説明

オキサゾリジノンおよびそれらを含む組成物を調製する方法

細菌の増殖を阻害するのに有用な1クラスのオキサゾリジノンを調製する方法を開示している。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1つの化学クラスとしてのオキサゾリジノンには、細菌感染症およびアテローム性動脈硬化症のような病状の療法および予防のための薬剤としての広範な用途が見出されている。これらの化合物の有用性により、例えばUS20070049759に開示の銅触媒によるクロスカップリングのように、それらを合成する効率的な経路を発見するための努力が促されてきた。参照により本明細書にその全体が組み込まれているUS20070155798には、最近、置換ピリジニルフェニル部分を特徴とする強力な抗細菌オキサゾリジノンが開示された。これらの部分は、最初はスズに基づくカップリングを必要とする合成経路によって組み込まれたが、いかなる残留スズ化合物もその毒性のために医薬の用途には望ましくない。したがって、スズ試薬の使用を必要としない置換(ピリジニル)フェニルオキサゾリジノンの合成経路が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
新規な方法は、オキサゾリジノン含有化合物の調製において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
次の構造の化合物
【0004】
【化1】

[式中、
RはHであり、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し任意選択で置換されている5員または6員の複素環である]
を合成する方法であって、
次の構造を有する化合物
【0005】
【化2】

[式中、Rは、任意選択で置換されているベンジルおよび任意選択で置換されているC〜Cアルキルからなる群から選択される]を強塩基または有機リチウム塩で処理し、次いで、得られたアニオンに、
【0006】
【化3】

を作製する条件下で、酪酸グリシジルを添加することを含む方法。
【0007】
いくつかの態様において、この処理工程は、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンのような促進化合物の存在下で実施される。
【0008】
いくつかの実施形態において、該方法は、
【0009】
【化4】


【0010】
【化5】

[式中、R’はPO(OH)である]
を生成する条件下で、POCl、POCl(OBn)、またはP(N−iPr)(O−tBu)と反応させることを含むさらなる工程を含む。
【0011】
また、該方法は、次の構造の化合物
【0012】
【化6】

[式中、R’はPO(OH)である]を次の構造の化合物
【0013】
【化7】

[式中、R’’は、PO(OH)の薬学的に許容される塩である]
を生成する条件下で、塩基で処理することも含み得る。いくつかの態様において、該塩基は、ナトリウム含有塩基である。いくつかの態様において、R’’は、PONaである。
【0014】
中間体を作製する別の方法、または上記の工程の前のさらなる工程は、次の構造の第1の中間体
【0015】
【化8】

[式中、Xは、Cl、Br、I、およびトリフルオロメタンスルホナートからなる群から選択されるような脱離基である]と、次の構造の第2の中間体
【0016】
【化9】

[式中、Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに任意選択で置換されているC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールからなる群から独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]からなる群から選択される]とを次の構造の化合物
【0017】
【化10】

を生成する条件下で、カップリングさせることを含む。
【0018】
いくつかの態様において、このカップリングは、パラジウムに結合しているホスフィンリガンドのような、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、またはPd(dba)などのパラジウム錯体の存在下で実施される。
【0019】
中間体を作製する別の方法、または上記のカップリング工程の前のさらなる工程は、
a)構造5aのハロゲン化アリール
【0020】
【化11】

[式中、Xは脱離基である]をn−ブチルリチウムのような強塩基で処理し、次いで、得られたアニオンを
【0021】
【化12】

を生成する条件下で、ホウ酸トリアルキルエステルと反応させること、または
b)構造5aのハロゲン化アリールを
【0022】
【化13】

を生成する条件下で、PdCl(dppf)のようなパラジウム触媒、およびジボロン酸のジピナコラートエステルで処理することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、Yは、B(OH)、BF、および
【0024】
【化14】

からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において、Hetは、任意選択で置換されているテトラゾリル基のような、例えば2−メチル−テトラゾール−5−イルなどの任意選択で置換されているピロール、フラン、ピペラジン、ピペリジン、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、チアゾールまたはピラジンからなる群から選択される。
【0026】
いくつかの実施形態において、該方法は、次の構造の化合物
【0027】
【化15】

を酪酸グリシジルなどのグリシジルエステルで処理することをさらに含む。いくつかの態様において、該グリシジルエステルは、例えば酪酸R−(−)−グリシジルのように、R立体化学を有する。この処理工程は、リチウムヘキサメチルジシラジドの存在下で実施することもできる。
【0028】
本明細書に記載の方法から作製される化合物としては、
【0029】
【化16】

などが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、該式の化合物は、次の構造を有する:
【0031】
【化17】

[式中、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
は、任意選択で置換されているベンジルおよび任意選択で置換されているC〜Cアルキルからなる群から選択され、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し任意選択で置換されている5員または6員の複素環である]。
【0032】
いくつかの実施形態において、該式の化合物は、次の構造を有する:
【0033】
【化18】

[式中、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
は、任意選択で置換されているベンジルおよび任意選択で置換されているC〜Cアルキルからなる群から選択され、
Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに任意選択で置換されているC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールからなる群から独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]からなる群から選択される]。
【0034】
いくつかの態様において、組成物は、本明細書中の方法に従って調製されるような本明細書中の化合物および次の構造を有する二量体
【0035】
【化19】

[式中、RaおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し任意選択で置換されている5員または6員の複素環である]
またはこの二量体の薬学的に許容される塩を含む。
【0036】
いくつかの態様において、RaはFであり、RbはHであり、Hetは2−メチル−テトラゾール−5−イルである。
【0037】
さらなる実施形態において、組成物は、上記の方法に従って調製されるような本明細書中の化合物を含み、ここで、該組成物はスズ不純物を欠いている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
置換(ピリジニル)フェニル−オキサゾリジノン
【0039】
【化20】

