説明

オプション部材の取付構造

【課題】取り付け・取り外しに工具が必要なく、作業を簡単に行うことができ、しかも構造が簡単なオプション部材の取付構造を提供する。
【解決手段】棚板3の下面に、下端部に雄ねじ部6cを有するとともに、中間部に拡径鍔部6eを有する取付軸6の上端を固着し、照明器具4に、取付軸6が貫通しうるとともに、取付軸6に対して照明器具4が側方変位しうるようにした貫通孔15を設け、この貫通孔15の内側面に、取付軸6に対して照明器具4を側方変位させたとき、拡径鍔部6eが嵌合しうるようにした横溝15dを設け、この横溝15dに拡径鍔部6eが嵌合した状態で、照明器具4の下方より、締付けナット18を取付軸6の雄ねじ部6cに螺合して締め付けることにより、照明器具4を、棚板3の下面に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板等の構造体の下面に、照明器具等のオプション部材を、簡単に取付けることができるようにしたオプション部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスの執務空間において使用される机の前上方に配設した棚板の下面に、机の天板面を照射する蛍光灯等の照明器具を取付ける場合、従来は、棚板の下面に照明器具を片手で押し付けつつ、照明器具に設けた取付孔に、取付ねじを下方から挿入して、照明器具を棚板の下面にねじ止めするのが一般的である。
【0003】
このような照明器具の取付方法では、作業時、棚板に対して、作業者が照明器具を片手で保持しておかなければならず、照明器具が大型かつ大重量の場合には、安定して保持することが困難で、作業性が悪いばかりではなく、作業中に照明器具を落下させる危険性さえある。
【0004】
上記のような不具合を解消するため、棚板の下面に仮止めした取付ねじの頭部に、照明器具を係止して仮保持させた後、工具によって取付ねじを本締めすることにより、棚板の下面に照明器具を取付けるようにした取付構造がある(例えば、本出願人の出願に係る特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−65916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている取付構造は、作業者が照明器具を片手で保持する必要がなく、作業性がよいものの、取付けに際して、照明器具のガイド筒部に工具を挿入して、取付ねじを本締めする必要があり、また、照明器具のメンテナンスのため、照明器具を外す必要が生じた場合に、照明器具のガイド筒部に工具を挿入して取付ねじを緩める必要があるため、取り付け・取り外しに工具が必要で、かつ作業がやや面倒であるという問題がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、取り付け・取り外しに工具が必要なく、作業を簡単に行うことができ、しかも構造が簡単なオプション部材の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 構造体の下面に、下端部に雄ねじ部を有するとともに、中間部に拡径鍔部を有する取付軸の上端を固着し、オプション部材に、前記取付軸が貫通しうるとともに、前記取付軸に対してオプション部材が側方変位しうるようにした貫通孔を設け、この貫通孔の内側面に、前記取付軸に対してオプション部材を側方変位させたとき、前記拡径鍔部が嵌合しうるようにした横溝を設け、この横溝に前記拡径鍔部が嵌合した状態で、前記オプション部材の下方より、締付けナットを前記取付軸の雄ねじ部に螺合して締め付けることにより、オプション部材を、構造体の下面に取付ける。
【0008】
このような構成とすると、構造体の下面に取付けた取付軸に、オプション部材の貫通孔を嵌合した後、オプション部材を側方に変位させて、取付軸の拡径鍔部に、貫通孔の内側面に設けた横孔を係止して、オプション部材を仮保持し、その状態で、取付軸の雄ねじ部に、締付けナットを螺合して締め付けることにより、オプション部材を、工具を用いることなく、構造体の下面に簡単に取付けることができる。
また、締付けナットを緩めて外し、上記と逆の手順で、オプション部材を簡単に構造体の下面から外すことができる。
【0009】
(2) 上記(1)項において、取付軸の中央に軸孔を設け、この軸孔に下方より挿通した固定ねじをもって、取付軸を構造体の下面に固着する。
