説明

オイル吸収材ブランケット及びその製造方法

【課題】 ブランケットの使用後に起こりうる如何なるオイルの漏出を最小限にするような、安価で、信頼性がある、高い対オイル吸収能を有する強固なオイル吸収材ブランケット及びその簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】 平板的構造に繊維を配置し、繊維が前記平板的構造面に対して実質的に垂直に延伸し、繊維素材にオイル吸収材粒子を添加し、繊維を前記平板的構造面に対して垂直方向から実質的に平行方向に回転させ、干渉性のブランケットが得られるように繊維組織を圧縮して製造された不織ブランケットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いオイル吸収能を有する粒子が繊維の組織中に組み込まれたオイル吸収材ブランケット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高いオイル吸収能を有する粒子が繊維の組織中に組み込まれたようなブランケットは、ドイツ国特許公開第19726182号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示されたブランケットは、ディープパイル生地の二層から成るサンドイッチ構造を具備し、前記ディープパイル生地の二層積層側面は互いに向かい合っており、前記ディープパイル生地の積層面はセルロース製である。このように複雑な工程を経て得られたブランケットはあまり強固ではなく、オイル吸収能が限られる。また、とても限られた量のオイル吸収素材を組み込むことの出来るブランケットが知られているが、この素材(粒子状或いは粉末状)は使用前のブランケットの動きによって共になくなってしまう。
【特許文献1】ドイツ国特許公開第19726182号公報
【特許文献2】オランダ国特許公開第7205232号公報
【特許文献3】オーストリア国特許第205335号公報
【特許文献4】ドイツ国特許第1122418号公報
【特許文献5】英国特許第881523号公報
【特許文献6】フランス国特許第1195940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上述の事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、ブランケットの使用後に起こり得る如何なるオイルの漏出を最小限にするような、安価で、信頼性がある、高いオイル吸収能を有する強固なオイル吸収材ブランケット及びその簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のブランケットは、平板的構造に繊維を配置し、前記繊維が前記平板的構造面に対して実質的に垂直に延伸し、前記繊維素材にオイル吸収材粒子を添加し、前記繊維を前記平板的構造面に対して垂直方向から実質的に平行方向に回転させ、干渉性のブランケットが得られるように前記繊維組織(構造)を圧縮することによって製造された不織ブランケットである。
【0005】
好ましくは、粒子はポリウレタン発泡体から作られている。ポリウレタン発泡体は、例えば廃棄冷蔵庫から回収され、とりわけオランダ国特許公開第7205232号公報(特許文献2)に開示されているように、とても高いオイル吸収能を有する物質として知られている。前記粒子は、好ましくは1〜4mmの直径を有し、その結果オイル吸収能が向上される。さらには、前記ブランケットを不織性にすることによって、オイルは容易に浸透し、オイルの吸収範囲が広がり、ポリウレタン発泡体が十分に分配されることによって高いオイル吸収能が得られる。仮に原料が消費されたとしても、本発明を使用すれば、原料の消費は殆どない。
【0006】
好ましくは、前記繊維は少なくとも一部分は合成素材で作られている。好ましくは、前記繊維の外側部は、前記繊維の中心部よりも低い融点を有している。前記繊維は、好ましくはポリプロピレンから作られており、前記繊維の外側部は、好ましくは共重合体ポリプロピレンで作られている。例えば、ポリエステルとポリプロピレンとの交互共重合体である。前記繊維は好ましくは20〜80mm、より好ましくは40〜60mmの長さを有する。
【0007】
好ましくは、前記粒子が前記繊維に接着するような範囲で、前記繊維の外側部及び/又は前記粒子を少なくとも部分的に融解させるように、前記ブランケットが前記繊維組織の圧縮中若しくは圧縮後に加熱される。粒子及び繊維への良い分配は、この融解工程が最低限のエネルギー消費に伴った高効率な様態だということを確実にする。
【0008】
更に、本発明は上述の製造方法を使用したオイル吸収材ブランケットに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、50重量%以上のポリウレタンを含み、高いオイル吸収能を有するとても強固なブランケットを製造することができる。付け加えると、仮にポリウレタン粒子の損失があったとしても、本発明の製造方法を使用することによって、ブランケットの使用に先立ってのポリウレタン粒子の消費(損失)は殆どなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本発明における好ましい態様は、オイル吸収材ブランケットが合成物質から成る繊維(合成繊維)とオイル吸収粒子から成っていることである。
【0012】
合成繊維は、数センチメートルの長さを有しており、ポリプロピレンから成る中心部と共重合体型ポリプロピレンから成る外層より成っている。従って、前記外層は、繊維の中心部よりも低い融点を有する。好ましくは、繊維は水による追い出し処理に曝される。
