説明

オキシメチレン共重合体組成物

【課題】オキシメチレン単独重合体並の機械的強度や剛性を有し、且つ、熱安定性にも優れるオキシメチレン共重合体組成物を提供すること。
【解決手段】トリオキサンと1,3−ジオキソランをカチオン活性触媒を用いて共重合するにあたり、1,3ージオキソランをトリオキサンに対して0.01〜1.0モル%使用して得られる粗重合体100重量部に対して、(a)立体障害性フェノール類の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部、(b)アミノ置換トリアジン類の塩基安定剤を0.01〜0.1重量部未満、(c)金属含有化合物を0.03重量部以下、の範囲で添加したのち安定化処理して得られるオキシメチレン共重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い剛性および靭性を有し、熱安定性に優れたオキシメチレン共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシメチレン重合体は、機械的及び熱的性能に優れており、代表的なエンジニアプラスチックとして、近年極めて広範囲の分野において利用されている。しかし、オキシメチレン重合体が利用される分野の拡大に伴い、その材料としての性質にも、更に一層の改良が求められている。現在、市場に供給されているオキシメチレン重合体には、大別してオキシメチレン単独重合体とオキシメチレン共重合体がある。オキシメチレン単独重合体は機械的強度や剛性が高く、耐疲労性、耐摩耗性などの力学的特性が優れているが、熱安定性や耐熱水性が劣る。逆にオキシメチレン共重合体は機械的強度や剛性が劣るものの、靭性や柔軟性に優れており、その分子鎖中に分解を抑える安定な共重合ユニットを含むため、熱安定性が高い。これら両者の特性を生かした、剛性、靭性、熱安定性のバランスのとれたオキシメチレン重合体が望まれていた。
【0003】
かかる課題に対し、特にオキシメチレン共重合体における機械的強度や剛性を改良するために、強化用充填剤等の各種添加剤を配合することも考えられるが、靭性が大きく損なわれてしまう。また、オキシメチレンモノマー単位からなるボリマー鎖中にオキシメチレンモノマー単位100モル当たり0.01〜1.0モルのオキシアルキレンコモノマー単位がランダムに挿入された構造を有する高剛性オキシメチレン重合体が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この挿入量では高い剛性は得られるものの、熱安定性の低下が大きく、機械的性質及び熱安定性のバランスの点では未だ満足するものではない。
【0004】
また、1,3−ジオキソランを共重合成分として使用し、従来技術により製造したオキシメチレン共重合体は熱安定性不良原因となる不安定部分が、エチレンオキサイドを共重合成分とする場合よりも少なく、さらに不安定部分の生成量は、使用する1,3−ジオキソラン量および触媒量に依存し、不安定部分の生成を抑制するためには、触媒の使用量をある一定量以下とする必要があることが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この1,3−ジオキソラン量および触媒量では、熱安定性は改良されるものの、剛性についてはさほど向上しない。
【0005】
重合収率を改良する方法としては、使用触媒量の増量であるが、触媒量の単純な増加は不安定部分の生成を促進し、好ましくないことは公知である。この問題を解決するために、ある一定量以下の1,3−ジオキソランを使用することで、製造時における共重合体の生成速度が増加するため、触媒量をさほど増加させなくても、オキシメチレン共重合体が高収率で得られることが明らかにされ、1,3−ジオキソランを共重合成分をトリオキサンに対して1.1〜2.9モル%といった低添加量として剛性を向上させると共に、重合反応時の触媒の使用量をある一定以下とする方法が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、この1,3−ジオキソラン量および触媒量において、剛性および熱安定性が大幅に向上するものの、添加剤と熱安定性に関する詳細な記述はなく、更に高い熱安定性が望まれていた。
【0006】
従来技術として、トリオキサン及びトリオキサンと共重合可能な環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られるオキシメチレン共重合体は、その重合体の末端に熱的に不安定な構造を有するため、例えばそれらを熱的に分解除去する処理が施される。そのときに、オキシメチレン共重合体の熱安定性を向上させるために、例えば、立体障害性フェノール類のような酸化防止剤、アミン置換トリアジン類のような熱安定剤、金属水酸化物や炭酸塩のような金属含有化合物を配合することが公知であるが、これら添加物のうち、熱安定剤、金属含有化合物の量は過剰であると寧ろ熱安定性の悪化を来し、減量してそれら添加量を最適化することで更に熱安定性が向上することが明らかとなった。
【特許文献1】特許第3215442号公報
【特許文献2】特許第3257581号公報