【0010】
このような構成とすると、取付軸を、構造体の下面に、簡単に取付けることができる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)項において、貫通孔を、短軸方向の幅が取付軸における拡径鍔部より下方の軸部の外径とほぼ等しく、前記軸部が長軸方向に相対移動可能として嵌合されるようにした横長孔部と、その上端に連設され、短軸方向の幅が取付軸における拡径鍔部の外径とほぼ等しく、前記拡径鍔部が、前記横長孔部の長軸と同方向を向く長軸方向に相対移動可能として嵌合されるようにした幅広横長孔部と、その上端に連設され、内径が前記拡径鍔部の外径とほぼ等しく、かつ一部が幅広横長孔部の長軸方向の側端の縁と整合するようにした丸孔部とからなるものとし、前記幅広横長孔部における前記横長孔部および丸孔部より側方に突出する部分を横溝とする。
【0012】
このような構成とすると、取付軸と貫通孔との側方、すなわち横長孔部の短軸方向の位置ずれを防止し、オプション部材の取付位置を正確に位置決めすることができる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、オプション部材に設けた取付部材に、貫通孔を設ける。
【0014】
このような構成とすると、予め貫通孔を設けておいた取付部材を、オプション部材に装着するだけでよく、オプション部材に直接貫通孔を穿設する必要がないので、製造作業が楽になる。
【0015】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、取付軸に対してオプション部材を側方変位させたときに、前記取付軸と整合するオプション部材の下面の部位に、締付けナットの上部が回転可能として嵌合する段孔を設ける。
【0016】
このような構成とすると、構造体に対してオプション部材を側方変位させたときの位置決めが簡単になされるとともに、取付け後に、オプション部材が構造体に対して側方に位置ずれするのを確実に阻止することができ、万一締付けナットが弛んだ場合でも、オプション部材が構造体から外れるのを確実に防止し、安全性を高めることができる。
【0017】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、オプション部材を照明器具とし、構造体を棚板とする。
【0018】
このような構成とすると、棚板の下面に、照明器具を、工具を使用することなく、簡単かつ迅速に取付けることができるとともに、容易に取り外すこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、取り付け・取り外しに工具が必要なく、作業を簡単に行うことができ、しかも構造が簡単なオプション部材の取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1および図2に示すように、この実施形態では、机(図示略)の前部に立設した左右1対の支柱1、1に、ブラケット2、2を介して両端部を支持した左右方向を向く棚板3を構造体とし、その棚板3の下面に、オプション部材としての照明器具4を取付けてある。
5は、左右の支柱1、1の上端同士を連結する連結杆である。
【0021】
図2に示すように、棚板3の下面には、上下方向を向く左右1対の取付軸6が、固定ねじ7をもってそれぞれ固着されている。
取付軸6は、図2および図3に示すように、中央に軸孔6aが挿通する筒状をなし、上下方向を向く軸部6bの下端部に、軸部6bの外径とほぼ同一かまたはそれより小径とした雄ねじ部6cが、また上端に拡径フランジ6dが、さらに上端から若干下方の位置に、拡径フランジ6dより小径の拡径鍔部6eが設けられたものよりなっており、軸孔6aに下方より挿通した固定ねじ7の上端部を、棚板3の下面よりねじ込むことにより、棚板3の下面に固着されている。
【0022】
照明器具4は、左右方向を向く角筒状のケース本体8の前面両側部に前向突設した左右1対のソケット9(その一方のみを図3に示す)間に、蛍光灯10を取付け、その前面と下面とを、透光性のカバー11により覆い、さらに、ケース本体8とカバー11との両側端を、側部カバー12、12により覆ったものよりなっている。
【0023】
