説明

オフセット輪転印刷用塗工紙及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、光沢度、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つオフセット輪転印刷に際して、ヒジワおよびブリスタの発生が少ないオフセット輪転印刷用塗工紙及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、基紙上の片面あるいは両面に、平均気泡径が10μm以上1000μm以下で発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下で塗工してなるポリビニルアルコール塗工層上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット輪転印刷用塗工紙に関するものである。詳しくは、光沢度、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つオフセット輪転印刷に際して、ヒジワおよびブリスタの発生が少ないオフセット輪転印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷の分野では、増大する印刷物の需要や省力化に合わせ、印刷の同時多色化や高速化が進められており、印刷用紙に対する操業性および印刷品質の要望がますます厳しくなっている。特にオフセット輪転印刷では、印刷物が高温強制乾燥されるために、他の印刷方式には見られないヒジワおよびブリスタが発生しやすい。ヒジワおよびブリスタの発生は、印刷物の外観を著しく悪化させ、商品価値を大きく損なうため、オフセット輪転印刷用塗工紙にはヒジワおよびブリスタに対応する技術が求められる。
【0003】
ブリスタとは、印刷用塗工紙にオフセット輪転印刷を施した場合、高温強制乾燥する際、基紙に含まれていた水分が瞬時に蒸発し、塗工層が膨れた状態の事である。これは、印刷部において蒸気の逃げ場が不十分なため、水蒸気圧が紙層強度に勝り、紙層を破壊して膨張したものである。ブリスタを抑制する方法としては、原紙の内部結合強度を上げる方法や塗工層をポーラスにして、印刷用塗工紙の透気度を通気性の良い方向に上げる方法等が提案されている。
【0004】
一方、ヒジワは印刷用塗工紙にオフセット輪転印刷を施した後、紙上のインキを高温強制乾燥する際に発生する紙の流れ方向の波うち状のシワであり、印刷物の外観を著しく悪化させるものである。ヒジワの発生要因には、これまで多くの研究がなされており、乾燥工程における印刷部と非印刷部の乾燥収縮量の差に起因すると考えられている。インキで覆われた印刷部と非印刷部では、高温強制乾燥時、非印刷部の方が、紙中水分の蒸発速度が速いため、先に収縮が始まり、印刷部に横方向の圧縮力がかかるので、印刷部にシワが発生する。
【0005】
ヒジワを抑制するために、いくつかの手法が提案されている。オフセット輪転印刷用塗工紙における基紙のパルプのフリーネスを特定範囲に保持すると共に、透気度も通気性の良い領域に規制する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、フリーネスと透気度は逆相関することから、生産コスト内での操業性を考慮すると調整は困難である。
【0006】
また、巻き取り水分と原紙の内部結合強度を規定することにより、ヒジワを解消、もしくは軽減する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、内部結合強度を下げることは、オフセット輪転印刷用塗工紙のもう一つの課題であるブリスタの発生を助長する。これを防ぐには、塗工紙水分を低くする必要があるが、その後の折り工程で塗工層の表面が割れる現象が発生しやすくなる。また、巻き取り水分は多くの要因により変動しやすく、これを調整することは製造上困難である。
【0007】
また、特定のケン化度のポリビニルアルコール水溶液を規定量塗工された原紙を使用することでオフセット輪転印刷における高温強制乾燥時の収縮を抑制し、ヒジワを軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、特定の粘度を有するポリビニルアルコール水溶液を基紙に塗工するなどして、オフセット輪転印刷用塗工紙の乾燥収縮力を特定範囲内に収めることでヒジワを軽減する方法等も提案されている(例えば、特許文献4参照)。これらの方法は、ポリビニルアルコール水溶液の樹脂皮膜で基紙を被覆することにより、該塗工紙の印刷後に施される高温強制乾燥時に、非印刷部からの水分の蒸発を抑制し、印刷部と非印刷部の乾燥収縮差を解消することを目的としている。
【0008】
しかしながら、このようなオフセット輪転印刷用塗工紙は、ヒジワの抑制には効果的である反面、インキ受理性の悪化に伴い印刷ムラが発生しやすくなる、さらにポリビニルアルコールの層の上部に設けられる層に特徴的な細孔が発生するなどして、印刷面質が損なわれることがある。また、ポリビニルアルコール水溶液を基紙に塗工する際、基紙のステキヒトサイズを調整して、ポリビニルアルコール水溶液の基紙への浸透をおさえ、印刷面質を向上させることも考えられるが、このような印刷用塗工紙はポリビニルアルコールの基紙に対する被覆性が良好でなく、また浸透が不十分なため、内部結合強度の低下が目立ち、オフセット輪転印刷用塗工紙のもう一つの課題であるブリスタの発生を助長する。
