説明

オレフィン重合体の製造方法

【課題】メタロセン触媒系存在下での連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるオレフィンの重合体または共重合体の製造法において、塊状のポリマーを生成することなく、また重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞、ポリマーの抜き取りが不能となることがなく、なおかつ重合体の製造に使用する原料や溶媒等に含まれる不純物により影響を受け難い、商業規模でのオレフィン重合体あるいは共重合体の連続生産を可能にする点で優れた改良されたオレフィンの重合体又は共重合体の製造法を提供する。
【解決手段】メタロセン触媒系を用いた連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるオレフィンの重合体又は共重合体の製造法において、固体触媒成分を予め特定の有機マグネシウム化合物と接触させた後、該固体触媒成分を重合反応器へ導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体又は共重合体製造方法に関する。さらに詳しくは、メタロセン系触媒を用いるオレフィンの連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるオレフィンの重合、又はオレフィンと共重合可能な少なくとも1種の単量体との共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン重合又は共重合(以下、単に「オレフィン重合体」と称することがある。)用触媒として、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、あるいはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒、さらにはクロム系触媒を用いてオレフィン重合体が製造されてきた。
近年、新たにオレフィン重合用触媒として遷移金属のメタロセン化合物を用いるいわゆるメタロセン系触媒が提案されている。メタロセン系触媒を用いてオレフィン重合体を製造すると、高触媒活性で、分子量分布が狭く、かつ構成分子の組成分布が均一(すなわち、共重合体を構成する異なるモノマー単位の割合について、分布を均質にすること)なオレフィン重合体を得ることができることが知られている。係る性質を有する高分子量オレフィン重合体は、剛性、耐衝撃性、ESCR特性等の機械的特性に優れており、種種の成型品、例えば、ボトル容器、パイプ材料、フィルム材料等として極めて有望である。従って、メタロセン触媒を使用した方法による高分子量オレフィン重合体の製造が要望されていた。
【0003】
遷移金属を含むメタロセン触媒を用いてオレフィンを重合する代表的プロセスとしては、目的のオレフィン重合体を得るために反応溶媒を使用するが故に、当該オレフィン重合体が溶媒に溶解した形態で得られる溶液重合法と、いわゆる粒子形態型、即ち、粒子形状でオレフィン重合体が製造される製法がある。粒子形態型重合の例としては、スラリー重合法、気相重合法が挙げられる。
溶液重合法は、ポリマーの分子量の上昇とともに溶液粘度が著しく上昇する問題点を有し、高分子量のポリマーの製造が困難である。従って、メタロセン触媒を用いて高分子量オレフィン重合体を製造するためには粒子形態型重合法を採用することが不可欠である。一方、メタロセン系触媒は、次にような問題を有する傾向にある。一般に、メタロセン系触媒は、粒子形態型から遊離した方が高活性となる。従って、メタロセン系触媒を粒子形態型重合で使用した場合、遊離した少量のメタロセン系触媒が多量の不定形ポリマーを生成する。その結果、この不定形ポリマーが周囲のパウダーを取り込みながら大きく成長して塊状のポリマーが生成する。連続系のプロセスの場合、このような塊状のポリマーが発生すると、重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞し、ポリマーの抜き取りが不能となり、連続運転が阻害されてしまい、生産効率は低く、その結果、商業規模の製造の実施は困難である。
【0004】
上記問題を解決するため、特許文献1には、連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるメタロセン系触媒を使用したオレフィン重合体または共重合体の製造方法において、触媒と水素とを接触させる水素処理により、塊状のポリマーを生成することなく、また重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞、ポリマーの抜き取りが不能となることがなく、商業規模でのオレフィン重合体あるいは共重合体の連続生産を可能にする点で優れた改良されたオレフィンの重合体又は共重合体の製造方法が開示されている。しかし、この方法において、使用する水素や触媒移送媒体の純度が低く、触媒毒となるような化合物が混入する場合には、触媒の活性が顕著に低下する恐れがあった。このため、塊状重合体発生の問題を確実に解決でき、商業生産規模のオレフィン重合体の連続生産をを可能とする、優れたオレフィン重合体の粒子形態型重合方法の開発が望まれていた。
【0005】
また、特許文献2では、連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるメタロセン系触媒を使用したオレフィン重合体または共重合体の製造方法において、有機マグネシウム化合物を使用することで、塊状のポリマーを生成することなく、また重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞、ポリマーの抜き取りが不能となることがなく、商業規模でのオレフィン重合体あるいは共重合体の連続生産を可能にする点で優れた改良されたオレフィンの重合体又は共重合体の製造方法が開示されている。しかし、有機マグネシウム化合物の使用方法については限定していなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−198804号公報
【特許文献2】国際公開第03/035704号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、メタロセン触媒系存在下での連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるオレフィンの重合体または共重合体の製造法において、塊状のポリマーを生成することなく、また重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞し、ポリマーの抜き取りが不能となることがなく、なおかつ重合体の製造に使用する原料や溶媒等に含まれる不純物により影響を受け難い、商業規模でのオレフィン重合体あるいは共重合体の連続生産を可能にする点で優れて改良されたオレフィンの重合体又は共重合体の製造法の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる状況下、本発明者は、メタロセン触媒存在下でのオレフィン重合体・共重合体の安定した改善された製造方法について鋭意研究を重ねた結果、メタロセン触媒系を用いた連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるオレフィンの重合体又は共重合体の製造法において、上述の目的を達成するために、固体触媒成分を予め特定の有機マグネシウム化合物と接触させた後、該固体触媒成分を重合反応器へ導入することが効果的であることを見いだした。本発明は、驚くべきこの新しい発見に基づいて完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、以下のとおりのものである。
(1)メタロセン系触媒を用いてオレフィンまたはオレフィン及び該オレフィンと共重合可能な単量体を重合する連続式スラリー重合法または連続式気相重合法において、固体触媒成分が、
(A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物、
1 a b 1 1 c 2 d (1)
(式中、L1 は、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1個以上8個以下の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1以上12以下のアミノヒドロカルビル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上12以下のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる置換基であり、M1 は、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子L1 にη5 結合している遷移金属を表し、WはL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL1 及びM1 と共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、X1 は、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、M1 と2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、およびL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれるアニオン性σ結合型配位子を表し、X2 は中性ルイス塩基配位性化合物を表し、aは1または2であり、但し、aが2である時、場合によっては2つの配位子L1 が2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1以上20以下のヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、但し、X1 が1価のアニオン性σ結合型配位子、またはL1 とM1 とに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より1以上小さい自然数であり、またX1 がM1 にのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より(a+1)以上小さい自然数であり、dは0、1または2である。)
【0010】
(B)(B−1)カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と(B−2)下記の一般式(2)で表される有機金属化合物との混合物、
2 1 e 3 f-e (2)
(ただし、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
【0011】
(C)周期表第2族、第3族、第4族、第13族および14族からなる群に属する原子の酸化物であり、かつ下記の一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物または下記の一般式(4)で表される有機マグネシウム化合物を用いた化学処理により担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去され、実質的に水酸基を有しない担体と、
AlR2 g 43-g (3)
(式中、R2 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X4 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、gは1、2または3である。)
MgR3 h 52-h (4)
(式中、R3 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X5 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、bは1または2である。)
からなり、
【0012】
重合反応器に、連続的にオレフィン又は連続的に該オレフィンおよび単量体を該重合反応器に供給しながら、固体触媒成分を該重合反応器に移送する際に、
該固体触媒成分と、(i)下記の一般式(5)で表される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と(ii)アミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物とを反応させて得られる炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物(E)とを接触させるたのち、該重合反応器へ導入することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
(M3 i (Mg)j (R4 k (R5 m (5)
〔式中、M3 は周期律表第1族、第2族、第3族からなる群に属する金属原子であり、R4 及びR5 は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、i、j、k、mは次の関係を満たす数である。0≦i、0<j、0≦k、0≦m、k+m>0、n×i+2j=k+m(ただし、nはM3 の原子価)〕
【0013】
(2)メタロセン系触媒を用いてオレフィンまたはオレフィン及び該オレフィンと共重合可能な単量体を重合する連続式スラリー重合法または連続式気相重合法において、固体触媒成分が、
(A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物、
1 a b 1 1 c 2 d (1)
(式中、L1 は、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1個以上8個以下の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1以上12以下のアミノヒドロカルビル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上12以下のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる置換基であり、M1 は、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子L1 にη5 結合している遷移金属を表し、WはL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL1 及びM1 と共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、X1 は、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、M1 と2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、およびL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれるアニオン性σ結合型配位子を表し、X2 は中性ルイス塩基配位性化合物を表し、aは1または2であり、但し、aが2である時、場合によっては2つの配位子L1 が2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1以上20以下のヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、但し、X1 が1価のアニオン性σ結合型配位子、またはL1 とM1 とに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より1以上小さい自然数であり、またX1 がM1 にのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より(a+1)以上小さい自然数であり、dは0、1または2である。)
