オレフィン重合反応装置、ポリオレフィン製造システム、及び、ポリオレフィン製造方法
【課題】粒子の滞留時間分布が狭く且つ圧力損失が小さいオレフィン重合反応装置及びこれを備えたポリオレフィン製造システムを提供すること。また、上記オレフィン重合反応装置又はポリオレフィン製造システムを用いたポリオレフィン製造方法を提供する。
【解決手段】オレフィン重合反応装置10Aは、鉛直方向に伸びる円筒部12と、この円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部30と、円筒部内に設けられ、ガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びるドラフトチューブT1とを備え、縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれた反応領域25内に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応装置。
【解決手段】オレフィン重合反応装置10Aは、鉛直方向に伸びる円筒部12と、この円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部30と、円筒部内に設けられ、ガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びるドラフトチューブT1とを備え、縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれた反応領域25内に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流層を用いたオレフィン重合反応装置及びポリオレフィン製造システム、並びに、これらを用いてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器内で、気体や液体として供給されたオレフィンモノマーを触媒の存在下で重合させ、粒状のポリオレフィン粒子を形成させるオレフィン重合反応装置が知られている。しかし、1つの容器内ではポリオレフィン粒子は完全混合状態に近くなるため、十分に成長していない粒子が排出されるショートパスや、成長しすぎた粒子が容器内に蓄積されることが起こりやすい。
【0003】
この場合、生成粒子の構造上の均一性が悪く、また、触媒コストの上昇、触媒残渣の増大、複数の反応領域で重合して得られた多段重合体を成形して得られる成形品の欠陥(魚の目の形状に似ていることから、「フィッシュアイ」と称される。)の増加等の問題が発生しやすい。また、完全混合であると、重合条件を変化させて異なるロットの重合を行う場合に、条件変更前に重合されたポリオレフィン粒子を容器内から完全排出させるのに時間がかかるため、規格外品が大量に生成されることとなる。これに対して、完全混合型の装置を直列に複数接続して全体としてプラグフローとすることも考えられるが、多数の装置を直列にするのでは設備コストがかかる。そこで、1つの装置において、滞留時間分布を小さくしてプラグフロー化することが求められている。このような装置として、特許文献1〜3のような装置が知られている。
【0004】
他方、流動層を用いて種々の改良を加えた装置として、特許文献4〜10や非特許文献1のような装置が知られている。このような装置の中でも、特許文献4〜6や非特許文献1のような装置を使用した場合に、ポリオレフィン粒子が循環する領域において他の領域と比較してガス組成が異なる区域を部分的に設けることによって、分子量分布や共重合組成分布の広いポリオレフィンを製造することができるとされている。
【0005】
ところで、ポリオレフィン製造の分野ではないが、噴流層と呼ばれる流動を利用して固体粒子と流体とを接触させる技術が知られている(非特許文献2を参照)。また、噴流層の安定化策としてドラフトチューブを使用する技術も知られている(特許文献11〜13及び非特許文献3〜5を参照)。なお、流動層を用いるものであれば、ポリオレフィン製造においてもドラフトチューブを使用する技術は知られている(特許文献10を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2675919号公報
【特許文献2】米国特許5235009号明細書
【特許文献3】特表2002−537420号公報
【特許文献4】特表2002−520426号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第1484343号明細書
【特許文献6】特表2006−502263号公報
【特許文献7】特開昭59−42039号公報
【特許文献8】特表2002−515516号公報
【特許文献9】特開昭58−216735号公報
【特許文献10】国際公開第02/40547号
【特許文献11】特公平6−76239号公報
【特許文献12】米国特許4373272号明細書
【特許文献13】特許3352059号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.Weickert、Chemie Ingenieur Technik2005、77、no.8、p.977
【非特許文献2】横川明、粉体工学会誌、1997年、vol.21、No.11、p.715−p.723
【非特許文献3】幡手泰雄ら、粉体工学会誌、1997年、vol.34、No.5、p.343−p.360
【非特許文献4】竹中草平ら、化学工学会第71回年会講演要旨J123、2006年
【非特許文献5】石蔵利文ら、化学工学論文集、1996年、VOL.22、No.3、p.615−p.621
