説明

エンジン駆動型発電機

【課題】分電盤を接続せずに発電機に直接負荷を接続した場合も保護協調等を可能としたエンジン駆動型発電機。
【解決手段】防音箱2内に三相交流の発電機本体G,該発電機を駆動するエンジン,他の構成機器を収容したエンジン駆動型発電機1において,前記防音箱の壁面に凹部形状を成す出力端子箱3を形成し,該端子箱内に三相出力端子41を備えた複数の負荷保護用しゃ断器40と,発電機側三相出力端子51を備えた三相出力端子台50及び切換器30を設ける。前記発電機Gからの回路を前記切換器30によって分岐した回路を択一的に前記発電機本体に接続可能とし,切換器30で分岐した一方の回路C1に前記三相端子台50を,他方の回路C2に前記負荷保護用しゃ断器40を並列に接続して,該しゃ断器40の三相出力端子41各々に負荷を接続可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,防音箱内に発電機本体と,この発電機本体を駆動するエンジン,その他の構成機器を収容したパッケージ型のエンジン駆動型発電機に関し,より詳細には,該エンジン駆動型発電機によって発生した電力を機外に出力するための出力部の構造に特徴を有するエンジン駆動型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機本体と,この発電機本体を駆動するためのエンジン,燃料タンク,その他必要な機器を防音箱内に収容してパッケージ化した可搬式のエンジン駆動型発電機は,工事現場やイベント会場,災害の被災地等において電力を得るために広く用いられている。
【0003】
このようなエンジン駆動型発電機1では,三相交流発電機である発電機本体Gによって発電された電力を,各種の作業機等である負荷に給電することができるように,防音箱2の一部に凹部を設けて出力端子箱3を形成し,この出力端子箱3内に三相出力端子台70を収容し,この三相出力端子台70に設けた三相出力端子71に電源ケーブルを接続することにより,電力を外部の機器に供給することができるように構成されている(図6及び図7参照)。
【0004】
そして,エンジン駆動型発電機1と負荷(L1〜L3)との接続,特に複数の負荷を接続する場合には,エンジン駆動型発電機と負荷との間に分電盤を設けて電力を分配供給することにより(特許文献1の図1参照),この分電盤によって,例えば短絡や地絡,その他の回路異常によって一部の回路に過電流が流れた際に,正常な回路に対する給電を維持しつつ,異常が生じている回路に対する給電を停止する保護協調を行うことができるものとしている。
【0005】
ここで,分電盤80には,一例として図8に示すように三相入力端子81aを備えた主しゃ断器81と,この主しゃ断器81より分岐した分岐回路にそれぞれ接続された複数の負荷保護用しゃ断器82が設けられており,エンジン駆動型発電機1の出力端子箱3内に設けた三相出力端子71と分電盤80の主しゃ断器82に設けた三相入力端子81a間を電源ケーブルによって接続すると共に,各負荷保護用しゃ断器82に設けた三相出力端子82aに,例えば水中ポンプ等の負荷(L1〜L3)を接続することにより,エンジン駆動型発電機1と負荷(L1〜L3)との接続が行われている。
【0006】
なお,エンジン駆動型作業機1の発電機本体Gと出力端子箱3内に設けた三相出力端子台70(三相出力端子71)間には,図9に示すように発電機保護用のしゃ断器60が設けられている。
【0007】
エンジン駆動型発電機1の発電機本体Gから,分電盤80の負荷保護用しゃ断器82に設けた三相出力端子82a迄の回路構成を示せば,図9に示す通りである。
【0008】
この回路構成において,エンジン駆動型発電機1に設けた発電機保護用しゃ断器60,分電盤80に設けた主しゃ断器81及び負荷保護用しゃ断器82は,それぞれの許容電流値が定められており,回路内を流れる電流値が各しゃ断器の許容電流値を越えると回路を遮断し,給電を停止するように構成されている。
【0009】
以上のように構成された分電盤80を例えば建築現場等に配置する場合には,図6に示すようにエンジン駆動型発電機1の設置位置の近傍に予め分電盤スタンド90を立設しておき,この分電盤スタンド90に対して分電盤80を固定することにより設置するのが一般的である。