[式中、Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し任意選択で置換されている5員または6員の複素環であり、例えば、任意選択で置換されているテトラゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、およびイソオキサゾリル部分などである]を合成するために方法を提供する。いくつかの態様において、Hetは、2−メチル−テトラゾール−5−イルのような任意選択で置換されているテトラゾリルである。
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、少なくとも1つはFであり、
Rは、H、PO(OH)、および薬学的に許容できるPO(OH)の塩から選択される。
【0040】
特に明記しない限り、本明細書では、専門用語は、それらの通常の意味、特に、マグローヒル科学技術用語大辞典、第6版に明記される意味をとる。
【0041】
いくつかの実施形態において、方法は、以下の経路([0042]スキーム1)によって置換N−(ピリジニル)アリールオキサゾリジノンを合成することを含む。
【0042】
スキーム1
【0043】
【化21】

【0044】
スキーム1では、Rxn1において第1の中間体(4)を第2の中間体(6)とカップリングさせてカップリング生成物(7)を得て、次いで、Rxn2においてグリシジルエステルで処理して化合物(1)を得る。
スキーム2
【0045】
【化22】

【0046】
スキーム2では、中間体6は、中間体5aを、C〜Cアルキルリチウムのような、例えばn−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウムなどの強塩基2当量で処理し、次いで、ZnClまたはB(OR)、即ち、C〜Cトリアルコキシボロナート、例えばトリイソプロピルボロナートなどの適切な求電子試薬を添加することによって生成させることができる。該求電子剤がトリアルコキシボラートエステルである場合に得られた反応混合物の水性後処理により、ボロン酸6aが得られる。5aのジアニオンを環状ボロナートエステルで処理すると、環状ボロン酸エステル6bを単離できる。さらに、求電子剤がZnCl2である場合には、亜鉛試薬6cを単離できる。代替的に、宮浦ホウ素化法(Miyaura Top.Curr.Chem.2002、219、11〜59)によってボロン酸を調製することもできる。この反応では、パラジウム触媒を使用して、例えばジボロン酸のジピナコラートエステルのようなジボロン酸のジエステルをハロゲン化アリール(5a)にカップリングさせる。得られたボロン酸エステル6bは、水性酸でボロン酸6aに加水分解することができる。さらに、トリフルオロボラート誘導体6dは、KFおよび/またはKHFでの処理により、ボロン酸6aから生成させることができる。
【0047】
上記のスキームにおいて、Xは脱離基である。いくつかの実施形態において、Xは、Cl、Br、I、およびトリフルオロメタンスルホナートから選択される。
【0048】
は脱離基である。いくつかの実施形態において、Xは、Cl、Br、またはIなどのハロゲンである。
【0049】
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し任意選択で置換されている5員または6員の複素環であり、任意選択で置換されているピロール、フラン、ピペラジン、ピペリジン、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、チアゾールまたはピラジンなどが挙げられる。いくつかの態様において、Hetは、任意選択で置換されているテトラゾリルまたは2−メチル−テトラゾール−5−イルである。いくつかの実施形態において、Hetは、置換されていないか、または1個もしくは2個の置換基を有する。
【0050】
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、少なくとも1つはFであり、
Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに任意選択で置換されているC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールから独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]から選択される。いくつかの実施形態において、Yは、B(OH)またはピナコラトボラート、即ち、
【0051】
【化23】

