説明

オリゴペプチド化合物およびその使用

【課題】
【解決手段】本発明は、新規な薬剤、それを含む医薬組成物、ならびに治療、特に抗微生物治療および抗癌治療におけるその使用に関する。特に、本発明は、意外にも、細胞、特に細菌細胞および癌細胞の成長および/または生存能力に対して妨害作用を有することが示された配列番号40に基づく新規なペプチド系化合物に関する。また、本発明のペプチドの使用を含む治療的および非治療的方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な薬剤、それを含む医薬組成物、ならびに治療、特に抗微生物治療および抗癌治療におけるその使用に関する。特に、本発明は、意外にも、細胞、特に細菌細胞および癌細胞の成長(増殖)および/または生存能力に対して妨害作用を有することが示された新規なペプチド系化合物に関する。本発明の新規なペプチドは、細菌細胞および癌細胞に対して細胞毒性を有し、かつ腫瘍の成長を阻害することを示した。したがって、このようなペプチドまたはその模倣薬は、癌の治療においてまたは抗微生物剤として、より具体的には抗腫瘍剤または抗菌剤として使用され得る。また、本発明のペプチドの使用を含む治療的方法および非治療的方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
癌は、細胞が、制御されない成長ならびに隣接する組織に対する侵入および破壊を示す病気である。場合によっては、癌細胞は別の場所に転移および移動し、癌の二次的部位を形成する。癌は、すべての世代の人々に悪影響を与え、ほとんどのタイプで年齢とともに危険度が増加する。2007年には、癌はヒトの総死者数の約13%(760万人)の原因であった。実際に、米国だけで毎年600,000人が癌で死亡している。
【0003】
癌は、細胞の遺伝物質における異常によって引き起こされる。このような異常は、タバコの煙、放射線、化学物質または感染因子などの発癌物質の影響によるものである可能性がある。癌を促進するその他の遺伝異常は、DNA複製の失敗よって無作為に生じる場合があるし、また遺伝的なものであり、したがって誕生からすべての細胞中に存在する。癌の遺伝率は、通常、発癌物質と宿主ゲノムとの間の複雑な相互作用に影響される。
【0004】
受容体に仲介されるメカニズムを主に介して、ヒト免疫系が癌細胞を認識し破壊することがあることが知られている(1〜3)。しかしながら、免疫監視機構にもかかわらず、癌細胞は宿主の免疫制御を回避し得、したがって、癌の外科的処置または治療が通常必要となる。
【0005】
研究や医学進歩により、なんらかの形で大多数の癌を治療することができ、特定の種類、場所および病期によっては、少数ではあるが癌を治癒することができる。癌と診断されると、癌は通常、手術、化学療法および放射線治療を組み合わせて治療される。しかしながら、多くの癌は、現在、従来の方法によっては治癒することができず、したがって、癌患者に対する代替治療法が必要とされている。宿主の免疫制御は、多くの場合に、宿主防御に由来する細胞溶解性のカチオン性ポリペプチドによって仲介され、これは特に、癌の治療において抗癌ペプチドを使用することの提案につながった。このようなペプチドは、当所、細菌クリアランスにおける当該ペプチドの役割により発見された(4〜7)。しかしながら、腫瘍は、現在ではまだ分かっていない非受容体仲介性のメカニズムを介してこれらの宿主の制御メカニズムを克服するようである(8〜13)。
【0006】
癌細胞に対して抑制作用を示すペプチド(「抑制ペプチド」)は、負電荷を有する膜に強く結合し(4、5、14〜18)、膜の溶解が続いて起こり得ることが知られている(19、20)。典型的には、多くの抗癌ペプチドはカチオン性である。癌細胞の原形質膜は、負電荷を有するホスファチジルセリンを少量含み(3〜9%;文献21、22)、癌細胞は、ほとんどの良性真核細胞よりも多少の負電荷を有する。膜組成におけるこのわずかな差異が癌細胞を優先的に死滅させるいくつかのカチオン性ペプチドの能力の説明になるかどうかは、まだ明らかではない(23〜25)。
【0007】
表面に露出したホスファチジルセリンはまた、全く異る(受容体仲介性の)メカニズムを介してであるが、単球などの先天性免疫エフェクターにより血流から癌細胞が除去されたかを示すマーカーとして作用する(26)。カチオン性ペプチドによる腫瘍細胞の実際の破壊は、2つのプロセスうちの1つの結果であることが当技術分野で提案されている:(i)細胞質膜の破壊の結果としての壊死の誘導(20、25)または(ii)ミトコンドリア膜に対するペプチドの結合が引き金となるアポトーシスの誘導(9、27)。当技術分野で記載される抗癌ペプチドの多くは、細胞溶解に伴うメカニズムによりその効果を示すと考えられている。
【0008】
インビトロにおける特定のこのようなペプチドの強力な抗癌作用にもかかわらず、インビボ研究は限定的である。現在、癌細胞膜を破壊し、その結果として癌細胞死をもたらすことのできるペプチドを用いて行われたインビボ研究はごくわずかである。当該研究としては、(i)溶解性ペプチドを用いた固形腫瘍の全身治療:しかしながら、溶解性を有する実体は血清中で不活性化され腫瘍特異性が欠如しているので、当該ペプチドがホーミング(標的)ドメインに抱合したか、またはプロペプチド(12、27)として使用された場合のみである;(ii)マゲイニンおよびそのD−アミノ酸エナンチオマーを用いた卵巣癌の治療:しかしながら高用量で腹腔内注射された場合のみである(28);ならびに(iii)ヒト乳癌異種移植片に対する69個のアミノ酸からなる孔形成性ペプチドの腫瘍内投与(11)が挙げられる。
【0009】
内因性の局所活性が限定的であるかまたは無傷動物において相当な大きさの転移を達成する能力の欠如のいずれかにより、これら治療はいずれも、播種性の転移に対して影響があったとしてもごく僅かなものであった(27)。現在まで、癌細胞に対する細胞毒性ペプチドの選択性、および他の健常な臓器に対する当該ペプチドの毒性は、広範には研究されていない。しかしながら、ペプチドの1つ、すなわちD−K6L9という短い15量体D,L−アミノ酸ペプチドの場合、腫瘍内注射が、隣接する良性細胞に影響せずに原発性のヒト前立腺癌の成長を阻害することが示されている(13)。マウスでは、ペプチドD−K6L9は、全身投与されると、原発性および転移性腫瘍の成長を特異的に標的化し阻害することが示されている。このペプチドは、脱分極性溶解機構を介して原形質膜中のホスファチジルセリンに作用すると考えられる。
【0010】
したがって、抗癌ペプチドの分野において一定の進歩があったが、癌細胞の成長の破壊または阻害に効果的であって非癌細胞に対する細胞毒性を示さない新規なペプチドの必要性がなお存在する。
【0011】
上記のように、抗癌ペプチド開発の研究は、主に細胞溶解性の抗微生物ペプチドに集中し、このようなペプチドの多くが種類の異なる癌細胞に対してインビトロで作用することが示されている。このようなペプチドは、昆虫、両生類および哺乳類を含む生物の先天的な免疫力における中心的な役割がある。例としては、ヒトデフェンシン、セクロピン、セクロピン−マゲイニンハイブリッド、マガイニン、ならびにホーミングドメインに抱合したこのようなペプチドやプロペプチドが挙げられる。上に記載のように、これらのペプチドは、負電荷を有するリン脂質膜(細菌の原形質膜の主構成要素である)に優先的に結合して破壊する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
細菌など微生物は多くの感染症を引き起こし、毎年多数の死者の原因となる。例えば、病原菌は、結核などの疾患を引き起こす。微生物が多くの感染症の原因であり、病原性微生物の耐性が現代の医療が直面する大きな問題であるので、微生物に対する新規かつ代替の治療法が大いに所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、これらのニーズに対処し、驚くほど効果的な新しい抗癌および抗微生物剤として、新規なペプチド系化合物を提供する。
【0014】
したがって、新規なペプチドが設計され、これに基づくペプチド類は、驚くことに、インビトロで癌および細菌細胞の両方に対して効果的であり、インビボで腫瘍の成長を阻害することを示した。下記実施例に記載のように、この新規なペプチド配列に基づくペプチドは、正常細胞に対して非常に低い活性を示し低毒性である一方、様々な癌細胞株に対して細胞毒性作用を示した。グラム陽性およびグラム陰性のいずれの細菌も含む様々な細菌種に対する細胞毒性も示された。さらに、癌の動物モデルでは、腫瘍成長に対する有意かつ著しい抑制効果があり、強い抗腫瘍効果が観察された。治療を受けた動物には、治療を受けていない群と比較して有意な延命効果があり、実際に研究では動物の腫瘍が治癒する場合があることが示唆されている。したがって、劇的な抗癌効果または抗腫瘍効果が示された。この意味で、「抗癌」なる語は、癌細胞に対する、より具体的には癌細胞の成長および/または生存能力に対する悪影響、そしてより具体的には癌細胞に対する細胞毒性を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、スクリーニングのために設計された96種類の合成ペプチドで24時間処理した後の細胞生存率に対する効果を示す。「ペプチド1」と識別される配列番号40のペプチドは、吸光度が最も低く、細胞生存率が最も低いことを示した(ペプチド1は、図1のグラフ上で最も短い棒の隣にある矢印により示されている)。
【図2】図2は、96種類のペプチドのうちの3種類を20分間培養した後の細胞に対する光学顕微鏡観察法により測定される形態学的効果を示す。
【図3】図3は、すべてがL−アミノ酸形態であるペプチド1(配列番号40)、逆配列ですべてがD−アミノ酸であるレトロ−インベルソ(ri)形態のペプチド1(配列番号41)、およびすべてがD−アミノ酸形態であるペプチド1(配列番号40)の単層培養における細胞に対する効果を示す。
【図4】図4は、HFF1(ヒト包皮繊維芽細胞)、T986(神経芽腫)、GaMG(膠芽腫)およびA172(膠芽腫)に対する、異なるペプチド濃度で異なる時点で投与されたペプチド1のMTT分析結果を示す。HFF1細胞と比較して、腫瘍細胞株に対してより低い生存率が観察される。
【図5】図5は、それぞれ、2.5〜30μg/mlのペプチドで処理された2種類の正常細胞株(142細胞およびHFF1細胞)ならびに2種類の癌細胞株(143癌細胞およびHOS肉腫細胞株)のLIVE/DEAD生存率測定からの結果を示す。正常細胞株と比較して、2種類の癌細胞株に対して強い細胞毒性作用が観察された。
【図6A】図6(A)は、ペプチド1で処理した後の細胞の高解像度走査電子顕微鏡画像を示す。
【図6B】図6(B)は、チオシアン酸フルオレセインで標識化したペプチドのN末端部分を示す。
【図7】図7は、マウス中の4T1腫瘍へのペプチド1の局所注射が4T1腫瘍に強い成長抑制効果を誘導することを示す。
【図8】図8は、4T1癌細胞を皮下注射した処理動物および未処理動物を比較する、カプラン・マイヤー生存実験の結果を示す。著しい腫瘍組織量に基づいて全身性疾患の兆候を示した時に動物を屠殺した。
【図9】図9は、カプラン・マイヤー生存実験からの腫瘍の組織学的な分析結果を示す。
【図10】図10は、脂質二重層に異なる組成のリン脂質を含んだ200nmのリポソームを示す。リポソームに蛍光色素を加え、ペプチド1(図10のペプチドX)で処理した後に色素流出を測定した。色素は、蛍光体ANTXおよび消光剤DPXを指し、色素放出は、界面活性剤(Triton x100)による完全な放出に対する%を指す。
【図11】図11は、異なる時点での、膜破壊および細胞からのdsRedの放出を視覚化する経時共焦点顕微鏡観察を示す。白色の矢印は、膜破壊により引き起こされたdsRedの細胞質含有量の突然の減少を示す。
【図12】図12は、観察された膜破壊効果の理論的説明を示す。
【図13】図13は、3種類の菌株が、ペプチド1と共にまたは無しで2時間培養された場合の成長の結果を示す。
【図14】図14は、ペプチド1のpH7.0での正味電荷が12であること;等電点が12.4であること;平均親水性度が1であること;および親水性残渣/残渣の総数の比が56%であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、公知の腫瘍抑制タンパク質のアミノ酸配列に基づいて、まず「腫瘍抑制」効果を有するペプチドを設計しようとした。したがって、腫瘍抑制タンパク質の受容体に結合し、したがって腫瘍成長をブロックするペプチドを設計することが期待された。ペプチド96個のパネルが調製され、抗癌活性および抗微生物活性についてスクリーニングされた。本発明の基礎になるペプチドはこのスクリーニングで同定され、これは、かなりの水準の活性を示すたった3つのペプチドのうちの1つである。本発明のペプチドは、癌細胞および微生物細胞の両方、癌細胞の場合ではインビトロおよびインビボの両方で予想外に高い細胞毒性活性を示した。意外にも、ペプチドライブラリ設計の根拠を考慮すると、ペプチドは、癌細胞の原形質膜を破壊しかつ細菌を溶解する溶解作用を有することが分かった。さらに、アポトーシス効果が意外にも観察され、ペプチドが細胞死を引き起こすかまたは誘導し得ることを示唆している。上記のように、さらなる研究によって、この抗癌効果は、非癌細胞を無傷にしておき、癌細胞に選択的であり得ることが示され、これは、治療(例えば、化学療法治療)の副作用が強い場合が多い癌治療において大きな利点である。本発明のペプチド系化合物はまた、いくつかの菌株を除去することを示し、多剤耐性菌に対する有効な手段を提供できる。
【0017】
これら驚くべきかつ予想外の結果に基づいて、本発明者らは現在、この新規なペプチド配列、すなわち配列番号1の配列:
KTLRVAKAIYKRYIE(配列番号1)
に基づくペプチドおよびペプチド系化合物が、癌および微生物感染の治療において治療的に、より一般には抗微生物剤としても使用され得る(例えば微生物汚染またはコロニー形成と闘うための、非治療的使用(例えば殺菌剤などとして)も包含する)ことを提案する。
【0018】
したがって、1つの態様では、本発明は:
(i)配列番号1のアミノ酸配列の全部または一部;あるいは
(ii)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;あるいは
(iii)配列番号1の逆配列の全部もしくは一部(すなわち配列番号2:EIYRKYIAKAVRLTKの全部もしくは一部)であるか、または配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列の逆配列であるアミノ酸配列、を含むオリゴペプチド化合物を提供し;
ここで当該化合物は、癌細胞および/または微生物細胞の成長および/または生存能力の阻害活性を有する(つまり、その能力があるおよび/またはそれに効果的である)。違う言い方をすると、当該化合物は、抗腫瘍活性または抗微生物活性を有してもよく、後者の場合好ましくは抗菌活性を有する。