【0010】
なお,このような方法により分電盤80を設置する場合には,移動等に際して分電盤スタンド90の移設作業が必要である等,その作業が繁雑であることに鑑み,分電盤80を,底部にキャスターが取り付けられた架台上に搭載して移動可能とした移動式分電盤も提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開2000−41339号公報
【特許文献2】特開平7−322429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述のエンジン駆動型発電機1を建築現場などで使用する場合,一旦,所定の場所にこれを設置した場合であっても,作業の進展に伴い設置場所を移動する必要が生じる場合も多い。
【0013】
このような移動に際し,分電盤スタンド90に分電盤80を取り付けている場合には,エンジン駆動型発電機1や分電盤80の移動のみならず,分電盤スタンド90の移設作業が必要である等,エンジン駆動型発電機1及び分電盤80の移動には多大な労力が費やされることとなる。
【0014】
一方,前出の特許文献2に記載の移動式分電盤にあっては,架台の底部にキャスタを設けたことから,分電盤の移動に際し,分電盤スタンドの移設作業を行う必要がない。
【0015】
しかし,エンジン駆動型発電機1の移動に際しては,エンジン駆動型発電機1に接続されている電源ケーブルを一旦,全て取り外す必要があり,そして移動が完了した後,再度,エンジン駆動型発電機1と分電盤80とを電源ケーブルによって接続する必要があるため,例え分電盤80を移動式のものとしたとしても,このような電源ケーブルの着脱という煩雑な作業を省略することはできない。
【0016】
しかも,移動,設置に際し,別体として構成されたエンジン駆動型発電機1と分電盤80は,それぞれ別個に移動,設置する作業が必要であり,移動に際して多大な労力が費やされると共に,エンジン駆動型発電機1と分電盤80それぞれの設置スペースを確保する必要があることから,比較的広い設置スペースが必要となる。
【0017】
そこで,本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,分電盤を接続することなく,エンジン駆動型発電機に設けた出力端子に対して直接,負荷を接続することができるエンジン駆動型発電機を提供することにより,分電盤の取り付けを不要とし,分電盤を取り付ける場合に生じていた移動,設置に際する労力の負担や比較的広い設置スペースの確保が必要である等の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型発電機1は,発電機本体Gと,該発電機本体Gを駆動するエンジンとを防音箱2内に収容したエンジン駆動型発電機1において,前記防音箱2の壁面に凹部を形成して出力端子箱3と成し,該出力端子箱3内に切換器30,三相出力端子台50,及び複数の負荷保護用しゃ断器40を収容し,
前記発電機本体Gの出力回路に前記切換器30を接続して該出力回路を分岐し,分岐された回路(C1,C2)のうちのいずれかを択一的に前記発電機本体Gに接続可能と成すと共に,前記切換器30によって分岐された一方の回路C1に前記三相端子台50を接続し,他方の回路C2に前記複数の負荷保護用しゃ断器40を並列に接続して,前記各負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41にそれぞれ負荷(L1〜L3)を接続可能としたことを特徴とする(請求項1)。
【0019】
前記構成のエンジン駆動型発電機1において,前記切換器30及び負荷保護用しゃ断器40の収容位置において前記出力端子箱3を覆うカバー(実施例において扉5)と,前記三相出力端子台50の収容位置において前記出力端子箱3を覆うカバー(実施例において端子台カバー4)を,それぞれ独立して開閉可能に設けるものとすることができる(請求項2)。
【0020】
