説明

オゾンガスに含まれる窒素酸化物および水分の除去方法

【課題】吸着剤に含有される金属がオゾンと反応することによるオゾン濃度の減少。
【解決手段】原料として酸素ガスに窒素ガスを数%未満添加したガスを使用して生成したオゾンガスを吸着剤としてシリカゲル7を充填した除去筒8に導入して、オゾンを飽和吸着させ、その後二酸化窒素をシリカゲルに吸着除去しながら、シリカゲル表面に吸着されたオゾンを低次の窒素酸化物と反応させることによって、より吸着性の高い二酸化窒素として捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガスを原料として生成されたオゾンガスから窒素酸化物および水分を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放電によってオゾンを発生するにあたって、原料となる酸素ガスに窒素ガスを数%未満添加することでオゾン濃度が高濃度化し、経時安定性も向上することが知られている。
しかし、この手法を採用した場合には、供給オゾンガス中に窒素酸化物が副成し、微量な水分と反応することによって硝酸を生じ、配管などが腐蝕されてしまうことがあった。
【0003】
そこで、薬剤と反応させ硝酸塩とする技術(特許文献1)や、ゼオライト(吸着剤)に接触させる技術(特許文献2)が、オゾンガス中の窒素酸化物を除去するものとして提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−067107号公報
【特許文献2】特開2001−120951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の窒素酸化物吸着剤では、吸着剤に含有される金属がオゾンと反応することによって窒素酸化物除去後のオゾン濃度が大きく減少してしまうという問題があり、また化学的に除去する方式や水に溶解させる方式では窒素酸化物除去後に水分が混入してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような点に着目して、発生させたオゾン濃度を維持できるものでありながら、水分混入のないオゾンガスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、窒素酸化物が混入したオゾンガスを予めオゾンガスが飽和吸着されたシリカゲルが充填された除去筒に導入し、吸着性の高い二酸化窒素を吸着除去しながら併せて、低次の窒素酸化物をシリカゲル表面に吸着されているオゾンガスと反応させ二酸化窒素としながら補捉するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、NOなどの低次窒素酸化物を酸化するために必要な量だけオゾン濃度が減少することになるが、オゾンの分子数に比べてこれらの低次窒素酸化物の分子数は少なくオゾン濃度が著しく下がることはない。また、吸着剤としてシリカゲルを使用することで、オゾンを分解することなく吸着出来るうえ、併せて不純物として含まれる水分を吸着することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を実施するオゾンガス精製装置の概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
流量調整器(1)を装着した酸素ガス供給路(2)と流量調整器(3)を装着した窒素ガス供給路(4)を合流させてなる原料ガス導入路(5)で混合比を調整した窒素含有酸素ガスを放電式オゾン発生装置(6)に供給して、オゾンを生成し、放電式オゾン発生装置(6)で生成されたオゾンガスを吸着剤としてシリカゲル(7)を充填している除去筒(8)に導入し、シリカゲル(7)にオゾンを吸着させる。除去筒(8)から導出された導出路(9)は、途中で分岐され、一方はプロセスライン(10)に、また他方はベントライン(11)に構成され、プロセスライン(10)には流路開閉弁(12)が、また、ベントライン(11)には流路開閉弁(13)が装着してある。そして、オゾンが吸着された後のスルーガスは、ベントライン(11)を通して外部に放出される。なお、除去筒(8)は、温度制御装置(14)で一定の温度範囲に保持できるようにしてある。
【0011】
そして、窒素酸化物が除去されたオゾンガスを使用する場合には、ベントライン(11)に装着されている流路開閉弁(13)を閉弁するとともに、プロセスライン(10)に装着されている流路開閉弁(12)を開弁して、吸着剤であるシリンゲル(7)で窒素酸化物を吸着除去しながらオゾンガスをプロセスライン(10)に供給することになる。
【0012】
吸着剤としてシリカゲル(7)を採用している本発明では、オゾンを分解することなく吸着することが出来るうえ、窒素酸化物は吸着性の高い二酸化窒素として吸着するとともに、不純物として含まれている水分も除去することが出来ることになる。
【0013】
そして、吸着された窒素酸化物は黄色を呈することから、除去筒(8)として透明な除去カラムを使用することで破過時間を見積もることも可能となる。
【0014】
除去筒(8)の温度制御は、オゾンが液化分離されることを防ぐために、オゾンの沸点(−111.9℃)より高く設定しなければならない。また、温度が高すぎると、除去筒(8)内でオゾンが分解してしまうことから、80℃以下にすることが望ましい。つまり、除去筒(8)の温度制御範囲は、−111.9℃〜80℃の範囲に設定することが望ましい。また、窒素酸化物とともに、水分や二酸化炭素の除去を効率的に行うためには、−10℃以下の温度に設定することが効果的なことから、−111.9℃〜−10℃の温度範囲に設定することがより望ましい。
【0015】
この除去筒(8)に充填されているシリカゲル(吸着剤)(7)の再生は、乾いたガスでは十分にパージすることができないため、除去筒(8)に大気等の3%程度の水分を含んだガスを供給してパージすることにより行われる。
【0016】
除去筒(8)に吸着剤としてシリカゲル(7)を充填した場合と、ゼオライトを充填した場合、および何も充填しなかった場合での入口及び出口でのオゾン濃度、入口及び出口での窒素酸化物濃度を測定した結果を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
この表から、本願発明では、オゾン濃度に影響を与えることなくも窒素酸化物を除去できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、放電により生成したオゾンガスを使用する設備全般に応用することが出来る。
【符号の説明】
【0020】
7…シリカゲル(吸着剤)、8…除去筒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として酸素ガスに窒素ガスを数%未満添加したガスを使用し、放電式オゾン発生装置で生成したオゾンガスを、吸着剤としてシリカゲル(7)を充填した除去筒(8)に導入し、予めシリカゲル(7)の表面に飽和状態までオゾン吸着させた後、シリカゲル(7)で二酸化窒素を吸着除去しつつ、低次の窒素酸化物をシリカゲル(7)表面に吸着されたオゾンと反応させることによって二酸化窒素として捕捉するように構成したことを特徴とするオゾンガスに含まれる窒素酸化物および水分の除去方法。
【請求項2】
除去筒(8)を−111.9℃〜80℃の範囲で温度制御する請求項1に記載したオゾンガスに含まれる窒素酸化物および水分の除去方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−121805(P2011−121805A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279865(P2009−279865)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】