【0019】
下記でより詳細に記載するように、本発明のオリゴペプチド化合物は、有利には、「細胞透過性」活性(さらに下に規定する)を有する追加のオリゴペプチド配列を備えてもよい。特に、HIV−TATペプチドに基づくこのような細胞透過性オリゴペプチド配列が好ましい。これに基づいて設計されたペプチドは、下記実施例で試験され、特に効果的であることが示された。
【0020】
したがって、好ましい態様では、本発明は:
(i)アミノ酸配列YGRKKRRQRRRGKTLRVAKAIYKRYIE(配列番号40)の全部または一部;あるいは
(ii)配列番号40の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;あるいは
(iii)配列番号40の逆配列の全部もしくは一部(すなわち配列番号41:EIYRKYIAKAVRLTKGRRRQRRKKRGYの全部もしくは一部)であるか、または配列番号40の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列の逆配列であるアミノ酸配列、を含むオリゴペプチド化合物を提供し;
ここで当該化合物は、癌細胞および/または微生物細胞の成長および/または生存能力の阻害活性を有する(つまり、その能力があるおよび/またはそれに効果的である)。違う言い方をすると、当該化合物は、抗腫瘍活性または抗微生物活性を有してもよく、後者の場合好ましくは抗菌活性を有する。
【0021】
配列番号40のオリゴペプチド化合物は、配列番号1のN端末側終端に結合した配列番号36(さらに下を参照)のHIV−TAT配列に対応する。
【0022】
本発明のオリゴペプチド化合物は、したがって、細胞、特定の癌細胞もしくは微生物細胞、特に細菌の成長および/または細胞の生存能力に対して抑制効果を有する。化合物は、したがって、特に癌細胞または微生物細胞に対して、例えば、腫瘍に対して、細胞成長抑制活性または細胞毒性活性、好ましくは細胞毒性活性を有する。1つの態様では、化合物は、制菌性または殺菌性であり、好ましくは殺菌性である。
【0023】
細胞の「成長を阻害する」ことは、細胞の成長のあらゆる局面も、例えば、細胞の大きさの増加あるいはその構成要素の量および/または体積の増加、特に、細胞数の増加を減少させる、より具体的には特定が可能な程度に減少させることを意味する。「成長」なる語はしたがって、明示的に、細胞の複製または再生を含む。例えば細胞数の増加速度の点で、細胞の成長速度が減少されてもよい。代表的な例として、成長(例えば、細胞数または成長速度)は、少なくとも50、60、70、80、90または95%減少されてもよい。特定の場合では、成長は100%減少されてもよい、すなわち、成長が停止するかまたは完全に阻害される。したがって、細胞の複製または再生が、減少または阻害されてもよい。したがって、「阻害」なる語は、あらゆる程度の成長の減少も含む(例えば、オリゴペプチド化合物の非存在下で観察され得る成長と比較して)。複製または再生の速度は、特に微生物細胞の場合では生成時間(つまり、微生物がそれ自身のコピーを生成するのにかかる時間)で評価するかまたは表されてもよい。癌細胞に関しては、成長は、細胞数を測定することにより、または腫瘍の大きさもしくはその成長速度を判定することにより評価してもよい。
【0024】
細胞の「生存能力を阻害する」ことには、細胞の生存能力を減少させるか、または細胞が生存する可能性を低くするもしくは生存不能にするあらゆる効果も含む。細胞の生存能力は、細胞が所与の条件下で生存する能力と見なされてもよい。特に、それは、細胞を死滅させるかまたは破壊すること、すなわち、死なせることを含む。死は、複製できないまたは栄養素を利用できないもしくは資化できないことを含めて成長できないことによって、あるいは細胞にまたは細胞が含まれている組織に対する形態学的な変化(例えば、腫瘍)例えば壊死がはっきりと認識され得ること、によって判定されてもよい。典型的には、細胞膜の一体性が失われた場合に細胞は死んでいると考えることができる。
【0025】
「細胞成長抑制性の」および「細胞毒性の」なる語は、同義に解釈されてもよい。
【0026】
癌細胞もしくは微生物細胞の生存能力または成長を測定する方法は、当技術分野において周知である。多くのルーチンアッセイが細胞が生きている(生存可能)か死滅しているかどうかを判断するのに利用可能である。1つの選択肢としては、細胞をその細胞の成長を通常は支援する条件下に置き、適切な標準的手法によって細胞の成長をモニタリングすることであり、例えば、細胞の大きさ、細胞の形態、継時的な細胞数、培地中の栄養素の消費をモニタリングすることによる。他の選択肢としては、細胞死の形態学的特徴、例えば、壊死またはアポトーシス体、膜小疱、規則的な大きさの断片へのDNAの核凝縮および開裂、細胞壁または膜の破裂、および細胞外環境への細胞含有物の漏出、に関して細胞を評価することである。
【0027】
他の方法は、死細胞における細胞膜完全性の特徴的な喪失を利用する。膜不浸透性の染料(例えば、トリパンブルーおよびヨウ化プロピジウム)が、膜完全性の評価に慣例的に使用される。これら染料は、無傷細胞からは排除され、したがってこのような細胞では染色は起こらない。細胞膜完全性が損なわれた場合、これら染料は細胞にアクセスし細胞内構成要素を染色することができる。それに代わってまたはそれに加えて、無傷膜を有する細胞のみを染色する染料が、細胞の生存能力を示すために使用される。Invitrogen社のLive/Dead Assayは、一方が死細胞を染色し他方が生細胞を染色する2種類の染料を使用するアッセイである。膜完全性を評価するための別の手法は、培地への細胞構成要素(例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ)の放出を検出することである。
【0028】
さらに別の選択肢としては、細胞の代謝を測定することである。これは、多数の方法で慣例的に行うことができる。例えば、ATPの数値を測定してもよい。無傷膜を有する生細胞のみがATPを合成でき、そしてATPは細胞に蓄積されないので、ATPの数値は細胞死すると急速に低下する。ATPの値をモニタリングすることは、したがって、細胞の状態を示す。また別の選択肢としては、細胞の還元能を測定することである。栄養素を代謝する生細胞は還元反応を利用し、したがって、還元形態または酸化形態かどうかで異なったアウトプットをするマーカー(例えば、蛍光染料)を細胞に適用することにより、細胞の還元能を評価することができる。マーカーを還元する能力が欠如した細胞は、死滅していると考えられる。MTTアッセイおよびMTSアッセイは、この種の簡便なアッセイの例である。
【0029】
「抗腫瘍」効果または活性は、腫瘍の成長および/または生存能力に対する効果と見なされてもよい。この用語は、腫瘍に対するあらゆるマイナスの効果または活性も含む。腫瘍の細胞が死滅しても破壊されてもよい。腫瘍の成長が阻害されてもよく、例えば、腫瘍が成長できなくてもよいし、腫瘍の成長速度が減少してもよい(例えば、上記化合物での治療以前の腫瘍と比較して、または同等なもしくは対応する未治療の腫瘍と比較して)。腫瘍の大きさが減少してもよいし、有利な状況では、腫瘍が完全に消失する(つまり、除去されるか破壊される)。抗腫瘍効果は、特定の場合では、腫瘍からの癌細胞の拡大を減少させる効果を含んでもよく、例えば、腫瘍の転移能を減少させてもよい。他の腫瘍の病原特性または挙動、例えば、周囲の組織に侵入するか浸潤させる能力を減少させてもよい。
【0030】
上記の定義に関して、「抗微生物」活性は、微生物の成長を死滅させる、破壊するまたは阻害するあらゆる効果も意味し、類似して、抗菌活性は、細菌の成長を死滅させる、破壊するまたは阻害する効果すべてである。
【0031】
有利には、本発明のオリゴペプチド化合物は、細胞に対して直接的に作用する、すなわち、細胞の成長および/または生存能力を直接的に阻害し得る。「直接的に」により、化合物が、その効果(例えば、その細胞毒性または細胞成長抑制効果)を与えるために、生理的なシステムまたはメカニズム(例えば、免疫系)を動員しないことが意味される。むしろ、化合物は細胞に対して直接的に作用する。
【0032】
本発明のオリゴペプチド化合物がその効果を及ぼすのを支援する、または当該効果を促進するもしくは特定の場合には可能にするために、上記化合物は、細胞への送達(細胞内送達)を促進する、向上するまたは可能にする手段を備えてもよい。
【0033】
したがって、1つの実施形態では、オリゴペプチド化合物はさらに、細胞透過性配列(細胞透過性ペプチド)を含む。この実施形態の好ましい態様では、オリゴペプチド化合物は、HIV−TAT配列、特にアミノ酸47〜58に基づく細胞透過性配列を含む。
【0034】
したがって、このような実施形態では、本発明のオリゴペプチド化合物は、本発明のオリゴペプチド化合物を細胞透過性配列またはペプチドと共に含有する(つまり、含む(comprising))コンストラクトの形態をとってもよいとみなすことができる。この態様では、本発明はしたがって、本発明のオリゴペプチド化合物を少なくとも1つの細胞透過性ペプチドと共に含むコンストラクトを提供すると見なされてもよい。「細胞透過性ペプチド」の文脈において使用されるように、「ペプチド」なる語は、ペプチド結合を有するペプチドのみに限定されず、さらに下に記載のように、他のペプチド様またはペプチド系化合物、例えばペプチド模倣構造体を含む。言いかえれば、「細胞透過性ペプチド」は、細胞透過活性を有するあらゆるオリゴペプチド化合物を含んでもよい。
【0035】
したがって、細胞透過性ペプチドは、細胞中へまたは細胞膜を超えて(つまり、細胞の内部へ)オリゴペプチド化合物を運搬するように作用する配列であってもよい。したがって、これは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)またはタンパク質形質導入配列としても当技術分野で公知のいわゆる「細胞透過性」配列(より具体的には「細胞透過性ペプチド」)であってもよい。
【0036】
したがって、上記のように、本発明の好ましい実施形態は、(i)本明細書で規定の本発明のオリゴペプチド化合物と(ii)細胞透過性配列(より具体的には、細胞透過性ペプチド)とを含むコンストラクトである。
【0037】
細胞透過性ペプチド(CPP)技術は、近年大幅に発展し、様々な細胞透過性ペプチドが当技術分野で公知であり記載され、実際には、広範なこのようなペプチドが市販されている。細胞透過性ペプチドは、大きさ、配列、電荷、および実際には作用機序(いくつかのペプチドについては作用機序は現在は分かっておらず、その他のペプチドについては十分に解明されていない)が大きく異なる場合があるが、原形質膜を超えて移動し、細胞の細胞質にまたは場合によっては核に、付着したもしくは会合した部分(いわゆる「積荷」)を送達する共通の能力を有する。CPPは、したがって、ペプチド系送達ベクターである。CPPは、Drosophilaホメオボックスタンパク質アンテナペディア(転写因子)などの細胞膜を超えて移動することができる天然に存在するタンパク質、HIV−1転写因子TATなどのウイルスタンパク質、およびHSV−1からのカプシドタンパク質VP22などに由来してもよいし、CPPは、例えば、キメラタンパク質や合成ポリペプチド、例えば、ポリアルギニンから合成的に誘導されてもよい。上に記載のように、形質導入効果の原因となる単一のメカニズムは無く、したがって、CPPの設計は、異なる構造および配列に基づいてもよい。細胞透過性ペプチドは、Jarverら2006「Biochimica et Biophysica Acta」1758、260〜263ページで概説されており、下記表1に様々な代表的なペプチドを記載する。さらに米国特許第6,645,501号は使用され得る様々な細胞透過性ペプチドを記載している。
表1
【0038】
【表1】





【0039】
HIV−TAT配列に基づく配列およびHIV−TATおよびそのフラグメントは、本発明による使用のための好ましいクラスのCPPを代表している。米国特許第5,656,122号に様々なTAT系CPPが記載されている。下記実施例で使用される典型的なHIV−TATペプチドは、YGRKKRRQRRRG(配列番号36)であり、これは本発明の好ましい態様をなすが、もちろんさらに長いまたはさらに短いTATフラグメントが使用されてもよい。細胞透過活性を保持すれば、HIV−TATのアミノ酸配列は、修飾および/または短縮されていてもよいし、ペプチドは、化学的に修飾されてもよいし、レトロ−、インベルソ−またはレトロ−インベルソアナログが作成されてもよい。
【0040】
細胞透過性ペプチドの別の群としては、表1に示すような16個のアミノ酸からなるペネトラチン配列に基づくアンテナペディア由来CPP(Antpクラス)であり、これはアンテナペディアタンパク質の第3のループに対応し、当該タンパク質の移動の原因であることが示された。ペネトラチンは、特に薬理学的使用を含む、送達ベヒクルとして広く開発され、広範囲のペネトラチン誘導体および修飾配列が提案され記述されている。特にWO91/1891、WO00/1417、WO00/29427、WO2004/069279、および米国特許第6,080,724号が参照され得る。したがって、細胞透過性活性を保持すれば、ペネトラチンの16個のアミノ酸からなる配列は、修飾されかつ/または短縮されてもよく、あるいは、当該ペプチドは化学的に修飾されてもよく、あるいはレトロ−、インベルソ−またはレトロ−インベルソアナログが作成されてもよい。
【0041】
上に記載のように、特定の構造的特徴または配列モチーフがすべてのCPPに共通ではない。しかしながら、様々なクラスのCPPが特定の特徴により同定され得る、例えば、両親媒性であり正味の正電荷を有するペプチドなどである。他の群のCPPは、高αヘリックス含量を示す構造を有し得る。他の群は、高含量の塩基性アミノ酸を特徴とするペプチドであり得る。CPPは、したがって、アルギニンなどの塩基性アミノ酸のオリゴマー、例えば、5〜20、6〜15、または6〜12個のR残基、例えば、R7(配列番号35)、R8(配列番号37)またはR11(配列番号38)またはQSR8(配列番号39)であってもよいし、それを含んでもよい。
【0042】
プロリンを豊富に含む両親媒性ペプチドは、別のクラスのCPPであり、プロリン由来のピロリジン環の存在を特徴とするこのようなペプチドは、Pujalsら、2008「Advanced Drug Delivery Reviews」60、473〜484ページに記載されている。
【0043】
他のうまく開発されたCPPとしては、pVEC(Elmquistら、2003「Biol.Chem」384、387〜393ページ;Holmら、2005「Febs Lett.」579、5217〜5222ページ、およびカルシトニン由来ペプチド (Kraussら、2004「Bioorg.Med.Chem.Lett.」14、51〜54)が挙げられる。
