説明

エンボス装置、エンボスロール、凹凸パターン、加工品、および、加工品の製造方法

【課題】原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、とりわけ、高い稼働率で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボス装置を提供する。
【解決手段】エンボス装置10は、原反70に対面するようになるエンボス型面30を有するエンボスロール20と、エンボスロール20に対向して配置されたバックアップロール13と、を備える。原反は、エンボスロール20とバックアップロール13との間で押圧されるようになる。エンボスロールのエンボス型面は、原反に形成すべき凹凸柄85に対応した凹凸形状を有する凹凸部35と、エンボスロールの回転軸線L1に沿って凹凸部からずれた位置に形成され、凹凸部とは異なる凹凸形状を有する凹凸パターン40と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反に凹凸柄を形成するエンボス装置に係り、とりわけ、高い稼働率で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボス装置に関する。
【0002】
また、本発明は、原反に凹凸柄を形成するエンボスロールに係り、とりわけ、高い稼働率で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボスロールに関する。
【0003】
さらに、本発明は、原反に凹凸柄を形成するためのエンボス型面に、形成すべき凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部とともに、形成される凹凸パターンに関する。
【0004】
さらに、本発明は、エンボス加工を施された加工品であって、とりわけ、高効率で加工され得る加工品に関する。
【0005】
さらに、本発明は、原反に凹凸柄を形成して加工品を製造する製造方法に係り、とりわけ、高い稼働率で効率的に加工品を製造することができる加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0006】
今般、例えば特許文献1に示すように、エンボス加工は広く普及した加工方法となっている。特許文献1には、原反にエンボス加工を施すことにより、離型紙(加工品)を製造する方法が開示されている。この離型紙は、合皮製品、化粧シート、内装材等のシート状材料を作製するための型紙として用いられる。
【0007】
一般的に、とりわけ原反のような比較的に薄い被加工体にエンボス加工を施す場合に、原反にエンボス加工を施す際に用いられるエンボス装置は、エンボス型面を有したエンボスロールと、エンボスロールに対向して配置されたバックアップロールと、を備えている。
【特許文献1】特開2002−205311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、エンボス型面によって押圧されるようになるバックアップロールの表面層は、エンボス型面上に形成された凹凸形状に対応して変形可能であり、かつ、一時的に変形状態を維持することができるように構成されている。そして、原反に対してエンボス加工を施す前に、エンボスロールおよびバックアップロールが空運転(空転)させられ、エンボス型面の凹凸形状に対応した凹凸形状がバックアップロールの外周面に転写される。このようにしてバックアップロールにメス型を作製しておくことにより、加工圧を大幅に上昇させることなく、原反に凹凸形状を精度良く転写することができるようになる。
【0009】
ところが、バックアップロールに予め形成された凹凸形状は、加工時間の経過にともなって次第に平坦化されていく。バックアップロールの凹凸形状が平坦化されると、原反に転写される凹凸柄も平坦化してしまう。
【0010】
この不都合を回避するためには、エンボス加工を施された加工品の品質を都度確認しなければならない。また、加工品の凹凸形状が平坦化し過ぎている場合には、エンボスロールおよびバックアップロールを空運転し、バックアップロールの表面に凹凸形状を再形成(型入れ)しなければならない。しかしながら、加工品の検査は、柄が複雑であれば、極めて煩雑であり、長時間(例えば1時間)を要する。このため、エンボス加工を施された加工品の品質を現場で確認することなく、安全を見て、早目に、例えば4時間おきに定期的に型入れ作業を行うようにすることもある。
【0011】
すなわち、現状では、汎用のバックアップロールを用いたエンボス装置を優れた稼働率で稼働させ、原反に凹凸柄を形成して十分な生産効率で加工品を製造することができていない。本発明は、このような点を考慮してなされたものであって、原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、とりわけ、高い稼働率で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボス装置を提供することを目的とする。また、本発明は、原反に凹凸柄を形成するエンボスロールであって、とりわけ、高い稼働率で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボスロールを提供することを目的とする。さらに、本発明は、原反に凹凸柄を形成するためのエンボス型面に、形成すべき凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部とともに、形成される凹凸パターンであって、とりわけ、高い稼働率で効率的にエンボス加工を行うことを可能にする凹凸パターンを提供することを目的とする。さらに、本発明は、エンボス加工を施されてなる加工品であって、とりわけ、高効率で加工され得る加工品を提供することを目的とする。さらに、本発明は、原反に凹凸柄を形成して加工品を製造する製造方法であって、とりわけ、効率的に加工品を製造することができる加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるエンボス装置は、原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、前記原反に対面するようになるエンボス型面を、有するエンボスロールと、前記エンボスロールに対向して配置され、前記エンボスロールとの間で前記原反を圧するようになるバックアップロールと、を備え、前記エンボスロールのエンボス型面は、前記原反に形成すべき凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部と、前記エンボスロールの回転軸線に沿って前記凹凸部からずれた位置に形成され、前記凹凸部とは異なる凹凸形状を有する凹凸パターンと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によるエンボス装置が、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールの下流側に配置され、前記凹凸パターンを転写されてなる原反のパターンに関する情報を非接触状態で測定するセンサを、さらに備えるようにしてもよい。このような本発明によるエンボス装置において、前記センサは光沢度計であるようにしてもよい。あるいは、このような本発明によるエンボス装置において、前記センサは変位測定器であるようにしてもよい。また、このような本発明によるエンボス装置が、前記センサに接続された制御装置であって、前記センサによる測定値に基づいて原反に形成された前記パターンを検査する制御装置を、さらに備え、前記制御装置は、前記原反に形成された前記パターンが、予め設定された程度を越えて平坦化しているか否か、あるいは、予め設定された程度以上に平坦化しているか否か、を判定するようになっていてもよい。
【0014】
また、本発明によるエンボス装置において、前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数の凸部を有するようにしてもよい。
【0015】
このような本発明によるエンボス装置において、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であるようにしてもよい。
【0016】
また、このような本発明によるエンボス装置において、前記凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に沿って延びているようにしてもよい。
【0017】
さらに、このような本発明によるエンボス装置において、前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数のパターン部を有し、各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面における凸部の形状は互いに異なるようにしてもよい。このようなエンボス装置において、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なるようにしてもよい。あるいは、このようなエンボス装置において、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0018】
さらに、このような本発明によるエンボス装置において、前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数のパターン部をそれぞれ含む第1のパターン部群および第2のパターン部群を有し、前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群は、前記エンボスロールの回転軸線に沿って互いからずれた位置に配置され、前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、前記第1のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なり、前記第2のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0019】
このような本発明によるエンボス装置において、前記凹凸部は複数の凸部を有し、前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の高さの最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の高さの最大値と同一であるようにしてもよい。
【0020】
また、このような本発明によるエンボス装置において、前記凹凸部は、断面において三角形状となっている複数の凸部を有し、前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値と同一であるようにしてもよい。
【0021】
さらに、このような本発明によるエンボス装置において、各パターン部の近傍には、それぞれ、当該パターン部に含まれる凸部の特徴を示す印が付されていてもよい。
【0022】
さらに、本発明によるエンボス装置において、前記エンボス型面は、前記凹凸パターンの位置を特定するための見当マーク部をさらに有するようにしてもよい。
【0023】
本発明によるエンボスロールは、原反に凹凸柄を形成するためのエンボスロールであって、前記原反に対面するようになるエンボス型面を備え、前記エンボス型面は、前記原反に形成すべき凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部と、前記エンボスロールの回転軸線に沿って前記凹凸部からずれた位置に形成され、前記凹凸部とは異なる凹凸形状を有する凹凸パターンと、を有することを特徴とする。
【0024】
本発明によるエンボスロールにおいて、前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数の凸部を有するようにしてもよい。
【0025】
