説明

エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートおよびその製造方法

【課題】優れた耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性および皺防止性などを発揮する、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】エンボスパターン18を有する装飾用ステンレス鋼ロールシートは、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板10の裏面に剥離用シート14がホットメルト接着剤層12でもって接合されており、前記ステンレス鋼薄板10、ホットメルト接着剤層12および剥離用シート14が共にエンボス加工され、これによって、エンボスパターン18を持つように構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート(rolled−sheet)およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVD(Physical Vapor Deposition)イオンコーティング処理が施された連続的なステンレス鋼薄板の裏面に剥離用シートをホットメルト接着剤層でもって接合するか、あるいは不織布および剥離用シートをホットメルト接着剤層でもって接合し、これらをエンボス加工してロールシート状に巻き取った、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、装飾用シートは、製品を保護しかつ外観に多様な色相、模様および質感を現出する目的でもって、各種の製品の表面仕上げ材として用いられている。例えば、装飾用シートは、建物、エレベーター、自動車、船舶および航空機などのインテリア用表面仕上げ材や各種の家具、電子製品などの表面仕上げ材として広く用いられる。
【0003】
装飾用シートは、用途によって、オーバーレイ(overlay)用、ラッピング(wrapping)用、メンブレイン(membrane)用、およびエッジ(edge)用に区分される。オーバーレイ用は、家具やMDF(Medium Density Fiberboard)、パーチクルボード(particle board)などの平らな上部に一般に採用され、ラッピング用は、小幅のサッシやモールディング部分などの曲面加工が必要な部分に採用される。
【0004】
また、メンブレイン用は、曲面加工の多い一般家具やドアなどに採用され、エッジ用は、家具や机などの角部分または上板の側面に採用される。近年では、鉄板用装飾シートが電子製品またはその他の鉄板の外部に用いられている。
【0005】
従来の装飾用シートは、大部分が合成樹脂シートからなっているために、表面強度および耐磨耗性が低くてスクラッチが発生し、その表面に防炎処理を施しても耐熱性および耐火性が低くて火災に脆弱であるという問題点などがあった。
【0006】
最近、装飾用シートに金属質感を持たせるために、基材シートの下部または上部に金属薄膜を付着させる技術が試みられている。
【0007】
ところが、金属薄膜を付着させる方法は、金属質感を持たせることはできるが、薄膜形態で付着するので、金属自体による文字、図形などの多様なデザインの実現が難しい上に、柔軟性の低下および皺の発生によってロールシート状に製造することが難しいために、包装または取り扱いが難しいという問題点がある。
【0008】
また、柔軟性の低下および皺の発生によって、付着対象物への施工の際に浮き現象が発生するという問題点がある。特に、柔軟性の低下および皺の発生によって、付着対象物の凹部、凸部および曲面部分などには施工することが難しいという問題点がある。
【0009】
また、先行特許文献1には、基材シート、前記基材シート上に形成された金属質感層、前記金属質感層上に形成された印刷層、および前記印刷層上に形成された透明フィルムを含む金属質感の装飾シートにおいて、前記金属質感層は、文字または図形が実現されたものであって、金属粒子を含有した金属インクが基材シート上に印刷されて形成されており、前記金属インクは、粒径1nm〜100nmの金属粒子、バインダー、および溶媒と分散剤とからなる分散液を含むが、金属インクの全体重量に対し金属粒子5.0〜50.0重量部、バインダー10.0〜60.0重量部、溶媒10.0〜40.0重量部および分散剤0.05〜5.0重量部を含み、前記分散剤は、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルアミン、カルボン酸アミド、アミノカルボン酸塩またはクエン酸ナトリウム塩であることを特徴とする金属質感を有する装飾シートが開示されている。さらに、先行特許文献1には、基材シート上に金属質感層を形成して半製品を得る段階と、前記半製品上に印刷層が形成された透明フィルムを積層した後に、エンボスロールに通過させて熱加圧する方法でラミネートする段階とを含む、金属質感を有する装飾シートの製造方法において、前記金属質感層は、金属粒子を含有した金属インクを基材シート上に印刷して文字または図形が実現されるように形成し、前記金属インクは、粒径1nm〜100nmの金属粒子、バインダー、および溶媒と分散剤とからなる分散液を含むが、金属インクの全体重量に対して金属粒子5.0〜50.0重量部、バインダー10.0〜60.0重量部、溶媒10.0〜40.0重量部および分散剤0.05〜5.0重量部を含み、前記分散剤は、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルアミン、カルボン酸アミド、アミノカルボン酸塩またはクエン酸ナトリウム塩であることを特徴とする金属質感を有する装飾シートの製造方法も開示されている。
