説明

オリゴエーテルサルフェートを含むイオン伝導材料

本発明はオリゴエーテルサルフェートを含むイオン伝導材料に関する。本発明のイオン伝導材料は溶剤型ポリマー中に溶解したイオン化合物を含む。このイオン化合物はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び化学式R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-Li+(I)(ここで、Rは群Cm2m+1(1≦m≦4及び2≦n≦17))に対応するリチウムオリゴエーテルモノサルフェート及び化学式Li+-SO2−O−CH2−[CH2−O−CH2p−CH2−O−SO2−O-Li+(II)(ここで、3≦p≦45)に対応するリチウムオリゴエーテルジサルフェートから選択される少なくとも1つのリチウムオリゴエーテルサルフェートの混合物である。イオン伝導材料の全体的な比率Ot/Litは40以下である(ここで、Otは溶剤型ポリマー及びオリゴエーテルによって与えられるO原子の全数を表す)。イオン伝導材料のLiTFSIの含有量は、比率Ot/LiTFSIが20以上となるような値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子固体電解質及びそれの使用に関する。
高分子固体電解質は特に、充電可能または充電不可能なリチウム電気化学発電機等の多様な電気化学システム、エレクトロクロミックシステム、及び超コンデンサーで使用されている。それらはまた、特に発電機のための複合電極(または、合成電極)の作製のために使用することができる。高分子固体電解質の使用は薄くて多様な形状を有する電気化学装置(または、電気化学デバイス)の作製を可能にする。
【背景技術】
【0002】
高分子固体電解質は本質的に塩及び溶媒から成り、その溶媒は例えば、溶媒ポリマー、または極性中性液体溶媒またはそのような液体溶媒の混合物によって可塑化されたポリマーである。溶剤型ポリマーはまた、酸化エチレンホモポリマー(POE)または酸化エチレンコポリマーであってもよい。
【0003】
特に、電解質が電池(または、バッテリー)のためのものである場合、通常の水素電極に対して−3ボルトであり、強力な電圧の発電機を与えるLi/Li+結合の酸化還元の潜在性の理由により、好都合なものとしてリチウム塩が使用される。さらに、それの高い比容量は発電機に高い比エネルギーを与える。イオン化合物がリチウム塩である電池(または、バッテリー)の場合、負の電極はリチウム金属箔から構成されてもよいし(リチウム電池)、またはリチウム挿入化合物から構成されてもよい(リチウムイオン電池)。
【0004】
リチウム電池の高分子固体電解質に対するリチウム塩としては、特に、リチウムヘキサフルオロリン酸塩(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)及びリチウムトリス(過フルオロメタンスルホニル)メチル化合物(LiTFSM)等の過フルオロ塩の使用が知られている。LiTFSI及びLiTFSMは優れた伝導性を与えるので、それらはリチウムの負電極を有する高分子固体電解質電池に対して特に適した塩である。しかしながら、それらは高価であり、それらに含まれるフッ素は環境に悪影響を与える可能性があり、さらにそれらは低いカチオン輸率t+を有する。
【0005】
塩としてリチウムオリゴエーテルサルフェートを含む電解質はY. Zheng著の「Pure Applied Chemistry」A30(5), 365-372(1993)に記載されている。上述の文献はオリゴ(オキシエチレン)サルフェートのリチウム塩の製造、及びポリ[メトキシオリゴ(オキシエチレン)メタクリレート−コ−アクリルアミド][PMeO16−AM]との合成物の形成を記載している。
H. Chen著の「Pure Applied Chemistry」A33(9), 1273-1281 (1996)はPOEに溶解したオリゴ(オキシエチレン)サルフェートのリチウム塩から成る電解質の挙動を記載している。この特性は前述の文献に記載されている合成物の特性と比較されている。
【0006】