このような本発明によるエンボスロールにおいて、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であるようにしてもよい。
【0026】
また、このような本発明によるエンボスロールにおいて、前記凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に沿って延びているようにしてもよい。
【0027】
さらに、このような本発明によるエンボスロールにおいて、前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数のパターン部を有し、各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面における凸部の形状は互いに異なるようにしてもよい。このようなエンボスロールにおいて、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なるようにしてもよい。あるいは、このようなエンボスロールにおいて、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0028】
さらに、このような本発明によるエンボスロールにおいて、前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数のパターン部をそれぞれ含む第1のパターン部群および第2のパターン部群を有し、前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群は、前記エンボスロールの回転軸線に沿って互いからずれた位置に配置され、前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、前記第1のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なり、前記第2のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0029】
このような本発明によるエンボスロールにおいて、前記凹凸部は複数の凸部を有し、前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の高さの最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の高さの最大値と同一であるようにしてもよい。
【0030】
また、このような本発明によるエンボスロールにおいて、前記凹凸部は、断面において三角形状となっている複数の凸部を有し、前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値と同一であるようにしてもよい。
【0031】
さらに、このような本発明によるエンボスロールにおいて、各パターン部の近傍には、それぞれ、当該パターン部に含まれる凸部の特徴を示す印が付されていてもよい。
【0032】
さらに、本発明によるエンボスロールにおいて、前記エンボス型面は、前記凹凸パターンの位置を特定するための見当マーク部をさらに有するようにしてもよい。
【0033】
本発明による凹凸パターンは、原反に凹凸柄を形成するためのエンボス型面に、形成すべき前記凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部とともに形成される凹凸パターンであって、前記エンボス型面上の一方向に沿って前記凹凸部からずれた位置に形成され、前記凹凸部とは異なる凹凸形状を有し、前記凹凸部によって前記原反に形成される凹凸柄を検査するために用いられる検査用凹凸パターンを、前記原反に形成するようになることを特徴とする。
【0034】
本発明による凹凸パターンは、前記一方向と直交する前記エンボス型面上の他方向に沿って並べて配列され前記凹凸部とは異なる前記凹凸形状を構成する複数の凸部を有するようにしてもよい。このような本発明による凹凸パターンにおいて、各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であるようにしてもよい。また、このような本発明による凹凸パターンにおいて、前記凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に沿って延びているようにしてもよい。
【0035】
また、本発明による凹凸パターンが、前記エンボス型面上の前記他方向に沿って並べて配置された複数のパターン部を有し、各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面における凸部の形状は互いに異なるようにしてもよい。このような本発明による凹凸パターンにおいて、各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であり、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なるようにしてもよい。あるいは、このような本発明による凹凸パターンにおいて、各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であり、異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0036】
さらに、本発明による凹凸パターンが、前記エンボス型面上の前記他方向に沿って並べて配置された複数のパターン部をそれぞれ含む第1のパターン部群および第2のパターン部群を有し、前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群は、前記エンボス型面上の前記一方向に沿って互いからずれた位置に配置され、前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であり、前記第1のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なり、前記第2のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0037】
このような本発明による凹凸パターンにおいて、前記凹凸部は複数の凸部を有しており、前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の高さの最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の高さの最大値と同一であるようにしてもよい。
【0038】
また、このような本発明による凹凸パターンにおいて、前記凹凸部は、断面において三角形状となっている複数の凸部を有しており、前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値と同一であるようにしてもよい。
【0039】
本発明による加工品は、エンボス加工を施された加工品であって、エンボス加工によって凹凸形状を転写された原反を備え、前記原反は、エンボス加工によって形成された凹凸柄と、前記原反上の一方向に沿って前記凹凸柄からずれた位置に配置され、エンボス加工によって形成された検査用凹凸パターンと、を有し、前記検査用凹凸パターンは、前記凹凸柄とは異なる凹凸形状を有し、前記検査用凹凸パターンは、エンボス加工によって形成された前記凹凸柄を検査するために用いられることを特徴とする。
【0040】
本発明による加工品において、前記検査用凹凸パターンは、前記一方向と直交する前記原反上の他方向に沿って並べて配列された複数の凹部であって、前記凹凸部とは異なる前記凹凸形状を構成する複数の凹部を、有するようにしてもよい。このような本発明による加工品において、各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっているようにしてもよい。また、このような本発明による加工品において、前記凹部は、前記原反上の前記一方向に沿って溝状に延びていてもよい。
【0041】
また、本発明による加工品において、前記検査用凹凸パターンは、前記原反上の前記他方向に沿って並べて配置された複数の検査用パターン部を有し、各検査用パターン部は複数の前記凹部を含み、各検査用パターン部内において前記複数の凹部は同一形状を有し、異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記原反上の前記一方向に直交する断面における凹部の形状は互いに異なるようにしてもよい。このような本発明による加工品において、各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっており、異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における深さは互いに異なるようにしてもよい。また、このような本発明による加工品において、各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっており、異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における深さは互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0042】
さらに、本発明による加工品において、前記検査用凹凸パターンは、前記原反上の前記他方向に沿って並べて配置された複数の検査用パターン部をそれぞれ含む第1の検査用パターン部群および第2の検査用パターン部群を有し、前記第1の検査用パターン部群および前記第2の検査用パターン部群は、前記エンボス型面上の前記一方向に沿って互いからずれた位置に配置され、前記第1の検査用パターン部群および前記第2の検査用パターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凹部を含み、各検査用パターン部内において前記複数の凹部は同一形状を有し、各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっており、前記第1の検査用パターン部群内の異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における深さは互いに異なり、前記第2の検査用パターン部群内の異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における深さは互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに異なるようにしてもよい。
【0043】
このような本発明による加工品において、前記凹凸柄は、その凹凸形状を構成する複数の凹部を有しており、前記検査用凹凸パターンに含まれた前記凹部の深さの最大値は、前記凹凸柄に含まれた前記凹部の深さの最大値と同一であるようにしてもよい。
【0044】
また、このような本発明による加工品において、前記凹凸柄は、断面において三角形状となっている凹部を有しており、前記検査用凹凸パターンに含まれた前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比の最大値は、前記凹凸柄に含まれた前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比の最大値と同一であるようにしてもよい。
【0045】
さらに、本発明による加工品において、前記検査用凹凸パターンの位置を特定するための見当マークが設けられているようにしてもよい。
【0046】