【特許文献3】特開2001−329032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、オキシメチレン単独重合体並の機械的強度や剛性を有し、且つ、熱安定性にも優れるオキシメチレン共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、トリオキサンと1,3−ジオキソランをカチオン活性触媒を用いて共重合するにあたり、1,3ージオキソランをトリオキサンに対して0.01〜1.0モル%使用して得られる粗重合体100重量部に対して、
(a)立体障害性フェノール類の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部、
(b)アミノ置換トリアジン類の塩基安定剤を0.01〜0.1重量部未満、
(c)金属含有化合物を0.03重量部以下、
の範囲で添加したのち安定化処理して得られる、オキシメチレン単独重合体並の機械的強度や剛性を有し、且つ、熱安定性にも優れるオキシメチレン共重合体組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオキシメチレン共重合体組成物は、高い剛性及び靱性を有し、且つ熱安定性に優れたオキシメチレン共重合体樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に適用されるオキシメチレン粗重合体の製造方法としては、塊状重合法、溶融重合法等がある。例えば、好ましい重合方法としては、実質上溶媒を用いない塊状重合法か、またはモノマーに対して20%以下の溶媒を用いる準塊状重合法が挙げられる。溶融状態にあるモノマーを用いて重合し、重合の進行と共に塊状及び粉状化した固体のポリマーを得る方法である。
【0011】
本発明における原料モノマーはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンであり、コモノマーとしては1,3−ジオキソランが用いられる。1,3−ジオキソランの添加量は、トリオキサンに対して0.01〜1.0モル%で、好ましくは0.1〜0.8モル%である。1,3−ジオキソランの使用量が1.0モル%より多い場合は重合収率が低下し、0.01モル%より少ない場合は熱安定性が低下する。
【0012】
本発明において、触媒は、トリオキサンに対するモル比で、1×10−7≦〔触媒]/[トリオキサン]≦3×10−5を満たす量を、好ましくは、1×10−7≦〔触媒〕/[トリオキサン]≦2×10−5を満たす量を使用する。触媒の使用量が3×10−5より多い場合は熱安定性が低下し、1×10−7より少ない場合は重合収率が低下する。
【0013】
本発明の重合触媒としては、一般のカチオン活性触媒が用いられる。このようなカチオン活性触媒としては、ルイス酸、殊にホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモン等のハロゲン化物、例えば三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、五フッ化リン、五フッ化ヒ素および五フッ化アンチモン、およびその錯化合物または塩の如き化合物、プロトン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸、プロトン酸のエステル、殊にパークロル酸と低級脂肪族アルコールとのエステル、プロトン酸の無水物、特にパークロル酸と低級脂肪族カルボン酸との混合無水物、あるいは、トリエチルオキソニウムへキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルへキサフルオロアルゼナート、アセチルへキサフルオロボラート、ヘテロポリ酸またはその酸性塩、イソポリ酸またはその酸性塩などが挙げられる。特に三フッ化ホウ素を含む化合物、あるいは三フッ化ホウ素水和物および配位錯体化合物が好適であり、エーテル類との配位錯体である三フッ化ホウ素ジエチルエーテラ−ト、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートは特に好ましい。
【0014】
本発明の重合法において、オキシメチレン共重合体の分子量調節のために、必要ならば適当な分子量調節剤を用いても良い。分子量調節剤としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、アミド、イミド、フェノール類、アセタール化合物などが挙げられる。特にフェノール、2,6−ジメチルフェノール、メチラール、ポリオキシメチレンジメトキシドは好適に用いられ、最も好ましいのはメチラールである。分子量調節剤は単独あるいは溶液の形で使用される。溶液で使用する場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられる重合装置は、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、バッチ式重合装置としては、一般的に用いられる攪拌機付きの反応槽が使用できる。連続式重合装置としては、重合時の急激な固化、発熱に対処可能な強力な攪拌能力、緻密な温度制御、さらにはスケールの付着を防止するセルフクリーニング機能を備えた二一ダー、二軸スクリュー式連続押出混練機、二軸のパドル型連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサンの連続重合装置が使用可能で、2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。
