶表示器26の画面を二次元走査するための垂直同期信号及び水平同期信号を生成し、これらの同期信号に同期したタイミングでフレームメモリ22上の該当するアドレスに格納されている表示データを液晶表示器26に与える。
【0029】
本実施形態では、表示用にフレームメモリ22に書き込まれる画像データは、種類毎に異なるレイヤのデータとして管理されている。すなわち、画像データは図4に示すウォーニング画像データD1、背景画像データD2、目盛表示画像データD3、指針画像D4に区分され、それぞれ異なるレイヤに割り当ててある。
【0030】
LCD電源部25は、車両側のプラス側電源ライン(+B)から供給される直流電力を入力して、液晶表示器26の表示に必要とされる所定の直流電力を生成する。
【0031】
液晶表示器26の二次元画面表示によって、図4に示すようなグラフィック表示画面30が表示される。この例では、グラフィック表示画面30の中に、速度計31、エンジン回転計32、燃料計33、温度計34、および走行距離計35の各表示領域が設けられている。すなわち、速度計31の領域に車両の速度(km/h)が表示され、エンジン回転計32の領域にエンジン回転速度(rpm)が表示され、燃料計33の領域に燃料残量が表示され、温度計34の領域に冷却水温度が表示され走行距離計35の領域に車両の積算走行距離が表示される。
【0032】
また、本実施形態ではカラー表示が可能な液晶表示器26の画面上にグラフィック表示を行ってメータパネルの内容(30)の表示を実現するので、表示する各計器の表示形態を容易に変更できる。例えば、エンジン回転計32の目盛り上に表示するレッドゾーンの表示色の色相、明度、彩度等を容易に変更できる。
【0033】
本実施形態のエンジン回転速度表示装置は、メータパネル表示装置10のグラフィック表示画面30上に表示されるエンジン回転計32の表示を制御する。このエンジン回転計32における表示状態の遷移の具体例が図3に示されている。
【0034】
図3に示すように、エンジン回転計32にはグラフィック表示要素として目盛り32a、指針32bおよびレッドゾーン32cが含まれている。
【0035】
目盛り32aは、予め定めたエンジン回転計32の表示範囲(この例では0〜8000rpm)内を一定の数値毎に区切って決定した複数の代表位置のそれぞれについてエンジン回転速度の数値や区切り位置を可視情報として表す画像であり、目盛表示画像データD3に含まれている。
【0036】
指針32bは、エンジン回転計32の回転中心位置から円周方向に向かって延びる針状の画像パターンであり、指針画像D4に含まれている。すなわち、計測により得られた最新のエンジン回転速度に応じて、該当する目盛りの位置を指針32bの先端が指し示すような方向に向いた指針の画像パターンが描画される。
【0037】
レッドゾーン32cは、目盛り32aの表示範囲(この例では0〜8000rpm)の中で、エンジン回転速度の限界に近い領域を表す可視情報である。図3に示す例では、対象車両に搭載されるエンジンの形式や特性を考慮して、7000rpmを超える領域をレッドゾーンとして割り当ててある。
【0038】
本実施形態では、レッドゾーン32cの表示形態が2種類に変化する。すなわち、エンジン回転速度がレッドゾーンに到達していてもエンジンの負担が小さく、ダメージを受ける可能性が低い状態では、図3に示すエンジン回転計32Aのように、淡い赤色のレッドゾーン32c(A)が目盛り32a上の該当する領域に表示される。また、ダメージを受ける可能性が高い状態では、図3に示すエンジン回転計32Bのように、濃い赤色のレッドゾーン32c(B)が表示される。つまり、エンジンがダメージを受ける可能性の高低に応じて、エンジン回転計32に表示されるレッドゾーン32cの濃淡が切り替わる。この切替は、マイクロコンピュータ20が図1に示す処理を実行することにより自動的に行われる。
【0039】
なお、レッドゾーン32cの複数の表示形態の違いについては、濃淡に限らず、表示色の色相、明度、彩度のいずれか1つ又はこれらの組み合わせによる違いとして表示することもできる。あるいは、レッドゾーン32cの画像パターンを構成する多数の画素の表示密度やパターン形状を切り替えても複数種類の表示形態を表現できる。
【0040】
