説明

オキシブチニンのためのモノグリセリド/乳酸エステル透過促進剤

【課題】身体表面又は膜を通しての透過によってオキシブチニンを投与するために、身体表面又は膜に適用する組成物の提供。
【解決手段】治療有効量の投与すべきオキシブチニンと;特定の濃度で存在する、モノグリセリド又はモノグリセリド混合物と、乳酸エステル又は乳酸エステル混合物とを含有する透過促進性混合物とを組合せて含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
これは米国出願第08/129,494号(1993年9月29日出願)(これはその全体で本明細書に援用される)の一部継続出願であり、その出願日から利益が主張される。
【技術分野】
【0002】
発明の分野
本発明は生物学的活性なオキシブチニンの経皮投与に関する。さらに詳しくは、本発明は経皮薬物投与系に組み入れた場合に、オキシブチニンの経皮吸収を促進するための新規な方法及び組成物に関する。さらに詳しくは、但し限定する訳ではなく、本発明はモノグリセリドと乳酸エステルとの透過促進性混合物を用いるオキシブチニンの経皮投与に関する。さらになお詳しくは、但し限定する訳ではなく、本発明は組成物が15〜25重量%のモノグリセリド又はモノグリセリド混合物と8〜25重量%の乳酸エステルとを含む、モノグリセリドと乳酸エステルとの透過促進性混合物を用いるオキシブチニンの経皮投与に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
薬物の非経口投与の経皮経路は他の投与経路を凌駕する多くの利益を提供し、広範囲な薬物又は他の有効剤を投与する経皮系は米国特許第3,598,122号、第3,598,123号、第3,731,683号、第3,797,494号、第4,031,894号、第4,201,211号、第4,286,592号、第4,314,557号、第4,379,454号、第4,435,180号、第4,559,222号、第4,568,343号、第4,573,995号、第4,588,580号、第4,645,502号、第4,704,282号、第4,788、062号、第4,816,258号、第4,849,226号、第4,908,027号、第4,943,435号、第5,004,610号に開示される。上記特許の開示は本明細書に援用される。
【0004】
多くの場合に、経皮投与の理想的な候補であるように思われる薬物は、妥当なサイズの系から治療有効速度で投与されることができないような、無傷の皮膚を通る、低い透過性を有することが判明している。
【0005】
皮膚透過性を高めようと試みて、皮膚を種々な化学薬品で予め処理するか、又は薬物を透過促進剤の存在下で同時に投与することが提案されている。米国特許第3,472,931号、第3,527,864号、第3,896,238号、第3,903,256号、第3,952,099号、第4,046,886号、第4,130,643号、第4,130,667号、第4,299,826号、第4,335,115号、第4,343,798号、第4,379,454号、第4,405,616号及び第4,746,515号(これらの特許の全ては本明細書に援用される)、英国特許第1,001,949号、及びIdson、「経皮吸収」,J.Pharm.Sci.64巻,b6号,1975年6月,901〜924頁(特に919〜921頁)に開示されるように、この目的のために、種々な物質が提案されている。
【0006】
有用であると見なされるためには、透過促進剤は少なくとも1種、好ましくは有意な数の薬物の皮膚透過性を強化する能力を有するべきである。より重要には、妥当なサイズの系(好ましくは、5〜50cm2)からの薬物投与速度が治療レベルであるように、透過促進剤は皮膚透過性を強化することができるべきである。さらに、促進剤は、皮膚表面へ適用する場合に、長時間暴露時にかつ閉塞下で無毒、無刺激性であり、かつ反復暴露時に非感作性であるべきである。好ましくは、促進剤は局所反応、灼熱感又は刺痛感を生じることなく薬物を投与することができるべきである。
【0007】
本発明はオキシブチニンの皮膚透過性を大きく増大させ、皮膚への薬物適用から所望の治療効果の発揮までの遅延時間をも短縮する。
透過促進剤を結合することは技術上周知であるが、本発明はモノグリセリドと乳酸エステルとの新規な組合せを用いる。さらに、本発明は新規な成分の各々の特定の濃度を用いる。成分の複合効果(及びさらに特定濃度)は、モノグリセリド又は乳酸エステル単独の使用に比べて又は非特定濃度での組合せに比べて有意でかつ意外な改良を生じる。
【0008】
神経因性膀胱疾患は排尿制御の低下に関する障害である。この疾患の主要な症状は頻尿、尿停滞又は失禁である。神経因性膀胱を生ずる2種類の病変がある。
最初の上部運動ニューロン病変は膀胱の緊張過度と反射充進、緊張過度状態を惹起し、頻尿と失禁を生ずる。第2の下部運動ニューロン病変は膀胱の緊張低下と反射減退に関する。この状態の主要な症状は、排尿反射が失われたときの尿停滞と、あふれるまでに充満した膀胱が"漏らす(leak)"ときに生ずる失禁である。
【0009】
神経因性膀胱患者の大部分は緊張過度又は緊張減退膀胱を有する。臨床医は通常、反射穴進と緊張過度の状態を緊張低下に変え、それによって失禁の初期の問題を治療しようと試みる。状態が緊張低下に変わったときに、この状態は間欠的なカテーテル挿入によって管理することができる。しかし、緊張過度の状態から緊張低下へ完全に変わることができず、まだ毎時間排尿しなければならず、さもなければ失禁する患者の有意な数が存在する。
【0010】
合衆国におけるFDAによって認可された塩化オキシブチニンの使用は、マリオン メレル ダウ(Marion Merrell Dow)によって製造される薬物ジトロパン(Ditropan)(登録商標)に関する"1992Physician's Desk Reference"1332〜1333頁に述べられている。オキシブチニンは通常、比較的高用量(5mg錠剤、2〜4回/日摂取)でヒトに経口投与される。オキシブチニンは錠剤、カプセル、顆粒又はピル(塩化オキシブチニン1〜5mg、好ましくは5mgを含有)、シロップ(5mlにつき塩化オキシブチニン1〜5mg、好ましくは5mgを含有)及び経皮組成物(クリーム又は軟膏)(塩化オキシブチニン1〜10重量%("wt%")含有)に配合されている。BE902605を参照のこと。
【0011】
米国特許第4,747,845号では、オキシブチニンは薬物持続放出(extended duration drug release)のための経皮合成樹脂マトリックス系に配合することができる薬剤(agent)としてリストされているが、オキシブチニンはデバイスに用いられていない。米国特許第4,928,680号では、オキシブチニンは経皮投与に適した薬理学的活性剤として挙げられているが、上記参考文献の場合と同様に、オキシブチニンはデバイスに配合されていない。