【特許文献1】特開昭58−186700号公報
【特許文献2】特開平9−291496号公報
【特許文献3】特開平11−350391号公報
【特許文献4】特開2000−45199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光沢度、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つオフセット輪転印刷に際してヒジワおよびブリスタの発生が少ないオフセット輪転印刷用塗工紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、基紙上の片面あるいは両面に、平均気泡径が10μm以上1000μm以下で発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下で塗工してなるポリビニルアルコール塗工層上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙を発明するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光沢度、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つオフセット輪転印刷に際してヒジワおよびブリスタの発生が少ないオフセット輪転印刷用塗工紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のオフセット輪転印刷用塗工紙について、詳細に説明する。
【0013】
本発明者は、基紙上の片面あるいは両面に、平均気泡径が10μm以上1000μm以下で発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下で塗工してなるポリビニルアルコール塗工層上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けることで、光沢度、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つオフセット輪転印刷に際してヒジワおよびブリスタの発生が少ないオフセット輪転印刷用塗工紙を提供することができることを見出した。
【0014】
本発明のオフセット輪転印刷用塗工紙は、基紙に平均気泡径が10μm以上1000μm以下になるよう発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を塗工する以外は、従来のオフセット輪転印刷用塗工紙と同様に、表裏両面にポリビニルアルコールの層を備えた原紙の片面あるいは両面に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けることによって製造することができる。
【0015】
本発明において、「基紙」とはポリビニルアルコール含有塗工液を塗布する前の紙シートを指し、「原紙」とは基紙の片面または両面にポリビニルアルコールを含有する塗工層が設けられたシートであって、顔料と接着剤を主成分とする塗工層が設けられていない紙シートを指し、「基紙」と区別する。
【0016】
印刷用塗工紙に用いられる基紙は、通常、親水的な繊維状化合物より構成される為、親水的であり、且つ水分を吸収する為の空隙を多数持ち、吸水性が高い。その為、基紙に直接ポリビニルアルコール含有塗工液を塗工すると、ポリビニルアルコール含有塗工液が基紙に接した瞬間からポリビニルアルコール含有塗工液中の水分の脱水が始まる。脱水は基紙中心部へ向かって起こる。加えて、基紙にポリビニルアルコール含有塗工液を塗工する際、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーターなどの方式では、塗工液に大きな圧力が加わる。よって、これらの脱水、圧力によりポリビニルアルコール含有塗工液は基紙への空隙に落ち込むことになる。そして、基紙の空隙のほとんどが塗工液の固形成分によって満たされるか、あるいは塗工液が脱水され分散成分が凝集し固化した状態、即ち不動化現象が起きる状態になるまで、ポリビニルアルコール含有塗工液の落ち込みは継続することになる。
【0017】
このポリビニルアルコール含有塗工液の落ち込みを抑制するには、ポリビニルアルコール含有塗工液の固形分濃度を高めたり、基紙の空隙を調整するといった方法が一般的ではあるが、例えばポリビニルアルコール含有塗工液の増粘によって塗工操業性が悪化したり、面質が悪化するなどのデメリットが生じ易い。また、ポリビニルアルコール含有塗工液の塗工量を増大させれば、ポリビニルアルコールの基紙に対する被覆性が良好な印刷用塗工紙が得られるが、液コストの増加と塗工液の乾燥負荷が大きいという問題がある。結局、ポリビニルアルコール含有塗工液の塗工量を増大させずに、基紙に対する被覆性を向上させる技術は見出せずにいた。
【0018】
本発明者は、基紙に直接、平均気泡径が10μm以上1000μm以下になるよう発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を塗工することを検討した。塗工液に泡を含ませると、塗工する際の圧力によって泡が基紙方向に押しやられる。この為、基紙内部の空隙の圧力が上昇し、基紙内部への塗工液の落ち込みが抑制され、且つ基紙と塗工液の接触面積が小さくなり、塗工液が脱水挙動を受ける程度は軽減される。よって、ポリビニルアルコール含有塗工液の塗工量を増大させずに基紙に対する被覆性が良好であり、さらには、塗工紙の印刷後に施される高温強制乾燥時に、印刷部と非印刷部の乾燥収縮差を軽減させるため、ヒジワの抑制に効果的である印刷用塗工紙が得られることになる。
