説明

エーテルの製造方法

【課題】化合物4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリル又は医薬として許容されるその塩の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の反応スキームによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリル化合物、その任意のエナンチオマー、その任意のジアステレオマー、又はかかる化合物のいずれかの塩の新規の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
同一出願人による同時係属出願である米国特許出願第11/053,010号(2004年2月13日出願)(WO 2005/080320に対応)は、多くのベンゾニトリル誘導体、並びにその抗アンドロゲン剤としての用途を開示する。実施例31Aは、以下の:
【化1】

に記載される合成経路を用いて、かかる化合物のうちの一つ、(1S,4S)-4-(4-ヒドロキシ-1-メチルペンチオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリル (3)の製造を例示する。
【0003】
上記したように、(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオール(1)を、無水THF中に溶解し、そして無水条件下で強塩基、水素化ナトリウムで脱プロトン化して、アルコキシドを生成した。4-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾニトリル(2)を次に反応液に加え、無水条件を維持し、そして反応液を反応が完了するまで攪拌した。上記反応シーケンスが、構造(3)の所望のベンゾニトリルの十分な量を製造する一方で、かなりの量の以下の構造(4):
【化2】

により表されるビス-エーテルも製造した。実験台規模において、化合物(3)と化合物(4)とのモル比は、典型的に約3:1であった。
【0004】
スキーム1の上記反応をスケールアップする最初の試みにより入り混じった結果が生じた。当該反応により化合物(3):化合物(4)の1:1混合物が製造されたということがHPLC分析により示された。続いて精製し、(3)の最終収率は35%でしかなかった。こうして、4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリルの高収率の製造方法に対する必要性が当該技術分野に存在する。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリル、そのエナンチオマー、そのジアステレオマー、及びその塩の新たな製造方法が発見された。新たな方法は、以下の反応スキームII:
【化3】

において記載される。
【0006】
反応物質のうちの一つは、構造(1)のジオールである。もう一方の反応物質は、構造(2)のベンゾニトリルであり、ここでXは、ハロゲン原子により表される。典型的に、等量のベンゾニトリル及びジオールは、反応の完了を許容する十分な時間の間、溶媒中の塩基及び相間移動触媒と接触される。
【0007】
新規方法は、多くの利点を有する。当該方法は、実質的に構造(4)の不所望のビス-エーテルの生成を低減する。場合により新規方法を水和条件下で行うことができるので、工業的スケールアップに極めて変更しやすい。水素化ナトリウムは、ジオール(1)と反応して、反応において使用される(1)の1モル毎に1モルの水素ガスを生成するので、本方法は、前述の水素化方法より極めて安全である。前述の方法はまた、水素化ナトリウムが水と激しく反応して水素ガスを発生するので、無水条件を必要とする。可燃性、高反応性、及び水酸化ナトリウムの一般的に危険な性質により、当該反応を大規模反応に不適なものとしてしまう。この新規の方法は、工業上の適用にずっと変更しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、その構造が以下:
【化4】

である4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリル化合物(以後「化合物」とする)の新規の製造方法に関する。
【0009】
本化合物は、2個の不斉中心を含む。当該不斉中心をアスタリスク(*)でマークする。本発明は、ラセミ体、個々エナンチオマー、エナンチオマーの混合体、ジアステレオマーの混合体、又はそれらの組み合わせのいずれかの製造に関すると解釈すべきである。本化合物は、また、水酸基を含み、水酸基は塩、そしてより典型的には、医薬として許容される塩基添加塩に変換されうる。本化合物に対する本出願の記載はいずれも、ラセミ体、個々のエナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマーの混合物、及び/又はそれらの組み合わせ、又はかかる任意の物質についての塩を指すと解釈すべきである。
【0010】
本出願において使用されるとき、「塩」という用語は、医薬として許容される塩を指し、そして工業上の方法において使用するために適した塩を指す。「医薬として許容される」という用語は、哺乳動物に投与するために適しているということを意味する。医薬として許容される塩の例は、本化合物の非毒性の有機又は無機塩基添加塩のいずれかを含む。適切な塩基を形成する具体的な塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化バリウム;アンモニア、及び脂肪族、脂環式、又は芳香族有機アミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、及びピコリンを含む。
