説明

エンボス加工装置及び印画物

【課題】処理温度、処理圧力及び処理時間等の加工時の諸条件を必要以上に高めることなく要求された質感の印画物を得ることができるエンボス加工装置を提供する。また、画像が熱転写された印画物でありながら、銀塩写真の絹目調のような好ましい質感を持つ印画物を提供する。
【解決手段】 凹凸が形成された表面を有するエンボスローラ21と、エンボスローラ21と対向して配置された加圧ローラ20とを備え、これらのローラで印画物100を挟み込んで凹凸を付与する。エンボスローラ21の表面は算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつクルトシスRkuが2.12〜3.88である。印画物の凹凸面は、算術平均粗さRaが0.55μm以上で、かつスキューネスRskが−2.73〜−0.65である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被加工体に凹凸を付与するエンボス加工装置及び画像が熱転写された側に凹凸が付与された凹凸面を有する印画物に関する。
【背景技術】
【0002】
写真等の印画物には表面の光沢度が抑えられたものがある。銀塩写真の場合には表面に凹凸が付与された印画紙に画像をプリントすることにより、光沢が抑えられたいわゆる絹目調の印画物が得られる。一方、昇華型熱転写方式のプリンターを利用して光沢度が抑えられたつや消しの印画物を得るためには、銀塩写真のように画像形成前の受像シートに予め凹凸を付しておくことができないので、画像形成後の印画物に凹凸を付すことが必要となる。
【0003】
そこで、画像形成後の印画物に凹凸を付与するエンボス加工装置として、表面に凹凸が形成され、かつヒータを内蔵した加熱ローラと、この加熱ローラと対向して配置されたクッションローラとを有し、熱転写によって画像が形成された受像シートをこれらのローラで挟み込んで、受像シートの画像形成面に凹凸を付与する装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−198857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような装置で加工した印画物のつや消しの質感を高めるには、印画物に付与される凹凸の深さや大きさが増大する方向に加工時の諸条件を変化させる必要がある。例えば、凹凸を付与する際の印画物の処理温度を高めること、印画物に加える処理圧力を高めること、又は加工の処理速度を遅くして処理時間を長くすること、或いはこれらを組み合わせることによって、印画物に付与される凹凸の深さや大きさが増大する方向に調整することができる。
【0006】
しかしながら、これらの諸条件を変化させるには自ずと限界があり、要求される印画物の質感によっては条件が過激になって種々の弊害を招く。例えば、画像が熱転写された印画物は複数のシートを貼り合わせた受像シートが一般に使用されるため、処理温度が高すぎれば印画物がローラに融着したり、貼り合わせに使用する接着層にいわゆるブリスター現象が生じるおそれがある。このブリスター現象により接着剤層の気泡が温度上昇に伴って拡大化して印画物全体が凸凹になって印画物としての機能が失われる。また、処理圧力が高すぎれば、印画物を加圧するローラが変形したり、そのような処理圧力を実現するために装置の大型化を招来するおそれがある。更には、処理時間を長くすればそれだけ加工処理の効率が悪化する。従って、これらの諸条件を変化させるだけでは、画像が熱転写された印画物でありながら、銀塩写真の絹目調のような好ましい質感を持つ印画物を提供することが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、処理温度、処理圧力及び処理時間等の加工時の諸条件を必要以上に高めることなく要求された質感の印画物を得ることができるエンボス加工装置を提供することを目的とする。また、本発明は、画像が熱転写された印画物でありながら、銀塩写真の絹目調のような好ましい質感を持つ印画物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明のエンボス加工装置及び印画物について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明のエンボス加工装置は、凹凸が形成された表面(21a)を有するエンボスローラ(21)と、前記エンボスローラと対向して配置された加圧ローラ(20)とを備え、前記エンボスローラと前記加圧ローラとでシート状の印画物(100)を挟み込んで前記印画物に凹凸を付与するエンボス加工装置において、前記エンボスローラの前記表面は、JIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつ同規格で定義されたクルトシスRkuが2.12〜3.88であることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
【0010】
