説明

オイルミストセパレータ

【課題】オイルミストセパレータを比較的安価な方法で製造できる、コンパクトな設計を有する改良されたものにする。
【解決手段】セパレータには、ブローバイ・ガス経路11内でブローバイ・ガスが本体を通過できるように配置される、少なくとも1つのフィルタ本体10を有する第1のセパレータ装置2を備える。セパレータは、第1のセパレータ装置2を迂回するバイパス路18に位置する、インパクタ・セパレータとして設計される第2のセパレータ装置3を備える。第1のセパレータ装置2の圧力差が所定の値を上回ると、板バネ、ディスクバネ又はバネ式バルブ部材として設計されるバイパス弁4によってバイパス路18を開くようにする。ブローバイ・ガス経路18が開いているときに、バイパス弁4のバルブ本体22により形成される流れ誘導要素20によってブローバイ・ガスを衝突壁19に向ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分の構成よりなるポジティブクランクケース換気装置用のオイルミストセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に配置することができる内燃機関の作動の間、いわゆるブローガスが、それぞれの内燃機関のクランクケースにピストンとシリンダとの間での漏出によって通り抜ける。クランクケース内で容認できない過圧を防止するか又は周囲環境にブローバイ・ガスの排出を防止するために、ポジティブクランクケース換気システムが用いられる。通常、この種のポジティブ換気システムは、ベントラインによって、クランクケースを内燃機関の新鮮なガス領域に接続する。新鮮なガス領域の中で特に絞り弁の下流に、ブローバイ・ガスがクランクケースから吸い込まれるのを許容する相対的な負圧化が存在する。更に、内燃機関の作動の間、オイルミストが発生する。このように、排出されたブローバイ・ガスは、オイルミストを含む。内燃機関のオイル消費を減らすか又は内燃機関の汚染物質放出を減らすために、ポジティブクランクケース換気システムは通常、オイルミストがクランクケースから吸引されるブローバイ・ガスによって持ち運ばれた油を分離することと、それを適切なオイルリザーバに運ぶのに役に立つオイルミストセパレータを有する。オイルリザーバは、特に、クランクケースの底に取り付けられたオイルパンを含み得る。
【0003】
汚染物質排出規制の更なる強化は、この種のオイルミストセパレータの浄化効果の改良を必要とする。例えば、オイルミストセパレータのできる限り長い保守不要の耐用年数、できるだけ小さい圧損、できるだけコンパクトな設計、そして、できるだけ高い分離効率のような、更なる部分的に矛盾する要件を満たされなければならない。
【0004】
特許文献11のような、第1のセパレータ装置及び第2のセパレータ装置を有する、ポジティブ換気システムのためのオイルミストセパレータが知られている。第1のセパレータ装置は、ブローバイ・ガスが通過可能なブローバイ・ガス経路に配置される1つのフィ
ルタ本体を有する。第2のセパレータ装置は、インパクタセパレータとして設計され、第1のセパレータ装置を迂回するバイパス経路に配置される。更に、第1のセパレータ装置内の差圧が所定値を越えるとすぐにバイパス経路を開くバイパス弁が設けられる。
【0005】
特許文献1のように、バイパス弁と同様に第1のセパレータ装置及び第2のセパレータ装置を有する、クランクケース換気システム用のオイルミストセパレータが知られている。第1のセパレータ装置には、ブローバイ・ガスが内部を流れることができるように、ブローバイ・ガス経路に配置される少なくとも1つのフィルタ本体が設けられている。第2のセパレータ装置は、第1のセパレータ装置を回避し、第1のセパレータ装置の圧力差が所定の値を上回るとすぐにバイパス弁によって開かれるバイパス路に配置される。周知のオイルミストセパレータにおいて、第2のセパレータ装置はフィルタ本体により形成される。
【0006】
例えば特許文献12〜16のような、他のオイルミストセパレータが知られている。
【0007】
更に、それらのセパレータ装置を回避するためのバイパス弁により制御されるバイパス路を有するが、バイパス路の中に配置される追加セパレータユニットを備えていないオイルミストセパレータは、特許文献2〜10から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第0860589号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102006051143号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005038257号明細書