【0014】
(B)(B−1)カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と(B−2)下記の一般式(2)で表される有機金属化合物との混合物、
2 1 e 3 f-e (2)
(ただし、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
【0015】
(C)周期表第2族、第3族、第4族、第13族および14族からなる群に属する原子の酸化物であり、かつ下記の一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物または下記の一般式(4)で表される有機マグネシウム化合物を用いた化学処理により担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去され、実質的に水酸基を有しない担体と、
AlR2 g 43-g (3)
(式中、R2 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X4 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、gは1、2または3である。)
MgR3 h 52-h (4)
(式中、R3 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X5 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、bは1または2である。)
及び、
【0016】
(D)有機アルミニウム化合物、
からなり、
重合反応器に、連続的にオレフィン又は連続的に該オレフィンおよび単量体を該重合反応器に供給しながら、固体触媒成分を該重合反応器に移送する際に、
該固体触媒成分と、(i)下記の一般式(5)で表される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と(ii)アミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物とを反応させて得られる炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物(E)とを接触させるたのち、該重合反応器へ導入することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
(M3 i (Mg)j (R4 k (R5 m (5)
〔式中、M3 は周期律表第1族、第2族、第3族からなる群に属する金属原子であり、R4 及びR5 は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、i、j、k、mは次の関係を満たす数である。0≦i、0<j、0≦k、0≦m、k+m>0、n×i+2j=k+m(ただし、nはM3 の原子価)〕
【0017】
(3)固体触媒成分と接触させる有機マグネシウム化合物(E)の量が、固体触媒成分移送媒体に対して、該有機マグネシウム化合物中の全金属原子(M3 のモル数+Mgのモル数)の濃度として、0.01ミリモル/リットル以上5ミリモル/リットル以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のオレフィン重合体の製造方法。
(4)固体触媒成分と接触させる有機マグネシウム化合物(E)の量が、該固体触媒成分に含まれる遷移金属化合物(A)のM1 のモル数に対する該有機マグネシウム化合物中の全金属原子(M3 のモル数+Mgのモル数)のモル比で、5以上5000以下であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0018】
(5)重合重合反応器に固体触媒成分移送パイプが繋がれており、固体触媒成分は該移送パイプ中を流れる固体触媒成分移送媒体と共に移送され、且つ、該移送パイプ中を通して該固体触媒成分を移送する間に有機マグネシウム化合物(E)を該移送媒体に供給して該固体触媒成分を有機マグネシウム化合物(E)に接触させることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
(6)固体触媒成分移送パイプがその側壁に繋がれた有機マグネシウム化合物(E)を該移送パイプに供給するための導管を有し、且つ、該有機マグネシウム化合物の固体触媒成分移送媒体への供給が、該有機マグネシウム化合物を当該導管を通して該移送パイプに供給されることによってなされることを特徴とする上記(5)に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0019】
(7)固体触媒成分移送パイプが重合反応器に固体触媒成分を供給するためのノズルを有し、当該ノズルに繋がれた有機マグネシウム化合物(E)を該移送ノズルに供給するための導管を有し、且つ、該有機マグネシウム化合物の固体触媒成分移送媒体への供給が、有機マグネシウム化合物を当該導管を通して該ノズルに供給されることによってなされることを特徴とする上記(5)に記載のオレフィン重合体の製造方法。
(8)オレフィンが、エチレンおよび炭素数が3以上20以下のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンであることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、メタロセン触媒系存在下での連続式スラリー重合法または連続式気相重合法によるポリオレフィンの重合体または共重合体の製造法において、塊状のポリマーを生成することなく、また重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞し、ポリマーの抜き取りが不能となることがなく、なおかつ重合体の製造に使用する原料や重合媒体等に含まれる不純物により影響を受け難い、商業規模でのオレフィン重合体あるいは共重合体の連続生産を可能にする点で優れた改良されたオレフィンの重合体又は共重合体の製造法の提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明において、「重合」という語は単独重合のみならず共重合を包含した意味で用いられる。
本発明においてオレフィンを重合する方法としては、連続式スラリー重合法または連続式気相重合法である。本発明に於いては、最も好ましくは連続式スラリー重合法が用いられる。
【0022】
一般に連続式スラリー重合法においては、重合媒体中に、触媒、オレフィン、さらには分子量調整剤(水素、ジエニル亜鉛等)を添加して重合を行う。この際、固体粒状ポリマーの懸濁液が形成される。このような連続式スラリー重合では、重合媒体と共に、触媒、オレフィン又はオレフィンと共重合可能な少なくとも一つのモノマーとの混合物、分子量調整剤(水素、ジエニル亜鉛等)が連続で、あるいは断続的に供給されるとともに、固体粒状ポリマーの懸濁液は連続的にあるいは断続的に重合反応器から抜き取られ分離乾燥等の次の工程に移送される。
連続スラリー重合法における重合の際に用いられる重合媒体は、重合条件下で液体でなくてはならず、且つ触媒活性を低下させない等実質的に重合に影響を与えない不活性な液体でなくてはならない。
【0023】
本発明においては、そのような重合媒体としては、不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにはオレフィン自身を媒体として用いることもできる。不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;及びエチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物等を挙げることができ、ヘキサン、ペンタンまたはイソブタンが好ましい。
【0024】
一方、連続式気相重合法においては、1種以上のオレフィンを含有するガス流れを反応条件下に触媒の存在下で流動床を通して連続的に循環させる。ガス流れは、流動床から取り出され、重合反応器に戻され、新しい新鮮なオレフィンを添加し重合されたオレフィンと置き換える。更に、連続式気相重合法において、消費された触媒に関しては、新鮮な触媒を連続的又は断続的に重合反応器に供給しながら、消費された触媒は、連続的又は断続的に重合反応器から抜き取られる。
【0025】
本発明において、重合反応器はそれに接続された固体触媒成分移送パイプを有しており、固体触媒成分は該移送パイプを流れる固体触媒成分移送媒体と共に移送されるのが好ましい。本発明においては、該移送用媒体としては、不活性炭化水素媒体が好適である。そのような不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;及びエチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物等を挙げることができる。また、本発明においては、重合に用いるオレフィン自体を該媒体として用いることも可能である。
このような該移送用媒体は、連続スラリー重合法に於いては重合媒体と同じであってもよく、また異なったものであっても良い。例えば、重合媒体にヘキサンを用い、該移送媒体にトルエンを用いても良い。
【0026】
本発明の方法において、オレフィンホモポリマーはオレフィンから製造され、また、オレフィン共重合体はオレフィン及び少なくとも一つのオレフィンと共重合可能なコモノマーから製造させる。
本発明のオレフィンは、例えば、エチレン、炭素数3以上20以下のα−オレフィンの中から選ばれる。炭素数3以上20以上のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらは単独重合させてもよく、或いは異なる2つ以上のオレフィンを共重合させてもよい。
またオレフィンとともに必要に応じて他の重合性モノマーを共重合させてもよい。他の重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー、塩化ビニル、アクリロニトリル等の極性ビニル、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の脂環式ジオレフィン、アセチレン等のアルキン、2−プロペナル等のアルデヒドモノマー等が挙げられる。
【0027】
本発明に於いて、重合は、好ましくはエチレンの単独重合あるいはエチレンと1種類以上の炭素数3以上20以下のα−オレフィンの共重合であり、さらに好ましくはエチレンの単独重合あるいはエチレンと1種類以上の炭素数3以上8以下のα−オレフィンの共重合である。
本発明においては、重合条件については特に制限はないが、重合圧力は0.1MPa以上5MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上2.5MPa以下がさらに好ましい。重合温度は40℃以上120℃以下であることが好ましく、60以上100℃以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明においては、連続スラリー重合法における重合反応器内部の重合媒体中のポリマーの平均重量%、即ちスラリー濃度については特に制限はないが、10重量%以上60重量%以下であることが好ましく、15重量%以上50重量%以下であることがさらに好ましい。
本発明においては、オレフィン重合用の固体触媒成分を、あらかじめ有機マグネシウム化合物(E)と接触させた後に、重合反応器へ導入する。
固体触媒成分をあらかじめ有機マグネシウム化合物(E)と接触させることにより、粒子形態型触媒から遊離した浮遊触媒を該有機マグネシウム化合物が失活させる。一方、重合媒体および固体触媒成分移送用媒体中に触媒毒となるような化合物、例えば水、アルコール、ケトン、アルデヒド、等が混入した場合には、固体状である触媒よりも液体状であり反応性が高い該有機マグネシウム化合物の方が優先的に反応するため、固体触媒成分の失活が抑制できる。
【0029】
本発明においては、上記の有機マグネシウム化合物(E)とは、(i)下記の一般式(5)で表される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と(ii)アミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物とを反応させて得られる炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物のことである。
(M3 i (Mg)j (R4 k (R5 m (5)
〔式中、M3 は周期律表第1族、第2族、第3族からなる群に属する金属原子であり、R4 及びR5 は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、i、j、k、mは次の関係を満たす数である。0≦i、0<j、0≦k、0≦m、k+m>0、n×i+2j=k+m(ただし、nはM3 の原子価)〕
【0030】
上記式中R4 ないしR5 で表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、、フェニル基、トリル基等が挙げられ、R4 はアルキル基であることが好ましく、R4 が一級のアルキル基であることがさらに好ましい。
i>0の場合、金属原子M3 としては、周期律表第1族、第2族、3族からなる群に属する金属原子が使用でき、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
本発明においては、金属原子M3 に対するマグネシウムのモル比j/iには特に制限はないが、0.1以上50以下であることが好ましく、特に0.5以上10以下であることが好ましい。また、i=0である或る種の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R4 が1−メチルプロピル等は炭化水素溶媒に可溶性であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。
【0031】
本発明においては、上記の一般式(5)において、i=0の場合のR4 およびR5 は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれかに属することが推奨される。
(1)R4 又はR5 の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR4 及びR5 が共に炭素原子数4以上6以下であり、かつR4 またはR5 の少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R4 およびR5 が炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR4 が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R5 が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R4 またはR5 の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR4 およびR5 が共に炭素原子数6以上のアルキル基であること。