【0044】
市販のCPPとしては、Pep−1ペプチドに基づくChariot(Active Motif、フランス)、プロテグリンペプチドPG−1に基づくSyn−Bベクター(Syntem、フランス)、およびGenospectra(米国)からのMPGペプチドに基づくExpress−si Deliveryが挙げられる。
【0045】
公衆に利用可能であり公表されているCPPに加えて、新規なまたは誘導体のCPPペプチドが、公知のまたは公表されている基準(例えば、公知のCPPの配列や上に記載のような塩基性アミノ酸含量、αヘリックス含量などの特徴)に基づいて設計されるか合成されてもよい。さらに、任意に設計したまたは他のペプチドをCPP活性についてスクリーニングしてもよく、これは、例えば、リポーター分子(例えば、検出可能な標識または蛍光タグなどのタグ)を含むこのようなペプチドを所望の積荷(本発明によるオリゴペプチド化合物)にカップリングまたは付着させ、例えば、生細胞に当該ペプチドを加えることによりコンストラクトが細胞膜を超えて移動したかどうか見るために試験し、次いで、例えば、共焦点顕微鏡観察法を用いて細胞移入を調べることにより行われる。
【0046】
実際には、CPPは大抵あらゆる細胞型も実質的に透過するか侵入する一方、場合によっては、結果よいまたは効率的な送達は、積荷(例えば、積荷ペプチド配列)および/または使用されるCPPの厳密な性質に左右されるか、あるいはそれに応じて異なり得るということが観察される。至適なペプチド配列および組み合わせなどを決定することや積荷および/またはCPP配列や構造などを試験するならびに/あるいは修飾することは、当業者の通常の技術の範囲内である。
【0047】
本発明の代表的なオリゴペプチド化合物(またはコンストラクト)は、したがって、次のものを含み得る:
(a)次のものを含む第1のオリゴペプチド配列:
(i)配列番号1のアミノ酸配列の全部もしくは一部;または
(ii)配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;または
(iii)配列番号1の逆配列の全部もしくは一部(すなわち配列番号2:EIYRKYIAKAVRLTKの全部もしくは一部)であるか、または配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列の逆配列であるアミノ酸配列;ならびに
(b)細胞透過性ペプチド配列である第2のオリゴペプチド配列。
【0048】
構成要素(b)は、上記のCPPのいずれから、より具体的にはHIV−TATに基づくかまたは由来する配列から選ばれてもよい。
【0049】
CPP(つまり、上記の規定における構成要素(b))は、オリゴペプチド化合物のNもしくはC端末側終端のどちらに付着しているかまたは供給されていてもよいが、好ましくはN末端側終端である。したがって、構成要素(a)および(b)は、どのような順番で付着または結合していてもよいが、好ましくは(a)−(b)の順である。
【0050】
本発明によるオリゴペプチド化合物(またはコンストラクト)の構成要素または成分は、当技術分野において周知の技術よって任意の所望または簡便な方法で互いに付着させてもよいし結合させてもよい。したがって、構成要素または個別の部分は、例えば、公知の化学的なカップリング技術を使用して、化学的に結合されるかまたは抱合されてもよいし、コンストラクトは、遺伝子工学技術、例えば、融合タンパク質を形成する技術を使用して、一体化して形成されてもよく、または、例えば、ペプチド合成技術を使用して、単にまとめて合成されてもよい。
【0051】
個別の部分または構成要素は、互いに直接結合されていてもよいし、1個以上のリンカー(またはスペーサー)配列によって間接的に結合されていてもよい。したがって、リンカー配列が化合物の2つの部分(またはオリゴペプチドコンストラクトにおける2つの個別の構成要素)の間に存在するかまたはそれらを隔ててもよい。リンカー配列の厳密な性質は重要ではなく、様々な長さおよび/または配列であってもよく、例えば、0〜15、0〜12、0〜10、0〜8、0〜6、0〜4または0〜3個の残基、例えば、1、2、3個以上の残基を有してもよい。代表的な例としては、リンカー配列は、もし存在する場合には、1〜15、1〜12、1〜10、1〜8、1〜6または1〜4個の残基などを有してもよい。残基の性質は重要ではなく、残基は、例えば、任意のアミノ酸、例えば、中性アミノ酸または脂肪族アミノ酸であってもよく、あるいは、疎水性、極性、電荷を有する、または構造形成性(例えばプロリン)であってもよい。典型的なリンカー配列としては、したがって、任意の単一のアミノ酸残基、例えば、A、I、L、V、G、R、Q、TまたはW、あるいはこのような残基からなるジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−またはヘキサ−ペプチドが挙げられる。
【0052】
オリゴペプチド化合物が、配列番号1の(または少なくとも85%の配列同一性を有する機能的に同等なバリアントの)逆の配列である配列を含む場合、CPP(例えば、構成要素(b))の配列も逆であり、逆の順番で付着していることが好ましい。言いかえれば、2つの部分を含む化合物全体(またはコンストラクト)の配列が逆であることが好ましい。しかしながら、当該部分の一方のみが逆であることや、両方の部分が逆であるが、「逆でない」順番で付着していることは除外されない。
【0053】
本発明の代表的な好ましい化合物は次の配列を有し得る。
【0054】
YGRKKRRQRRRGKTLRVAKAIYKRYIE(配列番号40)
本発明の化合物としては、次のものを含む化合物を挙げることができる。
(i)配列番号40のアミノ酸配列の全部または一部;あるいは
(ii)配列番号40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;あるいは
(iii)配列番号40の逆配列の全部もしくは一部(すなわち配列番号41:EIYRKYIAKAVRLTKGRRRQRRKKRGYの全部もしくは一部)であるか、または配列番号40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列の逆配列であるアミノ酸配列。
【0055】
本発明による癌細胞は、あらゆる癌、例えば下記の癌のいずれかからの細胞であってもよい。それは腫瘍細胞であってもよい。細胞は、臨床の腫瘍もしくは癌組織中のまたはそれらからの細胞であってもよく、癌細胞株からの細胞であってもよい。
【0056】
本明細書では「微生物細胞」なる語は、あらゆる微生物も含む。したがって、細胞は、真核生物または原核生物であってもよく、細菌、菌類、藻類、古細菌および原生生物を含む。当該用語は、したがって、典型的には単細胞である生物を含むが、特定の条件下で、単純な協同性のコロニーまたは構造、例えば、フィラメント、菌糸または菌糸体(しかしながら本当の組織ではない)を構成する能力を有してもよい。微生物は、任意の綱、属または種の微生物からのものであってもよい。原核微生物の例としては、マイコプラズマ(例えば、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌またはグラム試験に反応を示さない細菌)を含む細菌および古細菌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。真核微生物としては、菌類、藻類および分類学上の原生生物界に分類されるかもしくは分類されてきたものまたは原生生物と呼ばれるものを含み、例えば、原虫類、珪藻、原生植物、および菌に似たカビが挙げられるが、これらに限定されるものではない。微生物は、好気性であっても嫌気性であってもよい。微生物は、病原性であっても非病原性であってもよく、または腐敗微生物であっても指標微生物であってもよい。特に好ましい実施形態では、微生物は病原性である。
【0057】
多剤耐性生物(MDRO)は一般に、臨床用量の古典的抗生物質には影響を受けない細菌である。3つ以上のクラスの抗生物質に耐性のある細菌が一般にMDROと呼ばれる場合がある。本発明のオリゴペプチド化合物は、MDRO、例えば、MDRであるサルモネラ種、カンピロバクター種、大腸菌、スタヒロコッカスおよびエンテロコッカス種による感染の治療または予防に使用され得る。MRSAは、多剤耐性菌の例である。本発明の1つの実施形態では、微生物細胞は、多剤耐性菌である。
【0058】
細菌または菌類は、好ましいクラスの微生物細胞、特に細菌を代表している。
【0059】
細菌の属または種の例としては、アビオトロフィア、アクロモバクター、アシドアミノコッカス、アシドボラックス、アシネトバクター、アクチノバチルス、アクチノバクラム、アクチノマヅラ、アクチノミセス、アエロコッカス、エーロモナス、アフピア、アグロバクテリウム、アルカリゲネス、アロイオコッカス、アルテロモナス、アミコラータ、アミコラトプシス、アネロビオスピリルム、アナエロラブダス、アラクニア、アルカノバクテリウム、アーコバクター、アルトロバクター、アトポビウム、オーレオバクテリウム、バクテロイデスバルネアトリクス、バルトネラ、バージイエラ、ビフィドバクテリウム、バイロフィラ、ブランハメラ、ボレリア、ボルデテラ、ブラキスピラ、ブレビバチルス、ブレビバクテリウム、ブレブンディモナス、ブルセラ、バークホルデリア、ブティアウクセラ、ブチリビブリオ、カリマトバクテリウム、カンピロバクター、カプノシトファガ、カルジオバクテリウム、ケトネラ、セデセア、セルロモナス、センティペーダ、クラミジア、クラミドフィラ、クロモバクテリウム、クリセオバクテリウム、クリセオモナス、シトロバクター、クロストリジウム、コリンゼラ、コマモナス、コリネバクテリア、コキシエラ、クリプトバクテリウム、デルフチア、デルマバクター、デルマトフィルス、デスルホモナス、デスルフォビブリオ、ジアリスター、ディケロバクター、ドロシコッカス、ドロシグラヌルム、エドワージエラ、エガセラ、エールリキア、エイケネラ、エムペドバクター、エンテロバクター、エンテロコッカス、エルウィニア、エリシペロトリックス、エシェリキア、ユーバクテリウム、エウィンゲラ、エキシグオバクテリウム、ファクラミア、フィリファクター、フラビモナス、フラボバクテリウム、フランキセラ、フゾバクテリウム、ガードネレラ、グロビカテラ、ゲメラ、ゴルドナ、ヘモフィルス、ハフニア、ヘリコバクター、ヘロコッカス(Helococcus)、ホールディマニア、イグナビグラナム、ジョンソネラ、キンゲラ、クレブシエラ、コクリア、コセレラ、クルシア、キトコッカス、ラクトバチルス、ラクトコッカス、ロートロピア、レクレルシア、レジオネラ、レミノレラ、レプトスピラ、レプトトリキア、ロイコノストック、リステリア、リストネラ、メガスファエラ、メチロバクテリウム、ミクロバクテリウム、ミクロコッカス、ミツオケラ、モビルンカス、モエレレラ、モラクセラ、モルガネラ、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ミロイデス、ナイセリア、ノカルジア、ノカルジオプシス、オクロバクトラム、オエスコビア(Oeskovia)、オリゲラ、オリエンティア、パエニバチルス、パントエア、パラクラミジア、パスツレラ、ペディオコッカス、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、フォトバクテリウム、フォトラブダス、プレシオモナス、ポルフィリモナス(Porphyrimonas)、プレボテラ、プロピオニバクテリウム、プロテウス、プロビデンシア、シュードモナス、シュードノカルジア、シュードラミバクター、サイクロバクター、ラーネラ、ラルストニア、ロドコッカス、リケッチアロカリメア、ロゼオモナス、ロシア、ルミノコッカス、サルモネラ、セレノモナス、セルプリナ、セラチア、シェウェネラ(Shewenella)、シゲラ、シムカニア、スラッキア、スフィンゴバクテリウム、スフィンゴモナス、スピリルム、スタヒロコッカス、ステノトロホモナス、ストマトコッカス、ストレプトバチルス、ストレプトコッカス、ストレプトミセス、サクシニビブリオ、ステレラ、スットネラ、テイタメラ、ティセレラ、トラブルシエラ、トレポネーマ、トロフェリマ、ツカムレラ(Tsakamurella)、ツリセラ、ウレアプラスマ、バゴコッカス、ベイロネラ、ビブリオ、ウィークセラ、ウォリネラ、キサントモナス、ゼノラブダス、エルシニア、およびヨケネラ、例えば、M・ツベルクローシス、M・ボビス、M・ティフィムリウム、M・ボビス株BCG、BCG亜株、M・アビウム、M・イントラセルラーレ、M・アフリカヌム、M・カンサシイ、M・マリヌム、M・ウルセランス、M・アビウム亜種パラツベルクローシス、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミデス、スタフィロコッカス・エクイ、スタフィロコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・アガラクティエ、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア・イバノビイ、バシラス・アンスラシス、B・サブチリス、ノカルジア・アステロイデス、アクチノミセス・イスラエリイ、プロピオニバクテリウム・アクネス、およびエンテロコッカス種などのグラム陽性菌、ならびにクロストリジウム・テタニ、クロストリジウム・パーフリンゲンス、クロストリジウム・ボツリナム、シュードモナス・エルジノーサ、ビブリオ・コレラエ、アクチノバチルス・プルロニューモニエ、パスツレラ・ヘモリティカ、パスツレラ・ムルトシダ、レジオネラ・ニューモフィラ、サルモネラ・ティフィ 、ブルセラ・アボルタス、クラミジア・トラコマチス、クラミジア・シッタシ、コクシエラ・バーネッティイ、エシェリキア・コリ、ナイセリア・メニンジティディス、ナイセリア・ゴノレア、ヘモフィルス・インフルエンゼ、ヘモフィルス・デュクレイー、エルシニア・ペスティス 、エルシニア・エンテロリティカ(enterolitica)、エシェリキア・コリ、E・ヒラエ、バークホルデリア・セパシア、バークホルデリア・シュードマレイ、フランシセラ・ツラレンシス、バクテロイデス・フラギリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、コウドリア・ルミナンティウムなどのグラム陰性菌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
したがって、代表例として、微生物細胞は、スタヒロコッカス、シュードモナス、レジオネラ、マイコバクテリウム、プロテウス、クレブシエラ、フゾバクテリウム属の細菌、または他の腸溶性もしくは大腸菌型細菌であってもよい。
【0061】