この発明によれば、エンボスローラの表面の性状がJIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつ同規格で定義されたクルトシスRkuが2.12〜3.88であるので、エンボス加工時の諸条件を必要以上に高めることなく要求された質感の印画物を得ることができる。算術平均粗さRaが4.50μmよりも小さいと肉眼で確認できる程度に凹凸を印画物に付与できず、一方、Raが18.55μmよりも大きいと凹凸を印画物に写しとった際に肉眼で確認可能な程度のムラが発生する。クルトシスRkuは、周知のように物体表面の粗さ曲線の確率密度関数の高さ方向に関する鋭さの尺度を示す無次元量であり、粗さ曲線の突出した山又は谷の影響を強く受けるものである。エンボスローラの表面の性状としてのクルトシスRkuが2.12よりも小さいと加工時の処理温度や処理圧力を過激にしない限り、肉眼で確認できる程度の好ましい凹凸を印画物に付与することができない。一方、このクルトシスRkuが3.88よりも大きいと算術平均粗さRaが小さい場合と同様に、印画物の表面に凹凸のムラが発生する。よって、エンボス加工時の諸条件を必要以上に高めずに、好ましい質感の印画物を得るためには、算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつクルトシスRkuが2.12〜3.88となる範囲内でエンボスローラの表面の性状が設定されることが必要である。
【0011】
更に、前記エンボスローラの前記表面は、20μm以上の厚さのメッキ層(21b)で覆われており、かつ、12μm〜68μmの粒径を有した粒子(P)を衝突させて前記凹凸が形成されていてもよい(請求項2)。この場合には、印画物に写し取られた凹凸のムラの発生を抑制し、かつ好ましい質感の印画物を得るために有利に作用する。メッキ層の厚みが20μmよりも小さいと凹凸ムラの発生を抑制する効果が低下する。エンボスローラの凹凸が粒子を衝突させて形成されるので、衝突させる粒子の粒径の調整で凹凸の状態を容易にコントロールできる。粒子の粒径が12μmよりも小さいと肉眼で凹凸を確認できる好ましい質感が得られにくくなり、一方68μmよりも大きいと凹凸のムラの発生を抑制できない。従って、粒子の粒径の範囲は12μm〜68μmに設定するとよい。
【0012】
本発明の印画物は、画像が熱転写された側に凹凸が付与された凹凸面(100a)を有する印画物であって、前記印画物の前記凹凸面は、JIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが0.55μm以上で、かつ同規格で定義されたスキューネスRskが−2.73〜−0.65であることにより、上述した課題を解決する(請求項3)。
【0013】
この印画物によれば、画像が熱転写された印画物でありながら、銀塩写真の絹目調のような好ましい質感を持つ印画物を得ることができる。印画物の凹凸面の性状として、算術平均粗さが0.55μmよりも小さいと凹凸が肉眼で確認できるような質感を得ることができない。スキューネスRskは、周知のように物体表面の粗さ曲線における高さ方向の確率密度関数の非対称性が反映される尺度であり、その平均線に対して分布が高さ方向の上側に偏る場合には負の値となり分布が高さ方向の下側に偏る場合には正の値をとる。印画物の凹凸面の性状としてのスキューネスRskが負の値となる場合には加工前の平滑な表面がある程度残された状態を意味する。スキューネスRskが−2.73よりも小さいと(絶対値が大きいと)、算術平均粗さRaが0.55μm以上の条件下では印画物の凹凸のムラが目立つ。一方、スキューネスRskが−0.65よりも大きいと(絶対値が小さいと)、算術平均粗さRaが0.55μm以上の条件では加工が困難になる。なお、算術平均粗さRaが増大すると、スキューネスRskも増大して凹凸のムラが目立つ度合いが高まる。仮に、算術平均粗さRaが大きくなり過ぎたときには既にスキューネスRskが上限を超えて凹凸のムラが目立つようになるため、算術平均粗さRaの上限を特に定める必要がない。従って、印画物の凹凸の性状として、算術平均粗さRaが0.55μm以上で、かつスキューネスRskが−2.73〜−0.65の範囲内に設定されることで、画像が熱転写された印画物でありながら、銀塩写真の絹目調のような好ましい質感を持つ印画物を得ることができる。
【0014】
この印画物の凹凸面は、凹凸が形成された表面を有するエンボスローラと前記エンボスローラと対向して配置された加圧ローラとによって挟み込まれて凹凸が付与されたものでもよいし(請求項4)、そのエンボスローラの表面は、JIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつ同規格で定義されたクルトシスRkuが2.12〜3.88であってもよい(請求項5)。これらの態様によれば、好ましい質感を持つ印画物を容易に提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、エンボスローラの表面の性状が、算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつクルトシスRkuが2.12〜3.88であるので、エンボス加工時の諸条件を必要以上に高めることなく要求された質感の印画物を得ることができる。また、印画物の凹凸面の性状が、算術平均粗さRaが0.55μm以上で、かつスキューネスRskが−2.73〜−0.65であるので、画像が熱転写された印画物でありながら、銀塩写真の絹目調のような好ましい質感を持つ印画物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2は本発明の実施形態に係るエンボス加工装置を示しており、図1は側面図を、図2は図1の右側から見た正面図を示している。エンボス加工装置1はシート状の被加工体である印画物100に圧力を加えて表面に凹凸を付与する装置である。この印画物100は紙を基材とした受像シートに画像が熱転写されて表面が保護層で覆われた写真である。エンボス加工装置1は印画物100の保護層側の表面(画像形成面)に凹凸を付与する。これによって、印画物100は表面の光沢が抑えられたつや消し状に加工される。