X. Ollivrin(1999年5月6日にInstitut National Polytechnique de Grenobleでの論文)は単一のリチウムサルフェート末端基(POEMS)または2つのリチウムサルフェート末端基(POEDS)を有する多様な酸化エチレンオリゴマーの製造、及びそれらのPOEの中の溶液の形式としての電解質としての使用を記載している。POEMS/POE及びPOEDS/POE電解質の特性はLiTFSI/POE電解質の特性と比較されている。LiTFSIを含むポリマー電解質は高いイオン伝導率を与えるが、低いカチオン輸率を有し、POEMSまたはPOEDSを含む電解質は高いカチオン輸率を有するが、低いイオン伝導率を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イオン伝導材料は特に、イオン伝導率(σ)、カチオン輸率(t+)、及びイオン伝導率にカチオン輸率を掛けたときの積(σ+=s*t+)であるカチオン伝導率(σ+)によって特徴付けられる。
【0008】
イオン化合物としてリチウム塩を含むイオン伝導材料が電池の電解質として使用される場合、電気化学反応に関わる唯一の種はリチウムカチオンである。カチオン伝導率は特に、電場中でのポリマー電解質中のリチウムカチオンの可動性(または、流動性)を反映する。電池の性能は理論上、カチオン伝導率の値が高いほど高くなる。
【0009】
LiTFSIまたはオリゴエーテルサルフェートを含む材料の特性(カチオン輸率、イオン伝導率、またはカチオン伝導率)は周知である。全体として、前者は低い輸率及び高いイオン伝導率を有し、後者は高い輸率及び低い伝導率を有する。F. Alloin(Journal of Power Sources 68(1997)372-376)は各々が架橋されたポリエーテル溶媒に溶解されたLiTFSI、DaaRfSO3Li(Daaはジアリルアミド基を意味する)、及びDaaRfSO3LiイオノマーとLiTFSIイオノマーの混合物のカチオン輸率t+を調べている。LiTFSIのt+は低く、電解質としての材料の使用に適合した材料LiTFSI+ポリエーテルに対する比率O/Liの値に対して0.1程度である。イオノマーのt+は非常に高く、1に近い。しかしながら、著者は、LiTFSI及びDaaRfSO3Liの混合物を含む材料のt+がLiTFSIによって与えられる値とDaaRfSO3Liによって与えられる値の中間の値を示すことを期待していたにもかかわらず、実際にはLiTFSIだけを含む材料のt+に同等の低い値であることを記載している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明者は、驚くべきことに、イオン伝導材料を形成するために溶媒ポリマー中に溶解したリチウムオリゴエーテルサルフェート及びLiTFSIの組み合わせの使用が相乗効果を与え、溶剤型ポリマー中に単独のLi源としてLiTFSIを含むイオン伝導材料に比べて改善したカチオン輸率を得ることを可能にすることを見出した。この現象は過フルオロ化されているために毒性を有する化合物であるLiTFSIが安価でリサイクルの容易な毒性の少ない化合物によって部分的に置き換えられてもよい場合に特に好都合である。
【0011】
したがって、本発明の1つの特徴は溶剤型ポリマー中に溶解した少なくとも1つのイオン化合物を含むイオン伝導材料であって:
前記イオン化合物がリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び化学式R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-Li+(I)(ここで、Rは群Cm2m+1(1≦m≦4及び2≦n≦17))に対応するリチウムオリゴエーテルモノサルフェート及び化学式Li+-SO2−O−CH2−[CH2−O−CH2p−CH2−O−SO2−O-Li+(II)(ここで、3≦p≦45)に対応するリチウムオリゴエーテルジサルフェートから選択される少なくとも1つのリチウムオリゴエーテルサルフェートの混合物であり;
全体的な比率Ot/Litが40以下であり(ここで、Otは溶剤型ポリマー及びオリゴエーテルによって与えられるO原子の全数を表す);
LiTFSIの含有量が、比率Ot/LiTFSIが20以上となるような値であることによって特徴付けられるイオン伝導率材料である。
【0012】
以下の説明において、リチウムオリゴエーテルモノサルフェートはPOEMSと呼ばれ、リチウムオリゴエーテルジサルフェートはPOEDSと呼ばれる。