【0011】
4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリルの製造方法は、反応スキームIIにおいて上で記載され、そして読み手の便宜のため、以下に繰返し記載される。
【化5】

【0012】
反応物質の一つは、式(1)のジオールであり、当該物質は市販されている。当該ジオールは、2個の不斉中心を有し、そして3個の異なる立体異性体(2個はエナンチオマーであり、そして1個はメソ体である)として存在する。反応において1つの立体異性体を利用することにより、最終産物の立体化学を制御することができる。例えば、(R,R)-ジオールの利用により、(3)の(R,R)異性体をもたらし、(S,S)-ジオールの利用により、(3)の(S,S)-異性体をもたらす。(R,S)ジオール(メソ体)の利用により、(3)の(R,S)及び(S,R)異性体のラセミ混合物がもたらされる。典型的に、アルコール立体異性体は、(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオール(当該物質は市販されている)であり、当該物質は、最終産物として(1S,4S)-4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリルを生成する。或いは、ジオール(1)の立体異性体の混合物のいずれかから誘導される構造(3)の最終産物を、キラル分離にかけて、所望の立体異性体を産生することができる。
【0013】
もう一方の反応物質は、構造(2)のベンゾニトリル(式中、Xはハロゲン原子である)である。典型的に、Xはフッ素であろう。これらのベンゾニトリルは、市販の供給元から利用できる。
【0014】
当該反応は、典型的に、溶媒中でジオール(1)とベンゾニトリル(2)とを接触させることにより行われる。これらの反応物質の量は、決定的ではない。例えば、用いられるベンゾニトリルの各モルについて、約0.1〜100モルのジオール、典型的には約0.1〜約3モルのジオール、そして通常約0.9〜約1.1モルのジオールが使用されてもよい。典型的に、等量が使用されるであろう。
【0015】
(当該溶媒が使用される塩基と適合する限りにおいて)標準の工業的に適した溶媒がいくつでも反応に使用されてもよい。かかる溶媒の例は、有機溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル(及び他の非環式及び環状アルキルエーテル)、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン(及び他の非環式及び環状アルカン)、ジクロロメタン、ジクロロエタン(及び、他の塩化アルカン)、トルエン、ベンゼン、キシレン(及び他の芳香族炭化水素)、アセトン、メチルエチルケトン(及び他のアルカノン)、酢酸エチル、酢酸プロピル(及び他のアルキル・アルカノエート)、メタノール、エタノール、プロパノール(及び他のアルコール)、アセトニトリル、プロピオニトリル(及び他のシアン化アルキル)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、クロロベンゼンなどを含む。有機溶媒の上記リストは、本発明を例示する目的で示されており、特許請求の範囲を制限するものではない。個々の方法において使用するために適切な有機溶媒は、「有機溶媒」という用語に包含されるように考えられるべきである。有機溶媒の量は、当業者に知られているように大幅に変えることができる。
【0016】
溶媒はまた水であってもよい。或いは、溶媒は、水と有機溶媒の混合物であってもよい。水:有機溶媒の比率は、大幅に変わりうる。例えば、その比率は、100%水〜100%有機溶媒の範囲であってもよく、より典型的には、比率は、50v/v%〜90v/v%有機溶媒の範囲であってもよい。さらなる実施態様において、当該比率は、50v/v%〜90v/v%水で変化するであろう(残りは、1以上の有機溶媒である)。
【0017】
反応物質はまた、塩基とも接触される。特定の塩基は、使用される溶媒と適合する限りは、決定的なものではない。適切な塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム(つまり金属水酸化物塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム(すなわち金属炭酸塩の塩基)、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム(すなわち金属炭酸水素塩の塩基)、アンモニア、トリエチルアミン(すなわちアミン塩基)、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム(すなわち金属カルボン酸塩の塩基)、ナトリウム・メトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド(すなわち金属アルコキシドの塩基)を含む。上記塩基のリストは、本発明を例示するために提示されており、特許請求の範囲を限定するものではない。上記リストに特定の塩基がぬけていることは、当該塩基の使用が本発明から除外されるということを示すものではない。化学方法において使用するために適した塩基の全ては、用語「塩基」に含まれるように考えられるべきである。
【0018】