更に,前記構成のエンジン駆動型発電機1において,前記カバーの一方(実施例において切換器30と負荷保護用しゃ断器40の収容部分を覆うカバー)を,前記防音箱2に設けた開口(実施例においてエンジンのエアフィルター点検用の開口6)を開閉する扉5の一部分によって形成するものとしても良い(請求項3)。
【0021】
なお,前記出力端子箱3は,これを前記防音箱2の側壁に形成し,該出力端子箱3内の高さ方向における所定位置よりも上方を前記切換器30及び負荷保護用しゃ断器40を収容する上段側収容部3xと成すと共に,前記所定位置よりも下方を前記出力端子台50を収容する下段側収容部3yとし,
前記出力端子箱3の奥行(d1,d2)を,前記上段側収容部3xの奥行d1に対し,前記下段側収容部3yの奥行d2が深くなるよう形成すると共に,前記出力端子箱3からのケーブルの引出口7を,前記出力端子箱3の下端3a側に設けるものとすることができる(請求項4)。
【0022】
この場合,前記下段側収容部3yに,単相出力用のコンセント8を設けるものとしても良く(請求項5),更にはこのコンセント8のスイッチレバーを同様に下段側収容部3yに設けるものとしても良い。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動型発電機1は,エンジン駆動型発電機1の出力端子(負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41)に直接,負荷(L1〜L3)を接続した場合であっても,負荷が接続された回路中,正常な回路に対しては給電を維持しつつ,異常が生じている回路に対して給電を停止する保護協調を可能とすることができた。
【0024】
その結果,このような保護協調等を行うために別途分電盤を接続する必要がなく,エンジン駆動型発電機1と分電盤間の煩雑な結線作業が不要となると共に,エンジン駆動型発電機1の移動を行う場合,エンジン駆動型発電機1のみを移動させれば良く,移動,設置等に際して負担する労力を大幅に軽減することができた。
【0025】
また,分電盤の設置スペースが不要となることから,設置スペースを減少することが可能となった。
【0026】
更に,切換器30によって複数の負荷保護用しゃ断器40を介した分配出力と,三相出力端子台50に設けた三相出力端子51を介した単一出力とが選択可能であることから,切換器30の操作によって従来通り単一の三相出力端子51を介した出力を行うことができる一方,負荷保護用しゃ断器40を介して出力を行う場合,単一出力用の三相出力端子51は三相交流発電機Gに接続されていない状態となることから,切換器30を分配出力側に切り換えた状態で負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41に対する結線作業中に作業者が誤って単一出力用の三相出力端子51に接触してしまった場合であっても,感電等の危険性を排除することができた。
【0027】
前記切換器30及び負荷保護用しゃ断器40の収容位置において前記出力端子箱3を覆うカバー5と,前記三相端子台50の収容位置において前記出力端子箱3を覆うカバー4をそれぞれ設け,各カバー毎に開閉可能とした本発明のエンジン駆動型発電機1にあっては,一方のカバーのみを開放した状態で結線作業等を行うことにより,作業者が他方のカバーで覆われた出力端子等に接触することを防止することができた。
【0028】
更に,このカバーの一方を,防音箱2に設けた点検窓6等の開口部を開閉する扉5の一部分によって形成することにより,部品の共用による部品点数の減少により構造を単純化して,製造,組み立て作業を容易なものとすることができた。
【0029】
出力端子箱3の奥行を,上段側収容部3xの奥行d1に対して下段側収容部3yの奥行d2が深くなるように形成した構成にあっては,上段側収容部3xに収容された負荷保護用しゃ断器40に接続された電源ケーブルが,下段側収容部3yに収容された機器,例えば三相出力端子台50の三相出力端子51や,下段側収容部3yに単相出力用のコンセント8やこのコンセント8のON,OFFを行うスイッチレバー等収容する場合には,前記コンセント8に差し込まれたプラグやスイッチレバー等と接触し難いものとすることができた。
【0030】