【0012】
オキシブチニンは、水不浸透性バリヤー層と、該バリヤー層の内面に接触したオキシブチニン含有溜めと、該溜めの他方の面に接触した除去可能なプロテクター層とを有するデバイスに配合されている。この溜めはオキシブチニン25mg/mlを含む水溶液を含浸させたポリウレタン繊維マットである。このデバイスを20μm厚さのポリブタジエンフィルム上に置いた。デバイスを載せない面を0.05M等張性リン酸塩緩衝液と接触させた。測定された試験管内(in vitro)放出速度は49cm2面積を通して24時間にわたって約12mg、すなわち10μg/cm2/時間であった(米国特許第4,784,857号及びヨーロッパ特許第0250125号)。
【0013】
Pharm Res,"オキシブチニンの経皮投与系の開発:生体内バイオアベイラビリティ(Development of Transdermal Delivery Systems of Oxybutynin:In-Vivo Bioavailability)",ケシャリー(P.Keshary)等,(NY)8(10Supp)1991,S205頁では、マトリックス拡散制御及び膜浸透性制御テクノロジーを用いた、3種類の経皮投与系が考察されている。シラスティック一体系、アクリル感圧接着剤マトリックス及び溜め型投与系から、それぞれ、約9、12及び12μg/cm2/時及び約1160、402及び57.2μg/cm2/時の試験管内放出速度(シンク(sink)条件)が得られている。ヒトでは、アクリル感圧接着剤マトリックス型の単一20cm2パッチの6時間貼付後に、約1.86ng/mlの定常状態血漿濃度が得られている。
【0014】
二重(dual)透過促進剤系を配合することは技術上周知であるが(例えば、ヨーロッパ特許出願第0295411号及び第0368339号を参照のこと)、本発明はオキシブチニンとモノグリセリド及び乳酸エステルとの新規な組合せを用いる。さらに、本発明はモノグリセリド/乳酸エステル透過促進剤組合せの新規な濃度を用いる。これらの2種類の透過促進剤の複合効果とさらに特定濃度(すなわち、15〜25重量%のモノグリセリドと8〜25重量%の乳酸エステル)は、オキシブチニンに対するモノグリセリド若しくは乳酸エステルの単独の使用又は非特定濃度での組合せの使用を凌駕する有意で、意外な改良(すなわち、加算効果を越えた)を生じる。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明は、皮膚刺激を殆ど又は全く生じない、オキシブチニンの透過を改良するための改良組成物と方法とに関する。本発明の系は、特定の皮膚又は他の身体部位にオキシブチニン−及び透過促進性混合物−伝達関係に配置するために適したキャリヤー又はマトリックスを含む。このキャリヤー又はマトリックスは、所定投与期間にわたって部位に治療有効量のオキシブチニンと、皮膚への薬物の透過を促進するために有効な量での、特定の濃度で存在するモノグリセリドと乳酸エステル、すなわち、15〜25重量%のモノグリセリドと8〜25重量%の乳酸エステル、好ましくは20重量%のモノグリセリドと12重量%の乳酸エステルの透過促進性混合物とを連続的に同時投与するために、充分な量のオキシブチニンと透過促進性混合物とを含む。
【0016】
本明細書で用いるかぎり、"経皮"投与又は適用なる用語は、局所適用又はイオン導入による皮膚、粘膜及び/又は他の身体表面の通過によってオキシブチニンを投与又は適用することを意味する。
【0017】
本明細書で用いるかぎり、"治療有効"量又は速度なる用語は、所望の治療結果を得るために必要な、オキシブチニンの量又は速度を意味する。
本明細書で用いるかぎり、"モノグリセリド"なる用語は、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノリノレエート又はこれらの混合物を意味する。モノグリセリドは一般にモノグリセリドの混合物として入手可能であり、この混合物は最大量で存在するモノグリセリドからその名前を得る。本発明の好ましい実施態様では、透過促進剤モノグリセリド成分はグリセロールモノラウレートである。
【0018】
本明細書で用いるかぎり、"グリセロールモノオレエート"なる用語は、グリセロールモノオレエート自体か又は、グリセロールモノオレエートが最大量で存在するグリセリドの混合物を意味する。
【0019】
本明細書で用いるかぎり、"グリセロールモノラウレート"なる用語は、グリセロールモノラウレート自体か又は、グリセロールモノラウレートが最大量で存在するグリセリドの混合物を意味する。
【0020】
本明細書で用いるかぎり、"グリセロールモノリノレエート"なる用語は、グリセロールモノリノレエート自体か又は、グリセロールモノリノレエートが最大量で存在するグリセリドの混合物を意味する。
【0021】
本明細書で用いるかぎり、"乳酸エステル"又は"アルコールの乳酸エステル"なる用語は、乳酸エチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル又はこれらの混合物を意味する。好ましくは、乳酸エステルは乳酸ラウリル、乳酸エチル又はこれらの混合物である。
【0022】
本明細書で用いるかぎり、"時間の実質的な部分"なる用語は、時間の少なくとも約60%、好ましくは時間の少なくとも約90%を意味する。相関的に、"実質的に一定"なる用語は、時間の実質的な部分にわたって約±20%未満、好ましくは約±10%未満の変動を意味する。
【0023】
本明細書で用いるかぎり、"透過促進性混合物"なる用語は、1種以上の乳酸エステルと、1種以上のモノグリセリドとを含む混合物を意味する。モノグリセリド又はモノグリセリド混合物、好ましくはグリセロールモノラウレートは特定の濃度で存在する。乳酸エステル、例えば、ラウリル、ミリスチル、セチル、エチル、メチル、又はオレイン酸、安息香酸又は乳酸も特定の濃度で存在する。モノグリセリドは約15〜約25重量%の範囲内で存在し、乳酸エステルは約8〜約25重量%の範囲内で存在する。より好ましくは、透過促進剤混合物は20%GMLと12%乳酸ラウリルとを含む。
【0024】
本明細書で用いるかぎり、"所定投与期間"又は"長時間"なる用語は、数時間から7日間以上までの時間のオキシブチニン投与を意味する。好ましくは、この時間は16時間から3乃至4日間までである。
【0025】
本明細書で用いるかぎり、"透過促進量又は速度"なる用語は、オキシブチニンに対する適用部位の大きな透過性を与える速度又は量を意味する。
本明細書で用いるかぎり、"ポリ−N−ビニルアミド"なる用語は、架橋ポリ−N−ビニルアミド又は例えばポリ−N−ビニルメチルアセトアミド、ポリ−N−ビニルエチルアセトアミド、ポリ−N−ビニルメチルイソブチルアミド、ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン等のようなポリ−N−ビニルアミドの組合せを意味する。好ましくは、ポリ−N−ビニルアミドはポリ−N−ビニル−2−ピロリドン(より好ましくは、Polyplasdone XL(登録商標)、Polyplasdone XL−10(登録商標)、GAF)である。