本発明による製造方法は、上述したいずれかの本発明によるエンボス装置を用いて原反に凹凸柄を形成し、加工品を製造する製造方法であって、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボスロールのエンボス型面に形成された凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に形成する第1空運転工程と、前記第1空運転工程後に実施される工程であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記凹凸部に対応した前記凹凸柄を前記原反に形成するとともに、前記凹凸パターンに対応した検査用凹凸パターンを前記原反に形成していく第1エンボス加工工程と、前記第1エンボス加工工程後に実施される工程であって、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボス型面の凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に再形成する第2空運転工程と、を備え、前記第1エンボス加工工程中に、前記原反に形成されていく検査用凹凸パターンを検査し、検査結果が不良と判定された場合に、前記第1エンボス加工工程を終了して前記第2空運転工程を開始することを特徴とする。
【0047】
本発明による製造方法において、前記第2空運転工程後に実施される工程であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記凹凸部に対応した前記凹凸柄を前記原反に形成するとともに、前記凹凸パターンに対応した前記検査用凹凸パターンを前記原反に形成していく第2エンボス加工工程と、前記第2エンボス加工工程後に実施される工程であって、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボス型面の凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に再形成する第3空運転工程と、をさらに備え、前記第2エンボス加工工程中に、前記原反に形成されていく検査用凹凸パターンを検査し、検査結果が不良と判定された場合に、前記第2エンボス加工工程を終了して前記第3空運転工程を開始するようにしてもよい。
【0048】
また、本発明による製造方法において、前記エンボス加工工程中における検査用凹凸パターンについての検査は、検査対象となる原反に対して非接触の状態で実施されるようにしてもよい。このような本発明による製造方法において、光沢度計を用い、前記原反の前記検査用凹凸パターンが形成された部分の光沢度を非接触で測定することにより、前記検査用凹凸パターンの検査を行い、測定された光沢度が予め設定された光沢度以上となった場合、あるいは、測定された光沢度が予め設定された光沢度よりも大きくなった場合に、不良と判定されるようになっていてもよい。あるいは、このような本発明による製造方法において、非接触式センサを用い、前記原反に形成された前記検査用凹凸パターンの凹凸形状を非接触で測定することにより、前記検査用凹凸パターンの検査を行い、測定された凹凸形状が予め設定された程度を越えて平坦化している場合、あるいは、測定された凹凸形状が予め設定された程度以上に平坦化している場合に、不良と判定されるようになっていてもよい。
【0049】
さらに、本発明による製造方法が、前記検査用凹凸パターンの良否の判定基準を設定する工程を、さらに備え、前記判定基準を設定する工程は、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボスロールのエンボス型面に形成された凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に形成する予備空運転工程と、前記予備空運転工程後に実施される工程であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記凹凸部に対応した前記凹凸柄を前記原反に形成するとともに、前記凹凸パターンに対応した検査用凹凸パターンを前記原反に形成していく試験エンボス加工工程と、前記試験エンボス加工工程において原反に作製されていった凹凸柄を検査して、前記凹凸柄が検査良から検査不良に移行する部分を調査し、当該部分と同時期に形成された検査用凹凸パターンに基づいて前記検査用凹凸パターンの良否の判定基準を決定する判定基準決定工程と、を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、優れた効率で原反にエンボス加工を行うことができる。これにより、加工費用を低下させることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0052】
図1乃至図11は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうちまず、図1乃至図5を参照して、原反に凹凸柄を形成して加工品を製造するエンボス装置について説明する。ここで、図1はエンボス装置およびエンボス装置による加工品の製造方法を説明するための斜視図であり、図2は図1のエンボス装置を示す上面図であり、図3は図1のエンボス装置に組み込まれたエンボスロールの凹凸パターンを示す図であり、図4は図2のIV−IV線に沿った断面図であり、図5は図2のV−V線に沿った断面図である。
【0053】
図1に示すように、エンボス装置10は、エンボスロール20と、エンボスロール20に対向して配置され、エンボスロール20との間で原反70を圧するようになるバックアップロール13と、を備えている。また、エンボス装置10は、エンボスロール20およびバックアップロール13の間に向けて原反70を供給する原反供給装置(図示せず)をさらに備えている。
【0054】
図1に示すように、エンボスロール20およびバックアップロール13は、それぞれ、円柱状または円筒状に形成されている。エンボスロール20およびバックアップロール13は、それぞれの外周面が対向するように配置されている。また、エンボスロール20およびバックアップロール13は、それぞれの中心軸線L1,L2が平行となるように配置されている。エンボスロール20およびバックアップロール13は、それぞれの中心軸線L1,L2を中心として回転可能となっている。
【0055】
エンボスロール20は、その外周面上に形成された凹凸形状を含むエンボス型面30を有している。エンボス型面30は、図1に示すように、原反供給装置から供給される原反70に当接するようになる。図1および図2に示すように、エンボス型面30は、原反70に形成すべき凹凸柄85に対応した凹凸形状を有する凹凸部35と、凹凸部35とは異なる凹凸形状を有する凹凸パターン40と、を含んでいる。凹凸パターン40は、エンボス型面30上の一方向に沿って、図示する例ではエンボスロール20の回転軸線L1に沿って、凹凸部35からずれた位置に形成されている。凹凸部35は、製造される加工品の用途に応じ、種々の粗さや深さを含んだ凹凸形状として構成される。一例として、製造されるべき加工品80が合成皮革用の離型紙(型紙)である場合には、凹凸部35は、原反70に皮模様を付与し得るように構成される。
【0056】
一方、凹凸パターン40は、加工品の一部として加工品の用途に応じて有効に機能するのではなく、加工品を製造する上で機能する凹凸形状である。より具体的には、凹凸パターン40は、凹凸部35によって原反70に形成される凹凸柄85を検査するために用いられ得る検査用凹凸パターン90を、原反70に形成するようになる。
【0057】
以下、主に図3乃至図5を参照して、原反70に凹凸柄85を形成するためのエンボス型面30に凹凸部35とともに形成された凹凸パターン40について詳述する。ここで図3は、円周面として形成されたエンボス型面30のうちの凹凸パターン40の周辺を、当該エンボス型面30を切り開いた平面として、示している。
【0058】
本実施の形態において、凹凸パターン40は、エンボス型面30上の前記一方向(本例ではエンボスロール20の回転軸線L1)に沿って互いからずれた位置に配置された第1のパターン部群42および第2のパターン部群46を有している。第1のパターン部群42および第2のパターン部群46は、前記一方向と直交するエンボス型面30上の他方向に沿って、図示する例ではエンボスロール20の回転軸線L1に直交するエンボスロール20の円周方向に沿って、並べて配置された複数のパターン部43,47をそれぞれ含んでいる。
【0059】
図4および図5に示すように、第1のパターン部群42および第2のパターン部群46に含まれる各パターン部43,47は複数の凸部43a,47aを含んでいる。この凸部43a,47aによって、凹凸部35とは異なる凹凸パターン40の凹凸形状が、構成されている。
【0060】
凸部43a,47aは、エンボス型面30上の他方向(本例ではエンボスロール20の回転軸線L1に直交するエンボスロール20の円周方向)に沿って並べて配列されている。各凸部43a,47aは、エンボス型面30上の一方向に直交する断面(本例ではエンボスロール20の回転軸線L1に直交する断面)において三角形状(厳密には二等辺三角形)となっている。さらに、図1、図5および図6に示すように、各凸部43a,47aは、エンボス型面30上の前記一方向に沿って延びており、したがって、三角柱状に形成されている。
【0061】
図5および図6に示すように、各パターン部43,47内において、複数の凸部43a,47aは同一形状を有し、異なるパターン部43,47間において、凸部43a,47aは異なる形状を有している。
【0062】
図4に示すように、第1のパターン部群42内の異なるパターン部43に含まれる凸部43a間において、凸部43の断面三角形における底辺の長さwaに対する高さhaの比(ha/wa、以下において単に「凸部のアスペクト比」とも呼ぶ)は互いに同一であり、凸部43の断面三角形における高さhaは互いに異なっている。とりわけ、図3に示すように、第1のパターン部群42は10のパターン部43を有しており、この結果、第1のパターン部群42内には、10種類の異なる高さhaを有する凸部43aが含まれている。また、第1のパターン部群42に含まれた凸部43aの高さhaの最大値は、凹凸部35の凹凸形状を構成する凸部の高さのうちの最大値と同一となっている。具体例として、製造される加工品80が合成皮革用の離型紙(型紙)である場合、第1のパターン部群42に含まれる凸部43aの高さの最大値は、例えば50μmとすることができる。
【0063】
一方、図5に示すように、第2のパターン部群46内の異なるパターン部47に含まれる凸部47a間において、凸部47aの断面三角形における高さhaは互いに同一であり、凸部47aの断面三角形における底辺の長さwaに対する高さhaの比(凸部のアスペクト比(ha/wa))は互いに異なっている。とりわけ、図3に示すように、第2のパターン部群46は10のパターン部47を有しており、この結果、第2のパターン部群46内には、10種類の異なるアスペクト比(ha/wa)を有する凸部47aが含まれている。また、第2のパターン部群46に含まれた凸部47aの断面三角形における底辺の長さwaに対する高さhaの比の最大値は、凹凸部35に含まれた断面三角形状の凸部のアスペクト比のうちの最大値と同一となっている。具体例として、製造される加工品80が合成皮革用の離型紙(型紙)である場合、第2のパターン部群46に含まれる凸部47aのアスペクト比の最大値は、例えば1.0とすることができる。
【0064】
なお、第1のパターン部群42に含まれた凸部43aのアスペクト比(ha/wa)は、上述のように、一定である。ここで、第1のパターン部群42に含まれた凸部43aのアスペクト比は、例えば、凹凸部35の凹凸形状を構成する凸部のアスペクト比のうちの最大値の半分の値や、凹凸部35の凹凸形状を構成する凸部のアスペクト比の略平均値等に設定することができる。また、第2のパターン部群46に含まれた凸部47aの高さhaは、上述のように、一定である。ここで、第2のパターン部群46に含まれた凸部47aの高さは、例えば、凹凸部35の凹凸形状を構成する凸部の高さのうちの最大値の半分の値や、凹凸部35の凹凸形状を構成する凸部の高さの略平均値等に設定することができる。
【0065】
