説明

オレフィン系重合体組成物及びそれを用いた易開封性シール材料

【課題】 易開封性シール材料として好適な、とくにはポリプロピレン製容器の蓋材シーラントとして好適な、密封性、低温ヒートシール性、易開封性、開封部の外観に優れ、ヒートシール強度の温度依存性が少なく、また耐油性に優れたオレフィン系重合体組成物を提供すること。
【解決手段】 不飽和エステル含量が3〜20重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)を30〜98重量部、不飽和エステル含量が25〜50重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(E−2)を1〜40重量部、ワックス(F)を1〜30重量部及び粘着付与樹脂(D)を0〜30重量部の割合で配合してなるオレフィン系重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の材料に対し、優れた密封性と易開封性を示すオレフィン系重合体組成物及びこれを用いた易開封性シール材料に関する。とりわけポリプロピレン用の易開封性シール材料として有用なオレフィン系重合体組成物及び該組成物からなる易開封性シール材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ麺、ゼリー、ヨーグルト、豆腐など各種飲食品や医薬品の容器として、易開封性蓋材を備えたプラスチック容器が広く使用されている。このような易開封性蓋材のシール層に用いられる押出ラミネート加工可能なシール材料として種々のものが提案され、また実用化されてきた。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・アクリル酸エチル共重合体と粘着付与樹脂の組成物、これにポリエチレンや低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体などを配合した組成物などが、密封性と易開封性とを備えたシール材料となることが知られている(例えば、特公昭63−29894号、特公平1−3895号などの各公報)。
【0003】
しかしながら容器本体に使用されるプラスチック材料の種類も増え、新しい材料に対しては従来のシール材では充分に対応できないものもあり、新たなシール材の出現が望まれている。また既存のプラスチック材料を使用した容器であっても、用途によっては望まれるヒートシール特性が異なっていたり、また他の特性が要求されたりすることがあり、このような要求に耐えられるようなシール材料も望まれている。
【0004】
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステルなどが容器材料として古くから使用されてきたが、透明性、耐熱性、衛生性、強度、コストなどの問題からポリプロピレンが多用されるようになってきた。このようなポリプロピレン容器に使用される蓋材としては、密封性と易開封性の観点から、低温ヒートシールが可能であってヒートシール強度の温度依存性が小さく、容器本体と適度なヒートシール強度を有し、開封時の剥離感が優れ、開封部の外観が優れるものが求められていた。
【0005】
また、プリン、ゼリー、シロップ漬け果物等の包装用途においては、内容物を容器口部一杯に充填すると、開封時に内容物が漏れ出すことがあるので、内容物と蓋材との間に少し空間を設ける程度に充填し、密封包装される。そして充填・包装後は、殺菌のために85〜95℃において数十分間熱水中でボイル処理される。そのためこのような用途においては、ボイル処理時に容器空間の空気膨張によってシール部が破壊されないことや、ボイル処理によるシール強度の変動がないことなども求められていた。
【0006】
また油性食品の包装用途においては、耐油性に優れることが望まれており、とくにレトルト処理を施す用途においては、100℃を超える温度で耐油性を示す易開封性シール材料が求められていた。
【0007】
さらに小容量のポリプロピレン製容器に対しては、比較的ヒートシール強度レベルが低く、かつ剥離するときの強度が均一でソフト感のあるものが求められていた。
【0008】
ところがポリプロピレン製容器に対しては、上記のような各要請を満足するようなシール材料は見出されていないのが現状であった。例えば上述した先行技術における易開封性シール材料においては、一般的に軟化点が低く、耐油性、耐熱性が充分でないため、上記したボイル処理やレトルト処理が必要とされる用途あるいは耐油性を要求される用途では問題となることがあった。とくに従来の易開封性を示すほとんどのシール材料においては、一般的な衛生試験の一つであるn−ヘプタンでの溶出試験における蒸発残留物量が多く、油性食品用途で100℃を越えるような条件では使用できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭63−29894号公報
【特許文献2】特公平1−3895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明者は、上記した要求性能の1以上を満足し、したがってポリプロピレン容器用に好適な易開封性シール材を見出すべく検討を行った。その結果、後記するようなオレフィン系重合体組成物が、所望の要求性能を満たすことを見出すに至った。
【0011】