【0026】
本発明を添付図面に関してさらに詳細に説明する。
発明の詳細な説明
本発明は、皮膚を通る薬物の投与を助けるために、1種以上のモノグリセリドと1種以上の乳酸エステルとを同時投与する。さらに、このために、本発明はモノグリセリドと乳酸エステルとが特定の濃度で存在することを必要とする。本発明による複合効果と好ましい濃度とが、モノグリセリド若しくは乳酸エステルの単独の使用に又は非特定濃度での2成分の使用に比べた場合に、オキシブチニンの透過性の顕著な増大、すなわち、加算効果を越えた増大を生じることが、判明している。本発明によるオキシブチニン透過促進の改良は上記の比較的広範囲な濃度範囲の乳酸エステル/モノグリセリド重量比にわたって得られるが、発明者は20重量%のモノグリセリドと、12重量%の乳酸エステルとが不利な副作用なしに最大の促進を生じることを発見している。
【0027】
本発明は1実施態様において、身体表面又は膜を通しての透過によってオキシブチニンを投与するために身体表面又は膜に適用する組成物であって、
(a)治療有効量の投与すべきオキシブチニンと;
(b)(i)15〜25重量%のモノグリセリド又はモノグリセリド混合物と、
(ii)8〜25重量%の乳酸エステル又は乳酸エステル混合物とを含有する透過促進性混合物とを組合せて含む前記組成物に関する。
【0028】
オキシブチニンは組成物中に0.01〜50重量%の範囲の量で存在することができる。透過促進性混合物は好ましくはモノグリセリドと乳酸エステルとをそれぞれ、約20重量%と12重量%で存在するように含む。
【0029】
本発明は皮膚を通るオキシブチニンの透過性の促進に特別な有用性を見いだしている。しかし、本発明は粘膜を通るオキシブチニンの流動(flux)を促進することにも有用である。さらに、本発明は全身的及び局所的の両方のオキシブチニン投与に有用である。本発明によると、透過促進性混合物と投与すべきオキシブチニンとを適当な身体表面に、好ましくはそのための薬剤学的に受容されるキャリヤーに含めて、薬物−及び透過促進性混合物−伝達関係に配置して、所望の期間適所に維持する。
【0030】
オキシブチニンと透過促進性混合物とは典型的に、以下でさらに詳述するように、例えば、軟膏、ゲル、クリーム、座薬又は舌下錠若しくはバッカル錠剤として身体に直接適用することができるような生理的に適合するマトリックス又はキャリヤー内に分散される。皮膚に直接適用される液体、軟膏、ローション、クリーム又はゲルとして用いられる場合に、投与部位を閉鎖することが、必要ではないとしても、好ましい。このような組成物は他の透過促進剤、安定剤、染料、希釈剤、顔料、ビヒクル、不活性フィラー、賦形剤、ゲル化剤、血管収縮薬、及び技術上周知であるような、局所組成物の他の成分をも含むことができる。
【0031】
他の実施態様では、オキシブチニンと透過促進性混合物とを以下でさらに詳述するような、経皮投与デバイスから投与することができる。適当な経皮投与デバイスを図1、2、3及び4に示す。図面では、種々な図を通して、同じ又は同様な要素を表示するために同じ参照数字を用いる。図は正確な縮尺で描かれていない。
【0032】
図1では、経皮投与デバイス10はオキシブチニンと透過促進性混合物とを含む溜め12を含む。溜め12は好ましくは、その中に分散したオキシブチニンと透過促進性混合物とを含むマトリックスの形状である。溜め12は裏材層14とインライン接触接着剤層16との間に挿入される。デバイス10は接着剤層16によって皮膚表面18に接着する。接着剤層16は任意に透過促進性混合物及び/又は薬物を含むことができる。除去可能な剥離ライナー(図1に図示せず)が通常、接着剤層16の露出面に沿って備えられ、デバイス10を皮膚18に適用する前に除去される。任意に、速度制御膜(図示せず)が溜め12と接着剤層16との間に存在することができる。
【0033】
或いは、図2に示すように、経皮治療デバイス20を患者の皮膚又は粘膜に接着性オーバーレイ22を用いて付着させることができる。デバイス20は好ましくはその中に分散した薬物と透過促進性混合物とを含むマトリックスの形状である、薬物−及び透過促進性混合物−含有溜め12から構成される。裏材層14は溜め12の1面に隣接して備えられる。接着性オーバーレイ22はデバイスを皮膚上に維持し、デバイスの他の要素と共に成形加工されるか、又はデバイスの他の要素とは別々に備えられる。ある種の製剤(formulation)では、図1に示すようなインライン接触接着剤16よりも、接着性オーバーレイ22が好ましい。裏材層14は溜め12よりもやや大きいことが好ましく、このようにして、溜め12内の物質がオーバーレイ22内の接着剤と不利に相互作用することを阻止する。任意に、速度制御膜(図2に図示せず)を溜め12の皮膚近位側に備えることもできる。除去可能な剥離ライナー24をデバイス20に備え、デバイス20を皮膚に適用する直前に除去する。
【0034】
図3では、経皮投与デバイス30は実質的に図1に関して述べたように、薬物−及び透過促進性混合物−含有溜め("薬物溜め")12を含む。透過促進剤溜め("促進剤溜め")26は、完全に分散した透過促進性混合物と、飽和以下の薬物とを含む。促進剤溜め26は好ましくは、薬物溜め12の形成に用いられるマトリックスと実質的に同じマトリックスから製造される。促進剤溜め26から薬物溜め12への透過促進剤の放出速度を制御するための速度制御膜28を2つの溜めの間に挿入する。薬物溜め12から皮膚への促進剤の放出速度を制御するための速度制御膜(図3に図示せず)も任意に用いて、接着剤層16と溜め12との間に挿入することができる。さらに、微孔質膜(図示せず)が接着剤層16の皮膚遠位側上に存在することができる。
【0035】
速度制御膜は、投与デバイス中へ及びからの作用剤の速度を制御すると技術上知られ、薬物溜め12の透過性よりも低い、透過促進剤に対する透過性を有する、透過性、半透性又は微孔質物質から成形加工することができる。適当な物質には、限定する訳ではなく、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−n−ブチルアセテートコポリマー、及びエチレン−酢酸ビニルコポリマーがある。
【0036】
微孔質膜は薬物溜めと接触接着剤との間の結合層(tie layer)として用いられる。 この層の目的は接着を強化し、薬物溜め層から接触接着剤のブルーミング(blooming)及び剥離を防止することである。ブルーミングと剥離とは、例えば非イオン界面活性剤のような両親媒性(amphipathic)分子、例えばモノグリセリドを経皮投与デバイスに用いる場合に、共通した問題である。