後で説明されるようなLiTFSIとリチウムオリゴマーサルフェートの組み合わせの驚くべき相乗効果に加え、本発明はLiTFSIをオリゴマーによって部分的に置き換えることによるコストの削減の長所、及びこの置き換えによって生ずる生態学的な長所を有する。
【0013】
イオン化合物に対する溶媒として使用されてもよい溶剤型ポリマーはポリマーと塩の間の相分離を伴わずに塩を溶解し、カチオン及びアニオンに部分的または完全に解離するポリマーである。これらのポリマーの例は酸化エチレン、プロピレンオキシド、またはジオキソランのホモポリマー及びコポリマーを含む。これらのポリマーはまた、酸化エチレン及び架橋可能なコモノマー(例えば、アリルグリシジルエーテル)のコポリマーであってもよい。特に好まれるポリマーは酸化エチレンホモポリマー、酸化エチレンコポリマー、及びポリ(オキシエチレン)を基材にした網状物である。酸化エチレンホモポリマー、及び例えば、100,000g/molまたは5×106g/molの分子量のPOEホモポリマー等の多様な分子量のコポリマーを使用することが可能である。一次元溶剤型ポリマーが使用される場合、それは十分な機械的な強度を確実にするために100,000g/molより大きい分子量を持つことが望ましい。
【0014】
溶剤型ポリマーは選択的に、液体溶剤が重量比で30%未満、好ましくは重量比で5%から10%の間である極性中性液体溶媒から選択される可塑剤の添加によって可塑化されてもよい。可塑剤は例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラアルキルスルファミド、分子量が200から2000の間のポリエチレングリコールジメチルエーテル、及び、一般的なものとして、低い揮発性の極性分子派生物から選択されてもよい。
【0015】
本発明の1つの好まれる実施例に従うと、イオン伝導材料のイオン化合物はLiTFSI及び化学式(I)(ここで、Rはメチル基であり、そしてnは2から17の間であり、好ましくはn≦12)のPOEMSの混合物である。
【0016】
本発明のもう1つの好まれる実施例に従うと、イオン伝導材料のイオン化合物はLiTFSI及び化学式(II)(ここで、pは3から45の間であり、好ましくはP≦12である)のPOEDSの混合物である。
リチウムオリゴエーテルサルフェートはこの分野で周知の合成処理を介して得られる。
【0017】
オリゴエーテルモノサルフェートR−[O−CH2−CH2n−O−SO3-Li+は2つの処理ステップを介して得られ、そこにおいて:
最初のステップにおいて、以下の反応式に従って、中性ガスでフラッシュしながら、無水媒質へのクロロスルホン酸の添加することによって化合物R−[O−CH2−CH2n−OHのアルコール官能基がエステル化され;
R−[O−CH2−CH2n−OH−HSO3Cl -->
R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-+,HCl
第2のステップにおいて、以下の反応式に従って、得られた化合物がアルカリ金属水酸化物(例えば、LiOH)で中和される。
R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-+,HCl+LiOH -->
R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-Li++H2
【0018】
第1のステップに対しては、例えば、ジクロロメタン等の塩素化された溶媒等の酸に全くまたはほとんど反応しない溶媒が選択される。反応の高い発熱性の理由により、クロロスルホン酸は緩やかに添加されることが望ましい。微量の水を考慮に入れるために僅かに過剰な量のクロロスルホン酸が使用される。
【0019】
第2ステップに対しては、第1ステップによって生ずる酸性の不純物を補正するために過剰なアルカリ金属水酸化物が使用されることが望ましい。
第1ステップ中の水の存在に関連した欠点を制限するために、化合物R−[O−CH2−CH2n−OHは好まれるものとして、80℃の動的真空状態で事前乾燥させられる。
【0020】
化合物R−[O−CH2−CH2n−OHはAldrichによって販売されている製品であってもよい。
リチウムオリゴエーテルジサルフェートLi+-SO2−O−CH2−[CH2−O−CH2P−CH2−O−SO2−O-Li+は対応するポリ(オキシエチレン)グリコールとともに開始される同様な処理によって得られる。
【0021】
