説明

オルガノポリシロキサンエマルジョン及びその製造

本発明はポリオルガノシロキサン及びワックスを含む水性エマルジョンと、かかるエマルジョンの製造方法に関する。エマルジョンは水中油型である。オルガノポリシロキサンを溶融ワックスとの混合物中で重合してワックスと増加した分子量を有するポリオルガノシロキサンとの混合物を形成し、該ポリマー及び溶融ワックスの混合物を界面活性剤の存在下水中で乳化する。エマルジョンは毛髪、皮膚、粘膜又は歯のようなパーソナルケア用途に有用である。エマルジョンはまた、塗料、水性コーティング、織物繊維トリートメント、皮革用潤滑剤、柔軟剤、洗濯用途における仕上げ剤、ホームケア、剥離剤及び石油ドラッグ低減のような用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサン及びワックスを含む水性エマルジョン、並びにかかるエマルジョンの製造方法に関する。エマルジョンは水中油型である。
【背景技術】
【0002】
フェイス、ハンド及びボディクリーム、シャンプー、日焼け防止製剤のような多くのパーソナルケア製品、並びにマスカラ及びファンデーションのようなカラー化粧品は、エマルジョン又は他の分散体である。高分子量ポリオルガノシロキサンを多くの用途に、例えばパーソナルケア製品用の有機(非ケイ素含有)成分とともに用いて、しばしば相乗効果をもたらす。有機成分はワックスとすることができ、又は有機ワックスに混入することができる。しかしながら、ポリオルガノシロキサンは多くの有機成分と相溶性(混和性)でなく、安定な分散体を得る上で問題を生ずる。
【0003】
国際公開第2006/106362号公報は、縮合性基を含むシロキサン含有モノマー及び/又はオリゴマーをオルガノポリシロキサン及び/又は有機物系希釈物質、適当な触媒及び随意的な末端ブロック剤の存在下で重縮合することにより希釈オルガノポリシロキサン含有ポリマーを調製し、所要に応じて重合プロセスを急冷することを記載する。希釈物質は生成する希釈オルガノポリシロキサン中に実質的に保持される。希釈剤はオルガノポリシロキサンと相溶性であることが必要で、そうでなければ時間とともに組成物から発散する。国際公開第2008/045427号公報は、1つ以上の界面活性剤を希釈オルガノポリシロキサン中に導入して均質な油相を形成するステップと、0.1〜10重量パーセントの水を均質な油相に添加して油中水型エマルジョンを形成するステップと、せん断を油中水型エマルジョンに加えて油中水型エマルジョンの水中油型エマルジョンへの反転を生ずるステップと、随意にさらに水を添加することにより水中油型エマルジョンを希釈するステップとを備えたシリコーン水中油型エマルジョンの生成方法を記載する。
米国特許第5262087号は、ポリシロキサン及びワックスのラジカル重合により形成したワックス組成物を含む油中水型乳化組成物を記載する。かかるラジカル重合はランダムグラフト及び架橋をもたらすだろう。日本特許公開公報第2000−026726号は、特定の有機ケイ素化合物を溶剤の存在下でイオン性界面活性剤システムにおいて重合することにより得たエマルジョンを記載する。米国特許第5914362号は、(A)1次シリコーン組成物と、(B)縮合性末端基を有するポリジオルガノシロキサンとのポリイソブチレン及び鉱油から選択した非極性有機媒体中での反応から調製したエマルジョンを記載する。欧州特許第0802231号は、(i)鉱油と、(ii)ポリオルガノシロキサンと、(iii)ケイ素化合物と、(iv)触媒量の触媒とを含む混合物を反応させることにより調製したシリコーン組成物を記載する。米国特許第4990556号は、閉じ込められた鉱油を含有する硬化シリコーンゴムを記載する。オルガノポリシロキサン及びワックスを含有する組成物が米国特許第4404035号及び第5503755号に記載される。
【発明の概要】
【0004】
本発明に係るポリオルガノシロキサン及びワックスの水性エマルジョンの製造方法において、オルガノポリシロキサンを溶融ワックスとの混合物中で重合して、これによりワックスと増加した分子量を有するオルガノポリシロキサンとの混合物を形成し、当該ポリマー及び溶融ワックスの混合物を界面活性剤の存在下で水に乳化する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
1つの好適な方法において、ワックスと重合反応で生成した増加した分子量を有するオルガノポリシロキサンとの混合物が、反応生成物をペースト又は固体まで冷却する前に乳化される。あるいはまた、ワックスと重合反応で生成した増加した分子量を有するオルガノポリシロキサンとの混合物をペースト又は固体まで冷却し、その後加熱してワックスを溶融し、ワックスの融点より高い温度で乳化する。
【0006】
ワックスと重合反応で生成した増加した分子量を有するオルガノポリシロキサンとの混合物は、オルガノポリシロキサンにおけるワックスの非常に密接な分散体であるか、又は逆も同様である。この混合物を、あらゆるマクロ相分離が生起する前に乳化することがもちろん好ましい。
【0007】
本発明に係るシリコーン水中油型エマルジョンは、分散相がワックスとワックスの存在下での重合により形成したオルガノポリシロキサンとの混合物であることを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、ワックスとワックスとの混合物中での重合により形成した高分子量オルガノポリシロキサンとの混合物を乳化することにより、高分子量ポリオルガノシロキサンと有機成分との安定なエマルジョンをより容易に形成し得ることを見出した。
【0009】
オルガノポリシロキサン出発物質は、少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンであるのが好ましく、好適にはシロキサン縮合を含むプロセスにより重合される。オルガノポリシロキサン出発物質は、例えば平均2つ以上のケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基、好適には末端ヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンとすることができる。オルガノポリシロキサンは、例えば一般式
−A’−X (1)
を有することができ、式中のX及びXは独立してヒドロキシル又は加水分解性置換基を含有するケイ素含有基から選択され、A’はポリマー鎖を表す。ヒドロキシル及び/又は加水分解性置換基を含むX又はX基の例としては、後述するような終端する基が挙げられる。
【0010】
−Si(OH)、−(R)Si(OH)、−(RSiOH、−RSi(OR、−Si(OR、−RSiOR又はRSi−R−SiR(OR3−p、式中の各Rは独立して一価のヒドロカルビル基、例えばとくに1〜8個の炭素原子を有するアルキル基(好適にはメチル基であり)を表し;R及びR基はそれぞれ独立してアルキル又はアルコキシ基で、アルキル基は適切には最大6個の炭素原子を有し;Rは最大6個のケイ素原子を有する1つ以上のシロキサンスペーサにより遮断され得る二価の炭化水素基であり;pは0、1又は2の値を有する。式−(RSiOHの末端ブロック基がとくに好ましい。線状オルガノポリシロキサンは少量、例えば20%未満の式RSiO1/2の非反応性末端ブロック基を含むことができる。
【0011】
ポリマー鎖A’は式(2):
−(RSiO)− (2)
のシロキサン単位を含むポリジオルガノシロキサン鎖であるのが好ましく、式中の各Rは独立して1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、1〜18個の炭素原子を有する置換炭化水素基又は最大18個の炭素原子を有する炭化水素オキシ基のような有機基である。
【0012】
炭化水素基Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、シクロへキシル、フェニル及びトリル基が挙げられる。置換炭化水素基は、炭化水素基中の一つ以上の水素原子が別の置換基、例えば塩素、フッ素、臭素若しくはヨウ素のようなハロゲン原子、アクリル、メタクリル、アルコキシ若しくはカルボキシルのような酸素原子含有基、アミノ、アミド若しくはシアノ基のような窒素原子含有基、又はメルカプト基のような硫黄原子含有基で置換されたものである。置換炭化水素基の例としては、3,3,3−トリフルオロプロピル、クロロフェニル、β−(ペルフルオロブチル)エチル又はクロロシクロへキシル基のような塩素又はフッ素で置換されるプロピル基が挙げられる。好適には少なくともいくつか、より好適にはほぼすべての基Rはメチルである。好適にはポリジオルガノシロキサンはポリジアルキルシロキサン、もっとも好適にはポリジメチルシロキサンである。
【0013】
式(2)の単位を含むポリジオルガノシロキサンはホモポリマー又はコポリマーであってもよい。異なるポリジオルガノシロキサンの混合物も適している。ポリジオルガノシロキサンコポリマーの場合、ポリマー鎖は上記式(2)で表した単位の鎖からなるブロックの組み合わせを含むことができ、式中の2つのR基は:
ともにアルキル基(好ましくはともにメチル又はエチル)、
アルキル及びフェニル基、
アルキル及びフルオロプロピル、
アルキル及びビニル、又は
アルキル及び水素基
である。一般に、少なくとも1つのブロックは両R基がアルキル基であるシロキサン単位を含む。
【0014】
少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサン出発物質は、通常その粘度が5mPa.s〜5000mPa.s、好適には10mPa.s〜500mPa.sとなるような重合度を有する。実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、ケイ素に結合した末端ヒドロキシル基を有し、10mPa.s〜500mPa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであるのが好ましい。
【0015】
実質的に線状のポリオルガノシロキサン出発物質として用いるポリマー(A’)はまた、上記式(2)中で表したタイプのシロキサン基の少なくとも1つのブロックと、任意適当な有機ポリマー鎖を含む少なくとも1つのブロックとを含むブロックコポリマー骨格を有することができる。適当な有機ポリマー鎖の例は、ポリアクリル、ポリイソブチレン及びポリエーテル鎖である。
【0016】
本発明の1つの態様によると、かかる少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、ヒドロキシル又は加水分解性基の触媒縮合により重合してシロキサン結合を形成する。実質的に線状のオルガノポリシロキサンは、例えば実質的に用いた唯一のオルガノポリシロキサン出発物質とすることができる。
【0017】
あるいはまた、オルガノポリシロキサン出発物質は環状オルガノポリシロキサンとすることができ、環状オルガノポリシロキサンの開環の触媒プロセスにより重合してシロキサン結合を形成することができる。かかるプロセスに用いる環状オルガノポリシロキサンは、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン又はデカメチルシクロペンタシロキサンとすることができる。
【0018】
環状オルガノポリシロキサンは重合反応におけるただ1つのシロキサン物質とすることができるか、又は開環した環状オルガノポリシロキサンと反応する有機ケイ素物質、例えば少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有するシラン又はシロキサン物質とともに用いることができる。このシラン又はシロキサン物質は、例えば少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンのようなオルガノポリシロキサンとすることができる。かかる少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサン及び環状オルガノポリシロキサンをともに重合する場合、これらは例えば重合反応混合物中に10:1〜1:5の重量比で存在することができる。重合は環状オルガノポリシロキサンの開環と、開環生成物と少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサン又は他のシラン若しくはシロキサン物質との縮合との触媒プロセスにより進む。
【0019】
本発明の別の態様によると、オルガノポリシロキサン出発物質は少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンと、1分子当たり平均3つ以上のSi結合アルコキシ基を有するアルコキシシランとの混合物である。かかる混合物を実質的に線状のオルガノポリシロキサンとアルコキシシランとの触媒シロキサン縮合により重合して、分岐オルガノポリシロキサン構造を形成することができる。
【0020】
線状オルガノポリシロキサンと反応するアルコキシシランは、一般に1分子当たり平均3個以上のケイ素結合アルコキシ基を含有する。アルコキシ基は好適にはそれぞれ1〜4個の炭素原子を有し、もっとも好適にはメチル又はエチル基である。アルコキシシランは、例えば式R’Si(OR)のトリアルコキシシランを含むことができ、式中のRは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R’は1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素又は置換炭化水素基を表す。かかる基R’の例としては、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ラウリル又はステアリル;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル又はシクロへキシル;アルケニル基、例えばビニル、アリル又はヘキセニル;アリール基、例えばフェニル又はトリル;アラルキル基、例えば2−フェニルエチル;及び前記有機基中の水素のすべて又は一部をハロゲンで置換することにより得た基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピルが挙げられる。好適なトリアルコキシシランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及び3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。例えば6〜18個の炭素原子を有する長鎖アルキル基R’を有するトリアルコキシシラン、例えばn−オクチルトリメトキシシランは、線状オルガノポリシロキサンと反応して、分岐点に長鎖アルキル基、例えばオクチル基を有する分岐オルガノポリシロキサンを形成する。かかる長鎖アルキル基の存在は、分岐オルガノポリシロキサンの有機物質、例えば炭化水素溶剤又は有機ポリマーとの相溶性を向上させる。
【0021】
アルコキシシランはまた、テトラエトキシシラン(テトラエチルオルソシリケート)のようなテトラアルコキシシランとすることができる。線状オルガノポリシロキサンのテトラアルコキシシランとの反応はポリシロキサン鎖中のSi−アルコキシ官能基及び分岐を有する分岐オルガノポリシロキサンを形成することができる。
【0022】
アルコキシシランは部分縮合アルコキシシランとすることができ、この場合いくつかのアルコキシ基が加水分解及び縮合してシロキサン結合を形成し、いくつかのアルコキシ基がケイ素に結合したままである。かかる部分縮合アルコキシシランは1分子あたり平均3つ以上のケイ素に結合したアルコキシ基を含有するのが好ましい。アルコキシシランは、例えばオリゴマー部分縮合トリアルコキシシランとすることができる。かかるオリゴマーは分岐構造及びさらなる分岐部位をもたらすためのSi−アルコキシ基を有することができる。テトラアルコキシシランは部分縮合形態で用いることもでき、例えばSiO分岐単位を含有する部分縮合テトラエトキシシランは広く入手可能である。
【0023】
アルコキシシランと、少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンとを、好適にはアルコキシシラン中のSi結合アルコキシ基の実質的に線状のオルガノポリシロキサン中のヒドロキシル又は加水分解性基に対するモル比が1:100〜1:1、より好適には1:40〜1:2となる量で反応させる。
【0024】
オルガノポリシロキサンの重合用触媒は、ホスファゼン触媒であるのが好ましい。ホスファゼン触媒は、シロキサン縮合及び環状オルガノポリシロキサンの開環重合の両方に有効な触媒である。ホスファゼン触媒は、一般に少なくとも1つの−(N=P<)−単位を含有し、通常最大10個のホスファゼン単位、例えば平均1.5〜5個のホスファゼン単位を有するオリゴマーである。ホスファゼン触媒は、例えばハロホスファゼン、とくにクロロホスファゼン(塩化ホスホニトリル)、酸素含有ハロホスファゼン、ホスファゼン塩基又はホスファゼニウム塩のようなホスファゼンのイオン誘導体、とくにペルクロロオリゴホスファゼニウム塩のようなハロゲン化ホスホニトリルのイオン誘導体とすることができる。
【0025】
1つのとくに適切なタイプのホスファゼン触媒は酸素含有ハロホスファゼン、とくに酸素含有クロロホスファゼンである。かかる酸素含有クロロホスファゼンは、例えば式Cl(PCl=N)−P(O)Cl又はHO(PCl=N)−P(O)Clを有することができる。nの平均値は、例えば1〜10、とくに1〜5の範囲内とすることができる。触媒はまた、式HO(PCl=N)−P(O)Clの触媒の互変異性体を含むことができる。別のタイプの適当な酸素含有クロロホスファゼンは、Z’が酸素を介してリンに結合した有機ケイ素ラジカルを表わす式Z’O(PCl=N)−P(O)Clを有し、例えば式R”SiO(PCl=N)−P(O)Clのホスファゼン触媒があり、式中の各R”は1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素又は置換炭化水素基を表す。触媒は、かかる有機ケイ素含有ホスファゼンの縮合物を含むこともできる。上記酸素含有ホスファゼンのいずれかにおける塩素原子のすべて又はいくつかをラジカルQにより置換することができ、ここでQは好ましくないが、ヒドロキシル基、アルコキシラジカル又はアリールオキシラジカルのような一価の有機ラジカル、塩素以外のハロゲン原子、有機ケイ素ラジカル及びリン含有ラジカルを表す。