微生物細胞はまた、原生生物として分類され得るまたは分類されることのあった菌類、例えば、カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスティス、ペニシリウムおよびフザリウム属からの菌類であってもよいし、これら菌類からのものであってもよい。代表的な菌種としては、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・ドゥブリニエンシス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ヒストプラマ(Histoplama)・カプスラタム、アスペルギルス・フミガタス、コクシジオイデス・イミチス、パラコクシジオデス(Paracoccidiodes)・ブラジリエンシス、ブラストミセス・デルマティディス(dermitidis)、ニューモシスチス・カルニ(carnii)、ペニシリウム・マルネッフィ(marneffi)およびアルテルナリア・アルテルネート(alternate)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
微生物細胞はまた、原生生物として分類され得るまたは分類されることのあった藻類を含む藻類であってもよいし、これらからのものであってもよい。代表的な藻類種としては、ケトフォラ(Chaetophora)、クロレラ・プロトテコイデス(Chlorella protothecoides)、コレオケーテ・スクタータ(Coleochaete scutata)、コレオケーテ・ソルータ(Coleochaete soluta)、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon merolae)、アファノカエテ(Aphanochaete)、グロエオテニウム(Gloeotaenium)、サヤミドロ(Oedogonium)、オーキスティス(Oocystis)、ユレモ(Oscillatoria)、パラドキシア・マルチシチア(Paradoxia multisitia)、フォルミディウム(Phormidium)、クロオコッカス(Chroococcus)、アファノテーケ(Aphanothece)、オビケイソウ(Fragillaria)、コッコニス(Cocconis)、ナビクラ(Navicula)、キンベラ(Cymbella)、海洋性珪藻類(Phaeodactylum)ならびにシアノバクテリア(藍藻)およびニッチア・パレア(Nitzschia paleaなどの珪藻が挙げられる。
【0063】
微生物細胞はまた、原虫類、例えば、アメーバ、胞子虫、繊毛虫、および鞭毛虫群のメンバーであってもよい。代表的な原虫類としては、トキソプラズマ種、例えば、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii))、プラスモジウム種、例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、トリパノゾーマ種、例えば、トリパノゾーマ・ブルーセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノゾーマ・クルーズ(Trypanosoma cruzi))、リーシュマニア種、例えば、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major))、エントアメーバ種、例えば、エントアメーバ・ヒストリチア(Entamoeba histolytica)が挙げられる。
【0064】
好ましくは、微生物細胞は、次の属から選ばれる:シトロバクター、エンテロバクター、エシェリキア、ハフニア、セラチア、エルシニア、ペプトストレプトコッカス、バクテロイデス(Bacteriodes)、シュードモナス、レジオネラ、スタヒロコッカス、エンテロコッカス、ストレプトコッカス、クレブシエラ、カンジダ、プロテウス、バークホルデリア、フゾバクテリウムおよびマイコバクテリウム、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミデス、レジオネラ・ニューモフィラ、カンジダ・アルビカンス、シュードモナス・エルジノーサ、バークホルデリア・セパシアおよびスタフィロコッカス・ピオゲネス。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、本発明のオリゴペプチド化合物に関して、上に規定のペプチドをコードする核酸分子を提供する
(すなわち、
(i)配列番号1もしくは40のアミノ酸配列の全部または一部;あるいは
(ii)配列番号1もしくは40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;あるいは
(iii)配列番号1の逆配列の全部もしくは一部(すなわち配列番号2もしくは41の全部または一部)であるか、または配列番号1もしくは40に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列の逆配列であるアミノ酸配列、を有するかまたは含むペプチド)。また、このような核酸分子の補体も提供される。好ましい実施形態では、核酸分子はまた、上に規定の細胞透過性ペプチドをコードする。
【0066】
本発明の核酸分子は、好ましくは少なくともヌクレオチド30個、好ましくはヌクレオチド800個以下、より好ましくは700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150または50個以下含む。核酸分子は、好ましくは単離された分子である。
【0067】
さらなる態様は、本明細書で規定の核酸分子を含むベクターに関する。ベクターはまた、例えば、複製開始点、抗生物質耐性などの選択マーカー、および/または多重クローニング部位などのベクターで典型的に見られる要素をさらに含んでもよい。ベクターは、さらに発現ベクターであってもよく、核酸分子の発現のためのさらなる要素、例えば、転写制御および/もしくは翻訳制御または調節要素を含んでもよい。このような制御要素、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、ターミネーターなどは周知であり、当技術分野で広く記載されている。
【0068】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスであってもよく、好ましくは、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノウイルス関連ウイルスから選ばれる。
【0069】
別の態様では、上記の核酸分子および/またはベクターを含む組換え宿主細胞が提供される。宿主細胞は、動物細胞、例えば、哺乳類細胞、例えば、ラット、ネズミまたはヒトの細胞であってもよく、あるいは微生物細胞、例えば、細菌細胞であってもよい。
【0070】
「組換え」によって、核酸分子および/またはベクターが宿主細胞へ導入されていることを意味する。
【0071】
さらなる態様では、本明細書に規定のオリゴペプチド化合物、本明細書に規定の核酸分子および/または本明細書に規定のベクターを、薬理学的に(または薬学的に)許容される賦形剤と共に含む医薬組成物が提供される。
【0072】
賦形剤は、例えば、任意の担体もしくは希釈剤または他の任意の成分もしくは薬剤(例えば、緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤、香料、着色剤、流動促進剤、滑沢剤、防腐剤、吸着剤および/または甘味剤など)などの当技術分野で公知のあらゆる賦形剤も含む。
【0073】
賦形剤は、例えば、乳酸、デキストロース、二亜硫酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、微結晶性セルロース、ラクトース、デンプン、キトサン、αデンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート、デキストリン、デキストロース、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、バクガデキストリン、マンニトール、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトールおよび/またはタルクから選ばれてもよい。
【0074】
オリゴペプチド化合物はしたがって、オリゴペプチド化合物が治療するもしくは予防することが望まれる、および/またはオリゴペプチド化合物が達成することが望まれる効果、治療を受けている患者などに応じて、異なる経路で送達されてもよい。したがって、例えば、送達経路または投与様式は、全身的なまたは局所的な効果を提供するように選ばれてもよい。したがって、例えば、オリゴペプチド化合物は、例えば、経口または非経口の投与経路を介して全身に送達され得るように被験者に投与されてもよい。あるいは、場合によって好ましくは、オリゴペプチド化合物は、感染または癌の部位に局所的に、例えば、腫瘍に局所的に送達されてもよいし投与されてもよい。したがって、例えば、オリゴペプチド化合物は、もちろん癌(腫瘍)の部位に依存することになるが、例えば、注射もしくは点滴または吸入により、局所的に、すなわち直接的な投与により、癌(例えば、腫瘍)の部位に送達されてもよい。局所投与は、癌の治療において好ましい。
【0075】
医薬組成物は、当技術分野において公知の任意の形態、例えば、錠剤、カプセル剤、被覆錠剤、液剤、懸濁剤、タブ、小袋、インプラント、吸入剤、散剤、丸薬、乳剤、凍結乾燥物、発泡剤、スプレー剤、軟膏、乳剤、鎮静剤、硬膏剤またはこれらの任意の混合物として提供されてもよい。医薬組成物は、耐胃液製剤としておよび/または持続性の作用形態で提供されてもよい。医薬組成物は、経口、非経口、局所、直腸、生殖器、皮下、経尿道、経皮、鼻腔内、腹腔内、筋肉内および/または静脈内投与ならびに/あるいは吸入による投与に適切な形態であってもよい。
【0076】
医薬組成物は、リポソーム投与に適切な形態であることができ、したがって、医薬組成物を含むリポソームを提供することができる。リポソームを使用する場合、賦形剤をさらに含む必要はなく、したがって、本明細書に規定のオリゴペプチド化合物、本明細書に規定の核酸分子および/または本明細書に規定のベクターを含むリポソームも提供される。
【0077】
本発明のさらなる態様は、癌および/または微生物感染、特に細菌感染と闘う方法を提供し、当該方法は、本明細書に規定のオリゴペプチド化合物または本明細書に規定の核酸分子を、それを必要とする被験者に投与すること(特にその有効量を投与すること)を含む。
【0078】
別の態様では、治療において使用する、特に、癌および/または微生物感染、特に細菌感染と闘う際に使用する、本明細書に規定のオリゴペプチド化合物または本明細書に規定の核酸分子が提供される。
【0079】
別の態様では、癌および/または微生物感染、特に細菌感染と闘う際に使用される薬剤の製造における、本明細書に規定のオリゴペプチド化合物または本明細書に規定の核酸分子の使用が提供される。
【0080】
本明細書では「闘う」なる語は、治療的処置および予防の両方を含む。より具体的には、したがって、本発明は、例えば腫瘍の治療における癌の治療のためおよび/または微生物感染、特に細菌感染と闘うための方法および使用を提供する。
【0081】
本発明によるオリゴペプチド化合物(コンストラクトを含む)は、したがって、癌および/または微生物感染の処置または管理における治療的有用性を有する。したがって、抗癌剤、より具体的には抗腫瘍剤、および/または抗微生物剤、より具体的には抗菌剤として使用されてもよい。
【0082】
オリゴペプチド化合物は、したがって、本発明の化合物の細胞毒性から恩恵を受けるあらゆる病気(本明細書では、あらゆる疾患もしくは障害もまたはあらゆる臨床上の状態も含むように広く使用される)の治療にも使用されてもよい。オリゴペプチド化合物は、したがって、細胞、特に癌細胞、例えば腫瘍細胞、および/または微生物、特に細菌、を標的とするあらゆる処置(または治療)にも有用性がある。
【0083】
本明細書では「治療」なる語は、臨床病態の管理において有益なあらゆる効果または工程(または介入)も広く意味する。治療は、治療前の病気または症状と比べて、治療されている病気またはその1以上の症状の発症を減少する、緩和する、改善する、遅延すること、除去すること、あるいはどのようにであれ被験者の臨床状態を向上することを含んでもよい。治療は、治療プログラムまたはレジメンに寄与するか、その一部分であるあらゆる臨床工程または介入を含んでもよい。
【0084】
「予防(prevention)」または「予防(prophylaxis)」は、例えば、化合物の投与前の病気または症状と比べて、病気の発症、またはその1以上の症状を遅延する、制限する、減少する、または予防することを含んでもよい。予防とは、したがって、病気もしくはその症状の発生または発症の完全な予防、およびその病気もしくは症状の発現または発症のあらゆる遅延の両方、あるいはその病気もしくは症状の発症または進行の減少や制限を明示的に含む。
【0085】
本発明による治療は、したがって、細胞の成長、または細胞体または細胞集団の大きさの増加(例えば、組織、腫瘍または成長における)を止める、阻害するまたは遅延すること、細胞数を減少させることまたは細胞の拡大(例えば、別の解剖学的部位への)を防ぐこと、細胞成長の大きさを減少させることなどを含む。「治療」なる語は、治癒や、細胞成長すなわち細胞の成長の完全な停止または除去を暗示するものではない。
【0086】
例えば固形腫瘍および血液の癌を含む、すべての種類の癌の治療が包含される。したがって、「癌」なる語は、本明細書では、悪性、前悪性または良性の腫瘍形成疾患をすべて含むように広く使用される。代表的な癌の種類としては、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、消化器癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍(例えば、星状細胞腫、膠芽細胞腫、髄芽細胞腫)、神経芽細胞腫、肉腫、結腸癌、直腸癌、胃癌、肛門癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、プラズマ細胞腫、リンパ腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、黒色腫および他の皮膚癌が挙げられる。
【0087】
また、鼻腔腫瘍、尿道および生殖・泌尿器癌、食道癌、骨髄腫、内分泌癌、骨肉腫、血管肉腫および繊維肉腫、ならびに神経膠腫および神経芽腫を含む悪性や良性の末梢または中枢神経系のあらゆる腫瘍も挙げられる。
【0088】
特に対象となる癌としては、脳、肺、乳房および結腸の癌ならびに黒色腫が挙げられる。
【0089】