したがって本発明の目的は、易開封性シール材料として好適な、とくにはポリプロピレン製容器の蓋材シーラントとして好適な重合体組成物を提供することにある。さらに詳細には、第一に、密封性、低温ヒートシール性、易開封性、開封部の外観に優れ、ヒートシール強度の温度依存性が少なく、また100℃の熱水処理によってもシール強度の変動が少ないシール材料となるオレフィン系重合体組成物を提供することにある。その特別な態様によれば、上記諸特性を備えた上で、油性食品用途において100℃を越えて使用可能なシール材料となるオレフィン系重合体組成物を提供することができる。第二に、密封性、低温ヒートシール性、易開封性、開封部の外観に優れ、ヒートシール強度の温度依存性が少なく、また耐油性に優れたオレフィン系重合体組成物を提供することにある。第三に、密封性、低温ヒートシール性、易開封性、開封部の外観に優れ、ヒートシール強度が比較的小さく、剥離するときの強度が均一でソフト感のあるオレフィン系重合体組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、このようなオレフィン系重合体組成物を用いた易開封性シール材料、及び基材にこのようなシール材料を積層してなる包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
の発明によれば、不飽和エステル含量が3〜20重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)を30〜98重量部、不飽和エステル含量が25〜50重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(E−2)を1〜40重量部、ワックス(F)を1〜30重量部及び粘着付与樹脂(D)を0〜30重量部の割合で配合してなるオレフィン系重合体組成物、それを用いた易開封性シール材料、及び、基材にこのような易開封性シール材料を積層した包装材料が提供される。
【発明の効果】
【0014】
上記オレフィン系重合体組成物をポリプロピレンに対する易開封性シール材料として使用すると、ヒートシール強度の温度依存性が小さく、広い温度範囲でシールして、シール強度が比較的小さく、密封性、易開封性、開封部の外観に優れ、剥離強度の均一性に優れたシール層を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[プロピレン系重合体(A)]
第一の発明及び第二の発明において使用されるプロピレン系重合体(A)は、プロピレンの単独重合体又はプロピレンを主体とするプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体である。上記プロピレンの共重合体における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜20程度のα−オレフィンを例示することができる。このような他のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組み合わせて共重合させてもよい。
【0016】
これらプロピレン系重合体の中では、プロピレン単独重合体あるいはプロピレンと炭素原子数が2〜4のα−オレフィンのランダム共重合体、例えばα−オレフィン含量が20モル%以下、とくに10モル%以下のプロピレンとエチレンのランダム共重合体又はプロピレンとエチレンと1−ブテンのランダム共重合体を使用することが好ましい。またシール材料として充分な耐熱性、耐油性等を付与するためには、示差走査熱量計に基づく融点が125℃以上、とくに130〜170℃の高結晶性の単独重合体又はランダム共重合体であることが好ましい。また耐熱性、耐油性、押出加工性などを考慮すると、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(ASTM D1238)が0.1〜500g/10分、とくに0.5〜100g/10分程度のものを使用するのが好ましい。このようなプロピレン系重合体は、立体特異性触媒の存在下で、プロピレンを重合するかあるいはプロピレンと1種以上の他のα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。プロピレン系重合体(A)としてはまた、2種以上組合せて使用することができる。
【0017】
[エチレン系重合体(B)]
密度が900kg/m以上のエチレン系重合体(B)は、エチレンの単独重合体又はエチレンを主成分とし、炭素数3〜20程度のα−オレフィンの1種又は2種以上を副成分とするエチレン・α−オレフィン共重合体であって、結晶性の高い重合体である。上記共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が3〜20程度のα−オレフィンを例示することができる。エチレン系重合体(B)としてより具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)などである。このようなエチレン系重合体(B)は、チーグラー型触媒、カミンスキー型触媒(メタロセン型触媒)、ラジカル重合触媒などを使用し、中・低圧法あるいは高圧法によって製造することができる。例えば直鎖低密度ポリエチレンはいかなる触媒系で製造されたものであってもよく、例えばカミンスキー型触媒を代表例とするシングルサイト触媒やチーグラー型触媒を代表例とするマルチサイト触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンを共重合したものを使用することができる。
【0018】