【特許文献4】独国特許第2004061938号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102004055065号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10359523号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10232044号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第19729439号明細書
【特許文献9】国際公開第01/92690号パンフレット
【特許文献10】独国実用新案第20302220号明細書
【特許文献11】実開昭61−159611号公報
【特許文献12】米国特許第4,602,595号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第102005043198号明細書
【特許文献14】特開2005−20180号公報
【特許文献15】独国特許出願公開第3618557号明細書
【特許文献16】国際公開第2009/025927号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したタイプのオイルミストセパレータのために、それが比較的安価な方法で製造されることができるという点を特徴とし、特に好ましくは、比較的長い保守不要の耐用年数を有し、許容可能な圧損を発生して比較的高い分離効率を成し遂げるという、コンパクトな設計を有する改良された実施形態を設けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、独立項の主題によって、本発明により解決される。有利な実施形態は、従属クレームの主題である。
【0011】
本発明において、第2のセパレータ装置は、インパクタ・セパレータとして設計される。これは、慣性セパレータの特別な型であり、通常、流れの偏向を達成するための適切な流れ案内手段によってブローバイ・ガスが向けられる衝突壁又は衝突板と共に働く。ガスが、力積逆転のために、単に衝突板にはね返ってだいたい逆の方向へ流出する一方、液体粒子は衝突壁に付着して、その上に蓄積することができ、流出できる。衝突板に対する衝突の間の適切な流速については、この種のインパクタ・セパレータは、フィルタ本体のものと類似の有利な分離効率を成し遂げることもできる。この種のインパクタ・セパレータにより、段階的な詰まりによって生じる背圧増加の危険度は、通常発生しない。しかしながら、所望の高い分離効率を成し遂げるために、インパクタ・セパレータは、横断面減少によって、特に対応する背圧増加に結果としてなるノズル形成によって、通常達成されることができる比較的高い流速を必要とする。このように、低差圧の場合、この種のインパクタ・セパレータは、全く働かず又は不十分にしか働かない。それとは対照的に、このように、適切に高い圧力差がすでに存在するときに、本発明のインパクタ・セパレータによるオイルミストセパレータに第2のセパレータ装置が用いられるだけである。このように、このオイルミストセパレータの実施形態は、オイルミストセパレータの増加した総合効率に結果としてなる、2つの異なるセパレータ原理の効果を結合する。フィルタ本体と働く第1のセパレータ装置が、ブローバイ・ガスの小量の流れで高い分離効率を許容する一方、インパクタ・セパレータとして設計される第2のセパレータ装置は、多量の流れでまた、高い分離効率を成し遂げることができる。
【0012】
ここで、本発明は、オイルミストセパレータに少なくとも2つの並列に配置されたセパレータ装置を備える一般的な概念に基づく。そのうちの1つは、ブローバイ・ガスが流れることができるフィルタ本体を有し、もう1つは、バイパス弁によって、圧力に依存して起動できるか又は接続されることができる。気体流のために浸透するように直ちに設計されることができるので、ブローバイ・ガスが流れることができるフィルタ本体は、非常に高い分離効率によって特徴づけられる。それは、一緒に運ばれる非常に小さいコア径までの固体又は液体粒子は、不浸透である。流れ偏向だけによってブローバイ・ガスから油滴及び固体粒子を除去する慣性セパレータと比較して、この種のフィルタ本体は、より小さい又はより軽い油滴及び固体粒子を集める。しかしながら、少なくとも単純な慣性セパレータに比べ、フィルタ本体は、増加したより高い流動抵抗を有する。この種のフィルタ本体のトラフ流動抵抗は、それぞれのフィルタ材料の負荷の増加と共に増加する。分離された固体粒子は、フィルタ材料に蓄積される。分離された液滴は、最初にフィルタ材料に蓄積されることができ、充分に濡れることでフィルタ材料から再び流出できる。ここで、流出側で油滴形成を達成することもでき、そこでは、形成される油滴は、特定のサイズに達した後に、流出するか又は滴下する。このように、フィルタ本体の通過流抵抗を、オイルミストセパレータの動作の間、増加させることができる。フィルタ本体において、クランクケースからの必要なブローバイ・ガスの吸入を危うくする容認できない高い通過流抵抗を防止するために、バイパス弁が設けられる。そして、それは、第1のセパレータ装置において所定の圧力差に達すると、第2のセパレータ装置が配置されるバイパスを開く。バイパスの中のその装置を通って、この第2のセパレータ装置は、第1のセパレータ装置に並列に配置される。動作中の第2のセパレータ装置は、それ故、第1のセパレータ装置に加えて動き、そこにおいて、2つのセパレータ装置間のブローバイ・ガスの分配は、第1のセパレータ装置に加わる圧力差に依存する。圧力差が高くなればなるほど、バイパス路及び第2のセパレータ装置を通って流れるブローバイ・ガスの量が増える。