【0037】
微孔質結合層は薬物溜めと接触接着剤とに相互結合すべきであるが、流量プロフィル又は放出速度プロフィルに影響を与えるべきではない。層は界面活性剤又は薬物の低い又は無視できる溶解性をも有するべきである。本発明に有用な層は、限定する訳ではなく、微孔質ポリプロピレン、微孔質ポリエチレン、微孔質ポリカーボネート及び不織(spunbonded)フィラメント物質を含む。
【0038】
デバイス30の透過促進剤溜め26には裏材14が重ねられる。溜め12の皮膚近位側には、接着剤層16と除去可能なライナー24とが存在し、ライナー24はデバイス30の皮膚への適用前に除去される。
【0039】
図1、2及び3の実施態様では、溜めのキャリヤー又はマトリックスは浸出又は流出なしにその形状を維持するために充分な粘度を有する。しかし、マトリックス又はキャリヤーが例えば液体又はゲルのような低粘度の流動性物質であるならば、組成物を例えば米国特許第4,379,454号(上記)から技術上周知であり、図4に図示したような、ポウチ又はポケットに完全に封入することができる。図4に示すデバイス40は裏材要素14を含み、これはデバイスの保護カバーとして役立ち、構造的サポートを与え、デバイス40の成分がデバイスから漏出するのを防止する。デバイス40はまた溜め12をも含み、溜め12はオキシブチニンと透過促進性混合物とを含み、裏材要素14から遠位のその表面上にデバイス40からのオキシブチニン及び/又は透過促進性混合物の放出を制御するための速度制御膜28を有する。裏材要素14の外縁は溜め12の縁を覆い、流体密封性配置において速度制御膜28の外縁と、その周辺に沿って結合する。この密封溜めは縁に圧力、融合、粘着、接着剤を加えることによって、又は技術上周知の他の方法によって形成することができる。このようにして、溜め12は膜14と速度制御膜28との間に完全に含まれる。速度制御膜28の皮膚近位側には、接着剤層16と除去可能なライナー24とが存在し、ライナー24はデバイス40の皮膚への適用前に除去される。
【0040】
図4のデバイス40の代替え実施態様では、溜め12は透過促進性混合物と、飽和以下のオキシブチニンとを含む。飽和以上のオキシブチニンと追加量の透過促進性混合物とは、別の溜めとして作用する接着剤層16中に存在する。
【0041】
オキシブチニンと透過促進性混合物とは、例えば軟膏、ゲル、クリーム若しくはローションとして皮膚若しくは粘膜に直接適用することによってヒト皮膚若しくは粘膜に同範囲に投与することができるが、好ましくは、オキシブチニン及び促進剤の飽和又は不飽和製剤を含む皮膚パッチ又は他の既知の経皮投与デバイスから投与される。この製剤(formulation)は非水性であり、オキシブチニンと透過促進性混合物とを必要な流量(flux)で投与するように設計される。典型的な非水性ゲルはシリコーン流体又は鉱油から構成される。鉱油ベースゲル(mineral oil-based gel)は典型的に、例えばコロイド状二酸化ケイ素のような、ゲル化剤1〜2重量%をも含む。特定のゲルが適当であるか否かは、その成分がオキシブチニンと透過促進性混合物の両方及び製剤中の他の成分と適合するかどうかに依存する。
【0042】
溜めマトリックスはオキシブチニン、透過促進剤及びそれらのためのキャリヤーと適合性であるべきある。本明細書で用いるかぎり、"マトリックス"なる用語は造形品(shape)に固定された、成分の充分に混合された複合体を意味する。
【0043】
非水性製剤を用いる場合には、溜めマトリックスは好ましくは疎水性ポリマーから構成される。適当なポリマーマトリックスは経皮薬物投与の分野において周知であり、例は本明細書に援用される上記特許に挙げられる。典型的な積層系はポリマー膜及び/又は例えばエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーのようなマトリックス(例えば、米国特許第4,144,317号に記載されるもの、好ましくは約9%から約60%までの範囲内の酢酸ビニル(VA)含量、さらに好ましくは約9%〜40%VAを有する)を含む。高分子量ポリイソブチレン4〜25%と低分子量ポリイソブチレン20〜81%を含み、残部が例えば鉱油又はポリイソブチンであるポリイソブチレン/油ポリマーもマトリックス材料として用いることができる。
【0044】
治療デバイス中に存在する、有効な治療結果を得るために必要なオキシブチニン量は例えば治療すべき特定の適応症のためのオキシブチニンの最小必要用量;
マトリックス、接着剤層及び速度制御膜(存在する場合)の溶解性及び透過性;デバイスを皮膚に固定する時間のような、多くの要素に依存する。オキシブチニンの最小量は、所定適用期間にわたって所望の放出速度を維持するために充分な量のオキシブチニンがデバイス中に存在しなければならないと言う必要条件によって決定される。安全のための最大量は、オキシブチニンの存在量が有害レベルに達する放出速度を越えることができないと言う必要条件によって決定される。
【0045】
デバイス中に存在するオキシブチニンはラセミ化合物、S−オキシブチニン又はR−オキシブチニンのいずれでもよい。意外なことには、本発明者は、R−又はS−オキシブチニンの流量がラセミ化合物の流量にほぼ等しいことを発見した。この発見は、例えばR−オキシブチニンのみを投与する場合に、等量のラセミ化合物を投与するために必要なパッチのサイズの少なくとも1/2であるパッチの使用を可能にする。
【0046】
オキシブチニンは通常、マトリックス又はキャリヤー中に飽和を越える濃度で存在し、過剰量は系の薬物投与期間の所望の長さの関数である。しかし、オキシブチニンが皮膚又は粘膜部位に所望の治療速度を与えるために充分な量で、充分な時間連続的に投与されるかぎり、オキシブチニンは飽和未満のレベルでも本発明から逸脱せずに存在することができる。
【0047】
透過促進性混合物はマトリックス又はキャリヤー中に、好ましくは、予定投与期間を通して溜め中に促進剤の透過促進量を与えるために充分な濃度で分散される。図3と4におけるように、付加的な別の透過促進剤マトリックスが存在する場合には、透過促進剤は通常、別の溜め中に飽和を越えて存在する。
【0048】
透過促進剤混合物の成分の特定重量%の予想外の効果は、一部は、乳酸エステル中のモノグリセリドの溶解性によると考えられる。モノグリセリドがそれだけで効果的な透過促進剤であることは知られている。この促進はモノグリセリドが皮膚の脂質層に可溶化することによって生ずる。脂質層へのモノグリセリドの可溶化は乳酸エステル濃度の関数として増大する。例えば、乳酸ラウリル中のグリセロールモノラウレートの溶解度は、溶液を撹拌したときに、350mg/g溶液である。GMLは、例えばEVA40マトリックス中に実際に不溶である。したがって、溶解したGML(すなわち、遊離GML)量はポリマー中の乳酸ラウリル負荷によって、この負荷に比例して指定される。
