説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる主に炭素数4のオレフィンを含んでなる液状炭化水素を原料として、オレフィン重合体の製造する際に、抽出溶剤による影響を低減もしくは排除し、触媒効率を向上させる方法を提供すること。
【解決手段】原料液状炭化水素を、アルミニウム原子含有処理剤に接触させた後に、酸触媒の存在下に重合させる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエン系製造時の炭化水素を抽出蒸留法で製造する際のラフィネートから得られる、主として炭素数4のオレフィンを含む液状の炭化水素原料を処理剤で処理した後に酸触媒存在下に重合するオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油類の分解生成物等の、ジエン、オレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素を含む炭化水素混合物から、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法によってジエン類を製造する際のラフィネート中に含まれる主として炭素数4のオレフィンを含む液状の炭化水素を、ルイス酸等の酸触媒の存在下に重合反応に供してオレフィン重合体を得るときに、特に高活性に注目して好んで使用されるAlCl3、BF3、TiCl4等のハロゲン含有酸触媒は、オレフィン重合体中にそのまま残存した場合に、長期的には製品の透明性等の特性を変化させ、あるいは、ハロゲン系不純物として商品価値を低下させる。そこで、通常、該触媒を失活処理および除去処理するが、これらの処理工程は、アルカリ性水溶液等による抽出、分離、精製、ろ過等の工程を含む煩雑な工程であり、特に、当該触媒が製造工程において反応系に溶解であると、アルカリ性水溶液等による抽出を高効率で行なうことが困難となることがある。
【0003】
たとえば、酸触媒の効率を高めて使用量を低下させることは、触媒コストの低減のみならず、触媒の失活工程および除去工程の負担が軽減されることになるので、根本的解決のひとつとなる。このためには、反応系に溶解する触媒を使用し、反応を均一系で進行させることおよび/または触媒を高活性化することが有効である。
しかし、AlCl3、BF3等のハロゲン含有酸触媒に配位子を組み合わせて活性を高めることができるが、該ハロゲン含有酸触媒が反応系の炭化水素に非溶解性である。一方、溶解性の触媒には上記のような後処理上の問題がある。
【0004】
重合反応の効率を高める方法として、原料中に含まれる重合抑制成分を除去することが考えられる。ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートを原料として、該ラフィネート中のイソブチレンから第3級ブタノールを製造する方法において、原料中の残存ジメチルホルムアミドを強酸性イオン交換樹脂を用いて吸着処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、オレフィンと強酸性イオン交換樹脂とが接触すると、オレフィンの重合反応が進行してしまうから、当該提案をオレフィンの重合反応へ転用するには大きな困難を伴なう。
【特許文献1】特開2000−34242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートであって、オレフィンとして主に炭素数4のオレフィンを含んでなる液状炭化水素を原料とし、炭化水素に可溶性の触媒を使用してオレフィン重合体を製造する方法において、抽出溶剤による影響を低減もしくは排除して、触媒効率を向上させ、かつ該触媒の失活処理および除去処理におけるアルカリ性水溶液等による抽出を高効率で行なう負担を低減する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明の第1は、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる炭化水素を含む、主として炭素数4のオレフィンを含むオレフィン5〜95質量%と主として炭素数4の飽和脂肪族炭化水素を含む飽和脂肪族炭化水素95〜5質量%(両者を合わせて100質量%とする。)からなる液状炭化水素を、アルミニウム原子含有処理剤に接触させた後に、酸触媒の存在下にオレフィンの一部または全部を重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0007】
本発明の第2は、本発明の第1において、前記酸触媒がハロゲン含有酸触媒であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0008】
本発明の第3は、本発明の第1または第2において、前記オレフィンがイソブテンを含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0009】
本発明の第4は、本発明の第2または3において、前記ハロゲン含有酸触媒が下式(1)、(2)のいずれかであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
AlRmXn (1)
(ここで、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、Xはハロゲン原子を表し、また、m、nは1または2で、m+n=3の関係にある。)
Al2RpXq (2)