【0017】
エンボス加工装置1は、図1の右側に位置し印画物100に凹凸を付与する加工部2と、図1の左側に位置し加工前の印画物100を保持しておく保持部3と、保持部3から送り出された印画物100を移送方向y1に向けて加工部2に移送するフィーダ部4と、保持部3の下方に位置し各部の動作を制御する制御部6とを有している。保持部3は印画物100をトレー10上に複数枚重ねた状態で保持でき、かつ電動機12を駆動源とした駆動ローラ11を動作させることでトレー10から印画物100を一枚ずつフィーダ部4へ送り出すことができる。フィーダ部4は、電動機14を駆動源とした複数組(図では3組)の駆動ローラ13を有している。これら駆動ローラ13のうち、電動機14の直上に位置するローラ13Aは、印画物100の表面の埃等の汚れを除去するクリーニングローラとして機能する。また、フィーダ部4は、駆動ローラ13で送り込まれた印画物100を予熱するための予熱ローラ15を有している。予熱ローラ15はヒータ等の発熱手段を内蔵しており、その発熱手段の発熱量を調整することで、印画物100の温度を一定に保持できる。これにより、エンボス加工装置1の設置場所の室温等の環境条件が変化した場合でも、印画物100の温度変化に起因する性状の変化を抑えることができる。そのため、エンボス加工装置1の環境条件の変化によって、印画物100の加工状態が変動することを防止できる。フィーダ部4と加工部2との境界部分には印画物100を正確に案内するためのフィーダガイド16が設けられている。以上の構成により、フィーダ部4は保持部3から送り込まれた印画物100をローラ13Aで綺麗にし、かつ予熱ローラ15で温度調整をした上で、加工部2へスムーズに送り出すことができる。加工部2で所定の加工が行われた印画物100はデリバリー部7で一時的に保管される。
【0018】
図2にも示すように、加工部2には、印画物100に圧力を加える加圧ローラ20と、この加圧ローラ20に対向するように配置されたエンボスローラ21とがそれぞれ設けられている。エンボスローラ21の表面には所定形状の凹凸が形成されていて、印画物100がエンボスローラ21と加圧ローラ20とによって挟み込まれた状態で移送されることにより、印画物100に圧力が加えられてその画像形成面(エンボスローラ21側の表面)に凹凸が付与される。この形態では、加工部2における印画物100の移送方向はフィーダ部4における移送方向y1と等しい。加圧ローラ20及びエンボスローラ21は、印画物100の全面に凹凸を付与できるように印画物100よりも十分大きな幅を有している。エンボスローラ21は例えばアルミニウムの中空材料で構成されている。加圧ローラ20は回転軸22の両側に設けられた玉軸受23、23を介在させて、ローラ支持部材24にて軸線CL1回りに回転可能に支持されている。ローラ支持部材24には電動機25が取付けられている。電動機25の回転がベルト26を介してプーリ27に伝達され、さらにこのプーリ27の回転が加圧ローラ20の回転軸22の一端に伝達されることにより、加圧ローラ20が回転駆動される。
【0019】
エンボスローラ21の両側には玉軸受29、29が配置されている。これらの玉軸受29、29によって回転軸28が支持されることにより、エンボスローラ21は軸線CL2回りに回転可能な状態でフレーム30に固定されたブラケット31に取付けられている。エンボスローラ21の軸線CL2は加圧ローラ20の軸線CL1と平行である。言い換えれば、加圧ローラ20及びエンボスローラ21は、それぞれの軸線CL1、CL2を同一方向に向けるようにして配置されている。エンボスローラ21の回転軸28は図2の左側の一端がフレーム30の外側に延びている。その一端にはフレーム30の外側に設けられた電動機32の回転が減速機構33を介して伝達される。これによって、エンボスローラ21は回転駆動される。図5に示すように、エンボスローラ21はその表面温度を所定温度範囲内に設定できる温度調整機構35を備えている。温度調整機構35はエンボスローラ21の回転軸28の内部に設けられたヒータ36等の発熱体を備え、このヒータ36の発熱量が適宜に調整されることで、エンボスローラ21の表面温度が設定される。その設定温度は例えば最大90℃で、5℃刻みに調整できる。エンボスローラ21の表面温度の好ましい温度範囲としては、例えば70℃〜90℃の範囲に設定できる。
【0020】