当該塩基は、固体として存在することもあり、液体として当該反応液に加えられることもあり、又は気体として反応液中でバブリングしてもよい。利用される塩基の量は、大幅に変えることができ、そして約0.1当量〜約100当量の範囲内であってもよい。工程の観点から、1.0当量〜10当量が通常であり、5.0当量が典型的である。
【0019】
当該反応は、相間移動触媒の存在下で行われるであろう。相間移動触媒反応は、少量の試薬(相間移動触媒と呼ばれる)であって、反応物質のうちの一つ、もっとも一般的にはアニオンを界面を通して別の相へと抽出し、そうして反応を進行させることができる試薬を加えることにより、異なる相(不混和性の液体又は固相と液相)中に存在する化学種の間の反応を促進する現象を指す。これらの触媒は、「オニウム・イオン」(例えば、テトラアルキルアンモニウム塩及びテトラアルキルホスホニウム塩)又は無機カチオンを錯化する試薬(例えば、クラウン・エーテル)である。触媒カチオンは、反応において消費されないが、アニオンの交換が生じうる。
【0020】
当業者が認識するように、多数の相間移動触媒が、文献に記載された。これらの多くの触媒が市販されている。任意の相間移動触媒が本発明において使用されてもよい。当該文献は典型的に、化学構造に基づいて当該相間移動触媒を1〜4のカテゴリーに分類する。このカテゴリーには、1)四級アンモニウム化合物、2)四級ホスホニウム化合物、3)クラウン・エーテル、及び4)ポリエチレン・グリコール誘導体が含まれる。
【0021】
適切な四級アンモニウム化合物の例には、非限定的に:ベンジル・トリブチル・アンモニウム・ブロミド、ベンジル・トリブチル・アンモニウム・クロリド、ベンジル・トリエチル・アンモニウム・ブロミド、ベンジル・トリエチル・アンモニウム・クロリド、ベンジル・トリメチル・アンモニウム・クロリド、セチル・ピリジニウム・クロリド、セチル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド、ジデシル・ジメチル・アンモニウム・クロリド、ジメチル・ジステアリル・アンモニウム・バイサルフェート(dimethyl distearyl ammonium bisulfate)、ジメチル・ジステアリル・アンモニウム・メトサルフェート、ドデシル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド、ドデシル・トリメチル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリブチル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリブチル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリブチル・アンモニウム・水素・サルフェート、メチル・トリカプリリル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリオクチル・アンモニウム・クロリド、ミリスチル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド、セチル・ピリジニウム・ブロミド、フェニル・トリメチル・アンモニウム・クロリド、テトラブチル・アンモニウム・ボロハイドライド、テトラブチル・アンモニウム・ブロミド、テトラブチル・アンモニウム・クロリド、テトラブチル・アンモニウム・フロリド、テトラブチル・アンモニウム・水素・サルフェート、テトラブチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラブチル・アンモニウム・ヨージド、テトラブチル・アンモニウム・パークロレート、テトラエチル・アンモニウム・ブロミド、テトラエチル・アンモニウム・クロリド、テトラエチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラヘキシル・アンモニウム・ブロミド、テトラヘキシル・アンモニウム・ヨージド、テトラメチル・アンモニウム・ブロミド、テトラメチル・アンモニウム・クロリド、テトラメチル・アンモニウム・フロリド、テトラメチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラメチル・アンモニウム・ヨージド、テトラオクチル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・クロリド、テトラプロピル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラエチル・アンモニウム・クロリド、テトラエチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラメチル・アンモニウム・ブロミド、テトラメチル・アンモニウム・クロリド、テトラメチル・アンモニウム・フロリド、テトラメチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラオクチル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・クロリド、テトラプロピル・アンモニウム・ヒドロキシド、トリブチル・メチル・アンモニウム・クロリド、トリエチル・ベンジル・アンモニウム・クロリドを含む。
【0022】