【0032】
以下これらの基を具体的に示す。
(1)において、炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、等が用いられ、1−メチルプロピル基が好ましい。
【0033】
(2)において、炭素原子数2または3のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基が挙げられ、エチル基が好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基が好ましい。
(3)において、炭素原子数6以上のアルキル基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、等が挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基がさらに好ましい。
一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向にあり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のコンプレックス化剤がわずかに含有されあるいは残存していても差し支えなく用いることができる。
【0034】
次に、前記の有機マグネシウム化合物(i)と反応させる化合物[成分(ii)]について説明する。この化合物は、アミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物である。
成分(ii)のアミン化合物としては、例えば、脂肪族、脂環式ないし芳香族アミンが挙げられるが、具体的には、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N、N−ジメチルアニリン、トルイジン等が用いられる。
【0035】
成分(ii)のアルコール化合物としては、例えば、エチルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−エチル−4−メチル−1−ペンタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−5−メチル−1−オクタノール、1−オクタノール、1−デカノール、シクロヘキサノール、フェノール等があげられる。好ましくは1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール及び2−エチル−1−ヘキサノールである。
【0036】
成分(ii)のシロキサン化合物は、下記の一般式(6)なる構成単位からなるものである。
【化1】

【0037】
一般式(6)において、置換基R6 およびR7 は、水素、炭素原子数1以上30以下の炭化水素基、炭素数1以上40以下の置換された炭化水素基からなる群に属する基である。炭素原子数1以上30以下の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基、ビニル基、等が挙げられる。
一般式(6)において、炭素数1以上40以下の置換された炭化水素基としては、例えば、トリフルオロプロピル基があげられる。
これらの化合物は1種類または2種類以上の構成単位から成る2量体以上の鎖状または環状の化合物の形で用いることができる。
【0038】
具体的なシロキサン化合物としては、例えば、対称ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、(末端メチル封塞)メチルヒドロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、(末端メチル封塞)フェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが用いられる。
【0039】
成分(ii)と有機マグネシウム化合物(i)との反応は、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の不活性反応媒体中、20℃以上150℃以下で反応させる。反応の順序については、有機マグネシウム化合物(i)中に成分(ii)を加えていく方法、成分(ii)に有機マグネシウム化合物(i)を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。
本発明において有機マグネシウム化合物(i)と成分(ii)との反応比率については特に制限はないが、反応の結果得られる有機マグネシウム成分における、全金属原子に対する成分(ii)のモル比は0.01以上2以下であることが好ましく、0.1以上1以下であることがさらに好ましい。
本発明において、これら有機マグネシウム化合物(E)は単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明における、固体触媒成分を重合反応器に導入する前に該固体触媒成分と有機マグネシウム化合物(E)とを接触させる方法としては、例えば、
(I)固体触媒成分を固体触媒成分移送媒体と共に移送し、該移送媒体に該有機マグネシウム化合物を含有させ、該固体触媒成分を重合反応器に移送中に該固体触媒成分と該有機マグネシウム化合物とを接触させる方法、
(II)固体触媒成分の重合反応器への移送を開始する前に、例えば、該有機マグネシウム化合物を固体触媒成分貯槽に導入し該固体触媒成分と該有機マグネシウム化合物とを接触させる方法、等が挙げられる。
【0041】
本発明における、固体触媒成分を重合反応器に導入する前に該固体触媒成分と有機マグネシウム化合物(E)とを接触させる方法としては、例えば、該重合反応器に該固体触媒成分を導入するために設けられた固体触媒成分移送パイプに、該有機マグネシウム化合物の供給枝管を接続し、該固体触媒成分を該移送パイプを流れる該移送媒体共に移送し、該固体触媒成分を該重合反応器に移送中に該有機マグネシウム化合物を該移送媒体に供給して、該固体触媒成分と該有機マグネシウム化合物が接触する方法等によって効果的に行うことができる。
【0042】
上述の該固体触媒成分を該重合反応器に移送中に該固体触媒成分と該有機マグネシウム化合物が接触する方法に関しては、固体触媒成分移送パイプが、その側壁に該移送パイプへ該有機マグネシウム化合物を供給するための枝管を有し、そして、該有機マグネシウム化合物を該枝管を通して該移送パイプへ供給すことにより、該有機マグネシウム化合物を該移送媒体に供給する方法、又は、重合反応器に該固体触媒成分を導入するために設けられた重合反応器内部の固体触媒成分供給ノズルに、有機マグネシウム化合物の供給パイプを接続し、該有機マグネシウム化合物を該パイプに供給することにより該移送媒体に該有機マグネシウム化合物を含有させる方法、等が好ましい。
本発明における該有機マグネシウム化合物を接触させる更なる具体例としては、該固体触媒成分と該有機マグネシウム化合物を含有する該移送媒体を混合して該固体触媒成分と該有機マグネシウム化合物が接触するようにし、該固体触媒成分を該移送媒体と共に移送する方法等が挙げられる。
【0043】
本発明においては、固体触媒成分と接触させる有機マグネシウム化合物(E)の量が、固体触媒成分移送媒体に対して、該有機マグネシウム化合物中の全金属原子(M3 のモル数+Mgのモル数)の濃度については特に制限はないが、0.01ミリモル/リットル以上5ミリモル/リットル以下であることが好ましく、0.01ミリモル/リットル以上1ミリモル/リットル以下であることが好ましく、0.05ミリモル/リットル以上1ミリモル/リットル以下であることがさらに好ましい。該固体触媒成分と接触させる該有機マグネシウム化合物の中の全金属原子の濃度が0.01ミリモル/リットル以上であれば塊状のポリマーの抑制効果が発現し、10ミリモル/リットル以下であれば固体触媒成分の活性低下を招かない。
【0044】
本発明においては、固体触媒成分と接触させる有機マグネシウム化合物(E)の量については特に制限はないが、該固体触媒成分に含まれる遷移金属化合物(A)のM1 のモル数に対する該有機マグネシウム化合物中の全金属原子(M3 のモル数+Mgのモル数)のモル比で、5以上5000以下であることが好ましく、5以上1000以下であることがさらに好ましい。該有機マグネシウム化合物の量が、該固体触媒成分に含まれる遷移金属化合物(A)のM1 のモル数に対する該有機マグネシウム化合物中の全金属原子のモル比で、5以上であれば塊状のポリマーの抑制効果が発現し、5000以下であれば固体触媒成分の活性低下を招かない。
【0045】
本発明において、有機マグネシウム化合物(E)を触媒毒の捕捉剤として使用してもよい。具体的には、例えば、固体触媒成分と共に重合反応器に移送される固体触媒成分移送媒体に該有機マグネシウム化合物を供給して、触媒毒の捕捉剤として用いる該有機マグネシウム化合物の一部又は全量を該固体触媒成分との接触に使用しても良い(ここで、該有機マグネシウム化合物が移送され、該固体触媒成分および該移送媒体と共に重合反応器に供給された後は、該有機マグネシウム化合物は重合反応器中で、触媒毒の捕捉剤として機能する)。この場合、該固体触媒成分と接触する該有機マグネシウム化合物が、触媒毒の捕捉剤として使用される該有機マグネシウム化合物の一部である場合、触媒毒の捕捉剤として使用される残りの該有機マグネシウム化合物は、例えば、重合反応器に有機マグネシウム化合物供給パイプを通して、直接重合反応器に供給される。
本発明においては、該有機マグネシウム化合物と該固体触媒成分とをあらかじめ接触させる場合、該接触時間については特に制限はないが、該接触時間は0.01秒以上10分以内であることが好ましく、0.01秒以上5分以内であることがさらに好ましく、0.02秒以上1分以内であることがさらに好ましい。
【0046】
本発明では、オレフィン重合用固体触媒成分として、メタロセン系触媒を用いる。
本明細書中で言及される周期律表は、CRC Press,Inc.,が著作権を有し、同社が1989年に発行したものである。また、「基(Group,Groups)」は同周期律表及び、基の番号付けのためのIUPACに対応するものである。
明細書中用いられる用語「ヒドロカルビル基」は、脂肪族、脂環式、芳香族又はこれらの複合基のいずれかを意味する。
明細書中用いられる用語「ヒドロカルビルオキシ基」は、ヒドロカルビル基であって、酸素結合を介して金属元素、メタロイド、炭素、窒素、リンと結合する酸素を有するものを意味する。
明細書中用いられる用語「シリル基」は、シリコン結合を介して金属元素、メタロイド、炭素、窒素、リンと結合するシリコンを含有する基を意味する。
明細書中用いられる用語「ゲルミル基」は、ゲルマニウム結合を介して金属元素、メタロイド、炭素、窒素、リンと結合するゲルマニウムを含有する基を意味する。
【0047】
本発明の方法で使用されるオレフィン重合用固体触媒成分は、
(A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物、
1 a b 1 1 c 2 d (1)
(式中、L1 は、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1個以上8個以下の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1以上12以下のアミノヒドロカルビル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上12以下のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる置換基であり、M1 は、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子L1 にη5 結合している遷移金属を表し、Wは、L1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL1 及びM1 と共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、X1 は、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、M1 と2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、およびL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれるアニオン性σ結合型配位子を表し、X2 は、中性ルイス塩基配位性化合物を表し、aは1または2であり、但し、aが2である時、場合によっては2つの配位子L1 が2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1以上20以下のヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、但し、X1 が1価のアニオン性σ結合型配位子、またはL1 とM1 とに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より1以上小さい自然数であり、またX1 がM1 にのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より(a+1)以上小さい自然数であり、dは0、1または2である。)
【0048】
(B)(B−1)カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と(B−2)下記の一般式(2)で表される有機金属化合物との混合物、
2 1 e 3 f-e (2)
(ただし、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
【0049】
(C)周期表第2族、第3族、第4族、第13族および14族からなる群に属する原子の酸化物であり、かつ下記の一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物または下記の一般式(4)で表される有機マグネシウム化合物を用いた化学処理により担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去され、実質的に水酸基を有しない担体と、
AlR2 g 43-g (3)
(式中、R2 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X4 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、gは1、2または3である。)
MgR3 h 52-h (4)
(式中、R3 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X5 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、bは1または2である。)
必要に応じて、
(D)有機アルミニウム化合物
からなる。
【0050】
まず、本発明において使用される遷移金属化合物(A)について説明する。
遷移金属化合物(A)は下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物である。
1 a b 1 1 c 2 d (1)
