説明

エンドレスベルトおよびその製造方法

【課題】画像形成装置において、長時間停止状態にされた場合であっても、再び使用したときに画像不良の発生を抑制し得るエンドレスベルトを提供すること。
【解決手段】本発明のエンドレスベルトは、平均膜厚が他部位よりも薄い薄肉部11aを有し、薄肉部11aの平均膜厚が厚肉部11bに比べて5%以上薄く形成された基材層11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスベルトに関する。特に、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置に用いられるエンドレスベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で像を形成記録する画像形成装置としては、複写機やレーザープリンタ、ビデオプリンタやファクシミリやこれらの複合機等が知られている。これらの装置では、記録用紙を搬送する搬送用ベルト、一次転写位置で転写されたトナー像を二次転写位置に搬送する転写ベルト、記録用紙を移動させながらその記録用紙上の未定着トナー像をその記録用紙上に定着させる定着ベルトが用いられている。これらのエンドレスベルトは優れた耐熱性および機械的強度が求められ、例えば、ポリイミド系樹脂で形成された内層とフッ素系樹脂で形成された外層とを備えるエンドレスベルトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年、画像形成装置は、高速化、低コスト化、コンパクト化が著しく進んでいる。なかでも装置のコンパクト化は、オフィス等の省スペース化と同時に輸送コストを抑えることができ、特に重要な課題となってきている。一方で、高速化を進めるために周長が長いエンドレスベルトを使用したいという要望がある。高速化を進め、かつ、コンパクト化を図るには、例えば、細い(曲率の高い)ロールを用いて周長の長いエンドレスベルトを張架して使用することになる。しかし、長期休暇等で装置を長時間使用しない間に、エンドレスベルトのロールに当たる部分が変形し(例えば、ロールの円弧形状が転写し)、再び使用したときに画像不良が生じるという問題がある。長時間使用されない場合、自動的にベルトを回動させて位置をずらす等の対策がとられている装置もあるが、電源を入れたままにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−80580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、画像形成装置において、長時間停止状態にされた場合であっても、再び使用したときに画像不良の発生を抑制し得るエンドレスベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンドレスベルトは、平均膜厚が他部位よりも薄い薄肉部を有し、該薄肉部の平均膜厚が厚肉部に比べて5%以上薄く形成された基材層を備える。
好ましい実施形態においては、上記薄肉部が周方向に複数形成されている。
好ましい実施形態においては、上記基材層が耐熱性樹脂で形成されている。
好ましい実施形態においては、上記耐熱性樹脂がポリイミド系樹脂である。
好ましい実施形態においては、表層を備え、該表層がフッ素系樹脂で形成されている。
好ましい実施形態においては、上記基材層と上記表層との間に形成された中間層を備え、該中間層がエラストマーで形成されている。
本発明の別の局面によれば、画像形成装置が提供される。この画像形成装置は、回動駆動するロールと、上記エンドレスベルトと、停止時に該エンドレスベルトの薄肉部がロールに当たるように位置決めする位置決め手段とを備える。
本発明のさらに別の局面によれば、エンドレスベルトの製造方法が提供される。1つの実施形態における製造方法は、下方から気体を流通させた円筒状の金型内で、下端部に環状のリップが形成された円筒状のダイスを上方に移動させながら、該リップから樹脂液を押し出して該金型内周面に樹脂液を塗布する工程を含み、該リップには他部位よりもリップ幅が5%以上狭い幅狭部が少なくとも一つ形成されている。