エンボス型面30における凸部の高さhaおよび凸部のアスペクト比(ha/wa)は、原反70への凹凸形状の転写効率に対して重大な影響を与え得る二つのパラメータである。そして、凹凸パターン40は、凹凸部35の凹凸形状に含まれ得る種々の高さと、凹凸部35の凹凸形状に含まれ得る種々のアスペクト比と、を含んだ凹凸形状を有している。すなわち、凹凸パターン40によって原反70に形成される検査用凹凸パターン90は、凹凸部35によって原反70に形成される凹凸柄85の凹凸形状と、非常に関連性の高い凹凸形状を有するようになる。そして、凹凸パターン40が検査用凹凸パターン90として原反70に転写される際の転写効率は、凹凸部35が凹凸柄85として原反70に転写される際の転写効率と強い相関性を有するようになる。このため、凹凸パターン40によって原反70に形成される検査用凹凸パターン90を検査することにより、凹凸部35によって原反70に形成され複雑な凹凸形状を有する凹凸柄85の凹凸形状を精度良く確認することが可能となる。
【0066】
なお、エンボス型面30に形成された凹凸形状の種々の点について詳細に説明してきたが、上述した形状に関する種々の点、例えば、凸部の断面形状(三角形状等)、凸部の高さ、凸部のアスペクト比等は、必ずしも厳密性を要するものではなく、おおよそのものとして考えれば十分である。例えば、製造誤差等に起因した上述の説明からのずれ等を当然に無視してもよい。
【0067】
また、図3に示すように、エンボス型面30の各パターン部43,47の近傍には、それぞれ、当該パターン部43,47に含まれる凸部43a,47aの形状の特徴を示す印39a,39bが付されている。さらに、図3および図2に示すように、エンボス型面30は、凹凸パターン40の位置を特定するための見当マーク部37をさらに有している。見当マーク部37は、例えば図3に示すように、十字状の突出部として構成することができる。図示する例において、見当マーク部37は、第1のパターン部群42に含まれる複数のパターン部43および第2のパターン部群46に含まれる複数のパターン部47と、エンボスロール20の円周方向に並べて配列されている。これらの印39a,39bおよび見当マーク部37により、第1のパターン部群42に含まれる複数のパターン部43および第2のパターン部群46に含まれる複数のパターン部47の位置を特定しやすくなる。これにともなって、凹凸パターン40によって原反70に形成される検査用凹凸パターン90の位置も特定しやすくなる。これにより、凹凸パターン40の取り扱い、並びに、凹凸パターン40によって原反70に形成される検査用凹凸パターン90の取り扱いを容易にすることができる。
【0068】
次に、エンボスロール20に対向して配置されたバックアップロール13について説明する。バックアップロール13は、エンボスロール20と略同一の径を有している。バックアップロール13は、エンボスロール20と同期して、エンボスロール20の周速度と略同一の周速度で回転することができるように構成されている。
【0069】
また、バックアップロール13は、エンボス型面30に押圧されて、エンボス型面30上に形成された凹凸形状に対応して変形可能であり、かつ、変形状態を少なくとも一定の期間維持し得る表面層を有している。すなわち、バックアップロール13は、エンボス型面30として種々の凹凸形状を有したエンボスロール20に対し、汎用性を有したメス型として機能するようになる。このようなバックアップロール13として、例えばペーパーロールと呼ばれるロール状部材が広く普及している。ペーパーロールの表面層は、羊毛や紙等の繊維を押し固めて形成されている。
【0070】
ところで、図1および図2に示すように、エンボス装置10は、エンボスロール20およびバックアップロール13の下流側に配置され、凹凸パターン40を転写されてなる原反70の検査用凹凸パターン90に関する情報を非接触状態で測定するセンサ15を、さらに備えている。本実施の形態において、センサ15は、検査対象物上での鏡面反射率に基づいて、検査対象物の光沢度を測定することができる光沢度計によって構成されている。なお、本件における「光沢度」とは、JISS6007に準拠して測定される光沢度のことである。
【0071】
具体的には、図6および図7に示すように、センサ15は、光を照射する発光部15aと、光を受ける受光部15bと、を有している。発光部15aおよび受光部15bは、発光部15aからの光が、原反70の検査用凹凸パターン90上で鏡面反射した場合に、受光部15bに入射するように、位置決めされている。これにより、図6に示すように、原反70の検査用凹凸パターン90の粗度が粗い場合、発光部15aからの光は検査用凹凸パターン90上で比較的に強く散乱反射し、受光部15bに入射する光の量は減少する。この場合、光沢度計により測定される光沢度は低い数値を取るようになる。一方、図7に示すように、原反70の検査用凹凸パターン90が平坦化されている場合、発光部15aからの光の多くは検査用凹凸パターン90上で鏡面反射し、受光部15bに入射する光の量は増大する。この場合、光沢度計により測定される光沢度は高い数値を取るようになる。すなわち、センサ15によって測定される検査用凹凸パターン90の光沢度は、検査用凹凸パターン90の粗さの度合い(例えば面粗度や凹凸深さ等)と関連して変動するようになる。例えば、図8に示すように、光沢度計としてのセンサ15によって測定された光沢度と、検査対象物の粗面の粗さ(JISB0401に準拠して測定された十点平均粗さRz)と、は強い相関性を有している。したがって、光沢度計からなるセンサ15によって、検査用凹凸パターン90の粗さの度合い(平坦化の程度)に関する情報を非接触状態で精度良く測定することができる。
【0072】
また、図2に示すように、エンボス装置10は、センサ15に接続された制御装置11であって、センサ15による測定値に基づいて原反70に形成された検査用凹凸パターン90を検査する制御装置11を、さらに備えている。制御装置11は、原反70に形成された検査用凹凸パターン90が、予め設定された程度を越えて平坦化しているか否か、あるいは、予め設定された程度以上に平坦化しているか否か、を判定するようになっている。また、制御装置11は、エンボスロール20の回転駆動機構、バックアップロール13の回転駆動機構および原反供給装置にも接続されている。そして、制御装置11は、センサ15による測定値に基づき、エンボスロール20の回転、バックアップロール13の回転、原反70の供給等を制御することができる。
【0073】
次に、以上のような構成からなるエンボス装置10によって製造され得る加工品80について、説明する。
【0074】
上述したように、加工品80は、エンボスロール20およびバックアップロール13の間で原反70を挟圧し、原反70の表面に凹凸形状を形成することにより作製される。すなわち、加工品80は、エンボス加工によってエンボス型面30の凹凸形状を転写された原反70を備えている。原反70は、例えば、紙、より具体的には、80g/m2〜200g/m2程度の坪量を有したクラフト紙から構成され得る。原反70の厚みは、数百μm、より具体的には25μm〜500μm程度とすることができる。
【0075】
原反70は、凹凸柄85と、原反70上の一方向に沿って凹凸柄85からずれた位置に配置された検査用凹凸パターン90と、を有している。この検査用凹凸パターン90は、上述したように、凹凸柄35の凹凸の程度を検査するために用いられる。
【0076】
上述してきたように、凹凸柄85は、エンボス型面30の凹凸部35を転写されることによって形成されている。したがって、凹凸柄85は、上述したエンボス型面30の凹凸部35の凹凸形状に対応した凹凸形状を有するようになる。一例として、製造される加工品が合成皮革用の離型紙(型紙)である場合には、凹凸柄85は皮模様を有するように構成される。同様に、検査用凹凸パターン90は、エンボス型面30の凹凸パターン40を転写されることによって形成されている。したがって、検査用凹凸パターン90は、上述したエンボス型面30の凹凸パターン40の凹凸形状に対応した凹凸形状を有するようになり、凹凸柄35とは異なる凹凸形状を有する。
【0077】
以下、図1、図2、図4および図5を主に参照して、検査用凹凸パターン90について詳述するが、いずれも、エンボス型面30の凹凸パターン40に対応した凹凸形状であることが容易に理解されるだろう。また、本件で説明する加工品80の凹凸は、原反70のエンボス型面30に対面する側の面を基準として「凸」および「凹」を用いる。
【0078】
図1および図2に示すように、検査用凹凸パターン30は、原反70上の前記一方向(本例では、原反70の長手方向に直交する幅方向)に沿って互いからずれた位置に配置された第1の検査用パターン部群92および第2の検査用パターン部群96を有している。第1の検査用パターン部群92および第2の検査用パターン部群96は、前記一方向と直交する原反70上の他方向(本例では、原反70の長手方向)に沿って並べて配列された複数の検査用パターン部93,97をそれぞれ含んでいる。
【0079】
図4および図5に示すように、第1の検査用パターン部群92および第2の検査用パターン部群96に含まれる各検査用パターン部93,97は複数の凹部93a,97aを含んでいる。この凹部93a,97aによって、検査用凹凸パターン90の凹凸形状が構成されている。
【0080】
凹部93a,97aは、原反70上の他方向(原反の長手方向)に沿って並べて配列されている。各凹部93a,97aは、原反70上の一方向(原反の幅方向)に直交する断面において三角形状(厳密には二等辺三角形)のへこみとなっている。さらに、図1、図5および図6に示すように、各凹部93a,97aは、原反70上の前記一方向に沿って溝状に延びている。
【0081】
図5および図6に示すように、各検査用パターン部93,97内において、複数の凹部93a,97aは同一形状を有し、異なる検査用パターン部93,97間において、凹部93a,97aは異なる形状を有している。
【0082】
図4に示すように、第1の検査用パターン部群92内の異なる検査用パターン部93に含まれる凹部93a間において、凹部93の断面三角形における幅wbに対する深さhbの比(hb/wb、以下において単に「凹部のアスペクト比」とも呼ぶ)は互いに同一であり、凹部93の断面三角形における深さhbは互いに異なっている。とりわけ、図3に示すように、エンボス型面30の第1のパターン部群42は10のパターン部43を有しており、この結果、第1の検査用パターン部群92内には、10種類の異なる深さhbを有する凹部93aが含まれている。また、第1の検査用パターン部群92に含まれた凹部93aの深さhbの最大値は、凹凸柄85の凹凸形状を構成する凹部の深さのうちの最大値と同一となっている。
【0083】
一方、図5に示すように、第2の検査用パターン部群96内の異なる検査用パターン部97に含まれる凹部97a間において、凹部97aの断面三角形における深さhbは互いに同一であり、凹部97aの断面三角形における幅wbに対する深さhbの比(凹部のアスペクト比(hb/wb))は互いに異なっている。とりわけ、図3に示すように、エンボス型面30の第2のパターン部群46は10のパターン部47を有しており、この結果、第2の検査用パターン部群96内には、10種類の異なるアスペクト比(hb/wb)を有する凹部97aが含まれている。また、第2の検査用パターン部群96に含まれた凹部97aの断面三角形における幅wbに対する深さhbの比の最大値は、凹凸柄85に含まれた断面三角形状の凹部のアスペクト比のうちの最大値と同一となっている。
【0084】
なお、第1の検査用パターン部群92に含まれた凹部93aのアスペクト比は、例えば、凹凸柄85の凹凸形状を構成する凹部のアスペクト比のうちの最大値の半分の値や、凹凸柄85の凹凸形状を構成する凹部のアスペクト比の略平均値等に設定することができる。また、第2の検査用パターン部群96に含まれた凹部97aの深さは、例えば、凹凸柄85の凹凸形状を構成する凹部の深さのうちの最大値の半分の値や、凹凸柄85の凹凸形状を構成する凹部の深さの略平均値等に設定することができる。
【0085】