であり、例えば、B(OH)である。C〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールは、任意選択でC〜Cアルキルで置換されていてもよい。根岸反応を実施して、YがZnClである化合物を生成することもできる(Negishi:Chem.Ind.1988、33、381〜407)。
【0052】
いくつかの実施形態において、Hetは、置換されていなくてもよく、または任意選択で、例えばハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1〜4アルキルアミノ、ジ(C1〜4アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、C1〜4アシル、C1〜4チオアルキル、C1〜4チオオキソアルキル、ハロゲン置換C1〜4アルキルおよびハロゲン置換C1〜4アルコキシからなる群から独立に選択されるような、1種または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0053】
スキーム1においても、Rは、任意選択で置換されているベンジルまたは任意選択で置換されているC〜Cアルキルである。いくつかの実施形態において、ベンジルおよびC〜Cアルキルは、置換されていないか、または独立に任意選択でハロゲンまたはC〜Cアルキルオキシなどのアルコキシで置換されている。いくつかの実施形態において、Rはベンジルであり、[0071]RはHである。
【0054】
クロスカップリング反応Rxn1の適切な触媒は、パラジウム錯体であり、例えば、パラジウムホスフィン錯体、即ちジクロロビス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、およびPCyの存在下でPd(dba)(dba=ベンジリデンアセトン)からin situで調製されるものなどである。カップリングさせる基質に対するPd錯体の割合は重大ではないが、(4または6のいずれと比較しても)約1モル%が有用であることが知られている。
【0055】
オキサゾリジノン環を生成する環化は、Rxn2において、7を1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)の存在下で、リチウムヘキサメチルジシラジドのような強塩基または有機リチウム塩、例えばn−ブチルリチウムで処理し、次いで、R−(−)−グリシジルエステルなどのグリシジルエステル、例えば酪酸エステルで処理することによって達成され、化合物1(R=H)が得られる。一実施形態では、塩基としてリチウムヘキサメチルジシラジドを、かつ溶媒としてTHFを、反応を促進するためにDMPU存在下で、約0℃〜約30℃の間の温度で、かつグリシジルエステルに対する7の化学量論組成をモルを基準にして約1:1で使用する。
【0056】
望ましい場合には、よく知られた方法に従って、化合物1(R=H)を、例えば、POClでの処理によって、二水素リン酸塩にさらに変換することができる。例えば、化合物1(R=H)をPOClで処理した後に水でクエンチするか、または、第1の工程でリン酸トリエステルを調製して第2の工程(例えば、ベンジルエステルを取り除くためにはH/Pd−C)で保護基を除去する、POCl(OBn)のような保護された形態のオキシ塩化リンを使用する2工程の方法で処理することができる。代替的に、5−ヒドロキシメチル−オキサゾリジノンをP(N−iPr)(O−tBu)で処理し、次いで、mCPBAなどの酸化剤で酸化し、次いで、塩基または水性酸で処理してtert−ブチルエステルを取り除くことができる)。
【0057】
得られた二水素リン酸塩化合物1(R=PO(OH))をNaOMeまたは他の適切なナトリウム含有塩基との反応によって化合物1の二ナトリウム塩(R=PO(O) 2Na)のような薬学的に許容される塩にさらに変換することができる。
【0058】
医薬品化学の技術分野の当業者は、「薬学的に許容される塩」という用語が生物学的に適合するカチオンおよび/またはアニオンで生成した塩を指すことを適切であると認めるであろう。こうしたカチオンとしては、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛などの金属元素のカチオン、および、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミンおよびプロカイン−塩などの窒素含有有機塩基の第四級カチオンなどが挙げられる。こうしたアニオンとしては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモイン(palmoic)酸、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホンヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロイン(steroic)酸、タンニン酸および同様の酸などの無機酸のアニオンなどが挙げられる。
【0059】
本明細書中の方法によって調製されるオキサゾリジノンは、US20070155798の方法に従って調製されてきたオキサゾリジノンとは異なる。スズを含む反応物を使用していないため、本明細書に記載の方法に従って作製されるオキサゾリジノンは、スズ不純物を含まない。さらに、いくつかの実施形態において、例えば、オキシ塩化リン(POCl)を使用してヒドロキシルを二水素リン酸塩に変換したバッチにおいて、二量体不純物が観察されている。特に、TR−701の分子は、例えば以下の構造を有するような二量体を形成する少なくとも1個のP−Cl結合を含有するリン酸エステルの分子と反応する。
【0060】
【化24】

【0061】
不純物は、検出可能ないくらかの量で存在し、該組成物の約10重量%未満で、場合によっては、約9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満または1%未満、例えば0.1%未満または0.05%未満で存在する。したがって、いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書中の方法に従って調製されるようなオキサゾリジノンおよび二量体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、いかなるスズ不純物も欠いているオキサゾリジノンを含む。
【0062】
本明細書中の方法によって調製されるオキサゾリジノンは、医薬品として有用であり、参照によりその全体が組み込まれているUS20070155798に詳細に開示されているように、細菌の増殖を阻害するのに特に有用である。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「約」および「実質的に」という用語は、依然として所望の機能を果たすまたは所望の結果を達成する、明示の量に近い量を表す。例えば、「約」および「実質的に」という用語は、明示の量の10%未満の範囲内、5%未満の範囲内、1%未満の範囲内、0.1%未満の範囲内、および0.01%未満の範囲内の量を指し得る。
(実施例)
【0064】
以下の非限定的な実施例により、本発明の方法の実施を例示する。
【0065】
試験および分析のデータ
試薬は、市販の供給源から購入し、そのまま使用した。プロトン核磁気共鳴スペクトルは、テトラメチルシランを内部参照として使用して、Bruker AVANCE300分光計上で300MHzでまたはAVANCE500分光計上で500MHzで得た。炭素核磁気共鳴スペクトルは、溶媒のピークを参照として使用して、Bruker AVANCE500分光計上で125MHzで得た。リン核磁気共鳴スペクトルは、リン酸を参照として使用して、Bruker AVANCE500分光計上で202MHzで得た。フッ素核磁気共鳴スペクトルは、Bruker AVANCE300分光計上で282MHzで得た。質量スペクトルは、Finnigan AQA分光計上でエレクトロスプレーイオン化で得た。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Whatman4500〜101番(Diamond MK6F番シリカゲル60Å)プレートを使用して実施した。TLCプレートの可視化は、UV光(254nm)または過マンガン酸カリウム染色を使用して実施した。HPLC分析は、以下の方法を用いてWaters SunFire C18カラム(150×4.60mm、3.5μm)またはWaters XBridge C18カラム(75mm×4.6mm×2.5μm)を備えたVarian Prostar HPLC上で特定の波長で検出器を用いて得た。
【0066】
方法A(Waters SunFire C18カラム)
【0067】
【表1】