適切な四級ホスホニウム塩の例は、非限定的に:ベンジル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、ベンジル・トリフェニル・ホスホニウム・クロリド、ブチル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、ブチル・トリフェニル・ホスホニウム・クロリド、エチル・トリフェニル・ホスホニウム・アセテート、エチル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、エチル・トリフェニル・ホスホニウム・ヨージド、メチル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、テトラブチル・ホスホニウム・ブロミド、テトラフェニル・ホスホニウム・ブロミドを含む。
【0023】
適切なポリエチレン・グリコールの例は:モノエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、ジエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、トリエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、テトラエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、ジプロピレン・グリコール・ジメチル・エーテル、ジエチル・グリコール・ジブチル・エーテル、ポリエチレン・グリコール・ジブチル・エーテル、及びジエチレン・グリコール・ジブチル・エーテルを含む。
【0024】
クラウン・エーテルの例は:18-クラウン-6、ジベンゾ18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、12-クラウン-4、13-クラウン-4、15-クラウン-5、及び27-クラウン-9を含む。
【0025】
典型的に、相間移動触媒は一つのみが使用されるであろうが、所望される場合、複数の相間移動触媒が加えられてもよい。有効量の相間移動触媒が、典型的には反応の開始時に反応液へと加えられよう。有効量は、使用される具体的な触媒に左右されて変化しうるが、一般的な指針として、約0.01〜約1000モルパーセントの触媒が使用され、約1〜25モルパーセントが典型的な範囲である。
【0026】
反応液の添加順番は決定的ではない。典型的には、ジオール(1)とベンゾニトリル(2)は、溶媒と接触される。次に塩基と相間移動触媒が反応混合液に加えられる。反応は0℃〜還流温度、典型的にはだいたい室温で行われうる。反応は、反応を完了させるために十分な時間行われる(つまり、反応液の量に左右されて、1分〜24時間である)。典型的には、反応の進行が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は他の類似の方法論によりモニターされよう。
【0027】
構造(3)の最終産物は、当該技術分野に知られているように単離及び回収することができる。例えば最終生成物は、抽出、蒸発、又は当該技術分野に知られている他の技術により収集することができる。最終生成物は、クロマトグラフィー、再結晶化、蒸留、又は当該技術分野に知られている他の技術により精製することができる。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明をさらに記載するために提示されている。本発明及び対応する特許請求の範囲は、これらの実験において例示される実施態様に制限されると解釈すべきではない。いかに記載されるすべてのHPLC分析は、以下の様式で行われた:
Agilent HP1100シリーズ機器で以下のパラメーター:
カラム:Zorbax Eclipse(商標)XDB-C8;4.6mm×150mm;5ミクロン
移動層A:0.2%過塩素酸を含む水
移動層B:アセトニトリル
勾配:10分かけて30%Bから95%Bにし、95%Bで10分間維持し、1分間かけて30%Bに戻す
流速:1ml/分
波長:215nm
注入体積:5μl
カラム温度:30℃
サンプル希釈:50:50のACN:H2
(3)(つまり、最終産物)の保持時間=7.5分
(4)(つまり、ビスエーテル副産物)の保持時間=11.1分
【0029】
実施例1
本実施例は、有機溶媒及び水を含むシステムにおいて塩基を使用する4-[(1S,4S)-4-ヒドロキシ-1-メチルペンチルオキシ]-2-トリフルオロメチルベンゾニトリルの製法を記載する。本実施例は、相間移動触媒の使用についても記載する。
【0030】
3lの4つ首フラスコに、機械的攪拌子及びJ-KEM温度プローブを備え付けた。フラスコを、100g(0.529mol)の4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、68.40g(0.579mol)の(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオール、9.03g(0.027mol)のテトラブチルアンモニウム・バイサルフェート、及び1.0Lのトルエンを入れた。混合液を攪拌し、そして0.230Lの45wt%水酸化カリウムの溶液を加えた。14℃から20℃へのわずかな発熱が観察された。2相の混合液を一晩攪拌し、その時点においてHPLC分析により、反応の完了が示され、10:1の比の所望の生成物:ビス・エーテル付加化合物(つまり、化合物3:化合物4)が示された。水(1.0L)を加え、そして相を分離した。有機相を0.25Lの水で3回洗浄し、そして0.25lの塩類溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、セライトを通してろ過し、次にRotavapで蒸発させた。粗製生成物を、158.12g(104%)の透明のほぼ無色のオイルとして単離した。Biotage System(ヘキサン/酢酸エチル)を使用して、シリカゲル上でフラッシュ・クロマトグラフィーにより精製を行った。これにより、116.75g(77%)の4-[(1S,4S)-4-ヒドロキシ-1-メチルペンチルオキシ]-2-トリフルオロメチルベンゾニトリルを透明無色のオイルとして生成した。当該物質は99%超の純度(a/a、HPLC)を示し、そしてプロトンNMRスペクトルは、構造と一致した。