【0010】
上述したような方法で製造した装飾シートは、金属質感層が金属インクを印刷した印刷方法で形成されたものであって、金属質感層が金属薄膜形態で構成されたものに比べて、多様な金属質感のデザインを実現しかつ柔軟性を持つことができるという利点がある。しかし、前記装飾シートは、この装飾シートの最上層部を成す透明フィルムが合成樹脂系フィルムからなるものであって、耐磨性が足りなく、耐熱性および耐火性が低くて火災に脆弱であり、廃棄処理の際に自然環境を汚染させるおそれがあるという欠点などがあった。また、金属粒子が均一に分散した金属インクを基材シート上に印刷して金属質感層を含む半製品を得る設備と、透明フィルムに印刷層を形成する設備と、前記半製品上に前記透明フィルムを積層させてこれらをラミネートする設備などとを用いて製造するものであって、製造工程の管理が難しく、製造費用が高い上に、生産性が低いという欠点などがあった。また、金属質感が金属粒子を含有した金属インクによって発現されるものであって、金属自体の固有物性と質感とをそのまま発現することができないものであったために、商品的価値を高めることができないという欠点もあった。
【0011】
本発明者は、先行特許文献1のような従来の技術の諸般問題点を解決するために鋭意検討した結果、装飾用金属シートとしては、表面加工が多種多様であり、重量が軽く、耐腐食性、耐磨耗性、耐熱性、耐火性、加工性および耐久性などにも優れたステンレス鋼薄板が好ましいことが分かった。
【0012】
ところが、通常のステンレス鋼薄板は、単調で冷たい金属質感と光沢を有するものであって、装飾用表面仕上げ材として使用するには適しない。したがって、装飾用金属シートとしては、表面につや消し処理が施されており、多様な色相を有する厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板が好ましい。
【0013】
一般に多用されている厚さ0.8〜1.5mm程度のステンレス鋼薄板は、ヘアラインブラシ、ビーズブラスト、バイブレーションブラシなどを主に使用する物理的な方法でもってその表面につや消し処理を施してきている。しかし、装飾用金属シートとして適した厚さ0.05〜0.15mm程度のステンレス鋼薄板は、上述したような物理的方法でその表面につや消し処理を施す場合にその表面が損傷するために、好ましくない。
【0014】
そして、艶ありのステンレス鋼薄板の表面に無機物のナノセラミック(SiO、SnOなど)コーティング、またはPVD(Physical Vapor Deposition)方法によるチタニウム(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)などのイオンコーティングを施すと、表面粗さを減少させることができる上に、多様な色相を得ることができる。また、ナノセラミックコーティングは、10〜20nmのナノ物質をスプレイ方式でコートすることであるから、PVD方法より生産費が低く、有機染料またはナノ無機染料を使用することができて、さらに多様な色相を実現することができる。
【0015】
PVD方法でもってイオンコーティングを行うと、チタニウム、クロム、ジルコニウムなどの物質が蒸発してステンレス鋼の表面に微細な粒子がコートされる。これは、高真空状態で行われるものであって、湿式に比べて品質は優れるが、生産コストが高いという欠点があり、色相はコーティングの際に注入されるガスによってゴールド、ブロンズ、ブラックなどに決定される。
【0016】
コーティング厚さ20μm以下のナノセラミックコーティング、またはコーティング厚さ0.5〜1.0μmのPVD方法による無機物コーティングは、折曲やエンボス加工などの後加工の際にもコーティング層がほぼ損傷しないので、各種の製品の表面仕上げ材として要求される表面粗さと多様な色相とを得ることができる。
【0017】
ところが、本発明者が試験を重ねた結果、ナノセラミックコーティングまたはPVD方法によるイオンコーティングが施されている厚さ0.05〜0.15mmステンレス鋼薄板自体は、クッション性(換言すれば、弾力性)のないものであって、エンボス加工を行うためには、陽刻模様ロールとこれに対応する陰刻模様ロールからなるエンボスロールを用いてエンボスパターンを持たせることは可能であるが、精巧で繊細で鮮明なパターンを現出させることが難しく、陽刻模様ロールおよび陰刻模様ロールとからなるエンボスロールは、加工が難しく、製造コストが高い上に、磨耗が多くて耐久寿命が短いという欠点などがあった。また、前記ステンレス鋼薄板のみをエンボス加工してエンボスパターンを現出させても、耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性および皺防止性などが不足し、切断の際に滑らかな断面を得ることができないから、包装、取扱いおよび施工が難しいなどの欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】韓国特許第0896623号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明者は、ナノセラミックコーティングまたはPVD方法によるイオンコーティングが施されている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板から装飾用シートを製造するに当たって、前記ステンレス鋼薄板に耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