【0013】
オイル吸収粒子は、ポリウレタン発泡体を直径1〜4mm(好ましくは約3mm)となるように微細化して得られたポリウレタン発泡体粒子のことである(必要があれば、該粒子はふるいに掛けられる)。この様な粒子は、冷蔵庫のポリウレタン発泡体を処理する過程によって得られる廃棄物として知られている。
【0014】
図1は繊維組織(構造)を形成するための装置を示しており、図1に記載の装置のスプレッダ30を除いた装置が、オットー・アングライトナー博士(Dr. Otto Angleitner)名義のオーストリア国特許第205335号公報(特許文献3)に開示されており、同時に関連特許として、ドイツ国特許第1122418号公報(特許文献4)、英国特許第881523号公報(特許文献5)、フランス国特許第1195940号公報(特許文献6)がある。
【0015】
図1に記載の装置は垂直シュート1を具備し、繊維素材が供給されるには、前記垂直シュートは供給ベルト5の右側に隣接しており、ローラ2,3,4によって繊維素材が矢印の方向に送り込まれる。第1の生産工程において、繊維素材は、供給ベルト5の下方坂部5aと反対側のコンベアベルト12との間に運ばれ、ローラ10,11と対になっている供給ローラ14,15に向かって平行に伸びる。供給ローラ14,15は、ピックアップローラ16の上方よりも僅かに下方に配置され、前記ピックアップローラ16はハウジング17中で図示P方向に回転する。ピックアップローラ16は、ローラ16の外表面と該ローラ上の針布から成るハウジング17との間を通るように、繊維素材を運ぶ。ハウジング17は、ピックアップローラ16の低い部位に近接したある点で放出唇弁20を終端処理し、該放出唇弁20は、該ハウジング17の放出エッジ21から平面AB(図1中の点線で図示された部分)とコンベアベルト24との交点の線方向に伸びる。同時に放出唇弁20は、空気ポンプ(図示せず)に連結されており、平面流動ノズル22の上壁面を成している。前記空気ポンプによって、広い空気の流れが、ピックアップローラ16によって放出唇弁20を通じて排出されるような繊維素材に逆らって流れることができる。前記空気の流れは、該繊維素材が押し出されるような方向と平行に流れる。繊維組織を得るためには、該繊維素材が、コンベアベルト24と回転押圧ローラ26との間で形成される平面ABにより成される通り道に押し付けられる。
【0016】
空気の流れは、ファン或いは流動ノズル22の中へ圧縮空気を放出するような立ち並ぶ流動ノズル群によって発生される。繊維組織の密度は、空気の量及び空気の流速に適応させることによって調整される。空気の流速が高いほど、平面AB中の通り道における動的圧力は高くなり、並びにコンベアベルト24上で繊維組織の密度が高くなる。
【0017】
放出唇弁20と流動ノズル22は、図2及び図3に示すように、放出エッジ21に近接するハウジング17中のベアリング入れ子40と、対になるベアリングピンを備えた放出唇弁20を備え付けることで、放出エッジ21の旋回運動に適合される。ロッキング装置41が適合する位置で放出唇弁20を保有するのと同様に流動ノズル22を適合することになる。図1に示すように、このことは、平面ABとコンベアベルト24との間の交点の線方向に伸びる平面上で放出唇弁20を適合することが可能である。
【0018】
放出唇弁20が図(図1)中の位置にあるときは、コンベアベルト24に関する調整と同方向の外部の流れによる支持は平面AB方向の繊維の配向性を生む結果となると同時に、繊維は十分垂直に、繊維組織が形成されているようなコンベアベルト24の水平な支持表面に向かって延伸している。
【0019】
コンベアベルト24では、ポリウレタン発泡体粒子はスプレッダ30によって繊維組織ごと伸ばされる。繊維の垂直配向性により、粒子は繊維の間に落ちる。スプレッダ30は、2つのローラ32,33と分配コーム34で起動する供給ベルト31を具備し、ベルト31から供給された粒子を均等に分配するために前後に揺れている。供給ベルト31は、コンベアベルト24と同じ幅を有している。ローラ32に近接のコンベア(供給)ベルト31の終端において、粒子は、供給ベルト31からその辺に配置されたコンベアベルト24から生産された繊維組織に向かって落下する。
【0020】
この態様において形成された繊維組織は、その次に、2番目、即ち次の生産工程のための装置に運ばれる。或いは、繊維組織は2番目のときと同じ装置に運ばれる。
【0021】
この次の生産工程として、図3に示すように、放出唇弁20が放出エッジ21に実質的に近接するように平面上に横たわらせるために、放出唇弁20は放出エッジ21に対して下方に旋回されている。結果として、繊維は垂直シュート1並びにピックアップローラ15とハウジング17の間にある通り道を通り抜けて運ばれた後に、平面ABの上部にコンベアベルト24によって運ばれ、該繊維はコンベアベルト24に逆らって実質的に平面に押しやられる。
【0022】
図3に示すように、コンベアベルト24によって形成される平面AB中の通り道の長手方向における重さ及び位置を調整することが可能になるように、コンベアベルト24上の押圧ローラ26は、コンベアベルト24の方向に垂直に適合される。繊維組織中の繊維が平面配向性において共に押圧されるように、押圧ローラ26は第2生産工程において下方方向に配置される。このようにして、繊維組織は、高い繊維密度を有した繊維とポリウレタン粒子から成るブランケットへと転化される。
【0023】