別の実施形態における製造方法は、回転する円筒状の金型の内周面に樹脂液を塗布する工程を含み、該樹脂液の粘度が50〜7500Psであり、該金型の周方向の所定位置の塗布量が他部位よりも5%以上少なくなるように調節して塗布する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエンドレスベルトを用いることにより、画像形成装置において長時間停止状態にされた場合であっても、再び使用したときに画像不良の発生を抑制することができる。具体的には、本発明のエンドレスベルトは、平均膜厚が他部位よりも薄い薄肉部を有し、当該薄肉部の平均膜厚が厚肉部に比べて5%以上薄い基材層を備える。このようなエンドレスベルトを用い、薄肉部にロールが当たった状態で画像形成装置を停止させることにより、薄肉部に張力が集中する。薄肉部は、他部位に比べて張力による変形が少なく、かつ、変形しても短時間で元の形状に回復する。このように、エンドレスベルト(基材層)の変形が抑制されることにより、画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるエンドレスベルトを示し、平均厚みの測定方法を説明するため概略図である。
【図2】図1の断面の部分拡大図である。
【図3】(a)は本発明の好ましい実施形態による基材層の断面図であり、(b)は本発明の別の好ましい実施形態による基材層の断面図である。
【図4】本発明の好ましい実施形態によるエンドレスベルトの製造方法を示す概略断面図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態によるエンドレスベルトの製造方法に用いられるダイスのリップ形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態には限定されない。
【0010】
A.エンドレスベルト
図1は本発明の好ましい実施形態によるエンドレスベルト10を示し、図2は図1の断面の部分拡大図である。エンドレスベルト10は、基材層11と基材層11の外周側に設けられた表層12と、基材層11と表層12との間に設けられた中間層13とを備える。図3(a)および(b)は、基材層11の断面図である。基材層11は、平均膜厚が他部位よりも薄い薄肉部11aを有する。薄肉部11aは軸方向に沿って溝状に形成されている。図3に示すように、薄肉部11aの断面形状は、厚肉部11bから膜厚が徐々に薄くなるように形成された傾斜状薄肉部とされている。薄肉部11aは、その平均膜厚が厚肉部11bに比べて5%以上薄い。エンドレスベルト10は、好ましくは、画像形成装置においてロールに張架されて用いられる。薄肉部11aにロールが当たった状態で画像形成装置を停止させると、薄肉部に張力が集中する。薄肉部は、他部位に比べて張力による変形が少なく、かつ、変形しても短時間で元の形状に回復する。このように、エンドレスベルト(基材層)の変形が抑制されることにより、画像不良の発生を抑制することができる。ここで、「平均膜厚」とは、図1の11cが示すように、軸方向に沿って5点以上で基材層の膜厚を計測し、その計測結果の平均値をいう。薄肉部の平均膜厚は厚肉部の平均膜厚よりも好ましくは5〜25%薄く形成され、さらに好ましくは5〜10%薄く形成されている。前記範囲に設定することにより、画像ムラの発生を抑制することができる。基材層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。代表的には、20〜90μmである。
【0011】
薄肉部は、図3(a)に示すように周方向に1箇所形成されていてもよいし、図3(b)に示すように周方向に2箇所以上(複数)形成されていてもよい。薄肉部の個数および形成箇所は、例えば、用いるロールの数および配置等に応じて、適宜決定され得る。
【0012】
本発明のエンドレスベルトは、任意の適切な構成が採用される。具体的には、図2に示すように基材層とその他の層(表層および/または中間層)とを備える積層体であってもよいし、基材層のみの単層体であってもよい。積層体である場合であっても、薄肉部が形成された基材層を備えることにより、画像不良の発生を抑制することができる。各層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。表層の厚みは、好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは10〜20μmである。中間層の厚みは、代表的には、0.5〜300μmである。
【0013】
上記基材層は、代表的には、任意の適切な樹脂で形成される。好ましくは、耐熱性樹脂で形成される。耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルフィド系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリイミド系樹脂が好ましい。優れた耐熱性と高い機械的強度を有するからである。
【0014】
上記ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物との共重合体が挙げられる。
【0015】