【0019】
本発明は、基紙上の片面あるいは両面に、平均気泡径が10μm以上1000μm以下になるよう発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を、該ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下の範囲で塗工されることを特徴とするが、基紙に直接設けられる層に適用されるポリビニルアルコール含有塗工液中の平均気泡径が10μm以上1000μm以下の範囲を維持することで、基紙内部への塗工液の落ち込み抑制効果が発揮され易くなり、ポリビニルアルコールの基紙に対する被覆性を向上させる効果が得られる。平均気泡径が1000μmより大きい場合、基紙内部の空隙の圧力が、基紙内部へと塗工液が落ち込むのを抑制できるほど十分には高くならないので適当ではない。また、平均気泡径が10μmより小さいと、圧力が高くなり過ぎて基紙内部へと入り込めず、耐ブリスタ性の付与が難しい。
【0020】
本発明は、基紙に直接、平均気泡径が10μm以上1000μm以下になるよう発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を塗工する。ポリビニルアルコール水溶液は、起泡性が良好であるため、微細な泡を生成しやすく、且つ泡の安定性が良好であることから、基紙に設ける際、泡が壊れにくく、一定の大きさを保持した状態で設けることができ、他の媒体に比べ、基紙内部への塗工液の落ち込み抑制効果が発揮され易く、基紙に対する被覆性を向上させる効果が得られ易い。
【0021】
ここで、ポリビニルアルコール含有塗工液に含まれている泡の平均径の測定方法を述べる。塗工液の溶媒成分と親和性のない均一なフィルム状の基材に塗工液を乗せ、凍結乾燥する。これを電子顕微鏡を用いて観察し、無作為に選定した100個の泡の径を測定し、その平均値を泡の平均径とする。
【0022】
本発明は、ポリビニルアルコールの基紙に対する被覆性を向上させるため泡をあえて入れるのであり、ポリビニルアルコールの層について、表面の乱れが生じ易くなるが、被覆性の良好なポリビニルアルコールの層の上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けることによって、印刷用塗工紙としての光沢度、印刷面感は大きく向上する。さらに基紙に直接設けられた上記の様なポリビニルアルコール含有塗工層が十分な被覆性を持つ効果で、ポリビニルアルコールの層の上部に設けられる塗工層が不動化するまでに受ける脱水挙動がより均一で、その結果、平滑であり塗工層膜圧が均一で、更に塗工層内部構造が均一な塗工層が得られる。ポリビニルアルコール水溶液に泡を含ませて塗工することで、ポリビニルアルコールの基紙に対する被覆性を向上させ、さらに上部に塗工層を設けることで、最終的に原紙被覆性の良好な印刷用塗工紙を得ることができるのである。
【0023】
本発明に係るポリビニルアルコール含有塗工液は、基紙の片面あるいは両面に、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下の範囲で塗工する。ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量が0.5g/m2より少ない場合、ポリビニルアルコールの基紙に対する被覆性が良好ではない。また、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量が8.0g/m2より多い場合、液コストの増加と塗工液の乾燥負荷が大きいという問題がある。
【0024】
本発明において、基紙に直接、ポリビニルアルコールの層を設ける方法は何ら制限されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーターなどが挙げられる。ただし、カーテンコーターは、泡を含むポリビニルアルコール含有塗工液を塗工する際、塗工液に加わる圧力が他のコーターに比べ、弱く基紙への落ち込み量が不十分で耐ブリスタ性の付与が難しい。また、サイズプレスコーターが抄紙機で基紙を製造する際、抄紙機上で表面処理することができ、製造の容易性、製造工程の簡略化などの点で好ましい。また、ポリビニルアルコールの層の上部に設けられる塗工層の塗工方式は何ら制限されない。
【0025】
本発明に用いられるポリビニルアルコールは、特に限定されるものではなく、通常市販されているケン化度80〜100%、重合度200〜2,500の範囲のものを使用することができる。また、未変性ポリビニルアルコールの他に、カルボキシ変性、スルホン変性、アセトアセチル変性、カチオン変性、シラノール変性、末端アルキル変性などの各種変性ポリビニルアルコールについても使用可能である。また、ポリビニルアルコール水溶液の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、5〜30質量%の範囲であり、好ましくは、10〜20質量%の範囲である。それよりポリビニルアルコールが多いと、塗料粘度が急激に上昇し、ハンドリングや実操業が困難となり、好ましくない。
【0026】