【0031】
実施例2
本実施例は、有機溶媒と水の混合液中で塩基を使用した4-[(1S, 4S)-4-ヒドロキシ-1-メチルペンチルオキシ]-2-トリフルオロメチルベンゾニトリルの製法を記載する。相間移動触媒を使用した。
50mlの反応チューブを、257mg(1.3mmol)の4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、183mg(1.4mmol)の(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオール、22mgのテトラブチルアンモニウムブロミド、及び2.5mLのトルエンで満たした。水酸化カリウム溶液(45wt%、6.6mmol)を加え、そして2相の混合液を激しく攪拌し、そして開始物質のベンゾニトリルが消費されるまで(1area%未満)HPLCによりモニターした。反応液を約75分間室温にした。有機相のHPLC分析は、1area%の未反応ベンゾニトリル、89area%の所望の最終生成物、及び8.9area%のビスエーテル付加化合物を示した。この実験の目的は、生成物(化合物3):ビス-エーテル付加化合物(化合物4)の比を決定することであるので、最終生成物を単離しなかった。
【0032】
実施例3
50mlの反応チューブを、262mg(1.3mmol)の4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、81mg(1.4mmol)の(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオール、25mgのセチルトリメチルアンモニウム・ブロミド、及び2.5mLのトルエンで満たした。水酸化カリウム水溶液(45wt%、6.6mmol)を加え、そして2相混合液を激しく攪拌し、そして開始物質のベンゾニトリルが消費されるまで(1area%未満)、HPLCによりモニターした。反応液をおよそ75分間室温にした。有機相のHPLC分析は、31area%の未反応ベンゾニトリル、67%の所望の最終生成物、及び0.85area%のビス-エーテル付加物を示した。反応をさらに休暇の間10日間進ませ、有機相のHPLC分析は、88area%の所望の最終生成物と、9.2area%のビス-エーテル付加物を示した。本実験の目的は、生成物(化合物3):ビス-エーテル付加物(化合物4)の比を決定することであったので、最終生成物を単離しなかった。
【0033】
実施例4
25mlの反応チューブに、1022mg(5.4mmol)の4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、699mg(5.9mmol)の(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオール、96mg(0.28mmol)のテトラブチルアンモニウム・バイサルフェート、及び10mLのトルエンを加えた。激しく攪拌し、次に1.40mlの50wt%NaOHを加えた。反応液を室温で75分間攪拌した。有機相のHPLCは分析は、7.0:1混合物(モル:モル)の最終生成物:ビス-エーテル付加化合物を示した。本実験の目的は、生成物(化合物3):ビス-エーテル付加化合物(化合物4)の比を決定することであったので、最終生成物を回収しなかった。
【0034】
比較実施例A
この実施例は、同時継続中の米国特許出願題11/053,010に記載される通りに、無水条件下で強塩基を使用した、4-[(1S,4S)-4-ヒドロキシ-1-メチルペンチルオキシ]-2-トリフルオロメチルベンゾニトリルの製法を記載する。
10Lのジャケット付きChemGlass反応器に機械的攪拌子、窒素置換線、及びNesLab冷却装置を備え付けた。容器を15分間窒素置換し、そして次に61g(1.5mmol)の水素化ナトリウム(60%ミネラルオイル中)及び2.0Lのテトラヒドロフラン(THF)を入れた。懸濁液を攪拌し、そして6.5℃に冷却し、次に180.3g(1.53mol)の(2S,5S)-(+)-2,5-ヘキサンジオールを含む1.0LのTHFを35分間にわたり4回に分けて加えた。混合液はかなり濃くなり、そしてよりよく攪拌するために、添加の途中で1.0lのTHFを加えた。最大内部温度を14.4℃で観測した。懸濁液を30分間攪拌し、そして次に288.1g(1.52mol)の4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルを加えた。混合液をさらに1.0LのTHFで希釈し、次に室温にし、そして一晩攪拌させた(30分後に透明な溶液を得た)。21時間の時点でのHPLC分析は、予期された生成物(3):ビス-アルキル化副産物(4)の48:45混合物を示した。水(3.0l)及び酢酸エチル(4.0l)を加え、そして相を分離した。有機相を2.0lの水で2回洗浄し、そして2.0lの塩類溶液で1回洗浄した。水相を混合し、そしてRotavapで蒸発させた。残渣を二回1.0lの2-プロパノール中で溶解し、そしてRotaVapで蒸発させた(水を取り除くため)。粗製生成物を、ジクロロメタン/メタノールを使用してシリカゲル上でフラッシュ・クロマトグラフィーにより2回精製した。3回目のクロマトグラフィーカラム(Biotage System)を、酢酸エチル/ヘキサンを使用して行った。精製された標的を149.8g(34%)のオイルとして単離した。当該物質は、99%超の純度(a/a、HPLC)を示し、そしてプロトンNMRスペクトルは、構造と一致した。