【0026】
別の適当なタイプのホスファゼン触媒は式
[ClP−(N=PClCl]
のペルクロロオリゴホスファゼニウム塩であり、式中のnは1〜10の範囲内の平均値を有し、Zはアニオンを表す。アニオンは好適には錯アニオンであり、例えば式MXv+1を有することができ、式中のMは1.0〜2.0のポーリングスケール上の電気陰性度及び価数vを有する元素であり、Xはハロゲン原子である。元素Mは、例えばリン又はアンチモンとすることができる。アニオンZはまた、米国特許第5457220号に記載されるような式[MXv−y+1の錯アニオンとすることができ、式中のRは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、yは0〜vの値を有する。
【0027】
ホスファゼン触媒はまた、米国特許第6001928号、同第6054548号又は同第6448196号に記載されるようなホスファゼン塩基、とくにアミノ化ホスファゼンとすることができる。かかるホスファゼン塩基は、ペルクロロオリゴホスファゼニウム塩と第二級アミンとの反応及びその後の塩基性求核剤でのイオン交換反応により形成することができる。第二級アミンは、例えば式HNRを有し、クロロホスファゼンオリゴマーのいくつか又はすべてを−NR基により置換する。
【0028】
ホスファゼン触媒は、一般にオルガノポリシロキサン出発物質の重量に対し100万分の1又は2〜200部で、例えば100万分の5〜50部で存在する。ホスファゼン触媒は重合生成物中の望ましくない低分子量環状シリコーンの含有量が低いという利点を有する。
【0029】
オルガノポリシロキサン重合に用い得る代替触媒としては、プロトン酸、ルイス酸、有機及び無機塩基、金属塩並びに有機金属錯体のようなシロキサン縮合を触媒することが既知のもののいずれかが挙げられる。縮合特異性触媒が好ましい。これは式R20SOHの酸性縮合触媒を含み、式中のR20は例えばヘキシル若しくはドデシル基のような好適には6〜18個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基のようなアリール基又はジノニル−若しくはジドデシル−ナフチルのようなアルカリール基を表し、例えば触媒はドデシルベンゼンスルホン酸とすることができる。他の縮合特異性触媒としては、n−ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジン、ルビジウム又はセシウムのカルボン酸塩及びマグネシウム、カルシウム又はストロンチウムの水酸化物が挙げられる。
【0030】
さらなる代替触媒としては、スズ、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マンガン、亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウム又はゲルマニウム及びジルコニウムを混入した縮合触媒が挙げられる。例としては、金属トリフラート、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ−2−エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、及びジオルガノスズ塩、とくにジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、又はジメチルスズビスネオデカノエートのような有機スズ金属触媒が挙げられる。
【0031】
チタネート又はジルコネート系触媒、例えば一般式Ti[OR22による化合物を用いることができ、式中の各R22は同じ又は異なっていてもよく、1〜10個の炭素原子を含有する線状又は分岐であってもよい一価、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表す。チタネートは、例えばメチル又はエチルアセチルアセトネートのようなアルキルアセチルアセトネートでキレート化することができる。
【0032】
本発明において触媒として用い得るさらなる代替触媒は、国際公開第01/79330号公報に定義されるような少なくとも1つの四置換ホウ素原子を含むアニオン及び少なくとも1つのシラノール基と相互作用することができるプロトンの供給源をもたらす任意適当な化合物、例えばテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである。
【0033】
あるいはまた、オルガノポリシロキサンの重合は、不飽和有機基、例えばアルケニル又はアルキニル基とSi−H基との間の適当な触媒の存在下でのヒドロシリル化反応によるものであってもよい。この経路では、適当なシラン並びにシロキサン含有モノマー及び/又はオリゴマーを用いることができる。従って、オルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応によりSi−H基を有するシラン若しくはシロキサン物質と重合するアルケニル若しくはアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサン、又はヒドロシリル化反応により少なくとも2つのアルケニル若しくはアルキニル基を含有する有機化合物と重合するSi−H基を有するオルガノポリシロキサンを含むことができる。ヒドロシリル化反応は、一般に白金族触媒の存在下でもたらされる。
【0034】
アルケニル又はアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンは線状又は分岐とすることができ、一般に1〜18個の炭素原子を含有する炭化水素又は置換炭化水素基で、その少なくとも2つがアルケニル又はアルキニル基であるSi結合有機基を含む。オルガノポリシロキサンは、例えばアルケニル又はアルキニル基を末端基として含有することができる。アルキニル又はアルケニル基はそれぞれ末端二重結合を有するのが好ましい。好適なアルケニル基の例は、HC=CH−、HC=CHCH−、HC=C(CH)CH−、HC=CHCHCH−、HC=CHCHCHCH−及びHC=CHCHCHCHCH−である。アルキニル基の例はHC≡C−及びHC≡CCH−を含む。オルガノポリシロキサンの他の有機基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルのようなアルキル基;シクロへキシルのようなシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチルのようなアリール;並びに3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル及びジクロロフェニルのようなハロゲン化炭化水素基から選択することができる。メチル基が好適であることが多い。オルガノポリシロキサンは、例えばアルケニル末端線状又は分岐ポリジメチルシロキサンとすることができる。
【0035】
Si−H基を有するオルガノポリシロキサンは線状又は分岐とすることができる。オルガノポリシロキサンの他の有機基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルのようなアルキル基;シクロへキシルのようなシクロアルキル;フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリール;並びに3,3,3−トリフルオロプロピル、3−クロロプロピル、及びジクロロフェニルのようなハロゲン化炭化水素基から選択することができる。メチル基が好適であることが多い。Si−H基は末端とすることができ、例えばオルガノポリシロキサンはジメチルシリル末端基を有することができ、及び/又はSi−H基はポリマー鎖に沿って存在することができ、例えばオルガノポリシロキサンはメチル水素シロキサン単位を含むことができる。Si−H基を有するオルガノポリシロキサンは、例えばポリ(メチル水素)シロキサン又はジメチルシロキサンメチル水素シロキサンコポリマーとすることができる。
【0036】
ヒドロシリル化による重合を用いる場合、上述のようなアルケニル又はアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンを上述のようなSi−H基を有するオルガノポリシロキサンと反応させるのが好ましい。
【0037】