下記実施例に示すように、本発明の化合物は、癌細胞もしくは腫瘍に対しておよび/または微生物細胞、特に細菌に対して細胞毒性を有し得る。
【0090】
より具体的には、当該化合物は、癌細胞を選択的に標的化することができ得る。言いかえれば、本発明の化合物は、癌細胞に対して選択性があり、したがって、正常な(非癌)細胞に対して影響がないまたは影響が最小限であり得る。このように、有利には、非癌細胞に対する望ましくない細胞毒性を回避し得る。したがって、本発明の化合物は、好ましくは、癌細胞に対して選択性を示す。このような細胞は、固形腫瘍内に存在し得るし、転移細胞であり得る。本発明の化合物は、好ましくは、非癌細胞に対して細胞毒性を示さない。
【0091】
さらに癌治療の文脈では、本発明の化合物は、好ましくは、例えば実験動物モデルにおいて(例えば、腫瘍が誘導された動物、または腫瘍もしくは腫瘍細胞が導入された動物において)評価される生存率の向上または生存期間の延長に効果がある。このような動物モデルは、下記実施例に記載されている。さらに、当該化合物は、好ましくは、例えば、上に記載の動物モデルにおいて、腫瘍成長を阻害する(例えば、腫瘍を除去する、腫瘍の大きさを減少させる、または腫瘍の成長を停止させるもしくは減少させる)のに効果がある。それに代わってまたはそれに加えて、当該化合物はまた、好ましくは、腫瘍の拡大すなわち腫瘍の転移能を予防するまたは減少させるのに効果がある。また、これは、上に記載の動物モデルにおいて評価され得る。
【0092】
本発明の化合物は、癌細胞の溶解および/またはアポトーシスを引き起こし得る。下記実施例は、本発明による化合物が様々な細胞型に適用された場合に、溶解効果およびアポトーシス効果の両方が観察されることを示す。したがって、本発明の化合物は、癌(腫瘍)細胞の溶解を引き起こし得る。溶解は、細胞膜の崩壊の結果として生じ、これは細胞死をもたらす。細胞溶解を判断する方法は、当業者に公知である。下記実施例は、これをどのように行うことができるかを示す。
【0093】
それに代わってまたはそれに加えて、本発明の化合物は、癌細胞のアポトーシスを引き起こし得る。アポトーシスは、多細胞生物で起こり得るプログラム細胞死(PCD)のプロセスである。プログラム細胞死は、小疱形成、膜非対称性および付着の喪失などの細胞膜の変化、細胞収縮、核断片化、クロマチン凝縮、および染色体DNA断片化を含む、特徴的な細胞形態および死をもたらす一連の生化学的事象を伴う。細胞がアポトーシスを行っているかまたは行ったかどうかを判断する実験は、当技術分野で周知である(下記実施例を参照)。本発明の化合物は、癌細胞に対して溶解性および/またはアポトーシス性、好ましくはその両方であり得る。
【0094】
本発明の好ましい態様では、本発明のオリゴペプチド化合物は、細菌に対して細胞毒性、すなわち殺菌性である。本発明の化合物による様々な種類の細菌の溶解は、実施例において示されている。本発明の化合物は、上に記載の微生物をすべて含むあらゆる微生物、好ましくは上に記載の細菌をすべて含む細菌による感染の治療または予防において使用され得る。特に、感染は、病原菌感染であってもよい。シトロバクター、エンテロバクター、エシェリキア、ハフニア、セラチア、エルシニア、ペプトストレプトコッカス、バクテロイデス(Bacteriodes)、シュードモナス、レジオネラ、スタヒロコッカス、エンテロコッカス、ストレプトコッカス、クレブシエラ、カンジダ、プロテウス、バークホルデリア、フゾバクテリウムおよびマイコバクテリウム、例えば、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミデス、レジオネラ・ニューモフィラ、カンジダ・アルビカンス、シュードモナス・エルジノーサ、バークホルデリア・セパシアおよびスタフィロコッカス・ピオゲネスによる感染が特に記載される。
【0095】
感染は、急性または慢性(例えば、少なくとも5日間または少なくとも10日間、特に、少なくとも20日間、より具体的には少なくとも30日間、最も具体的には少なくとも40日持続した感染)であってもよい。
【0096】
1つの実施形態では、本発明のこの態様は、感染を発症するリスクにあるかまたは既存の感染を治療することから恩恵をうける候補である被験者を診断する工程を含んでもよい。
【0097】
敗血症(septicaemia)、敗血症性ショック、敗血症(sepsis)、髄膜炎または微生物毒素(例えば、コレラ毒素、ボツリヌス毒素)による中毒の治療、ならびにより局所的(例えば、特定の部位、組織または臓器)な感染の治療が挙げられる。
【0098】
感染は、あらゆる被験者でも起こり得るが、ある被験者は、他の被験者よりも感染しやすい。感染しやすい被験者としては、上皮および/または内皮バリアが弱まったあるいは不全である被験者、微生物感染に対する分泌に基づいた防御が停止した、破壊された、弱まったまたは低下した被験者、ならびに免疫障害であるか、免疫不全であるか免疫抑制された被験者(つまり、疾患もしくは臨床介入または他の治療によるかあるいは理由はどうであれ、免疫系の任意の部分が正常に働いていないか、正常以下で働いている被験者、言いかえれば、免疫反応の任意の部分または免疫活性が減少したか損なわれた被験者)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
感染しやすい被験者の代表例としては、すでに罹患している感染(例えば、細菌、ウイルス、菌類、または原虫類などの寄生生物による)を有する被験者、特にHIVを有する被験者、敗血症を有する被験者および敗血症性ショックを有する被験者;免疫不全を有する被験者、例えば、化学療法および/または放射線治療の準備をしている、それを受けているあるいはそれから回復途中の被験者、臓器(例えば、骨髄、肝臓、肺、心臓、心臓弁、腎臓など)移植被験者(自己移植、同種移植、および異種移植患者を含む)、AIDSを有する被験者;医療機関、例えば病院、に入院している患者、特に集中治療または救急治療(つまり、患者に対して生命維持または臓器維持システムを提供する施設)にいる被験者;外傷のある被験者;熱傷を有する被験者、急性および/または慢性の創傷を有する被験者;新生児被験者;高齢被験者;癌を有する被験者、特に、免疫系癌(例えば、白血病、リンパ腫および他の血液癌)を有する被験者;関節リウマチ、一型糖尿病、クローン病などの自己免疫疾患のある被験者、特に、これらの疾患に対する免疫抑制治療を受けている被験者;上皮もしくは内皮分泌(例えば、粘液、涙、唾液)および/または分泌物排出が低下したか停止した被験者(例えば、粘膜組織の繊毛の機能が不十分な被験者)、ならびに/あるいは粘液の粘性が非常に高い患者(例えば、喫煙者および、COPD、気管支炎、嚢胞性線維症、肺気腫、肺癌、喘息、肺炎、または副鼻腔炎を有する被験者)、ならびに医療器具が取り付けられた被験者が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
したがって、本発明にしたがって感染と特に闘い得る被験者としては、灌流不足、外傷の反復、栄養不足、酸素負荷不足または白血球不全によるかどうかにかかわらず、障害を有する患者が挙げられる。
【0101】
特に記載すべきは、身的外傷を受けた被験者である。外傷はそれ自体、被験者の上皮および/または内皮バリアの弱体化または不全を引き起こし得るか、あるいは被験者は、外傷に応答して(ショック応答)免疫不全になり得る。「外傷」なる語は、異物および/または細胞の物理的損傷による細胞攻撃を広く意味する。異物に含まれるものとしては、微生物、粒子状物質、化学物質などが挙げられる。物理的損傷に含まれるものとしては、機械的損傷;熱損傷、例えば、過度の熱または冷気の結果としての熱損傷;電気損傷、例えば、電位源との接触を原因とする電気損傷;ならびに、例えば、赤外線、紫外線または電離放射線に長時間広範に暴露されることによる放射線損傷が挙げられる。
【0102】
また、特に記載すべきは、火傷を有する被験者である。あらゆる火傷(特に激しい火傷)も、被験者の上皮および/または内皮バリアの完全性に対して大きな影響を及ぼし、被験者はしばしば火傷に応答して(ショック応答)免疫不全に陥る。
【0103】
火傷の原因となる典型的な作用因子は、極端な温度(例えば、極端な温度の火、液体、気体)、電気、腐蝕性薬品、摩擦、および放射線である。作用因子の激しさ/強さと共に、暴露の程度および長さが、様々な程度の火傷の原因となる。湯はぎ(つまり、高温液体および/または気体に伴う外傷)は、火傷と考えられる。
【0104】
急性か慢性かにかかわらず、本発明はまた、創傷の感染の治療または予防に使用され得る。急性創傷は、長期化することなく、認識されている3段階(つまり、炎症段階、成長段階および組織修復期)の治癒プロセスが整然と進行する創傷である。しかしながら、慢性創傷は、創傷が治癒段階の1つで停滞するので、治癒プロセスの整然とした一連の生化学的事象が完了しない創傷である。一般に、慢性創傷は、炎症段階で停滞する。慢性創傷は、少なくとも40日、特に少なくとも50日、より具体的には少なくとも60日、最も具体的には少なくとも70日以内に治癒しない創傷として規定してもよい。創傷は、上皮バリアの欠如ならびに微生物の付着やコロニー形成のための基質および表面の利用しやすさのために、感染症、特に慢性感染症にとって理想的な環境である。難しいことに、創傷の感染はしばしば治癒をさらに遅らせ、これは、創傷を既存の感染症に罹患しやすくさせる。
【0105】
上記化合物は、したがって、体内または体表上に発生する感染を治療するために使用され得る。したがって、別の実施形態では、感染は、医療器具、特に体内に入れた医療器具の感染であってもよい。
【0106】
上記化合物は、口腔保健剤として本発明にしたがって使用されてもよい(例えば歯垢の制御において、例えば、歯垢中の微生物を死滅させるかまたは当該微生物の複製や成長を阻害することにより、歯垢を減少させるかまたは歯垢の成長を予防するか、減少させるか、もしくは遅延させるため)。アルギン酸オリゴマーも、口腔内で起こり得る感染症すなわち感染性疾患、例えば、歯肉炎、歯周炎の治療および予防に使用され得る。
【0107】
本発明の化合物は、例えば、感染もしくは汚染(例えば、病原菌による)を予防するまたは少なくともそのリスクを最小限に抑えるために、予防的治療として使用することができる。これは、院内感染(病院感染または医療関連感染として一般に知られる)例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、シュードモナス・エルジノーサ、アシネトバクター・バウマンニイ、ステノトロホモナス・マルトフィリア、クロストリジウム・ディフィシル、マイコバクテリウム・ツベルクローシスおよびバンコマイシン耐性エンテロコッカス(腸球菌)にかかるリスクを本明細書に規定の化合物の予防的レジームで最小限に抑えることができるので、入院患者の治療に有用であり得る。本発明のこの態様はまた、外傷を有する被験者、火傷を有する被験者、および創傷を有する被験者(これら被験者はすべて、上に記載のように、同様の影響を受けない被験者よりも微生物感染を罹患しやすい)の治療に特に有用である。
【0108】
「薬学的に有効な」量のオリゴペプチド化合物は、標的細胞に対して測定可能な効果(例えば、細胞毒性または細胞成長抑制効果)および/または標的とする症状に対して測定可能な効果をもたらす量である。好ましくは、直接的に細胞を死滅させるかまたはその成長を阻害するのに十分な量である。この量は、投与量を決定するための標準的技法に関連して決定することができ、当業者であれば、経験からそして利用可能な通常の試験を活用して、うまくいった治療の根拠を見出すことができるであろう。
【0109】
被験者は、ヒトまたはヒト以外のあらゆる動物被験体であってもよいが、より具体的には脊椎動物、例えば、哺乳類、鳥類、両生類、魚類および爬虫類から選ばれる動物であってもよい。動物は、実験動物または動物園もしくは狩猟園にいる動物を含む、家畜あるいは飼いならした動物あるいは商品価値のある動物であってもよい。したがって、代表的な動物としては、犬、猫、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、鶏、七面鳥、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、オウム、セキセイインコ、ハト、サケ、マス、タラ、ハドック、スズキおよびコイが挙げられる。したがって、本発明の獣医学的使用が包含される。被験者は、患者と見なされてもよい。好ましくは、被験者は、ヒトである。
【0110】
上に記載のように、化合物の抗微生物効果の点から、本発明は、医療用の使用(つまり、感染の治療または予防)に限定されず、非医療用の使用、例えば、微生物汚染またはコロニー化(例えば、無生物材料の部位または場所にて、またはその中で、またはその表面上で)と、例えば、消毒または清掃目的で闘うことも包含される。
【0111】
したがって、より一般的には、本発明は、微生物細胞(言い換えれば微生物)の生存能力および/または成長の阻害方法を含み、当該方法は、細胞(または微生物)を上に規定するオリゴペプチド化合物と接触させることを含む。特に、当該方法はインビトロ法である。したがって、この態様は、無生物材料の部位での、微生物の生存能力および/または成長を阻害するあるいは微生物汚染またはコロニー化と闘う治療方法とも見なされ得、当該方法は、当該部位を上に規定のオリゴペプチド化合物と接触させることを含む。この文脈で使用される「闘う」とは、微生物汚染またはコロニー化を阻害する(つまり、減少させるまたは予防する)こと、ならびに既存の汚染またはコロニー化を処理することを含む。
【0112】
「接触させる」なる語は、直接的か間接的かにかかわらず、化合物を微生物または部位に送達するあらゆる手段、したがって、化合物を微生物または部位に適用するあるいは微生物または部位を化合物に暴露する、例えば、化合物を微生物または部位に直接適用するあらゆる手段も包含する。
【0113】
より具体的には、微生物または部位は、有効量のアルギン酸化合物と、より具体的には、微生物の生存能力を直接阻害する(例えば、死滅させる)または微生物の成長を直接阻害するのに有効な量の化合物と接触されることになる。
【0114】