【0013】
並列に接続されて圧力に依存して作動できる第2のセパレータ装置によって、第1のセパレータ装置の詰まったフィルタ本体の場合、又は、一般にオイルミストセパレータに加わる高い圧力差の場合でも、充分な量のブローバイ・ガスが、オイルミストセパレータの中を流れることができることを確実にすることができる。それ故、少なくとも内燃機関の関連した操作可能な領域において、クランクケースの機能的に信頼性が高い通気のために必要なブローバイ・ガス量を吸引することができる。
【0014】
本発明では、インパクタ・セパレータの衝突壁が第1のセパレータ装置のフィルタ本体の領域又は切り口により形成されるのが望ましい。例えば、インパクタ・セパレータの流れ誘導要素は、ブローバイ・ガスを濾過後側のフィルタ本体の表層の区画に向ける。フィルタ材料は、特にオイルミスト粒子の吸収に適している。これによって、フィルタの2つの機能が提供される。
【0015】
他の有利な実施形態において、バイパス弁のバルブ本体によってインパクタ・セパレータの流れ誘導要素を形成するように設けることができる。このために、バイパス弁を開くと即座に流れ誘導要素の流れを導く機能を実行するように、バルブ本体が形成される。これによって、バイパス弁は2つの機能を備えている。このことにより、オイルミストセパレータを比較的コンパクトな方法で実装することができる。
【0016】
フィルタ本体を通るブローバイ・ガスの流れにより、フィルタ材料により吸収される油がフィルタ材料の濾過後側に油滴を形成して流出するという結果をもたらす。流出する油を集めるために、オイルミストセパレータのハウジングは、油のための回収室及びリターンラインを含み、これにより、回収室からの油をハウジングから運搬することができる。特に有利な実施形態によれば、油がこの濾過前側を通ってハウジングから運搬されることができるように、リターンラインは回収室からフィルタ本体の濾過前側まで通っている。リターンバルブを、オイルミストセパレータを回避するか又はセパレータ装置を回避するときにブローバイ・ガスの吸入を防止するために、濾過後側上のリターンラインに設けられなければならないが、この設計では、濾過後側にリターンバルブを配置することを回避できる。概して、リターンラインは、クランクケースに戻るようにつながる。
【0017】
少なくとも第1のセパレータ装置のための、他の特に有利な実施形態によれば、2枚のエンドディスク及びリング形のフィルタ本体の間に配置されるフィルタカートリッジを設けることができる。このフィルタカートリッジは、取替可能な方法でオイルミストセパレータ内に配置することができるように設計される。このように、保守のときにフィルタカートリッジを新規なフィルタカートリッジと容易に交換することができる。
【0018】
好ましい変形例によれば、このフィルタカートリッジは、第1のセパレータ装置の構成要素だけでなく、第2のセパレータ装置の及び/又はバイパス弁の、及び/又はリターンラインの、構成要素も備えることができる。それによって、フィルタ本体は、高い統合割合を有する。同時に、この実施形態は、保守のときにオイルミストセパレータの比較的多くの部品数を単一工程で交換することができるという結果をもたらす。
【0019】
本発明の基礎をなしている課題は、それ故、上述したタイプのオイルミストセパレータ用のフィルタカートリッジによっても解決される。
【0020】
更に重要な特徴及び効果は、従属項、図面及び図面に基づく図の関連する説明に現れる。
【0021】
上述した機能及び以下で説明される機能は、それぞれ言及された組合せだけでなく、本発明の範囲内において、他の組合せや単独で使われることができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】異なる操作状態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【図2】異なる操作状態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【図3】異なる他の実施形態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【図4】異なる他の実施形態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【図5】異なる他の実施形態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【図6】異なる他の実施形態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【図7】フィルタカートリッジの側面図である。