【0049】
350mg/gのGML溶解度に基づくと、EVA40中の乳酸ラウリルの種々な重量%に基づく遊離GML濃度は次の通りである:
乳酸ラウリル重量% 溶液中のGML重量%
12% 4.2%
20% 7.0%
27% 9.5%
30% 10.5%
したがって、溶液中のGML量に基づくと、乳酸ラウリルの高い重量%は高レベルの遊離GMLを生じ、したがって、透過を高める大きい効力を生じると考えられる。しかし、実施例によって示されるように、GML 20重量%と乳酸ラウリル 12重量%とを含む、好ましい製剤はGML 20重量%と乳酸ラウリル 20重量%とを含む製剤と同様に、薬物透過性を促進するために効果的であった。本発明は15〜25重量%のモノグリセリド又はモノグリセリド混合物と、8〜25重量%の乳酸エステルとを含む透過促進性混合物に関するが、モノグリセリド 20重量%と乳酸エステル 12重量%とが、より高い割合の乳酸エステル組成物と同様に効果的であり、しかも周知の可能な刺激剤である乳酸エステルの少ない割合を投与するので、好ましい。
【0050】
本発明に重要であるオキシブチニンと透過促進性混合物との他に、マトリックス又はキャリヤーは染料、顔料、不活性フィラー、賦形剤及び、技術上知られた薬剤学的製品又は経皮デバイスの他の通常の成分を含むこともできる。
【0051】
個人による及び同じ身体の部位による皮膚透過性の幅広い変化のために、薬物と透過促進性混合物とを速度制御された経皮投与デバイスから投与することが好ましい。速度制御は速度制御膜又は接着剤又は両方によって、並びに他の手段によって得ることができる。
【0052】
ある一定量のオキシブチニンが可逆的に皮膚に結合するので、したがって、デバイスの皮膚接触層は負荷用量としてこの量の薬物を含むことが好ましい。
本発明のデバイスの表面積は1cm2未満から200cm2を越えるまで変化することができる。しかし、典型的なデバイスは約5〜50cm2の範囲内の表面積を有する。
【0053】
本発明のデバイスは数時間から7日間以上までの長時間にわたってオキシブチニンを効果的に投与するように設計することができる。皮膚部位の閉塞の副作用が経時的に増加し、皮膚細胞の脱落及び置換の正常サイクルは約7日間で生じるので、7日間が一般に単一デバイスの適用の最大時間限界である。
【0054】
本発明の方法は、
(a)一定時間にわたって、皮膚面積に治療有効量のオキシブチニンを投与する段階と;
(b)該皮膚面積に本発明による透過促進性混合物を同時投与する段階とを含む。
【0055】
この方法によって投与される組成物は透過促進性混合物(すなわち、15〜25重量%のモノグリセリド又はモノグリセリド混合物と、8〜25重量%の乳酸エステル)と、オキシブチニンが効果的な治療結果を与えるために、所定期間にわたって皮膚を通してオキシブチニンを全身投与するために充分なオキシブチニンとを組合せて含む。
【0056】
本発明は、オキシブチニンの治療有効量を、それぞれ約8〜25重量%と15〜25重量%で存在する乳酸エステルとモノグリセリド又はモノグリセリド混合物の皮膚透過促進量と共に経皮投与する方法にも関する。
【0057】
本発明によると、オキシブチニンを透過促進性混合物と同時投与する場合に、オキシブチニンをヒト身体に治療有効量で経皮経路によって投与することができることが判明している。生活するヒト皮膚を通してのオキシブチニンの典型的な皮膚透過速度は約5μg/cm2・時〜約15μg/cm2・時の範囲内である。
【0058】
最初の適用後の約6〜10時間内に治療血液レベルを得ることができ、血液濃度はその後の系の適用によって維持される。限定された面積から皮膚を通して生ずる、オキシブチニンの所望の達成可能な、系の透過速度の範囲は、24時間の期間にわたって1〜20mgである。系の適用は短期間治療にも長期間治療にも容易に適応されるが、一般には、72時間が単一適用の期間である。
【0059】
本発明の好ましい実施態様は神経因性膀胱障害(例えば、頻尿又は失禁)の治療方法を含む。神経因性膀胱障害の治療に有用であるためには、オキシブチニンは約0.5ng/mlを越えるレベルで、好ましくは約1ng/mlを越えるレベルで、最も好ましくは約2〜4ng/mlのレベルで血漿中に存在すべきである。この結果を得るためには、オキシブチニンは少なくとも約40〜200μg/時、典型的には少なくとも約80μg/時、より典型的には約80〜160μg/時の治療速度で、通常約24時間〜7日間の治療期間にわたって投与される。
【0060】
血漿中にオキシブチニンが存在する時間の長さと血漿中のオキシブチニンの総量とは、本発明の教示に従って、種々な治療計画(treatment regimen)を形成するように、変化することができる。したがって、これらを外因性オキシブチニンが個人又は動物に経皮投与される時間量によって制御することができる。
【0061】
好ましくは、オキシブチニンを治療有効速度で経皮投与するためのデバイスは、
(a)(i)5〜40重量%のオキシブチニンと、
(ii)15〜25重量%のモノグリセリド又はモノグリセリド混合物と、
(iii)8〜25重量%の乳酸エステルと、
(iv)10〜72重量%のエチレン−酸ビニルコポリマーとを含有する溜めと;
(b)該溜めの皮膚遠位面上の裏材と;
(c)該溜めを皮膚と薬物−及び透過促進性混合物−伝達関係に維持するための手段とを含む。
【0062】
1実施態様では、デバイスはさらに、溜めを適所に維持するための手段の皮膚遠位面上の微孔質膜を含む。好ましくは、モノグリセリドはグリセロールモノラウレートであり、乳酸エステルは乳酸ラウリルである。他の好ましい実施態様では、オキシブチニンはR−オキシブチニンである。
【0063】
さらに好ましくは、オキシブチニンを治療有効速度で経皮投与するためのデバイスは、
(a)(i)15〜30重量%のオキシブチニンと、
(ii)15〜25重量%のグリセロールモノラウレートと、
(iii)825重量%の乳酸ラウリルと、
(iv)20〜62重量%のエチレン−酸ビニルコポリマーとを含有する溜めと;
(b)該溜めの皮膚遠位面上の裏材と;
(c)該溜めを皮膚と薬物−及び透過促進性混合物−伝達関係に維持するための手段とを含む。
【0064】
好ましくは、デバイスはさらに、溜めを適所に維持するための手段の皮膚遠位面上の微孔質膜を含む。他の好ましい実施態様では、オキシブチニンはR−オキシブチニンである。
【0065】
なお一層好ましくは、オキシブチニンを治療有効速度で経皮投与するためのデバイスは、
(a)(i)20〜25重量%のオキシブチニンと、
(ii)20重量%のグリセロールモノラウレートと、
(iii)12重量%の乳酸ラウリルと、
(iv)43〜48重量%のエチレン−酢酸ビニルコポリマーとを含有する溜めと;
(b)該溜めの皮膚遠位面上の裏材と;
(c)該溜めを皮膚と薬物−及び透過促進性混合物−伝達関係に維持するための手段とを含む。