(式中、L1 は、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1個以上8個以下の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1以上12以下のアミノヒドロカルビル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上12以下のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる置換基であり、M1 は、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子L1 にη5 結合している遷移金属を表し、Wは、L1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL1 及びM1 と共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、X1 は、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、M1 と2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、およびL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれるアニオン性σ結合型配位子を表し、X2 は、中性ルイス塩基配位性化合物を表し、aは1または2であり、但し、aが2である時、場合によっては2つの配位子L1 が2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1以上20以下のヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、但し、X1 が1価のアニオン性σ結合型配位子、またはL1 とM1 とに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より1以上小さい自然数であり、またX1 がM1 にのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より(a+1)以上小さい自然数であり、dは0、1または2である。)
【0051】
上記一般式(1)の化合物中の配位子X1 の例としては、塩素原子、炭素数1以上60以下の炭化水素基、炭素数1以上60以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上60以下のヒドロカルビルアミド基、炭素数1以上60以下のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1以上60以下のヒドロカルビルスルフィド基、シリル基、これらの複合基等が挙げられる。
上記一般式(1)の化合物中の中性ルイス塩基配位性化合物X2 の例としては、フォスフィン、エーテル、アミン、炭素数2以上40以下のオレフィン、炭素数4以上40以下のジエン、これらの化合物から誘導される2価の基等が挙げられる。
【0052】
本発明において用いられる遷移金属化合物(A)として、下記の一般式(7)で表される錯体化合物を挙げることができる。
【化2】

(式中、R8 およびR11は、それぞれ独立に炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、または全炭素数7以上20以下であり、芳香族環上に炭化水素基を有する芳香族炭化水素基、R9 およびR10は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1以上20以下の炭化水素基を示し、R9 とR10はたがいに結合して環を形成していてもよく、X6 およびX7 は、それぞれ独立にハロゲン原子または炭素数1以上20以下の炭化水素基、M4 は、ニッケル、またはパラジウムを示す。)
【0053】
上記一般式(6)において、R8 およびR11のうちの炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上20以下の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素数3以上20以下のシクロアルキル基等が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。なお、シクロアルキル基の環上には低級アルキル基などの適当な置換差が導入されていてもよい。
【0054】
また、全炭素数7以上20以下であり、芳香族環上に炭化水素基を有する芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基やナフチル基などの芳香族環上に、炭素数1以上10以下の直鎖状、分岐状、または環状の炭化水素基が1個以上導入された基などが挙げられる。このR8 およびR11としては、環上に炭化水素基を有する芳香族基が好ましく、中でも2,6−ビス(1−メチルエチル)フェニル基がさらに好ましい。R8 およびR11は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
また、R9 およびR10のうちの炭素数1以上20以下の炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基、炭素数6以上20以下のアリール基、炭素数7以上20以下のアラルキル基などが挙げられる。ここで、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数3以上20以下のシクロアルキル基の具体例としては、上記のR8 およびR11のうちの炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。また炭素数6以上20以下のアリール基としては、例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基,メチルナフチル基などが挙げられ、炭素数7以上20以下のアラルキル基としては、例えばベンジル基やフェネチル基などが挙げられる。このR9 およびR10は、たがいに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、たがいに結合して環を形成していてもよい。
6 およびX7 のうちのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子などが挙げられ、また、炭素数1以上20以下の炭化水素基は、上記のR9 およびR10における炭素数1以上20以下の炭化水素基について説明したとおりの炭化水素基が挙げられる。このX6 およびX7 としては、特に臭素原子またはメチル基が好ましい。また、X6 およびX7 はたがいに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0056】
本発明において、遷移金属化合物(A)は下記の一般式(8)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【化3】

【0057】
(式中、M5 は、チタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群より選ばれる遷移金属であって、形式酸化数が+2、+3または+4である遷移金属を表し、R12は、各々独立して、水素原子、炭素数1以上8以下の炭化水素基、シリル基、ゲルミル基、シアノ基、ハロゲン原子、およびこれらの複合基からなる群より選ばれる置換基を表し、ただし、該置換基R12が炭素数1以上8以下の炭化水素基、シリル基またはゲルミル基である時、場合によっては2つの隣接する置換基R12が互いに結合して2価の基を形成し、これにより該2つの隣接する該置換基R12にそれぞれ結合するシクロペンタジエニル環の2つの炭素原子間の結合と共働して環を形成し、X7 は、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上20以下の炭化水素基、炭素数1以上18以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上18以下のヒドロカルビルアミノ基、シリル基、炭素数1以上18以下のヒドロカルビルアミド基、炭素数1以上18以下のヒドロカルビルフォスフィド基、炭素数1以上18以下のヒドロカルビルスルフィド基及びこれらの複合基からなる群より選ばれる置換基を表し、ただし、場合によっては2つの置換基X8 が共働して炭素数4以上30以下の中性共役ジエンまたは2価の基を形成し、Yは−O−、−S−、−NR* −または−PR* −を表し、ただし、R* は、水素原子、炭素数1以上12以下の炭化水素基、炭素数1以上8以下のヒドロカルビルオキシ基、シリル基、炭素数1以上8以下のハロゲン化アルキル基、炭素数6以上20以下のハロゲン化アリール基、またはこれらの複合基を表し、ZはSiR* 2 、CR* 2 、SiR* 2 SiR* 2 、CR* 2 CR* 2 、CR* =CR* 、CR* 2 SiR* 2 またはGeR* 2 を表し、但し、R* は上で定義した通りであり、nは1、2または3である。)
【0058】
本発明において用いられる遷移金属化合物(A)の具体例としては、以下に示すような化合物が挙げられる。
ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ネオペンチルジルコニウムハイドライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジエチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジハイドライド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(6−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(7−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(5−メトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(2,3 −ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,7 −ジメチル−1−インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス−(4,7 −ジメトキシ−1−インデニル)ジルコニウムジメチル、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジハイドライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジメチル、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、シリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジハイドライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−フェニルアミド)(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−ベンジルアミド)(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η5 −シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(η5 −シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル]チタニウムジメチル、[(N−メチルアミド)(η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−t−ブチルアミド)(η5 −インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル、[(N−ベンジルアミド)(η5 −インデニル)ジメチルシラン]チタニウムジメチル。
【0059】
本発明において用いられる遷移金属化合物(A)の具体例としては、さらに、遷移金属化合物(A)の具体例として上に挙げた各ジルコニウム及びチタン化合物の名称の「ジメチル」の部分(これは、各化合物の名称末尾の部分、すなわち「ジルコニウム」または「チタニウム」という部分の直後に現れているものであり、前記一般式(8)中のX7 の部分に対応する名称である)を、以下に掲げる任意のものに替えてできる名称を持つ化合物も挙げられる。
「ジベンジル」、「2−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジル」、「2−ブテン−1,4−ジイル」、「s−トランス−η4 −1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4 −3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η4 −1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4 −2,4−ヘキサジエン」、「s−トランス−η4 −1,3−ペンタジエン」、「s−トランス−η4 −1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−トランス−η4 −1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4 −1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4 −3−メチル−1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η4 −1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4 −2,4−ヘキサジエン」、「s−シス−η4 −1,3−ペンタジエン」、「s−シス−η4 −1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン」、「s−シス−η4 −1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン」。
【0060】
本発明において用いられる遷移金属化合物(A)は、一般に公知の方法で合成できる。本発明において遷移金属化合物(A)の好ましい合成法の例としては、米国特許第5,491,246号明細書に開示された方法を挙げることができる。
本発明においてこれら遷移金属化合物(A)は単独で使用してもよいし複数種類を混合して使用してもよい。
本発明においては、遷移金属化合物(A)が、上記の一般式(1)で表される遷移金属化合物(A−1)と下記の一般式(9)で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物(A−2)との反応混合物であることが好ましい。
(M6 p (Mg)q (R12r (R13s (OR14t (9)
{式中、M6 は周期律表第1族、第2族、および第3族からなる群に属する金属原子であり、R12、R13およびR14はおのおの独立して、炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、p、q、r、sおよびtは次の関係を満たす数である。0≦p、0<q、0≦r、0≦s、0≦t、s+r>0、0≦t/(p+q)≦2、u×p+2q=r+s+t(ただし、uはM6 の原子価)}
【0061】