微生物の部位または場所は限定されない。微生物は、表面に存在してもよい。部位は限定されず、微生物が発生する可能性のあるまたは微生物の接触もしくは汚染に暴露される可能性のあるあらゆる部位も含まれる。したがって、特に含まれるのは、機械、特に工業用機械、または医療器具(表面上の部位)あるいは水生環境に暴露されるあらゆる部位(例えば、海洋設備、または船またはボートまたはこれらの部品もしくは構成部分)あるいは環境のあらゆる部分に暴露されるあらゆる部位、例えば、パイプ、または建物上の部位である。微生物の接触または汚染に暴露されるこのような無生物材料の部位としては、特に、次のあらゆる部分が挙げられる:食品や飲料の加工、製造、保存もしくは調合機械または設備、エアコン、工業用機械(例えば、化学もしくはバイオテクノロジー処理工場における)、貯蔵タンク、医療もしくは手術用機器、ならびに細胞および組織培養設備。物質を保持するか輸送するか送達するあらゆる装置または設備も、微生物汚染の影響を受けやすい。このような表面としては、特に、パイプ(この用語は、本明細書ではあらゆる導管やラインも含むように広く使用される)が挙げられる。代表的な無生物材料すなわち非生物材料の表面としては、食品加工、保存、調合もしくは製造設備または表面、タンク、コンベヤー、床、排水管、クーラー、フリーザー、設備表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、空調用配管、冷却装置、食品もしくは飲料分配管、熱交換器、船殻または水に暴露されるボートの構造のあらゆる部分、歯科用の水道管、原油採掘管、コンタクトレンズおよび保存容器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
上に記載のように、医療または手術用の機器や装置は、微生物汚染が生じ得る特定のクラスの表面を代表している。これは、カテーテル(例えば、中心静脈および尿道カテーテル)、人工器官、例えば、心臓弁、人工関節、入れ歯、歯冠、デンタルキャップおよび軟組織移植片(例えば、乳房、尻および唇移植片)を含むあらゆる種類のラインを含み得る。あらゆる種類の移植可能(すなわち「体内に入れる」)医療器具が含まれる(例えば、ステント、子宮内避妊器具、ペースメーカー、挿管チューブ、義肢または人工器官、ラインまたはカテーテル)。「体内に入れる」医療器具としては、そのいずれかの部分が体内に含まれる装置を挙げることができ、つまり、装置は、全体的にまたは部分的に体内に入っていてもよい。
【0116】
上記部位は、食品、例えば、牛肉、鳥肉、豚肉、野菜、果物、魚、甲殻類、これらの組み合わせなど、個人衛生用品、洗面用品、化粧品など;化学製品または工業製品、試薬;臨床、科学または工場廃棄物などであり得る。したがって、上記化合物は、物質、特に液体および溶液における、防腐剤または汚染除去剤として使用されてもよい。
【0117】
本発明の特定の有利な実施形態では、上記化合物は、第2のまたはさらなる抗微生物剤(以下、「さらなる抗微生物剤」という)と共にまたは組み合わせて使用されてもよい。
【0118】
医療用の使用の文脈では、このような抗微生物剤は、あらゆる臨床的に有用な抗微生物剤、特に抗生物質または抗ウイルスもしくは抗真菌剤であってもよい。非臨床用の使用の文脈では、抗微生物剤はまた、このような目的に使用されるあらゆる抗微生物剤、例えば、あらゆる殺菌剤または防腐剤または洗浄剤または殺菌剤であってもよい。上記薬剤は、別々にまたは同一の組成物中で一緒に、同時にもしくは順次にもしくは順番に、例えば、あらゆる所望の時間間隔で使用されてもよい。
【0119】
抗微生物剤の選択は、もちろん関連する治療または使用に適切である必要があるが、例えば、抗微生物剤、例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤は、放射線(例えば、UV、X線、ガンマ)などの殺菌条件、極端な温度、および極端なpHで使用され得る。
【0120】
上記さらなる抗微生物剤は、都合良くは、上記化合物の前に、同時に、または後に使用されてもよい。都合良くは、上記さらなる抗微生物剤は、上記化合物と実質的に同時にまたは後に適用される。上記さらなる抗微生物剤の抗微生物効果を至適化するため、使用される薬剤に適切な時点で繰り返し与える(例えば、投与するかまたは送達する)ことができる。当業者であれば、適切な用量または使用レジメンを考案することができる。長期の治療では、上記化合物はまた、繰り返して使用することができる。必要な頻度は、微生物、部位、疾患、有用性、組成および使用する抗微生物剤などによるが、当業者であれば、最良の結果を得るために用量または使用パターンを至適化することができる。
【0121】
同様に、本明細書に記載の癌治療の文脈では、本発明の化合物は、他の抗癌剤、例えば、化学療法剤または抗腫瘍剤または腫瘍学的もしくは血液学的適応症に関して示されたあらゆる薬剤と組み合わせてすなわち一緒に使用してもよい。
【0122】
したがって、本発明の化合物は、例えば、単一の医薬製剤または組成物中で一緒に投与するため、または別々に(つまり別々、順次または同時の投与のため)他の治療剤と組み合わせて使用されてもよい。したがって、本発明の化合物は、例えば、製剤学的キット中で、または組み合わせ(「併用」)剤として、第2の(またはさらなる)治療上活性のある薬剤と組み合わせてもよい。
【0123】
したがって、本発明のさらなる態様は、本明細書で規定のオリゴペプチド化合物または核酸分子と、第2の活性物質(例えば、抗癌剤または抗微生物剤)とを、癌細胞もしくは微生物細胞の生存能力および/または成長の阻害する際に、より具体的には、癌を治療するまたは微生物感染や部位の微生物汚染もしくはコロニー化と闘う際に、または実際には本明細書に記載するまたは既定するあらゆる使用において、別々、同時または順次に使用(例えば、微生物や部位への使用および/または被験者への投与)するための併用製剤として含む製品を提供する。
【0124】
当業者であれば、細胞にオリゴペプチド化合物または核酸分子を導入する適切な方法が十分に分かっているであろう。例として、適切な方法のいくつかを下記に簡単に記載する。上に詳細に記載のように、ペプチド(特に細胞透過性ペプチド(CPP)(これは、上に記載のように、短く、場合によってはポリカチオン性の配列であり、例えば、哺乳類細胞のエンドソームへの取り込みを向上させることにより、CPPを含むまたはCPPが結合しているペプチド、タンパク質またはヌクレオチド分子の細胞取り込みを促進することができる))を介した送達方法を使用してもよい。マイクロカプセル化は、生物活性物質を保護し、制御された様式で封止物質またはその産物を放出させる目的で、半透過性ポリマー膜内に生物活性物質を封止する簡単で費用効率の高い方法を提供する。光化学インターナリゼーション(PCI)では、対象の分子および感光化合物の両方がリゾソームまたはエンドソーム中へ細胞により取り込まれる。次いで、細胞は、感光化合物を活性化させるために適切な波長の光に暴露され、感光化合物がリゾソームまたはエンドソームの膜を破壊し、これにより細胞のサイトゾルに対象の分子が放出される。
【0125】
他の方法としては、マイクロインジェクション、赤血球ゴーストを介した融合、リポソーム融合、ピノソームの浸透圧溶解、スクレイプローディング(scrape loading)、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムおよびウイルスを介したトランスフェクション、ならびにコポリマー担体の使用が挙げられる。
【0126】
キトサンおよび水溶性キトサン誘導体、特にグリコールキトサンが、インビボでの生体適合性および生分解性のために薬物担体として選択されてきている。好ましい例としては、5β−コラン酸で疎水性に修飾されたグリコールキトサンである。
【0127】
本発明の「オリゴペプチド化合物」は、1個以上、例えば、少なくとも1、2、3、4または5個のアミノ酸を組み込んでいてもよく、これらアミノ酸は、標準的な遺伝情報によりコードされない側鎖を有し、本明細書では「非コード化アミノ酸」と呼ぶ。これらは、オルニチンまたはタウリンなどの代謝プロセスを介して形成されるアミノ酸、および/または9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(Fmoc)、(tert)―ブトキシカルボニル(Boc)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)保護アミノ酸などの人工的に修飾したアミノ酸、またはベンジルオキシ−カルボニル(Z)基を有するアミノ酸から選ばれてもよい。
【0128】
本発明のオリゴペプチド化合物のインビトロおよび/またはインビボでの安定性を、例えば、保護もしくは安定化基の付加、アミノ酸誘導体もしくはアナログの組み込み、またはアミノ酸の化学修飾などの、当技術分野で公知の安定化または保護手段の使用により改善するかまたは向上してもよい。このような保護または安定化基は、例えば、Nおよび/またはC末端に付加されてもよい。このような基の例はアセチル基であり、他の保護基やペプチドを安定化させる基は当技術分野において公知である。
【0129】
下記実施例は、D−アミノ酸を含むように修飾されたおよび/または配列番号1の逆配列が使用された本発明の修飾オリゴペプチド化合物が、本発明の抗癌活性および/または抗微生物活性を保持し得ることを示す。
【0130】
したがって、1つの実施形態では、本発明のオリゴペプチド化合物は、L−配置を有するアミノ酸のみを含むが、さらなる実施形態では、D配置を有する1個以上のアミノ酸が存在する。オリゴペプチド化合物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のD−アミノ酸を含んでいてもよい。好ましくは、オリゴペプチド化合物は、すべてD−アミノ酸を含む。したがって、本発明のオリゴペプチド化合物のインベルソオリゴペプチド化合物またはインベルソアナログが特に含まれる(より具体的にはインベルソペプチド)。
【0131】
上に具体的に示すように、残基(例えば、アミノ酸残基)が親化合物または対照化合物(例えば、ペプチド)に対して逆方向に構築された「レトロ」オリゴペプチド化合物(またはレトロペプチド)も含まれる。したがって、例えば、配列番号1または配列番号40の配列が逆になった化合物が含まれる。当該逆配列は、配列番号2および41にそれぞれ示されている。
【0132】
レトロ−インベルソオリゴペプチド化合物は、親化合物または対照化合物に対して逆(反対)の順番でD−アミノ酸を含む。レトロ−インベルソアナログは、したがって、親化合物または対照化合物における側鎖のトポロジーをほぼ維持している一方で、末端が逆および例えばペプチド結合の順番が逆である。
【0133】
本発明の化合物は、部分的なインベルソ、レトロまたはレトロ−インベルソ配列を含んでもよい。好ましい実施形態では、化合物はインベルソであり、さらなる好ましい実施形態では、配列が、EIYRKYIAKAVRLTK(配列番号2)であるかまたはこれを含む。さらなる好ましい実施形態では、化合物はレトロ−インベルソ、つまり、配列番号2もしくは配列番号41の配列のD−アミノ酸からなるかまたはこれを含む。
【0134】
「オリゴペプチド化合物」により、アミノ酸または均等なサブユニット(ペプチド結合または同等な結合により繋がった)からなる化合物を意味する。したがって、「オリゴペプチド化合物」なる語は、ペプチドおよびペプチド模倣薬を含む。
【0135】
「均等なサブユニット」により、アミノ酸に構造的におよび機能的に類似のサブユニットを意味する。サブユニットの主鎖部分は、標準的なアミノ酸と異なってもよい、例えば、1個以上の炭素原子の代わりに1個以上の窒素原子を組み込んでいてもよい。
【0136】
「ペプチド模倣薬」により、ペプチドに機能的に均等または類似し、対応するペプチドと同様の三次元構造を有することができるが、ペプチド結合により結合したアミノ酸のみからなる化合物ではないことを意味する。好ましいクラスのペプチド模倣薬は、ペプトイド、つまりN−置換グリシンである。ペプトイドは、それに対応する天然のペプチドと近似しているが、側鎖がアミノ酸のようにα−炭素結合しているのではなく分子の主鎖に沿って窒素原子に結合している点で化学的に異なっている。
【0137】
ペプチド模倣薬は、典型的には、患者の体内における半減期がより長く、したがって、より長く持続する効果が望まれる実施形態で好ましい。これにより、組成物を再投与しなければならない頻度を減らす助けとなり得る。しかしながら、生物学的安全性の理由で、他の実施形態ではより短い半減期好ましく、そのような実施形態では、ペプチドが好ましい。
【0138】
最も好ましくは、オリゴペプチド化合物はペプチドである。オリゴペプチド化合物は、ジ−アミノ酸および/またはβ−アミノ酸を組み込んでいてもよい。最も好ましくは、オリゴペプチド化合物は、α−アミノ酸からなる。
【0139】
「オリゴ」という接頭語は、比較的少数のアミノ酸などのサブユニット、つまり200個未満、好ましくはサブユニット100、90、80、70、60または50個未満を指すために使用される。本発明のオリゴペプチド化合物は、したがって、少なくとも7個および200個以下のサブユニットを含み得る。好ましくは、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個のサブユニットを含む。別な規定をすると、50、45、40、35、30、29、28、27、26または25個以下のサブユニットを含む。代表的なサブユニット範囲としては、したがって、10〜40、10〜35、10〜30、10〜25、10〜20、10〜15、10〜12などが挙げられ、10〜20および10〜30が好ましい。他の代表的な範囲としては、15〜50、15〜45、15〜40、15〜35および15〜30、より具体的には、20〜50、20〜45、20〜40、20〜30、25〜50、25〜45、25〜40、25〜35、25〜32および25〜30が挙げられる。
【0140】
本発明のオリゴペプチド化合物は、配列番号1、2、40または41に示す配列と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよいしそれからなってもよい。
【0141】
配列同一性は、あらゆる簡便な方法で判定されてもよい。しかしながら、配列間の配列同一性の程度を測定するためには、例えば、Clustal W(Thompsonら、(1994)「Nucleic Acids Res.」22:4673〜4680)のように多重配列アライメントをするコンピュータプログラムが有用である。ALIGN(Myersら、(1988)「CABIOS」4:11〜17),FASTA(Pearsonら、(1988)「PNAS」85:2444〜2448;Pearson(1990)「Methods Enzymol」183:63〜98)およびgapped BLAST(Altschulら、(1997)「Nucleic Acids Res」25:3389〜3402)などの、対になる配列を比較しアライメントするプログラムもこの目的に有用である。さらに、European Bioinformatics InstituteのDaliサーバーは、構造に基づいたタンパク質配列のアライメントを提供する(Holm(1993)「J.Mol.Biol.」233:123〜38;Holm(1995)「Trends Biochem.Sci.」20:478〜480;Holm(1998)「Nucleic Acid Res.」26:316〜9)。
【0142】