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、容器内に水平方向に複数のゾーンを形成する特許文献1の方法では容器内に攪拌パドル等を設ける必要があり、構造が複雑となると共に粒子の攪拌に要するエネルギーが大きいといった問題があった。また、流動層を上下方向に直列に多数接続した特許文献2の方法では、各段にフリーボード部を設ける必要があるので装置の高さが巨大になる恐れがある。また、管型反応器内においてワンパスで重合させる特許文献3では、十分な滞留時間をとるためには極めて管を長くする必要がある。
【0009】
また、特許文献4、5のような循環流動層型の装置では、各ポリオレフィン粒子の分子量分布や共重合組成分布は広く、且つ、均質なものが得られるものの、装置内の循環回数までは制御できず、装置内でのポリオレフィン粒子の滞留時間分布を実質的に狭くすることはできない。また、分散板を用いる流動層の場合には、圧力損失の面では不利となる。なお、特許文献6〜8に記載の流動層装置は、必ずしもガス分散板を必要としないものであるが、容積効率の点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粒子の滞留時間分布が狭く且つ圧力損失が小さいオレフィン重合反応装置及びこれを備えたポリオレフィン製造システムを提供することを目的とする。また、上記オレフィン重合反応装置又はポリオレフィン製造システムを用いたポリオレフィン製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るオレフィン重合反応装置は、鉛直方向に伸びる円筒部と、この円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部と、円筒部内に設けられ、ガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びるドラフトチューブとを備え、縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれた反応領域内に噴流層が形成されるものである。
【0012】
本発明の噴流層型オレフィン重合反応装置においては、触媒を含むポリオレフィン粒子を収容して粒子層が形成される反応領域に、縮径部下端のガス導入用開口から上方に向かってオレフィン含有ガスを高速で流入させ、反応領域内に噴流層を形成する。ここで、噴流層とは、ガス導入用開口からのオレフィン含有ガスの作用によって、ポリオレフィン粒子(以下、場合により単に「粒子」という。)からなる粒子層において円筒部の中心軸付近に粒子濃度が希薄であり且つ当該ガスと共に上向きに粒子が流れる噴流(噴流部)が形成される一方、その周囲を粒子が重力の影響で移動層状に下降する環状構造が形成され、粒子の循環運動が生じている粒子層の状態をいう。
【0013】
ガス導入用開口から吹込まれたオレフィン含有ガスの一部は、噴流を形成して粒子層及びドラフトチューブを吹き抜け、残りは環状構造の粒子層の部分に拡散する。このようにオレフィン含有ガスとポリオレフィン粒子とが固気接触することによって、ポリオレフィン粒子は反応領域内でオレフィンの重合によって成長する。本発明においては、反応領域内の所定の位置に鉛直方向に伸びるドラフトチューブを設置したことで、十分に高い安定性を有し且つ圧力損失も低減し得る噴流層を形成できる。
【0014】
ドラフトチューブは、上端開口から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有し、当該拡径部がガス導入用開口から離隔した位置まで伸びていることが好ましい。かかる構成のドラフトチューブを採用することで、ポリオレフィン粒子の重合熱除去に寄与する環状粒子層へ流入するガス量を増加させることができる。これにより、安定的にポリオレフィン粒子を成長させることができる。
【0015】
なお、一般に、噴流層は、流動層と比較すると、圧力損失の点において優れた性能を発揮し得ること、及び、粒子の循環運動によって若干プラグフローに近い混合が生じることが知られている。従って、本発明に係る噴流層型オレフィン重合反応装置は、流動層を利用した従来の装置と比較すると、反応領域における粒子の滞留時間分布を小さくできるという利点がある。また、流動層では流動化に過大なガス流速が必要となる粒径数mm程度の比較的大きなポリオレフィン粒子を製造する際にも、噴流層では流動層に比して低ガス流速にて粒子の流動化が可能となる利点もある。
【0016】
本発明のオレフィン重合反応装置は、反応領域内において、ドラフトチューブの上端開口の上方に配設され、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が円筒部の内壁から離間されている第1の円錐バッフルを更に備えることが好ましい。
【0017】
従来の流動層型の装置にあっては、粒子飛散を抑制するのに一定のフリーボードゾーンを確保する必要がある。本発明の装置においては、ドラフトチューブの上方に配設される第1の円錐バッフルは、噴流した粒子の飛散を抑制するそらせ板の役割を果たす。従って、フリーボードゾーンを短縮することができ、流動層型の装置と比較し、高い容積効率を達成できる。
【0018】
