説明

オキシ塩素化のための触媒

以下の工程:
(A)エチレン、酸素及び塩化水素を出発材料としてオキシ塩素化反応器中に導入する工程、その際塩化水素が水素を含有する、
(B)
−銅塩として銅3.5〜12.5質量%、
−マグネシウム塩としてマグネシウム0.1〜1.0質量%、
−カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を担体物質上に含有する触媒に対して出発材料を反応させて、存在する水素を水へと少なくとも部分的に反応させながら、1,2−ジクロロエタン及び水にする工程、
(C)反応器搬出物の後処理及びオキシ塩素化反応器へ循環ガスを返送する工程
を有する、減少した水素蓄積でもって、エチレンを1,2−ジクロロエタンへと循環ガス運転式にオキシ塩素化するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環ガス運転式において実施されるオキシ塩素化反応での水素の蓄積を妨げるための方法に関する。
【0002】
エチレンの1,2−ジクロロエタン(EDC)へのオキシ塩素化は一般的に公知の方法であり、この場合にエチレンは塩化水素及び酸素又は酸素含有ガス(例えば空気)を用いて気相中で、通常は触媒の存在下で反応させられる。この場合に、しばしば、1,2−ジクロロエタン(EDC)の熱分解反応からの塩化水素が使用され、これは一般的には汚染物質(特にアセチレン)を含有する。これによりオキシ塩素化反応では副生成物(特にポリ塩素化された化合物)が生じ、これにより主生成物EDCのオキシ塩素化反応からの分離は困難になる。したがって、塩化水素はオキシ塩素化反応中への返送前に水素化工程に付され、ここで汚染物質が分解される。このために塩化水素は、−水素化すべき汚染物質(特にアセチレン)に対して−5倍までもの過剰量の水素を用いて水素化触媒の存在下で反応させられる。したがって、このオキシ塩素化のために使用される塩化水素は水素も含有する。
【0003】
DE 1 618 701には、反応ガスが循環して導通されるオキシ塩素化方法が記載されている。
【0004】
「Mitsui-Toatsu方法」として公知のオキシ塩素化の実施様式においては、エチレンは酸素及び塩化水素の存在下で酸化アルミニウム及び銅からなる流動床触媒に対して反応させられ、その際、この反応ガスのモル比はエチレン1.5〜2.00:塩化水素2.00:酸素0.5〜1.00である。流動床反応器から流出するガスはこの場合に冷却器又は他の適した装置を用いて生成物及びガス混合物中で分離され、これは未反応出発材料及びガス状副生成物、例えば二酸化炭素及び一酸化炭素を含有する。ガス混合物からは、塩基性溶液を用いた洗浄により二酸化炭素及び結果として残存する塩化水素が除去される。このように得られたガス混合物は、主として、エチレン、酸素及び一酸化炭素を含有するが、循環において流動床反応器に返送される。流動床反応器中への新たな進入前に、循環ガスにエチレン、酸素及び塩化酸素が添加される。この方法では、高い塩化水素変換率が達成されるが、しかし、この達成されるEDC選択率は一般的には満足がいくものではない。
【0005】
銅含有触媒のマグネシウム及び/又はカリウムでのドーピングにより、このオキシ塩素化のEDC選択率が改善されることが記載されている。そのような触媒のための例は、例えば、「シングルパス」反応器における使用のためには、EP 1 464 395及びEP 1 666 145に記載され、その際ここで使用される触媒はマグネシウム及びカリウムでのドーピングの他に更に特殊な濃度分布の触媒金属をこの触媒担体粒子にわたり有する。「シングルパス」方法とは本発明においては、反応ガスが反応器を1回のみ経過し、循環プロセスにおいて導通されない方法が理解される。
【0006】
しかしながら、この方法を、循環プロセスにおいて、すなわち未反応出発材料が反応器に返送される方法において、実施することが経済的な方法のためには所望される。
【0007】
高いEDC選択率を有する技術水準に記載の触媒は、一般的には循環ガス運転式におけるオキシ塩素化反応には適さない。その高い選択率のために水素の蓄積が観察され、というのは、水素はその原則的に高い反応性にもかかわらず後続生成物(Folgeprodukt)(一般的には水)へと反応せず、循環ガス運転式により富化されるからである。高い水素含有量により、危険が爆発などにより増大する安全でない運転状態が生じる。
【0008】
したがって、これまで慣用の、循環ガス運転式におけるオキシ塩素化方法では、銅を10〜12質量%の濃度で含有し、高い活性を有し、これにより高い塩化水素変換率を引き起こす触媒が使用されている。この高い活性のために、エチレンからEDCへの反応の他に、水素から水への反応(分解)も十分な規模で触媒作用される。しかしながら、触媒の高い活性は一般的には不満足なEDC選択率を伴う。すなわち、不所望な副生成物、例えば一酸化炭素及び二酸化炭素の形成もが触媒作用される。
【0009】