本発明に係るポリビニルアルコール水溶液には、発泡後の塗工液に含まれる泡の平均気泡径が10μm以上1000μm以下の範囲内であれば、顔料、分散剤、潤滑剤、接着剤、増粘剤等の各種助剤を適宜組み合わせて混合後、発泡させても良い。また、発泡後の塗工液に含まれる泡の平均気泡径が最終的に上記範囲内にあれば、発泡中または発泡後に顔料、分散剤、潤滑剤、接着剤、増粘剤等の各種助剤を添加・混合してもよい。
【0027】
本発明に用いられる基紙は、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGWRMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合して抄造され、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0028】
本発明における基紙の抄紙方法における抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機が適宜使用できる。
【0029】
本発明は、印刷用塗工紙に関するものであり、一般に印刷用塗工紙を製造する上で用いられるものは全て配合して構わない。本発明に係る顔料と接着剤を主成分とする塗工層に配合される顔料としては、特に制限はなく、例えば、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、プラスティックピグメントなどが挙げられる。これを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
【0030】
本発明に係る顔料と接着剤を主成分とする塗工層に配合される接着剤としては、特に制限はなく、例えば、通常のデンプン、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフレッシュドライして得られる冷水可溶性デンプンなどのデンプン類、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物及びこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。これを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
【0031】
その他、本発明に係る顔料と接着剤を主成分とする塗工層を形成するための塗工液には、例えば、増粘剤として、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などを併用してもよいし、さらに必要に応じて、分散剤、pH調整剤、潤滑剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤などの各種助剤、及びこれらの各種助剤をカチオン化したものも用いることができる。
【0032】
本発明に係る顔料と接着剤を主成分とする塗工層の塗工量は、特に限定されるものではないが、一般的に片面当たり1.0g/m2以上25.0g/m2以下の範囲であり、好ましくは3.0g/m2以上12.0g/m2以下の範囲である。また、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設ける方法は何ら制限されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーターなどが挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
各実施例、比較例における印刷用塗工紙の物性評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
1)光沢度
印刷用塗工紙の光沢度は、JIS P8142に準じて、角度75°−75°反射率で白紙光沢を評価した。ただし本発明においては、4点以上を発明の対象とした。
5点:白紙光沢が74%以上
4点:白紙光沢が70%以上74%未満
3点:白紙光沢が66%以上70%未満
2点:白紙光沢が62%以上66%未満
1点:白紙光沢が62%未満
【0035】
2)原紙被覆性
得られた印刷用塗工紙をA4サイズに切り、脱イオン水/エタノール/塩化アンモニウム=50/45/5(質量比)の溶液に1時間浸した。その後、印刷用塗工紙を溶液から取り出し、濾紙で挟み余分な溶液を拭き取った。更に150℃の乾燥機に3時間入れた後、取り出した。これによって、有機物で構成されている原紙部分が茶色く焦げ、塗工層に被覆されている部分は白いまま残った。白い部分が多いほど、原紙が良好に塗工層によって被覆されていることになる。この程度を目視で判断し、1〜5点の範囲で評価した。ただし、本発明においては、4点以上を発明の対象とした。
5点:茶色い部分はほとんどなく、ほぼ全てが白い部分である。
4点:茶色い部分は存在するがうっすら見える程度で、白い部分の方が圧倒的に多い。
3点:茶色い部分は見えるが、白い部分の方が多い。
2点:茶色い部分と白い部分の比率が同程度。
1点:茶色い部分の方が多い。
【0036】
3)印刷面感
オフセット輪転印刷機(三菱重工業(株)製、リソピアBT−2−600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業(株)製、ウェブワールドテラスNの黒、藍、紅、黄の各色)を使用し、ベタ印刷部を目視判定し、印刷面感を1〜5点の範囲で評価した。5点は印刷面が平坦でボコツキが存在せず不透明度ムラ、インキ受理ムラもない状態、1点は印刷面に基紙の凹凸由来のボコツキが目立ち、不透明度ムラ、インキ受理ムラが多い状態であることを示す。ただし、本発明においては、4点以上を発明の対象とした。