繊維の外部共重合体層と同様の粒子が確実な温度で互いに溶融するように、この態様で形成されたブランケットは、繊維とポリウレタン粒子が151°Cで加熱されるような加熱炉装置へと運ばれる。加熱温度は合成繊維の融解率若しくはその他の因子に依存し、結果として、繊維の組成によるが、124°C〜180°Cの間で変化する。好ましくは、ブランケットは加熱炉の2つの押圧ローラの間に通されると同時に、2つの押圧ローラの間隔は適合される。このようにして、適切な結合が得られ、ブランケット使用による粒子の紛失が防止される。押圧ローラ同士の間隔を変化させることによって、別の態様において、異なった(繊維)密度を有するブランケットを得ることが可能である。
【0024】
図4は該装置の別態様を示す図であり、流動ノズル50はピン52及びハウジング17のどちらかの側部にあるベアリング51によって、放出唇弁20とは関係なく回転できるように備えられている。このことは、繊維素材がコンベアベルト24によって押し出される角度を調整することが可能であり、空気の流れの方向が前述の角度の調整とは無関係に調節されると同時に、繊維組織が形成されているときに、繊維組織は繊維の配向性による主要な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】オイル吸収材ブランケットを製造する第1生産工程で用いる製造装置の側面図である。
【図2】図1に記載の装置の細部を示す図である。
【図3】オイル吸収材ブランケットを製造する第2生産工程を設定する図1に記載の製造装置の細部を示す図である。
【図4】製造装置の別態様を示す側部立面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 垂直シュート
2,3,4,10,11,32,33 ローラ
5,31 供給ベルト
5a 坂部
12,24 コンベアベルト
14,15 供給ローラ
16 ピックアップローラ
17 ハウジング
20 放出唇弁
21 放出エッジ
22,50 流動ノズル
26 回転押圧ローラ
30 スプレッダ
34 分配コーム
40 ベアリング入れ子
41 ロッキング装置
51 ベアリング
52 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高いオイル吸収能を有する粒子が繊維の組織中に組み込まれたオイル吸収材ブランケットの製造方法であって、前記ブランケットは、平板的構造に前記繊維を配置し、前記繊維が前記平板的構造面に対して実質的に垂直に延伸し、前記繊維素材に前記オイル吸収材粒子を添加し、前記繊維を前記平板的構造面に対して垂直方向から実質的に平行方向に回転させ、干渉性のブランケットが得られるように前記繊維組織を圧縮して製造された不織ブランケットであることを特徴とするオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項2】
前記粒子がポリウレタン発泡体から成る請求項1に記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項3】
前記粒子が直径1〜4mmである請求項1又は2に記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項4】
前記繊維が少なくとも部分的に合成素材から成る請求項1乃至3のいずれかに記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項5】
前記繊維の外側部が前記繊維の中心部よりも低融点である請求項4に記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項6】
前記繊維がポリプロピレンから成る請求項4又は5に記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項7】
前記繊維の外側部が共重合体ポリプロピレンから成る請求項4乃至6のいずれかに記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項8】
前記繊維が20〜80mm、好ましくは40〜60mmの長さを有する請求項1乃至7のいずれかに記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項9】
前記粒子が前記繊維に接着するような範囲で、前記繊維の外側部及び/又は前記粒子を少なくとも部分的に融解させるように、前記ブランケットが前記繊維組織の圧縮中若しくは圧縮後に加熱される請求項1乃至8のいずれかに記載のオイル吸収材ブランケットの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の製造方法で製造されたオイル吸収材ブランケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−504940(P2009−504940A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527862(P2008−527862)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050207
【国際公開番号】WO2007/061300
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508036536)
【氏名又は名称原語表記】DESIGN&POLYMERS BV
【住所又は居所原語表記】Sofie Blankenerf 32, NL−2907 BE Capelle a/d IJssel
【Fターム(参考)】