(ここで、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、Xはハロゲン原子を表し、また、pは1以上5以下の整数、qは1以上5以下の整数でp+q=6の関係にある。)
【0010】
本発明の第5は、本発明の2〜4のいずれかにおいて、前記ハロゲン含有酸触媒が炭化水素可溶性であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0011】
本発明の第6は、本発明の第2〜5のいずれかにおいて、前記ハロゲン含有酸触媒がエチルアルミニウムジクロライドであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0012】
本発明の第7は、本発明の第1〜6のいずれかにおいて、前記アルミニウム原子含有処理剤が組成式Al2O3で表される成分を含む無機固体処理剤であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0013】
本発明の第8は、本発明の第1〜7のいずれかにおいて、前記アルミニウム原子含有処理剤がアルミナを含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【0014】
本発明の第9は、本発明の第1〜8のいずれかにおいて、前記抽出蒸留に使用される有機溶剤がジメチルホルムアミドであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、抽出蒸留のラフィネートから得られる炭素数4のオレフィンを含有する脂肪族炭化水素を原料とし、ハロゲン含有酸触媒等のルイス酸触媒の存在下でオレフィン重合体を製造する方法において、当該触媒の効率を高め、その使用量を低減することができ、触媒に係る生産コストを低減し、かつ、その後の触媒失活および/あるいは除去工程を簡素化あるいは省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のオレフィン重合体は、末端に二重結合を有する炭素数4のオレフィンを主たる構成成分とする重合体を意味する。本発明において、オレフィン重合体を得るための出発原料として、ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる、主として炭素数4のオレフィンを含むオレフィン含量5〜95質量%および主として炭素数4の飽和脂肪族炭化水素を含む飽和脂肪族炭化水素を95〜5質量%(両者を合わせて100質量%とする。)からなる液状炭化水素を用いる。抽出蒸留の原料としては、石油精製または石油化学工業で得られるジエン、オレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素の混合物が挙げられる。たとえば、ブタジエンを得る場合の原料としては、ナフサ分解によりエチレン・プロピレン等を製造する際に生成する主として炭素数4の留分(C4留分、粗ブタジエン、B−B留分等と称されている)、ガスオイルの高温分解によっても同様の留分が得られる。あるいは、流動接触分解(FCC)による石油類の分解生成物、ブタン、ブテンの接触脱水素反応生成物等から得られるものを使用できる。炭素数5のジエンであるイソプレンを得る場合には、炭素数5の原料留分を使用する。
【0017】
このようなジエン含有原料からブタジエン等のジエンを分離することは、多くの化合物の沸点が近接していることおよび共沸混合物が形成されることから単蒸留では不可能である。そのため、溶剤を用い抽出蒸留によってジエンを得ることが広く行われている。本発明に用いられる抽出蒸留法には、特に制限はなく、公知の抽出蒸留法がいずれも好ましく使用できる。
【0018】
ブタジエンを製造する場合の抽出蒸留法の具体例を挙げる。イソプレンの場合もほぼ同様に行われる。気化したC4留分を抽出塔下部から送入し、抽出溶剤を同塔上部から加えると、当該溶剤とブタジエンの相互作用によりブタジエンの見かけ上の沸点が上昇し塔底部へ移行し、本発明に係る本発明に係るオレフィンを含有する炭化水素が塔頂部から抽出溶剤を含有するラフィネートとして流出し、塔底部からブタジエン等を含有するエキストラクトとして流出する。抽出溶剤を含有するラフィネートに同伴している抽出溶剤は水洗塔で散水水洗などの方法によりラフィネートから回収される。しかし、このような処理後も、ラフィネート中には抽出溶剤および当該抽出溶剤の酸化物等の劣化物が微量含有されることが通常である。含有量は、通常、数10ppb〜10ppmオーダーである。さらに、微量含有するジエン類、アセチレン結合を有する炭化水素類を、所望により公知の方法により水素添加して除去することの適宜行うことが好ましい。以下、本明細書においてラフィネートという場合は、特に記載のある場合を除き、抽出蒸留塔から得られた後、抽出溶剤の分離工程を経たものをいう。
【0019】
本発明の抽出蒸留における好ましい抽出溶剤としては、フルフラール、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等がある。抽出効率は、オレフィン等と相互作用の小さい極性の高い有機溶剤となる窒素が含有されるものが好ましく、また、炭化水素と溶剤の分離の容易さから沸点がラフィネート中の炭化水素に比べて十分に高いことが好ましい。したがって、これらの中でも、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが最も好ましい。
【0020】