有機マグネシウム化合物(A−2)は、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、R122 Mgおよびこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号p、q、r、s、t、およびuの関係u×p+2q=r+s+tは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
上記の一般式(9)中、R12およびR13で表される炭化水素基は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、、フェニル基、トリル基等が挙げられ、R12およびR13はアルキル基であることが好ましく、R12およびR13が一級のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0062】
p>0の場合、金属原子M6 としては、周期律表第1族、第2族および第3族からなる群に属する金属元素が使用でき、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、特にアルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が好ましい。
本発明においては、金属原子M6 に対するマグネシウムのモル比q/pには特に制限はないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、p=0である有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R12が1−メチルプロピル基である有機マグネシウム化合物等は炭化水素溶媒に可溶性であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。
【0063】
上記の一般式(9)において、p=0の場合のR12およびR13は次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
(1)R12およびR13の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR12およびR13がともに炭素原子数4以上6以下であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)R12およびR13が炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR12が炭素原子数2または3のアルキル基であり、R13が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R12およびR13の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR12およびR13が共に炭素原子数6以上のアルキル基であること。
【0064】
以下これらの基を具体的に示す。
(1)において、炭素原子数4以上6以下である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル等が挙げられ、1−メチルプロピルが特に好ましい。
(2)において、炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル基、プロピル基、1−メチルエチル基が挙げられ、エチル基が好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基が好ましい。
(3)において、炭素原子数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基等が挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基がさらに好ましい。
一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向にあり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のコンプレックス化剤がわずかに含有されあるいは残存していても差し支えなく用いることができる。
【0065】
次にアルコキシ基(OR14)について説明する。R14で表される炭化水素基としては、炭素原子数3以上10以下のアルキル基またはアリール基が好ましい。
具体的には、例えば、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、デシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、2−メチルペンチルおよび2−エチルヘキシルである。
【0066】
これらの有機マグネシウム化合物もしくは有機マグネシウム錯体は、一般式「R12MgX及び/又はR122 Mg(R12は前述の意味であり、Xはハロゲンである。)」で示される有機マグネシウム化合物と、一般式「M6 13u 及び/又はM6 13u-1 H(M6 、R13、uは前述の意味である。)」で示される有機金属化合物とを、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性炭化水素媒体中で、25℃以上150℃以下で反応させ、必要な場合には続いてR14で表される炭化水素基を有するアルコールまたは炭化水素溶媒に可溶な上記R14で表される炭化水素基を有するヒドロカルビルオキシマグネシウム化合物、及び/又は中心金属がM6 であるヒドロカルビルオキシ金属化合物と反応させる方法により得られる。
【0067】
このうち炭化水素に可溶な有機マグネシウム成分とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、有機マグネシウム成分中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム成分を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において、炭化水素に可溶な有機マグネシウム成分とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム成分における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比t/(p+q)の範囲は0≦t/(p+q)≦2であり、0≦t/(p+q)<1であることが好ましい。
【0068】
本発明において、遷移金属化合物(A)は、(A−1)と(A−2)とを混合することによって得ることができる。本発明においては、(A−1)と(A−2)とを混合する方法は特に限定されるものではないが、例えば(A−1)に(A−2)を加えていく方法、あるいは成分(A−2)に(A−1)を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。
本発明においては、遷移金属化合物(A)の組成、すなわち遷移金属化合物(A−1)に含まれるM1 のモル数に対する(A−2)に含まれるM6 のモル数とMgのモル数の和との比{(M6 +Mg)/M1 }が0.005以上5以下であることが好ましく、0.01以上2以下であることが更に好ましい。
本発明において、遷移金属化合物(A)の担体(C)に対する使用量には特に制限はないが、遷移金属化合物(A)の担体(C)1gに対するモル量で5×10-6モル/g以上10-2モル/g以下であることが好ましく、10-5モル/g以上10-3モル/g以下であることがさらに好ましい。
【0069】
次に、本発明における、混合物(B)にいて説明する。
本発明における混合物(B)は、(B−1)カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と(B−2)下記の一般式(2)で表される有機金属化合物との混合物である。
2 1 e 3 f-e (2)
(ただし、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
活性化化合物(B−1)は、カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物である。
【0070】
まず、相溶性の非配位性アニオンについて説明する。本発明における相溶性とは、活性化化合物(B−1)がアニオンとカチオンとに分解した場合、アニオンの化学構造が分解して中性になることはないこと、かつ、アニオンが本発明の触媒を用いたオレフィンの重合反応に悪影響を与えないことを意味する。本発明における非配位性とは、アニオンが遷移金属化合物(A)と配位結合を形成することができない、あるいは、アニオンが遷移金属化合物(A)と弱い配位結合しか形成することができず、オレフィン等の中性ルイス塩基性化合物と容易に置換されることを意味する。さらに、本発明において、相溶性の非配位性アニオンを使用することにより、遷移金属化合物(A)と配位結合を形成しない場合(このような場合、アニオンは本発明の触媒において電荷均衡アニオンとして機能する)、分解を受けることがないアニオンであるため、アニオンの分解に起因する活性種としての前述の錯体中における遷移金属化合物(A)の中性化や中性の副生成物の生成が回避される。
【0071】
本発明においては、活性化化合物(B−1)は下記の一般式(10)で表される化合物であることが好ましい。
[L2 −H]v+[M7 w 1 x v- (10)
(式中、[L2 −H]v+はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、但し、L2 は中性のルイス塩基を表し、vは1以上7以下の整数であり、[M7 w 1 x v-は相溶性の非配位性アニオンを表し、但し、M7 は、周期表第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族、第15族のいずれかに属する金属元素またはメタロイドを表し、Q1 は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数2以上20以下のジヒドロカルビルアミド基、炭素数1以上30以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上30以下の炭化水素基、および炭素数1以上40以下の置換された炭化水素基からなる群より選ばれ、ただし、ハライドであるQの数は1以下であり、wは1以上7以下の整数であり、xは2以上14以下の整数であり、vは1以上7以下の整数であり、x−w=vである。)
【0072】
本発明において、活性化化合物(B−1)の更に好ましい例としては下記の一般式(11)で表される化合物である。
[L2 −H]v+[M7 w 1 y (Gz (T−H)aabbv- (11)
(式中、[L2 −H]v+、L2 、M3 、Q1 、v、およびwは、一般式(10)に定義の通りであり、GはM7 およびTと結合するaa+1の価数を持つ多価炭化水素基であり、TはO、S、NR、またはPRであり、ここでRはヒドロカルビル、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルマニウム基、または水素である。yは0以上7以下の整数であり、zは0または1であり、aaは0以上3以下の整数であり、bbは1以上8以下の整数であり、y+bb−w=vである。)
【0073】
本発明においては、活性化化合物(B−1)は下記の一般式(12)で表される化合物であることが好ましい。
[L2 −H]+ [BQ233 - (12)
(式中、L2 は上記の一般式(10)に定義の通りである。また、式中、[L2 −H]+ はプロトン供与性のブレンステッド酸を表し、[BQ233 - は相溶性の非配位性アニオンであり、Q2 はペンタフルオロフェニル基であり、残る1つのQ3 は置換基としてOH基を1つ有する炭素数6以上20以下の置換アリール基である。)
【0074】
本発明の活性化化合物(B−1)に含まれる相溶性の非配位性アニオンの具体例としては、例えば、テトラキスフェニルボレート、トリ(p−トリル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ナフチル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニル−ジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジ−トリフルオリメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシ−シクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4´−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等が挙げられ、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートが好ましい。
他の好ましい相溶性の非配位性アニオンの例としては、上記例示のボレートのヒドロキシ基がNHR基で置換されたボレートが挙げられる。ここで、Rは好ましくは、メチル基、エチル基またはt−ブチル基である。
【0075】
本発明のプロトン付与性のブレンステッド酸の具体例としては、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム及びトリ(n−オクチル)アンモニウム等のようなトリアルキル基置換型アンモニウムカチオンが挙げられ、また、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウム等のようなN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンも好適である。
さらに、ジ−(i−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム等のようなジアルキルアンモニウムカチオンも好適であり、トリフェニルフォスフォニウム、トリ(メチルフェニル)フォスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)フォスフォニウム等のようなトリアリールフォスフォニウムカチオン、またはジメチルスルフォニウム、ジエチルフルフォニウム、ジフェニルスルフォニウム等も好適である。
【0076】
本発明においては、これら活性化化合物(B−1)を単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
本発明において、活性化化合物(B−1)の使用量については特に制限はないが、活性化化合物(B−1)の使用量は遷移金属化合物(A)が反応するのに十分な量であることが好ましい。具体的には、活性化化合物(B−1)の使用量は、遷移金属化合物(A)に対するモル比で0.8倍以上5倍以下であり、より好ましくは、1倍以上2倍以下である。
【0077】
本発明においては、有機金属化合物(B−2)は下記の一般式(2)で表される。
2 1 e 3 f-e (2)
(ただし、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
本発明においては、一般式(2)のM2 は周期律表第2族、第13族、第14族および第15族からなる群に属する金属原子であることが好ましい。
有機金属化合物(B−2)は単独で用いられても良いし、複数以上を混合して使用しても良い。
【0078】