性、皺防止性およびクッション性などを与えながら、加工が容易で製造コストが低く、磨耗が少なくて耐久寿命が長い平滑ロールを用いて従来の陰刻模様ロールに比べてより精巧で繊細で鮮明なエンボスパターンを現出させることができ、各種の付着対象物の表面状態に制限を受けないながら、オーバーレイ用のみならず、ラッピング用、メンブレイン用およびエッジ用の表面仕上げ材として幅広く使用することができるために、装飾用シートに要求される物理的および化学的な性質だけでなく、美感、施工性、経済性なども全て充足させることができるものであることを見出すことによって、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明の目的は、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されたステンレス鋼薄板の裏面に塗布されるホットメルト接着剤層によって剥離用シートが接合されるか、または不織布および剥離用シートが順次接合される過程において、これらがエンボス加工によってエンボスパターンを持つようにすることによって、優れた耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性および皺防止性などを発揮する、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板の裏面に剥離用シートがホットメルト接着剤層でもって接合されており、前記ステンレス鋼薄板、ホットメルト接着剤層および剥離用シートが共にエンボス加工されてエンボスパターンを持つように形成されている、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートを提供する。
【0022】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記ホットメルト接着剤層と剥離用シートとの間に不織布がさらに接合されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記ホットメルト接着剤層が水分硬化型ホットメルト接着剤で構成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記ホットメルト接着剤層の厚さが0.05〜0.12mmであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記剥離用シートがポリエチレン(PE)フィルムおよびポリプロピレン(PP)フィルムの中から選ばれた厚さ0.05〜0.10mmのフィルムで構成されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記エンボスパターンの深さが50〜200μmであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記不織布の厚さが0.05〜0.10mmであることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記剥離用シートが除去された状態において、片側にのみ離型紙を有する両面粘着シートが前記硬化したホットメルト接着剤層に接合されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、前記剥離用シートが除去された状態において、前記硬化したホットメルト接着剤層に別の接着剤層が形成されており、前記接着剤層には、アルミニウムシートおよびメッキ鋼シートの中から選ばれた厚さ0.2〜1.2mmの背面部材がさらに接合されていることを特徴とする。
【0030】
本発明はまた、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVD(Physical Vapor Deposition)イオンコーティング処理が施されておりかつ巻取ロールに巻かれている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板を第1の供給ロールへ繰り出して供給する段階と、前記第1の供給ロールによって移送される前記ステンレス鋼薄板の裏面に、溶融されたホットメルト接着剤を接着剤供給ロールと前記第1の供給ロールとによって塗布して、前記ステンレス鋼薄板の裏面にホットメルト接着剤層を形成する段階と、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)フィルムからなりかつ巻取ロールに巻かれている厚さ0.05〜0.10mmの剥離用シートを、第2の供給ロールへ繰り出しながら、前記ステンレス鋼薄板の裏面に形成されたホットメルト接着剤層上に接合させる段階と、前記剥離用シートと前記ホットメルト接着剤層でもって接合される前記ステンレス鋼薄板を、陽刻模様ロールと平滑ロールとからなるエンボスロールでもってエンボス加工することによって、エンボスパターンを与える段階と、巻取ロールでもってロールシート状に巻き取る段階とを含んでなることを特徴とする、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法を提供する。
【0031】