上記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0016】
上記ジアミン化合物の具体例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0017】
上記表層は、好ましくは、フッ素系樹脂で形成される。離型性に優れるからである。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フルオロエチレンビニルエーテル(FEVE)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記中間層は、例えば、エラストマーで形成される。エラストマーとしては、任意の適切なエラストマーが採用され得る。エラストマーとは、一般に知られているように、弾性を示す高分子物質であり、外力により容易に変化するが、それを除くと直ちに原型にほぼ回復する力学的性質(ゴム弾性)を有する。
【0019】
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴムや合成ゴムなどの加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、スパンデックスやポリカーボネート弾性繊維などの弾性繊維、スポンジゴムやフォームラバーなどの弾性発泡体等が挙げられる。
【0020】
上記合成ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO、GECO、GPCO)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM、FEPM、FFKM)、シリコーンゴム(MQ、PMQ)、多硫化ゴム(OT、EOT)、ホスファゼンゴム(FZ、PZ)等が挙げられる。
【0021】
上記熱可塑性エラストマーは、常温では加硫ゴムの性質を示し、高温では可塑化されて、プラスチック加工機で成形できる高分子材料であり、TPEと称される。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)等のポリスチレン系TPE、ポリオレフィン系TPE、ポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE、1,2−ポリブタジエン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE、ポリアミド系TPE等が挙げられる。
【0022】
本発明のエンドレスベルト(基材層、表層および/または中間層)は、目的に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、摺動性フィラー、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、断熱性フィラー、耐摩耗性フィラー等が挙げられる。
【0023】
B.製造方法
本発明のエンドレスベルトは、上記のような構成が得られる限り、任意の適切な方法により作製し得る。以下、具体的に説明する。
【0024】
(製造方法1)
図4は、本発明の好ましい実施形態によるエンドレスベルトの製造方法を示す概略図である。本実施形態では、エンドレスベルト(基材層)は、下方から気体を流通させた円筒状の金型20内で、下端部に環状のリップ31が形成された円筒状のダイス30を上方に移動させながら、リップ31から樹脂液40を押し出して金型内周面20aに樹脂液40を塗布することにより作製される。金型20内の気体の流通は、底面21に形成された通気孔21aから気体を注入することにより行われる。気体としては、例えば、空気、窒素、アルゴンやヘリウムなどの希ガス等を用いることができる。気体の流量、金型の内周面とダイスのリップとの距離およびブロー比(金型の内径とリップの径との比)は、リップから押し出された樹脂液が金型内周面に塗布され得る限り、任意の適切な値に設定し得る。
【0025】
図5は、好ましい実施形態によるダイスのリップ形状を示す平面図である。環状のリップ31には、他部位よりもリップ幅が5%以上狭い幅狭部が少なくとも一つ形成されている。好ましくは5〜25%狭く形成され、さらに好ましくは5〜10%狭く形成される。環状のリップにこのような幅狭部を形成することにより、薄肉部を有するエンドレスベルト(基材層)を得ることができる。リップ幅は、円筒状の金型20の内径、所望のエンドレスベルトの寸法等に応じて、任意の適切な値に設定し得る。図示例では、0°と180°の位置を中心として幅狭部31a,31aが形成されている。このように、リップ幅、幅狭部の位置および個数を適宜選択することにより、所望のエンドレスベルトを作製することができる。