図1及び図2に示すように、エンボス加工装置1は、加圧ローラ20が印画物100に加える圧力(加圧力)を調整するための一対の加圧機構40A、40Bを備えている。加圧機構40A、40Bは互いに同様の構成であり、加圧機構40Aは加圧ローラ20の軸線CL1方向に関する一方(図2の左側)における加圧力を、加圧機構40Bはその他方(図2の右側)における加圧力をそれぞれ調整できる。加圧機構40A、40Bのそれぞれの加圧力のバランスを調整することで、加圧ローラ20の軸線CL1方向に関する加圧力を均一化できる。加圧機構40Aは加圧ローラ20の真上に位置する加圧ばね41Aを介在させてローラ支持部材24に連結された連結部材42を有している。加圧機構40Bも同様に、加圧ばね41Bを介在させてローラ支持部材24に連結された連結部材42を有している。エンボス加工装置1は二つの加圧機構40A、40Bで連結部材42を共用しているが、連結部材42を分離して加圧機構40A、40Bのそれぞれに専用の連結部材を設けてもよい。
【0021】
連結部材42は加圧ばね41A、41Bが配置された位置からそれぞれ一方向(図1の右側)に延びる一対のアーム43A、43Bを有し、これらの一端は加圧ローラ20の軸線CL1と平行に延びるようにしてフレーム30に固定された取付け軸37に回転自在に連結されている。取付け軸37とローラ支持部材24とは、加圧ローラ20の後方(図1の右側)で、かつ加圧ばね41A、41Bのそれぞれに対応する位置に設けられた一対の復帰ばね44A、44Bを介して互いに連結されている。
【0022】
以上の構成により、エンボス加工装置1は一対の加圧ばね41A、41B及び一対の復帰ばね44A、44Bをそれぞれ介在させた状態で、ローラ支持部材24と加圧ローラ20とが一体となってフレーム30に対して印画物100の厚さ方向、言い換えればフィード部4における移送方向y1と交差する方向y2に変位できる。この形態では、方向y2は移送方向y1と直交する方向、更に言えば鉛直方向に設定される。なお、この変位を案内するための案内装置49がローラ支持部材24の両側面側に二つずつ(図1では一対のみ示されている)、ローラ支持部材24の正面側と背面側に一つずつ(図2では一つのみ示されている)設けられている。案内装置49はローラ支持部材24に形成された案内溝49aと、その案内溝49a内を移動可能な状態でフレーム30に取付けられた案内駒49bと、を備えている。案内溝49aと案内駒49bとの間には所定量の遊びが設けられている。その遊び量を各案内装置49において適宜に設定することにより、許容範囲を超えたローラ支持部材24の変位を防止しつつ、エンボスローラ21等の機械的誤差に対して余裕を与えることができる。これにより、ローラ支持部材24の動作を確実かつ安定させることができる。
【0023】
復帰ばね44A、44Bは、連結部材42をローラ支持部材24とともにエンボスローラ21から離れる方向(図中上方)へ付勢するように機能する。図1及び図2に示した状態は、加圧機構40A、10Bが連結部材42を下方に変位させ、その変位によって加圧ばね41A、41Bが所定量圧縮された加圧位置を示している。加圧位置においては、復帰ばね44A、44Bが所定量引き延ばされ、かつ加圧ばね41A、41Bが所定量圧縮されている。そのため、図4に示すように、加圧機構40A、40Bによる連結部材42に対する押し付けが解除された場合には加圧ばね41A、41Bの圧縮が解消されるとともに、図4の実線で示した加圧位置から、想像線で示した待機位置に復帰する。待機位置においては、加圧ローラ20とエンボスローラ21との間に所定の隙間Gが形成される。隙間Gは印画物100の厚さよりも大きい寸法に設定される。
【0024】
図3は図1及び図2の上側から見た拡大図であり、加圧機構40A、40Bが拡大して示されている。以下では、加圧機構40Aについて説明し、加圧機構40Aに関連する部材の符号にAを付加する。加圧機構40Bに関しては加圧機構40Aと同様の構成であるため、各図面において加圧機構40Bに関連する部材の符号にBを付加し、重複する説明を省略する。図1〜図3に示すように、加圧機構40Aは連結部材42の上面に取付けられて加圧ローラ20軸線CL1方向に延びる傾斜部材45Aと、この傾斜部材45Aの上方に配置されて同一高さを保持しながら加圧ローラ20の軸線CL1方向(図2の左右方向)に移動可能な移動部材46Aと、この移動部材46Aが同方向に移動するように駆動する駆動機構47Aと、を備えている。
【0025】
傾斜部材45Aは、印画物100の厚さ方向、つまり図1に示した方向y2に関して高低差を有する斜面50aが形成された二つの傾斜プレート50、50で構成される。各傾斜プレート50には互いに平行で、かつ方向y2に関して高低差を有した高平面50b及び低平面50cが斜面50aの両側に連なるようにして形成されている。移動部材46Aには、移動方向と直交する軸線CL3回りに回転自在な一対の接触ローラ51、51がこれらに対応する傾斜プレート50上を走行可能な状態で設けられている。一対の接触ローラ51、51は復帰ばね41A(41B)の復元力により傾斜プレート50が常時押し付けられた状態になっている。また、一対の接触ローラ51、51は、移動部材46Aの移動方向に関して前後にずらされた状態で移動部材46Aに設けられている。各傾斜プレート50に形成された斜面50aの位置は、一対の接触ローラ51、51のずれ量に対応してずらされている。このため、移動部材46Aの移動範囲内において一対の接触ローラ51、51と傾斜プレート50との接触が常時確保されるので、移動部材46Aの移動に伴って一方の接触ローラ51が傾斜プレート50から離れて他方の接触ローラ51のみに荷重が作用することが防止される。