多重配列アライメントおよびパーセント同一性計算は、標準BLASTパラメーターを使用して決定されてもよい(利用可能なすべての生物からの配列、matrix Blosum62、gap costs:existence11、extension1を使用して)。あるいは、下記プログラムおよびパラメーターを使用してもよい:プログラム:Align Plus4、version4.10(Sci Ed Central Clone Manager Professional Suite)。DNA比較:Global comparison、Standard Linear Scoring matrix、Mismatch penalty=2、Open gap penalty=4、Extend gap penalty=1。アミノ酸比較:Global comparison、BLOSUM62 Scoring matrix。
【0143】
したがって、バリアントオリゴペプチド化合物が親の機能活性を保持する、つまりバリアントが機能的に均等である、言いかえれば、バリアントが、本明細書に規定の親化合物の活性(例えば、癌細胞および/または微生物細胞の成長および/または生存能力に対する阻害効果、細胞毒性活性、抗腫瘍または抗菌活性など)を有するかまたは示す限り、記載または所与の配列のバリアントが本発明の範囲に含まれる。このようなバリアントは、親配列のアミノ酸、例えば、1個以上、例えば1〜6個のアミノ酸の置換、付加または欠失(一方または両方の末端の切断を含む)を含んでもよい。
【0144】
また、1個以上のアミノ酸が化学的に誘導体化された、例えば、化学基で置換された、機能的に均等な誘導体も含まれる。
【0145】
したがって、本発明のオリゴペプチド化合物は、必要な活性を保持するならば、配列番号1、2、40または41のフラグメントを含むことができる。配列番号1または2のフラグメントは、長さが例えば残基7〜14個、例えば、長さが残基12または13個分であってもよい。配列番号40または41のフラグメントは、長さが例えば残基13〜26個、例えば、長さが残基13、14、15、16または17〜26個分であってもよい。
【0146】
下記実施例に記載のように配列番号40のペプチドは、pH7.0における正味電荷が12であり、等電点(pI)が12.4と高い強カチオン性のペプチドである。本発明の化合物、したがって、その機能的に均等なバリアント(そのフラグメントを含む)は、類似の特性を有することが好ましい。言いかえれば、バリアント(フラグメントを含む)が親化合物の物理化学的特性を保持することが好ましい。このような特性は、特に、それらがカチオン性であるということを含む。配列番号40のペプチドは、αへリックス構造を有する。特定の実施形態では、本発明の化合物はαへリックス構造を有してもよいが、これは必須の特徴ではなく;他の実施形態では、化合物は、βシート構造を有してもよいし、別のまたは非規則的な構造、例えばコイル構造を有していてもよいし、当該化合物が、異なる構造のドメインを有する複合構造を有してもよい。
【0147】
好ましい代表的な実施形態では、本発明の化合物(機能的に均等なバリアントおよび配列番号1、2、40または41のフラグメントを含む)は、1つ以上を下記の特性を有してもよい:
pH7.0における正味電荷が10〜13、例えば11〜12.5;
pIが12〜13;
平均親水性度が0.7〜1.0、例えば0.8〜1.0;
親水性残基/残基の総数の比が45〜60%、例えば46〜58%、48〜58%または50〜56%。
【0148】
本発明のオリゴペプチド化合物は、より大きな単位の一部を形成してもよい、例えば、ポリペプチドに融合して組換え融合タンパク質を形成してもよいし、足場に付着してペプチドアプタマーを形成してもよい。したがって、本発明のオリゴペプチド化合物を組み込んだ融合タンパク質またはアプタマーは、本発明のさらなる態様をなす。さらなる態様としては、このような融合タンパク質またはアプタマーを含む医薬組成物、ならびに上に記載の処置または治療方法におけるこのような融合タンパク質またはアプタマーの使用が挙げられる。
【0149】
また、細胞または細胞培養物への、本明細書に規定のオリゴペプチド化合物、核酸分子および/またはベクターのインビトロ投与も意図される。このようなインビトロ法は、本発明の化合物の細胞毒性を研究するために使用されてもよい。
【0150】
本発明を、下記の図面を参照して、下記の非限定的な実施例においてさらに記載する。
【0151】
図1は、スクリーニングのために設計された96種類の合成ペプチドで24時間処理した後の細胞生存率に対する効果を示す。「ペプチド1」と識別される配列番号40のペプチドは、吸光度が最も低く、細胞生存率が最も低いことを示した(ペプチド1は、図1のグラフ上で最も短い棒の隣にある矢印により示されている)。
【0152】
図2は、96種類のペプチドのうちの3種類を20分間培養した後の細胞に対する光学顕微鏡観察法により測定される形態学的効果を示す。
【0153】
図3は、すべてがL−アミノ酸形態であるペプチド1(配列番号40)、逆配列ですべてがD−アミノ酸であるレトロ−インベルソ(ri)形態のペプチド1(配列番号41)、およびすべてがD−アミノ酸形態であるペプチド1(配列番号40)の単層培養における細胞に対する効果を示す。
【0154】
図4は、HFF1(ヒト包皮繊維芽細胞)、T986(神経芽腫)、GaMG(膠芽腫)およびA172(膠芽腫)に対する、異なるペプチド濃度で異なる時点で投与されたペプチド1のMTT分析結果を示す。HFF1細胞と比較して、腫瘍細胞株に対してより低い生存率が観察される。
【0155】
図5は、それぞれ、2.5〜30μg/mlのペプチドで処理された2種類の正常細胞株(142細胞およびHFF1細胞)ならびに2種類の癌細胞株(143癌細胞およびHOS肉腫細胞株)のLIVE/DEAD生存率測定からの結果を示す。正常細胞株と比較して、2種類の癌細胞株に対して強い細胞毒性作用が観察された。
【0156】
図6(A)は、ペプチド1で処理した後の細胞の高解像度走査電子顕微鏡画像を示し、(B)は、チオシアン酸フルオレセインで標識化したペプチドのN末端部分を示す。
【0157】
図7は、マウス中の4T1腫瘍へのペプチド1の局所注射が4T1腫瘍に強い成長抑制効果を誘導することを示す。
【0158】
図8は、4T1癌細胞を皮下注射した処理動物および未処理動物を比較する、カプラン・マイヤー生存実験の結果を示す。著しい腫瘍組織量に基づいて全身性疾患の兆候を示した時に動物を屠殺した。
【0159】
図9は、カプラン・マイヤー生存実験からの腫瘍の組織学的な分析結果を示す。
【0160】
図10は、脂質二重層に異なる組成のリン脂質を含んだ200nmのリポソームを示す。リポソームに蛍光色素を加え、ペプチド1(図10のペプチドX)で処理した後に色素流出を測定した。色素は、蛍光体ANTXおよび消光剤DPXを指し、色素放出は、界面活性剤(Triton x100)による完全な放出に対する%を指す。
【0161】
図11は、異なる時点での、膜破壊および細胞からのdsRedの放出を視覚化する経時共焦点顕微鏡観察を示す。白色の矢印は、膜破壊により引き起こされたdsRedの細胞質含有量の突然の減少を示す。
【0162】
図12は、観察された膜破壊効果の理論的説明を示す。
【0163】
図13は、3種類の菌株が、ペプチド1と共にまたは無しで2時間培養された場合の成長の結果を示す。
【0164】
図14は、ペプチド1のpH7.0での正味電荷が12であること;等電点が12.4であること;平均親水性度が1であること;および親水性残渣/残渣の総数の比が56%であることを示す。
【0165】
[実施例]
実施例1−96種類のペプチドの初期設計およびスクリーニングならびに癌細胞生存および形態に対する効果
[ペプチド設計および作成]
公知の腫瘍抑制因子(表2を参照)から可能性のある保存要素および活性部位を、サーチエンジンExpasyおよびSwissprotを使用して同定した。96種類のペプチドが同定された。細胞内送達のためTAT配列をN末端に付着した。ペプチドは、Cambridge Peptides(ケンブリッジ、英国)およびGenscript(ニュージャージー州、米国)で合成された。すべてアミノ化およびアセチル化されていた。合成されたペプチドを、1mg/mlの最終濃度まで水に溶解した。
【0166】
[細胞培養]
細胞株U87、MCF7、SF295、T47Dおよび4T1を、ノルウェーのベルゲン大学の腫瘍バンクから入手した。繊維芽細胞は、健康なドナーから入手した。細胞株はすべて、NEAA、100U/ml Pen/Strepおよび400M L−グルタミン(すべてCambrex(イーストラザフォード、ニュージャージー州、米国)から)を添加した10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(Sigma、セントルイス、ミズーリ州、米国)中で成長した。すべての実験で、1×104個の細胞を96ウェルプレートに分配した。
【0167】
[細胞生存]
同定した96種類のペプチドを24時間培養した後の神経膠腫細胞株u87の初期スクリーニングにおける細胞生存の結果を図1に示す。3種類のペプチドが、癌細胞の生存能力に対して著しい悪影響を有することを示した。これらのうち、ペプチド1(配列番号41)をさらなる研究のために選んだ。「ペプチド1」は、そのN末端側終端に配列番号36のHIV−TAT配列を有する配列番号1のペプチド配列に対応する。
【0168】
[細胞形態]
96種類のペプチドのうちの3種類を用いて20分間培養した後の細胞形態を、光学顕微鏡観察および経時共焦点顕微鏡観察により測定し、結果を図2に示す。結果は、細胞死を示す細胞過程の大規模な縮小および核濃縮細胞の出現を示す。
【0169】
[ペプチド安定化]
一般にペプチドに関する主な問題は、特に血清に存在するプロテアーゼにより、ペプチドがタンパク質分解にさらされることである。したがって、本発明者らは、L−アミノ酸をD−アミノ酸と置換することによりペプチドを安定させる方法を設計した。研究では、ペプチドが血清添加培地においてペプチドの効果を失わなかったことを示す。実際に、ペプチドはまた、トリプシンにおけるタンパク質分解には抵抗性があった。図3は、単層培養における置換ペプチドの有効性を示し、置換されたペプチドが元のペプチドよりもはるかに良く作用することを示す。
【0170】
[実施例2−癌細胞に対するペプチド1のインビトロ効果]
[細胞生存率(インビトロでの正常細胞と癌細胞株との比較)]
MTT細胞生存率アッセイ:
細胞分裂の測定に伝統的に放射性同位元素の組み込みを用いる研究では、MTT(チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド)を細胞成長の測定に使用する場合がある。MTTは、やや黄色の溶液で、生細胞のミトコンドリアデヒドロゲナーゼにより濃青色の不水溶性MTTフォルマザンに変換される。青い結晶は、酸性イソプロパノールで可溶化され、強度は、570nm波長で比色分析で測定される(メーカーの説明書にしたがってMTTアッセイのプロトコルを使用した)。MTT細胞生存率アッセイを使用して、正常ヒト包皮繊維芽細胞(HFF1)と、T986(神経芽腫細胞)、GaMG(膠芽腫)およびA172(膠芽腫)の3種類の癌細胞株とを比較した。20μg/mlの濃度では、90分間ペプチド1に暴露した後は、生存率は19〜43%であった。比較して、正常なHFF1細胞の生存率は58%であり、癌細胞に対するペプチドのより強い効果を示している(図4参照)。
【0171】
[Molecular Probes(live/deadキット)を使用した細胞生存率の比較]
LIVE/DEAD(登録商標)生存率/細胞毒性キットは、哺乳類細胞生存率を評価するため蛍光染料を用いる。カルセインAMおよびエチジウムホモダイマー−1(EthD−1)は、この目的に最も適した染料あることが分かっている。生細胞は、蛍光性の無いカルセインAMが蛍光性の強いカルセインに酵素変換されることにより測定される細胞内のエステラーゼ活性の存在により死細胞と区別される。ポリアニオン性染料であるカルセインは、強く均一な緑色蛍光を発生する生細胞の内部によく保持されている。EthD−1は、生細胞の無傷の細胞膜に排除されるが、損傷した細胞膜を有する細胞に入り、核酸と結合して、死細胞中で鮮やかな赤い蛍光を発する。live/deadキットの使用プロトコルは、メーカーにより提供される。
【0172】
ペプチド1の細胞毒性作用を定量するため、細胞20000個を、24ウェル多重ウェルプレートに配置した。48時間後、ペプチド1を0.1〜35μg/mlの範囲の濃度でウェルに加えた。1−3−6時間後、細胞生存率をMolecular Probes LIVE/DEADキットを使用して測定した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で簡単に洗浄し、そして10μM EthD−1および5μMカルセインをウェルに加えた。次いで、37℃で30分間細胞を組織培養インキュベータ中で培養した。
【0173】
次いで、FITC(緑色蛍光)およびTRITC(赤色蛍光)光学フィルターを装着した倒立型蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse 2000E、東京、日本)を使用して、細胞を観察した。次いで、蛍光細胞を100倍の倍率で撮影した。次いで、生細胞(緑色蛍光の細胞)と死細胞(赤色蛍光)との割合を、細胞100個を数えることにより測定した。
【0174】
コントロール細胞は、緑色蛍光の細胞を含むコンフルエントな単層を示した。赤色蛍光の細胞は観察されず、100%の生存率を示した(図5)。0.1、1および5μg/mlのペプチドを加えた細胞で同様の蛍光が観察された。しかしながら、10μg/mlのペプチドを加えた単層で赤色の細胞が観察され、この濃度でのわずかな細胞毒性作用を示した。対照的に、15μg/mlのペプチドを加えた細胞は、かなり大きな割合の死細胞を示した(図5)。30μg/mlのペプチドを加えた単層は、強い細胞毒性作用を示し、ほぼ100%死細胞を示した(図5参照)。
【0175】
異なる濃度での生細胞と死細胞の割合を表3に示す。ペプチドの溶解作用は1時間後に生じ、3時間および6時間でさらなる変化は観察されなかった。
【0176】
[形態]
高解像度走査電子顕微鏡は、ペプチド処理後に原形質膜の完全な崩壊を示し、ペプチドが原形質膜に強い細胞溶解作用を及ぼすことを示した(図6A)。インビトロでの詳細な形態分析によると、アポトーシスの誘導を示す細胞の断片化に関するある程度の証拠もあった。したがって、我々は、ペプチドのN末端部分をチオシアン酸フルオレセイン(FITC)で標識化し、インビトロで処理した。処理直後の免疫蛍光は、ペプチドが核にも蓄積することを示した。したがって、ペプチドも核タンパクとの相互作用を介してアポトーシスを引き起こすというある程度の証拠がある。図6Bから分かるように、ペプチド1は核にも蓄積する。組織培養で行われた形態学的所見に基づくと、ペプチドがアポトーシスを引き起こすというある程度の証拠もある。