本発明のオレフィン重合反応装置は、複数の上記反応領域を有し、当該反応領域をポリオレフィン粒子が順次通過することが好ましい。また、装置の省スペース化の観点から、複数の反応領域は、鉛直方向に並ぶようにそれぞれ形成され、上方の反応領域から下方の反応領域へとポリオレフィン粒子が順次通過することがより好ましいが、エジェクタ等を利用して、下方から上方へとポリオレフィン粒子を通過させることもできる。反応領域を複数設けて噴流層を多段化することで、粒子の滞留時間分布を十分に小さくすることができる。また、上述のように、噴流層は従来の流動層とは異なり若干プラグフローに近い混合が生じることから、流動層を多段化するよりも少ない段数で同等に滞留時間分布を狭化し得る。
【0019】
上記のように複数の反応領域が直列に設けられ、多段の噴流層を備えるオレフィン重合反応装置にあっては、上流側の反応領域から下流側の反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段を備えることが好ましい。
【0020】
本発明のオレフィン重合反応装置は、縮径部のガス導入用開口の縁から下方に延びる管状部を更に備えることが好ましい。この管状部からガスを反応領域内に導入すると、このような管状部が設けられておらず、単にガス導入用開口からガスを導入する場合と比較して反応領域内におけるガスの上方への流れが十分に安定化する。その結果、導入されるガスの流速や反応領域内の粒子量が多少変動しても、噴流層の流動状態を十分に維持できる。また、上記管状部が設けられていると、粒子が重力によってガス導入用開口から下方に落下しそうになっても、その管路内において下方から流入するガスによって押し上げられ、再び反応領域内に戻りやすいという利点もある。
【0021】
上記管状部は、その管路内を水平方向に区画する隔壁を更に有することが好ましい。隔壁を有する管状部を採用することにより、ガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。
【0022】
本発明に係るオレフィン重合反応装置は、少なくとも一端が閉じられ且つ管状部の内部に配設された円筒部材を更に備え、ガス導入用開口に至るまでの管路が円筒部材の外面と管状部の内面とによって形成されるアニュラス部を有することもできる。かかる構成を採用することにより、管路の水平方向の断面をリング形状とすることができ、これと断面積が同一であり且つ断面が円形の管路を採用した場合と比較して以下のような利点がある。まず、円形の管路と比較してガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。また、上記構成は当該反応装置をスケールアップする際に有効である。つまり、ガス導入用開口を拡大した場合であっても、これに至るまでの流路の断面がリング形状であることで、断面が円形である場合と比較し、開口間隔を狭くすることができ、安定した噴流層を形成しやすい。
【0023】
本発明のオレフィン重合反応装置は、管状部の下端を閉じる閉鎖板と、管状部の管路よりも細い管路を有し、閉鎖板を貫通するように設けられたガス導入管と、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が管状部の内面から離間されている第2の円錐バッフルとを更に備え、当該第2の円錐バッフルがガス導入管の上端の直上に配設されたものであってもよい。上記構成の反応装置によれば、第2の円錐バッフルが粒子の落下防止板としての役割を果たすため、ガスの供給を停止した場合であってもガス導入用開口を通じて粒子が落下するのを十分に防止できる。
【0024】
本発明のオレフィン重合反応装置は、ドラフトチューブ内と連通しており、ドラフトチューブ内にガス又は液体を供給する配管を更に備えることが好ましい。この配管を通じてドラフトチューブ内にガス又は液体を供給することにより、ドラフトチューブ内のガス組成をドラフトチューブ外のガス組成と異なるものとすることができる。これにより、分子量分布や共重合組成分布が広く且つ均質なポリオレフィン粒子を製造することが可能となる。
【0025】
本発明に係るポリオレフィン製造方法は、上述のオレフィン重合反応装置を用い、ポリオレフィン粒子による噴流層を反応領域内に形成させてオレフィンの重合を行うものである。本発明に係るポリオレフィン製造方法は、オレフィン重合反応装置にオレフィンを連続的に供給するとともに、オレフィン重合反応装置から未反応のオレフィンを含むガスを連続的に抜き出し、抜き出したガスをオレフィン重合反応装置に返送する工程と、抜き出したガスの全部又は一部を冷却し、オレフィンを含む凝縮液を得る工程とを備えたものであってもよい。この場合、オレフィン重合反応装置の反応領域内に形成された噴流層の噴流部に凝縮液を供給することが好ましい。これにより、凝縮液の蒸発潜熱の利用が可能となり、凝縮液のオレフィン重合反応装置の除熱を効率よく行うことができる。また、オレフィン重合反応装置が第1の円錐バッフルを具備したものである場合、凝縮液を第1の円錐バッフルの下部に供給してもよい。この場合、第1の円錐バッフルの治具を利用して凝縮液供給用のラインを配設できるという利点がある。
【0026】
本発明のポリオレフィン製造システムは、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させてポリオレフィン粒子を形成するオレフィン事前重合反応装置と、オレフィン事前重合反応装置の後段に接続された上述のオレフィン重合反応装置とを備える。本発明のポリオレフィン製造方法は、上述のポリオレフィン製造システムを用いてオレフィンの多段重合を行うものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、十分に高い安定性を有し且つ圧力損失も低減し得る噴流層を形成できると共に、粒子の滞留時間分布を小さくすることができる。従って、連続的にオレフィン重合体を製造する際に、重合体構造上の均一性に優れたものを製造できると共に、製造条件変更に伴う反応装置内の重合体置換が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るポリオレフィン製造システムの実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のオレフィン重合反応装置10Aの拡大概略断面図である。