【0068】
方法B(Waters XBridge C18カラム)
【0069】
【表2】

【0070】
方法C(Waters SunFire C18カラム)
【0071】
【表3】

【実施例1】
【0072】
5−ブロモ−2−(2H−テトラゾール−5−イル)ピリジン、3の調製
オーバーヘッド撹拌機、窒素導入/排気口、熱電対およびマントルヒーターを備えた22Lの三つ口丸底フラスコに、5−ブロモ−2−シアノピリジン(799g、4.37mol、1重量)、N,N−ジメチルホルムアミド(6.4L、8体積)、塩化アンモニウム(350.3g、6.55mol、1.5当量)、およびアジ化ナトリウム(425.7g、6.55mol、1.5当量)を撹拌しながら入れた。内部反応器温度設定値は、85℃(目標温度は90℃)に調整した。45分後に温度設定値に達し、反応物は、40分間にわたり94℃まで自己発熱を続けた。この反応は、76.7%(AUC)のテトラゾールアンモニウム塩のアッセイと、HPLC分析による出発物質の完全な消費により、1時間後に完了したと判断された。この混合物を冷却し、室温で濾過した。反応器および湿った濾塊を2−プロパノール(3.2L、4体積)で洗浄し、外界温度の高真空下で乾燥させ、オフホワイトの固体(847.9g、収率80%、AUC89.9%)としてテトラゾールアンモニウム塩を得た。熱安定性を知るために、このテトラゾールアンモニウム塩について示差走査熱量測定試験を実施した。この塩は、約228℃で溶解し、約270℃でエネルギー分解を受けた。
【実施例2】
【0073】
5−ブロモ−2−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)ピリジン、4(X=Br)の調製
氷/塩水浴中に設置した、オーバーヘッド撹拌機、窒素導入/排気口、および熱電対を備えた22Lの四つ口丸底フラスコに、テトラゾールアンモニウム塩(835.0g、3.44mol、1重量)、テトラヒドロフラン(7.5L、9体積)、N、N−ジメチルホルムアミド(2.5L、3体積)および水酸化ナトリウム粉末(343.5g、8.59mol、2.5当量)を撹拌しながら入れた。内部反応器温度が12℃になるように調整し、その後、20℃未満の反応温度を維持しながら、ヨードメタン(1.22kg、8.59mol、2.5当量)を50分間かけて滴下して添加した。添加時間20分後、急激な温度上昇のため、添加を中断し、反応物は10分間にわたり15〜20℃で自己発熱を続けた。残りの添加は、一定温度(18℃)で完了した。添加完了後、氷/塩水浴を除去し、反応器に水凝縮器およびマントルヒーターを備えつけた。内部反応器温度は40℃に調整したが、反応物は48℃まで自己発熱を続けた。この反応は、HPLC分析によって出発物質の完全な消費により、6時間後に完了したと判断された。便宜上、反応混合物を室温まで一晩冷却した。THFを蒸留によって除去し、反応器に水(8.35L、10体積)を入れた。スラリーを30分間撹拌して真空濾過によって濾過し、反応器および濾塊を水(4.2L、5体積)で洗浄して、粗製物4/N1異性体混合物を桃色の固体(500.7g、収率61%、3.85:1 4:N1)として得た。
【0074】
この固体(500.7g)をCHCl(2.5L、5体積)に溶解し、6NのHCl水(7.5L、15体積)を添加した。この二相の混合物を撹拌し、層を分離した。この時点で、所望の生成物は、HCl水の層にある。CHCl層を6NのHCl水(4.5L、3×3体積)でHPLC分析によって<5%のAUC4が示されるまで洗浄した。結合した6NのHClの抽出物を反応器に移し、内部温度を40℃未満に維持しながら、pHを50%NaOH水(約3.2L)で10.6に調整した。真空濾過によって固体を分離し、反応器および濾塊を水(1L、2体積)ですすぎ、HPLC分析およびH NMR分析によって確認されるように、粗製物4を黄色/橙色の固体(322.4g、回収率64%、収率39%、AUC 4 93.5%、AUC N−1異性体4.1%)として得た。
【0075】
粗製物4を50℃で1時間、酢酸イソプロピル(IPAc)再スラリー(1.61L、5体積)によってさらに精製した。室温まで冷却してすぐに、固体を濾過し、反応器および濾塊を追加のIPAc(500mL、1.6体積)で洗浄して、HPLC分析およびH NMR分析によって確認されるように、精製した4をオフホワイト/黄色の固体(275.5g、回収率85%、収率33%、AUC98.2%)として得た。4のDSC分析により、約245℃で分解熱が示された。
【実施例3】
【0076】
ベンジル(4−ブロモ−3−フルオロフェニル)カルバメート、5の調製
オーバーヘッド撹拌機、窒素導入/排気口、滴下漏斗および熱電対を備えた12Lの三つ口丸底フラスコに、4−ブロモ−3−フルオロアニリン(800.0g、4.21mol、Matrixロット#Q13H)、THF(6.4L、8体積)、および固体の炭酸水素ナトリウム(530.5g、6.32mol、1.5当量)を入れた。滴下漏斗に、クロロギ酸ベンジル(861.9g、5.05mol、1.2当量)を入れ、これを70分間かけて反応器に滴下して添加した。反応の温度は、氷水浴で20℃未満に維持した。このバッチを室温で1時間熟成させた。その時点では、HPLC分析により反応が完了したことが示された。反応混合物を22Lフラスコに移し、この混合物を水(6.4L、8体積)で希釈した。この二相混合物を50℃まで加熱し、16時間温度を維持して過剰なクロロギ酸ベンジルをクエンチした。下の水相を除去するために、混合物を分液漏斗に熱いまま移した。水層と共にとられたラグ層が観察された。THF層をWhatman#1濾紙に通して濾過して一部の粒子を除去し、蒸留の準備をした22Lフラスコにこの混合物を移した。ヘプタンを数回に分けて添加し、蒸留してTHFを除去した。(最初の量のヘプタンを添加する前に、いくらかのTHFをまず蒸留することが最適である点に注意されたい。)合計26.5Lのヘプタンを添加し、回収した全留出物は25Lであった。この時点で、ポット温度は97.7℃に達しており、移動してきた留出物はH NMR分析によって0.9%のTHFを含んでいた。この混合物を室温まで冷却し、濃厚な白色のスラリーを濾過した。濾塊をヘプタン(4L)で洗浄した。生成物を真空オーブン中、40℃で乾燥させて、1257.0gの中間体5(収率92%)を得た。HPLCアッセイは、98.3%(AUC)であった。