すなわち、反応ガス中の水素の蓄積を妨げるか又は少なくとも強力に減少する、循環運転式におけるオキシ塩素化方法を提供することが課題であった。安全でない運転状態が回避されるものである。このEDC選択率は、同時に高い塩化水素変換率で、技術水準から公知の、同様に循環プロセスにおいて運転するオキシ塩素化方法に比較して改善されるものである。これは、技術水準から公知の触媒の選択率と比較可能であるものである。この方法は、可能な限り簡易かつ経済的であることが望ましく、最良なのは、好ましくは簡易に製造可能であり、かつ安価である触媒の使用によるものである。
【0010】
前記課題は、以下の工程:
(A)エチレン、酸素及び塩化水素を出発材料としてオキシ塩素化反応器中に導入する工程、その際塩化水素が水素を含有する、
(B)
−銅塩として銅3.5〜12.5質量%、
−マグネシウム塩としてマグネシウム0.1〜1.0質量%、
−カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を担体物質上に含有する触媒に対して出発材料を反応させて、存在する水素を水へと少なくとも部分的に反応させながら、1,2−ジクロロエタン及び水にする工程、
(C)反応器搬出物の後処理及びオキシ塩素化反応器へ循環ガスを返送する工程
を有する、減少した水素蓄積(Wasserstoffaufpegelung)でもって、エチレンを1,2−ジクロロエタンへと循環ガス運転式にオキシ塩素化するための方法により解決される。
【0011】
本発明の範囲内では、全ての質量パーセントの記載は、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0012】
反応ガスとは、本発明においては、新規ガス及び循環ガスの合計が常に理解される。循環ガスは、反応器の経過後及び場合により後処理工程後に得られ、反応器に返送されるガス混合物を理解すべきである。
【0013】
塩化水素変換率は、方法において使用される触媒の活性のための尺度であり、次式のとおりに定義される:
塩化水素変換率[%]={変換された塩化水素/新規に供給された塩化水素}・100。
【0014】
EDC選択率は次式により定義される:
EDC選択率[%]={形成されたEDC/変換されたエチレン}・100。
【0015】
反応ガス中の水素の蓄積を妨げるために、単純な反応器経過の際には水素量は減じられなくてはならず、これは少なくとも、このそのつど新規に供給される水素量と同程度である。
【0016】
本発明の範囲内においては、減少された水素蓄積とは、水素蓄積が完全に妨げられること、すなわち、単純な反応器経過の際に水素が完全に分解され(abbauen)、循環ガス中には水素が存在しないことが理解されるか、あるいは、水素が単純な反応器経過の際に、循環ガス中の水素含有量が、安全な運転状態を可能にする値のレベルになり、かつ、最大で2.0%、有利には最大で1.8%、特に有利には1.5%の値の反応ガス中の水素含有量を生じる程度に、分解されることが理解される。
【0017】
意外なことに、銅、マグネシウム及びカリウムを本発明による範囲内の量比で含有する触媒の使用により、高い生成物選択率が達成され、同時に、水素の水への反応が十分な程度で触媒作用されることが見出された。循環ガス運転式で、このように水素の蓄積が妨げられ、この結果安全でない運転状態が回避される。この触媒の使用により、不所望な副生成物の形成は抑制され、高い塩化水素変換率で良好なEDC選択率が達成される。
【0018】
本発明の方法は、したがって、反応ガス中の水素の蓄積を妨げることと、良好なEDC選択率とを、同時に高い塩化水素変換率で連結させる。さらに、本発明による方法は、プロセス安全性を高める。
【0019】
本発明による方法において使用される触媒は、金属塩を、銅塩として銅3.5〜12.5質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.1〜1.0質量%、及び、カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を含有するような比の割合で、担体物質上に含有し、その際、全ての質量パーセントは、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0020】
有利な一実施態様において、本発明による方法において使用される触媒は、金属塩を、銅塩として銅3.5〜12.5質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.1〜0.9質量%、及び、カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を含有するような比で、担体物質上に含有し、その際、全ての質量パーセントは、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0021】