エチレン系重合体(B)としては、密度が900kg/m以上、好ましくは910〜970kg/m、一層好ましくは915〜960kg/mのものを使用するのが望ましい。また190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が0.1〜500g/10分、とくに1〜150g/10分のものを使用するのが好ましい。エチレン系重合体(B)は、2種以上組合せて使用することができる。尚、本発明においてエチレン系重合体(B)の密度は、30分間沸水処理した材料を、JIS K7112のD法(密度勾配管法)により測定した。
【0019】
[非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)]
第一の発明において使用される非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、エチレンを主成分とする炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体、とくに好ましくはランダム共重合体であって、X線回折に基づく結晶化度が通常0〜40%、好ましくは3〜30%のものである。共重合体(C)としてはまた、密度が895kg/m以下、とくに860〜890kg/mのものが好ましい。共重合体(C)における炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が3〜20程度のα−オレフィンを例示することができるが、とくに炭素数3〜8程度のα−オレフィンが好ましい。共重合体(C)としてはまた、加工性、耐油性などを考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(ASTM D1238)が0.1〜500g/10分、とくに1〜150g/10分のものを使用するのが好ましい。このような共重合体は、例えば遷移金属触媒成分、例えばバナジウム化合物やジルコニウムのメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、共重合体中のエチレン含量が50〜95モル%、好ましくは70〜94モル%、さらに好ましくは82〜93モル%程度になるように、エチレンとα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。これら非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体も2種以上併用することができる。尚、本発明においてエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の密度は、ASTM D1505に準拠し、アニ−ルなしで密度勾配管法により測定した。
【0020】
[粘着付与樹脂(D)]
本発明において使用される粘着付与樹脂(D)は、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。脂肪族系炭化水素樹脂の例としては、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなど炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
【0021】
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。ポリテルペン系樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
【0022】
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の1種又は2種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0023】
本発明のオレフィン系重合体組成物を飲食品包装用の易開封性シール材料として使用する場合には、無臭性、食品衛生性、他成分との混和性などを考慮すると、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂あるいはポリテルペン系樹脂を使用することが好ましい。
【0024】
[エチレン・不飽和エステル共重合体(E)]
第一の発明で使用されるエチレン・不飽和エステル共重合体(E)としては、不飽和エステル含量が3〜30重量%、好ましくは4〜25重量%の範囲のものである。第一の発明において、共重合体(E)として不飽和エステル含量が過度に少ないものを使用すると、ポリプロピレンに対するシール強度が小さくなり、密封性に問題を生じるので好ましくない。逆に不飽和エステル含量が過度に多いものを使用すると、べたつきや耐油性の悪化を引き起こすので好ましくない。
【0025】
エチレン・不飽和エステル共重合体(E)の不飽和エステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステルを例示することができる。とくに好ましいのは酢酸ビニル及びアクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステルである。エチレン・不飽和エステル共重合体(E)は2種以上混合して使用することができる。
【0026】
エチレン・不飽和エステル共重合体(E)はまた、加工性、シール強度、耐油性等を勘案すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が0.1〜500g/10分、とくに1〜150g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0027】
[エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)]
第二の発明で使用されるエチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)は、不飽和エステル含量以外は、上記したエチレン・不飽和エステル共重合体(E)と同じである。エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)としては、不飽和エステル含量が3〜20重量%、好ましくは5〜20重量%のものが使用され、またエチレン・不飽和エステル共重合体(E−2)としては、不飽和エステル含量が25〜50重量%、好ましくは25〜35重量%のものが使用される。このような2種のエチレン・不飽和エステル共重合体を適当な割合で併用することにより、ポリプロピレンに対し適度なシール強度を有し、また均一な剥離強度を有するシール材料となる組成物を得ることができる。第二の発明において、共重合体(E−1)のみを使用した場合には均一な剥離強度を有する組成物は得られず、また共重合体(E−2)のみを使用した場合には組成物にべたつきが生ずると共に、耐熱性が不足し、またポリプロピレンに対し適正なシール強度を有する組成物が得られない。
【0028】
エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)における不飽和エステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステルを例示することができる。とくに好ましいのは酢酸ビニル及びアクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステルである。共重合体(E−1)及び(E−2)はそれぞれ2種以上使用してもよく、また共重合体(E−1)と(E−2)の不飽和エステルは同一あるいは異なるものである。
【0029】
エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)はまた、加工性、シール強度、耐油性等を勘案すると、それぞれ190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が0.1〜500g/10分、とくに1〜150g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0030】
[ワックス(F)]
第二の発明で使用されるワックス(F)は、合成ワックスであっても天然ワックスであってもよい。合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュ法で得られる合成ワックスなどを例示することができる。ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックスは、オレフィンを低重合して得られるものであってもよく、また高分子量のポリエチレンやポリプロピレンを熱分解して得られるものであってもよい。ポリオレフィンワックスとしてはまた、数平均分子量が500〜10000、とくに1000〜8000程度、環球法による軟化点が100〜150℃、とくに100〜130℃程度のものを使用するのが好ましい。ポリオレフィンワックスとしてはまた、酸化変性や不飽和カルボン酸又はその無水物によるグラフト変性などの変性を施したものであってもよい。また天然ワックスとしては、石油留分から分離されるパラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックスなどを例示することができる。これらの中ではとくにポリオレフィンワックスを使用するのが好ましい。
【0031】
[オレフィン系重合体組成物(1)]
第一の発明のオレフィン系重合体組成物(1)においては、エチレン・不飽和エステル共重合体(E)、プロピレン系重合体(A)、非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)及び粘着付与樹脂(D)を所定割合で配合することが重要である。すなわち(E)、(A)、(C)及び(D)の合計量を100重量部とするときに、エチレン・不飽和エステル共重合体(E)を20〜97重量部、好ましくは25〜50重量部、一層好ましくは20〜40重量部、プロピレン系重合体(A)を1〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、一層好ましくは5〜20重量部、非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)を1〜50重量部、好ましくは10〜45重量部、一層好ましくは20〜45重量部、また粘着付与樹脂(D)を1〜30重量部、好ましくは5〜25重量部、一層好ましくは10〜25重量部の割合で配合する。プロピレン系重合体(A)の適量の配合により耐油性が改良されるが、配合量が多くなり過ぎるとポリプロピレンに対し広範囲なシール温度領域で適正なシール強度を示さず、また加工性を損なうことになる。また非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)を適量配合することによりシール性が改善されるが、多くの場合、過度に配合するとオレフィン系重合体組成物(1)の加工性が損なわれるようになるので上記のような割合で配合される。また粘着付与樹脂(D)の添加によりシール性が改善されるが、多くの場合、過度に配合するとオレフィン系重合体組成物(1)の加工性や耐油性が損なわれるようになるので上記のような配合割合とされる。