転写されるべき凹凸形状の凹部の深さhbおよび凹部のアスペクト比(hb/wb)は、原反70への凹凸形状の転写効率に対して重大な影響を与え得る二つのパラメータである。そして、検査用凹凸パターン90は、凹凸柄85の凹凸形状に含まれ得る種々の深さおよびアスペクト比を含んだ凹凸形状を有している。すなわち、凹凸パターン40によって原反70に形成された検査用凹凸パターン90は、凹凸部35によって原反70に形成された凹凸柄85の凹凸形状と、非常に関連性の高い凹凸形状を有している。そして、凹凸パターン40が検査用凹凸パターン90として原反70に転写される際の転写効率は、凹凸部35が凹凸柄85として原反70に転写される際の転写効率と強い相関性を有するようになる。このため、凹凸パターン40によって原反70に形成される検査用凹凸パターン90を検査することにより、凹凸部35によって原反70に形成され複雑な凹凸形状を有する凹凸柄85の凹凸形状を精度良く確認することが可能となる。
【0086】
なお、原反70に形成される凹凸形状の種々の点について詳細に説明してきたが、上述した形状に関する種々の点、例えば、凹部の断面形状(三角形状等)、凹部の深さ、凹部のアスペクト比等は、必ずしも厳密性を要するものではなく、おおよそのものとして考えれば十分である。例えば、加工誤差等に起因した上述の説明からのずれ等を当然に無視してもよい。
【0087】
また、図2に示すように、エンボス型面30上において凹凸パターン40に対して所定の位置に位置決めされて形成された見当マーク部37によって、加工品80には、検査用凹凸パターン90の位置を特定するための見当マーク87が転写されている。見当マーク87は、第1の検査用パターン部群92に含まれる複数の検査用パターン部93および第2の検査用パターン部群96に含まれる複数の検査用パターン部97と、原反70上の他方向(原反の長手方向)に並べて配列されている。この見当マーク87により、第1の検査用パターン部群92に含まれる複数の検査用パターン部93および第2の検査用パターン部群96に含まれる複数の検査用パターン部97の位置を特定しやすくすることができる。これにより、検査用凹凸パターン90の取り扱いを容易にすることができる。
【0088】
次に、上述した構成のエンボス装置10を用いて原反70に凹凸柄85を形成し、加工品80を製造する方法の一例について説明する。
【0089】
まず、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準を設定する工程が実施される。この工程では、エンボスロール20およびバックアップロール13を空運転させる予備空運転工程と、原反70に凹凸形状を形成する試験エンボス加工工程と、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準を決定する判定基準決定工程と、が順に行われていく。
【0090】
このうち、予備空運転工程では、図9に示すようにして、エンボスロール20およびバックアップロール13が空運転させられる。ここで、「空運転(空転)」とは、エンボスロール20およびバックアップロール13との間に原反70が供給されることなく、エンボスロール20およびバックアップロール13が回転させられることである。この空運転中、エンボスロール20のエンボス型面30がバックアップロール13の外周面に当接し、エンボス型面30の凹凸形状の凸部がバックアップロール13の外周面を押圧するようになる。このとき、エンボスロール20およびバックアップロール13の位置関係は、原反70に対して実際にエンボス加工を行う場合と概ね同様の条件に設定されていることが好ましい。
【0091】
上述したように、バックアップロール13の表面層は変形可能に構成され、かつ、変形状態を少なくとも一定期間維持し得るように構成されている。このため、この予備空運転工程では、エンボス型面30の凹凸部35の凹凸形状および凹凸パターン40の凹凸形状が、バックアップロール13の表面層(外周面)へしだいに転写されていく。そして、この工程は、バックアップロール13の表面層の変形が概ね飽和し、バックアップロール13の表面層が略一定の形状を保つようになるまで実施される。
【0092】
次に、試験エンボス加工工程について説明する。この工程では、図10に示すように、エンボスロール20およびバックアップロール13を回転させたままの状態で、原反70が、エンボスロール20およびバックアップロール13との間に原反供給装置(図示せず)から供給される。この結果、エンボス型面30の凹凸部35に対応した凹凸柄85が原反70に形成されるとともに、エンボス型面30の凹凸パターン40に対応した検査用凹凸パターン90が原反70に形成され、試験加工品81が形成されていく。
【0093】
なお、この試験エンボス工程中、エンボスロール20およびバックアップロール13の下流側に配置されたセンサ15によって、連続的に製造されていく試験加工品81の検査用凹凸パターン90の凹凸の度合いに関する情報が収集されていく。上述したように、センサ15は非接触式の光沢度計として構成されている。したがって、エンボス装置10による原反70への連続的な加工を中断させることなく、検査用凹凸パターン90の情報を収集することができる。とりわけ、センサ15は光沢度計であって、試験加工品81の検査用凹凸パターン90の部分における光沢度を瞬時に測定することができる。したがって、検査用凹凸パターン90の情報を連続的に収集することができ、これにより、第1の検査用パターン部群92および第2の検査用パターン部群96に含まれ、順次形成されていく各検査用パターン部93,97の情報を採取していくことができる。また、見当マーク87が原反70に設けられていることから、センサ15によって得られた測定結果が、どの検査用パターン部93,97に対応しているかを、正確に特定することも可能である。
【0094】
ところで、試験エンボス加工工程では、エンボスロール20およびバックアップロール13の間にある程度の厚みを有した原反70が位置している。したがって、バックアップロール13の外周面(表面層)にエンボスロール20のエンボス型面30から試験エンボス工程中に付加される圧力は、空運転工程よりも、平均化されている。このため、試験エンボス加工工程が進行していくにつれて、空運転工程中にバックアップロール13の外周面(表面層)に形成されたエンボス型面30の凹凸形状に対応した凹凸形状は、しだいに平坦化されてなだらかになっていく。また、メス型として機能するバックアップロール13の外周面の凹凸形状の平坦化にともなって、エンボス型面30の凹凸部35および凹凸パターン40を精度よく原反70に転写していくことができなくなる。すなわち、試験エンボス加工工程の進行にともない、原反70に形成された凹凸柄85の凹凸形状および検査用凹凸パターン90の凹凸形状はしだいに平坦化されていく。
【0095】
このためセンサ15によって測定される検査用凹凸パターン90の部分での光沢度の値も、試験エンボス加工工程の進行にともなって変化していく。具体的には、検査用凹凸パターン90の部分についてセンサ15によって測定される光沢度の値は、試験エンボス加工工程の進行にともなって、大きくなっていく。一例として、図11には、第1の検査用パターン部群92に含まれる各パターン部93での光沢度の測定値の変化を示す。
【0096】
次に、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準を決定する工程について説明する。この工程では、製造された試験加工品81の凹凸柄85の凹凸形状を実際に検査する。上述したように、原反70に形成される凹凸柄85の凹凸形状は、試験エンボス加工工程の進行にともなって平坦化されていく。最終的には、加工品80の用途に応じて種々設定される規格を満足できない程度にまで、凹凸柄85の凹凸形状が平坦化されるようになる。ここでは、試験エンボス加工工程において原反70に作製されていった凹凸柄85を検査して、凹凸柄85が品質良の状態から品質不良に移行する部分を調査し、当該部分と同時期に形成された検査用凹凸パターン90の凹凸形状の状況を特定する。
【0097】
上述したように、凹凸形状の凹凸のギャップ(深さ、高さ)および凹凸のアスペクト比について、検査用凹凸パターン90は、凹凸柄85が有している範囲と同一範囲を有している。そして、そして、凹凸形状の転写効率は、転写されるべき凹凸形状の凹凸のギャップ(深さ、高さ)および凹凸のアスペクト比に大きく依存する。したがって、エンボス加工工程の進行にともなった検査用凹凸パターン90の平坦化の進行は、凹凸柄85の平坦化の進行と強い相関性を有して進む。また、上述したように、センサ15によって測定される光沢度は、粗さの程度(平坦化の程度)と強い相関性を有している(図8参照)。このため、エンボス加工工程の進行にともなった凹凸柄85の平坦化の進行と、エンボス加工工程の進行にともなった検査用凹凸パターン90の光沢度の変化と、の関係を調査しておけば、形成されていく検査用凹凸パターン90の光沢度を測定していくことにより、凹凸柄85の凹凸形状の平坦化の度合い(粗さの程度)を特定することができるようになる。
【0098】
ここではさらに、凹凸柄85が要求されている品質基準を満たさなくなる際の検査用凹凸パターン90の光沢度の値を、凹凸柄85の検査を行う代わりに実施される検査用凹凸パターン90の検査における、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準として決定する。一例として、エンボス加工工程を開始してから6時間以降に形成された凹凸柄85が品質不良となる場合に、仮に検査用凹凸パターン90の光沢度がエンボス加工工程の進行にともなって図11に示すように変化するならば、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準として、エンボス加工工程を開始してから6時間後に形成された検査用凹凸パターン90の各検査用パターン部93a,97aの光沢度の値を、当該各検査用パターン部93a,97aに対する判定基準とすることができる。
【0099】
このようにして、所定の品質基準を満たさなくなる凹凸柄85と同時期に作製された検査用凹凸パターン90の光沢度が特定され、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準として制御装置11に設定される。
【0100】
以上のようにして、検査用凹凸パターン90の良否の判定基準が設定された後、エンボスロール20およびバックアップロール13を空運転させる第1空運転工程と、原反70に凹凸形状を形成する第1エンボス加工工程と、エンボスロール20およびバックアップロール13を空運転させる第2空運転工程と、が順に行われていく。
【0101】
第1空運転工程では、エンボスロール20およびバックアップロール13が空運転させられ、エンボスロール20のエンボス型面30に形成された凹凸部35および凹凸パターン40に対応した凹凸形状が、バックアップロール13の外周面に再び形成される。具体的には、図9に示すように、エンボスロール20およびバックアップロール13との間に原反70が供給されることなく、エンボスロール20およびバックアップロール13が空運転させられる。したがって、エンボスロール20のエンボス型面30がバックアップロール13の外周面に当接し、エンボス型面30の凹凸形状の凸部がバックアップロール13の外周面を押圧するようになる。これにより、エンボス型面30の凹凸部35の凹凸形状および凹凸パターン40の凹凸形状が、バックアップロール13の表面層(外周面)へしだいに転写されていく。そして、この第1空運転工程は、バックアップロール13の表面層の変形が概ね飽和し、バックアップロール13の表面層が略一定の形状を維持し得るようになるまで実施される。
【0102】
次に、第1エンボス加工工程では、図10に示すように、エンボスロール20およびバックアップロール13を回転させたままの状態で、原反供給装置(図示せず)から原反70をエンボスロール20およびバックアップロール13との間に供給する。この結果、エンボス型面30の凹凸部35に対応した凹凸柄85が原反70に形成されるとともに、エンボス型面30の凹凸パターン40に対応した検査用凹凸パターン90が原反70に形成され、加工品80が形成されていく。
【0103】