【0026】
樹脂液40は予めダイス30内に注入されている。樹脂液は、上記基材層の形成材料を含み、必要に応じて、上記添加剤を含む。樹脂液は、任意の適切な粘度に調整し得る。好ましくは50〜7500Ps、さらに好ましくは1000〜3000Psである。このような粘度に調整することにより、良好にエンドレスベルト(基材層)を作製することができる。上記ポリイミド系樹脂を用いる場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を樹脂液として用いることができる。ポリアミド酸溶液はその濃度を調整することにより粘度を調整することができる。ポリアミド酸溶液の濃度は、好ましくは15〜25wt%、さらに好ましくは18〜22wt%である。
【0027】
金型の内周面に塗布された樹脂液を加熱処理することにより、エンドレスベルト(基材層)を得ることができる。加熱条件は、任意の適切な条件に設定し得る。上記ポリイミド系樹脂を用いる場合、好ましくは、二段階で加熱処理を行う。最初の加熱処理は、好ましくは、金型の内周面に塗布された樹脂液が乾燥して樹脂皮膜を形成し、当該樹脂皮膜が自己支持性を有し得る程度に行う。具体的には、加熱温度は、好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは200〜280℃である。加熱時間は、好ましくは25〜60分である。二度目の加熱処理は、得られた樹脂皮膜を金型から剥離して行ってもよいし、樹脂皮膜が金型に付着した状態のままで行ってもよい。樹脂皮膜を金型から剥離する場合、好ましくは、樹脂皮膜を内面から支持し得る内金型を用いて加熱処理を行う。二度目の加熱処理は、好ましくは、閉環イミド化反応を進行させ得る程度に行う。好ましくは320〜410℃、さらに好ましくは380〜400℃である。加熱時間は、好ましくは35〜90分である。
【0028】
(製造方法2)
別の好ましい実施形態においては、本発明のエンドレスベルトは、回転する円筒状の金型の内周面に樹脂液を塗布すること(回転遠心成形法)により作製される。具体的には、回転する金型内に、ノズルから樹脂液を吐出させて、金型の回転軸と平行にノズルまたは金型を走行させながら、螺旋状に樹脂液を塗布する。ここで、金型の周方向の所定位置の塗布量が他部位よりも5%以上少なくなるように調節して塗布する。当該調節方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、所定の間隔で、所定時間、樹脂液のノズルの吐出量を少なくする方法が挙げられる。具体的には、例えば、金型が一回転するのに10秒かかる場合、3秒おきに2秒間、すなわち、0〜2秒の間と5〜7秒の間は樹脂液の吐出量を少なくする。調節方法の別の例としては、周方向の所定位置で金型の回転速度を速くする方法が挙げられる。具体的には、例えば、0〜30°および180〜210°の位置では金型の回転速度を速くする。螺旋状に樹脂液を塗布した後、回転の遠心力により螺旋状の塗布面(塗布ムラ)を金型内面に均一化させる。
【0029】
樹脂液は、上記基材層の形成材料を含み、必要に応じて、上記添加剤を含む。本実施形態では、樹脂液の粘度は、好ましくは50〜7500Psであり、さらに好ましくは1000〜3000Psである。樹脂液の粘度が50Ps未満では、金型が回転している間に塗布膜の厚さが均一化されて、薄肉部が形成されないおそれがある。一方、7500Psより大きいと、回転遠心成形において、塗布ムラが是正されず、均一な塗布面が形成されないおそれがある。上記ポリイミド系樹脂を用いる場合、ポリアミド酸溶液の濃度は、好ましくは15〜25wt%、さらに好ましくは18〜22wt%である。
【0030】
金型の内周面に塗布された樹脂液を加熱処理することにより、エンドレスベルト(基材層)を得ることができる。加熱処理については、上記製造方法1で説明したとおりである。
【0031】
上記いずれの製造方法において用いられる円筒状の金型の材質は、任意の適切な材質が採用され得る。耐熱性の観点から、好ましくは、金属、ガラス、セラミックス等が用いられる。また、円筒状の金型の内周面に成形されたエンドレスベルト(樹脂皮膜)を剥離する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、円筒状の金型の周壁に予め形成された微小貫通孔から気体(例えば、空気)を圧送する方法等が挙げられる。なお、予め、円筒状の金型の内周面に、シリコーン系樹脂等による離型処理を施しておくことにより、剥離作業性を向上させることができる。
【0032】