【0066】
好ましくは、デバイスはさらに、溜めを適所に維持するための手段の皮膚遠位面上の微孔質膜を含む。他の好ましい実施態様では、オキシブチニンはR−オキシブチニンである。
【0067】
他の実施態様において、溜めはさらに5〜25重量%の、最も好ましくは約20重量%の架橋ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン(例えば、N−ビニル−2−ピロリドン Polyplasdone XL−10(登録商標),G&F)を含む。好ましくは、裏材は例えばNRU−100−C(登録商標)(Flexcon,マサチュセッツ州,スペンサー)のような通気性裏材である。閉塞裏材を用いる場合には、Medpar(登録商標)(3M,ミネソタ州,セントポール)が好ましい。好ましくは、溜めを皮膚と薬物−及び透過促進性混合物−伝達関係に維持するための手段は例えばMSPO41991P,3Mのようなアクリル系接触接着剤である。好ましくは、エチレン−酢酸ビニルコポリマーは33%又は40%の酢酸エステル含量を有する。
【0068】
上記特許は本発明による経皮薬物投与デバイスの種々な層又は成分の成形加工に使用可能である多様な材料を開示する。それ故、本発明は本明細書に開示した以外の材料を、必要な機能を果たしうることが今後、当該技術分野に知られる材料を含めて、用いることを考慮する。本発明の実施を説明するために下記実施例を提供するが、これらは本発明を何らかの意味で限定することを意図されないものである
【実施例】
【0069】
実施例1
40%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー("EVA40",U.S.I.Chemicals;イリノイ州)を密閉式ミキサー(BraBender型ミキサー)においてEVA40ペレットが融解するまで混合することによって、薬物/透過促進剤溜めを製造した。次に、オキシブチニンと、グリセロールモノラウレートと、乳酸ラウリルとを加えた。混合物をブレンドし、6mil厚さフィルムにカレンダー処理した。
【0070】
この薬物溜めの組成を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
次に、このフィルムを、片側をアクリル系接触接着剤(MSPO41991P,3M)に積層し、反対側をMedpar(登録商標)裏材(3M)に積層した。このラミネートを次に、ステンレス鋼パンチを用いて、2.54cm2円形にカットした。
【0074】
ヒト表皮の円形ピースを水平透過セル上に、角質層をセルのドナー区画に面させて載せた。次に、系の剥離ライナーを除去して、系を表皮の角質層側上に位置合わせした(centered)。35℃において平衡させたレセプター溶液(0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液,pH6)の既知量をレセプター区画に入れた。レセプター区画から気泡を除去した;セルに蓋をして、35℃の水浴シェーカーに入れた。
【0075】
一定の時間間隔で、全レセプター溶液をセルから取り出し、予め35℃に平衡させた、等量の新しいレセプター溶液と取り替えた。レセプター溶液を蓋をした瓶に入れて、HPLCによるオキシブチニン含量の分析まで、4℃に保存した。
【0076】
薬物濃度とレセプター溶液量、透過面積及び時間間隔から、表皮を通る薬物流量を次のように算出した:(薬物濃度×レセプター量)/(面積x時間)=流量(μg/cm2・時)。
【0077】
種々な系に関して得られた流量を図5、6及び7に示す。グリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとを含むデバイスの流量はグリセロールモノラウレートのみを含むデバイスから得られた流量よりも平均して大きかった。
【0078】
図8と9は図5〜7に示したデータの三次元表示(すなわち、変動する量のGML、乳酸ラウリル及びオキシブチニンの累積流量)である。これらの図が示すように、20重量%のGMLと12重量%の乳酸ラウリルとが最大の流量促進を与える。
【0079】
実施例2
40%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー("EVA40",U.S.I.Chemicals;イリノイ州)を密閉式ミキサー(BraBender型ミキサー)においてEVA40ペレットが融解するまで混合することによって、薬物/透過促進剤溜めを製造した。次に、オキシブチニンと、グリセロールモノラウレートと、乳酸ラウリルとを加えた。混合物をブレンドし、5.0mil厚さフィルムにカレンダー処理した。この溜めの組成を表2に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
次に、このフィルムを、片側をアクリル系接触接着剤(MSPO41991P,3M)に積層し、反対側をMedpar(登録商標)又はNRU−100−C(登録商標)裏材(Flexco Co.)に積層した。このラミネートを次に円形にカットして、系の縁からの薬物放出を防止するためにテープで巻いた(taped)。
【0082】
試験した各デバイスに関して、使用直前に乾燥ブロットしたヒト表皮ディスクの角質層側に接着剤を塗布した。過剰な表皮はデバイスの周囲に巻き付けて、デバイス縁がレセプター溶液に暴露されないようにした。表皮で覆われたデバイスをナイロンネットとニッケルワイヤーとを用いて、レリースロッド(release rod)のテフロン(登録商標)ホルダーの平たい側に取り付けた。このロッドを一定量のレセプター溶液(0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液,pH6)中で往復運動させた。各サンプリング時間に全レセプター溶液を取り替えた。水浴中のレセプター溶液の温度を35℃に維持した。
【0083】
レセプター溶液を蓋をした瓶に入れて、HPLCによるオキシブチニン含量の分析まで、4℃に保存した。種々な系に関して達せられた流量を算出して、図10に示す。
実施例3
40%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー("EVA40",U.S.I.Chemicals;イリノイ州)を密閉式ミキサー(BraBender型ミキサー)においてEVA40ペレットが融解するまで混合することによって、薬物/透過促進剤溜めを製造した。次に、オキシブチニンと、グリセロールモノラウレートと、乳酸ラウリルとを加えた。混合物をブレンドし、カレンダー処理して、5mil厚さフィルムにした。この溜めの組成を表3に示す。
【0084】
【表4】

【0085】