なお、この試験エンボス工程中、エンボスロール20およびバックアップロール13の下流側に配置されたセンサ15によって、連続的に製造されていく加工品80の検査用凹凸パターン90が検査されていく。具体的には、センサ15を用いて、加工品80の検査用凹凸パターン90の部分での光沢度が測定されていく。上述したように、センサ15は非接触式の光沢度計として構成されている。したがって、エンボス装置10による原反70への連続的な加工を中断させることなく、検査用凹凸パターン90の情報を収集することができる。とりわけ、光沢度計からなるセンサ15によれば、検査用凹凸パターン90の情報を連続的に収集していくことができる。これにより、第1の検査用パターン部群92および第2の検査用パターン部群96に含まれ、順次形成されていく各検査用パターン部93,97の情報を連続的に採取していくことができる。また、見当マーク87が原反70に設けられていることから、センサ15によって得られた測定結果が、どの検査用パターン部93,97に対応しているかを、正確に特定することができる。
【0104】
光沢度の測定値はセンサ15から制御装置11に送信される。上述したように、光沢度の測定値は、エンボス加工工程の進行にともなって変化し、しだいに大きくなっていく。制御装置11は、測定された光沢度の値を、予め設定された検査用凹凸パターン90の良否の判定基準の値と比較する。制御装置11は、判定基準が検査用凹凸パターン90の許容最大値として設定されている場合には、順次測定されていく検査用凹凸パターン90の光沢度の値が判定基準を超えているか否かを判断する。そして、検査用凹凸パターン90の光沢度の値が判定基準を超えていると判断した場合には、第1エンボス加工工程を終了する。同様に、制御装置11は、判定基準が検査用凹凸パターン90の許容外最小値として設定されている場合には、順次測定されていく検査用凹凸パターン90の光沢度の値が判定基準以上であるか否かを判断する。そして、検査用凹凸パターン90の光沢度の値が判定基準以上であると判断した場合には、第1エンボス加工工程を終了する。
【0105】
すなわち、検査用凹凸パターン90の凹凸形状の状態を検査することにより、加工品80の凹凸柄85が品質基準を満たさない程度にまで平坦化されているか否かを判断する。そして、加工品80の凹凸柄85が品質基準を満たさないと考えられる場合、言い換えると、メス型として機能するバックアップロール13の外周面の凹凸形状が平坦化し過ぎていると考えられる場合には、第1エンボス加工工程が終了し、第2空運転工程が開始される。
【0106】
第2空運転工程では、エンボスロール20およびバックアップロール13が空運転させられ、バックアップロール13の外周面(表面層)へ再びメス型の型入れが行われる。すなわち、エンボスロール20のエンボス型面30に形成された凹凸部35および凹凸パターン40に対応した凹凸形状が、バックアップロール13の外周面に再び形成される。この工程は、バックアップロール13の表面層の変形が概ね飽和し、バックアップロール13の表面層が概ね一定の形状を維持し得るようになるまで実施される。
【0107】
その後、上述した方法と同様の方法で第2エンボス加工工程および第3空運転工程、並びに、任意でさらなるエンボス加工工程および空運転工程が実施される。以降のエンボス加工工程中、上述した第1エンボス加工工程と同様に、原反70に形成されていく検査用凹凸パターン90が検査される。検査用凹凸パターン90の検査結果が不良と判定された場合、当該エンボス加工工程が終了する。そして、空運転工程が実施され、エンボス型面30の凹凸形状に対応した凹凸形状がバックアップロール13の外周面(表面層)へ再び形成されていく。
【0108】
以上のような本実施の形態によれば、エンボス加工時間の経過にともなった凹凸柄85の凹凸形状の変化と、検査用凹凸パターン90の凹凸形状の変化と、の関連性を予め調査しておく。そして、この調査結果に基づき、検査用凹凸パターン90の凹凸形状を検査することによって、凹凸柄85の凹凸形状を確認することが可能となる。これにより、原反70に形成されていく検査用凹凸パターン90を検査することにより、凹凸柄85の平坦化の原因となるバックアップロール13に形成された凹凸形状の平坦化の進行を、確認することができる。すなわち、複雑な凹凸形状を有することがあり、その検査が極めて煩雑で長時間を要するようになり得る凹凸柄85の検査を行うことなく、バックアップロール13の平坦化を確認することができる。また、検査用凹凸パターン90の凹凸形状は、原反70に形成される凹凸柄85とは異なり、単純化されたパターンとすることができる。したがって、検査用凹凸パターン90の検査、および、これにともなってバックアップロール13に形成された凹凸形状の検査を、精度良く容易に行うことが可能となる。これにより、バックアップロール13への型入れが必要な状況を正確に検出し、不必要なエンボス装置10の稼働停止を回避することができる。したがって、エンボス装置10を高い稼働率で稼働させて、優れた加工効率で原反70にエンボス加工を施していくことができる。また、所望の凹凸形状を有する凹凸柄85が形成された加工品80を安定して製造することができる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、検査用凹凸パターン90の検査は非接触で行われる。したがって、検査用凹凸パターン90を検査するためにエンボス装置10を停止させる必要がない。さらには、インラインで検査用凹凸パターン90を検査し、バックアップロール13に形成された凹凸形状の平坦化を確認することができる。これにより、エンボス装置10を極めて高い稼働率で稼働させて、極めて優れた加工効率で原反70にエンボス加工を施していくことができる。
【0110】
さらに、本実施の形態によれば、光沢度計により検査用凹凸パターン90の光沢度を非接触で検査して、バックアップロール13に形成された凹凸形状の平坦化の有無を確認するようになっている。このような方法によれば、帯状に延びる原反70に順次形成されていく検査用凹凸パターン90を、連続的に検査していくことができる。これにより、バックアップロール13に形成された凹凸形状の変化を連続的に確認することができる。このため、バックアップロール13への型入れが必要な場合を極めて正確に検出し、エンボス装置10を極めて高い稼働率で稼働させることができる。
【0111】
さらに、本実施の形態において、エンボス型面30の凹凸パターン40は、エンボスロール20の円周方向に沿って並べて配置された複数の凸部43a,47aを有している。また、凸部43a,47aは、エンボスロール20の回転軸線L1に直交する断面において三角形状を有している。さらに、凸部43a,47aは、エンボスロール20の回転軸線L1に沿って延びている。これらのような凸部43a,47aを有する凹凸パターン40によって原反70に形成される検査用凹凸パターン90は、極めて単純化された凹凸形状を有するようになる。したがって、原反70に形成された検査用凹凸パターン90の凹凸形状の平坦化を、種々の方法により、容易かつ正確に確認することができる。これにより、バックアップロール13への型入れが必要な場合を極めて正確に検出し、エンボス装置10を極めて高い稼働率で稼働させることができる。
【0112】
さらに、本実施の形態によれば、原反70に形成される検査用凹凸パターン90は、原反70に凹凸柄85として形成された種々のアスペクト比の凹凸形状ならびに原反70に凹凸柄85として形成された種々の深さの凹凸形状に対応した凹凸形状を含むようになる。凹凸形状のアスペクト比および凹凸形状の深さは、エンボス型面30の凹凸形状がどの程度の正確さで原反70に転写されるかを支配する最も重要な二つのパラメータとされている。したがって、検査用凹凸パターン90の凹凸形状を検査することにより、凹凸柄85が所望の凹凸形状を有しているか否かを極めて正確に判断することができる。これにより、バックアップロール13への型入れが必要な場合を極めて正確に検出し、エンボス装置10を極めて高い稼働率で稼働させることができる。
【0113】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0114】
例えば、上述した実施の形態において、凹凸パターン40の第1のパターン部群42および第2のパターン部群46が、エンボス型面30上の一方向に沿って隣接して配置されている例を示したが、これに限られない。例えば、エンボス型面30上の一方向に沿って、第1群のパターン部群42および第2のパターン部群46の間に凹凸部35が配置されていてもよい。この場合、第1群のパターン部群42に対応して形成される第1の検査用パターン部群92と、第2のパターン部群46に対応して形成される第2の検査用パターン部群96と、が原反70上の一方向に沿って離間して配置されるようになる。
【0115】
また、上述した実施の形態において、エンボス型面20の凹凸パターン40が、それぞれ複数のパターン部を有している第1群のパターン部42および第2のパターン部46を含んでいる例を示したが、これに限られない。
【0116】
例えば、エンボス型面20の凹凸パターン40が、エンボス型面20の他方向(エンボスロール20の円周方向)に沿って一列に並べて配置された複数のパターン部のみからなるようにしてもよい。この例において、各パターン部は複数の凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有する一方で、異なるパターン部間において凸部が異なる形状を有するようにしてもよい。この場合、異なるパターン部に含まれる凸部間において、凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比(凸部のアスペクト比)が互いに同一であり、凸部の断面三角形における高さが互いに異なるようにしてもよい。あるいは、異なるパターン部に含まれる凸部間において、凸部の断面三角形における高さが互いに同一であり、凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比(凸部のアスペクト比)が互いに異なるようにしてもよい。
【0117】
このように凹凸パターンの変形例に対応して、原反70に形成される検査用凹凸パターン90は、原反70上の他方向(原反の長手方向)に沿って一列に並べて配置された複数の検査用パターン部のみからなるようになる。また、各検査用パターン部は複数の凹部を含み、各検査用パターン部内において複数の凹部は同一形状を有する一方で、異なるパターン部間において凸部が異なる形状を有するようにしてもよい。この場合、異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、凹部の断面三角形における幅に対する深さの比(凹部のアスペクト比)が互いに同一であり、凹部の断面三角形における深さが互いに異なるようにしてもよい。あるいは、異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、凹部の断面三角形における深さが互いに同一であり、凹部の断面三角形における幅に対する深さの比(凹部のアスペクト比)が互いに異なるようにしてもよい。
【0118】
このような変形例においても、加工品80の検査用凹凸パターン90の凹凸形状を検査することにより、加工品80の凹凸柄85が所望の凹凸形状を有しているか否かを極めて正確に判断することができる。これにより、バックアップロール13への型入れが必要な場合を極めて正確に検出し、エンボス装置10を極めて高い稼働率で稼働させることができる。
【0119】
さらに、上述した実施の形態において、エンボス型面30の凹凸パターン部40が、互いに異なる凹凸形状を有した複数のパターン部43,47を有する例を示したが、これに限られない。エンボス型面30の凹凸パターン部40は、例えば、同一の形状の凸部を一定間隔で並べて構成されるようにしてもよい。この場合、原反70に形成される検査用凹凸パターン90は、同一の形状の凹部を一定間隔で並べてなる凹凸形状を有するようになる。
【0120】