本発明においては、有機金属化合物(B−2)は有機アルミニウム化合物であることがさらに好ましい。該有機アルミニウム化合物として、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等、あるいはこれらのアルキルアルミニウムとメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1,1−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、等のアルコール類との反応生成物、例えば、ジメチルメトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、ジブチルブトキシアルミニウム、等が挙げられる。
さらに該反応生成物を生成する際のアルキルアルミニウムと上記アルコール類とのモル比、即ちAl/OHモル比は、0.3以上20以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがさらに好ましく、0.8以上3以下であることがさらに好ましい。
【0079】
本発明において、活性化化合物(B−1)に対する有機金属化合物(B−2)の量については特に制限はないが、活性化化合物(B−1)に対する有機金属化合物(B−2)のモル比で0.01以上1000以下であることが好ましく、0.1以上100以下であることがさらに好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。
本発明においては、活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)との反応については特に制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の不活性反応媒体中で、20℃以上150℃以下で反応させることが好ましい。本発明においては、活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)との反応の添加順序については特に制限はないが、活性化化合物(B−1)中に有機金属化合物(B−2)を加えていく方法、有機金属化合物(B−2)に活性化化合物(B−1)を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法を用いることができる。
【0080】
本発明において、混合物(B)[混合物(B)は活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)とを相互に混合・接触させることによって得られる。]は、確実に担体(C)に担持させることができる。混合物(B)を担体(C)により確実に担持させるためには、混合物(B)は、単なる活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)の混合物であることよりも、活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)との相互の反応によって得られた反応混合物であることが望まれる。特に、活性化化合物(B−1)が上記式(11)によって表される化合物である場合、活性化化合物(B−1)におけるT−H基を有し、それ故に有機金属化合物(B−2)の好ましい例である有機アルミニウム化合物(例えば、トリアルキルアルミニウム)と反応することができ、これによって、活性化化合物(B−1)の一部または全部が有機金属化合物(B−2)が反応した反応混合物が生成される。
【0081】
有機金属化合物(B−2)と反応する活性化化合物(B−1)の比率は、活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)の混合割合を変えることで容易に制御できる。例えば、活性化化合物(B−1)が1つのT−H基(水酸化基のような基)を有する場合、活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)は相互に、有機金属化合物(B−2)の反応性の有機基の数に応じて、1またはそれ以上の[活性化化合物(B−1)/有機金属化合物(B−2)]モル比で反応し得る。活性化化合物(B−1)のモル数が、有機金属化合物(B−2)の全ての反応性の有機基が活性化化合物(B−1)との反応によって消費されるような臨界値又はそれ以下の場合、全ての活性化化合物(B−1)は有機金属化合物(B−2)と反応する。また、活性化化合物(B−1)のモル数が、有機金属化合物(B−2)の全ての反応性の有機基が活性化化合物(B−1)との反応によって消費されるような臨界値より大きい場合、一部の活性化化合物(B−1)は有機金属化合物(B−2)と反応せずに残存する。混合物(B)が、一部または全部の有機金属化合物(B−2)が活性化化合物(B−1)と反応して得られた反応混合物である場合、混合物(B)は非常に確実に担体(C)に担持されることができる。
【0082】
本発明の方法で使用される触媒の製造において、混合物(B)は確実に担体(C)に担持され、それから、遷移金属化合物(A)は、混合物(B)を介して担体(C)に担持させるこのができる。また、先ず始めに遷移金属化合物(A)を混合物(B)と結合させて、遷移金属化合物(A)と混合物(B)との錯体を形成させて、そして、該錯体を担体(C)に結合させ、これによって、遷移金属化合物(A)を混合物(B)を介して担体(C)に確実に担持させることもできる。
【0083】
次に、担体(C)について説明する。
本発明において用いられる実質的に水酸基を有しない担体(C)は、固体材料[以下、「担体(C)の前駆体」という。]を、担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去するための処理に付すことによって、得ることができる。
本発明においては、担体(C)の前駆体は、周期表第2族、第3族、第4族、第13族および14族からなる群に属する元素の酸化物である。具体的には、シリカ、アルミナ、マグネシア、塩化マグネシウム、ジルコニア、チタニア、酸化硼素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、五酸化バナジウム、酸化クロム、酸化トリウムからなる群より選ばれる固体材料であることが好ましく、これらの混合物もしくはこれらの複合酸化物であってもよい。なかでも、シリカ,アルミナ、およびシリカと周期表第2族および第13族からなる群に属する元素から選ばれる元素の酸化物との複合酸化物から選ばれることが好ましく、シリカ、シリカ−マグネシア、シリカ−アルミナがさらに好ましい。
【0084】
本発明においては、担体(C)の前駆体として用いられるシリカ生成物の形状に関しては特に制限はなく、シリカは、顆粒状、球状、凝集状、ヒューム状など、いかなる形状であってもよい。市販のシリカ生成物の好ましい例としては、SD3216.30、SP−9−10046、デビソンサイロイドTM(SyloidTM)245、デビソン948またはデビソン952[以上全て、グレースデビソン社(W.R.デビソン社(米国)の支社)製]、アエロジル812[デグザAG社(ドイツ)製]、ES70X[クロスフィールド社(米国)製]、P−6、およびP−10[富士シリシア社(日本国)製]等が挙げられる。
【0085】
本発明において用いられる担体(C)の前駆体の、B.E.T.(Brunauer−Emmett−Teller)による窒素ガス吸着法で求められる比表面積には特に制限はないが、好ましくは10m2 /g以上1000m2 /g以下であり、より好ましくは100m2 /g以上600m2 /g以下であり、さらに好ましくは300m2 /g以上600m2 /g以下である。比表面積が10m2 /g以上では触媒活性が充分に高く、比表面積が1000m2 /g以下では担体(C)の強度が充分に高い。このような高い比表面積を有する担体(C)の代表例の一つは、多くの細孔を有する多孔質材料である。
本発明において、窒素ガス吸着法で求められる担体(C)の前駆体の細孔容積には特に制限はないが、0. 1cm3 /g以上5cm3 /g以下が好ましく、より好ましくは0. 1cm3 /g以上3cm3 /g以下であり、さらに好ましくは0.2cm3 /g以上2cm3 /g以下である。0. 1cm3 /g以上では触媒活性が充分に高く、5cm3 /g以下では担体(C)の強度が充分に高い。
【0086】
本発明において、実質的に水酸基を有しない担体(C)は、担体(C)の前駆体を化学処理して担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去することによって得ることができる。なお、本発明において、「固体成分が実質的に水酸基を有しない」とは、次に述べる方法(i)による測定では担体(C)の表面に水酸基が検出されないことを意味する。
方法(i)においては、担体(C)を溶媒中に分散させることによって得られるスラリーに所定の過剰量のエトキシジエチルアルミニウムを添加して、担体(C)の表面水酸基をエトキシジエチルアルミニウムと反応させる。この反応により、発生したエタンガスの量をガスビュレットを用いて測定してから、発生したエタンガスの量に基づいて担体(C)の表面水酸基の量を求める。この方法は、下記の反応式で表される、水酸基とエトキシジエチルアルミニウムとの反応に基づくものである。
S−OH + Al(Et)2 (OEt) → S−OAlEt(OEt) + EtH
(式中、Sは担体(C)、S−OHは担体(C)表面の水酸基、Etはエチル基を表す。)
【0087】
本発明においては、担体(C)の前駆体を加熱処理して脱水した後に、さらに化学処理して担体(C)の前駆体の表面から全部水酸基を除去し、担体(C)を得ることが好ましい。本発明における、担体(C)の前駆体の加熱処理は、例えば、不活性雰囲気下または還元雰囲気下に、好ましくは150℃以上1,000℃以下、より好ましくは250℃以上800℃以下の温度で、1時間以上50時間以下の処理によって行うことができる。
本発明においては、担体(C)の前駆体は、下記の一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物または下記の一般式(4)で表される有機マグネシウム化合物を用いた化学処理により担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去され、実質的に水酸基を有しない担体となる。
AlR2 g 43-g (3)
(式中、R2 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X4 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、gは1、2または3である。)
一般式(3)中の基R2 の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。一般式(3)中の基X4 としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0088】
担体(C)の前駆体の化学処理に用いられる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、及びこれらのトリアルキルアルミニウム化合物とアルコール(たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール)との反応生成物が挙げられる。
【0089】
そのような反応生成物の例としては、メトキシジメチルアルミニウム、エトキシジエチルアルミニウム、ブトキシジブチルアルミニウム等が挙げられる。このような反応生成物を製造する場合、トリアルキルアルミニウムのアルコールに対する比は、Al/OHのモル比で、0.3以上20以下の範囲にあることが好ましく、0.5以上5以下の範囲にあることがより好ましく、0.8以上3以下の範囲にあることがさらに好ましい。なお、上記一般式(3)で表される化合物は、単独で使用してもよいし複数以上を混合して使用してもよい。
MgR3 h 52-h (4)
(式中、R3 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X5 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、bは1または2である。)
一般式(4)中の基R3 の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、トリル基等が挙げられる。一般式(4)中の基X5 の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0090】
担体(C)の前駆体の化学処理に用いられる有機マグネシウム化合物の具体例としては、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム等が挙げられる。
上記一般式(4)で表される化合物は、単独で使用してもよいし複数以上を混合して使用してもよい。
担体(C)の前駆体を化学処理する場合、上述の有機アルミニウム化合物または有機マグネシウム化合物は、これらを混合した状態で使用してもよい。
担体(C)の前駆体を化学処理して担体(C)を得る場合は、有機金属化合物は、担体(C)の前駆体の表面に存在する水酸基のモル量と同じまたはそれより多い量が用いられる。化学処理に用いられる有機金属化合物の上限は、通常は担体(C)の前駆体の表面に存在する水酸基のモル量の10倍量が好ましく、より好ましくは5倍量、さらに好ましくは2倍量、特に好ましくは1.5倍量、最も好ましくは1.3倍量である。
【0091】
次に、有機アルミニウム化合物(D)について説明する。
本発明においては、必要に応じて有機アルミニウム化合物(D)を触媒成分として用いることができる。
本発明においては、有機アルミニウム化合物(D)の使用によって、遷移金属化合物(A)および混合物(B)は、物理的吸着によって、より確実に担体(C)に担持させることができる。
混合物(B)が未反応の活性化化合物(B−1)を含む場合、有機アルミニウム化合物(D)が使用することが好ましい。このような場合、有機アルミニウム化合物(D)を使用することによって、活性化化合物(B−1)が化学結合によって担体(C)と結合するのを確実に防ぐことができる。
【0092】
本発明における有機アルミニウム化合物(D)は、下記の一般式(13)で表される化合物であることが好ましい。
AlR15cc63-cc (13)
(R15はそれぞれ独立であって、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基であり、X6 はそれぞれ独立であってハロゲン、水素または炭素数1以上10以下のアルコキシル基であり、ccは1以上3以下の整数である。)
有機アルミニウム化合物(D)は、上記の一般式(13)で表される複数の化合物の混合物であっても構わない。
上記の一般式(13)のR15の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、水素、トリル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、であることが好ましい。
上記の一般式(13)のX6 としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、水素原子、塩素原子、等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポイキシ基、1−メチルエトキシ基、ブトキシ基が好ましい。
【0093】