また、本発明に係る製造方法は、前記ステンレス鋼薄板の裏面に形成されたホットメルト接着剤層上に厚さ0.05〜0.10mmの不織布を接合させる段階をさらに含んで製造することを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る製造方法は、前記ホットメルト接着剤層の厚さを0.05〜0.12mmにして製造することを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る製造方法は、前記エンボスパターンの深さを50〜200μmにして製造することを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る製造方法は、前記剥離用シートが除去された状態において、片側にのみ離型紙を有する両面粘着シートを、前記硬化したホットメルト接着剤層に接合させる段階をさらに含んで製造することを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係る製造方法は、前記剥離用シートが除去された状態において、前記硬化したホットメルト接着剤層に別の接着剤層を形成させてから厚さ0.2〜1.2mmのアルミニウムシートおよびメッキ鋼シートの中から選ばれた背面部材を接合させる段階をさらに含んで製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートは、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されて多様な色相を有する厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板の裏面に剥離用シートがホットメルト接着剤層で接合されたまま、これらが共にエンボス加工されてエンボスパターンを持つように構成されたものである。このために、前記装飾用ステンレス鋼ロールシートは、優れた接合強度を持つから、熱収縮、熱膨張、または曲げ荷重などの外力によっても剥離せず、表面強度を強化させることが可能であるので、優れた耐熱性、耐火性、耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性、および皺防止性などを発揮するものであって、装飾用シートとして要求される物理的および化学的な性質が全て優れている上に、美感、施工性、経済性なども全て充足させることができるという利点を有している。
【0037】
また、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法は、連続的な工程で製造コストが低くかつ品質が均一な装飾用ロールシートを量産することができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るロールシートの一実施例を示す拡大断面図である。
【図2】本発明に係るロールシートの他の実施例を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係るロールシートの別の実施例を示す拡大断面図である。
【図4】本発明に係るロールシート製造工程の一実施例を示す概略図である。
【図5】本発明に係るロールシート製造工程の他の実施例を示す概略図である。
【図6】本発明に係るロールシート製造工程の別の実施例を示す概略図である。
【図7】本発明に係るロールシート製造工程のさらに別の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートは、図1に示すように、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されているステンレス鋼薄板の裏面に塗布されるホットメルト接着剤層12でもって剥離用シート14が接合されるか、または不織布16と剥離用シート14とが順次接合されており、前記接合されるステンレス鋼薄板10、ホットメルト接着剤層12および剥離用シート14、または前記ステンレス鋼薄板10、ホットメルト接着剤層12、不織布16および剥離用シート14を共に(換言すれば、重ね合わせた状態でもって共通に)エンボス加工することによって、前記ステンレス鋼薄板10、ホットメルト接着剤層12および剥離用シート14、または前記ステンレス鋼薄板10、ホットメルト接着剤層12、不織布16および剥離用シート14がエンボスパターン18を持つように構成されている。
【0040】
本発明において、前記ステンレス鋼薄板10は、厚さ0.05〜0.15mmのものが好ましく、その厚さが0.05mm未満であれば、薄板自体の生産が難しくかつ価格が高く、その厚さが0.15mmを超過していれば、薄板の強度が大きくてエンボス加工が難しい上に、繊細で鮮明なパターンを得ることができなくなる。
【0041】
また、前記ホットメルト接着剤層12は、0.05〜0.12mmの厚さを有するものが好ましく、その厚さが0.05mm未満であれば、接着力が足りなく、エンボス加工の際に前記ステンレス鋼薄板10へクッション性を提供するには不十分であり、その厚さが0.12mmを超過していれば、前記ステンレス鋼薄板10と剥離用シート14とを互いに接合させるときに、ロールシートの縁部にはみ出て製品の品質を損傷させる。
【0042】
また、前記不織布16は、厚さ0.05〜0.10mmのものが好ましく、その厚さが0.05mm未満であれば、エンボス加工の際に前記ステンレス鋼薄板10へクッション性を提供するには不十分であり、その厚さが0.10mmを超過していれば、前記ホットメルト接着剤層12の接着剤を多く吸収し過ぎて前記ホットメルト接着剤層12の接着力を低下させる。
【0043】
また、前記剥離用シート14は、離型性と軟性とを有するPEまたはPPフィルムであって、前記エンボスパターン18の深さ、すなわち深度が深い場合を考慮し、0.05〜0.10mm程度の厚さを有するのが好ましい。前記剥離用シート14その厚さが0.05mm未満であれば、エンボス加工または取扱いの際に前記ステンレス鋼薄板10にクッション性を提供するには不足し、その厚さが0.10mmを超過していれば、費用対効果の面で大きな利点がない。