【実施例4】
【0077】
4−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−2−フルオロフェニルボロン酸6(R1a=F、R1b=H、R=Bz、Y=B(OH))の調製
オーバーヘッド撹拌機、温度プローブ、2Lの滴下漏斗、および窒素導入用アダプターを備えた22Lの三つ口丸底フラスコに、中間体5(1.00kg、3.08mol、AMRIロット#CAR−L−18(3))、THF(10L、10体積)およびホウ酸トリイソプロピル(638.2g、3.39mol、1.1当量)を入れた。この混合物をドライアイス/アセトン浴中で撹拌して−72℃まで冷却した。該滴下漏斗に、2.5Mのn−ブチルリチウム(2.59L、6.48mol、2.1当量)を数回に分けて入れ、これを約2時間かけて反応物に滴下して添加した。添加中の最高温度は−65℃であった。反応は、HPLC分析によって、完了したと考えられた。アセトンを冷却浴から除去し、反応物が−1℃まで温度上昇することを許容しながら、反応を20%塩化アンモニウム水溶液(5.5L)でクエンチした。相を分離し、乾燥のため、THF層を蒸発させた。粗製生成物を3:2のエタノール/水(10L、10体積)中、室温で1時間再スラリー化した。この混合物を濾過し、濾塊を3:2のエタノール/水(2×2L)ですすいだ。生成物を真空オーブン中、室温で乾燥させて、HPLC分析(方法A)によって89.8%(AUC)である592.8gの中間体6(収率66%)を得た。この物質は、19F NMR分析および240nmでのHPLC分析(方法C)によりきわめて純度が低かった。
【0078】
この方法のその後の展開では、3:2のエタノール/水の代わりに2.5体積のCHClを使用して粗製生成物を再スラリー化し、これにより、19F NMRスペクトルおよび240nmでのHPLCで観察された不純物であった脱ブロモ副産物が除去された。
【実施例5】
【0079】
ベンジル(4−(2−(2−メチルテトラゾール−5−イル)ピリジン−5−イル)−3−フルオロフェニル)カルバメート、7(Het=2−メチルテトラゾール−5−イル、R1a=F、R1b=H、R2=Bz)(参照:JAS−G−96)(参照:CAR−L−93、DUG−AF−202)の調製
5Lの三つ口丸底フラスコに、4(200.0g、0.833mol)を入れ、次いで、1,4−ジオキサン(3L、15体積)を入れた。粗製化合物6(361.2g、1.249mol、1.5当量)、Pd(dba)(11.44g、0.0125g、0.015当量)、およびPCy(7.0g、0.025mol、0.03当量)を入れ、窒素で30分間脱気した。水(800mL、4体積)中のKCO(195.7g、1.7当量)の溶液を入れ、この反応物を70℃まで加熱した。反応は、0.5面積%の4を残して1時間後に完了した。この反応物を50℃まで冷却し、Darco G−60(40g、0.2重量)を添加して30分間撹拌した。Celite545(40g、0.2重量)を入れ、次いで、反応物を、水(300mL)で湿らせたCelite545(100g、0.5重量)を通して濾過した。Celiteから水への熱い濾過により、生成物の沈澱が生じた。テトラヒドロフラン(1.2L、6体積)および塩水(600mL、3体積)を添加し、生成物を室温で再溶解した。相はきれいに分離した(Vmax=28体積)。ジオキサンを濃縮し、エタノール(1L、5体積)を添加して、濃縮した。次いで、この生成物をエタノール:水(4:1、2L、10体積)中、70℃で再スラリー化し、3時間かけて室温まで冷却し、濾過し、エタノール(2×400mL)で洗浄した。化合物7は、HPLC分析によって97.7%(AUC)の純度で収率87%(292.6g)で単離された。H NMRおよび19F NMRにより、1種類の化合物の存在が示された。Pd分析により、135ppmのPdが生成物中にあることが示された。
【0080】
パラジウムのレベルをさらに低下させるために、中間体7を酢酸エチルから再結晶させた。5Lの三つ口丸底フラスコに、中間体7(130g)および酢酸エチル(3.9L、30体積)を入れた。このスラリーを、固体が溶解する75℃に加熱した。この熱い溶液を濾過してすべてのパラジウム黒色物を除去し(0.2〜0.45μのフィルターが最適)、新たな5Lのフラスコに戻した。この酢酸エチル溶液を大気圧で蒸留して2.2Lの酢酸エチル(沸点77〜78℃)を除去した。この溶液を22℃まで冷却し、得られたスラリーを濾過した。フラスコおよび濾塊を酢酸エチルの酢酸エチル(3×130mL)で洗浄した。精製した中間体7を真空オーブン中、50℃で乾燥させて、110.5gの中間体7(収率85%)を得た。精製中間体7のHPLCアッセイは、98.5%(AUC)であった。精製生成物中のパラジウムレベルは、6ppmであった。母液を蒸発させて18gの粗製生成物(回収率14%、Pd 2254ppm)を回収した。
【実施例6】
【0081】
「TR−700」とも呼ばれる、(R)−3−(4−(2−(2−メチルテトラゾール−5−イル)ピリジン−5−イル)−3−フルオロフェニル)−5−ヒドロキシメチルオキサゾリジン−2−オン、1(R=H)の調製