【0026】
駆動機構47Aは加圧ローラ20の軸線CL1と平行な方向に延びる旋回軸52Aと、この旋回軸52Aを回転駆動する駆動装置53Aと、旋回軸52Aの回転運動を軸線方向の直線運動に変換して移動部材46Aに伝達するボールねじ機構54Aとを備えている。旋回軸52Aは回転可能にフレーム30に取付けられていて、一方(図2の左側)の端部が駆動装置53Aに連結されている。駆動装置53Aは電動機56Aと、この電動機56Aの回転を減速して旋回軸52Aに伝達する回転伝達機構55Aとを有している。電動機56Aが駆動されることで旋回軸52Aは回転駆動される。ボールねじ機構54Aは周知の機構と同様で、旋回軸52Aの外周面に形成された螺旋状のボール転走溝60aを有する雄ねじ60Aと、ボール転送溝60aに沿って転走可能な複数のボール(不図示)と、移動部材46Aに設けられかつ複数のボールを介在させて雄ねじ60と組み合わされたナット61A(図1)とを有している。これにより、電動機56Aの作動状態を制御することにより、移動部材46Aの移動量及び位置をそれぞれ調整することができる。また、各傾斜プレート50の低平面50cに対する斜面50aの傾き角を適宜に設定することで、初期の加圧力の加わり具合を調整できる。つまり、この傾き角が小さいほど滑らかに加圧力が印画物100に加わるようになる。
【0027】
以上の構成により、加圧機構40Aが連結部材42を押し下げる変位量を調整できるので、加圧ローラ20の一方(図2の左側)の加圧力を調整することができる。加圧機構40Bも加圧機構40Aと同様の構成を備えているので、加圧ローラ20の他方(図2の右側)の加圧力を調整することができる。従って、加圧ローラ20の軸線CL1方向に関する加圧力のバランスを調整できるので印画物100の幅方向に関する加圧力を調整することが可能となる。
【0028】
図1に示した制御部6は、図示を省略したが、マイクロプロセッサを備えたCPUと、このCPUの動作に必要なROM、RAM等の記憶手段を含む周辺装置と、を有している。制御部6のROMには各部の制御を行うための制御手順が記述された各種のプログラムが書き込まれており、CPUは必要なプログラムをROMから適宜に読み出して実行する。制御部6は所定の電源に接続され、更に、上述した保持部3の駆動ローラ11、フィーダ部4の駆動ローラ13及び予熱ローラ15、加工部2の加圧ローラ20、エンボスローラ21、並びに加圧機構40の移動部材40A、40Bのそれぞれの駆動源として設けられた電動機12、14、25、32、56A、及び56Bに電気的に接続されている。また、制御部6はエンボスローラ21に設けられた温度調整機構35と電気的に接続されて、ヒータ36の発熱量を制御する。
【0029】
図1に示すように、ローラ支持部材24と加圧ばね41Aとの間及びローラ支持部材24と加圧ばね41Bとの間には、それぞれ一つずつ計2つのロードセル70が設けられていて制御部6と電気的に接続されている。ロードセル70は周知のように、作用する荷重に応じた電気信号を出力するものである。これにより、加圧機構40A、40Bのそれぞれによる加圧力を検出することができる。また、加圧ローラ20とエンボスローラ21との間には、加工対象の印画物100の存否並びに印画物100の移送方向の前方及び後方の各端部をそれぞれ検出できる在荷センサ71が設けられている。在荷センサ71は接触式、非接触式のいずれでもよい。
【0030】
次に、制御部6が行う主要な制御について説明する。図6は制御部6が行う制御手順の概要を示した説明図である。この図に示すように、制御部6は、まず、(1)所定の開始条件が成立した場合に、ローラ支持部材24を待機位置(図4の想像線の位置)に保持した状態で印画物100のフィードを開始させる。次に、(2)印画物100の移送方向の前方の端部100aが加圧ローラ20とエンボスローラ21との間に位置すると在荷センサ71にて検出された場合に印画物100のフィードを一旦停止する。フィードを停止させる位置は加圧ローラ20とエンボスローラ21との接点を含む所定範囲に設定される。次いで、(3)ローラ支持部材24を待機位置から加圧位置(図4の実線の位置)に変更し、印画物100のフィードを再開するとともに加圧ローラ20及びエンボスローラ21を駆動して印画物100の加工を実施する。次いで、(4)印画物100の移送方向y1の後方の端部100bが在荷センサ71にて加圧ローラ20とエンボスローラ21との間に位置すると検出された場合に、加圧ローラ20及びエンボスローラ21の駆動を停止して、ローラ支持部材24を加圧位置から待機位置に変更して加工を終了する。このように、移送方向y1の前方の端部100aが検出された場合にフィードを一旦停止し、その後、ローラ支持部材24を待機位置から加圧位置に変更して加工を行うので、印画物100の端から端まで満遍なく所定の凹凸を付与できる。また、加圧ローラ20とエンボスローラ21との間に印画物100が存在しない場合にはローラ支持部材24が待機位置に保持されるので、加圧ローラ20とエンボスローラ21とが直接接触する不都合を回避できる。
【0031】