その結果,負荷保護用しゃ断器40に接続された電源コードが,これらの機器と接触することによる電源ケーブルの取り回しの悪化や,電源ケーブルとの接触によるプラグの脱落やスイッチレバーの誤動作の発生等を好適に防止することができた。
【0031】
また,奥行d1が浅く形成された上段側収容部3xでは,ここに収容された切換器30や負荷保護用しゃ断器40が,防音箱2の外側近くに配置されることとなるために,これらの機器に設けられたスイッチレバー等の操作が容易であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に,本発明の実施例につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0033】
図1において符号1は本発明のエンジン駆動型発電機であり,このエンジン駆動型発電機1は,三相交流発電機である発電機本体G,該発電機本体Gを駆動するエンジン等,エンジン駆動型発電機1の構成機器を収容する防音箱2を備えている。
【0034】
この防音箱2の壁面の所定位置には,防音箱2の内向きに陥没する凹部を形成し,この凹部によって出力端子箱3が形成されている。
【0035】
この出力端子箱3内には,切換器30,発電機本体Gの出力を分配出力するための複数(図示の例では3個)の負荷保護用しゃ断器40,及び,発電機本体Gからの出力を分配されていない単一の出力として取り出すための三相出力端子51を備えた出力端子台50が収容されている。
【0036】
このうちの切換器30は,図4に示すように発電機保護用しゃ断器60を介して三相交流発電機Gに接続されていると共に,この切換器30によって発電機本体Gの出力回路を分岐して,分岐された一方の回路C1を前述の三相端子台50に設けた三相出力端子51に接続すると共に,他方の回路C2より分岐された分岐回路C21〜C23のそれぞれに負荷保護用しゃ断器40を接続して,各負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41に負荷を接続することで,複数の負荷に対して分配された給電を行うことができるように構成されている。
【0037】
従って,切換器30の操作によって発電機本体Gの出力を,単一出力用の三相出力端子51,又は分配給電用の負荷保護用しゃ断器40に設けられた三相出力端子41のいずれかを介して選択的に取り出すことができるように構成されている。
【0038】
図2に示す実施形態にあっては,前述の出力端子箱3を防音箱2の側壁に形成し,この出力端子箱3の高さ方向における中央よりも下側に,前述した三相出力端子台50を配置すると共に,出力端子箱3の高さ方向における中央よりも上側に,前述の切換器30,及び負荷保護用しゃ断器40を水平方向に並べて配置している(図3参照)。
【0039】
そして,出力端子箱3内に収容された前記三相出力端子台50及びこの三相出力端子台50に設けた三相出力端子51の前面部分を覆うカバー(端子台カバー4)を設けると共に,切換器30及び負荷保護用しゃ断器40の前面を覆うカバー(扉5)をそれぞれ独立して開閉することができるように設けている。
【0040】
このうち,切換器30及び負荷保護用しゃ断器40の前面を覆うカバーは,防音箱2内に収容された機器を保守,点検するために防音箱2の側壁に設けた開口を開閉するための扉5の一部によって形成することができ(図2,3参照),図示の実施形態にあっては,出力端子箱3の上方位置において防音箱2の側壁に設けた,エアフィルタのメンテナンス用の窓6を開閉する扉5の下端部を延長して,出力端子箱3の上部前面位置を覆い,この扉5の開放によってメンテナンス用の窓6を開放した際に,出力端子箱3内に収容された切換器30及び負荷用しゃ断器40を外部より操作することができるように構成している。
【0041】
前述の端子台カバー4は,図示の例においてその上端側の一辺を防音箱2の側壁にヒンジ止めされて回動可能に構成されており,このヒンジ止めされた部分を中心として回動することにより,図2中に矢印で示すように回動して,出力端子箱3の下側部分の前面を覆い,又は開放することができるように構成されており,この端子台カバー4の回動によって出力端子箱3内に収容された三相出力端子51に対する結線作業等を容易に行うことができるように構成されている。