【0035】
比較実施例B
本実施例は、同時継続中の米国特許出願第11/053,010号において記載されるように、実施例Aに記載されるより小規模で、強塩基を含むTHFを使用した4-[(1S,4S)-4-ヒドロキシ-1-メチルペンチルオキシ]-2-トリフルオロメチルベンゾニトリルの製法を記載する。
【0036】
500mLの三つ首フラスコに、機械的攪拌子、アルゴン線、及び温度プローブを備え付けた。フラスコをアルゴン置換し、次に4.237g(177mmol)の水素化ナトリウム(ミネラルオイル中に60%)及び70mlのテトラヒドロフラン(THF)を加えた。灰色の懸濁液を攪拌し、そして当該懸濁液に20分かけて12.6g(107mmol)の(2S,5S)-2,5-ヘキサンジオールを含む130mLのTHFを加えた。濃い混合液を45分間攪拌し、次に20.0g(106mmol)の4-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾニトリルを含む130mLのTHFを5分かけて加えた。混合液を2.5時間攪拌し、次に2時間還流した。反応溶液を室温に冷却し、そして週末の間攪拌させた。この時点でのHPLC分析は、69:25の企図した生成物(3):ビス-アルキル化副産物(4)の混合物を示した。反応混合物を酢酸エチルと水との間で分画した。相を分離し、そして有機相を水及び塩類溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。次に溶媒をRotavapで取り除き、35.93gの透明オイルを与えた。生成物を、ジクロロメタン/メタノールを溶出液として使用して、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含有する分画を取っておき、そしてRotavapで蒸発させて、19.63g(65%)の(3)を無色透明オイルとして与えた。当該物質は、HPLCにより99.7%(a/a)の純度を示し、そしてプロトンNMRスペクトル構造と一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

で表される化合物、又はその塩の製造方法であって、以下の式(i):
【化2】

[式中、Xはハロゲン原子である。]
で表されるベンゾニトリル誘導体を、以下の式(ii):
【化3】

で表されるジオールと、十分な時間、適切な溶媒中において、適切な温度にて、塩基及び相間移動触媒の存在下で反応させることを含む、前記方法。
【請求項2】
Xがフッ素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基が、水酸化金属、炭酸金属、炭酸水素金属、アミン、及び金属アルコキシドからなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウム・メトキシド、ナトリウム・エトキシド、及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記相間移動触媒が、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、クラウン・エーテル、及びポリエチレン・グリコールからなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記相間移動触媒が、約0.01モルパーセント〜約1000モルパーセントの量で存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記四級アンモニウム触媒が、以下の:
ベンジル・トリブチル・アンモニウム・ブロミド、ベンジル・トリブチル・アンモニウム・クロリド、ベンジル・トリエチル・アンモニウム・ブロミド、ベンジル・トリエチル・アンモニウム・クロリド、ベンジル・トリメチル・アンモニウム・クロリド、セチル・ピリジニウム・クロリド、セチル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド、ジデシル・ジメチル・アンモニウム・クロリド、ジメチル・ジステアリル・アンモニウム・バイサルフェート、ジメチル・ジステアリル・アンモニウム・メトサルフェート、ドデシル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド、ドデシル・トリメチル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリブチル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリブチル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリブチル・アンモニウム・水素サルフェート、メチル・トリカプリリル・アンモニウム・クロリド、メチル・トリオクチル・アンモニウム・クロリド、ミリスチル・トリメチル・アンモニウム・ブロミド、セチル・ピリジニウム・ブロミド、フェニル・トリメチル・アンモニウム・クロリド、テトラブチル・アンモニウム