次に、図1に示すレッドゾーン表示制御について説明する。なお、図1に示す処理の他に、目盛り32aや文字板の背景を表示する処理や、測定により得られたエンジン回転速度に応じた向きに指針32bを表示する処理もマイクロコンピュータ20が必要に応じて、あるいは定期的に実行する。
【0041】
ステップS11では、マイクロコンピュータ20は、図3に示すエンジン回転計32Aのレッドゾーン32c(A)のように、レッドゾーン32cを淡い赤色の画像パターンにより表示する。また、後述するタイマが動作している場合はこれを停止して時間をクリアする。
【0042】
ステップS12では、マイクロコンピュータ20はインタフェース13を介して車両の状態を表す情報を入力し、最新のエンジン回転速度Rpおよびクラッチ接続有無の状態を検出する。
【0043】
ステップS13では、マイクロコンピュータ20はステップS12で検出したエンジン回転速度Rpを予め定めた閾値Rthと比較する。図3に示すような切り替え制御を行う場合には、閾値Rthとしてレッドゾーンの下限である7000rpmを採用することが想定される。「Rp>Rth」の条件を満たす場合は次のステップS14に進み、それ以外の場合はステップS11に戻る。
【0044】
ステップS14では、マイクロコンピュータ20はステップS12で検出したクラッチの状態が接続状態か否かを識別する。クラッチが接続状態であれば次のステップS15に進み、それ以外の場合はステップS11に戻る。
【0045】
ステップS15では、経過時間を計測するためにマイクロコンピュータ20が内部のタイマの動作をスタートする。なお、既にタイマがスタートしている時にはこの処理は省略する。
【0046】
ステップS16では、マイクロコンピュータ20がステップS15でスタートした内部タイマの計測時間を監視して、予め定めた時間を経過したか否かを識別する。この場合の時間の閾値については、現実的な代表例として「10秒間」を採用することが想定できる。この時間を経過すると次のステップS17に進み、経過していない時はステップS12に戻る。
【0047】
ステップS17では、マイクロコンピュータ20は、図3に示すエンジン回転計32Bのレッドゾーン32c(B)のように、レッドゾーン32cの表示を淡い赤色から濃い赤色の表示に切り替える。また、内部タイマの動作を停止して時間をクリアする。
【0048】
ステップS18では、マイクロコンピュータ20はインタフェース13を介して車両の状態を表す情報を入力し、最新のエンジン回転速度Rpを検出する。そして、最新のエンジン回転速度Rpと閾値Rthとを比較する。「Rp<Rth」の条件を満たす場合はステップS11に進み、それ以外の場合はステップS18の処理を繰り返す。
【0049】
従って、運転者のアクセル操作によってエンジン回転速度が上昇し、最新のエンジン回転速度がレッドゾーン(この場合は7000rpmを上回る範囲)に到達した場合であっても、クラッチが非接続状態である場合や、この状態の継続時間が所定時間以下である場合は、図3のレッドゾーン32c(A)のようにレッドゾーンを表す画像は淡い赤色で表示される。そして、クラッチが接続状態の時に、エンジン回転速度がレッドゾーンに到達し、この状態の継続時間が所定時間を超えると、図3のレッドゾーン32c(B)のようにレッドゾーンを表す画像は濃い赤色の表示に自動的に切り替わる。また、レッドゾーンが濃い赤色の表示に切り替わった後で、エンジン回転速度がレッドゾーン未満に低下するとレッドゾーンの表示は淡い赤色に自動的に切り替わる。
【0050】
つまり、エンジン回転速度が限界に近づき、レッドゾーンに到達したとしても、エンジン等がダメージを受ける可能性の低い状態であれば、レッドゾーンが淡い赤色で表示されるので、運転者は危険な状況ではないことを容易に認識できる。また、エンジン回転速度がレッドゾーンに到達し、かつエンジン等がダメージを受ける可能性の高い状態になると、レッドゾーンが濃い赤色で表示されるので、運転者は危険な状況であることを容易に認識でき、危険を回避するための操作、すなわちエンジン回転速度を下げる操作を行うことができる。
【0051】
なお、図1に示す処理においては、ステップS13とステップS18で同じ閾値Rthを参照しているが、互いに独立した閾値を割り当てても良い。例えば、ステップS18の閾値にRthよりも小さい値を割り当てれば、レッドゾーンの濃い色から淡い色への切り替えを遅らせることができる。