アルケニル又はアルキニル基を含有するオルガノポリシロキサンはまた、さらには少なくとも1つのSi−H基を含有するシランと重合することができる。かかるシランの例としては、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン及びフェニルジクロロシランのようなハロシラン、並びにトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン及びフェニルジメトキシシランのようなアルコキシシランが挙げられる。
【0038】
Si−H基を含有するオルガノポリシロキサンはまた、さらには少なくとも2つのアルケニル又はアルキニル基を含有する有機化合物と重合することができる。アルケニル又はアルキニル基は共役させるべきでなく、好適には末端基である。適当な有機化合物としては、例えば1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエンが挙げられる。
【0039】
ヒドロシリル化反応用の触媒は、一般に白金族触媒、すなわち白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム若しくはルテニウムから選択した金属又はそれら金属の1つの化合物である。白金を含む触媒の例としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸及びジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、炭素担体上に吸着させた白金微粒子、Pt(Al)のような金属酸化物担体上に支持された白金、白金黒、白金アセチルアセトネート、ハロゲン化白金、例えばPtCl、PtCl、Pt(CN)並びにハロゲン化白金と不飽和化合物、例えばエチレン、プロピレン及びオルガノビニルシロキサンとの錯体が挙げられる。1つの好適な白金触媒はKarstedt触媒であり、これは通常トルエンのような溶剤中に1重量%の白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。別の好適な白金触媒は、米国特許第3,419,593号に記載されるような塩化白金酸及び末端脂肪族不飽和を含有する有機ケイ素化合物の反応生成物である。さらなる好適な触媒は、米国特許第5,175,325号に記載されるような塩化白金及びジビニルテトラメチルジシロキサンの中性錯体である。
【0040】
ルテニウムを含むヒドロシリル化触媒の例としては、RhCl(BuS)及び1,1,1−トリフルオロアセチルアセトネート、ルテニウムアセチルアセトネート及びトリルテニウムドデカカルボニル又はルテニウム1,3−ケトエノレートのようなルテニウムカルボニル化合物が挙げられる。ロジウム触媒の例としては、[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、及びRh(CO)[PhP](C)が挙げられる。イリジウム触媒の例としては、Ir(COOCCH及びIr(C)Sが挙げられる。
【0041】
組成物中のヒドロシリル化触媒の濃度は、通常オルガノポリシロキサンに対し少なくとも100万分の1重量部相当の元素白金族金属をもたらすことができる。100万分の約3〜50部相当の元素白金族金属をもたらす触媒濃度が一般に好適な量である。
【0042】
一般に、ヒドロシリル化重合は約1:1のSi−H基対アルケニルアルキニル基のモル比を用いて行う。アルケニル基を含有する物質をわずかに過剰に用いて、すべてのSi−Hが反応に消費されるのを確実にすることができる。
【0043】
本発明のプロセス中の重合の度合いは、生成する増加した分子量のオルガノポリシロキサンが出発オルガノポリシロキサンの重量平均分子量の少なくとも5倍、より好適には少なくとも10倍の重量平均分子量Mwを有するようなものであるのが好ましい。Mwはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。生成する増加した分子量のオルガノポリシロキサンのMwは、好適には少なくとも50,000、より好適には少なくとも100,000であり、1,000,000以上であってもよい。
【0044】
ワックスは、15〜20℃の温度で可塑性又は可鍛性であり、少なくとも20℃の融点を有し、溶融時に低粘度を有する物質を意味する。ワックスの例がカークオスマーの化学技術百科事典(Claude Leray、John Wiley & Sons,Inc.によるArticle on Waxes、2006年)に記載されている。オルガノポリシロキサン重合中に存在するワックスは、一般に20℃より高い融点を有し、好適には30〜100℃、より好適には40〜90℃の範囲内の融点を有する。ワックスはケイ素を含有しない有機ワックスとすることができるか、又はシリコーンワックスとすることができる。オルガノポリシロキサン生成物の有機物質との相溶性を向上させることが重要である用途について、有機ワックスが通常好ましいが、長鎖有機置換基を含有するシリコーンワックスも相溶性を向上させることができる。
【0045】
ワックスは、例えば石油由来ワックスのような炭化水素ワックス、とくにパラフィンワックス若しくは微結晶ワックス、Fischer−Tropschワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス又はそれらの混合物とすることができる。パラフィンワックスは主に炭素原子20〜30個の平均鎖長を有する直鎖炭化水素を含有する。パラフィンワックスの例は、Parafflex4750A顆粒及びParafflex4797Aのような商標ParafflexでIgiWax社より販売されている。微結晶ワックスはより高い割合の分岐炭化水素及びナフテン系炭化水素を含有する。微結晶ワックスの例は商標Microsere、例えばMicrosere5981AでIgiWax社より販売されている。用い得る他の有機炭化水素ワックスはモンタンワックス(亜炭ワックスとしても既知)、オゾケライト又はスラグワックスである。
【0046】
ワックスはまた、カルボン酸エステルを含むワックスとすることができる。ビーワックス、ラノリン、タロウ、カルナバ及びカンデリラのような多くの天然ワックス、並びにトリベヘニンや、パームワックス、米ぬかワックス又は大豆ワックスのような植物の種子、果実、堅実又は核種から得られるワックスは、遊離酸及び/又はアルコールとのエステルの混合物を含む。エステルワックスの例は、IgiWax社より商標RD2778A及びRD2779Aで販売されるパーム油由来のパームワックスである。より軟質のワックスのいくつかは「バター」と称される。これらのタイプの製品はスキンケア用途にしばしば用いられ、例えばマンゴバター、シアバター又はココナツバターとして油糧種子から得られる。他の例はイリッペ、クプアス、ムルムル、サル及びコクムバターである。かかるバターは本発明のワックスのすべて又は一部として用いることができ、ただしワックスは少なくとも20℃の融点を有する。一般に、バターは40.5℃未満で20℃より高い滴定点を有することにより定義することができる(AOCS法Tr 1a−64Tに従ったJ.O’Lenickによる『Oil of nature』)。
【0047】
ワックスはまた、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪アルコール、長鎖脂肪アミン、長鎖脂肪アミド、エトキシル化脂肪酸若しくは脂肪アルコール、又は長鎖アルキルフェノールとすることができる。一般に、脂肪酸、アルコール、アミン又はアミドの長鎖は少なくとも12個、好適には16個の炭素原子、しばしば最大30個以上の炭素原子を有するアルキル基である。
【0048】
ワックスはまた、ポリエーテルワックス、例えばBASF社より商標Lumax Vで販売されるような固体ポリエーテルポリオール若しくはワックス状ポリビニルエーテル、又はポリエーテルエステルとすることができる。
【0049】
シリコーンワックスの例は12個以上の炭素原子を有する炭化水素置換基を含有するポリシロキサンである。ポリシロキサンはメチルアルキルシロキサン単位((CH)(R)SiO/2)を含むポリジオルガノシロキサンであるのが好ましく、式中のRは12個以上、好適には16〜100個の炭素原子を有する長鎖アルキル基であり、随意的にジメチルシロキサン単位又は式((CH)(R)SiO/2)の単位も含み、式中のRは例えばエチルのような1〜11個の炭素原子を有するアルキル基、2−シクロへキシルエチルのようなシクロアルキル基、ハロアルキル基、フェニルのようなアリール基又は2−フェニルプロピル、2−フェニルエチル若しくは2−(t−ブチルフェニルエチル)のようなアラルキル基である。上記シロキサン単位のメチル基は、所望に応じてエチル又は別の低アルキル基により置換することができる。長鎖アルキル基Rは任意にアミノ、アミド、アルコール、アルコキシ又はエステル基のような極性置換基により置換することができる。シリコーンワックス中のケイ素原子の好適には少なくとも20%、もっとも好適には少なくとも50%は16〜100個の炭素原子、もっとも好適には20〜36個の炭素原子を有するアルキル置換基を有する。