【0016】
本発明の実施において、60〜90%の重合収率(境界収率と定義する)前後の重合温度の制御は重要である。境界収率は、好ましくは65〜90%、より好ましくは70〜90%、最も好ましくは80〜90%である。重合温度は重合収率が境界収率に達するまでは、60〜115℃に、好ましくは60〜110℃に、より好ましくは60〜100℃に、最も好ましくは60〜90℃の範囲に保たれるべきである。また重合収率が、境界収率以上においては、0〜100℃に、好ましくは0〜80℃に、より好ましくは0〜70℃に、最も好ましくは0〜60℃の範囲に保たれるべきである。重合収率が境界収率に達するまでの重合温度がこれより高いと、熱安定性が低下し、かつ重合収率も低下する。また低い場合は、熱安定性は保持されるが、この場合も重合収率は低下する。境界収率以上における重合温度がこれより高い場合は熱安定性が低下し、低い場合は、重合機の撹拌動力のトルク上昇をきたす等の不都合が発生する。また、境界収率以上における重合温度は、境界収率に達するまでの温度より高くなってはならない。もしこれが逆転すると、熱安定性が低下する。
【0017】
本発明の実施において重合時間は、通常0.25〜120分であるが、好ましくは1〜60分であり、より好ましくは1〜30分である。重合時間が120分より長いと熱安定性が低下し、0.25分より短いと重合収率が低下する。
【0018】
重合を完了し、重合機から排出される粗重合体は、次いで直ちに失活剤と混合接触させて重合触媒の失活化を行い重合反応を停止することが必要である。本発明では、通常、重合収率が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上に達した時点で触媒を失活させ重合を停止する。
【0019】
本発明の失活剤としては、三価の有機リン化合物、アミン化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物などが使用できる。アミン化合物としては、一級、二級、三級の脂肪族アミンや芳香族アミン、ペテロ環アミン、ヒンダードアミン類、その他公知の触媒失活剤が使用できる。例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノーn−プチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリーn−プチルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリンなどが使用できる。これらの中で特に三価の有機リン化合物および三級アミンは好ましく、トリフェニルホスフィンが最も好適である。
【0020】
失活剤を溶液、懸濁液の形態で使用する場合、使用される溶剤は特に限定されるものではないが、水、アルコール類の他、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等の各種の脂肪族及び芳香族の有機溶媒が使用可能である。
【0021】
いずれの場合も失活処理は、粗重合体は微細な粉粒体であることが好ましく、このためには重合反応機が塊状重合物を充分粉砕する機能を有するものが好
ましく、また、重合後の反応物を別に粉砕機を用いて粉砕した後に失活剤を加えてもよく、更に失活剤の存在下で粉砕と攪拌を同時に行ってもよい。また粉砕は、粉砕後の粒度が、標準ふるいを用いRo−Tap(ロータップ)シェーカーによってふるい分けして、100wt%が10メッシュの篩を通過し、そのうち90wt%以上が20メッシュの篩を、60wt%以上が60メッシュの篩をそれぞれ通過するような粒度となるように粉砕することが望ましい。このような粒度まで粉砕が行われない場合は、失活剤と触媒の反応は完結せず、従って残存した触媒によって徐々に解重合が進行して分子量低下を生じる。
【0022】
本発明において重合触媒の失活を行った粗重合体は高収率で得られるため、そのまま後段の安定化工程に送ることができるが、一層の精製が必要であるならば、洗浄、未反応モノマーの分離回収、乾燥等を経ることができる。
【0023】
安定化工程では、下記(1)および(2)に記載される安定化方法を採用することができる。
(1)上記で得られたオキシメチレン共重合体を加熱溶融して、不安定部分を除去する方法。
(2)上記で得られたオキシメチレン共重合体を水性媒体中で加水分解して、不安定部分を除去する方法。
これらの方法により安定化した後、ペレット化し、安定化された成形可能なオキシメチレン共重合体を得ることができる。
【0024】