エンドレスベルトが積層体である場合、好ましくは、予め上記製造方法により基材層を形成し、その表面に中間層および/または表層を形成する。中間層の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、上記中間層の形成材料(例えば、エラストマー)を含む塗布液(例えば、溶液、ディスパージョン)を基材層表面に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、刷毛塗り、浸漬、ディスペンサー塗布等が挙げられる。
【0033】
表層の形成方法は、任意の適切な方法を採用し得る。具体例としては、溶融押出により上記表層の形成材料(例えば、フッ素系樹脂)を管状に成形し、この管状体を基材層または中間層の表面に被着する方法が挙げられる。別の具体例としては、上記表層の形成材料を含む塗布液(例えば、溶液、ディスパージョン)を基材層または中間層表面に塗布し、乾燥する方法が挙げられる。塗布方法としては、上記中間層と同様の方法を用い得る。乾燥は、ボイドの発生を防ぐため、好ましくは、塗布液中の溶媒を除去した後、形成材料(フッ素系樹脂)の融点以上に昇温することにより行う。当該乾燥工程において、基材層の閉環イミド化反応をさせてもよい。
【0034】
C.画像形成装置
本発明の画像形成装置は、回動駆動するロールと、上記エンドレスベルトと、停止時にエンドレスベルト(基材層)の薄肉部がロールに当たるように位置決めする位置決め手段とを備える。位置決めに際し、適宜、エンドレスベルトは加工され得る。例えば、エンドレスベルトの外周面または内周面に塗料やシールでマーキングされたり、センサー用の穴が形成されたりする。エンドレスベルトは、画像形成装置において、任意の適切な用途に用いられ得る。具体的には、搬送用ベルト、転写ベルト、定着ベルトとして用いられ得る。なかでも、定着ベルトとして特に好適に用いられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
(樹脂液の調製)
N−メチル−2−ピロリドン中に、p−フェニレンジアミンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを等モル量、固形分濃度が20wt%となるように溶解させ、室温、窒素雰囲気中で攪拌しながら反応させた。その後、70℃にて加温保持し、粘度3000Psのポリアミド酸溶液(樹脂液)を得た。
【0037】
(成形)
図5に示すように、0°と180°の位置を幅狭部とする環状のリップが形成されたφ200用の円筒状のダイスを用意した。幅狭部のリップ幅は0.855mm、その他の部位のリップ幅は0.9mmとなるように調整した。このダイスに得られた樹脂液を注入した。
ダイスを内径φ200の金型にセットし、図4に示すように、ダイスを上方に移動させながら、リップから樹脂液を押し出して金型内周面に樹脂液を塗布した。
樹脂液を塗布した金型を段階的に220℃まで昇温して樹脂液を乾燥固化させた後、金型を冷却した。こうして得られた樹脂皮膜を一旦金型から剥離して、内金型で内面から支持された状態で380℃まで加熱し、エンドレスベルトを得た。
【0038】
(平均膜厚の測定)
得られたエンドレスベルトの両端を切り落として軸方向長さ320mmとして、周方向45°ごとに平均膜厚を求めた。平均膜厚は、軸方向40mm間隔で7点膜厚を計測し、その計測結果の平均値を算出することにより求めた。
周方向0°および180°の平均膜厚は、それぞれ、66μm,65μmであった。その他の6箇所(周方向45°,90°,135°,225°,270°および315°)の平均膜厚は、69〜71μmであった。このように、0°と180°の位置に薄肉部が形成された。
【0039】
(評価)
得られたエンドレスベルトをφ10のロールを用いて2軸に張架した状態で96時間保持させた。このとき、薄肉部にロールが当たり、それぞれの軸に5kgの荷重をかけて張架した。
その後、2軸の軸中心を結ぶ線から6mm離れた位置(ベルト下面とのギャップ1mm)に、軸中心を結ぶ線と平行にガイドをセットしてエンドレスベルトを回動させたところ、エンドレスベルトがガイドに接触するなど、走行性に問題は生じなかった。
【0040】
[実施例2]
(成形)
回転する金型(内径φ200)内周面に、実施例1と同様に調製した樹脂液をノズル(幅50mm、リップ幅1mm)から吐出させて塗布した。ここで、金型は12秒で一回転し、0〜2秒の間と6〜8秒の間は、ポンプの回転数を約半分とすることにより樹脂液の吐出量を少なくした。
その後、1200rpmの回転速度で塗布面を均一化させ(回転成形し)、実施例1と同様の加熱処理を行い、エンドレスベルトを得た。
【0041】
(平均膜厚の測定)