ケース本体8内の両側部には、図3に示すように、ブロック状の取付部材13が嵌合され、前後1対の固定ねじ14をもって固着されている。
この取付部材13と、ケース本体8の上下壁とには、取付軸6が前後方向に変位可能として貫通するようにした貫通孔15、16、17が設けられている。
【0024】
図3および図4に示すように、貫通孔15は、短軸方向である左右方向の幅が取付軸6における軸部6bの外径とほぼ等しく、その軸部6bが長軸方向である前後方向に相対移動可能として嵌合されるようにした横長孔部15aと、その上端に連設され、短軸方向である左右方向の幅が取付軸6における拡径鍔部6eの外径とほぼ等しく、上下方向の長さが拡径鍔部6eの厚さとほぼ等しく、拡径鍔部6eが、横長孔部15aの長軸方向と同じ前後方向とした長軸方向に相対移動可能として嵌合されるようにした幅広横長孔部15bと、その上端に連設され、内径が拡径鍔部6eの外径とほぼ等しく、かつ後端部が幅広横長孔部15bの後端の縁と整合するようにした丸孔部15cとからなるものとしてある。
【0025】
幅広横長孔部15bにおける横長孔部15aおよび丸孔部15cの前端より前方に突出する部分は、貫通孔15における横溝15dをなしている。
【0026】
ケース本体8の上壁における貫通孔16は、貫通孔15の丸孔部15cと同形かつ同芯としてある。
ケース本体8の下壁における貫通孔17は、取付部材13の下端に設けた短寸のボス部13aの外径とほぼ等しくし、この貫通孔17にボス部13aが嵌合されている。
【0027】
ボス部13aおよび貫通孔17は、貫通孔15内において、取付軸6を相対的に最も前方に位置したときの取付軸6と同芯となるようにしてあり、ボス部13aの内部には、貫通孔15の横長孔部15aの下端に連通する円形の浅い拡径段孔15eが設けられている。
【0028】
拡径段孔15eには、取付軸6の下端部における雄ねじ部6cに螺合しうるねじ孔18aが設けられた締付けナット18の上端部に設けられた縮径段部18bが、回転自在に嵌合しうるようになっている。
この拡径段孔15eの内径と、締付けナット18の縮径段部18bの外径とはほぼ等しくしてあり、それらが互いに嵌合することにより、照明器具4が、取付軸6に対して、ひいては棚板3に対して、水平方向に位置ずれしないようにしてある。
締付けナット18は、手で回転操作しうるユリア化粧ナットとしてある。
【0029】
棚板3の下面に、照明器具4を取付けるには、まず、棚板の下面に、左右1対の取付軸6を、固定ねじ7をもって、上述のようにして取付けた後、照明器具4を、各貫通孔15、16、17に取付軸6が嵌合するようにして持ち上げ、照明器具4の上面が、左右の取付軸6の拡径フランジ6dの下面に当接した後、照明器具4を後方に押動して、左右の貫通孔15の横溝15dを、取付軸6の拡径鍔部6eの前部にそれぞれ係合させる。
【0030】
この状態が仮保持状態であり、この状態で、照明器具4から手を離しても、左右の貫通孔15の横溝15dが、取付軸6の拡径鍔部6eの前部にそれぞれ係合しているので、照明器具4が落下することはない。
【0031】
この状態で、貫通孔15の下端に露呈している取付軸6の雄ねじ部6cに、締付けナット18のねじ孔18aを螺合して締め付けると、取付軸6の拡径鍔部6eと締付けナット18との間に、取付部材13における貫通孔15の幅広横長孔部15bと拡径段孔15eとの間の部分が締め付けられて、照明器具4は、棚板3の下面に強固に取付けられる。
【0032】
棚板3の下面に取付けられた照明器具4を、棚板3から外すには、左右の締付けナット18を緩めて外した後、照明器具4を前方に移動して、左右の貫通孔15の横溝15dを、取付軸6の拡径鍔部6eから前方に外せばよい。すると、照明器具4は、棚板3の下面から下方に簡単に外すことができる。
【0033】
以上から明らかなように、本発明のオプション部材の取付構造によると、取り付け・取り外しに工具が必要なく、作業を簡単に行うことができ、しかも構造を簡素化することができる。
【0034】
本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、幾多の変形した態様での実施が可能である。
例えば、取付部材13を、貫通孔15における横長孔部15aと幅広横長孔部15bとの間で水平に上下に分断して成形し、それらを結合して、ケース本体8内に取付けるようにしてもよい。そのようにすると、貫通孔15の穿孔作業を容易に行うことができる。