【0050】
異なるタイプのワックスの混合物、例えばエステルワックスと炭化水素ワックスとの混合物を用いることができる。
【0051】
ワックスは重合中にオルガノポリシロキサンに対し1又は5%からオルガノポリシロキサンに対し150又は200%までのいずれかの量で存在することができる。好適には、オルガノポリシロキサンの重合中に存在するワックスに対する重量比は95:5〜40:60である。ワックスは、オルガノポリシロキサンに接触する前に溶融することができるか、又は固体ワックスをオルガノポリシロキサンと混合し、混合物にせん断を加えながら加熱してワックスを溶融することができる。
【0052】
オルガノポリシロキサンの重合はワックスの融点より高い温度で行う。重合温度はワックスの融点より5〜30℃高いのが好ましく、例えば重合温度は50℃〜120℃の範囲とすることができる。ほとんどのワックス、とくに炭化水素ワックス及びエステルワックスのような有機ワックスはヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンのようなオルガノポリシロキサンと混和性でない。従って、ワックス及びシリコーンは液/液分散体として存在するので、重合は分散重合である。
【0053】
重合反応は、所望の重合度に達した際に終了することができる。これは、例えば重合反応混合物の粘度又はそれを混合するのに要するトルクを測定することにより決定することができる。好適なホスファゼン触媒により触媒される重合は中和剤、例えば米国特許第5457220号に記載された触媒の場合トリヘキシルアミンのようなトリアルキルアミンを添加することにより終了することができる。重合を行う時間は幅広い範囲内、例えば1又は2分から10時間以上までで変動し得る。好適なホスファゼン触媒により触媒される重合は通常は2〜150分間行う。
【0054】
不活性液体希釈剤が、所望に応じて重合中に存在することができる。希釈剤はシリコーン系及び/又は有機物系希釈剤とすることができ、一般にオルガノポリシロキサンと反応する基を有さないように選択される。希釈剤は、用いる場合、その存在が生成するワックスシリコーン混合物を基にした最終製品製剤における増量剤又は可塑剤として望ましい物質から通常選択される。
【0055】
任意適当な希釈剤又は希釈剤の組み合わせを反応混合物に用いることができる。一般に、国際公開第2006/106362号公報で用いた増量剤のいずれかを用いることができる。これらとしては、以下に列挙したそれぞれの単体又は他のものとの組み合わせが挙げられる:
線状(例えばn−パラフィン系)鉱油、分岐(イソパラフィン系)鉱油及び/又は環状(いくつかの従来技術ではナフテン系と称する)鉱油を含む鉱油留分のような炭化水素で、油留分中の炭化水素が1分子当たり5〜25個の炭素原子を含む炭化水素油;
アルキル基が好適にはメチル基であり、各アルキル基が同じ又は異なっていてもよく、1〜6個の炭素原子を含むが好適にはメチル基であり、好適には25℃で100〜100000mPa.s、もっとも好適には25℃で1000〜60000mPa.sの粘度を有するトリアルキルシリル末端ポリジアルキルシロキサン;
ポリイソブチレン(PIB);
トリオクチルホスフェートのようなホスフェートエステル;
ポリアルキルベンゼン、重アルキレートのような線状及び/又は分岐アルキルベンゼン、ドデシルベンゼン並びに他のアルキルアレーン;
脂肪族モノカルボン酸のエステル;
8〜25個の炭素原子を含有する線状若しくは分岐アルケン又はその混合物のような線状又は分岐モノ不飽和炭化水素;
天然油及びその誘導体。
【0056】
好適な希釈剤としては、鉱油留分、アルキル脂環式化合物及びポリアルキルベンゼンを含むアルキルベンゼンが挙げられる。鉱油留分の任意適当な混合物を希釈剤として用いることができるが、例えば220より高い分子量を有する高分子量増量剤がとくに好ましい。例としては、220より高い分子量のアルキルシクロヘキサン、1〜99%、好適には15〜80%のn−パラフィン系及び/又はイソパラフィン系炭化水素(線状分岐パラフィン系)、1〜99%、好適には85〜20%の環状炭化水素(ナフテン系)、及び最大3%、好適には最大1%の芳香族炭素原子を含有するパラフィン系炭化水素並びにその混合物が挙げられる。環状パラフィン系炭化水素(ナフテン系)は環状及び/又は多環式炭化水素を含有することができる。
【0057】
多くの製品中に増量剤又は可塑剤として保持するのに適した好適な代替希釈剤は、非鉱物系天然油、すなわち石油からではなく、動物、種子又は堅果から得られる油を含む。かかる天然油は、一般に脂肪酸の混合物、とくにいくつかの不飽和脂肪酸を含有する混合物のトリグリセリドである。天然油を含有する希釈剤は、例えばいくつかのパーソナルケア製品に用いるのに好適であり得る。希釈剤はエステル交換植物油、ボイル天然油、吹込天然油又はスタンド油(熱重合油)のような天然油の誘導体とすることができる。
【0058】
希釈剤の量は、用いる場合、ワックス、オルガノポリシロキサン及び希釈剤の総重量の例えば最大60%、通常は5〜40%とすることができる。希釈剤はシロキサン、溶融ワックス相、又はそれらの両方と混和性であってもよい。多くの希釈剤がワックスと混和性で、ワックスの融点を低減するが、希釈剤の量はワックス及び希釈剤の混合物が20℃より低い融点を有するように多くないのが好ましい。
【0059】
任意適当な界面活性剤又は界面活性剤の組み合わせをワックスシリコーン分散体の乳化に用いることができる。生成するエマルジョンは水中油(o/w)又は油中水(w/o)型のいずれかとすることができる。界面活性剤は、一般に非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤とすることができる。界面活性剤の使用量は界面活性剤に応じて変動するが、一般にポリジオルガノシロキサンに対し最大約30重量%、例えば0.2〜20%である。
【0060】
非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシドとC4〜16アルコールのような長鎖脂肪アルコール若しくは脂肪酸との縮合物、エチレンオキシドとアミン若しくはアミドとの縮合物、エチレン及びプロピレンオキシドの縮合生成物、グリセロールのエステル、スクロース、ソルビトール、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フルオロ界面活性剤、脂肪アミンオキシド、ポリエチレングリコール長鎖(12〜14C)アルキルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー及びアルキルポリサッカリド、例えば米国特許第5,035,832号に記載されるような構造R24O−(R25O)−(G)の物質が挙げられ、式中のR24は線状若しくは分岐アルキル基、線状若しくは分岐アルケニル基又はアルキルフェニル基を表し、R25はアルキレン基を表し、Gは還元糖を表し、sは0又は正の整数を表し、tは正の整数を表す。代替非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルメチルエーテルのようなポリマー界面活性剤が挙げられる。ケイ素原子を含有する界面活性剤を用いることもできる。
【0061】
適当な市販の非イオン性界面活性剤の代表例としては、Uniqema(ICI Surfactants)社より商標BRIJで販売されるポリオキシエチレン脂肪アルコールが挙げられる。いくつかの例として、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルとして知られるエトキシル化アルコールであるBRIJ35Liquid、及びポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとして知られる別のエトキシル化アルコールであるBRIJ30がある。同様の物質はCroda Europe社により商標Volpo L23及びVolpo L4で販売されている。いくつかの追加の非イオン性界面活性剤としては、The Dow Chemical社より商標TERGITOLで販売されるTERGITOL TMN−6のようなエトキシル化アルコール、エトキシル化トリメチルノナノールとして知られるエトキシル化アルコール;及び各種エトキシル化アルコール、すなわち商標TERGITOL15−S−5、TERGITOL15−S−12、TERGITOL15−S−15及びTERGITOL15−S−40で販売されるC12〜C14第二級アルコールエトキシレートが挙げられる。
【0062】
適当な両性界面活性剤の例としては、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩及びベタインが挙げられる。具体的例としては、コカミドプロピルベタイン、ヒドロキシ硫酸コカミドプロピル、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N−ココ−3−アミノブチル酸及びイミダゾリニウムカルボキシル化合物が挙げられる。