【0177】
[実施例3−癌細胞に対するペプチド1のインビボ効果]
4T1乳癌は、非常に腫瘍形成性かつ侵襲性の可移植性癌細胞株であり、ほとんどの腫瘍モデルと異なり、乳腺中の原発腫瘍からリンパ節、血液、肝臓、肺、脳、および骨を含む多数の遠位部位に自然に転移し得る。4T1腫瘍は、4T1腫瘍をヒト乳癌に関して適切な実験動物モデルにさせるいくつかの特徴を有する。第1に、腫瘍細胞は乳腺へ容易に移植されるので、原発腫瘍が解剖学的に適正な部位で成長する。第2に、ヒト乳癌では、4T1転移性疾患は原発腫瘍から自然に発生する。また、流入領域リンパ節および他の臓器への4T1転移の漸進的な拡大は、ヒト乳癌のそれに非常に類似している。1×106 4T1細胞を雌BALBcマウス12匹に皮下注射した。治療群の動物6匹および対照群の動物6匹にスクランブルペプチド配列を投与した。腫瘍が0.8cmの大きさに達した時(10日後)に、100μlで投与した400μgのペプチドを3回の局所注射で腫瘍に与えた。投与したペプチドの総濃度は1200μgであった。次いで、腫瘍を4日毎にキャリパーで記録した。
【0178】
[腫瘍成長]
図7に示すように、4T1腫瘍へのペプチドの局所注射によって、インビボでの強い4T1腫瘍の成長抑制効果が誘導された。データ点は、対照群および治療群の動物6匹からの平均値を示す。
【0179】
[動物生存]
我々は、4T1癌細胞を皮下注射した処理動物および未処理動物を比較する、カプラン・マイヤー生存実験を行った。著しい腫瘍組織量に基づいて全身性疾患の兆候を示した時に動物を屠殺した。図8に見られるように、未治療群と比較して、治療群は有意な延命効果があった。腫瘍を組織学的分析のために採取した。切除した腫瘍を4%緩衝化ホルムアルデヒドで固定した。パラフィン包埋5μm切片をH&Eで染色した。細胞培養物を4%PFAで固定し、Nikon Eclipse TE2000−E蛍光顕微鏡(Nikon、東京、日本)下で画像化した。図9に見られるように、大量の細胞死後に重篤な壊死が観察され、これはペプチドの強い細胞毒性作用を示した。
【0180】
[実施例4−インビトロおよびインビボ膜破壊実験]
脂質二重層中に異なる組成のリン脂質を含む200nmリポソームを作成した。リポソームに蛍光色素を加え、ペプチド1(図10のペプチドX)で処理した後に色素流出を測定した。色素は、蛍光体ANTXおよび消光剤DPXを指し、色素放出は、界面活性剤(Triton x100)による完全な放出に対する%を指す。図10に示すように、ペプチド1は、特にリン脂質が負電荷を有する場合に、小胞撹乱物質として著しい機能を有した(PBPS:EYL;青色の記号;S0.5(最大値の半分の効果)=8.5μg/ml;2,46μM)。ペプチドはまた、中性(極性)のリン脂質(EYL:緑色の記号)にいくらかの効果を有していたが、この効果は負電荷を有するリン脂質に対する効果より弱かった。コントロールペプチド(ペプチドA)を、同じ大きさではあるが異なる配列を有する対照として使用した。ペプチドAは、試験した濃度では効果がなかった。
【0181】
4T1乳癌細胞は、蛍光マーカーdsRedを発現するために、レンチウイルスベクターを使用して安定してトランスフェクトされた。トランスフェクトされた細胞は、細胞質にdsRedを蓄積することになり、蛍光顕微鏡で容易に可視化することができる(図11参照)。次いで、細胞を20μg/mlのペプチド1に暴露し、経時共焦点顕微鏡観察法を3時間行った。この実験は、癌細胞における膜破壊を直接的に視覚化させることができる。
【0182】
図12は、観察された効果の理論的説明を示す。正常細胞と比較して、癌細胞はしばしば負電荷を持つ細胞膜を有することが知られている。カチオン性ペプチドは、より酸性のリン脂質および外面にホスファチジルセリンを有する癌細胞膜と比較して、電荷が少ない細胞膜を有する正常細胞に対して効果がほとんどないであろう(これはリン脂質二重層におけるフリップフロップ活性の増加による可能性が最も高いと考えられる)。ペプチド1は、リン脂質二重層に孔を生じる負電荷を有するリン脂質に結合する可能性が最も高い。多くの細菌細胞膜が負電荷を有するので、我々はまた、様々な菌株に対するペプチドの作用を評価した。
【0183】
[実施例5−細菌に対するペプチド1の効果]
ペプチド1はまた、2時間以内に細菌を死滅させ、殺菌活性を示す。試験した菌株は、大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、および腸球菌(Enterococcus)であった。これは、ペプチドがまたグラム陰性菌およびグラム陽性菌の両方に対して溶解作用示すことを表す。図13は、上記の菌株が、ペプチド1と共にまたは無しで2時間培養された場合の結果を示す。
【0184】
[実施例6−ペプチド1の物理的特性]
ペプチド1のpH7.0の正味電荷が12であり;等電点が12.4であり;平均親水性度が1であり;親水性残基/残基の総数の比が56%であることが測定された。ペプチド1は、したがって、カチオン性が強く、等電点が高い。結果を図14に示す。
表2
【0185】
【表2】

【0186】
表3
異なる濃度での生死細胞の割合、2種類の正常細胞株(142およびHFF1)と2種類の癌細胞株(143癌腫およびHOS肉腫)との間の比較。
【0187】
【表3】

【0188】
[考察]
実験は、ペプチド1およびそれに基づく修飾ペプチドが、インビトロおよびインビボで様々な癌細胞株に対して抗腫瘍効果を有することを示す。さらに、当該ペプチドは、インビトロでヒト線維芽細胞に対しておよびマウスにおける腹腔内注射によっては毒性をほとんど示さない。実際に、18グラムのnod−scidマウスにおいて1000μgのペプチドを皮下注射することによっても毒性は見られない。ペプチドは、インビトロで多くの癌細胞株の成長を停止させるが、正常細胞は同じ濃度でも影響が少ない。マウスの固形腫瘍に直接ペプチドを注射することにより、24時間後に重篤な壊死その後に成長阻害が観察される。さらに、これは、未治療の動物と比較して、動物の生存率の増加につながる。走査電子顕微鏡研究および機能性研究は、ペプチドが、癌細胞原形質膜に作用し、膜破壊を引き起こすことを示す。さらに、ペプチドはまた、核に移動し、癌細胞においてアポトーシス機構の引き金となる。したがって、新規な配列を有するペプチド1およびその修飾物は、様々な癌(例えば、脳、肺、乳房および結腸)の腫瘍成長を阻害する治療用分子を表す。結果はまた、簡単な操作によりペプチドをタンパク質分解に対して安定化させる(耐性化させる)ことができ、これがさらに抗腫瘍化合物としての可能性を高めることを示す。さらに、結果は、ペプチドグラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して殺菌効果を有することを示す。したがって、ペプチドは、ヒトにおける様々な細菌感染に対して使用され得る。
【0189】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アミノ酸配列YGRKKRRQRRRGKTLRVAKAIYKRYIE(配列番号:40);あるいは
(ii)配列番号40の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列;あるいは
(iii)配列番号40の逆配列の全部もしくは一部であるかまたは、配列番号40の配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列の逆配列であるアミノ酸配列、を含むオリゴペプチド化合物であって、
微生物細胞および/もしくは癌細胞の成長ならびに/または生存能力の阻害活性を有するオリゴペプチド化合物。
【請求項2】
配列番号40の配列を有する、請求項1に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項3】
1個以上のD−アミノ酸を含む、請求項1または2に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項4】
すべてD−アミノ酸を含むインベルソ化合物である、請求項3に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項5】
アミノ酸配列が逆になっているレトロ化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項6】
レトロ−インベルソ化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項7】
前記逆配列が配列番号41に示される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項8】
下記の1つ以上の特性を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物:
a)pH7.0における正味電荷が10〜13、
b)pIが12〜13;
c)平均親水性度が0.7〜1.0および/または
d)親水性残基/残基の総数の比が45〜60%。
【請求項9】
抗菌性を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項10】
細胞毒性を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項11】
癌細胞溶解および/またはアポトーシスを誘導することができる、請求項1〜8または10のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項12】
癌細胞に対して選択的に細胞毒性を有する、請求項1〜8または10〜11のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項13】
腫瘍の大きさを減少させることができる、請求項1〜8または10〜12のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項に規定のアミノ酸配列をコードする核酸分子、または当該核酸分子の補体。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項16】
請求項14または15の核酸分子またはベクターの導入により修飾された細胞。
【請求項17】
薬学的に許容される賦形剤と共に、請求項1〜15のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物または核酸分子を含む医薬組成物。
【請求項18】
治療で使用するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子または組成物。
【請求項19】
微生物感染と闘う場合に使用するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子または組成物。
【請求項20】
癌の治療に使用するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子または組成物。
【請求項21】
微生物感染と闘うおよび/または癌を治療するための薬剤の製造における、請求項1〜17のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物または核酸分子の使用。
【請求項22】
微生物感染と闘うおよび/または癌を治療する方法であって、請求項1〜17のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子または組成物をそれを必要とする被験者に投与することを含む、方法。
【請求項23】
癌の治療に使用される場合、癌が、脳、肺、乳房もしくは結腸の癌または黒色腫から選ばれる、請求項1〜18、20または21のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子、組成物、使用または方法。
【請求項24】
癌の治療に使用される場合、オリゴペプチド化合物、核酸分子、組成物または薬剤が、癌への局所送達のためのものである、請求項1〜18、20、21または23のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子、組成物、使用または方法。
【請求項25】
微生物感染と闘うために使用される場合、微生物感染が細菌感染である、請求項1〜19または21〜22のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子、組成物、使用または方法。
【請求項26】
癌もしくは微生物細胞の生存能力および/または成長を阻害する場合に別々に、同時に、または順次に使用するための複合製剤として、請求項1〜17のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子、または組成物と、第2の治療活性剤とを含む製品。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物、核酸分子または組成物と、第2の治療活性剤とを含むキット。
【請求項28】
前記第2の治療活性剤が、微生物感染または癌に対して活性を有する、請求項26または27に記載のキットまたは製品。
【請求項29】
前記第2の治療活性剤が、化学療法剤または抗腫瘍剤である、請求項26〜28のいずれか1項に記載のキットまたは製品。
【請求項30】
前記第2の治療活性剤が、抗生物質または抗ウイルスもしくは抗真菌剤である、請求項26〜28のいずれか1項に記載のキットまたは製品。
【請求項31】
微生物の生存能力および/または成長を阻害するインビトロまたはエクスビボ方法であって、当該微生物を請求項1〜13のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物と接触させることを含む方法。
【請求項32】
癌細胞の生存能力および/または成長を阻害するインビトロまたはエクスビボ方法であって、当該癌細胞を請求項1〜14のいずれか1項に記載のオリゴペプチド化合物または核酸分子に接触させることを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−517787(P2013−517787A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550478(P2012−550478)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051422
【国際公開番号】WO2011/092347
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512200169)
【Fターム(参考)】