更なる有利な一実施態様において、本発明による方法において使用される触媒は、金属塩を、銅塩として銅3.5〜12.5質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.2〜0.8質量%、及び、カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を含有するような比で、担体物質上に含有し、その際、全ての質量パーセントは、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0022】
特別に有利な一実施態様において、本発明による方法において使用される触媒は、金属塩を、銅塩として銅3.5〜12.5質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.3〜0.7質量%、及び、カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を含有するような比で、担体物質上に含有し、その際、全ての質量パーセントは、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0023】
更に特別に有利な一実施態様において、本発明による方法において使用される触媒は、金属塩を、銅塩として銅3.5〜12.5質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.3〜0.7質量%、及び、カリウム塩としてカリウム0.6〜0.9質量%を含有するような比で、担体物質上に含有し、その際、全ての質量パーセントは、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0024】
とりわけ有利な一実施態様において、本発明による方法において使用される触媒は、金属塩を、銅塩として銅7.5〜9.0質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.3〜0.7質量%、及び、カリウム塩としてカリウム0.6〜0.9質量%を含有するような比で、担体物質上に含有し、その際、全ての質量パーセントは、担体物質を含めた触媒の全質量に対する。
【0025】
場合により本発明による方法において使用される触媒は、更なる金属、例えば更なるアルカリ金属、更なるアルカリ土類金属、希土類金属、遷移金属及び貴金属、例えば金、ルテニウム、白金及びパラジウムを金属塩の形で又は元素の形で含有する。
【0026】
本発明による方法において使用される触媒の比表面積(BET)は有利には60〜200m2/g、より有利には80〜145m2/gの範囲内に、特に90〜130m2/gの範囲内にある(BET表面積の決定は、DIN 66131により行われる)。流動床触媒の孔容積は、0.2〜0.5cm3/gの範囲内にある(孔容積の決定は、DIN 66133により行われる)。本発明による触媒のタンピング質量は、900〜1200g/lの範囲内、有利には950〜1150g/lの範囲内にある。特に有利には、1000g/lより高いタンピング質量を有する触媒である。触媒の平均粒径(D50値)は、45〜75μmの値にある。
【0027】
担体物質を含めた触媒の全質量に対する金属濃度の調節は、公知の、当業者に慣用の方法、含浸又は共沈殿(Mischfaellung)により行われる。有利には、金属濃度の調節は含浸により行われる。
【0028】
含浸のためには金属塩化合物の必要な量を、有利にはそのクロリド、ニトラート、アセタート、ヒドロキシド又はカーボナートの形で水中に溶解させる。特に有利には金属塩化物化合物の使用である。この水溶液を担体物質上に設ける。担体物質は場合により濾別され、乾燥される。有利には水の量は、担体物質の水吸収の約70〜90%に相当するように選択される。この場合には、濾過は必要ない。
【0029】
乾燥を室温又は100〜200℃の範囲内の温度で空気又は保護ガスの存在下に行う。有利には乾燥は、窒素の存在下で110〜180℃の範囲内の温度である。
【0030】
本発明による1,2−ジクロロエタンの製造のための方法の実施の際には、既に公知の技術及び技術水準によれば一般的に導入されている反応条件が使用できる。このためには、エチレン、塩化水素及び酸素を本発明による触媒を用いて気相中で接触させる。
【0031】
本発明による方法のためには、反応ガスが循環して導通される全てのオキシ塩素化反応器が適する。適した反応器は、管型反応器、固体層反応器及び流動床反応器である。有利には、流動床反応器である。
【0032】
本発明による方法により、反応ガスの組成は以下のモル比の範囲内にある:エチレン1.0〜2.0:塩化水素2.0:酸素0.5〜1.0。
【0033】
本発明による方法の有利な一実施態様において、反応ガスの組成は以下のモル比の範囲内にある:エチレン1.55〜2.0:塩化水素2.0:酸素0.5〜0.75。
【0034】