オレフィンとしては、ビニル基を有するもの、すなわち末端に二重結合を有するものが特に好ましい。たとえば炭素数4のオレフィンとして1−ブテン、2−メチル−1−プロペン(イソブテン)が、炭素数5のオレフィンとして3−メチル−1―ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンが、その外にビニルシクロヘキサン、4−メチル−1−ペンテン、2,4,4-トリメチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。生成重合体および原料炭化水素を含む反応系を液状に保つことの容易さ、オレフィンの反応性などから、炭素数4のものを含むものが最も好ましい。
【0021】
オレフィンの含有率が5質量%以下であるとオレフィン重合体の製造効率が商業的でなく、95質量%を越えると、特に分子量が大きいオレフィン重合体の製造時に、反応系の粘度が高くなりすぎて、工程が円滑に行われないことがある。オレフィンの含有量は、例えば、炭素数4のオレフィンであるイソブテンを含む炭化水素から数平均分子量1500〜10000の炭素数4の重合体(ポリブテン)を製造する工程では、イソブテン濃度は20〜70質量%の範囲にあることが好ましく、25〜60質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0022】
炭素数4のオレフィンを主として含有する炭化水素は、エチレンやプロピレン等の低級オレフィンを製造するナフサクラッキング装置から留出するC4留分からブタジエンを抽出蒸留法により製造した際のラフィネートとして市場から容易に入手することができる。当該ラフィネートは通常、オレフィンとして40〜55質量%の範囲のイソブテンと10〜15質量%の範囲の1−ブテンとを含み、その外に7〜8質量%の2−ブテンを含む。ブタジエンは0.5質量%以下であり、微量の抽出溶剤を含んでいる。残余はブタン、イソブタン等の飽和炭化水素である。もちろん、当該ラフィネートに他のオレフィンまたは飽和炭化水素を追加しても使用できる。
【0023】
ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートをから得られる、本発明の重合原料には、微量の抽出溶剤の同伴が避けられない。抽出溶剤は重合反応系内に存在するすべての化合物と相互作用を生じる可能性がある。特に、抽出溶剤として好ましい窒素を含有するもの、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等は塩基性が強いため、酸触媒と優先的にかつ強い相互作用を生じる可能性が高く、触媒機能に障害を与える可能性が高いからである。
【0024】
本発明においては、原料炭化水素を、重合工程前に、アルミニウム原子を含む処理剤に接触させ、少なくとも抽出溶剤の一部を当該処理剤に吸着させる。アルミニウム原子を含む処理剤は、好ましくは組成式AlOで表される成分を含む無機固体処理剤である。AlOで表される成分を含む限り、天然または合成の無機物を用いることができる。具体的な無機固体処理剤としては例えば、アルミナ、シリカ・アルミナなどを例示することができる。好ましくはアルミナである。これらは適宜のバインダーを用いて成型したものでもよい。
【0025】
例えば、市販のアルミナを適宜に粉砕し、分級して用いることができる。固体処理剤としての表面積は特に限定されないが、通常は1〜500m2/gの範囲である。また、本発明の効果を阻害しない限り、アルミナに適宜アルカリ金属、アルカリ土類金属またはその他の金属を、酸化物、水酸化物あるいはその他の形態で含浸あるいはその他の方法により適宜担持させて変性したものを用いることもできる。しかしながら、通常は、特にこのような担持・変性は必要なく、ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が0.5質量%以下のアルミナが用いられる。このように担持・変性をまったくまたは殆ど行なわないアルミナは安価であり、この点においても本発明は有利な方法である。なお、本発明において好ましく使用できるアルミナは、活性アルミナである。また、両性化合物として知られている。
【0026】
本発明者は、本発明におけるアルミニウム原子含有処理剤は、アルミニウム化合物としての両性化合物の特性および吸着剤としての吸着力を有しており、この独特の特性により、オレフィンを実質的に重合させることなく原料中の残存抽出溶剤を物理的に吸着するか、特に、抽出溶剤である化合物中の孤立電子対と配位化合物を形成する等の作用により吸着除去しているものと考えている。すなわち、特開2000−34242で提案された強酸性イオン交換樹脂による吸着除去と比較すれば、オレフィンの重合反応を実質的に進行させることなしに残存抽出溶剤を吸着除去することできる。
【0027】
アルミニウム原子含有処理剤と液状炭化水素原料を接触させる際の温度は、該処理剤と原料炭化水素中のオレフィンの種類との組み合わせよって異なる。処理温度が高過ぎる場合はオレフィンの重合反応が進行する可能性があり、低すぎると処理効果が十分に発揮できないこと、および後続する重合プロセス温度も考慮して、−30℃〜100℃とすることが好ましく、さらに−10℃〜50℃の範囲とすることが好ましい。また、本発明の効果を十分に得るためには、液相にて原料炭化水素をアルミニウム原子含有処理剤に接触させることが好ましく、必要に応じて加圧しながら処理を行う。
【0028】
アルミニウム原子含有処理剤と原料炭化水素の接触時間は、抽出溶剤の除去が達成される限り特に制限されないが、通常約1分〜10時間の範囲が好ましい。この範囲より短い場合は接触が一般に不十分なため抽出溶剤が十分除去されず、長い場合は設備費が増大して好ましくない。接触のための方法としては、回分式または連続式のいずれも可能である。連続式の場合は、固定床式、流動床式などの方法によることができる。流れの方向もアップフローおよびダウンフローのいずれも採用することができる。