本発明に従ったイオン伝導材料は1つまたは複数のリチウムオリゴエーテルサルフェート、LiTFSI、溶剤型ポリマー、及び必要に応じて前記ポリマーのための可塑剤を混合することによって得られる。例えば、鉱物充填剤、イオン伝導材料で使用されるリチウム塩、セルロース型の有機充填剤、及び難燃剤から選択される多様な添加物が添加されてもよい。可塑剤としての炭酸プロピレンの添加はまた、誘電率を増大させ、イオン化合物の分離を向上させることを可能にする。リチウム塩型の添加物の含有量は重量比で10%未満であり、好ましくは重量比で5%未満である。鉱物充填剤はシリカから構成されるものであってもよい。有機充填剤は例えば、仏国特許FR−2841255に開示されているようなセルロース髭結晶または微小繊維から構成されるものであってもよい。混合物は押出しまたは基板のコーティングによって形成されてもよい。
【0022】
本発明に従ったイオン伝導材料がフィルム形状で準備された場合、それは電気化学装置のための電解質フィルムとして直接的に使用されてもよい。この場合、処理は溶剤型ポリマー、LiTFSI、リチウムオリゴエーテルサルフェート、及び溶剤への選択的な1つまたは複数の可塑剤または他の添加物の溶液を準備すること、得られた溶液を脱気して、その後にそれを基板に注ぐこと、及び真空中で溶剤の気化によってフィルムを乾燥させることを含む。使用可能な溶剤は揮発性溶剤、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、またはジクロロメタンを含む。好まれるものとして、表面がポリテトラフルオロエチレン等の不活性かつ焦げつかない材料で被膜された基板が使用される。注がれたフィルムの表面は基板の表面に結合したガラスリングによって範囲を定められてもよい。本発明に従った材料のフィルムが電解質フィルムとして使用されることを目的としている場合、酸化エチレンホモポリマー、酸化エチレンコポリマー、またはポリ(オキシエチレン)を基材にした網状物を溶剤型ポリマーとして使用することが望ましい。
【0023】
本発明のイオン伝導材料は高分子固体電解質または複合電極の構成要素として使用されてもよい。従って、本発明の目的はまた、電気化学電池(または、電気化学セル)であり、そこにおいて、電解質は本発明に従ったイオン伝導材料を含み、そして(または)、少なくとも1つの電極はそのような材料を含む複合電極(または、合成電極)である。1つの実施例において、電解質は電極を分離している薄膜であり、その薄膜は本発明に従ったイオン伝導材料から成り、そこにおいて、ポリマー溶剤は上述の可塑剤の添加によって可塑化される。
【0024】
本発明に従った上記の電気化学電池は充電可能または充電不可能なリチウム電気化学発電機であってもよい。そのような発電機は高分子固体電解質によって分離された負電極及び正電極を備え、高分子固体電解質は本発明に従ったイオン伝導材料を備える。そのような発電機において、電極はまた、それらが複合形式(または、合成形式)で作製されたときに、伝導性バインダーとして作用する本発明のイオン伝導材料を含んでもよい。
【0025】
本発明に従ったイオン伝導材料はまた、電気化学システムまたは光変調システム等の、他の電気化学システムの複合電極のための電解質またはバインダーとして、または薄膜センサーの選択薄膜または基準薄膜の構成要素として使用されてもよい。
本発明は(制限ではないが)以下の例によって詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下の例において、リチウムオリゴエーテルモノサルフェートは化学式R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-Li+(I)に対応する。
POEMS120 n=2 RはCH3
POEMS164 n=3 RはCH3
POEMS350 n=7.2 RはCH3
POEMS550 n=11.8 RはCH3
POEMS750 n=16.3 RはCH3
リチウムオリゴエーテルジ硫酸塩は化学式Li+-SO2−O−CH2−[CH2−O−CH2P−CH2−O−SO2−O-Li+に対応する。
POEDS200 p=3.1
POEDS400 p=7.7
POEDS600 p=12.2
POEDS1000 p=21.4
POEDS2000 p=44
【0027】