【0035】
また、取付軸6を充実のものとし、その上端に雄ねじ部(図示略)を一体的に形成して、その雄ねじ部を、棚板3の下面に直接ねじ込むようにしてもよい。
【0036】
さらに、貫通孔15における横長孔部15aの向きを左右方向としたり、この横長孔部15aを、取付軸6の軸部6bより大径の真円としたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、照明器具を棚板に取付ける場合だけでなく、収納ケースその他のオプション部材を、天井、壁その他の構造体に取付けるあらゆる場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態である照明器具を棚板の下面に取付けた状態を斜め前下方より見た斜視図である。
【図2】同じく、分解斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う拡大縦断側面図である。
【図4】照明器具の一側部の平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 支柱
2 ブラケット
3 棚板(構造体)
4 照明器具(オプション部材)
5 連結杆
6 取付軸
6a軸孔
6b軸部
6c雄ねじ部
6d拡径フランジ
6e拡径鍔部
7 固定ねじ
8 ケース本体
9 ソケット
10 蛍光灯
11 カバー
12 側部カバー
13 取付部材
13aボス部
14 固定ねじ
15 貫通孔
15a横長孔部
15b幅広横長孔部
15c丸孔部
15d横溝
15e拡径段孔
16、17 貫通孔
18 締付けナット
18aねじ孔
18b縮径段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の下面に、下端部に雄ねじ部を有するとともに、中間部に拡径鍔部を有する取付軸の上端を固着し、オプション部材に、前記取付軸が貫通しうるとともに、前記取付軸に対してオプション部材が側方変位しうるようにした貫通孔を設け、この貫通孔の内側面に、前記取付軸に対してオプション部材を側方変位させたとき、前記拡径鍔部が嵌合しうるようにした横溝を設け、この横溝に前記拡径鍔部が嵌合した状態で、前記オプション部材の下方より、締付けナットを前記取付軸の雄ねじ部に螺合して締め付けることにより、オプション部材を、構造体の下面に取付けたことを特徴とするオプション部材の取付構造。
【請求項2】
取付軸の中央に軸孔を設け、この軸孔に下方より挿通した固定ねじをもって、取付軸を構造体の下面に固着した請求項1記載のオプション部材の取付構造。
【請求項3】
貫通孔を、短軸方向の幅が取付軸における拡径鍔部より下方の軸部の外径とほぼ等しく、前記軸部が長軸方向に相対移動可能として嵌合されるようにした横長孔部と、その上端に連設され、短軸方向の幅が取付軸における拡径鍔部の外径とほぼ等しく、前記拡径鍔部が、前記横長孔部の長軸と同方向を向く長軸方向に相対移動可能として嵌合されるようにした幅広横長孔部と、その上端に連設され、内径が前記拡径鍔部の外径とほぼ等しく、かつ一部が幅広横長孔部の長軸方向の側端の縁と整合するようにした丸孔部とからなるものとし、前記幅広横長孔部における前記横長孔部および丸孔部より側方に突出する部分を横溝とした請求項1または2記載のオプション部材の取付構造。
【請求項4】
オプション部材に設けた取付部材に、貫通孔を設けた請求項1〜3のいずれかに記載のオプション部材の取付構造。
【請求項5】
取付軸に対してオプション部材を側方変位させたときに、前記取付軸と整合するオプション部材の下面の部位に、締付けナットの上部が回転可能として嵌合する段孔を設けた請求項1〜4のいずれかに記載のオプション部材の取付構造。
【請求項6】
オプション部材を照明器具とし、構造体を棚板とした請求項1〜5のいずれかに記載のオプション部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−99331(P2010−99331A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274727(P2008−274727)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】