【0029】
本発明における酸触媒としては、公知のオレフィンの重合用酸触媒であれば特に制限はないが、原料炭化水素に可溶性であることおよび活性の点からハロゲン含有触媒が好ましい。例えば、塩素系触媒、フッソ系触媒、これらの錯体触媒(米国特許第4152499号、第5408018号、第5068490号公報参照。)があげられる。
触媒は適当な溶剤、例えばノルマルヘキサン、ノルマルへプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、シクロドデカン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、メチルクロリド、エチルクロリドなどで希釈して供給してもよく、必要に応じ、活性化剤として例えばHCl、t-ブチルクロライド、水などを供給してもよい。使用量は原料中の末端二重結合を有するオレフィン(ここのオレフィンとは末端二重結合のオレフィンのみを対象にしていると解しました)に対し0.5×10−5〜1.0×10−2 (mol/mol)がよい。
【0030】
本発明に係る効果が特に高効率で得られる触媒は、酸性の強い触媒、あるいは、反応系に溶解する触媒であり、特に、下式(1)または(2)で表されるものである。
AlRmXn (1)
(ここで、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、Xはハロゲン原子を表し、m、nは1または2で、m+n=3である。)
Al2RpXq (2)
(ここで、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、Xはハロゲン原子を表し、また、pは1以上5以下の整数、qは1以上5以下の整数でp+q=6の関係にある。)
これらの中でも好ましい触媒は、CH3AlCl2、(CH3)2AlCl、C2H5AlCl2、(C2H5)2AlCl、(C2H5)3Al2Cl3、(CH3)3CAlCl2および[(CH3)3C]2AlClが挙げられる。特に好ましいものは、安全性の高いC2H5AlCl2(エチルアルミニウムジクロライド)である。
【0031】
重合反応はアルミニウム原子含有処理剤による処理を経た原料炭化水素および触媒使用して、液相で行う。反応は回分式、連続式いずれの方法での行うことができるが、連続式が好ましい。反応装置は、公知のものを使用することができる。原料炭化水素および触媒の供給は公知の方法で行う。重合温度および圧力は、反応系が液相に保たれる条件であれば特に制限はないが、好ましい温度は−40〜+10℃、圧力は0.1〜2MPaである。
【0032】
オレフィン重合体の数平均分子量は、オレフィン重合体が、重合反応系内において、未反応のオレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素に溶解しており、また、該未反応のオレフィンおよび飽和脂肪族炭化水素から蒸留等で分離できる範囲あれば制限は無い。
本発明によれば、炭素数4のオレフィンであるイソブテンを15〜45重量%含む炭化水素からは、2量体、3量体から数平均分子量500以下の範囲にあるオリゴマー、数平均分子量1,500〜50,000の範囲にある粘性重合体、さらに、数平均分子量100,000以上のポリマー状重合体までの広い範囲を含む商品価値を有するイソブテン重合体を得ることができる。
【0033】
重合後は、公知の方法に従って、触媒の失活工程および/あるいは触媒の抽出除去工程等が行われるが、触媒添加量が低減されているために、これらの工程の負荷は従来の方法に比べて小さくなる。また、これら工程の前後に適宜に蒸留して未反応のオレフィン等を除去して目的の重合体を得る。またこのようにして得た重合体は、さらに適宜蒸留して所望の数平均分子量を有するオレフィン重合体に分離することができる。なお、本発明においては、触媒添加量が低減されているから、脱ハロゲン処理塔(例えばアルミナ充填塔)を設置すれば、ハロゲン濃度が5重量ppm以下である重合体を容易に得ることができる。
【0034】
以上、主としてブテン系のオレフィン重合体を例にとって説明したが、本発明に係る効果はブテン系オレフィン重合体に限られるものではない。
【0035】
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法および当該方法により得られるオレフィン重合体は、触媒添加量が低減されているため触媒に係る製造コストが小さく、触媒の失活、除去に係る負荷が小さいため設備に係るコストが小さく、また、得られたオレフィン重合体中の触媒残渣が小さい。特に、ハロゲン含有触媒を使用したにおいては、その誘導体からなる清浄剤等の潤滑油添加物を燃焼する場合においても、大気中へのハロゲンの放出が少なく、従って環境保全の面においても有用である。
【実施例1】
【0036】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<原料の調整、製造(1)>
エチレンクラッカーからのC4留分から、ブタジエンをエキストラクトとする抽出蒸留法(抽出溶剤:ジメチルホルムアミド)のラフィネートと試薬特級イソブタンとを、100:60の質量比で混合し、表1に示す組成の原料を調製した。当該原料中のジメチルホルムアミド濃度は0.7質量ppmであった。以下、「原料A」という。原料A中の炭化水素組成を表1に示す。なお、オレフィンを含む液状の炭化水素原料中のジメチルホルムアミドの濃度は、原料中のジメチルホルムアミドを水を用いて抽出し、エバポレートにより濃縮した後にジメチルホルムアミド濃度をGC−FTD(熱イオン化検出器)を用いて測定し、その結果から逆算して求めた。