【0063】
カチオン性界面活性剤の例としては、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化タロウトリメチルアンモニウム及び水酸化ココトリメチルアンモニウムのような第四級アンモニウム水酸化物、並びにこれらの物質の対応する塩、脂肪アミン及び脂肪酸アミド並びにこれらの誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリンの第四級アンモニウム塩基並びにポリプロパノールポリエタノールアミンが挙げられる。適当なカチオン性界面活性剤の他の代表例としては、アルキルアミン塩、スルホニウム塩、及びホスホニウム塩が挙げられる。
【0064】
適当なアニオン性界面活性剤の例としては、硫酸ラウリルのような硫酸アルキル;アクリル酸/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマーのようなポリマー;ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチルベンゼンスルホン酸及びミリスチルベンゼンスルホン酸のようなアルキルベンゼンスルホン酸及び塩;モノアルキルポリオキシエチレンエーテルの硫酸エステル;アルキルナフチルスルホン酸;アルカリ金属スルホリシネート;ココナツ油酸のスルホン化モノグリセリドのような脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル;スルホン化一価アルコールエステルの塩;アミノスルホン酸のアミド;脂肪酸ニトリルのスルホン化物;スルホン化芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物;オクタヒドロアントラセンスルホン酸ナトリウム;アルカリ金属アルキル硫酸塩;硫酸エステル;並びにアルカリールスルホン酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属石鹸;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸塩;長鎖脂肪アルコール硫酸塩;硫酸オレフィン及びスルホン酸オレフィン;硫酸化モノグリセリド;硫酸化エステル;スルホン酸化エトキシル化アルコール;スルホコハク酸エステル;スルホン酸アルカン;リン酸エステル;イセチオン酸アルキル;タウリン酸アルキル;並びにサルコシン酸アルキルが挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤の一例は、商品名Bio−SoftN−300で市販されている。これはStephan社より販売されるスルホン酸トリエタノールアミン線状アルキレート組成物である。
【0065】
上記界面活性剤は単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0066】
重合触媒はさらに界面活性剤、又は乳化プロセスに含まれる界面活性剤の1つとすることができる。界面活性剤として作用し得る触媒のファミリーは式R20SOHの酸性縮合触媒、例えばドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0067】
好適な方法において、ワックスと重合反応で生成する増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物が、反応生成物をペースト又は固体まで冷却する前に界面活性剤及び水と混合することにより乳化される。あるいはまた、ワックスと重合反応で生成する増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物を、ワックスの凝固温度より低い温度、例えば室温まで冷却することができる。これはシリコーン対ワックス比、ワックスの硬度及びオルガノシロキサンの分子量に応じてワックス及び重合オルガノポリシロキサンのペースト又は固体混合物をもたらす。ペースト又は固体はオルガノポリシロキサンにおけるワックスの非常に密接な分散体であり、又は逆も同様である。このペースト又は固体を分散体中のワックスの融点より高い温度まで再加熱し、界面活性剤及び水と混合することにより乳化することができる。
【0068】
本発明に係る1つの好適な乳化方法において、乳化は反応生成物を0.5〜20重量%の水と1〜30重量%の界面活性剤の存在下で混合することにより行われ、その後乳化したワックスオルガノポリシロキサン混合物の所望の濃度が達成されまで生成したエマルジョンを水と混合する少なくとも1つのステップを行う。乳化の初期混合ステップ中に存在する水の量は、例えば重合反応生成物に対し1〜10%とすることができる。少量のみの水をまず重合反応生成物に添加する方法では、とくに水の量が5%未満である場合、連続ワックス/シリコーン相及び分散水相を含有する油中水型エマルジョンを形成することができる。油中水型エマルジョンにせん断を加えることにより、油中水型エマルジョンの粘稠な水中油型エマルジョンへの位相反転がもたらされる。高せん断混合を、歯科用ミキサーのような粘度の高いペーストを扱うように設計されたミキサー中で行うのが好ましい。高せん断混合による少量の水のさらなる添加は、より多くの水を低せん断下で添加することにより水中油型エマルジョンを随意に希釈する前に行うことができる。
【0069】
エマルジョンの粒径は、例えば0.1〜100μmの範囲とすることができる。初期位相反転プロセスに用いる水及び界面活性剤の量は、最終エマルジョンの粒径に影響を与えることができる。例えば、2つの例においてエマルジョンが同量の水で形成されるが、第1の例では位相反転ステップ前に多量の水が混合され、第2の例では位相反転ステップ前に少量の水が混合された後、位相反転ステップ後に残った追加の水が混合される場合、第1エマルジョンは一般に第2のものより大きい粒径を有するだろう。どのように水が添加されようと、水の合計使用量は一般にエマルジョンの重量に対して約1〜99重量%、好適には約6〜約99重量%である。
【0070】
ポリオルガノシロキサン及びワックスの分散体を含有する製剤は、シリコーン製剤で既知の各種添加剤、例えば香料、日焼け防止剤、ビタミン、抗酸化剤、薬剤、殺生物剤、害虫忌避剤、触媒、天然抽出物、ペプチド、加温効果及び冷却剤、又は充填剤、染料、顔料若しくはシマーのような着色剤、熱安定剤、難燃剤、UV安定剤、殺菌剤、殺生物剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、凍結融解安定剤若しくはpHを中和する無機塩のような「活性物質」を含有することができる。こうした物質はオルガノポリシロキサン及びワックスの混合物に、重合前、重合中又は重合後に添加することができる。重合後に添加する場合、これらを反応生成物が乳化される前又は後に添加することができる。
【0071】
「活性物質」は重合オルガノポリシロキサンを用いる製剤において効果を有することを意図している有機物質である。高分子量シリコーンは家庭用ケア及びパーソナルケア用途においてしばしば香料又は香油のような有機活性物質成分と併せて用いられる。かなりの量の高価な活性物質、例えば香料が使用中にしばしば消費されて、最終使用者の利益に貢献することがない。本発明者らは、本発明に従ってオルガノポリシロキサンをワックスの存在下で重合することにより、香料をワックス及び重合オルガノポリシロキサンの混合物に混和して、香料のみを徐々に放出する保存安定な製品を得ることができ、香料又は他の活性物質を所望の環境において放出するために制御し得ることを見出した。制御された放出は、とくに活性物質を重合前、重合中又は重合後だが、反応生成物が乳化される前に添加する場合に達成することができる。
【0072】
活性物質の一例は香料組成物(香料)である。香料組成物は固体又は液体であってもよく、単一の香料化合物又は天然香油であってもよく、若しくは香料化合物及び/又は天然油の混合物であってもよい。かかる天然油及び香料化合物の例は国際公開第01/25389号公報に記載され;これら天然油及び香料化合物はとくに家庭用又はパーソナル用途の洗浄組成物、例えば粉末若しくは液体洗濯洗剤、柔軟剤若しくはアイロンがけ補助剤、又は芳香剤に用いるのに適したものである。香料組成物はまた、スキンクリーム、シャンプー若しくはフェイスクリームのようなパーソナルケア製品、又はファンデーション若しくはマスカラのようなカラー化粧品製品に混入するための香料であってもよく、又は例えば食品若しくは食品パッケージングに用いる香味若しくは芳香化合物であってもよい。香料組成物はまた、香料化合物の反応生成物のような化学的に保護された香料化合物を含むことができる。
【0073】