【0037】
4)ヒジワ
オフセット輪転印刷機(三菱重工業(株)製、リソピアBT−2−600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業(株)製、ウェブワールドテラスNの黒、藍、紅、黄の各色)を使用し、ベタ印刷部分の流れ方向について、ヒジワの目視評価を行った。ヒジワの評価は以下のように記した。
◎:ほとんどヒジワが発生しない。
○:軽度のヒジワの発生が認められる。
△:ヒジワの発生が認められるが、実用上耐えうるレベルである。
×:きついヒジワの発生が認められる。
ただし、本発明においては△以上を許容範囲とした。
【0038】
5)ブリスタ適性
オフセット輪転印刷機(三菱重工業(株)製、リソピアBT−2−600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業(株)製、ウェブワールドテラスNの黒、藍、紅、黄の各色)を使用し、ブリスタ発生の有無を確認した。ブリスタの評価は以下のように記した。
○:ほとんどブリスタは発生しない。
△:軽度のブリスタの発生が認められる。
×:きついブリスタの発生が認められる。
ただし、本発明においては△以上を許容範囲とした。
【0039】
基紙は以下のような配合で調製し、坪量89g/m2の塗工用基紙を抄造した。ここでの質量部は、全パルプ固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。
<基紙配合>
LBKP(濾水度440mlcsf) 70質量部
NBKP(濾水度490mlcsf) 30質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(基紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化デンプン 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留り向上剤 0.030質量部
【0040】
実施例1
上記により得られた基紙に対して、重合度400、ケン化度98モル%の市販ポリビニルアルコールに対して、固形分濃度20質量%になるよう水を加え、加熱糊化して得たポリビニルアルコール水溶液を、連続発泡機(愛工舎製TARBO−MIX)を用いて、圧縮空気の送付量を調整して、平均気泡径が100μmの泡を混入させた。このポリビニルアルコール含有塗工液を、サイズプレスコーターを用いて、操業速度100m/min、片面固形分塗工量4.0g/m2、両面で8.0g/m2の条件で塗工し、原紙とした。
【0041】
サイズプレスコーターにより設けられたポリビニルアルコールの層より上部の塗工層を設けるための塗工液は、以下のようにして調製した。ここでの質量部は、塗工液中全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。市販湿式重質炭酸カルシウム50質量部および市販1級カオリン50質量部に、市販ポリアクリル酸系分散剤0.10質量部添加して、分散機で固形分濃度72質量%で分散したものに、接着剤として、市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを10質量部、市販リン酸エステル化デンプン4.0質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.50質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、塗工液を得た。得られた塗工液を調整水で固形分濃度64質量%にした。
【0042】
上記のようにして製造した原紙に対して、上記のようにして調製した塗工液を、ブレードコーターを用いて、操業速度100m/min、片面固形分塗工量4.0g/m2、両面で8.0g/m2の条件で、基紙に直接設けたポリビニルアルコールの層の上に直接塗工し、乾燥した。得られた塗工紙を、ソフトカレンダー処理(硬度Hs84度で表面粗さ0.3Sの60℃に加熱された金属ロールと硬度90ShDのエラグラス製弾性ロールからなるソフトカレンダーを用いて、加圧条件を80kN/m、加熱された金属ロール面に表裏各1回ずつ当たるように処理)により仕上げ処理し、印刷用塗工紙を製造した。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例2
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、平均気泡径が15μmの泡を混入させてから塗工に用いた以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例3
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、平均気泡径が500μmの泡を混入させてから塗工に用いた以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例4
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、平均気泡径が950μmの泡を混入させてから塗工に用いた以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例5