得られたエンドレスベルトの両端を切り落として軸方向長さ320mmとして、周方向30°ごとに平均膜厚を求めた。平均膜厚は、軸方向40mm間隔で7点膜厚を計測し、その計測結果の平均値を算出することにより求めた。
周方向30°および210°の平均膜厚は、それぞれ、60μm,62μmであった。その他の10箇所(周方向0°,60°,90°,120°,150°,180°,240°,270°,300°および330°)の平均膜厚は、66〜71μmであった。このように、30°と210°の位置に薄肉部が形成された。
【0042】
(評価)
得られたエンドレスベルトを実施例1と同様に評価したところ、走行性に問題は生じなかった。
【0043】
[実施例3]
実施例1で得られたエンドレスベルトの表面に、シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製)を厚み150μmとなるようにディスペンサーで塗布した後、PFA(三井デュポンフロロケミカル製)を10μmの厚みとなるようにスプレーコートし、段階的に340℃まで加熱して3層の積層体とした。
【0044】
(評価)
得られた積層体を実施例1と同様に評価したところ、走行性に問題は生じなかった。
【0045】
<比較例1>
(成形)
全周にわたってリップ幅が0.9mmとなるように調整されたダイスを用いたこと以外は実施例1と同様にしてエンドレスベルトを得た。
【0046】
(平均膜厚の測定)
実施例1と同様に測定したところ、全ての箇所(0°,45°,90°,135°,180°,225°,270°および315°)において、平均膜厚は69〜71μmであった。
【0047】
(評価)
得られたエンドレスベルトは薄肉部が形成されていなかったので、特に位置決めをせずに張架したこと以外は実施例1と同様に評価したところ、エンドレスベルトの表面がガイドに接触して走行性に問題が生じた。
【0048】
<比較例2>
比較例1で得られたエンドレスベルトの表面に、実施例3と同様の処理を施して3層の積層体とした。
【0049】
(評価)
比較例1と同様に評価したところ、エンドレスベルトの表面がガイドに接触して走行性に問題が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のエンドレスベルトは、画像形成装置に用いられる搬送用ベルト、転写ベルト、定着ベルトとして好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0051】
10 エンドレスベルト
11 基材層
12 表層
13 中間層
20 金型
30 ダイス
40 樹脂液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均膜厚が他部位よりも薄い薄肉部を有し、該薄肉部の平均膜厚が厚肉部に比べて5%以上薄く形成された基材層を備える、エンドレスベルト。
【請求項2】
前記薄肉部が周方向に複数形成されている、請求項1に記載のエンドレスベルト。
【請求項3】
前記基材層が耐熱性樹脂で形成されている、請求項1または2に記載のエンドレスベルト。
【請求項4】
前記耐熱性樹脂がポリイミド系樹脂である、請求項3に記載のエンドレスベルト。
【請求項5】
表層を備え、該表層がフッ素系樹脂で形成されている、請求項1から4のいずれかに記載のエンドレスベルト。
【請求項6】
前記基材層と前記表層との間に形成された中間層を備え、該中間層がエラストマーで形成されている、請求項5に記載のエンドレスベルト。
【請求項7】
回動駆動するロールと、
請求項1から6のいずれかに記載のエンドレスベルトと、
停止時に該エンドレスベルトの薄肉部がロールに当たるように位置決めする位置決め手段と
を備える、画像形成装置。
【請求項8】
下方から気体を流通させた円筒状の金型内で、下端部に環状のリップが形成された円筒状のダイスを上方に移動させながら、該リップから樹脂液を押し出して該金型内周面に樹脂液を塗布する工程を含み、
該リップには他部位よりもリップ幅が5%以上狭い幅狭部が少なくとも一つ形成されている、エンドレスベルトの製造方法。
【請求項9】
回転する円筒状の金型の内周面に樹脂液を塗布する工程を含み、
該樹脂液の粘度が50〜7500Psであり、
該金型の周方向の所定位置の塗布量が他部位よりも5%以上少なくなるように調節して塗布する、エンドレスベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33960(P2011−33960A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182052(P2009−182052)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】