【図8】バイパス弁の領域のフィルタカートリッジを示す縦断面図である。
【図9】更なる実施形態のオイルミストセパレータを示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好ましい例示的実施形態は、図面において図示されて、更に詳細に以下の記載において、説明される。同一の符号は、同一又は類似であるか、機能的に同一の構成要素について参照される。
【0024】
図1〜図6によれば、オイルミストセパレータ1は、第1のセパレータ装置2と第2のセパレータ装置3とバイパス弁4とを備える。オイルミストセパレータ1は、ポジティブクランクケース換気システムの使用のために提供されるか、又はこの種のポジティブクランクケース換気システムの一体的な部分を形成する。このために、オイルミストセパレータ1は、特に自動車に配置され得る、内燃機関の新鮮なガス領域を有するクランクケースを接続するベントラインにおいて一体化される。吸入口領域の中で勝っている負圧化によって、ブローバイ・ガスがクランクケースから排出される。オイルミスト、そして、もしあれば、例えばブローバイ・ガスと共に運ばれる煤煙のような固体粒子は、オイルミストセパレータ1によってブローバイ・ガスから分離される。このために、ブローバイ・ガスは、オイルミストセパレータ1の中を流れる。オイルミストセパレータ1のハウジング5は、ブローバイ・ガスが矢印7に従って流入する入口6及びブローバイ・ガスを矢印9に沿って流出させる出口8を有する。
【0025】
第1のセパレータ装置2は、ブローバイ・ガスが浸透可能なフィルタ材料からなる少なくとも1つのフィルタ本体10を備えている。例えば、フィルタ本体10はフリースからなる。ハウジング5内にブローバイ・ガス経路11が形成され、矢印で示すように、入口6から出口8へ移動する。オイルミストセパレータ1内で、又は、第1のセパレータ装置2内で、フィルタ本体10は、濾過前室12すなわち濾過前側12を、濾過後室13すなわち濾過後側13から切り離す。濾過前側でブローバイ・ガスは、油粒子14を運ぶ。油粒子14は、第1のセパレータ装置2によってブローバイ・ガスから切り離されるようになっている。このために、ブローバイ・ガスがフィルタ本体の中を流れることができるように、フィルタ本体10はブローバイ・ガス経路11に挿入される。このように、ブローバイ・ガスがブローバイ・ガス経路11をたどろうとすると、フィルタ本体10の中を流れなければならない。オイルミスト粒子14は、フィルタ本体10に蓄積する。ここで、ブローバイ・ガスの向きは、フィルタ本体10の材料に吸収される油が油滴15を形成するために濾過後側13に蓄積する効果を有する。一旦これらの油滴15が充分なサイズに達すると、それらは流出できるか又はフィルタ本体10からしたたることができる。ここで、自由な油滴15の動きの方向は、矢印で示され、重力方向により定まる。濾過後側13で、ハウジング5は、セパレータ装置2,3により分離される油が蓄積できる回収室16を含む。そして、リターンライン17は、油を回収室16から吐出できるようにする。第2のセパレータ装置3は、矢印で示され、第1のセパレータ装置2を回避するバイパス路18の中に配置される。バイパス弁4は、少なくともバイパス路18の開閉を制御する。バイパス弁4は、第1のセパレータ装置2に加わる圧力差に応じてバイパス路18を開閉するように設計される。所定の値以下の低差圧では、ブローバイ・ガスがブローバイ・ガス経路18の中を流れないように、バイパス弁4は閉じたままである。この状態は、図1において図示される。
【0026】
第1のセパレータ装置2の圧力差が所定の値よりも大きくなる(相対的に高くなる)とすぐに、バイパス弁4は、ブローバイ・ガスがバイパス路18の中を流れることができるように、開く。フィルタ本体10が例えば油でますます濡れることで段階的に詰まり、その通過流抵抗が一時的に増加することにより、第1のセパレータ装置2内の圧力差を増加させることができる。更にまた、液体粒子の堆積物とは対照的に通常永続的である固体粒子(例えば煤煙)が、フィルタ材料において沈澱することで、フィルタ本体10の通過流抵抗は時間とともに増加する。このように、フィルタ本体10は、オイルミストセパレータ1の耐用年数を通じて段階的に詰まる。更に、圧力差はポジティブクランクケース換気システムの一部において、比較的多くの量のブローバイ・ガスがクランクケースから排出されなければならないが、このために比較的高い圧力差がベントラインに加わり、圧力差はオイルミストセパレータ1まで広がって、最後にはセパレータ装置2にも加わる。圧力差が所定の値となったとき、またそれよりも高い圧力差となったとき、所定の値に達するとすぐに、クランクケースからのブローバイ・ガスの充分な排出を行えるようにするために、バイパス弁4が開く。