【図3】本発明に係るポリオレフィン製造システムの他の実施形態を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係るポリオレフィン製造システムの更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係るポリオレフィン製造システムの更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】(a)及び(b)はドラフトチューブの構成を示す断面図である。
【図7】ガス導入用開口の縁から下方に伸びる管状部を示す断面図である。
【図8】(a)−(c)はガス導入部の構成を示す図である。
【図9】(a)及び(b)はガス導入部の構成を示す図である。
【図10】(a)及び(b)はガス導入部の構成を示す図である。
【図11】円筒部材が配設された管状部を示す模式断面図である。
【図12】ガス導入管及び第2の円錐バッフルが配設された管状部を示す模式断面図である。
【図13】管状部に配設されたガス導入管及び第2の円錐バッフルを示す模式断面図である。
【図14】ベルマウス形状の下端部を有する延長管を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
(ポリオレフィン製造システム)
図1に本実施形態に係るポリオレフィン製造システム100Aを示す。この製造システム100Aは、オレフィン事前重合反応装置5と、このオレフィン事前重合反応装置5の後段に接続されたオレフィン重合反応装置10Aとを備える。
【0031】
(オレフィン事前重合反応装置)
オレフィン事前重合反応装置5は、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させてポリオレフィン粒子を形成する。
【0032】
オレフィン事前重合反応装置5としては、特に限定されないが、例えば、スラリー重合反応装置、塊状重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、流動床式気相重合反応装置が挙げられる。なお、これらの装置は、1種を単独で用いてもよく、同一種類の複数の装置を組み合わせて用いてもよく、異なる種類の装置を2以上の組み合わせて用いてもよい。
【0033】
スラリー重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。なお、スラリー重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒に、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体を添加したものを重合溶媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒をスラリー状に分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度及び圧力で行う。重合温度は、通常、30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは、0.3〜5MPaGである。
【0034】
塊状重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。なお、塊状重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒が実質的に存在せず、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体を重合溶媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒を分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度及び圧力で行う。重合温度は、通常、30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは、0.5〜5MPaGである。
【0035】
攪拌槽式気相重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭46−31969号公報、特公昭59−21321号公報に記載の反応装置を用いることができる。なお、攪拌槽式気相重合は、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体を攪拌機によって流動状態に保ちながら、気体状態の単量体を重合する方法である。重合温度は、通常、50〜110℃であり、好ましくは60〜100℃である。重合圧力は、攪拌槽式気相重合反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜5MPaG、好ましくは、0.5〜3MPaGである。
【0036】