【0044】
また、前記エンボスパターン18の深さは、50〜200μmにするのが好ましく、その深さが50μm未満であれば、鮮明なパターンを得ることができず、その深さが200μmを超過していれば、前記ステンレス鋼薄板10に亀裂または変形を生じさせる。
【0045】
本発明において、前記ステンレス鋼薄板10の裏面にホットメルト接着剤層12でもって接合される剥離用シート14、または不織布16と剥離用シート14とをエンボス加工するに当たり、前記ホットメルト接着剤層12の接着剤が完全に硬化する前に、前記ステンレス鋼薄板10の表面を加圧してエンボスパターン18を与えるのが好ましい。その理由は、前記ステンレス鋼薄板10とホットメルト接着剤層12との間の接合部位や、前記ホットメルト接着剤層12の接着剤が染み込んだ状態になる不織布16や、前記不織布16と前記剥離用シート14との間の接合部位が完全に固まる前には、前記ホットメルト接着剤層12のみならず、前記剥離用シート14、または不織布16および剥離用シート14によってエンボス加工に必要な十分なクッション性の提供を受けることができて、ステンレス鋼シートがたった1回のエンボス加工でも鮮明なエンボスパターン18を得ることができるためである。
【0046】
また、前記ホットメルト接着剤層12は、冷却後にも依然として接着剤に存在するイソシアネートと、大気中または被着材に存在する水分との架橋結合によって硬化して分子量の増加を伴い、優れた耐熱性を示し、イソシアネートと水分との架橋結合が起こる前に被着材との初期接着力が通常のホットメルト接着剤に比べて相対的に低い性質を持っている水分硬化型ホットメルト接着剤にするのが好ましい。その理由は、前記水分硬化型ホットメルト接着剤でもって前記ステンレス鋼薄板10の裏面に不織布16と剥離用シート14とを接合させると、初期接合力が通常のホットメルト接着剤より低いが、これらのエンボス加工に必要なクッション性、すなわち弾性回復性を増大させることによって、たった1回でさらに鮮明なエンボスパターンを得ることができ、不織布16に存在する空気中の水分と、前記不織布16に染み込む水分硬化型ホットメルト接着剤のイソシアネートとの間の架橋結合によって硬化が行われるので、前記ステンレス鋼薄板10と不織布16とをさらに堅固に接合させることができて、ステンレス鋼薄板10自体のみでは発揮するには不十分であった優れた耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性およびクッション性能を発揮することが可能な装飾用ステンレス鋼ロールシートを得ることができるためである。
【0047】
本発明において、前記不織布16は、ホットメルト接着剤が染み込むものであって、前記ステンレス鋼薄板10にホットメルト接着剤を単に塗布することに比べて接着剤の使用量を減少させるとともに、ステンレス鋼薄板10に接着剤を均一に分布させることによって、製造コストを節減させかつ接合強度を向上させる。
【0048】
また、本発明に係るエンボスパターンを有するステンレス鋼ロールシートは、図1に示す場合には、剥離用シート14を除去した後に、接着剤を用いて付着対象物に付着させて使用されることができるが、接着剤を用いることなく付着対象物に付着させることを可能にするために、図2に示すように、前記剥離用シート14が除去された状態において、片側にのみ離型紙41を有する両面粘着シート42を、前記硬化したホットメルト接着剤層12に接合させて作ることもできる。
【0049】
また、本発明に係るエンボスパターンを有するステンレス鋼ロールシートは、さらに優れた耐火性や耐久性などが要求されるインテリア用表面仕上げ材として使用できるようにするために、図3に示すように、前記剥離用シート14が除去された状態において、前記硬化したホットメルト接着剤層12に別の接着剤層44を接合させて形成するとともに、厚さ0.2〜1.2mm程度のアルミニウムシートまたはメッキ鋼シートからなる背面部材46をさらに接合させて作ることもできる。
【0050】
前記背面部材46の厚さが0.2mm未満であれば、耐火性および耐久性を向上させるには厚さが不足し、前記背面部材46の厚さが1.2mmを超過していれば、柔軟性が不足する。
【0051】
本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートでは、ステンレス鋼薄板10の表面をエンボス加工してエンボスパターン18を形成する。つまり、ステンレス鋼薄板10、ホットメルト接着剤層12、不織布16、および使用するときに除去される剥離用シート14の接触面を全てエンボスパターンを持つように接合させ、これらの接合面積を増大させて接合強度を大きく向上させる。よって、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートは、熱収縮、熱膨張、または曲げ荷重などの外力によって剥離しない上に、表面強度を強化させることができるので、優れた耐熱性、耐火性、耐スクラッチ性、形態安定性、柔軟性および皺防止性などを発揮することができるものであって、装飾用シートとして要求される物理的、化学的な性質だけでなく、美感、施工性、経済性なども全て充足させる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明に係る装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法を下記の実施例を挙げて説明する。