一般に、香料は溶融有機ワックスに容易に溶解する。香料をワックスと混合し、次いで加熱してワックスを溶融することができるか、又はワックスを溶融し、次いで香料と混合することができるか、若しくは溶融ワックスをオルガノポリシロキサン出発物質と混合し、次いで香料と混合することができる。あるいはまた、香料を重合反応中、すなわち触媒が添加された後ポリシロキサン及びワックスと混合するか、又はワックスがまだ溶融している間に反応生成物と混合することができる。
【0074】
ワックスシリコーン組成物中に混和し得る活性物質の代替タイプとしては、日焼け防止物質、抗酸化剤、ビタミン、害虫忌避剤並びに加温効果及び冷却剤(皮膚に温感又は冷感を与える物質)が挙げられる。日焼け防止剤の例としては、パラアミノ安息香酸誘導体及びケイ皮酸エステル、例えばメトキシケイ皮酸オクチル又はp−メトキシケイ皮酸2−エトキシエチルのような約290〜320ナノメーター(UV−B領域)の紫外線を吸収するもの;並びにベンゾフェノン及びブチルメトキシジベンゾイルメタンのような320〜400ナノメーター(UV−A領域)の範囲内の紫外線を吸収するものが挙げられる。ビタミンの例はビタミンA及びE、レチノール並びにトコフェロールである。メントールは冷却剤の一例である。これら物質をパーソナルケア製品に用いることができる。日焼け防止剤及びビタミンをスキンクリーム及びローションに用い、本発明に係るワックスシリコーン混合物に混和した場合にのみ徐々に放出される。ワックスシリコーン混合物に混和した冷却剤をスキンケア組成物に用いて、組成物を皮膚に擦り込む際に冷却剤の長期放出をもたらすことができる。害虫忌避パーソナルケア製品は、例えばクリーム、スティック又はスプレーの形態とすることができ、害虫忌避剤のパーソナルケア製品からの制御された放出が製品を皮膚に塗布した後に要求される。
【0075】
本発明はまた、薬剤を本発明に係るワックスシリコーン混合物に混和し、この混合物を皮膚に塗布する組成物に用いて薬剤を経皮送達により投与することにより薬剤(医薬活性物質)の制御された放出をもたらすのに用いることができる。
【0076】
ワックスシリコーン混合物に混和し得る活性物質のさらなる代替タイプは、例えば混合物を含む組成物の細菌による分解からの長期間の保護をもたらすか、又は組成物を塗布した基質に長期間の殺生物効果をもたらすための殺生物剤である。
【0077】
ワックスシリコーン混合物中に混和し得る活性物質のさらなる代替タイプは触媒である。硬化触媒を混和したワックスシリコーン混合物を、例えば制御された放出が有利であるコーティング又は接着剤に用いて、著しく急速に硬化することなく完全な硬化をもたらすことができる。
【0078】
ワックスは、活性物質をワックスシリコーン混合物の直面する温度又は環境の変化に応じて放出するように選択することができる。例えば、ワックスの融点は、ワックスシリコーン混合物をアイロンがけ補助用製品に用いる際に香料をアイロンがけ温度より高い温度で放出するように選択することができる。あるいはまた、ワックスシリコーン混合物を水中で使用する製品、例えば柔軟剤に用いる際に香料を徐々に放出するようにワックスは水に難溶性とすることができる。例えば、ポリエチレングリコールポリエーテルワックスは水に難溶性である。
【0079】
本発明のエマルジョンは毛髪、皮膚、粘膜又は歯のようなパーソナルケア用途に有用である。これらの用途において、シリコーンは滑らかで、スキンクリーム、スキンケアローション、モイスチャライザー、にきび又はしわ除去剤のようなフェイシャルトリートメント、シャワージェル、液体石鹸、ハンドサニタイザー及びワイプのようなパーソナル及びフェイシャルクレンザー、バスオイル、香水、香料、オーデコロン、サシェット、デオドラント、サンプロテクションクリーム、ローション及びワイプ、ファンデーション及びマスカラのようなカラー化粧品、セルフタンニングクリーム、ローション及びワイプ、プレシェーブ及びアフターシェーブローション、アフターサンローション及びクリーム、発汗抑制スティック、軟質固体及びロールオン、ひげそり石鹸及びひげそり泡の特性を向上させるだろう。同様に、これはヘアシャンプー、洗い流すタイプ及び洗い流さないタイプのヘアコンディショナー、スプレー、ムース及びジェルのようなヘアスタイリング助剤、染毛剤、縮毛矯正剤、パーマネント、脱毛剤、及びキューティクルコートに用いて、例えばスタイリング及びコンディショニング上の利点をもたらすことができる。化粧品において、シリコーンはメイクアップ、カラー化粧品、コンパクトジェル、クリーム及び液体ファンデーション(油中水型及び水中油型エマルジョン、又は無水ローション)、頬紅、アイライナー、アイシャドー、マスカラ及びメイクアップリムーバーにおける顔料の均染及び展着剤として機能する。同様に、シリコーン及びワックスのエマルジョンはビタミン、香料、皮膚軟化剤、着色剤、有機日焼け防止剤、又は医薬品のような油溶性及び水溶性物質の送達システムとして有用である。エマルジョンをパーソナルケア製品に用いる場合、ポリオルガノシロキサンは一般にパーソナルケア製品の約0.01〜約50重量パーセント、好適には0.1〜25重量パーセントを構成する。
【0080】
本発明に従って生成したエマルジョンはまた、塗料、水性コーティング、織物繊維トリートメント、皮革用潤滑剤、柔軟剤、洗濯用途における仕上げ剤、ホームケア、剥離剤及び石油ドラッグ低減のような他の用途、並びにシリコーンエマルジョンを従来用いる他の領域においても有用である。ワックス/シリコーン分散体は、とくにワックスが炭化水素ワックスである場合、向上した炭化水素流体との相溶性に起因する石油ドラッグ低減に特定の利点を有する。
【0081】
本発明を以下の実施例により説明し、ここで部及び%は重量による。触媒レベルはppmで示し、ポリシロキサン含有量に基づく。
【0082】
混合物中のシロキサンの分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した。分析は、トリプル検出(屈折率検出器、粘度計及び光散乱検出器)及び溶剤としてトルエンを用いるGPC(Alliance Waters 2690)により行った。分子量平均値は、ポリスチレン狭標準(Mw 70,950g/モル)を用いて単一点上で達成したトリプル検出較正に対する汎用較正により求めた。
【0083】
冷却した混合物の稠度はASTM D217−97に従って針入度計を用いて25℃で試験し、結果をmm/103秒で示す。
【0084】
(実施例1)
20部の約55℃の融点を有するDow Corning HY−3050大豆ワックスを80部のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(Brookfield LV DV−E粘度計により測定して25℃で70mPa.sの粘度、2500g/モルのMn及び3500g/モルのMwを有する)と80℃で混合、溶融して液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した100万分の30部(ppm)のイオン性ホスファゼン[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加した。重合を1リットルのガラス反応器において80℃で真空下行った。重合は14分後、0.012部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。重合ポリジメチルシロキサンはMn96kg/モル及びMw131kg/モルを有する。
【0085】
0.8gのVolpo L4及び1.2gのVolpo L23ポリオキシエチレンラウリルエーテル非イオン性界面活性剤と、1gの水とを20gの上記分散体に80℃で添加し、20秒間3000rpmでHausschild歯科用ミキサーにおいて混合することによりエマルジョンを調製した。追加の1.0gの水を添加し、混合を同じ条件下で繰り返した。1.0gの水の添加及び混合をさらに4回繰り返した。さらなる水の添加及びその後の混合を、合計で18gの水が添加されるまで行って、50%の活性物質含有量を有する乳白色のエマルジョンを得た。このようにして得たエマルジョンはD(v,0.5)μm=0.61及びD(v,0.9)μm=1.13(Malvern Mastersizer 2000を用いて測定)の粒径を有する。
【0086】
(実施例2)
20部のDow Corning HY−3050大豆ワックスを60部の実施例1のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン及び20部の「Gemseal 25」(Total社より供給)化粧品グレード鉱油と60℃で混合、溶融して液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した30ppmの[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加した。重合を1リットルのガラス反応器において60℃で真空下行った。重合は31分後、0.009部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。重合ポリジメチルシロキサンはMn73kg/モル及びMw103kg/モルを有する。