次に、このフィルムを、片側をアクリル系接触接着剤(MSPO4199P,3M)に積層し、反対側をスパン−レース(spun-lace)裏材,Sontara NRU−100−C(登録商標)裏材(Flexco Co.)に積層した。サンプルの1/2は接触接着剤の皮膚遠位側に積層した微孔質ポリプロピレン膜(Celgard(登録商標),Hoechst Celanese)も含有した。このフィルムを次に円形にカットし、縁からの薬物放出(edge release)を防ぐためにテープを巻いた。
【0086】
試験した各デバイスに関して、使用直前に乾燥ブロットしたヒト表皮ディスクの角質層側に接着剤を塗布した。過剰な表皮はデバイスの周囲に巻き付けて、デバイス縁がレセプター溶液に暴露されないようにした。表皮で覆われたデバイスをナイロンネットとニッケルワイヤーとを用いて、レリースロッドのテフロン(登録商標)ホルダーの平たい側に取り付けた。このロッドを一定量のレセプター溶液(0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液,pH6)中で往復運動させた。各サンプリング時間に全レセプター溶液を取り替えた。水浴中のレセプター溶液の温度を35℃に維持した。
【0087】
レセプター溶液を蓋をした瓶に入れて、HPLCによるオキシブチニン含量の分析まで、4℃に保存した。種々な系に関して得られた流量と放出速度とに対するCelgard(登録商標)の影響を図11〜13に示す。
【0088】
実施例4〜5 40%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー("EVA40",U.S.I.Chemicals;イリノイ州)又は鉱油とペトロラクタムのいずれかを、製剤(formulation)に依存して、密閉式ミキサー(BraBender型ミキサー)においてEVA40ペレットが融解するまで混合することによって、薬物/透過促進剤溜めを製造した。次に、オキシブチニンと、グリセロールモノラウレートと、乳酸ラウリルとを加えた。
【0089】
EVA40を用いた場合に、混合物をブレンドし、冷却し、カレンダー処理して、5mil厚さフィルムにした。次に、このフィルムを、片側をアクリル系接触接着剤(MSPO4199P,3M)に積層し、反対側をMedpar(登録商標)裏材(3M)に積層した。このラミネートを次にステンレス鋼パンチを用いて円形にカットした。ヒト表皮の円形ピースを水平透過セル上に、角質層をセルのドナー区画に向けて取り付けた。次に、系の剥離ライナーを除去し、表皮の角質層側上に位置合わせした。35℃において平衡させたレセプター溶液(0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液,pH6)の既知量をレセプター区画に入れた。レセプター区画から気泡を除去した;セルに蓋をして、35℃の水浴シェーカーに入れた。
【0090】
鉱油/ペトロラクタムを用いた場合に、薬物と透過促進剤とを含む混合物をブレンド/混合し、二側(two sides)拡散セルのドナー側に注入した。35℃において平衡させたレセプター溶液(0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液,pH6)の既知量をレセプター区画に入れた。レセプター区画から気泡を除去した;セルに蓋をして、35℃の水浴シェーカーに入れた。
【0091】
一定の時間間隔で、いずれの系に関しても、全レセプター溶液をセルから取り出し、予め35℃に平衡させた、等量の新しいレセプター溶液と取り替えた。レセプター溶液を蓋をした瓶に入れて、HPLCによるオキシブチニン含量の分析まで、4℃に保存した。
種々な系に関して得られた透過速度を薬物溜め組成と共に表4に示す。一方の鏡像異性体のみを含むデバイス/ゲルの流量は、ラセミ混合物を含むデバイス/ゲルから得られた流量にほぼ等しかった。
【0092】
【表5】

【0093】
本発明を特に、ある一定の好ましい、その実施態様に関して詳細に説明したが、本発明の要旨及び範囲内で変更及び改良が行われうることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による経皮薬物投与系の1実施態様の横断面図である。
【図2】本発明の経皮薬物投与系の他の実施態様の横断面図である。
【図3】本発明による経皮薬物投与系のさらに他の実施態様の横断面図である。
【図4】本発明による経皮薬物投与系のさらに他の実施態様の横断面図である。
【図5】グリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとによる、インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通るオキシブチニンのグラフである。
【図6】グリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとによる、インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通るオキシブチニンの流量のグラフである。
【図7】グリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとによる、インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通るオキシブチニンの流量のグラフである。
【図8】変動するグリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとによる、インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通る酸素の流量のグラフである。
【図9】変動するグリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとによる、インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通る酸素の累積流量のグラフである。
【図10】インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通るオキシブチニンの流量に対するグリセロールモノラウレートと乳酸ラウリルとの影響を示す棒グラフである。
【図11】オキシブチニンの速度に対する微孔質膜の影響を示すグラフである。
【図12】インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通るオキシブチニンの流量に対する微孔質膜の影響を示すグラフである。
【図13】インビトロでの35℃におけるヒト表皮を通るオキシブチニンの流量に対する微孔質膜の影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体表面又は膜を通しての透過によってオキシブチニンを投与するために、身体表面又は膜に適用する組成物であって、