【0042】
この端子台カバー4は,図2に示すように,その下端4aが出力端子箱3の下端縁3aに対して所定の高さの高い位置となるように形成されており,この端子台カバー4の下端4aと,出力端子箱3の下端縁3aとの間に形成された間隔によって,電源ケーブルの引き出しスペースとなる引出口7が形成されている。
【0043】
従って,前述したように端子台カバー4を図2中矢印で示すように回動させることにより引出口7の開口幅を拡大することができ,これによりケーブル接続等の作業性を向上させることができるように構成されており,この引出口7を介して水中ポンプなどの負荷に接続される電源ケーブルが出力端子箱3内に引き込まれ,負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41に接続される。
【0044】
以上のように構成されたエンジン駆動型発電機1において,防音箱2の出力端子箱3内に収容されている切換器30は,図4に示すように発電機保護用しゃ断器60を介して三相交流の発電機本体Gに接続されており,また,切換器30によって分岐された一方の回路C1は,三相出力端子台50に設けた三相出力端子51に,他方の回路C2は,更にC21〜C23に分岐されてそれぞれ負荷保護用しゃ断器40に接続されている。
【0045】
このように,本発明のエンジン駆動型発電機にあっては,負荷保護用しゃ断器40と前記発電機本体G間の配線接続が,切換器30及び発電機保護用しゃ断機60を介して予め行われていることから,負荷用保護しゃ断機40に設けられた三相出力端子41に水中ポンプ等の負荷(L1〜L3)を接続すると共に,切換器30の操作によって三相交流発発電機Gと前記負荷保護用しゃ断器40間を接続することにより,負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41を介して負荷(L1〜L3)に給電を行うことができ,分電盤を別途設ける場合のように煩雑な配線作業を行う必要がない。
【0046】
このとき,水中ポンプ等の各負荷(L1〜L3)は,それぞれが負荷保護用しゃ断器40に接続されているために,それぞれ負荷が接続された回路中(C21〜C23)の1つに,短絡や地絡が生じる等の回路異常が生じることにより過電流が流れると,この異常があった回路に接続された負荷保護用しゃ断器40が該回路に対する給電を停止するが,異常が生じていない回路に接続された負荷保護用しゃ断器40は作動せずに負荷に対する給電を継続する。
【0047】
従って,上記構成を備えた本発明のエンジン駆動型発電機1にあっては,分電盤の接続を省略して,エンジン駆動型発電機1に設けた三相出力端子41に直接,負荷(L1〜L3)を接続した場合であっても保護協調を行うことができ,別途,分電盤を接続する作業が不要である。
【0048】
そのため,エンジン駆動型発電機1の設置,移動等に際しても,煩雑なエンジン駆動型発電機1と分電盤間の電源ケーブルの接続作業を行う必要がない。
【0049】
しかも,分電盤に対する接続が不要であることから,このような移動に際してエンジン駆動型発電機1のみを移動すれば良く,分電盤の移動や,分電盤の移動に伴う分電盤ポストの移設等の煩雑な作業が不要であると共に,エンジン駆動型発電機1と分電盤とを別個に設置する場合に比較して狭い設置スペース内に設置することが可能である。
【0050】
また,エンジン駆動型発電機1の出力端子箱3内には,接続される各負荷(L1〜L3)毎に負荷保護用しゃ断器40が設けられていることから,分電盤を別途接続しない場合であっても負荷保護用しゃ断器40のそれぞれに設けられているスイッチレバー42(図3参照)の操作により,各負荷(L1〜L3)毎に給電の開始,停止等の制御を行うことができ,結線を変更することなく必要な負荷のみを起動することができる。
【0051】
同様に,水中ポンプ等の負荷(三相交流モータ)の起動時,各負荷保護用しゃ断器40のスイッチレバー42を操作することによって負荷(L1〜L3)を順次起動することにより,起動時の必要電力を低く抑えることができ,同時起動する場合に比較して,エンジン駆動型発電機1の発電機容量を小さなものとすることができる。