【0027】
図1〜図6の実施形態において、第2のセパレータ装置3は、インパクタ・セパレータとして設計される。このために、第2のセパレータ装置3は、衝突壁19及び流れ誘導要素20を備えている。流れ誘導要素20は、ブローバイ・ガスをバイパス路18が開いているときに、衝突壁19に向ける役割を果たす。気体流は、上記衝突壁19に衝突し、ハウジング5から誘導している方向に偏向する。一緒に運ばれる粒子も同様に衝突壁19と衝突するが、衝突壁19に貼り付いて油滴を形成し、流出することができる。衝突壁19の油を吸収する効果を強化するために、衝突壁19をフリース本体を有するものとしたり又はフリース本体により形成することができる。
【0028】
図1及び図2に示す実施形態において、衝突壁19は、第1のセパレータ装置2のフィルタ本体10の切り口により形成される。あくまで1つの例として、ここでは衝突壁19は折り曲げられたフィルタ材料からなるフィルタ本体10の端折り目によって形成される。そのようなフィルタ材料は、好ましくはフリースを含むことができ、この種の衝突壁19を実現することに適している。ここで衝突壁19を形成するフィルタ本体10の切り口は、濾過後側13に配置される。したがって、第2のセパレータ装置3によって分離された油は、濾過後側上に滴下し、回収室16に集められ、リターンライン17で吐出することができる。
【0029】
図3〜図6の実施形態において、衝突壁19は、第1のセパレータ装置2のフィルタ本体10とは別体の構成要素である。図3、図5及び図6に示す実施形態において、衝突壁19は、流れ誘導要素20によって導かれるブローバイ・ガスにさらされる別体のフリース本体21を備えている。図4に示す実施形態において、衝突壁19の全体がフリース本体により形成される。
【0030】
少なくとも図1〜図6の実施形態で、バイパス弁4は、バネ力によって、その閉位置に予め付勢されて第1のセパレータ装置2に加わる圧力差にさらされるバルブ本体22を有する。したがって、上記圧力差は、バルブ本体22を作動させる。バルブ本体22は、開閉するか又はバイパス孔23を制御するために、バイパス孔23と相互に作用する。図1〜図6の実施形態において、バルブ本体22は、板バネとして設計される。他の実施形態として、例えば閉方向において付勢されるフラップでもよい。
【0031】
ここでインパクタ・セパレータの流れ誘導要素20又は第2のセパレータ装置3がバイパス弁4のバルブ本体22により形成される、図示した実施形態が特に有利にある。ここに示す実施形態において、ブローバイ・ガス経路18が開くときにバイパス孔23を開くと即座に、バイパス孔23が流れ誘導要素20の流れを導く機能を実行し、ブローバイ・ガスを衝突壁19に向けるように、バルブ本体22が設計される。ここで、特に発生したブローバイ・ガスが衝突壁19と衝突するように、バルブ本体22がバイパス孔23を開く。
【0032】
すでに上述したように、リターンライン17はハウジング5を出て回収室16にたまっている油を運搬する。図3によれば、上記リターンライン17をフィルタ本体10の濾過後側13上に設けることができる。この場合、セパレータ装置2,3を回避すると共に、リターンバルブ24(ここでは記号で示される)は気体流の吸入を回避するためにリターンライン24に配置されている。
【0033】
図5及び図6は、フィルタ本体10の回収室16から濾過前側12まで延びるリターンライン17の好ましい実施形態を示す。次いで、リターンライン17は、ハウジング5からの油を上記濾過前側12を通して運搬できる。いずれにしろリターンライン17は、典型的にクランクケースに循環する。フィルタ本体10の濾過前側12が、ハウジング5の入口6と連通するので、適切にラインを敷設すると、油は、濾過前側12からクランクケースに再び自動的に戻るようになる。このように、外部のリターンラインは、必要でない。
【0034】
図5に示す実施形態において、リターンライン17は、リターンバルブ25を有する。このリターンバルブ25は、濾過前側12からのブローバイ・ガスの吸入を防ぎながら、油が回収室16から濾過前側12へと流れることができるように設計される。
【0035】
フィルタ本体10の濾過後側13に配置される回収室16は、図6に示す実施形態のフィルタ本体10によって、少なくとも部分的に縁取られる。ここで、リターンフロー17は、フィルタ本体10の中を流れる。このことにより、ブローバイ・ガスは、濾過後側13に、蓄積している油を押し出し、より大きな油滴の形成が生じ、この油滴を重力のためにフィルタ材料に沿って又はフィルタ本体10に沿って下方へ排出できる。回収室16の中で、油は、フィルタ本体10に沿って上昇し、それによってフィルタ本体10の下部域の動的圧力は、結果的に増加する。回収室16の中の油レベルは、同時にフィルタ本体10の、この下部域におけるブローバイ・ガスの流れを妨げる。これによって、油がブローバイ・ガスと逆方向にフィルタ本体10の中を流れて濾過前側12に着くように、フィルタ材料により油を押すことができる。本実施形態において、図5に示す実施形態においてはまだ必要である、リターンバルブ25を省略できる。