上記の方法のうち、(1)の方法が(2)の方法に比べて、工程が単純であり、工業的方法として好ましい。すなわち、(1)の方法を採用する場合は、オキシメチレン共重合体をその溶融温度から100℃高い温度までの範囲範囲で、760〜0.1Torrの圧力下において溶融混練することが好ましい。処理温度がオキシメチレン共重合体の溶融温度より低い場合は、不安定部分の分解温度が不充分となり、安定化の効果が得られない。また、その溶融温度から100℃高い温度より高い場合は、黄変を起こしたり、熱によるポリマーの主鎖分解を起こしたり、同時に不安定部分が生成し熱安定性を損なう結果となり好ましくない。また、処理時の圧力としては、760Torrより高い場合は、不安定部分の分解により生じた分解ガスを系外に除去する効果が低く、充分な安定化効果が得られない。また0.1Torrより低い場合は、このような高減圧度を得るための装置が高価となり、工業的不利益が生ずるばかりでなく、吸引ベントロより溶融樹脂が流出し易くなり、運転上のトラブルを起こしやすく好ましくない。
【0025】
また、本発明において、上記安定化処理に用いる装置としては、単軸または2軸以上のベント付押出機を使用することができる。押出機は必要な滞留時間を得るために、2台以上の押出機を直列に配置する方法は有利な方法である。これらの安定化処理に際して、オキシメチレン共重合体の溶融混線時に、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤を添加して安定化処理を行うことができる。
【0026】
使用できる立体障害性フェノール類の酸化防止剤としては、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチルー4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチルーテトラキス−3−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチルー4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5一メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサンー1,6−ジイルビス[3−(3.5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等が挙げられ、これらの中でもトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートが好適に使用される。
【0027】
アミン置換トリアジン類の塩基熱安定剤としては、グアナミン、メラミン、メチロールメラミン、ペンゾグアナミン、シアノグアニジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリールメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、またはそれらとホルムアルデヒドとの初期重縮合物類等が挙げられる。これらの中でメラミン、メチロールメラミン、ペンゾグアナミンが好適に用いられる。
【0028】
金属含有化合物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、または同無機酸塩、または同アルコキシド等のほか、ハイドロタルサイトのような鉱物についても使用可能である。無機塩としては炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などが挙げられ、アルコキシドとしてはメトキシド、エトキシドなどが挙げられる。より好ましいのは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの無機酸塩、水酸化物、有機酸塩等で、中でも水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、及び炭酸マグネシウムが好適に使用される。
【0029】
また、本発明のオキシメチレン共重合体組成物には、着色剤、核剤、可塑剤、離型剤、あるいはポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、ペンゾトリアゾール系またはペンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系のような光安定剤等の添加剤を所望により添加することができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものでないことは言うまでもない。なお、実施例、比較例中の用語および測定方法を以下に示す。
【0031】
連続重合機:二つの円が一部重なった内断面を有し、内断面の長径が20cmであり、周囲にジャケットを有する、長いケース内に1対のシャフトを備え、それぞれのシャフトには互いにかみ合う擬三角形板が多数はめ込まれ、擬三角形板の先端でケース内面および相手の擬三角形板の表面をクリーニングできる連続混合機。
重合収率:停止処理を施した、粗共重合体20gを20mlのアセトンに浸した後、濾過し、アセトンで3回洗浄した後、60℃で恒量となるまで真空乾燥を施した。しかる後、精秤し、以下の式により重合収率を決定した。