本発明における有機アルミニウム化合物(D)の具体例としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリス(1−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、あるいはこれらのトリアルキルアルミニウム化合物とメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール等のアルコールとの反応生成物、例えば、ジメチルメトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、ジブチルブトキシアルミニウム等が挙げられる。本発明においては、このような反応生成物において、トリアルキルアルミニウム化合物とアルコールとの反応のモル比については特に制限はないが、アルコールに対するトリアルキルアルミニウム化合物の反応のモル比(Al/OHモル比)は0.3以上20以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがさらに好ましく、0.8以上3以下であることがさらに好ましい。
【0094】
本発明において、有機アルミニウム化合物(D)を使用する場合、有機アルミニウム化合物(D)のモル数については得に制限はないが、活性化化合物(B−1)に対する有機アルミニウム化合物(D)のモル比〔有機アルミニウム化合物(D)/活性化化合物(B−1)〕で0.01以上1000以下であることが好ましく、0.1以上100以下であることがさらに好ましく、1以上10以下であることがさらに好ましい。
本発明においては、使用される触媒の製造方法に関し、当該触媒は、遷移金属化合物(A)、混合物(B)、担体(C)、および、場合によっては有機アルミニウム化合物(D)を接触させることによって得ることができる。
【0095】
本発明においては、使用される触媒の具体的な製造方法に関しては特に制限はないが、下記の製造方法が好ましい。
(a)以下の工程からなる製造方法:
(i)活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)を互いに均質に混合・接触させ、混合物(B)を生成する工程、
(ii)遷移金属化合物(A)と混合物(B)を互いに均質に混合・接触させ、遷移金属化合物(A)と混合物(B)との反応生成物を得る工程、そして
(iii)得られた遷移金属化合物(A)と混合物(B)との反応生成物と担体(C)を互いに均質に混合・接触させる工程。
ここで、有機アルミニウム化合物(D)は、工程(i)以降であれば、いつ添加しても良い。
【0096】
(b)以下の工程からなる製造方法:
(i)活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)を互いに均質に混合・接触させ、混合物(B)を生成する工程、
(ii)混合物(B)と担体(C)を互いに均質に混合・接触させ、混合物(B)と担体(C)との混合物をえる工程、そして
(iii)遷移金属化合物(A)と得られた混合物(B)と担体(C)の混合物を互いに均質に混合・接触させる工程。
ここで、有機アルミニウム化合物(D)は、工程(i)以降であれば、いつ添加しても良い。
【0097】
(c)以下の工程からなる製造方法:
(i)活性化化合物(B−1)と有機金属化合物(B−2)を互いに均質に混合・接触させ、混合物(B)を生成する工程、
(ii)遷移金属化合物(A)と担体(C)を互いに均質に混合・接触させ、遷移金属化合物(A)と担体(C)との混合物をえる工程、そして
(iii)混合物(B)と得られた遷移金属化合物(A)と担体(C)の混合物を互いに均質に混合・接触させる工程。
ここで、有機アルミニウム化合物(D)は、工程(i)以降であれば、いつ添加しても良い。
なお、本発明では、メタロセン触媒の上述の要素に加えて、オレフィン重合に有用な他の成分が当該触媒に含まれていても良い。当該触媒の他の成分の例としては、エチルベンゾエートのような芳香族エステル化合物が挙げられる。
【実施例】
【0098】
次に、実施例などに基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明において、実施例および比較例で使用したヘキサンはMS−13X(昭和ユニオン製)を用いて脱水し使用した。また、実施例および比較例で使用したエチレン、水素、1−ブテンはMS−3A(昭和ユニオン製)を用いて脱水し使用した。
実施例中の担体(C)の前駆体の表面水酸基のモル量は、エトキシジエチルアルミニウムを担体(C)の前駆体の表面水酸基と反応させてエタンガスを発生させ、ガスビュレットを用いて測定した発生エタンガスの量から算出した。
【0099】
実施例中の触媒の活性とは、オレフィン重合用触媒1g当たり、一時間当たりのポリマー生成量(g)を表す。
実施例中のポリマーのメルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
実施例中の密度はJIS K7112の密度勾配管法により測定した。
実施例中の嵩密度は、得られたパウダーを90℃で1時間乾燥させた後に、JIS K6721に従って測定した。
【0100】
[実施例1]
(触媒の調製)
シリカP−10[富士シリシア社(日本国)製]を、窒素雰囲気下、400℃で5時間焼成し、脱水した。脱水シリカの表面水酸基の量は、1.29ミリモル/g−SiO2 であった。容量200リットルオートクレーブにこの脱水シリカ5kgをヘキサン100リットル中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを攪拌下50℃に保ちながらトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1モル)を7.5リットル加え、その後2時間攪拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させ、トリエチルアルミニウム処理されたシリカと上澄み液とを含み、該トリエチルアルミニウム処理されたシリカの全ての表面水酸基がつぶされている担体(C)を得た。その後、得られた反応混合物中の上澄み液をデカンテーションによって除去することにより、上澄み液中の未反応のトリエチルアルミニウムを除去した。その後、ヘキサンを適量加え、トリエチルアルミニウム処理されたシリカのヘキサンスラリー100リットルを得た。
【0101】
ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム−トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する。)457gをトルエン5リットルに添加して溶解し、ボレートの100ミリモル/リットルトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液にエトキシジエチルアルミニウムの1モル/リットルヘキサン溶液400ミリリットルを25℃で加え、さらにヘキサンを加えてトルエン溶液中のボレート濃度が70ミリモル/リットルとなるようにした。その後、室温で1時間攪拌しボレートを含む反応混合物(B)を得た。
【0102】
[(N−t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム−1,3−ペンタジエン(以下、「チタニウム錯体」という)400ミリモルをアイソパーE[エクソンケミカル社(米国)製の炭化水素混合物の商品名]4リットルに溶解し、予めトリエチルアルミニウムとジブチルマグネシウムより合成した一般式「AlMg6 (C2 5 3 (n−C4 9 12」の1モル/リットルヘキサン溶液を20ミリリットル加え、更にヘキサンを加えてチタニウム錯体濃度を0.1モル/リットルに調整し、遷移金属化合物(A)を得た。
【0103】
ボレートを含むこの反応混合物(B)全量を、上で得られた、成分(C)のスラリーに15℃で攪拌しながら加え、ボレートを物理吸着によりシリカに担持した。
こうして、ボレートを担持したシリカのスラリーが得られた。さらに上で得られた遷移金属化合物(A)を全量加え、15℃で3時間攪拌し、チタニウム錯体とボレートとを反応させた。こうしてシリカと上澄み液とを含み、触媒活性種が該シリカ上に形成されている固体触媒成分(1)を得た。
【0104】
(有機マグネシウム化合物(E)の調製)
(i)炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物として、BuEtMgを使用した。(ii)シロキサン化合物として、メチルヒドロポリシロキサン(信越化学製、粘度20センチストークス@25℃)を使用した。まず、BuEtMgの1モル/リットルヘキサン溶液10リットルを攪拌機付き40リットル反応器(SUS302製)に添加し、内温を50℃に調節した。ここに、ジメチルヒドロポリシロキサンのSi換算で1モル/リットルに希釈したヘキサン溶液10リットルを攪拌しながら添加した。添加後、80℃で3時間反応を継続した。反応終了後、20℃に冷却し、ヘキサンで濃度を調節することにより、有機マグネシウム化合物(E)0.5モル/リットルヘキサン溶液を調製した。
【0105】
(エチレン/1−ブテン共重合)
固体触媒成分移送パイプ、モノマー混合物供給パイプ、および、スラリー抜き取りパイプを有する、200リットルの撹拌器付きベッセル型重合反応器を用いた。エチレンおよび1−ブテンのモノマー混合物、ヘキサン(重合反応溶媒)、水素、上記の有機マグネシウム化合物(E)、および上記の固体触媒成分(1)を連続的にベッセル型重合反応器に供給し、所望のポリエチレン(即ち、エチレン/1−ブテン共重合体)を10kg/hの速度で連続的に製造した。エチレンと1−ブテンとの混合物は、モノマー混合物供給パイプを通して供給した。水素は、連鎖移動剤として、共重合体のMI(メルトインデクッス)で定義される目標の分子量を有するエチレン/1−ブテン共重合体を得るために必要な量を水素供給パイプを通して供給した。
【0106】
共重合中、反応温度は70℃、反応圧力は0.9MPaに保たれた。1ーブテン流量は、重合反応器内の気相中のエチレンおよび1−ブテンの和に対する1−ブテンのモル/リットル比が0.4%の組成に維持されるように調節された。なお、気相中のエチレンの濃度および1−ブテンの濃度はオンラインガスクロマトグラフにより測定された。重合スラリー(液相)は、重合反応器のレベルが一定に保たれるように連続的に抜き取られ、抜き取られたスラリーは、連続的に次の乾燥工程へ送られた。固体触媒成分移送パイプは、有機マグネシウム化合物を固体触媒成分移送パイプにフィードするための枝管を有している。
【0107】
より詳細には、次のように重合反応を行った。
固体触媒成分(1)1g/hrと有機マグネシウム化合物(E)6ミリモル/hrを固体触媒成分移送パイプを通して、該移送媒体としてヘキサン(重合反応溶媒)60リットル/hrと共に、重合反応器に導入した。この時、有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子の濃度は0.1ミリモル/リットル、固体触媒成分(1)に含まれる遷移金属化合物に対する有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子のモル比は、90であった。 スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、塊状のポリマーの生成もなく安定して連続運転ができた。連続共重合終了後、重合反応器内を点検したが、塊状のポリマーの存在はなかった。
反応状態、共重合の結果を表1に示した。
【0108】
[比較例1]
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
有機マグネシウム化合物(E)を触媒移送パイプの側壁に接続された有機マグネシウム化合物用の導管に供給する代わりに、重合反応器の液相部へ直接供給した以外は、全て実施例1と実質的に同様に操作した。即ち、触媒は、重合反応器に導入される前に、有機マグネシウム化合物(E)とは接触してはいなかった。
重合開始後、塊状ポリマーが大量に発生し、スラリー抜き取り配管が閉塞し、重合反応器内のスラリー抜取りが不能となりS/D(シャットダウン)した。また、反応終了後、重合反応器から乾燥工程へのスラリー抜き取り配管を調べてみると、配管内壁に大量の塊状のポリマーの付着が存在した。
反応状態、共重合の結果を表1に示した。
【0109】
[実施例2]
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
有機マグネシウム化合物(E)の量を0.6ミリモル/hrとした以外は、全て実施例1と実質的に同様に操作した。この時、有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子の濃度は0.01ミリモル/リットル、固体触媒成分(1)に含まれる遷移金属化合物に対する有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子のモル比は9であった。
スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。連続共重合終了後、重合反応器内を点検したが、塊状のポリマーの存在はなかった。
反応状態、共重合の結果を表1に示した。
【0110】
[実施例3]
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
有機マグネシウム化合物(E)の量を60ミリモル/hrとした以外は、全て実施例1と実質的に同様に操作した。この時、有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子の濃度は1ミリモル/リットル、固体触媒成分(1)に含まれる遷移金属化合物に対する有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子のモル比は900であった。
スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。連続共重合終了後、重合反応器内を点検したが、塊状のポリマーの存在はなかった。
反応状態、共重合の結果を表1に示した。
【0111】
[実施例4]
(エチレンと1−ブテンとの共重合)
固体触媒成分と有機マグネシウム化合物(E)とを事前に接触させ、固体触媒成分移送媒体としてヘキサン(重合反応溶媒)60リットル/hrと共に、重合反応器に導入した以外は、全て実施例1と実質的に同様に操作した。この時、有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子の濃度は0.1ミリモル/リットル、固体触媒成分(1)に含まれる遷移金属化合物に対する有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子のモル比は90であった。
スラリー抜き取り配管も閉塞することなく、安定して連続運転ができた。連続共重合終了後、重合反応器内を点検したが、塊状のポリマーの存在はなかった。
反応状態、共重合の結果を表1に示した。
【0112】
[比較例2]
有機マグネシウム化合物(E)の量を0.3ミリモル/hrとした以外は、全て実施例1と実質的に同様に操作した。この時、有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子の濃度は0.005ミリモル/リットル、固体触媒成分(1)に含まれる遷移金属化合物に対する有機マグネシウム化合物(E)中の全金属原子のモル比は4.4であった。