実施例1において、ポリビニルアルコール含有塗工液を、片面固形分塗工量0.8g/m2、両面で1.6g/m2の条件で塗工する以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例6
実施例1において、ポリビニルアルコール含有塗工液を、片面固形分塗工量7.5g/m2、両面で15.0g/m2の条件で塗工する以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0048】
比較例1
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、平均気泡径が8μmの泡を混入させてから塗工に用いた以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、平均気泡径が1100μmの泡を混入させてから塗工に用いた以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0050】
比較例3
実施例1において、片面固形分塗工量0.4g/m2、両面で0.8g/m2の条件で塗工する以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0051】
比較例4
実施例1において、片面固形分塗工量8.5g/m2、両面で17.0g/m2の条件で塗工する以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0052】
比較例5
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、泡を混入させずに塗工した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0053】
比較例6
実施例1で用いたポリビニルアルコール水溶液を、固形分濃度20質量%になるよう水を加え、糊化調整して得られた市販の酸化澱粉水溶液に変更した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例1〜6、比較例1〜6の条件、評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から明らかな様に、基紙上の片面あるいは両面に、平均気泡径が10μm以上1000μm以下で発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下で塗工してなるポリビニルアルコール塗工層上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けた実施例1〜6は、光沢度、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つオフセット輪転印刷に際して、ヒジワおよびブリスタの発生が少ないオフセット輪転印刷用塗工紙を得ることができる。一方、平均気泡径が10μmより小さい比較例1では、ヒジワには効果的であったが、耐ブリスタ性が劣っていた。逆に、平均気泡径が1000μmより大きい比較例2では、耐ブリスタ性は良好であったが、ヒジワが劣っていた。また、平均気泡径が10μm以上1000μm以下であっても、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量が0.5g/m2未満である比較例3では、ヒジワにも耐ブリスタ性にも効かなかった。実施例6と比較例4の比較により、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量が8.0g/m2を超えても、ヒジワや耐ブリスタ性等の向上はみられず、ポリビニルアルコール含有塗工液の乾燥負荷が増大するだけであった。更に、ポリビニルアルコールを酸化澱粉に代えると、ヒジワにも耐ブリスタ性にも効かなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上の片面あるいは両面に、平均気泡径が10μm以上1000μm以下で発泡させたポリビニルアルコール含有塗工液を、ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下で塗工してなるポリビニルアルコール塗工層上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を有することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙。
【請求項2】
基紙上の片面あるいは両面に、ポリビニルアルコールを含有し、平均気泡径が10μm以上1000μm以下に発泡させた塗工液を、該ポリビニルアルコール換算片面固形分塗工量0.5g/m2以上8.0g/m2以下の範囲で塗工した後、顔料と接着剤を主成分とする塗工層を積層することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2008−223202(P2008−223202A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67161(P2007−67161)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】