酸素含有ガスとして空気又は酸素が適し、有利には酸素である。塩化水素としては原則的に通常の供給源からの塩化水素が使用できる。実際的な理由から、EDC熱分解から獲得され、水素濃度0〜2Vol−%を含有する塩化水素が有利である。
【0035】
反応器中の温度は一般的に80〜300℃の値、有利には200〜280℃の値、特に210〜260℃の値にある。
【0036】
反応器中の圧力は、1〜20barの値、有利には1〜8barの値、特に1〜5barの値にある。
【0037】
本発明による方法において使用される触媒のための適した担体物質は、酸化アルミニウム、例えばα−酸化アルミニウム、β−酸化アルミニウム及びγ−酸化アルミニウム、活性化した酸化アルミニウム、酸化ケイ素、例えばシリカート、シリカゲル、ケイ酸及び珪藻土、グラファイト、金属酸化物、酸化ジルコニウム、ゼオライト、水ガラス、軽石、粘土、コランダム及び前述の物質の混合物である。有利には、γ−酸化アルミニウムの使用である。
【0038】
金属塩の堆積前の担体物質の比表面積は有利には20〜400m2/gの範囲内に、より有利には75〜200m2/gの値にある(BET表面積の決定は、DIN 66131により行われる)。慣用の担体物質は有利には0.15〜0.75cm3/gの範囲内の孔容積を提供する(孔容積の決定は、DIN 66133により行われる)。担体物質のタンピング密度(Stampfgewicht)は、600〜950の範囲内、有利には700〜850の範囲内にある(タンピング密度は、粒子状固体物質の密度のための尺度である)。タンピング密度の決定は、JEL.社のSTAV 2003 Stampfvolumeterで行う。試料材料の充填は、最初の350揺動サイクルの間に実施される。タンピング密度は、更なる350サイクル後に決定される)。担体物質の平均粒径(D50値)は、45〜75μmの値である(粒径の決定は、MaIvern社の分析装置Mastersizer Sを用いて行う;この装置のための測定パラメーターは、ガス速度80m/s、散乱モデル3$$A(Fraunhofer)、焦点距離300mm、線長さ10mm、分散圧力0.5bar;Iso 13320)。
【0039】
本発明による方法の特別な一実施態様において、オキシ塩素化は、流動床反応器中で流動床触媒に対して実施され、その際この反応ガスのモル比は、エチレン1.55〜2.00:塩化水素2.00:酸素0.5〜0.75である。流動床反応器から流出するガスはこの場合に冷却器又は他の適した装置を用いて生成物及びガス状混合物中で分離され、これは未反応出発材料及びガス状副生成物、例えば二酸化炭素及び一酸化炭素を含有する。このガス混合物からは、塩基性溶液を用いた洗浄により二酸化炭素及び結果として残存する塩化水素が除去される。このように得られたガス混合物は、主として、エチレン、酸素及び一酸化炭素を含有するが、循環において流動床反応器に返送される。流動床反応器中への新たな進入前に循環ガスにエチレン、酸素及び塩化水素が、反応ガスが上述したモル比を有するような量で添加される。
【0040】
本発明は以下実施例により、より詳細に説明されるが、それによって制限されない。
【0041】
実施例:
本発明による方法において使用される触媒は、以下に記載するように水溶液を用いた担体物質の含浸により得られた:
所望される金属比の調節のために必要な量の相応する金属塩塩化物を少量の水中に溶解させた。更なる水を使用される担体材料の最大の水吸収の約90%の全容積まで充填した。この溶液を含浸トロンメル中でBET表面積170m2/gを有するγ−酸化アルミニウム担体上に吹き付けた。担体の平均粒径(d50値)は、45〜75μmであった。添加の終了後に窒素の存在下で110〜180℃で16時間乾燥させた。
【0042】
比較試験の実施のために、本発明による触媒1〜3及び比較触媒4〜8を上記したように製造した。この触媒の組成は、第1表中にまとめられている。
【0043】
第1表
【表1】

【0044】
反応器は、3又は4cmの反応器内径を有するオイル加熱されたガラス反応器である。
【0045】
この反応温度を、反応器のホットスポットにわたり熱センサーを用いて測定し、制御した。全ての試験を、運転温度でガス流のそれぞれの固定した調節を用いて実施した。
【0046】
水素変換率の測定のために、240gの触媒で装填されている、4cmの内径の反応器を使用した。反応器を2.4barの圧力で、425Nl/kg Kat/hの塩化水素負荷で実施した。反応ガスとして以下の組成の混合物を使用した:エチレン23.2Vol%、水素0.95Vol%、酸素9.1Vol%:塩化水素28.1Vol%、差分、窒素。これはエチレン:塩化水素:酸素の化学量論1.65:2:0.65(±0.02)に相当する。この結果を第2表にまとめる。
【0047】
第2表
【表2】

【0048】
この試験は、本発明による触媒3が、触媒6に比較して顕著により高い水素分解率を達成することを示す。触媒3の水素分解率は、触媒7及び8のものよりも確かに低いが、但し、循環ガス中の水素の蓄積を妨げるためには十分高い。
【0049】