重合開始後、重合活性が低いことが分かった。また、スラリー抜き取り配管が閉塞し、重合反応器内のスラリー量がコントロール不能となりS/D(シャットダウン)した。また、反応終了後、重合反応器から乾燥工程へのスラリー抜き取り配管を調べてみると、配管内壁に大量の塊状のポリマーの付着が存在した。
反応状態、共重合の結果を表1に示した。
【0113】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、メタロセン系触媒の存在下の連続的スラリー重合方法及び連続的気相重合方法によるオレフィンの重合・共重合を、塊状のポリマーを生成することなく安定して行える点で有用である。即ち、本願発明の方法によって、重合反応器からのポリマーの抜き取り配管が閉塞、ポリマーの抜き取りが不能となることが防止され、商業規模のプラントの連続運転によって、オレフィンの重合体又は共重合体が、安定に効率的に製造できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン系触媒を用いてオレフィンまたはオレフィン及び該オレフィンと共重合可能な単量体を重合する連続式スラリー重合法または連続式気相重合法において、固体触媒成分が、
(A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物、
1 a b 1 1 c 2 d (1)
(式中、L1 は、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1個以上8個以下の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1以上12以下のアミノヒドロカルビル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上12以下のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる置換基であり、M1 は、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子L1 にη5 結合している遷移金属を表し、WはL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL1 及びM1 と共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、X1 は、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、M1 と2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、およびL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれるアニオン性σ結合型配位子を表し、X2 は中性ルイス塩基配位性化合物を表し、aは1または2であり、但し、aが2である時、場合によっては2つの配位子L1 が2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1以上20以下のヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、但し、X1 が1価のアニオン性σ結合型配位子、またはL1 とM1 とに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より1以上小さい自然数であり、またX1 がM1 にのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より(a+1)以上小さい自然数であり、dは0、1または2である)
(B)(B−1)カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と(B−2)下記の一般式(2)で表される有機金属化合物との混合物、 M2 1 e 3 f-e (2)
(但し、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
(C)周期表第2族、第3族、第4族、第13族および14族からなる群に属する原子の酸化物であり、かつ下記の一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物または下記の一般式(4)で表される有機マグネシウム化合物を用いた化学処理により担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去され、実質的に水酸基を有しない担体と、
AlR2 g 43-g (3)
(式中、R2 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X4 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、gは1、2または3である。)
MgR3 h 52-h (4)
(式中、R3 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X5 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、bは1または2である。)
からなり、
重合反応器に、連続的にオレフィン又は連続的に該オレフィンおよび単量体を該重合反応器に供給しながら、固体触媒成分を該重合反応器に移送する際に、
該固体触媒成分と、(i)下記の一般式(5)で表される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と(ii)アミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物とを反応させて得られる炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物(E)とを接触させたのち、該重合反応器へ導入することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
(M3 i (Mg)j (R4 k (R5 m (5)
〔式中、M3 は周期律表第1族、第2族、第3族からなる群に属する金属原子であり、R4 及びR5 は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、i、j、k、mは次の関係を満たす数である。0≦i、0<j、0≦k、0≦m、k+m>0、n×i+2j=k+m(ただし、nはM3 の原子価)〕
【請求項2】
メタロセン系触媒を用いてオレフィンまたはオレフィン及び該オレフィンと共重合可能な単量体を重合する連続式スラリー重合法または連続式気相重合法において、固体触媒成分が、
(A)環状アニオン配位子がη結合してなる遷移金属を含む、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物、
1 a b 1 1 c 2 d (1)
(式中、L1 は、各々独立して、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基からなる群より選ばれるη結合性環状アニオン配位子を表し、該配位子は場合によっては1個以上8個以下の置換基を有し、該置換基は各々独立して炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下のハロゲン置換炭化水素基、炭素数1以上12以下のアミノヒドロカルビル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1以上12以下のジヒドロカルビルアミノ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルフォスフィノ基、シリル基、アミノシリル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビルオキシシリル基及びハロシリル基からなる群より選ばれる置換基であり、M1 は、形式酸化数が+2、+3または+4の周期表第4族に属する遷移金属群から選ばれる遷移金属であって、少なくとも1つの配位子L1 にη5 結合している遷移金属を表し、WはL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合し、これによりL1 及びM1 と共働してメタロサイクルを形成する2価の置換基を表し、X1 は、各々独立して、1価のアニオン性σ結合型配位子、M1 と2価で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子、およびL1 とM1 とに各々1価ずつの価数で結合する2価のアニオン性σ結合型配位子からなる群より選ばれるアニオン性σ結合型配位子を表し、X2 は中性ルイス塩基配位性化合物を表し、aは1または2であり、但し、aが2である時、場合によっては2つの配位子L1 が2価の基を介して互いに結合し、該2価の基は炭素数1以上20以下のヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のハロヒドロカルバジイル基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンオキシ基、炭素数1以上12以下のヒドロカルビレンアミノ基、シランジイル基、ハロシランジイル基及びシリレンアミノ基からなる群より選ばれる基であり、bは0または1であり、cは0、1または2であり、但し、X1 が1価のアニオン性σ結合型配位子、またはL1 とM1 とに結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より1以上小さい自然数であり、またX1 がM1 にのみ結合している2価のアニオン性σ結合型配位子である場合、cはM1 の形式酸化数より(a+1)以上小さい自然数であり、dは0、1または2である)
(B)(B−1)カチオンおよび相溶性の非配位性アニオンを含み、かつ遷移金属化合物(A)と反応して触媒活性を有する金属錯体を形成することが可能である活性化化合物と(B−2)下記の一般式(2)で表される有機金属化合物との混合物、
2 1 e 3 f-e (2)
(但し、M2 は周期律表第1族乃至第15族からなる群に属する金属原子であり、R1 は各々独立に炭素数1乃至12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基又は炭素数6乃至20のアリル基であり、X3 は各々独立にハロゲン、水素、炭素数1乃至10のアルコキシ基であり、fはM2 の形式酸化数を示し、eは1以上f以下の整数を示す。)
(C)周期表第2族、第3族、第4族、第13族および14族からなる群に属する原子の酸化物であり、かつ下記の一般式(3)で表される有機アルミニウム化合物または下記の一般式(4)で表される有機マグネシウム化合物を用いた化学処理により担体(C)の前駆体の表面から水酸基を除去され、実質的に水酸基を有しない担体と、
AlR2 g 43-g (3)
(式中、R2 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X4 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、gは1、2または3である。)
MgR3 h 52-h (4)
(式中、R3 は、各々独立して、炭素数1以上12以下の直鎖状,分岐状もしくは環状のアルキル基または炭素数6以上20以下のアリール基を表し、X5 は、各々独立して、ハライド、ヒドリドまたは炭素数1以上10以下のアルコキシド基を表し、bは1または2である。)
及び、
(D)有機アルミニウム化合物、
からなり、
重合反応器に、連続的にオレフィン又は連続的に該オレフィンおよび単量体を該重合反応器に供給しながら、固体触媒成分を該重合反応器に移送する際に、
該固体触媒成分と、(i)下記の一般式(5)で表される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と(ii)アミン、アルコール、シロキサン化合物から選ばれる化合物とを反応させて得られる炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物(E)とを接触させたのち、該重合反応器へ導入することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
(M3 i (Mg)j (R4 k (R5 m (5)
〔式中、M3 は周期律表第1族、第2族、第3族からなる群に属する金属原子であり、R4 及びR5 は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、i、j、k、mは次の関係を満たす数である。0≦i、0<j、0≦k、0≦m、k+m>0、n×i+2j=k+m(ただし、nはM3 の原子価)〕
【請求項3】
固体触媒成分と接触させる有機マグネシウム化合物(E)の量が、固体触媒成分移送媒体中、該有機マグネシウム化合物の中の全金属原子(M3 のモル数+Mgのモル数)の濃度として、0.01ミリモル/リットル以上5ミリモル/リットル以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
固体触媒成分と接触させる有機マグネシウム化合物(E)の量が、該固体触媒成分に含まれる遷移金属化合物(A)のM1 のモル数に対する該有機マグネシウム化合物中の全金属原子(M3 のモル数+Mgのモル数)のモル比で、5以上5000以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
重合反応器に固体触媒成分移送パイプが繋がれており、固体触媒成分は該移送パイプ中を流れる固体触媒成分移送媒体と共に移送され、且つ、該移送パイプ中を通して該固体触媒成分を移送する間に有機マグネシウム化合物(E)を該移送媒体に供給して該固体触媒成分を該有機マグネシウム化合物に接触させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
固体触媒成分移送パイプがその側壁に繋がれた有機マグネシウム化合物(E)を該移送パイプに供給するための導管を有し、且つ、該有機マグネシウム化合物の固体触媒成分移送媒体への供給が、該有機マグネシウム化合物を当該導管を通して該移送パイプに供給されることによってなされることを特徴とする請求項5に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
固体触媒成分移送パイプが重合反応器に固体触媒成分を供給するためのノズルを有し、当該ノズルに繋がれた有機マグネシウム化合物(E)を該移送ノズルに供給するための導管を有し、且つ、該有機マグネシウム化合物の固体触媒成分移送媒体への供給が、該有機マグネシウム化合物を当該導管を通して該ノズルに供給されることによってなされることを特徴とする請求項5に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
オレフィンが、エチレンおよび炭素数が3以上20以下のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2007−169611(P2007−169611A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314006(P2006−314006)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】