本発明に従った材料のフィルムはグローブボックス内で気化によって準備される。LiTFSI塩はFlukaによって販売されている製品であってもよい。使用される溶剤型ポリマーは分子量が300,000g/molのポリ(オキシエチレン)であり、以降、POE3と呼ぶ。塩POEMS及びPOEDSは事前に合成されたものである。グローブボックス内で多様な成分が検量された。フィルムを形成するために使用された溶媒は分子ふるい上で乾燥された、Acrosによって供給されている無水アセトニトリルである。
【0028】
伝導率の測定は以下の方法により、電気化学インピーダンス分光分析法によってフィルム上で実施された。防漏水性ボタン電池のグローブボックス内で、直径19mm及び厚さ1.5mmのステンレススチールディスクと直径6mm及び厚さ1mmのステンレススチールディスクの間に直径9mmのフィルムを搭載した。
輸率はBruce及びVincentの方法(J. Evansら, Polymer, 28, 2324-2328,(1987))に従って測定された。この方法はインピーダンス分光分析測定とクロノアンペロメトリー測定の組み合わせである。
【0029】
合成されたオリゴマーの分子量は立体排除クロマトグラフィーによって得られた。使用された機械は周知のPEG較正用サンプル及び(多分散系指数Iが1の領域内にある)単分散質量Mnによって較正された。オリゴマーの分子量はPEGサンプルの手段による外挿によって決定された。
【実施例】
【0030】
実施例1
オリゴエーテルモノサルフェートPOEMSの合成
以下の処理によって複数のPOEMSサンプルを準備した。
【0031】
(n=2または3のとき室温の、nが4以上のとき80℃の真空状態で48時間事前乾燥された)20グラム(xモル)の分子量Mg/molのモノメチル化ポリエチレングリコールCH3−(O−CH2−CH2n−OH(MPEG)を冷浴内に配置された500cm3の3つ口円形底部フラスコ内の250cm3のジクロロメタンで溶解した。合成中、溶液はアルゴンでフラッシュされた。
【0032】
次に、5%過剰なクロロスルホン酸(vcm3)を40cm3のジクロロメタンと混合し、この混合物を滴下用漏斗を介して3つ口円形底部フラスコに滴下させて添加した。
添加後、反応媒質はアルゴンによって1時間フラッシュされた。次に、溶媒は回転式気化装置上で真空状態で除去され、残留物は100cm3の蒸留水中に取り出された。得られた溶液は1mol/lの水酸化リチウム溶液で中和された。中和はpHメータによって観測され、pHが蒸留水のpHを超えた瞬間に水酸化リチウム溶液の添加を停止した。
【0033】
次に、回転式気化装置上で真空状態で水が除去された。残留物はアセトニトリルに取り出され、得られた溶液は遠心分離機にかけられ、その後に1μmの微孔性PVDFフィルターで2回、0.45μmフィルターで1回、0.22μmフィルターで1回濾過された。アセトニトリルは最終的に回転式気化装置上で真空状態で気化された。
【0034】
そして、得られた塩は80℃のBuchiセルで、真空中で乾燥させられ、アルゴン下でグローブボックス内に格納された。この生成物は以下の化学式に対応する。
【化1】

【0035】
実施された多様な試験における特定の準備条件及び得られた産物は以下の表1に記載されている。
【表1】

【0036】
特定のサンプルに対し、POEMSの分子量及び初期のMPEGの分子量は立体排除クロマトグラフィーによって測定された。Mw及びMnは(PEG等価物として)測定された重量平均及び数平均分子量であり、Iは多分散性指数であり、ΔM理論値は合成されたPOEMSの理論的な分子量と開始時のPEGの理論的な分子量の間の差である。測定されたΔMはPOEMSのMwとPEGのMwの間の差である。クロマトグラムのピークでの結果及び溶出時間tは以下の表2に記載されている。
【表2】

【0037】
特定のPOEMSサンプルに対し、ガラス転移温度Tg、融点Tm、融解熱ΔHf、及び(純粋な生成物の伝導率の値である)固有伝導率σを測定した。結果は以下の表3に記載されている。
【表3】

【0038】
実施例2
リチウムポリエチレングリコールジサルフェートの製造
以下の処理によって複数のPOEDSサンプルを製造した。
【0039】
(80℃の真空状態で48時間事前乾燥された)20グラム(x'モル)の分子量M'g/molのポリエチレングリコール(PEG)を冷浴内に配置された500cm3の3つ口円形底部フラスコ内の250cm3のジクロロメタンで溶解した。合成中、溶液はアルゴンでフラッシュされた。