(a)治療有効量の投与すべきオキシブチニンと;
(b)(i)少なくとも15重量%のモノグリセリドと、
(ii)少なくとも12重量%の乳酸エステルと
を含有する透過促進性混合物とを組合せて含む前記組成物であって、該乳酸エステルの濃度がさらに増加しても、該オキシブチニン皮膚透過流量が増加しないことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
モノグリセリドが組成物の20重量%を成し、乳酸エステルが組成物の12重量%を成す請求項1記載の組成物。
【請求項3】
乳酸エステルが乳酸エチル、乳酸ミリスチル及び乳酸セチルからなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項4】
治療有効速度でオキシブチニンを経皮投与するためのデバイスであって、
(a)治療有効量のオキシブチニンと、
皮膚透過促進量の、
(i)少なくとも15重量%のモノグリセリドと、
(ii)少なくとも12重量%の乳酸エステルと
を含有する透過性混合物と
を含む溜めと;
(b)該溜めの皮膚遠位面上の裏材と;
(c)薬物及び透過促進性混合物と皮膚とが伝達関係にあるよう該オキシブチニン溜めを維持するための手段と
とを含み、該乳酸エステルの濃度がさらに増加しても、該オキシブチニン皮膚透過流量が増加しないことを特徴とする、前記デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、該裏材と該オキシブチニン溜めとの間に位置する第2の溜め及び該オキシブチニン溜めと該第2溜めとの間の速度制御膜をさらに含み、該第2の溜めは、過剰な透過促進性混合物と飽和以下のオキシブチニンとを含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
該維持手段の皮膚遠位側に微孔質膜をさらに含む請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項7】
モノグリセリドが20重量%を成し、乳酸エステルが12重量%を成す請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項8】
乳酸エステルが乳酸エチル、乳酸セチル又は乳酸ミリスチルからなる群から選ばれる、請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項9】
薬物がR−オキシブチニンである請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項10】
該オキシブチニン溜めが、該溜めを皮膚に維持する手段として機能する接着剤層でもある請求項4記載のデバイス。
【請求項11】
そのオキシブチニン溜めが20〜62重量%のエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む請求項4又は5に記載のデバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体表面又は膜を通しての透過によってオキシブチニンを投与するために、身体表面又は膜に適用する組成物であって、
(a)治療有効量の投与すべきオキシブチニンと;
(b)(i)少なくとも15重量%のモノグリセリドと、
(ii)少なくとも12重量%の乳酸エステルと
を含有する透過促進性混合物とを組合せて含む前記組成物であって、該乳酸エステルの濃度がさらに増加しても、該オキシブチニン皮膚透過流量が増加しないことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
モノグリセリドが組成物の20重量%を成し、乳酸エステルが組成物の12重量%を成す請求項1記載の組成物。
【請求項3】
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸エチル、乳酸ミリスチル及び乳酸セチルからなる群から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項4】
治療有効速度でオキシブチニンを経皮投与するためのデバイスであって、
(a)治療有効量のオキシブチニンと、
皮膚透過促進量の、
(i)少なくとも15重量%のモノグリセリドと、
(ii)少なくとも12重量%の乳酸エステルと
を含有する透過性混合物と
を含む溜めと;
(b)該溜めの皮膚遠位面上の裏材と;
(c)薬物及び透過促進性混合物と皮膚とが伝達関係にあるよう該オキシブチニン溜めを維持するための手段と
とを含み、該乳酸エステルの濃度がさらに増加しても、該オキシブチニン皮膚透過流量が増加しないことを特徴とする、前記デバイス。
【請求項5】
前記デバイスが、該裏材と該オキシブチニン溜めとの間に位置する第2の溜め及び該オキシブチニン溜めと該第2溜めとの間の速度制御膜をさらに含み、該第2の溜めは、過剰な透過促進性混合物と飽和以下のオキシブチニンとを含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
該維持手段の皮膚遠位側に微孔質膜をさらに含む請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項7】
モノグリセリドが20重量%を成し、乳酸エステルが12重量%を成す請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項8】
乳酸エステルが乳酸ラウリル、乳酸エチル、乳酸セチル又は乳酸ミリスチルからなる群から選ばれる、請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項9】
薬物がR−オキシブチニンである請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項10】
該オキシブチニン溜めが、該溜めを皮膚に維持する手段として機能する接着剤層でもある請求項4記載のデバイス。
【請求項11】
そのオキシブチニン溜めが20〜62重量%のエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む請求項4又は5に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−117688(P2006−117688A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350255(P2005−350255)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【分割の表示】特願平7−510486の分割
【原出願日】平成6年9月29日(1994.9.29)
【出願人】(598158657)アルザ・コーポレーション (23)
【Fターム(参考)】