【0036】
図6は、リターンライン17がフィルタ本体10の濾過前側12上の収集導管26を有する更なる特徴を示す。この収集導管26において、リターンライン17を通って濾過前側12に着く油を集めることができる。この収集導管26は、放出ノズルとしてここで設計される少なくとも1つのドレン27を備えている。このドレン27を通って油を再び収集導管26から吐出することができる。例えば、油は、ドレン27を通って、そしてそれ故、ハウジング5から入口6を通って滴下する。図6に示す実施形態において、上記収集導管26は、リターンライン17がフィルタ本体10内に延びる変形例と結合される。収集導管26を、例えば、リターンライン17がリターンバルブ25を含む図5に示される変形例と結合することもできることは、明らかである。
【0037】
図1及び図2に示すように、第1のセパレータ装置2のフィルタ本体10をプレートフィルタタイプとして設計することができる。フィルタ本体10をオイルミストセパレータ1において、固定的に取り付けることができる。また、フィルタ本体10をオイルミストセパレータ1に交換可能に配置することができる。
【0038】
図1及び図2とは対照的に、図3〜図6は、第1のセパレータ装置2がオイルミストセパレータ1において、又は、オイルミストセパレータ1のハウジング5において、交換可能に配置されるフィルタカートリッジ28を備える実施形態を示す。この場合、上記フィルタカートリッジ28にリング形のフィルタ本体10が設けられている。フィルタカートリッジ28の縦中央軸は、ここで符号29で示される。この縦中央軸29に関し、フィルタカートリッジ28は、以下に、図3〜図6に示すそれらの取付位置に従って、上部エンドディスク30及び下部のエンドディスク31と表すこともできる、2枚の軸方向端ディスク30及び31を含む。フィルタ本体10は、これらの2枚のエンドディスク30,31間に軸方向に配置される。フィルタ本体10は、エンドディスク30,31に溶接されるか、接着されるか又は、可塑的に成形されるのが望ましい。交換可能なフィルタカートリッジ28によって、保守インターバル内でフィルタカートリッジ28を交換することによって、少なくともフィルタ本体10を容易に更新できる。
【0039】
ここに示す実施形態によれば、オイルミストセパレータ1の付加的な構成要素及び機能の少なくとも一方をフィルタカートリッジ28において統合することができる。特に、以下の列挙は単なる一例であるが、上述の機能はフィルタカートリッジ28に加え、又は代替的に実行できる。ここに示す実施形態において、バイパス弁4は、例えば、フィルタカートリッジ28に形成される。図3〜図6の実施形態において、バイパス弁4は、実質的に、板バネとして設計されるバルブ本体22を含む。また、バルブ本体22は、ピボット軸について符号32を中心に回動可能であり、例えば、ここで図示されない脚バネによって、その閉位置において予め付勢されるプレート形の構成要素でありえる。更に、これらの実施形態で、フィルタ本体10を回避するためのバイパス路18は、フィルタカートリッジ28において結合される。ここで、バイパス弁4は、上部エンドディスク30に形成されて、中央開口部(すなわち、同様に上部エンドディスク30に形成されるバイパス孔23)と相互に作用する。バイパス路18は、上記バイパス孔23(つまり上部エンドディスク30)を通る。図3、図5及び図6の実施形態において、衝突壁19は、ブラケット33によって、上部エンドディスク30に取り付けられる。このように、衝突壁19は、またフィルタカートリッジ28に一体的に形成される。ここでも、流れ誘導要素20及びバルブ本体22が一般の構成要素により形成されるので、インパクタ・セパレータの全体又は第2のセパレータ装置3の全体は、フィルタカートリッジ28に形成される。
【0040】
図3、図5及び図6に示すように、下部のエンドディスク31において、ソケット34は、ハウジング5の中に形成される対応するソケットレセプタクル35に嵌入されたフィルタカートリッジ28を伴って形成される。このために、ソケット34に、シール36を配置できる。図5に示す実施形態において、リターンバルブ25は、このソケット34に形成される。ソケット34は、回収室16を縁取るためにここに設けられ、リターンライン17はソケット34を通り抜けるためのリターンバルブ25を含む。図6に示す実施形態において、収集導管26は、フィルタカートリッジ28に形成される。例えば、収集導管26は、下部のエンドディスク31に取り付けられる。