次に、5%過剰なクロロスルホン酸(v'cm3)を40cm3のジクロロメタンと混合し、この混合物を滴下用漏斗を介して3つ口円形底部フラスコに滴下させて添加した。
【0040】
添加後、反応媒質はアルゴンによって1時間フラッシュされた。次に、溶媒は回転式気化装置上で真空状態で除去され、残留物は100cm3の蒸留水中に取り出された。得られた溶液は1mol/lの水酸化リチウム溶液で中和された。中和はpHメータによって観測され、pHが蒸留水のpHを超えた瞬間に水酸化リチウム溶液の添加を停止した。
【0041】
次に、回転式気化装置上で真空状態で水が除去された。残留物はアセトニトリルに取り出され、得られた溶液は遠心分離機にかけられ、その後に1μmの微孔性PVDFフィルターで2回、0.45μmフィルターで1回、0.22μmフィルターで1回濾過された。アセトニトリルは最終的に回転式気化装置上で真空状態で気化された。
そして、得られた塩は80℃のBuchiセルで、真空中で乾燥させられ、アルゴン下でグローブボックス内に格納された。
【0042】
実施された多様な試験における特定の準備条件及び得られた産物は以下の表4に記載されている。
【表4】

【0043】
特定のPOEDSサンプルに対し、ガラス転移温度Tg、融点Tm、融解熱ΔHf、及び固有伝導率σを測定した。結果は以下の表5に記載されている。
【表5】

【0044】
実施例3
POEMSを含むフィルムの製造
POE3、LiTFSI、及び実施例1で準備された多様なPOEMSを使用して複数のフィルムのサンプルを製造した。使用した処理を以下に記載する。
【0045】
0.6gのPOE3、ymgのLiTFSI、及びzmgのPOEMSを30mlのフラスコ内に導入し、そして8mlのアセトニトリルを添加した。溶液を磁気的に4時間攪拌した。次に、それを脱気し、そして、テフロン(登録商標)層で被膜された表面に結合されたガラスリング内に注いだ。溶媒は冷却トラップを備えたアルゴン下のグローブボックス内で一晩かけて気化された。次に、フィルムは動的真空状態で72時間乾燥され、グローブボックス内に格納された。
各フィルムに対するカチオンの輸率t+を測定した。
【0046】
多様な試験を実施するための特定の条件は以下の表6に照合されている。OtはPOE3及びオリゴエーテルによって与えられる溶媒酸素原子の全数を表し、LiTFSIはLiTFSIによって与えられるリチウム原子の数を表し、LiPOEMSはオリゴエーテルによって与えられるリチウム原子の数を表し、LitはLi原子の全数を表し、そしてt+はカチオン輸率を表している。
【表6】

【0047】
これらの結果は、Ot/Litの全体的な比率が40未満であり、材料がLiTFSI塩だけでなく塩の混合物を含むときに輸率が顕著に高いことを明白に示している。
【0048】
実施例4
POEDSを含むフィルムの製造
POE3、LiTFSI、及び実施例2で準備された多様なPOEDSを使用して複数のフィルムのサンプルを準備した。使用した処理を以下に記載する。
【0049】
0.6gのPOE3、ymgのLiTFSI、及びzmgのPOEDSを30mlのフラスコ内に導入し、そして8mlのアセトニトリルを添加した。溶液を磁気的に4時間攪拌した。次に、それを脱気し、そして、テフロン(登録商標)層で被膜された表面に結合されたガラスリング内に注いだ。溶媒は冷却トラップを備えたアルゴン下のグローブボックス内で一晩かけて気化された。次に、フィルムは動的真空状態で72時間乾燥され、グローブボックス内に格納された。
各フィルムに対するカチオンの輸率t+を測定した。
【0050】
多様な試験を実施するための特定の条件は以下の表7に照合されている。OtはPOE3及びオリゴエーテルによって与えられる溶媒酸素原子の全数を表し、LiTFSIはLiTFSIによって与えられるリチウム原子の数を表し、LiPOEDSはオリゴエーテルによって与えられるリチウム原子の数を表し、LitはLi原子の全数を表し、そしてt+はカチオン輸率を表している。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤型ポリマー中に溶解した少なくとも1つのイオン化合物を含むイオン伝導材料であって:
前記イオン化合物がリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、及び化学式R−[O−CH2−CH2n−O−SO3-Li+(I)(ここで、Rは群Cm2m+1(1≦m≦4及び2≦n≦17))に対応するリチウムオリゴエーテルモノサルフェート及び化学式Li+-SO2−O−CH2−[CH2−O−CH2p−CH2−O−SO2−O-Li+(II)(ここで、3≦p≦45)に対応するリチウムオリゴエーテルジサルフェートから選択される少なくとも1つのリチウムオリゴエーテルサルフェートの混合物であり;
全体的な比率Ot/Litが40以下であり(ここで、Otは溶剤型ポリマー及びオリゴエーテルによって与えられるO原子の全数を表す);
LiTFSIの含有量が、比率Ot/LiTFSIが20以上となるような値であるイオン伝導率材料。
【請求項2】
前記溶剤型ポリマーが酸化エチレンホモポリマー及びコポリマー、酸化プロピレンホモポリマー及びコポリマー、及びジオキソランホモポリマー及びコポリマーから選択される、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項3】
前記溶剤型ポリマーが酸化エチレンのコポリマー及び架橋可能なコモノマーから選択される、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項4】
前記溶剤型ポリマーが100,000g/molから5×106g/molの分子量のポリ(オキシエチレン)から選択される、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項5】
重量比で30%未満の極性中性液体溶媒から選択される可塑剤をさらに含む、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項6】
前記イオン化合物がLiTFSI及び化学式(I)(ここで、Rはメチル基であり、そしてn≦12)のオリゴエーテルモノサルフェートの混合物である、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項7】
前記イオン化合物がLiTFSI及び化学式(II)(ここで、p≦12)のオリゴエーテルジサルフェートの混合物である、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項8】
鉱物充填剤、リチウム塩、セルロース型の有機充填剤、及び難燃剤から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1に記載のイオン伝導材料。
【請求項9】
請求項1に記載のイオン伝導材料の薄膜から成る高分子固体電解質。
【請求項10】
請求項1に記載のイオン伝導材料を含む複合電極。
【請求項11】
電解質によって分離された2つの電極を備える電気化学電池であって、前記電解質が請求項1に記載のイオン伝導材料を含む電気化学電池。
【請求項12】
電解質によって分離された2つの電極を備える電気化学電池であって、前記電極の少なくとも1つが請求項1に記載のイオン伝導材料を含む複合電極である電気化学電池。
【請求項13】
高分子固体電解質によって分離された負電極及び正電極を備えるリチウム電気化学発電機であって、前記電解質が請求項1に記載のイオン伝導材料を含むリチウム電気化学発電機。
【請求項14】
前記電極の少なくとも1つがバインダーとして、請求項1に記載のイオン伝導材料を含む、請求項11に記載の電気化学発電機。
【請求項15】
複合電極のための電解質及び(または)バインダーが請求項1に記載のイオン伝導材料を含むエレクトロクロミックシステム。
【請求項16】
複合電極のための電解質及び(または)バインダーが請求項1に記載のイオン伝導材料を含む光変調システム。
【請求項17】
請求項1に記載のイオン伝導材料から成る選択薄膜。
【請求項18】
請求項1に記載のイオン伝導材料から成る薄膜センサーのための基準薄膜。

【公表番号】特表2008−504661(P2008−504661A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518639(P2007−518639)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001623
【国際公開番号】WO2006/010843
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507001612)
【Fターム(参考)】