【0053】
実施例1
図4に示すように、
(a)表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されかつ巻取ロール20に巻かれている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板10を第1の供給ロール22へ繰り出して供給する段階、
(b)前記第1の供給ロール22によって移送される前記ステンレス鋼薄板10の裏面に、溶融されたホットメルト接着剤を接着剤供給ロール24と前記第1の供給ロール22とによって塗布して、前記ステンレス鋼薄板10の裏面にホットメルト接着剤層12を形成する段階、
(c)PEまたはPPフィルムからなりかつ巻取ロール26に巻かれている厚さ0.05〜0.10mmの剥離用シート14を、第2の供給ロール28へ繰り出しながら、前記ステンレス鋼薄板10の裏面に形成されたホットメルト接着剤層12上に接合させる段階、
(d)前記剥離用シート14と前記ホットメルト接着剤層12を介して接合されている前記ステンレス鋼薄板10を、陽刻模様ロール(換言すれば、凸型模様ロール)30と平滑ロール32とからなるエンボスロール34でもってエンボス加工することによって、エンボスパターン18を与える段階、
(e)巻取ロール36でもってロールシート(換言すれば、ロール状に巻かれたシート(rolled−sheet))状に巻き取る段階、
を含んでなる方法でもって、エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートを製造した。
【0054】
実施例1において、ホットメルト接着剤層12の厚さは0.05〜0.12mmとし、エンボスパターン18の深さは50〜200μmとした。また、エンボス加工は、前記ホットメルト接着剤層12が完全に硬化する前に行った。
【0055】
実施例2
図5に示すように、巻取ロール38に巻かれている厚さ0.05〜0.10mmの不織布16を、第3供給ロール40へ繰り出しながら、ステンレス鋼薄板10の裏面に形成されたホットメルト接着剤層12上にまず接合させた後に、前記不織布16の外に染み出る接着剤でもって剥離用シート14を接合させる以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0056】
実施例1および2において製造されたエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートは、表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されたものであって、各種の製品の表面仕上げ材として要求される表面粗さと多様な色相とを持っている。また、前記装飾用ステンレス鋼ロールシートは、連続的に供給されるステンレス鋼薄板10の裏面にホットメルト接着剤層12を形成し、連続的に供給される剥離用シート14を接合させるか、または連続的にそれぞれ供給される不織布16と前記剥離用シート14とを順次接合させながら、これらをエンボス加工してエンボスパターン18を与えた後に、ロールシート状に巻き取って製造したものであるから、より低廉な費用でもって均一な品質を持つように量産できる。また、前記装飾用ステンレス鋼ロールシートは、各種の製品の装飾用表面仕上げ材として要求される物理的および化学的な性質だけでなく、美感、施工性、経済性なども全て満足させることができる。
【0057】
また、本発明に係るエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートは、剥離用シート14を除去した後に、接着剤を用いて付着対象物に付着させて使用されることができるが、使用環境と条件とに応じて、例えば接着剤を用いることなく付着対象物に付着させることができるように、図6に示すように実施例1および2において製造されたロールシートから剥離用シート14が除去された状態において、片側にのみ離型紙41を有する両面粘着シート42を、前記硬化したホットメルト接着剤層12に接合させて製造することもできる。
【0058】
また、図7に示すように、さらに優れた耐火性および耐久性などが要求されるインテリア用表面仕上げ材として使用できるようにするためには、実施例1および2で製造されたロールシートから前記剥離用シート14が除去された状態において、前記硬化したホットメルト接着剤層12に別の接着剤層44を形成させてから、厚さ0.2〜1.2mm程度のアルミニウムシートまたはメッキ鋼シートからなる背面部材46をさらに接合させた後に、巻き取って製造することもできる。
【符号の説明】
【0059】
10 ステンレス鋼薄板
12 ホットメルト接着剤層
14 剥離用シート
16 不織布
18 エンボスパターン
20 巻取ロール
22 第1の供給ロール
24 接着剤供給ロール
26 巻取ロール
28 第2の供給ロール
30 陽刻模様ロール
32 平滑ロール
34 エンボスロール
36 巻取ロール
41 離型紙
42 両面粘着シート
44 別の接着剤層
46 背面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板の裏面に剥離用シートがホットメルト接着剤層でもって接合されており、
前記ステンレス鋼薄板、前記ホットメルト接着剤層および前記剥離用シートが共にエンボス加工されてエンボスパターンを持つように形成されていることを特徴とする、
エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項2】