さらに、上述した実施の形態において、センサ15が、光沢度計として構成され検査用凹凸パターン90の光沢度を測定するように構成されている例を示したが、これに限られない。例えば、センサが、変位測定器、とりわけレーザ変位測定器として構成されていてもよい。変位測定器からなるセンサによれば、原反に形成された検査用凹凸パターンの凹凸形状を非接触で測定することにより、前記検査用凹凸パターンの検査を行うことができる。そして、制御装置11は、測定された凹凸形状が予め設定された程度を越えて平坦化している場合、あるいは、測定された凹凸形状が予め設定された程度以上に平坦化している場合に、検査用凹凸パターンを不良と判定することができる。
【0121】
なお、変位測定器からなるセンサによっても、帯状に延びる原反70に連続的に形成されていく検査用凹凸パターン90を連続的に検査していくことができる。したがって、バックアップロール13に形成された凹凸形状の変化を連続的に確認することができる。これにより、バックアップロール13への型入れが必要な場合を極めて正確に検出し、エンボス装置10を極めて高い稼働率で稼働させることができる。
【0122】
さらに、上述した実施の形態において説明した検査用凹凸パターンの良否の判定基準の設定方法は単なる例示にすぎず、他の方法で検査用凹凸パターンの良否の判定基準を設定するようにしてもよい。
【0123】
さらに、上述した実施の形態において、合成皮革用の離型紙を加工品80として製造する例を挙げたが、これに限られず、その他の用途に用いられる加工品80を製造することも当然に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であり、エンボス装置およびエンボス装置による加工品の製造方法を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のエンボス装置を示す上面図である。
【図3】図3は、図1のエンボス装置に組み込まれたエンボスロールの凹凸パターンを説明するための図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、図1のエンボス装置に組み込まれたセンサの作用を説明するための図である。
【図7】図7は、図1のエンボス装置に組み込まれたセンサの作用を説明するための図である。
【図8】図8は、光沢度と表面粗さとの関係を示すグラフである。
【図9】図9は、空運転工程を説明するための図である。
【図10】図10は、エンボス加工工程を説明するための図である。
【図11】図11は、エンボス加工工程の経過にともなった検査用凹凸パターンの光沢度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0125】
10 エンボス装置
11 制御装置
13 バックアップロール
15 センサ
20 エンボスロール
30 エンボス型面
35 凹凸部
37 見当マーク部
39a,39b 印
40 凹凸パターン
42 第1のパターン部群
43 パターン部
43a 凸部
46 第2のパターン部群
47 パターン部
47a 凸部
70 原反
80 加工品
85 凹凸柄
87 見当マーク部
90 検査用凹凸パターン
92 第1の検査用パターン部群
93 検査用パターン部
93a 凹部
96 第2の検査用パターン部群
97 検査用パターン部
97a 凹部
L1 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、
前記原反に対面するようになるエンボス型面を、有するエンボスロールと、
前記エンボスロールに対向して配置され、前記エンボスロールとの間で前記原反を圧するようになるバックアップロールと、を備え、
前記エンボスロールのエンボス型面は、前記原反に形成すべき凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部と、前記エンボスロールの回転軸線に沿って前記凹凸部からずれた位置に形成され、前記凹凸部とは異なる凹凸形状を有する凹凸パターンと、を有する
ことを特徴とするエンボス装置。
【請求項2】
前記エンボスロールおよび前記バックアップロールの下流側に配置され、前記凹凸パターンを転写されてなる原反のパターンに関する情報を非接触状態で測定するセンサを、さらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のエンボス装置。
【請求項3】
前記センサは光沢度計である
ことを特徴とする請求項2に記載のエンボス装置。
【請求項4】
前記センサは変位測定器である
ことを特徴とする請求項2に記載のエンボス装置。
【請求項5】
前記センサに接続された制御装置であって、前記センサによる測定値に基づいて原反に形成された前記パターンを検査する制御装置を、さらに備え、
前記制御装置は、前記原反に形成された前記パターンが、予め設定された程度を越えて平坦化しているか否か、あるいは、予め設定された程度以上に平坦化しているか否か、を判定するようになっている
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項6】
前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数の凸部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項7】
各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状である
ことを特徴とする請求項6に記載のエンボス装置。
【請求項8】
前記凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に沿って延びている
ことを特徴とする請求項6または7に記載のエンボス装置。
【請求項9】
前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数のパターン部を有し、
各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、
異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面における凸部の形状は互いに異なる
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項10】
各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、
異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なる
ことを特徴とする請求項9に記載のエンボス装置。
【請求項11】
各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、
異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なる
ことを特徴とする請求項9に記載のエンボス装置。
【請求項12】
前記エンボス型面の前記凹凸パターンは、前記エンボスロールの円周方向に沿って並べて配置された複数のパターン部をそれぞれ含む第1のパターン部群および第2のパターン部群を有し、
前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群は、前記エンボスロールの回転軸線に沿って互いからずれた位置に配置され、
前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、
各凸部は、前記エンボスロールの回転軸線に直交する断面において三角形状であり、
前記第1のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なり、
前記第2のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なる
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項13】
前記凹凸部は複数の凸部を有し、
前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の高さの最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の高さの最大値と同一である
ことを特徴とする請求項10または12に記載のエンボス装置。
【請求項14】
前記凹凸部は、断面において三角形状となっている複数の凸部を有し、
前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値と同一である
ことを特徴とする請求項11または12に記載のエンボス装置。
【請求項15】
各パターン部の近傍には、それぞれ、当該パターン部に含まれる凸部の特徴を示す印が付されている
ことを特徴とする請求項9乃至14のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項16】
前記エンボス型面は、前記凹凸パターンの位置を特定するための見当マーク部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項17】
原反に凹凸柄を形成するためのエンボスロールであって、
前記原反に対面するようになるエンボス型面を備え、
前記エンボス型面は、前記原反に形成すべき凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部と、前記エンボスロールの回転軸線に沿って前記凹凸部からずれた位置に形成され、前記凹凸部とは異なる凹凸形状を有する凹凸パターンと、を有する
ことを特徴とするエンボスロール。
【請求項18】
原反に凹凸柄を形成するためのエンボス型面に、形成すべき前記凹凸柄に対応した凹凸形状を有する凹凸部とともに形成される凹凸パターンであって、
前記エンボス型面上の一方向に沿って前記凹凸部からずれた位置に形成され、前記凹凸部とは異なる凹凸形状を有し、
前記凹凸部によって前記原反に形成される凹凸柄を検査するために用いられる検査用凹凸パターンを、前記原反に形成するようになる
ことを特徴とする凹凸パターン。
【請求項19】
前記一方向と直交する前記エンボス型面上の他方向に沿って並べて配列され、前記凹凸部とは異なる前記凹凸形状を構成する複数の凸部を有する
ことを特徴とする請求項18に記載の凹凸パターン。
【請求項20】
各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状である
ことを特徴とする請求項19に記載の凹凸パターン。
【請求項21】
前記凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に沿って延びている
ことを特徴とする請求項19または20に記載の凹凸パターン。
【請求項22】
前記エンボス型面上の前記他方向に沿って並べて配置された複数のパターン部を有し、
各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、
異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面における凸部の形状は互いに異なる
ことを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載の凹凸パターン。
【請求項23】
各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であり、
異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なる
ことを特徴とする請求項22に記載の凹凸パターン。
【請求項24】
各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であり、
異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なる