流動床式気相重合反応装置としては、公知の反応装置、例えば、特開昭58−201802号公報、特開昭59−126406号公報、特開平2−233708号公報に記載の反応装置を用いることができる。なお、流動床式気相重合は、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体を主として媒体の流れによって流動状態に保ちながら、気体状態の単量体を重合する方法である。流動化を促進するため、補助的に攪拌装置を設ける場合もある。重合温度は、通常、0〜120℃であり、より好ましくは20〜100℃であり、更に好ましくは40〜100℃である。重合圧力は、流動床式反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、より好ましくは0.2〜8MPaG、更に好ましくは0.5〜5MPaGである。
【0037】
各反応装置の組み合わせとしては、例えば、スラリー重合反応装置又は塊状重合反応装置の後段に、流動床式気相重合反応装置又は攪拌槽式気相重合反応装置を接続した態様があげられる。
【0038】
また、スラリー重合反応装置又は塊状重合反応装置と、その後段に接続される、例えば、流動床式気相重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、又は、後述するオレフィン重合反応装置10A等の気相重合反応装置との間には、通常、未反応のオレフィンや重合溶媒とオレフィン重合体粒子とを分離するフラッシング槽が設けられる。但し、当該フラッシング槽は必ずしも必要ではなく、特に、塊状重合反応器を用いた場合には、フラッシング槽を設置しない場合も少なくない。
【0039】
(オレフィン重合反応装置)
オレフィン重合反応装置10Aは、オレフィン事前重合反応装置5によって生成したポリオレフィン粒子に対して、実質的に気相状態でオレフィン重合反応を行わせる装置である。
【0040】
図1に示すように、オレフィン重合反応装置10Aは、主として、鉛直方向に伸びる円筒12、円筒12内に複数設けられたそらせ板(第1の円錐バッフル)20、及び、円筒12内に複数設けられた筒状バッフル(縮径部)30を備えている。そらせ板20及び筒状バッフル30は、円筒の軸方向に交互に配置されている。なお、そらせ板20及び筒状バッフル30は、いずれも円筒12の軸と同軸に配置されることが好ましい。また、噴流層の安定化の観点からは、円筒12の内径は5m以下であることが好ましく、3.5m以下であることがより好ましい。
【0041】
オレフィン重合反応装置10Aにおいては、円筒12内に5段の反応領域25が鉛直方向に並ぶように形成される。反応領域25は、筒状バッフル30の外面と、その直下の筒状バッフル30の内面と、これらの筒状バッフル30の間の円筒12の部分(円筒部)の内面とによって囲まれた領域である。但し、最上段の反応領域25は、円筒12の頭頂部の内面と、その直下の筒状バッフル30の内面と、これらの間の円筒12の部分(円筒部)の内面とによって囲まれた領域である。
【0042】
各反応領域25内においては、筒状バッフル30の下端30bに形成されたガス導入用開口から上方に向かってオレフィン含有ガスが高速で流入することによって、ポリオレフィン粒子の噴流層が形成されるようになっている。
【0043】
各反応領域25内には、円筒12の軸と同軸にドラフトチューブT1が設置されている。ドラフトチューブT1を使用することにより、噴流層の安定性を向上させることができる。ドラフトチューブT1は、筒状バッフル30のガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びる直管である。
【0044】
ドラフトチューブT1の下端T1aと筒状バッフル30のガス導入用開口との距離(クリアランス)Lcと、筒状バッフル30のガス導入用開口の径Doとの比率(Lc/Do)は、0.5〜5であることが好ましく、0.7〜4であることがより好ましい。比率Lc/Doが0.5未満であると、噴流層の環状部へのガス拡散が不十分となる傾向にあり、他方、5を越えると噴流層の安定性が不十分となる傾向にある。
【0045】
ドラフトチューブT1は、上端T1bが噴流層の粉面から突出する長さとすることができる。これにより、噴流層における圧力損失がより一層低減される。他方、ドラフトチューブT1は、上端T1bが噴流層の粉面よりも低い位置となる長さであってもよい。これにより、環状粒子層へガス拡散性を高めることができる。ドラフトチューブの長さLtの円筒12の内径DRに対する比率(Lt/DR)は、噴流層の安定性及びガス拡散性の点から、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0046】
ドラフトチューブT1の内径Dtのガス導入用開口の径Doに対する比率(Dt/Do)は、噴流層の安定性及びガス拡散性の点から、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。
【0047】
図2に示すように、各反応領域25における筒状バッフル30の上方であり、そのガス導入用開口と対向する位置には、そらせ板20がそれぞれ配設されている。そらせ板20は噴流したポリオレフィン粒子が飛散するのを防止する役割を果たしている。これによって、フリーボードゾーンを短縮することができ、高い容積効率が達成される。
【0048】
そらせ板20は、上端20aが閉じられると共に下方に向かうほど外径が大きくなる円錐形状をなし、下端20bは、円筒12の内壁からは離間されている。これにより、吹き上げられた粒子は、そらせ板20の内面に衝突し、噴流層の環状構造へと取り込まれる。一方、ガスは下端20bと円筒12の内壁との間を通って上方に流通することとなる。
【0049】