次に、制御部6が上記(3)において実行する制御(加工制御)の詳細を説明する。図7は加工制御の制御手順の一例を示したフローチャートである。まず、制御部6は、ステップS1において待機位置から加圧位置に変更されるように、加圧機構40Aの移動部材46A及び加圧機構40Bの移動部材46Bの位置を変更する。具体的には、図3に示した移動部材46A、46Bの想像線の位置から接触ローラ51が各傾斜プレート50の斜面50aの一部に乗り上げる位置まで移動部材46A、46Bが移動するように、制御部6が電動機56A、56Bの作動状態をそれぞれ制御する。この場合の移動部材46A、46Bの位置は加圧力の目標値と対応付けられた所定位置に設定される。所定位置は加工対象の印画物100の種類に応じて適宜に変更してよい。例えば、印画物100に加えられる総荷重が500〜700kgfの範囲内となるように所定位置を設定してもよい。次に、制御部6は加圧ローラ20及びエンボスローラ21がそれぞれ回転駆動するように、電動機56A、56Bのそれぞれの作動状態を制御する(ステップS2)。加工時の印画物100の送り速度は適宜に設定されてよく、例えば2〜20mm/sに設定される。なお、加圧ローラ20とエンボスローラ21との間で送り速度(接線方向の速度)に関して許容限度を超えた速度差が生じないように、加圧ローラ20の電動機25とエンボスローラ21の電動機32の回転速度がそれぞれ調整される。
【0032】
次に、制御部6は、各ロードセル70の出力を検出し(ステップS3)、その検出結果と加圧力の目標値との偏差が減少するように移動部材46A、46Bの位置をそれぞれ制御する。ステップS3及びステップS4の処理は印画物100の移送方向y1の後方の端部100bが検出されるまでの間繰り返し実行される(ステップS5)。これにより、印画物100に対する加圧力が調整されて略一定の加圧力で印画物100を加工できるので、印画物100の個体差に応じて正確な加工が可能となる。
【0033】
以上のエンボス加工装置1は単独で実施することもできるし、例えば図8に示すようにエンボス加工装置1とプリンター80と組み合わせて印刷システム200として実施することもできる。図8に示したプリンター80は、受像紙に転写シートのインクを熱転写して画像を形成する昇華型熱転写方式のプリンターとして構成されている。プリンター80は受像紙100aを支持しつつ搬送するプラテンロール82と、未使用の熱転写シート81が巻かれた巻出しロール83と、巻出しロール83から繰り出された熱転写シート81を加熱するサーマルヘッド84と、サーマルヘッド84により加熱された転写シート81を巻き取る巻取りロール85とを備えている。プラテンロール82、巻出しロール83、サーマルヘッド84、巻取りロール85は、受像紙100aの送り方向y3と直交するように配置されており、受像紙100aの全幅に亘って延びている。プラテンロール82とサーマルヘッド84とは、所定の圧力で受像紙100aを挟むようにして押圧可能に配置されている。図8の印刷システム200によれば、プリンター80にて受像紙100aに画像が熱転写されて印画物100が形成される。画像が形成された印画物100は、エンボス加工装置1の保持部3に送られて、その後加工部2にて凹凸が付与される。なお、印刷システム200は、プリンター80で形成された印画物100への加工の要否に応じ、制御部6が印画物100に対する凹凸の付与を選択的に実行できるように構成されてもよい。この場合には、凹凸が付された印画物100と付されていない印画物100の両者を使用者の好みに応じて得ることができる。
【0034】
図9に示したように、エンボス加工装置1においては、エンボスローラ21と接するようにしてバックアップローラ90を回転可能にフレーム30に取付けてもよい。バックアップローラ90はエンボスローラ21によって駆動される。バックアップローラ90は、エンボスローラ21の軸線CL2方向に関する幅と略同幅に形成される。図9の形態によれば、エンボスローラ21の撓み等の変形が抑制されるので加工精度を向上できる。
【実施例】
【0035】
次に、エンボス加工装置1を用いた印画物の加工例について図10〜図13を参照して説明する。本加工例では、互いに表面の性状が異なる複数のエンボスローラ21A〜21Nを用意し、これらをエンボス加工装置1に組み付けて印画物100のエンボス加工を上述した手順に従って行った。なお、以下の説明でエンボスローラ21A〜21Nを互いに区別する必要がない場合は、「A〜N」の符号を省略し、符号「21」を付すことによりこれらを代表して示すこととする。
【0036】
図10はエンボスローラ21A〜21Nに共通する構成の一部を拡大して示した説明図である。エンボスローラ21はその直径が80mmのアルミニウム製のものであり、図10に示すように表面21aがメッキ層21bで覆われている。メッキ層21bの構成材料はクロム、カニゼン等でよい。但し、エンボスローラ21H及びエンボスローラ21Iはメッキ層21bが設けられておらず、地肌が露出している。エンボスローラ21の表面21aには凹凸が形成されていているが、その表面の性状はエンボスローラ21A〜21N毎に相違している。
【0037】