【0041】
図7及び図8は、フィルタカートリッジ28の更なる実施形態を示す。ここでも、衝突壁19はフリース本体で形成され、このフリース本体は、上部エンドディスク30から伸びるリング37又はリブ37によって外側に放射状に支持される。放射状に内部に、衝突壁19を形成しているフリース本体は、また上部円板30から延びる更なるリブ38により支持される。ここで、バルブ本体22は、プレート形状を有し、戻しバネ39によって、その図示された閉位置においてプレロードされる。内側リブ38は、同時にバルブ本体20用の外側ガイドを形成する。これによって、バルブ本体20は、誘導された軸方向ストロークを実行できる。バルブ本体22が、その位置から適当な圧力差で上がるとすぐ同時に、インパクタ・セパレータとして設計される第2のセパレータ装置3の流れ誘導要素20としての役割を果たす。そのうえ、実施形態において、外側リブ37にとめられるカバー40が設けられ、それは、フリース本体により形成される衝突板19の軸方向の係止を実行する。ここで、衝突板19は、リング形である。
【0042】
図9によれば、オイルミストセパレータ1のもう1つの実施形態において、第2のセパレータ装置3は、ブローバイ・ガスがそれの中を流れることができるように、バイパス路18の中で配置される少なくとも1つのフィルタ本体41を備えることもできる。主に、更なるフィルタ本体41は、第1のセパレータ装置2のフィルタ本体10と同じフィルタ材料でできていてもよい。ハウジング5の中に、バイパス弁4に存在し、第1のセパレータ装置2の中を流れる、通常のブローバイ・ガスが、実線を有する矢印44によって、図5において図示される。バイパス弁4のブローバイ・ガスは、折れ線を有する矢印43により図示される。この場合、ブローバイ・ガスは、それに加えて、又は、その代わりに、第2のセパレータ装置3のフィルタ本体41の中を流れる。図9は第2のセパレータ装置3を回避するための更なるバイパスが設けられる具体例を示す。そして、そのバイパスは第2のセパレータ装置3における圧力差に応じて更なるバイパス弁44によっても制御される。図9において点鎖線を有する矢印45によって図示されるようにバイパス弁44が開いているときに、ブローバイ・ガスが上記更なるバイパスを流れる。主に、このように、いかなる数のセパレータ装置2,3を段階的に並べて配置してもよい。ここでは、フィルタカートリッジ28のモジュール式の設計が考えられ、要求事項に応じて、2台以上のセパレータ装置2,3が取り付けられる。
【0043】
図9に示す実施形態においても、各バイパス弁4,44は、バネ負荷バルブ部材22を備えている。あるいは、バルブ本体22のための他の実施形態も考えられる。例えば、バルブ本体22をディスクバネとして設計することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイ・ガスが内部を流れることができるようにブローバイ・ガス経路(11)に配置される少なくとも1つのフィルタ本体(10)を有する第1のセパレータ装置(2)と、
インパクタ・セパレータとして設計され、上記第1のセパレータ装置(2)を迂回するバイパス路(18)に配置される第2のセパレータ装置(3)と、
上記第1のセパレータ装置(2)の圧力差が所定の値を上回るとすぐに上記バイパス路(18)を開き、板バネ、ディスクバネ又はバネ式バルブ部材として設計されるバルブ本体(22)を有するバイパス弁(4)とを備える、ポジティブクランクケースベンチレーションシステムのためのオイルミストセパレータであって、
上記第2のセパレータ装置(3)は、
上記第1のセパレータ装置(2)のフィルタ本体(10)の端部に設けられた衝突壁(19)と、
上記ブローバイ・ガス経路(18)が開いているときに、上記ブローバイ・ガスを上記衝突壁(19)に向ける、上記バイパス弁(4)のバルブ本体(22)により形成される流れ誘導要素(20)と、
を備えている
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記衝突壁(19)が、フリース本体(21)を有するか又はフリース本体により形成される
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記衝突壁(19)は、上記フィルタ本体(10)のエンドディスク(30)に形成したリブ(37)に支持されている
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項4】
請求項3に記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記衝突壁(19)は、リング形であり、上記フィルタ本体(10)のエンドディスク(30)に形成したリング状のリブ(37)に支持され、
上記バルブ本体(22)は、プレート形状を有し、戻しバネ(39)によって閉位置に置いてプレロードされている