【0032】
第一の発明のオレフィン系重合体組成物(1)には、シール強度の調整のために、他の熱可塑性樹脂、例えば密度が900kg/m以上の上記したエチレン系重合体(B)、ポリ−1−ブテン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物などを少量、例えば(E)、(A)、(C)、(D)の合計量100重量部に対し、20重量部以下、とくに10重量部以下の割合で配合することができる。
【0033】
[オレフィン系重合体組成物(2)]
第二の発明のオレフィン系重合体組成物(2)においては、エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)、ワックス(F)及び必要によりさらに粘着付与樹脂(D)を所定割合で配合することが重要である。すなわち(E−1)、(E−2)、(F)及び(D)の合計量を100重量部とするときに、エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)を30〜98重量部、好ましくは40〜90重量部、一層好ましくは50〜80重量部、エチレン・不飽和エステル共重合体(E−2)を1〜40重量部、好ましくは5〜35重量部、一層好ましくは10〜30重量部、ワックス(F)を1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部、一層好ましくは2〜15重量部、また粘着付与樹脂(D)を0〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、一層好ましくは2〜15重量部の割合で配合する。また(E−1)、(E−2)、(F)及び(D)の合計量を100重量部とするときに、エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)の合計量を70〜95重量部、とくに75〜90重量部の割合で使用するのが好ましい。エチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)及び(E−2)を上記のような割合で併用することにより、押出ラミネート加工が可能で、ポリプロピレンに対し適度なシール強度を有し、またソフトな剥離感を有するシール材料となるオレフィン系重合体組成物()を得ることができる。またワックス(F)を適量配合することにより広範囲なシール温度領域で適正なシール強度を示す組成物とすることができるが、過度に使用すると組成物の加工性を損なうことになる。さらに粘着付与樹脂(D)を適量添加することにより添加によりオレフィン系重合体組成物()のシール性を改善することができるが、多くの場合、過度に配合するとその加工性や耐油性を損なうようになる。
【0034】
上記オレフィン系重合体組成物(2)には、シール強度の調整のために、他の熱可塑性樹脂、例えば密度が900kg/m以上の上記したエチレン系重合体(B)、ポリ−1−ブテン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物などを少量、例えば(E−1)、(E−2)、(F)、(D)の合計量100重量部に対し、20重量部以下、とくに10重量部以下の割合で配合することができる。
【0035】
第一及び第二の発明のオレフィン系重合体組成物(1)、(2)においては、任意に各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤の代表例としては、押出加工性、離ロール性、フイルムの滑り性などを改善する目的で使用される滑剤及び/又は離ロール剤を挙げることができる。より具体的には、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油、シリカ、タルクなどの無機質添加剤などである。これらの配合量は、無機質添加剤の場合は0.1〜3重量%程度、それ以外のものは0.01〜1重量%程度の範囲が適当である。
【0036】
任意に配合し得る他の添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料、染料などを例示することができる。
【0037】
本発明の各オレフィン系重合体組成物は、上記必須構成成分、及び任意に配合される熱可塑性樹脂や添加剤を、同時に又は逐次的に混合することによって調製することができる。オレフィン系重合体組成物(1)、(2)を調製するに当たっては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましく、その混合順序にはとくに制限はない。
【0038】
かくして得られる本発明のオレフィン系重合体組成物は、押出加工性やシール強度を考慮し、また上記したその他特性を充分に発揮させるためには、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が1〜400g/10分、とくに1〜150g/10分程度となるように調製されていることが望ましい。
【0039】