EDC選択率の測定のために、240gの触媒で装填されている、4cmの内径の反応器を使用した。反応器を2.4barの圧力で、500Nl/kg Kat/hの塩化水素負荷で実施した。反応ガスとして以下の組成の混合物を使用した:エチレン24.6Vol%、酸素9.7Vol%:塩化水素29.9Vol%、差分、窒素。これはエチレン:塩化水素:酸素の化学量論1.65:2:0.65(±0.02)に相当する。この結果を第3表にまとめる。
【0050】
第3表:
【表3】

【0051】
この試験は、本発明による触媒3が広い温度範囲にわたり触媒7及び8に比較して顕著により高いEDC選択率を高い塩化水素変換率で達成し、かつ水素が十分な程度で減少されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(A)エチレン、酸素及び塩化水素を出発材料としてオキシ塩素化反応器中に導入する工程、その際塩化水素が水素を含有する、
(B)
−銅塩として銅3.5〜12.5質量%、
−マグネシウム塩としてマグネシウム0.1〜1.0質量%、
−カリウム塩としてカリウム0.1〜2.0質量%を担体物質上に含有する触媒に対して出発材料を反応させて、存在する水素を水へと少なくとも部分的に反応させながら、1,2−ジクロロエタン及び水にする工程、
(C)反応器搬出物の後処理及びオキシ塩素化反応器へ循環ガスを返送する工程
を有する、減少した水素蓄積でもって、エチレンを1,2−ジクロロエタンへと循環ガス運転式にオキシ塩素化するための方法。
【請求項2】
触媒が、銅塩として銅7.5〜9.0質量%、マグネシウム塩としてマグネシウム0.3〜0.7質量%及びカリウム塩としてカリウム0.6〜0.9質量%を担体物質上に含有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒の担体物質が、酸化アルミニウム、α−酸化アルミニウム、β−酸化アルミニウム、γ−酸化アルミニウム、活性化した酸化アルミニウム、酸化ケイ素、例えばシリカート、シリカゲル、ケイ酸及び珪藻土、グラファイト、金属酸化物、酸化ジルコニウム、ゼオライト、水ガラス、軽石、粘土、コランダム又は前述の物質の混合物の群から選択されていることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
触媒が担体物質としてγ−酸化アルミニウムを含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
触媒が60〜200m2/gの範囲内のBET表面積を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
触媒が80〜145m2/gの範囲内のBET表面積を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
触媒が100〜130m2/gの範囲内のBET表面積を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
触媒が1000g/lより大きいタンピング質量を有することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
触媒が45〜75μmの範囲内の平均粒径(D50値)を有することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
出発材料が、エチレン1.00〜2.0:塩化水素2.0:酸素0.5〜1.0のモル比で反応器中に導入されることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
出発材料が、エチレン1.55〜2.0:塩化水素2.0:酸素0.5〜0.75のモル比で反応器中に導入されることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
オキシ塩素化反応器が流動床反応器であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の、循環ガス運転式にエチレンを1,2−ジクロロエタンへとオキシ塩素化するための方法において、水素の蓄積を妨げるための、
−銅塩として銅3.5〜12.5質量%、
−マグネシウム塩としてマグネシウム0.1〜1質量%、及び
−カリウム塩としてカリウム0.1〜2質量%を担体物質上に含有する触媒の使用。

【公表番号】特表2011−505406(P2011−505406A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536422(P2010−536422)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066609
【国際公開番号】WO2009/071531
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】