図11は、本加工例の諸量並びに評価結果を示している。実施例1〜7はエンボスローラ21A〜21Gを、比較例1〜7はエンボスローラ21H〜21Nをそれぞれ使用したものである。エンボスローラ21に形成する凹凸はいわゆるサンドブラスト法により実現した。図12に示すように、サンドブラスト法は多数の粒子Pを高圧水や圧縮空気等の圧縮流体とともに所定の条件で噴出させ、その粒子Pを加工対象物Oに衝突させて凹凸を与える周知の加工法である。加工条件としては、粒子Pを衝突させる時間(処理時間)、粒子Pを照射する位置とエンボスローラ21との距離(粒子照射距離)、粒子Pの粒径等の諸条件が設定される。また、粒子Pとしては、珪砂(ガラスビーズ)に限らす、ガラス、酸化アルミ、スチール、マグネタイト等の粒子状のブラスト材を使用できる。本加工例では、処理時間を10分、粒子照射距離を300mmにそれぞれ設定し、作成するエンボスローラ21A〜21N毎に衝突させる粒子Pの粒径を図11に示す如く変化させた(但し、一部で共通の粒径を用いた)。なお、粒子Pの粒径は篩等の選別手段を利用して調整した。また、図10に示すメッキ層21bの厚さもエンボスローラ21A〜N毎に変化させた(但し、一部で共通の厚さを用いた)。なお、エンボスローラ21の製造においては、表面21aを硬化するためメッキ層21bを形成した後にサンドブラスト法で凹凸が形成される。
【0038】
このようにエンボスローラ21を作成することで、表面21aの性状が互いに相違するエンボスローラ21A〜21Nを得た。表面21aの性状として、JIS B0601:2001で定義される算術平均粗さRaと、同規格で定義されるクルトシスRkuとをそれぞれ測定した。Ra及びRkuの測定には、JIS B0651:2001に準拠した表面粗さ測定装置を使用した。その測定装置としては、例えば、株式会社東京精密製のサーフコム1800D−3DFを使用できる。以下に測定条件ないし方法を列挙する。
【0039】
・測定方法:2次元
・測定範囲:4mm
・測定ピッチ:20μm
・測定倍率:20K
・λsフィルタ:無し
・カットオフ種別:ガウシアン
・カットオフ波長:0.8mm
・傾斜補正:最小自乗直線
・測定速度:0.6mm/s
・ピックアップ種別:標準ピックアップ
【0040】
各加工例におけるエンボス加工の加工条件は図11に示した通りである。印画物100の処理温度及び処理圧力を加工条件として設定した。印画物100の処理温度は、温度調整機構35により設定されたエンボスローラ21の表面温度を意味する。表面温度の測定はエンボスローラ21の適所に設けた温度センサにて測定した。処理圧力は上述した加圧力と同義であるが、処理圧力の数値は印画物100の幅210mmあたりにかかる荷重(kgf)で示されている。処理圧力の測定は上述ししたロードセル70を利用して行い、そのロードセル70として、株式会社共和電業製のロードセルLMR−S−5KNSA2を使用した。
【0041】
各加工例の結果物たる印画物の凹凸面の性状として、JIS B0601:2001で定義される算術平均粗さRaと、同規格で定義されるスキューネスRskとをそれぞれ測定した。Ra及びRskの測定はエンボスローラ21の表面性状の測定に用いたものと同じ表面粗さ測定装置を使用した。測定条件は上記と同様である。
【0042】
各加工例に対する評価は次の要領で行った。結果物たる印画物の凹凸面を目視にて観察し、凹凸面の大多数よりも明らかに大きい凹凸の有無を評価した。そのような凹凸を特異的突起と称する。特異的突起が存在した場合には観察者は凹凸のムラを感じることになる。そして、印画物が銀塩写真の絹目調のごとく好ましい質感を有している場合には「○」を、そのような質感を感じられない場合又は質感以外のその他の問題がある場合には「×」を付して総合判定を行った。
【0043】
以上の結果、エンボスローラ21の表面21aのRa値が4.50μm〜18.55μmの範囲内で、かつRku値が2.12〜3.88の範囲内にある実施例1〜7においては、好ましい結果が得られた。すなわち、凹凸面の性状として、Ra値が0.55μm以上で、かつRsk値が−2.73〜−0.65の範囲内にある好ましい質感を持つ印画物を得ることができた。図13はこれらの結果物としての印画物100A〜100Gの外形的特徴を模式的に示した断面図である。この図に示すように、印画物100A〜100Gは、凹凸面100aの性状としてのRsk値が負の値をとるため、平坦部100bが存在している。この平坦部100bが残る理由は、エンボスローラ21の表面21aに形成された凹凸が印画物に対して凹部の底に達するまで完全に押し込まれていないためと考えられる。
【0044】
これに対し、エンボスローラ21に係るRku値の上限値よりもRku値が高い比較例1、比較例3、比較例4及び比較例7のそれぞれにおいては、凹凸面に特異的突起の存在が確認された。また、比較例2は、エンボスローラ21に係るRku値の上限値よりも高いものの、特異的突起の存在は確認されなかった。しかし、エンボス加工の処理条件を実施例1〜7に比べてマイルドにし、あえて印画物に対して凹凸が付与され難くしなければならず、条件設定の困難性が増加する弊害が発生した。
【0045】
一方、エンボスローラ21に係るRku値の下限値よりもRku値が低い比較例5及び比較例6においては、特異的突起は確認されなかったものの好ましい結果が得られなかった。すなわち、比較例5においてはブラスト加工時に使用する粒子Pの粒径を、実施例1〜7における粒径の範囲30μm〜68μmの下限値よりも小さくなるように調整することが必須となり、ブラスト加工の条件設定の容易性が阻害される弊害が発生した。他方、比較例6においては、エンボス加工の処理条件を実施例1〜7に比べて強化して、印画物に対して凹凸が付与され易くしなければならず、条件設定の困難性が増加する弊害が発生した。