本発明のオレフィン系重合体組成物(1)、(2)は、易開封性シール材料、とくに包装材料の易開封性シール材料、とりわけポリプロピレンに対する易開封性シール材料として好適である。とくに前述したように、オレフィン系重合体組成物(1)において、厚生省告示370号に定められた条件で処理した場合のn−ヘプタン溶出試験における蒸発残留物量が30ppm以下のものは、油性食品用途で100℃を越えて使用可能なシール材料となる。上記のような用途に使用される場合、通常は各種基材に積層した形で使用される。かかる目的に使用される基材としては、紙、アルミニウム、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、(高衝撃)ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどを挙げることができる。このような基材は単層である必要はなく、2層以上の積層体であってもよい。
【0040】
本発明のオレフィン系重合体組成物を基材に積層させるには、該組成物を予めキャスト法やインフレーション法によりフイルム化し、ドライラミネーション法により基材と貼り合わせる方法、該組成物を直接基材上に押出コーティングする方法、ポリエチレン等を接着層として用い、基材上にサンドイッチラミネーションにより接着層を介して積層する方法、基材と該組成物を共押出する方法などを採用することができる。
【0041】
かくして得られる積層体は、各種包装材料として使用することができる。とくに各種容器、とりわけポリプロピレン製容器の蓋材として使用するときに密封性、易開封性、開封部の外観等に優れた蓋材となる。またポリプロピレン製容器のみならず、他の材料の容器、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の容器の蓋材としても利用できる。このような蓋付容器は、例えば、ゼリー、プリン、ヨーグルト、みつ豆、サワー、豆腐、乳酸飲料、和菓子、加工肉などの飲食物、薬品、医療容器、トナーなどの各種包装に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例において用いた原料は、以下の通りである。
【0043】
[原料]
(1)プロピレン系重合体(A)
PP−1:プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(エチレン含量3.6モル%(2.4重量%)、1−ブテン含量1.9モル%(2.5重量%)、密度910kg/m、メルトフローレート(MFR)(230℃)6g/10分)
PP−2:プロピレン・エチレンランダム共重合体(密度910kg/m、メルトフローレート(MFR)(230℃)25g/10分)
尚、上記プロピレン系重合体(A)の密度は、ASTM D1505に準拠し、アニ−ルなしで密度勾配管法により測定した値である。
【0044】
(2)エチレン系重合体(B)
LD−1:高圧法低密度ポリエチレン(密度923kg/m3、MFR(190℃)3.7g/10分)
LD−2:高圧法低密度ポリエチレン(密度917kg/m3、MFR(190℃)7.0g/10分)
LL−1:直鎖低密度ポリエチレン(密度920kg/m3、MFR(190℃)2.1g/10分)
LL−2:直鎖低密度ポリエチレン(密度923kg/m3、MFR(190℃)3.7g/10分)
HD:高密度ポリエチレン(密度954kg/m3、MFR(190℃)1.1g/10分)
mPE:直鎖低密度ポリエチレン(メタロセン触媒)(密度925kg/m3、MFR(190℃)4.0g/10分)
【0045】
(3)非晶性又は低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)
VL−1:低結晶性エチレン・1−ブテンランダム共重合体(エチレン含量89.1モル%、結晶化度10%、密度886kg/m3、MFR(190℃)4.0g/10分)
VL−2:非晶性エチレン・プロピレン共重合体(密度870kg/m3、MFR(190℃)2.9g/10分)
【0046】
(4)粘着付与樹脂(D)
P115:水素添加芳香族炭化水素樹脂(商品名:アルコンP115(荒川化学(株)製、環球法軟化点115℃)
P100:水素添加芳香族炭化水素樹脂(商品名:アルコンP100(荒川化学(株)製、環球法軟化点115℃)
【0047】
(5)エチレン・不飽和エステル共重合体(E)、(E−1)、(E−2)
EVA−1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量6重量%、メルトフローレート(MFR)(190℃)8g/10分)
EVA−2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量14重量%、MFR(190℃)15g/10分)
EVA−3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量19重量%、MFR2.5g/10分)
EVA−4:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量19重量%、MFR15g/10分)
EVA−5:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量28重量%、MFR15g/10分)
(6)ワックス(F)
WAX:酸化変性型ポリエチレンワックス(数平均分子量3000、酸価1.0KOHmg/g)
【0048】
[実施例1〜5(参考例)、比較例1〜3]
厚さ300μmのポリプロピレンシートにこの試験基材をそのポリオレフィン組成物面が当接するように重ね合わせ、180℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールして積層体を得た。この積層体から試験基材部を剥離したときの剥離強度を測定した。また剥離状況として、剥離強度を測定したサンプルのシール部分の糸曳き状態を観察し、糸曳きなし〜微少の状態をA、糸曳きの少ない状態をB、糸曳きの多い状態をCとした。これらの結果を表1に併記する。