【0052】
なお,本発明のエンジン駆動型発電機1にあっては,出力端子箱3内に三相出力端子台50と負荷保護用しゃ断器40の双方を設けていることから,例えばいずれかの負荷保護用しゃ断器40を介して負荷(L1〜L3)へ電力を供給している状態で,別の負荷保護用しゃ断器40の三相出力端子41に電源ケーブルを繋ぎ替えようとして引出口7から出力端子箱3内に手を入れて作業する場合等,作業中に発電機側三相出力端子51に手が触れるおそれがある。
【0053】
しかし,本発明のエンジン駆動型作業機1にあっては,前述のように切換器30を設け,発電機側三相出力端子51からの出力と,負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41からの出力を択一的に切り換えることができるように構成していることから,三相交流発電機Gが負荷保護用しゃ断機40側に接続されている際には,発電機側三相出力端子51側には給電が行われておらず,作業中に誤って発電機側三相出力端子51に触れてしまった場合であっても感電する危険性がない。
【0054】
このように,負荷保護用しゃ断器40に設けた三相出力端子41に対する結線作業中に,誤って発電機側三相出力端子51に接触した場合であっても感電を防止できる構成となっていることから,結線作業中等に手等が接触することを回避するために切換器30や負荷保護用しゃ断器40,三相出力端子台50等をそれぞれ離して配置する必要がなく,比較的狭い出力端子箱3内に負荷保護用しゃ断器40や切換器30,三相出力端子台50を収容した場合であっても安全性を確保することが可能である。
【0055】
その結果,このような出力端子箱3を防音箱2に設けた場合であっても,防音箱2,ひいてはエンジン駆動型発電機1のサイズを大型化することなく,エンジン駆動型発電機1に前述した各種の機能を負荷することができた。
【0056】
なお,図2を参照して説明したエンジン駆動型発電機1にあっては,防音箱2の側壁に形成した前述の出力端子箱3を,防音箱2の内方に向かって一定の奥行きで形成するものとして説明したが,この出力端子箱3は,一例として図5に示すように,出力端子箱3の高さ方向における略中心位置よりも上側に形成された収容部(上段側収容部3x)の奥行d1に対し,下側に形成された収容部(下段側収容部3y)の奥行d2が深くなるように形成するものとしても良い。
【0057】
このように形成された出力端子箱3において,上段側収容部3xに前述の切換器30及び負荷保護用しゃ段器40を収容し,一方,下段側収容部3yには三相出力端子台50を収容することにより,図5に示すように,上段側収容部3xに収容された負荷保護用しゃ断器40に接続された電源ケーブルが,三相出力端子台50に設けた三相出力端子51に接触し難くすることができる。
【0058】
また,負荷保護用しゃ断器40と,三相出力端子台50の双方に共に電源ケーブルを接続した場合であっても,両電源ケーブルは離間した状態で配置されることとなるために,両者が絡まり合って結線作業や結線状態の点検等を行う際の障害となることも防止できた。
【0059】
更に,スイッチレバーが設けられている切換器30や負荷保護用しゃ断器40は,奥行d1が浅く形成された上段側収容部3xに収容されていることから,切換器30や負荷保護用しゃ断器40を扉5側に近い位置に配置でき,切換器30や負荷保護用しゃ断器40に設けたスイッチレバーの操作が容易である。
【0060】
加えて,下段側収容部3yに,更に単相出力用のコンセント8等を設ける場合には,コンセント8に差し込まれたプラグが上段側収容部3xと下段側収容部3yとの境界部分に生じた段部3zの影に入って負荷保護用しゃ断器40に接続された電源ケーブルと接触することを防止でき,このような電源ケーブルとの接触によりプラグがコンセント8より抜け落ちる等の不都合を防止することができた。
【0061】
特に,下段側収容部3yにこのようなコンセント8のスイッチレバーを設ける場合,このスイッチレバーについても段部3zの影に入って負荷保護用しゃ段器40に接続した電源ケーブルと接触することを防止できることから,電源ケーブルとの接触により予期せぬスイッチのON,OFF等が生じることを防止でき安全である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】負荷を接続した状態のエンジン駆動型発電機の説明図。