筒状バッフル30は、下方に向かうほど内径が小さくなるようにされたテーパー円筒であり、上端30aが円筒12の内壁に接している。これにより、ガスは、下端30bの円形状のガス導入用開口から上方に流通し、上端30aと円筒12との間からは流通しないようにされている。なお、下端30bに形成されたガス導入用開口には、オレフィン重合反応装置10Aの起動時や一時停止時などに反応領域25内のポリオレフィン粒子がガス導入用開口から下方に流出しないように逆止弁(図示せず)を配設してもよい。
【0050】
図1に示すように、円筒12内に設けられた上方4つの筒状バッフル30には、これを貫通するようにダウンカマー管35aが設けられ、最下段の筒状バッフル30にはダウンカマー管35bが設けられている。ダウンカマー管35aは、上方の反応領域25から下方の反応領域25へとポリオレフィン粒子を降下させる。ダウンカマー管35bは、最下段の反応領域からポリオレフィン粒子を抜き出して円筒12外へと排出するためのものである。このダウンカマー管35bには2つのバルブV71,V72が直列に配設されており、これらのバルブを逐次開閉することにより、ポリオレフィン粒子を次工程に排出することができる。
【0051】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、筒状バッフル30は以下の条件を満足することが好ましい。すなわち、筒状バッフル30は、筒状バッフル30の下端30bのガス導入用開口の開口径DOの円筒12の内径DRに対する比率(DO/DR)が0.35以下であることが好ましい。また、図2における筒状バッフル30の傾斜角α30すなわち、筒状バッフル30の内面の水平面とのなす角は、円筒12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましく、傾斜角α30は、安息角以上であって、ポリオレフィン粒子が重力により全量自然に排出され得る角度以上とすることがより好ましい。これにより、ポリオレフィン粒子のスムーズな下方への移動が達成される。
【0052】
なお、筒状バッフル30の代わりにガス導入用開口が形成された平板を採用した場合でも噴流層を形成することはできるが、この平板上における円筒12の内面近傍には粒子が流動化しない領域が生じる。そうすると、この領域では除熱不良により粒子同士が溶融塊化するおそれがある。従って、かかる事態を避けるためにも、筒状バッフル30の傾斜角α30は、上記の通り、所定の角度以上であることが好ましい。
【0053】
図2におけるそらせ板20の傾斜角α20すなわち、そらせ板20の外面の水平面とのなす角も円筒12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましい。これにより、そらせ板20にポリオレフィン粒子が付着することを十分に防止できる。
【0054】
ポリオレフィン粒子の安息角は、例えば、35〜50°程度であり、傾斜角α30及α20は、55°以上とすることが好ましい。
【0055】
なお、そらせ板20及び筒状バッフル30は、それぞれ、図示しないサポートにより、円筒12に固定されており、このサポートによるガス流れやポリオレフィン流れへの影響はほとんどない。円筒12、そらせ板20及び筒状バッフル30の材質としては、例えば、カーボンスチール、SUS304及びSUS316Lなどを用いることができる。なお、SUSは、JIS(日本工業規格)で規定されるステンレス規格である。腐食成分(例えば、塩素などのハロゲン成分)を多く含む触媒を使用する場合にあっては、SUS316Lを用いることが好ましい。
【0056】
図1に示すように、円筒12の下部には、ガス供給ノズル38が設けられており、ラインL30を介して、オレフィンモノマーが円筒12の下部に供給される。一方、円筒12の上部には、ガス排出ノズル61が設けられている。円筒12内を上昇したガスは、ラインL40を介して外部に排出され、必要に応じて設置されるサイクロン62によりガス同伴粒子が排出される。ガスは、熱交換器63、コンプレッサ64、熱交換器65及び気液分離器66における処理を経た後、ラインL35を介してラインL30内に導入されてリサイクルされる。なお、円筒12の装置下部には、ガス供給ノズル38以外に運転終了時にポリオレフィン粒子を排出できる排出ノズル(図示せず)を設けてもよい。また、運転終了時のオレフィン重合反応装置10A内の粉体残存量を軽減することを目的に、円筒12の下部のガス流れを阻害しない位置に、逆円錐形状の内装物(図示せず)を設置してもよい。
【0057】
また、円筒12には、気液分離器66で分離された液体オレフィンを円筒12の外から所定の反応領域25内に供給する液体供給ノズル50が設けられている。より具体的には、図1に示すように、液体供給ノズル50は上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設され、噴流に向けて液体オレフィンが噴射されるようになっている。この液体供給ノズル50には、液化されたオレフィンモノマーを必要に応じて供給するポンプ52及びラインL20が接続されている。また、図1においては、液体供給ノズル50は筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設されているが、当該液体供給ノズル50の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、そらせ板20の下端近傍に配設してもよい。なお、液体供給ノズル50は、噴流が形成される噴流部のような、高ガス流速となる領域に設置されることが好ましい。