・ボロヒドリド、テトラブチル・アンモニウム・ブロミド、テトラブチル・アンモニウム・クロリド、テトラブチル・アンモニウム・フロリド、テトラブチル・アンモニウム・水素サルフェート、テトラブチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラブチル・アンモニウム・ヨージド、テトラブチル・アンモニウム・パークロレート、テトラエチル・アンモニウム・ブロミド、テトラエチル・アンモニウム・クロリド、テトラエチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラヘキシル・アンモニウム・ブロミド、テトラヘキシル・アンモニウム・ヨージド、テトラメチル・アンモニウム・ブロミド、テトラメチル・アンモニウム・クロリド、テトラメチル・アンモニウム・フルオリド、テトラメチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラメチル・アンモニウム・ヨージド、テトラオクチル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・クロリド、テトラプロピル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラエチル・アンモニウム・クロリド、テトラエチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラメチル・アンモニウム・ブロミド、テトラメチル・アンモニウム・クロリド、テトラメチル・アンモニウム・フロリド、テトラメチル・アンモニウム・ヒドロキシド、テトラオクチル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・ブロミド、テトラプロピル・アンモニウム・クロリド、テトラプロピル・アンモニウム・ヒドロキシド、トリブチル・メチル・アンモニウム・クロリド、及びトリエチル・ベンジル・アンモニウム・クロリドからなる群から選ばれる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記四級ホスホニウム触媒が、以下の:ベンジル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、ベンジル・トリフェニル・ホスホニウム・クロリド、ブチル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、ブチル・トリフェニル・ホスホニウム・クロリド、エチル・トリフェニル・ホスホニウム・アセテート、エチル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、エチル・トリフェニル・ホスホニウム・ヨージド、メチル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、プロピル・トリフェニル・ホスホニウム・ブロミド、プロピル・トリフェニル・ホスホニウム・クロリド、テトラブチル・ホスホニウム・ブロミド、及びテトラフェニル・ホスホニウム・ブロミドからなる群から選ばれる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項9】
前記クラウン・エーテルが、18-クラウン-6、ジベンゾ18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、12-クラウン-4、13-クラウン-4、15-クラウン-5、及び27-クラウン-9からなる群から選ばれる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリエチレン・グリコール触媒が、モノエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、ジエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、トリエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、テトラエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル、ジプロピレン・グリコール・ジメチル・エーテル、ジエチル・グリコール・ジブチル・エーテル、ポリエチレン・グリコール・ジブチル・エーテル、及びジエチレン・グリコール・ジブチル・エーテルからなる群から選ばれる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、有機溶媒及び水からなる群から選ばれる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジオールが、以下の:
【化4】

で表される立体化学を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、(1S,4S)-4-(4-ヒドロキシ-1-メチル-ペンチルオキシ)-2-トリフルオロメチル-ベンゾニトリル、又はその医薬として許容される塩である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2007−1978(P2007−1978A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−171537(P2006−171537)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】