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、500mLの滴下漏斗および窒素導入用アダプターを備えた5Lの三つ口丸底フラスコを窒素気流下、ヒートガンで60℃の内部温度まで乾燥した。このフラスコに、中間体7(110.0g、0.272mol、AMRIロット#DUG−AF−202(1))および無水THF(2.2L、20体積)を入れた。スラリーを撹拌して、薄緑色の溶液が生じた。滴下漏斗に、1.0Mのリチウムヘキサメチルジシラジド(299mL、0.286mol、1.05当量)を入れた。中間体7の溶液に、LiHMDS溶液を約25分間かけて滴下して添加した。赤色の溶液が生じた。この溶液を室温で1時間撹拌し、次いで、DMPU(34.9g、0.272mol、1当量)を添加して、混合物が黄色のスラリーに変化した。このバッチを氷浴中で5.7℃まで冷却した。次いで、酪酸R−(−)−グリシジル(41.25g、0.286mol、1.05当量)を一度に添加した。この混合物を氷浴中で0.5時間撹拌し、次いで、室温まで暖めて一晩撹拌した。反応物はこの時点で黄褐色のスラリーを形成し、15時間後のHPLC分析により、約87%のTR−700、1.6%の中間体7、および約7%のTR−700の酪酸エステルがあることが示された。メタノール中の少量のナトリウムメトキシド(11mL、0.1体積)を添加し、このバッチを1時間撹拌して残ったエステルを除去した。中間のHPLC分析により、この時点で約90.7%のTR−700および0.2%の該酪酸エステルがあることが示された。10%w/w塩化アンモニウム溶液(1.1L、10体積)を加えることによって反応をクエンチした。塩化アンモニウム溶液を添加するとすぐに22℃〜25℃の中程度の発熱現象が観察された。この二相混合物を70℃(大気圧)のポット温度まで蒸留して約2.2LのTHFを除去した。これにより、濃厚なスラリーが形成され、これを水(550mL、5体積)で希釈した。このスラリーを室温(23.6℃)まで冷却し、濾過した。濾塊を水(1.1L、10体積)およびメタノール(550mL、5体積)で洗浄し、TR−700を白色の固体として得た。湿った濾塊を真空オーブン中、50℃で一晩乾燥させて、HPLC分析によって97.8%(AUC)である89.7gのTR−700(収率89%)を得た。このTR−700を2.7L(30体積)の4:1のメタノール/水中、70℃で再スラリー化し、23℃まで冷却し、濾過してメタノール(180ml)で洗浄することによってさらに精製した。これにより、観察される過度にアルキル化された生成物がいくらか除去された。精製TR−700は収率96%(全収率85%)で回収され、その純度はHPLC分析で98.4%(AUC)に改善されていた。パラジウム含有量は、10ppmであった。
【実施例7】
【0082】
「TR−701FA」とも呼ばれる、(R)−3−(4−(2−(2−メチルテトラゾール−5−イル)ピリジン−5−イル)−3−フルオロフェニル)−5−ヒドロキシメチルオキサゾリジン−2−オン−二水素リン酸塩、1(R=PO(OH))の調製
オーバーヘッドの機械的撹拌機、滴下漏斗、熱電対、窒素導入口、および循環冷却ユニットを備えた5Lのジャケット付き丸底フラスコに、TR−700(70.0g、0.189mol)、THF(1.4L、20体積)、およびトリエチルアミン(58.2g、0.575mol、3当量)を入れた。そのスラリーを撹拌し、ジャケット温度を0℃に設定した。滴下漏斗に、THF(70mL、1体積)中のオキシ塩化リン(87.0g、0.567mol、3当量)を入れた。内部温度が1℃に達してから、このPOCl溶液を44分間かけて滴下して添加した。最大内部温度は、2.2℃であった。混合物を1〜2℃で3時間撹拌した。その時点では、HPLC分析により<0.5%のTR−700が残っていることが示された。テフロンダイアフラムポンプを備えた5Lの三つ口丸底フラスコに水(1.4L、20体積)を入れ、氷塩水浴中で3.8℃に冷却した。反応混合物を1時間かけてクエンチ水の内層面にポンプで送りこんだ。クエンチ中の最高温度は、11.9℃であった。クエンチ管内に水(約210mL)を入れて反応器およびポンプラインをすすいだ。黄色のスラリーを一晩撹拌した。このスラリーをWhatman紙に通して濾過し、濾塊を水(700mL、10体積)およびメタノール(700mL、10体積)ですすいだ。生成物を真空オーブン中、室温で、恒量が得られるまで乾燥させた。粗製物TR−701FAの収率は81.6g(96%)であり、HPLC分析(方法B)による純度は95.3%(AUC)であった。
【実施例8】
【0083】
「TR−701」とも呼ばれる、(R)−3−(4−(2−(2−メチルテトラゾール−5−イル)ピリジン−5−イル)−3−フルオロフェニル)−5−ヒドロキシメチルオキサゾリジン−2−オン−リン酸塩、二ナトリウム塩、1(R=PO 2Na)の調製
粗製物1(R=PO(OH))(60.0g、0.133mol)を2Lの反応器に入れた。メタノール(720mL、12体積)を添加し、スラリーを室温で撹拌した。メタノール中の25%ナトリウムメトキシド(86.1g、0.398mol、3当量)を13分間かけて滴下して添加した。反応温度は、ナトリウムメトキシドの添加中に20.4℃から26.8℃まで上昇した。スラリーを室温で1時間撹拌し、次いで、濾過した。反応器および濾塊をメタノール(300mL、5体積)およびアセトン(300mL、5体積)ですすいだ。生成物を真空オーブン中、50〜60℃で乾燥させ、65.3gの粗製TR−701(収率99%)を得た。この粗製生成物を水(653mL、10体積)に溶解して、わら色の溶液を得た。この溶液をDarco G−60カーボン(3.3g、0.05重量)と共に室温で30分間撹拌した。