【0046】
以上のことから、好ましい結果を得るためには、エンボスローラの表面の性状が、算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつクルトシスRkuが2.12〜3.88であることが好ましく、また、印画物の凹凸面の性状が、算術平均粗さRaが0.55μm以上で、かつスキューネスRskが−2.73〜−0.65であることが好ましい形態であることが明らかとなった。
【0047】
本発明は以上の実施形態に限定されず、種々の形態で実施できる。エンボスローラ21の材質や、エンボスローラ21の表面21aに凹凸形成するために衝突させる粒子Pの材質には特に制限はなく、適宜選択すればよい。また、エンボスローラ21の表面21aの凹凸の形成はサンドブラスト法に限定されず、放電加工その他の公知の加工法によって凹凸を形成してもよい。また、エンボスローラ21の表面21aを覆うメッキ層21bは必須でなく、省略してもよい。またメッキ以外の手法で表面をコーティングしてもよい。
【0048】
また、上述した加圧ローラ20とエンボスローラ21とを相互に置き換えてもよい。つまり、エンボスローラ21をローラ支持部材24で支持するようにしてもよい。なお、図1及び図2に示したように、鉛直方向に関して加圧ローラ20を上側にエンボスローラ21を下側にそれぞれ配置した場合には、エンボスローラ21上に埃等の異物が溜りにくく、また、印画物100に凹凸が付される面が鉛直方向に関して下側に向くことになるので、その面に異物が付着し難くなる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係るエンボス加工装置の側面図。
【図2】図1の右側から見たエンボス加工装置の正面図。
【図3】図1及び図2の上側から見た部分拡大図。
【図4】ローラ支持手段が想像線で示した待機位置と実線で示した加圧位置との間で変位する状態を示した説明図。
【図5】エンボスローラの構造の詳細を示した斜視図。
【図6】制御部が行う制御手順の概要を示した説明図。
【図7】制御部が行う加工制御の制御手順の一例を示したフローチャート。
【図8】エンボス加工装置とプリンターとを組み合わせて印刷システムとして本発明を実施した実施形態を示す図。
【図9】本発明の変形例に係るエンボス加工装置の側面図。
【図10】各加工例に係るエンボスローラに共通する構成の一部を拡大して示した説明図。
【図11】各加工例に係る諸量並びに評価結果を示した図。
【図12】サンドブラスト法を説明する説明図。
【図13】各実施例の結果物たる印画物の外形的特徴を模式的に示した断面図。
【符号の説明】
【0050】
1 エンボス加工装置
20 加圧ローラ
21 エンボスローラ
21a 表面
21b メッキ層
100 印画物
100a 凹凸面
P 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸が形成された表面を有するエンボスローラと、前記エンボスローラと対向して配置された加圧ローラとを備え、前記エンボスローラと前記加圧ローラとでシート状の印画物を挟み込んで前記印画物に凹凸を付与するエンボス加工装置において、
前記エンボスローラの前記表面は、JIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmで、かつ同規格で定義されたクルトシスRkuが2.12〜3.88であることを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項2】
前記エンボスローラの前記表面は、20μm以上の厚さのメッキ層で覆われており、かつ、12μm〜68μmの粒径を有した粒子を衝突させて前記凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンボス加工装置。
【請求項3】
画像が熱転写された側に凹凸が付与された凹凸面を有する印画物であって、
前記印画物の前記凹凸面は、JIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが0.55μm以上で、かつ同規格で定義されたスキューネスRskが−2.73〜−0.65であることを特徴とする印画物。
【請求項4】
前記凹凸面が、凹凸が形成された表面を有するエンボスローラと前記エンボスローラと対向して配置された加圧ローラとによって挟み込まれて凹凸が付与されたものであることを特徴とする請求項3に記載の印画物。
【請求項5】
前記エンボスローラの前記表面は、JIS B0601:2001で定義された算術平均粗さRaが4.50μm〜18.55μmμmで、かつ同規格で定義されたクルトシスRkuが2.12〜3.88であることを特徴とする請求項4に記載の印画物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−98586(P2007−98586A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287490(P2005−287490)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】