【0058】
更に、円筒12における筒状バッフル30の外面に面する部分には、ガス排出ノズル60が複数設けられている。より具体的には、図1に示すように、ガス排出ノズル60は上から2段目の筒状バッフル30の外面に面する部分に設けられている。このガス排出ノズル60は、ラインL41を介してラインL40に接続されている。ガス排出ノズル60から排出されるガス量は、液体供給ノズル50から供給されて気化したガス量とほぼ同じとなるようにそれぞれバルブ等により制御される。したがって、液体供給ノズル50から液化されたオレフィンモノマーが円筒12内に供給された場合でも、円筒12内のガス空筒速度は上下でほぼ一定に維持される。
【0059】
また、円筒12における最上段の筒状バッフル30よりも高い位置には、ラインL5が接続され、オレフィン重合触媒固体粒子を含有するポリオレフィン粒子が最上段の反応領域25に供給される。
【0060】
このようにして本実施形態では、オレフィン事前重合反応装置5、及び、オレフィン重合反応装置10Aにより2段の重合工程が実現されている。このようにオレフィン事前重合反応装置5によりポリオレフィン粒子を重合して成長させて、好ましくは粒径500μm以上、より好ましくは700μm以上、特に好ましくは粒径850μm以上の比較的大きなポリオレフィン粒子とすることにより、より安定な噴流層が形成できる。しかし、オレフィン事前重合反応装置5を有さない1段の重合工程とすることも可能である。この場合には、オレフィン重合用触媒又は予備重合触媒が直接オレフィン重合反応装置10Aに供給され、オレフィンの重合がなされることとなる。また、オレフィン事前重合反応装置5やオレフィン重合反応装置10Aのような追加のオレフィン重合反応装置を、オレフィン重合反応装置10Aの後段に更に、1又は複数設け、3段以上の重合工程を実現してもよい。
【0061】
(オレフィン、ポリオレフィン、触媒等)
続いて、このようなシステムにおける、オレフィン、ポリオレフィン、触媒等について詳しく説明する。
【0062】
本発明のオレフィン重合反応装置、ポリオレフィン製造方法、ポリオレフィン製造システムでは、オレフィンを重合(単独重合、共重合)して、ポリオレフィンすなわちオレフィン重合体(オレフィン単独重合体、オレフィン共重合体)の製造を行う。本発明で用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどがあげられる。
【0063】
これらオレフィンは1種以上用いられ、また、用いるオレフィンを各重合工程において変更してもよく、多段重合法でおこなわれる場合は、用いるオレフィンを各段において互いに異ならせてもよい。オレフィンを2種以上用いる場合のオレフィンの組み合わせとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテンなどがあげられる。また、オレフィンに加え、ジエンなどの他の共重合体成分を併用してもよい。
【0064】
本発明では、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン重合体(単独重合体、共重合体)を好適に製造できる。特に、重合体成分を構成する単量体単位の含有割合が異なる多段重合によって得られるオレフィン系重合体の製造に好適であり、例えば、オレフィン事前重合反応装置5、及び、オレフィン重合反応装置10Aにて1種のオレフィンの供給によりホモ重合体粒子を、あるいは少量の別種のオレフィンとを共重合したランダム共重合体粒子を形成し、更に後段にオレフィン事前重合反応装置5やオレフィン重合反応装置10Aのような追加のオレフィン重合反応装置にてこれら重合体粒子に対して2種以上のオレフィンを供給して多段重合オレフィン系共重合体を生成することができる。こうすると、オレフィン重合反応装置10Aにおける滞留時間分布が狭いので、重合体粒子内の組成比率を一定にしやすく、成形時の不良低減に特に効果的である。
【0065】
該重合体としては、例えば、プロピレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン−プロピレン・エチレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン・エチレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン−プロピレン・エチレン・1−ブテン重合体などをあげることができる。なお、ここでは、「−」は重合体間の境界を、「・」は重合体内で二種以上のオレフィンが共重合していることを示す。これらの中でも、プロピレンに基づく単量体単位を有する重合体であり、ハイインパクトポリプロピレンと称す(日本国内では慣用的にポリプロピレンブロックコポリマーとも称す)、結晶性プロピレン系重合部と非晶性プロピレン系重合部とを有する多段重合プロピレン系共重合体の製造に好適である。多段重合プロピレン系共重合体は、結晶性のホモポリプロピレン部あるいは少量のプロピレン以外のオレフィンを共重合したランダム共重合体部と、非晶性のエチレンとプロピレン、任意成分としてエチレン、プロピレン以外のオレフィンを共重合したゴム部とを、それぞれの重合体の存在下で、任意の順番で連続して多段に重合して得られるものであり、135℃の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン中で測定される極限粘度が、好ましくは0.1〜100dl/gの範囲内であるものである。この多段重合プロピレン系共重合体は、耐熱性、剛性及び耐衝撃性に優れるため、バンパーやドアトリムなどの自動車部品、レトルト食品包装容器などの各種包装容器などに用いることができる。