【図2】防音箱の断面概略図。
【図3】出力端子箱の上半分部分の正面図(扉を開いた状態)。
【図4】発電機本体から出力端子までの配線図。
【図5】出力端子箱の変形例を示す防音箱の断面概略図。
【図6】従来のエンジン駆動型発電機に対する負荷の接続状態を示す説明図。
【図7】出力端子箱内の配置状態を示す説明図(端子カバーを開けた状態)。
【図8】分電盤の説明図(扉を開いた状態)。
【図9】発電機本体から分電盤の出力端子までの配線図。
【符号の説明】
【0063】
1 エンジン駆動型発電機
2 防音箱
3 出力端子箱
3a 下端縁(出力端子箱の)
3x 上段側収容部
3y 下段側収容部
3z 段部
4 端子台カバー
4a 下端(端子台カバーの)
5 扉
6 開口
7 引出口
8 コンセント(単相出力用)
30 切換器
40 負荷保護用しゃ断器
41 三相出力端子(負荷保護用しゃ断器)
42 スイッチレバー
50 三相出力端子台
51 三相出力端子(三相出力端子台の)
60 発電機保護用しゃ断器
70 三相出力端子台
71 三相出力端子
80 分電盤
81 主しゃ断器
81a 三相入力端子
82 負荷保護用しゃ断器
82a 三相出力端子
90 分電盤スタンド
G 発電機本体
C1,C2,C21〜C23 分岐回路
L1〜L3 負荷(水中ポンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機本体と,該発電機本体を駆動するエンジンとを防音箱内に収容したエンジン駆動型発電機において,
前記防音箱の壁面に凹部を形成して出力端子箱と成し,該出力端子箱内に切換器,三相出力端子台,及び複数の負荷保護用しゃ断器を収容し,
前記発電機本体の出力回路に前記切換器を接続して該出力回路を分岐し,分岐された回路のうちのいずれかを択一的に前記発電機本体に接続可能と成すと共に,前記切換器によって分岐された一方の回路に前記三相端子台を接続し,他方の回路に前記複数の負荷保護用しゃ断器を並列に接続して,前記各負荷保護用しゃ断器に設けた三相出力端子にそれぞれ負荷を接続可能としたことを特徴とするエンジン駆動型発電機。
【請求項2】
前記切換器及び負荷保護用しゃ断器の収容位置において前記出力端子箱を覆うカバーと,前記三相出力端子台の収容位置において前記出力端子箱を覆うカバーを,それぞれ独立して開閉可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項3】
前記カバーの一方を,前記防音箱に設けた開口を開閉する扉の一部分によって形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項4】
前記出力端子箱を前記防音箱の側壁に形成し,該出力端子箱内の高さ方向における所定位置よりも上方を前記切換器及び負荷保護用しゃ断器を収容する上段側収容部と成すと共に,前記所定位置よりも下方を前記出力端子台を収容する下段側収容部とし,
前記出力端子箱の奥行を,前記上段側収容部の奥行に対し,前記下段側収容部の奥行が深くなるよう形成すると共に,前記出力端子箱からのケーブルの引出口を,前記出力端子箱の下端側に設けたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項5】
前記下段側収容部に,単相出力用のコンセントを設けたことを特徴とする請求項4記載のエンジン駆動型発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−68693(P2010−68693A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235387(P2008−235387)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(391033115)株式会社カナモト (4)
【出願人】(000241795)北越工業株式会社 (86)
【Fターム(参考)】