このスラリーのpHは7.2であったので、5〜10mLの2NのNaOHをこの溶液に添加してpHを11まで上げた。このスラリーをCelite545(65g、水で湿らせた)に通して濾過した。いくらかの黒色物が通過した。濾液を0.45μフィルターに通して再濾過したが、いくらかのカーボンが再び通過した。この濾液をアセトン(2.6L、40体積)に滴下して添加し、得られたスラリーを便宜上一晩撹拌した。次いで、スラリーを濾過し、アセトン(650mL)ですすぎ、真空オーブン中、50℃で乾燥させて、灰色である46.9gの1(R=PONa)(収率71%)を得た。この物質のHPLC純度は99.0%(AUC)であったが、これは灰色であったので、これを水(470mL)に再溶解した。この水溶液はpH9.6であったので、水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを10まで上げた。次いで、この溶液を0.45μフィルターに通して濾過して色を除去する。この濾液をアセトン(1.88L)に滴下して添加した。白色のスラリーを濾過し、アセトン(470mL)で洗浄した。生成物を乾燥させた後、TR−701は、43.2g(全収率66%)の重量であった。HPLC純度(方法B)は、99.6%(AUC)であった。このロットの1(R=PONa)について実施した他の分析を表1に示す。
【実施例9】
【0084】
精製R)−3−(4−(2−(2−メチルテトラゾール−5−イル)ピリジン−5−イル)−3−フルオロフェニル)−5−ヒドロキシメチルオキサゾリジン−2−オン−二水素リン酸塩、1(R=PO(OH))の調製
3Lの三つ口丸底フラスコに、粗製物1(R=PO(OH))(99.8g、0.222mol、AMRIロット#8AK0242C)および水(1L、10体積)を入れた。このスラリーのpHは、2.05であった。50.9%水酸化ナトリウム水溶液(39.3g、0.50mol)を全体積で0.5Lの水に溶解することにより、1Mの水酸化ナトリウム溶液の新しい溶液を調製した。この1Mの水酸化ナトリウム溶液(444mL、0.444mol、2当量)を遊離酸のスラリーに滴下して添加した。pH5.7では、半分を少し超える水酸化ナトリウム溶液を添加しただけで、この固体は溶解した。添加終了時、pHは8.57であった。Darco G−60カーボン(5.1g、0.05重量)をこの溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。このスラリーをWhatman#1濾紙に通して濾過してバルクのカーボンを除去し、次いで、0.45μフィルターに通して微粉を除去する。わら色の濾液をアセトン(4L、40体積)を入れた12Lの丸底フラスコに滴下して添加した。得られたスラリーを室温で1時間撹拌し、濾過して、アセトン(500mL、5体積)で洗浄した。湿った濾塊を3Lの丸底フラスコに入れ、窒素パージ下で一晩乾燥できるようにした。
【0085】
二ナトリウム塩1(R=PO 2Na)を水(1L、10の体積)に再溶解し、次いで、溶液中に黒い斑点が観察された場合にはWhatman#1濾紙に通して濾過した。この濾液をTHF(1L、10体積)で希釈した。このTHF水溶液のpHは、9.57であった。新たに調製した2Mの塩酸溶液(222mL、0.444mol、2当量)を滴下して添加してpH1.34にした。約170mLの2MのHCl溶液を添加するまで、生成物は沈澱しなかった。黄色のスラリーを濾過し、水(500mL、5体積)およびメタノール(500mL、5体積)ですすいだ。濾塊は、乾燥するにつれて亀裂が入ったので、すすぎの溶媒を添加する前に容易に外れた。生成物を真空オーブン中、60℃で19.5時間乾燥させて、79.3gの1(R=P(OH))(収率80%)を得た。HPLC分析(方法B):99.5%(AUC)t=5.6分。H NMR分析および31P NMR分析は、帰属された構造と一致していた。NMR分析による残留THFのレベルは1600ppmであり、パラジウムのレベルは11ppmであった。乾燥を延長してもTHFが除去されなかったので、以降のバッチは、貧溶媒としてエタノールを使用して作製した。
【実施例10】
【0086】
ビス{[(5R)−3−{3−フルオロ−4−[6−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)ピリジン−3−イル]フェニル}−2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−5−イル]メチル}二水素二リン酸塩(1の二量体)の単離
実施例8からの粗製物1をリン酸緩衝液に溶解し、Gilson分取用HPLCシステム上でクロマトグラフィーを行った。移動相は、水の直線濃度勾配であり、アセトニトリルt+0は100 5 H2Oであり、T=20は100%アセトニトリルであった。分析用HPLCを用いて、画分を分析した。二量体が濃縮されているのが認められる画分をプールして、60%を超える二量体を含む溶液を得た。二量体が濃縮された画分のさらなる精製をセミ分取用HPLC上で行った。これにより純粋な二量体を得た:精密質量(m/z 883;C34H31F2N12O11P2についての計算値=883.1679、実測値883.1658、Δ=2.4ppm m/z 905 C34H30F2N1O11P2Naについての計算値=905.1498;実測値905.1484、Δ=1.6ppm)は、この化合物の該式を確認するものである。
表1.TR−701 (R)−3−(4−(2−(2−メチルテトラゾール−5−イル)ピリジン−5−イル)−3−フルオロフェニル)−5−ヒドロキシメチルオキサゾリジン−2−オン、1 (R=H)の解析
【0087】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造の化合物
【化25】