【0037】
【表1】

【0038】
<原料の調整、製造(2)>
「原料A」にさらにジメチルホルムアミドを加え、ジメチルホルムアミド濃度を1.5質量ppmとしたものを調製した。以下、「原料B」という。
「原料A」と同一組成のC4混合物(ただし、ジメチルホルムアミドを含まない)を市販の特級試薬から調製し、これにN−メチルピロリドンを1.5質量ppm加えたものを調整した。以下、「原料C」という。
【0039】
<アルミニウム原子含有処理剤>
内容積15mlの固定床容器に、活性アルミナ(UOP LLC社、商品名:A203−CL)を粉砕して粒径を0.5mmから1.0mmに分級したものを、処理剤として、10g充填した。比較の目的で、同一形状容器に、試薬特級塩化カルシウム(東京化成(株)製)を粉砕し粒径を0.5〜1.0mmに分級したものを充填したもの、および、)、モレキュラーシーブMS13X(キシダ化学(株)製、1/16インチ サイズ)を充填したものを作成した。
【0040】
<原料の接触処理>
0.3MPaの加圧下に液状に保たれた原料A〜Cを処理剤充填容器に注入し、+20℃、WHSV=1h−1の条件で接触処理した。
【0041】
<重合反応>
内容積200mlのオートクレーブに、上記の処理済原料A〜Cを240g/hr、酸触媒として塩化メチレンで希釈したエチルアルミニウムジクロライド(EADC)を、それぞれ別にフィードし、反応温度−15℃、0.3MPaで連続的に重合を行った。触媒の添加量は、各原料中のイソブテン1molに対して、0.2mmolおよび0.3mmolとした。
【0042】
<イソブテンのポリイソブテンへの転化率の算出>
重合反応前原料および重合反応後の後の重合体(ポリイソブテン)をそれぞれ密閉容器にサンプリングし水酸化ナトリウム水溶液で中和処理して触媒を失活し、常温常圧に保った後、蒸発気体成分中のイソブテンmol%をガスクロマトグラフィーで分析した。蒸発気体成分中のイソブテン減少分をイソブテンのポリイソブテンへの転化率(%)とした。結果を表2に示した。
【0043】
【表2】

【0044】
活性アルミナで前処理を行った各原料においては、当該前処理を行わない場合、および、塩化カルシウム、モレキュラーシーブで同様の処理を行った場合に比較して、同一の触媒添加量でも高い転化率が得られていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系炭化水素をエキストラクトとする抽出蒸留法のラフィネートから得られる炭化水素を含む、主として炭素数4のオレフィンを含むオレフィン5〜95質量%と主として炭素数4の飽和脂肪族炭化水素を含む飽和脂肪族炭化水素95〜5質量%(両者を合わせて100質量%とする。)からなる液状炭化水素を、アルミニウム原子含有処理剤に接触させた後に、酸触媒の存在下にオレフィンの一部または全部を重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記酸触媒がハロゲン含有酸触媒であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記オレフィンがイソブテンを含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲン含有酸触媒が下式(1)、(2)のいずれかであることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
AlRmXn (1)
(ここで、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、Xはハロゲン原子を表し、また、m、nは1または2で、m+n=3の関係にある。)
Al2RpXq (2)
(ここで、Rは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、Xはハロゲン原子を表し、また、pは1以上5以下の整数、qは1以上5以下の整数でp+q=6の関係にある。)
【請求項5】
前記ハロゲン含有酸触媒が炭化水素可溶性であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン含有酸触媒がエチルアルミニウムジクロライドであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム原子含有処理剤が組成式Al2O3で表される成分を含む無機固体処理剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム原子含有処理剤がアルミナを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記抽出蒸留に使用される有機溶剤がジメチルホルムアミドであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2006−63151(P2006−63151A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245716(P2004−245716)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000231682)新日本石油化学株式会社 (33)
【Fターム(参考)】