ことを特徴とする請求項22に記載の凹凸パターン。
【請求項25】
前記エンボス型面上の前記他方向に沿って並べて配置された複数のパターン部をそれぞれ含む第1のパターン部群および第2のパターン部群を有し、
前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群は、前記エンボス型面上の前記一方向に沿って互いからずれた位置に配置され、
前記第1のパターン部群および前記第2のパターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凸部を含み、各パターン部内において前記複数の凸部は同一形状を有し、
各凸部は、前記エンボス型面上の前記一方向に直交する断面において三角形状であり、
前記第1のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における高さは互いに異なり、
前記第2のパターン部群内の異なるパターン部に含まれる凸部間において、前記凸部の断面三角形における高さは互いに同一であり、前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比は互いに異なる
ことを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載の凹凸パターン。
【請求項26】
前記凹凸部は複数の凸部を有しており、
前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の高さの最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の高さの最大値と同一である
ことを特徴とする請求項23または25に記載の凹凸パターン。
【請求項27】
前記凹凸部は、断面において三角形状となっている複数の凸部を有しており、
前記凹凸パターンに含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値は、前記凹凸部に含まれた前記凸部の断面三角形における底辺の長さに対する高さの比の最大値と同一である
ことを特徴とする請求項24または25に記載の凹凸パターン。
【請求項28】
エンボス加工を施された加工品であって、
エンボス加工によって凹凸形状を転写された原反を備え、
前記原反は、エンボス加工によって形成された凹凸柄と、前記原反上の一方向に沿って前記凹凸柄からずれた位置に配置され、エンボス加工によって形成された検査用凹凸パターンと、を有し、
前記検査用凹凸パターンは、前記凹凸柄とは異なる凹凸形状を有し、
前記検査用凹凸パターンは、エンボス加工によって形成された前記凹凸柄を検査するために用いられる
ことを特徴とする加工品。
【請求項29】
前記検査用凹凸パターンは、前記一方向と直交する前記原反上の他方向に沿って並べて配列された複数の凹部であって、前記凹凸部とは異なる前記凹凸形状を構成する複数の凹部を、有する
ことを特徴とする請求項28に記載の加工品。
【請求項30】
各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっている
ことを特徴とする請求項29に記載の加工品。
【請求項31】
前記凹部は、前記原反上の前記一方向に沿って溝状に延びている
ことを特徴とする請求項29または30に記載の加工品。
【請求項32】
前記検査用凹凸パターンは、前記原反上の前記他方向に沿って並べて配置された複数の検査用パターン部を有し、
各検査用パターン部は複数の前記凹部を含み、各検査用パターン部内において前記複数の凹部は同一形状を有し、
異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記原反上の前記一方向に直交する断面における凹部の形状は互いに異なる
ことを特徴とする請求項29乃至31のいずれか一項に記載の加工品。
【請求項33】
各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっており、
異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における深さは互いに異なる
ことを特徴とする請求項32に記載の加工品。
【請求項34】
各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっており、
異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における深さは互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに異なる
ことを特徴とする請求項32に記載の加工品。
【請求項35】
前記検査用凹凸パターンは、前記原反上の前記他方向に沿って並べて配置された複数の検査用パターン部をそれぞれ含む第1の検査用パターン部群および第2の検査用パターン部群を有し、
前記第1の検査用パターン部群および前記第2の検査用パターン部群は、前記エンボス型面上の前記一方向に沿って互いからずれた位置に配置され、
前記第1の検査用パターン部群および前記第2の検査用パターン部群に含まれる各パターン部は複数の前記凹部を含み、各検査用パターン部内において前記複数の凹部は同一形状を有し、
各凹部は、前記原反上の前記一方向に直交する断面において三角形状のへこみとなっており、
前記第1の検査用パターン部群内の異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における深さは互いに異なり、
前記第2の検査用パターン部群内の異なる検査用パターン部に含まれる凹部間において、前記凹部の断面三角形における深さは互いに同一であり、前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比は互いに異なる
ことを特徴とする請求項29乃至31のいずれか一項に記載の加工品。
【請求項36】
前記凹凸柄は、その凹凸形状を構成する複数の凹部を有しており、
前記検査用凹凸パターンに含まれた前記凹部の深さの最大値は、前記凹凸柄に含まれた前記凹部の深さの最大値と同一である
ことを特徴とする請求項33または35に記載の加工品。
【請求項37】
前記凹凸柄は、断面において三角形状となっている凹部を有しており、
前記検査用凹凸パターンに含まれた前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比の最大値は、前記凹凸柄に含まれた前記凹部の断面三角形における幅に対する深さの比の最大値と同一である
ことを特徴とする請求項34または35に記載の加工品。
【請求項38】
前記検査用凹凸パターンの位置を特定するための見当マークが設けられている
ことを特徴とする請求項28乃至37のいずれか一項に記載の加工品。
【請求項39】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載されたエンボス装置を用いて原反に凹凸柄を形成し、加工品を製造する製造方法であって、
前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボスロールのエンボス型面に形成された凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に形成する第1空運転工程と、
前記第1空運転工程後に実施される工程であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記凹凸部に対応した前記凹凸柄を前記原反に形成するとともに、前記凹凸パターンに対応した検査用凹凸パターンを前記原反に形成していく第1エンボス加工工程と、
前記第1エンボス加工工程後に実施される工程であって、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボス型面の凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に再形成する第2空運転工程と、を備え、
前記第1エンボス加工工程中に、前記原反に形成されていく検査用凹凸パターンを検査し、検査結果が不良と判定された場合に、前記第1エンボス加工工程を終了して前記第2空運転工程を開始する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項40】
前記第2空運転工程後に実施される工程であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記凹凸部に対応した前記凹凸柄を前記原反に形成するとともに、前記凹凸パターンに対応した前記検査用凹凸パターンを前記原反に形成していく第2エンボス加工工程と、
前記第2エンボス加工工程後に実施される工程であって、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボス型面の凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に再形成する第3空運転工程と、をさらに備え、
前記第2エンボス加工工程中に、前記原反に形成されていく検査用凹凸パターンを検査し、検査結果が不良と判定された場合に、前記第2エンボス加工工程を終了して前記第3空運転工程を開始する
ことを特徴とする請求項39に記載の製造方法。
【請求項41】
前記エンボス加工工程中における検査用凹凸パターンについての検査は、検査対象となる原反に対して非接触の状態で実施される
ことを特徴とする請求項39または40に記載の製造方法。
【請求項42】
光沢度計を用い、前記原反の前記検査用凹凸パターンが形成された部分の光沢度を非接触で測定することにより、前記検査用凹凸パターンの検査を行い、
測定された光沢度が予め設定された光沢度以上となった場合、あるいは、測定された光沢度が予め設定された光沢度よりも大きくなった場合に、不良と判定されるようになっている
ことを特徴とする請求項41に記載の製造方法。
【請求項43】
非接触式センサを用い、前記原反に形成された前記検査用凹凸パターンの凹凸形状を非接触で測定することにより、前記検査用凹凸パターンの検査を行い、
測定された凹凸形状が予め設定された程度を越えて平坦化している場合、あるいは、測定された凹凸形状が予め設定された程度以上に平坦化している場合に、不良と判定されるようになっている
ことを特徴とする請求項41に記載の製造方法。
【請求項44】
前記検査用凹凸パターンの良否の判定基準を設定する工程を、さらに備え、
前記判定基準を設定する工程は、
前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを空運転させ、前記エンボスロールのエンボス型面に形成された凹凸部および凹凸パターンに対応した凹凸形状を、前記バックアップロールの外周面に形成する予備空運転工程と、
前記予備空運転工程後に実施される工程であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記凹凸部に対応した前記凹凸柄を前記原反に形成するとともに、前記凹凸パターンに対応した検査用凹凸パターンを前記原反に形成していく試験エンボス加工工程と、
前記試験エンボス加工工程において原反に作製されていった凹凸柄を検査して、前記凹凸柄が検査良から検査不良に移行する部分を調査し、当該部分と同時期に形成された検査用凹凸パターンに基づいて前記検査用凹凸パターンの良否の判定基準を決定する判定基準決定工程と、を有する
ことを特徴とする請求項39乃至43のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−233956(P2009−233956A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81286(P2008−81286)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】