前記ホットメルト接着剤層と前記剥離用シートとの間に不織布がさらに接合されていることを特徴とする、
請求項1に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項3】
前記ホットメルト接着剤層が水分硬化型ホットメルト接着剤で構成されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項4】
前記ホットメルト接着剤層の厚さが0.05〜0.12mmであることを特徴とする、
請求項1または2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項5】
前記剥離用シートが、ポリエチレン(PE)フィルムおよびポリプロピレン(PP)フィルムの中から選ばれた厚さ0.05〜0.10mmのフィルムで構成されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項6】
前記エンボスパターンの深さが50〜200μmであることを特徴とする、
請求項1または2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項7】
前記不織布の厚さが0.05〜0.10mmであることを特徴とする、
請求項2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項8】
前記剥離用シートが除去された状態において、片側にのみ離型紙を有する両面粘着シートが、前記硬化したホットメルト接着剤層に接合されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項9】
前記剥離用シートが除去された状態において、前記硬化したホットメルト接着剤層に別の接着剤層が形成されており、
前記別の接着剤層には、アルミニウムシートおよびメッキ鋼シートの中から選ばれた厚さ0.2〜1.2mmの背面部材がさらに接合されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシート。
【請求項10】
表面にナノセラミックコーティング処理またはPVDイオンコーティング処理が施されておりかつ巻取ロールに巻かれている厚さ0.05〜0.15mmのステンレス鋼薄板を第1の供給ロールへ繰り出して供給する段階と、
前記第1の供給ロールによって移送される前記ステンレス鋼薄板の裏面に、溶融されたホットメルト接着剤を接着剤供給ロールと前記第1の供給ロールとによって塗布して、前記ステンレス鋼薄板の裏面にホットメルト接着剤層を形成する段階と、
ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)フィルムからなりかつ巻取ロールに巻かれている厚さ0.05〜0.10mmの剥離用シートを、第2の供給ロールへ繰り出しながら、前記ステンレス鋼薄板の裏面に形成されたホットメルト接着剤層上に接合させる段階と、
前記剥離用シートと前記ホットメルト接着剤層でもって接合される前記ステンレス鋼薄板を、陽刻模様ロールと平滑ロールとからなるエンボスロールでもってエンボス加工することによって、エンボスパターンを与える段階と、
巻取ロールでもってロールシート状に巻き取る段階とを含んでなることを特徴とする、
エンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法。
【請求項11】
前記ステンレス鋼薄板の裏面に形成されたホットメルト接着剤層上に厚さ0.05〜0.10mmの不織布を接合させる段階をさらに含んで製造することを特徴とする、
請求項10に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法。
【請求項12】
前記ホットメルト接着剤層の厚さを0.05〜0.12mmにして製造することを特徴とする、
請求項10または11に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法。
【請求項13】
前記エンボスパターンの深さを50〜200μmにして製造することを特徴とする、
請求項10または11に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法。
【請求項14】
前記剥離用シートが除去された状態において、片側にのみ離型紙を有する両面粘着シートを、前記硬化したホットメルト接着剤層に接合させる段階をさらに含んで製造することを特徴とする、
請求項10または11に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法。
【請求項15】
前記剥離用シートが除去された状態において、前記硬化したホットメルト接着剤層に別の接着剤層を形成させてからアルミニウムシートおよびメッキ鋼シートの中から選ばれた厚さ0.2〜1.2mmの背面部材を接合させる段階をさらに含んで製造することを特徴とする、
請求項10または11に記載のエンボスパターンを有する装飾用ステンレス鋼ロールシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81616(P2012−81616A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228462(P2010−228462)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(509129509)デジン・ディーエスピー・カンパニー・リミティッド (2)
【Fターム(参考)】