重合収率=M1/Mo×100
Mo;アセトン処理前の重量
M1;アセトン処理、乾燥後の重量
加熱重量減少率(粗重合体):粗重合体を10−2Torr減圧下で60℃、24時間乾燥した後、60メッシュの篩を通過した粗重合体粉末2gに安定剤(チバガイギー社、イルガノックス245(4.0%))を加えよく混合し試験管に入れ、窒素置換後10Torr減圧下で222℃、2時間加熱した場合の重量減少率を示す。
加熱重量減少率(安定化処理後):製品ペレット2gを試験管に入れ、窒素置換後10Torr減圧下で222℃、2時間加熱した場合の重量減少率を示す。滞留熱安定性:75tonの型締圧を有する射出成形機を用いたシリンダー内の滞留によるシルバーストリーク発生時間を評価方法として、シリンダー温度240℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の設定条件でシルバーストリークの発生するまでの所要滞留時間を測定した。値が大きいほど熱安定性が良好なことを示す。
金型汚染性:住友重機械工業株式会社製ミニマットM8/7A成形機を用い、しずく型金型を用いて、成形温度220℃、金型温度30℃で4000ショット連続成形し、終了後、金型の付着物(モールドデポジット)の状態を日視で観察した。
【0032】
〈オキシメチレン粗共重合体の調製〉
連続重合装置として、上述の連続重合機2台および停止剤混合機(シャフトには互いにかみ合う擬三角形板の代わりにスクリュー様の羽根が多数はめ込まれた構造を有し、供給口部分から停止剤溶液を注入し、連続的に重合体と混合せしめる連続重合機)を直列に接続したものを使用し、オキシメチレン共重合体の製造を実施した。第1段目の重合機の入口に、80kg/hr(889kmo1/hr)のトリオキサンおよび表1に示した量の1,3−ジオキソランと、触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを連続的に供給した。また分子量調節剤としてメチラールを、極限粘度1.1〜1.5dl/gに調節するのに必要な量を連続的に供給した。ベンゼンの合計使用量はトリオキサンに対して1重量%以下であった。また、停止剤混合機の入口より、使用した触媒量の2倍モルのトリフェニルホスフィンをベンゼン溶液で連続的に供給し、重合を停止し、出口よりオキシメチレン共重合体を収得した。なお、連続重合機は、各々シャフト回転数を約40rpmとし、また第1段目ジャケット温度を65℃、第2段目および停止剤混合機ジャケット温度を各々40℃に設定して重合運転を行った。得られた粗共重合体の重合収率、加熱重量減少率を測定し、その結果を表1に示した。
【0033】
〈実施例1〜8〉、〈比較例1〜7〉
得られた粗共重合体を表2に示す組成で安定剤を添加し、混合した後、ベント付2軸押出機に供給し、160Torrの減圧下、200℃で溶融混練し、ペレット化した。これらの加熱重量減少率、滞留熱安定性およびモールドデポジットについて評価し、その結果を表2に示した。用いた安定剤は以下の通りである。
(1)酸化防止剤:トリエチレングリコールービス〔3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバガイギー社製、商品名:イルガノックス245)
(2)熱安定剤:メラミン
(3)金属含有化合物:水酸化マグネシウム
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオキサンと1,3−ジオキソランをカチオン活性触媒を用いて共重合するにあたり、1,3−ジオキソランをトリオキサンに対して0.01〜1.0モル%使用して得られるオキシメチレン粗重合体100重量部に対して、
(a)立体障害性フェノール類の酸化防止剤を0.01〜0.5重量部、
(b)アミノ置換トリアジン類の塩基安定剤を0.01〜0.1重量部未満、
(c)金属含有化合物を0.03重量部以下
の範囲で添加した後、安定化処理して得られるオキシメチレン共重合体組成物。
【請求項2】
カチオン活性触媒が三フッ化ホウ素又はその配位化合物である請求項1に記載のオキシメチレン共重合体組成物。
【請求項3】
重合収率が少なくとも90%の時点で、生成したオキシメチレン共重合体と重合停止剤とを接触させる請求項1又は2に記載のオキシメチレン共重合体組成物。
【請求項4】
重合停止剤が三級アミンである請求項3に記載のオキシメチレン共重合体組成物。
【請求項5】
重合停止剤がトリフェニルホスフィンである請求項4に記載のオキシメチレン共重合体組成物。
【請求項6】
安定化処理が、オキシメチレン共重合体をその溶融温度から100℃高い温度までの温度範囲で、760〜0.1Torrの圧力下に溶融混練して行われる請求項1に記載のオキシメチレン共重合体組成物。

【公開番号】特開2008−195777(P2008−195777A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30702(P2007−30702)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】