【0052】
図1に示したレッドゾーン表示処理においては、レッドゾーン32cの表示として2種類の濃度を自動的に選択する場合を想定しているが、図2に示す変形例においては、レッドゾーン32cの表示として多数の濃度を選択できる場合を想定している。
【0053】
すなわち、図2のステップS16で所定時間が経過したことを検出すると、次のステップS17Bで、マイクロコンピュータ20が時間の経過と共にレッドゾーン32cの表示の濃度を少しずつ変更し、淡い赤色の表示から濃い赤色の表示に徐々に切り替える。
【0054】
また、淡い赤色から濃い赤色への切替を行っている途中であっても、「Rp<Rth」の条件を満たすと、マイクロコンピュータ20の処理がステップS18からS11に戻るので淡い赤色の表示に切り替わる。
【0055】
なお、レッドゾーン32cの表示を濃い赤色から淡い赤色に切り替える場合の処理についても、ステップS17Bと同様に、徐々に表示の濃度を切り替えるように変更してもよい。
【0056】
いずれにしても、エンジン回転速度が限界に近づいた状態であっても、エンジン等がダメージを受ける可能性が高い状態と低い状態とが区別されて、自動的にレッドゾーン32cの表示形態が切り替わるので、運転者から見て適正な状態でレッドゾーンを表示できる。つまり、濃淡等の表示形態の違いにより、運転者はエンジン等がダメージを受ける可能性が高い運転状態か否かを容易に認識可能になる。
【0057】
以上のように、本発明のエンジン回転速度表示装置は、例えば自動車等の車両のメータパネルに搭載されるエンジン回転計(タコメータ)の表示として利用することが想定される。本発明を適用することにより、運転者はエンジン等がダメージを受ける可能性が高い運転状態か否かを容易に認識可能になる。
【符号の説明】
【0058】
10 メータパネル表示装置
11 読み出し専用メモリ
12,13 インタフェース
14 CPU電源部
20 マイクロコンピュータ
21 グラフィックコントローラ
22 フレームメモリ
23 Xドライバ
24 Yドライバ
25 LCD電源部
26 液晶表示器
30 グラフィック表示画面
31 速度計
32,32A,32B エンジン回転計
32a 目盛り
32b 指針
32c レッドゾーン
33 燃料計
34 温度計
35 走行距離計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両を駆動するエンジンの回転速度を逐次検出し、検出されたエンジン回転速度の情報をリアルタイムで可視表示するエンジン回転速度表示装置であって、
エンジン回転速度が限界に近い領域であることを表すレッドゾーンを表示するレッドゾーン表示部と、
検出されたエンジン回転速度が所定以上の時に、前記エンジンにかかる負担の大きさを自動的に識別し、前記エンジンにかかる負担の大きさに応じて前記レッドゾーンに関する表示形態を自動的に切り替えるレッドゾーン表示切り替え部と
を備えることを特徴とするエンジン回転速度表示装置。
【請求項2】
前記レッドゾーン表示切り替え部は、検出されたエンジン回転速度が所定以上の時に、前記車両の駆動系を接続するクラッチの状態と、経過時間の長さとの少なくとも一方を監視して、前記エンジンにかかる負担の大きさを自動的に識別する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転速度表示装置。
【請求項3】
前記レッドゾーン表示切り替え部は、前記エンジンにかかる負担の大きさに応じて、前記レッドゾーンの表示に関する表示色の色相、明度、彩度の少なくとも1つを自動的に切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転速度表示装置。
【請求項4】
前記レッドゾーン表示部は、グラフィック表示画面上に表示されるエンジン回転数目盛り上の予め定めた範囲の領域を、前記レッドゾーンとして、他の領域とは異なる表示形態でグラフィック表示する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン回転速度表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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