[式中、
RはHであり、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し置換されていてもよい5員または6員の複素環である]
を合成する方法であって、
次の構造を有する化合物
【化26】

[式中、Rは、置換されていてもよいベンジルおよび置換されていてもよいC〜Cアルキルからなる群から選択される]を強塩基または有機リチウム塩で処理し、次いで、得られたアニオンに、
【化27】

を作製する条件下で、酪酸グリシジルを添加する工程を含む方法。
【請求項2】
【化28】


【化29】

[式中、R’はPO(OH)である]
を生成する条件下で、POCl、POCl(OBn)、またはP(N−iPr)(O−tBu)と反応させる工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の構造の化合物
【化30】

[式中、R’はPO(OH)である]を次の構造の化合物
【化31】

[式中、R’’は、PO(OH)の薬学的に許容される塩である]
を生成する条件下で、塩基で処理する工程
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理工程の前に、
次の構造の第1の中間体
【化32】

[式中、Xは脱離基である]と、次の構造の第2の中間体
【化33】

[式中、Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに置換されていてもよいC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールからなる群から独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]からなる群から選択される]とを
次の構造の化合物
【化34】

を生成する条件下で、カップリングさせる工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カップリング工程の前に、
a)構造5aのハロゲン化アリール
【化35】

[式中、Xは脱離基である]を強塩基で処理し、次いで、得られたアニオンを
【化36】

を生成する条件下で、ホウ酸トリアルキルエステルと反応させる工程または
b)構造5aのハロゲン化アリールを
【化37】

を生成する条件下で、パラジウム触媒、およびジボロン酸のジピナコラートエステルで処理する工程
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記強塩基がn−ブチルリチウムであるか、または
前記パラジウム触媒がPdCl(dppf)である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
次の構造の化合物
【化38】

[式中、
は、置換されていてもよいベンジルおよび置換されていてもよいC〜Cアルキルからなる群から選択され、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し置換されていてもよい5員または6員の複素環である]
を合成する方法であって、
次の構造の第1の中間体
【化39】

[式中、Xは脱離基である]と、次の構造の第2の中間体
【化40】

[式中、
Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに置換されていてもよいC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールからなる群から独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]からなる群から選択される]とを
次の構造の化合物
【化41】

を生成する条件下で、カップリングさせる工程
を含む方法。
【請求項8】
次の構造の第2の中間体
【化42】

[式中、
は、置換されていてもよいベンジルおよび置換されていてもよいC〜Cアルキルからなる群から選択され、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに置換されていてもよいC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールからなる群から独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]からなる群から選択される]
を作製する方法であって、
a)次の構造5aのハロゲン化アリール
【化43】

[式中、Xは脱離基である]を強塩基で処理し、次いで、得られたアニオンを
【化44】

を生成する条件下で、ZnClもしくはホウ酸トリアルキルエステルと反応させる工程または
b)構造5aのハロゲン化アリールをパラジウム触媒、およびジボロン酸のジエステルで処理する工程
を含む方法。
【請求項9】
前記強塩基がn−ブチルリチウムであるか、または
前記パラジウム触媒がPdCl2(dppf)である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記処理工程が促進化合物の存在下で実施される、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記促進化合物が1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンである、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
XがCl、Br、I、およびトリフルオロメタンスルホナートからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記カップリングがパラジウム錯体の存在下で実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記パラジウム錯体が、パラジウムに結合しているホスフィンリガンドを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記パラジウム錯体が、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、およびPd(dba)からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記パラジウム錯体がPd(dba)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
YがB(OH)、BF、および
【化45】

からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
YがB(OH)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Hetが、置換されていてもよいピロール、フラン、ピペラジン、ピペリジン、イミダゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリミジン、チアゾールまたはピラジンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
Hetが置換されていてもよいテトラゾリル基である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Hetが2−メチル−テトラゾール−5−イルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
Hetが2−メチル−テトラゾール−5−イルであり、XがBrである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記塩基がナトリウム含有塩基であり、R’’がPONaである、
請求項3に記載の方法。
【請求項24】
次の構造の化合物
【化46】

をグリシジルエステルで処理する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項25】
前記グリシジルエステルが酪酸グリシジルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記グリシジルエステルがR立体化学を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記グリシジルエステルが酪酸R−(−)−グリシジルである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
次の構造の化合物
【化47】

のグリシジルエステルでの前記処理が、リチウムヘキサメチルジシラジドの存在下で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
次の構造の化合物
【化48】

が、
【化49】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
次の構造の化合物
【化50】

が、
【化51】

である、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
次の構造の化合物
【化52】

が、
【化53】

である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
次式の化合物:
【化54】

[式中、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
は、置換されていてもよいベンジルおよび置換されていてもよいC〜Cアルキルからなる群から選択され、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し置換されていてもよい5員または6員の複素環である]。
【請求項33】
次式の化合物:
【化55】

[式中、
aおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
は、置換されていてもよいベンジルおよび置換されていてもよいC〜Cアルキルからなる群から選択され、
Yは、ZnCl、BF、およびBR[式中、RおよびRは、OHならびに置換されていてもよいC〜Cの一価アルコールおよび二価アルコールからなる群から独立に選択され、RおよびRは、一緒になって環を形成していてもよい]からなる群から選択される]。
【請求項34】
請求項2に記載の方法に従って調製される化合物と、
次の構造を有する二量体または薬学的に許容される塩
【化56】

[式中、RaおよびRbは、HおよびFから独立に選択され、但し、RaおよびRbのうちの少なくとも1つはFであり、
Hetは、少なくとも1個のN、O、またはS原子を含有し置換されていてもよい5員または6員の複素環である]と
を含む組成物。
【請求項35】
aがFであり、RbがHであり、Hetが2−メチル−テトラゾール−5−イルである、
請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の方法に従って調製される化合物を含む組成物であって、スズ不純物を欠いた組成物。
【請求項37】
請求項2に記載の方法に従って調製される化合物を含む組成物であって、スズ不純物を欠いた組成物。

【公表番号】特表2012−505252(P2012−505252A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531233(P2011−531233)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060267
【国際公開番号】WO2010/042887
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511090408)
【Fターム(参考)】