【0049】
【表1】

【0050】
[実施例6〜8(参考例)、比較例4]
表2に示す配合組成のポリオレフィン組成物から30μmのインフレーションフイルムを作成し、これを延伸PET(厚さ12μm)と低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を接着層とするサンドイッチラミネーション法により積層し、試験基材を得た。この試験基材を用いて、昭和34年12月28日付け厚生省告示第370号、食品・添加物等の規格基準第三器具及び包装容器Dの2の(1)及びDの2の(2)の3による試験方法により、使用温度100℃を超える、熱融着層の片面溶出試験で蒸発残留物n−ヘプタン溶出量を評価した。これらの結果を表2に併記する。
【0051】
また実施例1と同様に、上記試験基材と厚さ300μmのポリプロピレンシートの積層体を作成し、剥離強度の測定と剥離状況の観察を行なった。これらの結果を表2に併記する。
【0052】
【表2】

【0053】
[実施例9〜12、比較例5〜6]
表3に示す配合組成のエチレン共重合体組成物から50μmのインフレーションフイルムを作成し、これを予め作成した延伸PET(厚さ12μm)/低密度ポリエチレン(厚さ20μm)からなる2層構成の積層フイルムのポリエチレンフイルム面側に、低密度ポリエチレン(厚さ20μm)を接着層とするサンドイッチラミネーション法により積層し、試験基材を得た。
【0054】
厚さ300μmのポリプロピレンシートにこの試験基材をそのエチレン共重合体組成物面が当接するように重ね合わせ、160℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールして積層体を得た。この積層体から試験基材部を剥離したときの剥離強度を測定した。また耐油性として、試験基材から2cm×4cm×3mmの試験片を作成し、これをサラダ油中に、40℃×5日間浸漬し、膨潤度を目視にて観察した。評価は、全く膨潤しない場合をA,若干膨潤する場合をB、膨潤してしまう場合をCとした。これらの結果を表3に併記する。
【0055】
【表3】

【0056】
[実施例13〜15、比較例7〜10]
予め作成した延伸PET(厚さ12μm)/低密度ポリエチレン(厚さ20μm)からなる2層構成の積層フイルムの低密度ポリエチレン面側に、表4に示す配合組成のエチレン共重合体組成物を30μm厚みで押出コーティングして試験基材を得た。
【0057】
厚さ300μmのポリプロピレンシートにこの試験基材をそのエチレン共重合体組成物面が当接するように重ね合わせ、160℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールして積層体を得た。この積層体から試験基材部を剥離したときの剥離強度を測定した。また同じ積層体を使用して試験基材部を剥離したときの剥離強度の均一性を、官能にて評価した。評価は、剥離強度が均一な場合をA、ジップ剥離してしまう場合をBとした。これらの結果を表4に併記する。
【0058】
【表4】

産業上の利用可能性
【0059】
本発明によれば、易開封性シール材料として好適なオレフィン系重合体組成物を提供することができる。とくにポリプロピレンに対してヒートシールする場合、密封性、低温ヒートシール性、易開封性、開封部の外観に優れ、ヒートシール強度の温度依存性が少ないオレフィン系重合体組成物を提供することができる。またオレフィン系重合体組成物のヒートシール強度は各成分の組成を変更させることにより調整することができるので、種々の用途分野で使用することができる。とくにオレフィン系重合体組成物においては、耐油性、耐熱性にも優れており、熱水処理をしてもシール強度の大きな変動がないので、レトルト食品や油性食品のシール材料として好適である。とりわけオレフィン系重合体組成物において、粘着付与樹脂の配合量が適正なものは油性食品用途で100℃を超える温度で使用可能である。また、オレフィン系重合体組成物(1)においても耐油性にすぐれており、油性食品のシール材として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和エステル含量が3〜20重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(E−1)を30〜98重量部、不飽和エステル含量が25〜50重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体(E−2)を1〜40重量部、ワックス(F)を1〜30重量部及び粘着付与樹脂(D)を0〜30重量部の割合で配合してなるオレフィン系重合体組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のオレフィン系重合体組成物からなる易開封性シール材料。
【請求項3】
基材に請求項2に記載の易開封性シール材料が積層されてなる包装材料。

【公開番号】特開2011−99111(P2011−99111A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6722(P2011−6722)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2005−506312(P2005−506312)の分割
【原出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】