【0087】
2gのBASF社より販売されるLutensol T08エトキシル化オキソアルコール非イオン性界面活性剤及び1gの水を25gの上記分散体に60℃で添加し、20秒間3000rpmでHausschild歯科用ミキサーにおいて混合することによりエマルジョンを調製した。追加の1.0gの水を添加し、混合を同じ条件下で繰り返した。1.0gの水の添加及び混合をさらに3回繰り返し、80%の活性物質(シリコーン+有機物)含有量を有するクリームを得た。得られたクリームはD(v,0.5)μm=0.28及びD(v,0.9)μm=0.50(Malvern Mastersizer 2000を用いて測定)の粒径を有する。
【0088】
(実施例3)
20部の約68.5〜72.5℃の範囲の融点を有するカンデリラワックス(Strahl & Pitsch社から商品名SP75で供給)を75℃で溶融し、80部の実施例1のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンと75℃で混合して液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した20ppmの[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加した。重合を1リットルのガラス反応器において75℃で真空下行った。重合は29分後、0.013部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。液/液分散体、すなわちワックス及び高分子量ポリジメチルシロキサンのエマルジョンを生成し、室温まで冷却した。重合ポリジメチルシロキサンはMn221kg/モル及びMw285kg/モルを有する。分散体は19mm/103秒の針入度を有した。
【0089】
(実施例4)
実施例1の重合反応を、10部のDow Corning HY−3050大豆ワックス及び90部のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを70℃で用い、10ppmの触媒を用いて繰り返した。反応は2分後、0.008部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。重合ポリジメチルシロキサンはMn467kg/モル及びMw567kg/モルを有する。分散体を70℃で4時間保存し、マクロ相分離のあらゆる兆しを示すことなく室温まで冷却した。分散体は40mm/103秒の針入度を有した。
【0090】
(実施例5)
20部の約28〜38℃の融点範囲を有するシアバター(Dow Corning社から商品名HY−3003で供給)を80部の実施例1のジメチルヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンと70℃で混合、溶融して液/液分散体を形成した。ジクロロメタンで希釈した10ppmの[Cl(PCl=N)PCl[PClを触媒として添加した。重合を1リットルのガラス反応器において70℃で真空下行った。重合は2分後、0.007部のトリヘキシルアミンの添加により停止した。バター及び高分子量ポリジメチルシロキサンの液/液分散体を生成し、室温まで冷却してペーストを形成した。生成した重合ポリジメチルシロキサンはMn383kg/モル及びMw464kg/モルを有する。分散体は56mm/103秒の針入度を有した。
【0091】
油中水型エマルジョンのフェイシャルクリームを、実施例3〜5で得た混合物を用いて調製した。製剤を以下の表に示す。
【表1】

【0092】
以下の方法を用いた:
1.A相成分をともに混合し、溶融するまで水浴下で85℃まで加熱
2.B相成分をともに混合し、85℃まで加熱
3.B相をA相に1000rpmで徐々に添加
4.B相をすべて添加した際に、さらに5分間1800〜2000rpmで混合
5.徐々に混合しながら室温まで冷却
【0093】
すべてのフェイシャルクリーム製剤は少なくとも1か月間室温及び40℃で均質かつ安定だった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサンを溶融ワックスとの混合物中で重合してワックスと増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物を形成し、該ポリマー及び溶融ワックスの混合物を界面活性剤の存在下水中で乳化することを特徴とするポリオルガノシロキサン及びワックスの水性エマルジョンの製造方法。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサンが少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンであり、該ヒドロキシル又は加水分解性基の触媒縮合により重合してシロキサン結合を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンが環状オルガノポリシロキサンを含み、該環状オルガノポリシロキサンの開環の触媒プロセスにより重合してシロキサン結合を形成することを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンが少なくとも1つのケイ素に結合したヒドロキシル又は加水分解性基を含有する実質的に線状のオルガノポリシロキサンと、1分子当たり平均3個以上のアルコキシ基を有するアルコキシシランとの混合物であり、該実質的に線状のオルガノポリシロキサンとアルコキシシランとの触媒シロキサン縮合により重合して分岐オルガノポリシロキサン構造を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記実質的に線状のオルガノポリシロキサンがケイ素に結合した末端ヒドロキシル基を有し、10mPa.s〜500mPa.sの粘度を有するポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記重合をホスファゼン触媒若しくはルイス酸又は塩基により触媒されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ワックスが30〜80℃の範囲内の融点を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ワックスが炭化水素ワックス、エステルワックス又はシリコーンワックスであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記重合中に存在するオルガノポリシロキサンのワックスに対する重量比が95:5〜40:60であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ワックスと重合反応で生成する増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物を、反応生成物がペースト又は固体に冷却される前に乳化することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ワックスと重合反応で生成する増加した分子量のオルガノポリシロキサンとの混合物をペースト又は固体に冷却し、その後加熱してワックスを溶融し、該ワックスの融点より高い温度で乳化することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー及びワックスの混合物を1〜20重量%の水と1〜30重量%の界面活性剤の存在下で混合することにより乳化を行い、その後生成したエマルジョンを水中の乳化ワックスオルガノポリシロキサン混合物の所望の濃度が達成されるまで水と混合するステップを少なくとも1回行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
分散相がワックスと該ワックスの存在下での重合により形成したオルガノポリシロキサンとの混合物であることを特徴とするシリコーン水中油型エマルジョン。
【請求項15】
前記オルガノポリシロキサンが少なくとも100,000の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項14に記載のシリコーン水中油型エマルジョン。

【公表番号】特表2012−522032(P2012−522032A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502643(P2012−502643)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054220
【国際公開番号】WO2010/115782
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】