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記オイルミストセパレータ(1)のハウジング(5)内に上記第1のセパレータ装置(2)の上記フィルタ本体(10)の濾過後側(13)に配置される回収室(16)が形成され、
上記回収室(16)に上記第1のセパレータ装置(2)及び上記第2のセパレータ装置(3)の少なくとも一方によりブローバイ・ガスから分離される油が蓄積する
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項6】
請求項5に記載のオイルミストセパレータ、
上記回収室(16)において蓄積した油を上記ハウジング(5)から排出するリターンライン(17)が設けられている
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項7】
請求項6に記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記油を濾過前側(12)を通って上記ハウジング(5)から排出することができるように、上記リターンライン(17)は、上記回収室(16)から上記第1のセパレータ装置(2)のフィルタ本体(10)の濾過前側(12)までつながっている
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記リターンライン(17)が、上記濾過前側(12)への油の放出を許容し、該濾過前側(12)からのブローバイ・ガスの吸い込みを防ぐリターンバルブ(25)を有する
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1つに記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記リターンライン(17)が上記フィルタ本体(10)を通り抜けるように、上記回収室(16)は、上記第1のセパレータ装置(2)の上記フィルタ本体(10)によって、少なくとも部分的に縁取られる
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1つに記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記濾過前側(12)上に、上記リターンライン(17)は、油のための収集導管(26)を有し、該収集導管(26)は、油を該収集導管(26)から出す少なくとも1つのドレン(27)を有する
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記第1のセパレータ装置(2)は、2枚のエンドディスク(30,31)及び該2枚のエンドディスク(30,31)間のリング形のフィルタ本体(10)を含むフィルタカートリッジ(28)を有し、
上記フィルタカートリッジ(28)は、上記オイルミストセパレータ(1)に交換可能に配置される
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項12】
請求項11に記載のオイルミストセパレータにおいて、
上記フィルタカートリッジ(28)には、
上記第2のセパレータ装置(3)と、
上記バイパス路(18)と、
上記バイパス弁(4)と、
上記第2のセパレータ装置(3)のフィルタ本体(41)と、
上記インパクタ・セパレータと、
上記衝突壁(19)と、
上記流れ誘導要素(20)と、
上記フリース本体(21)と、
上記バルブ本体(22)と、
上記板バネと、
上記ディスクバネと、
上記バネ式バルブ部材と、
上記リターンライン(17)の少なくとも一部と、
上記リターンバルブ(25)と、
上記収集導管(26)と、
の構成要素のうちの少なくとも1つが形成されている
ことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のオイルミストセパレータ用のフィルタカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255451(P2012−255451A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220081(P2012−220081)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2010−538569(P2010−538569)の分割
【原出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(506292974)マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26−46, D−70376 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】