【0066】
また、本発明のオレフィン重合反応装置及び製造方法では、オレフィン重合体の分子量分布を広げるために、各重合工程で製造されるオレフィン重合体成分の分子量を異なるものとしてもよい。本発明は、広分子量分布のオレフィン重合体の製造にも好適であり、例えば、最も分子量が高い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の上記測定で得られる極限粘度が、好ましくは0.5〜100dl/g、より好ましくは1〜50dl/gの範囲内であり、特に好ましくは2〜20dl/gであり、該極限粘度は、最も分子量が低い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の極限粘度の5倍以上であり、最も分子量が高い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の量が、オレフィン重合体中に0.1〜80重量%含有するオレフィン重合体を好適に製造できる。
【0067】
本発明に用いるオレフィン重合用触媒としては、オレフィン重合に用いられる公知の付加重合用触媒を使用することができる。具体例としては、チタンとマグネシウムとハロゲン及び電子供与体を含有する固体触媒成分(以下、触媒成分(A)と称する。)と有機アルミニウム化合物成分と電子供与体成分とを接触してなるチーグラー系固体触媒、メタロセン化合物と助触媒成分とを粒子状担体に担持してなるメタロセン系固体触媒などをあげることができる。また、これらの触媒を組み合わせて用いることもできる。
【0068】
チーグラー系固体触媒の調製に用いられる触媒成分(A)としては、一般にチタン・マグネシウム複合型触媒と呼ばれているものを使用することができ、下記のようなチタン化合物、マグネシウム化合物、及び、電子供与体を接触させることにより得ることができる。
【0069】
触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物としては、例えば、一般式Ti(OR1)aX4−a(R1は炭素数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0≦a≦4の数を表す。)で表されるチタン化合物があげられる。具体的には、四塩化チタン等のテトラハロゲン化チタン化合物;エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド等のトリハロゲン化アルコキシチタン化合物;ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン化合物;トリエトキシチタンクロライド、トリブトキシチタンクロライド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン化合物;テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン化合物をあげることができる。これらチタン化合物は、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を持ち、還元能を有するマグネシウム化合物、あるいは、還元能を有さないマグネシウム化合物等があげられる。還元能を有するマグネシウム化合物の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム化合物;ブチルマグネシウムクロライド等のアルキルマグネシウムハライド化合物;ブチルエトキシマグネシム等のアルキルアルコキシマグネシウム化合物;ブチルマグネシウムハイドライド等のアルキルマグネシウムハイドライド等があげられる。これらの還元能を有するマグネシウム化合物は、有機アルミニウム化合物との錯化合物の形態で用いてもよい。
【0071】
一方、還元能を有さないマグネシウム化合物の具体例としては、マグネシウムジクロライド等のジハロゲン化マグネシウム化合物;メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライド等のアルコキシマグネシウムハライド化合物;ジエトキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム化合物;ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩等があげられる。これらの還元能を有さないマグネシウム化合物は、予め又は触媒成分(A)の調製時に、還元能を有するマグネシウム化合物から公知の方法で合成したものであってもよい。
【0072】
触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体;有機酸ハライド類をあげることができる。これらの電子供与体のうち、好ましくは、無機酸のエステル類、有機酸のエステル類及びエーテル類が用いられる。
【0073】
無機酸のエステル類としては好ましくは、一般式R2nSi(OR3)4−n(R2は炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を表し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、nは0≦n<4の数を表す。)で表されるケイ素化合物があげられる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ブチルエチルジエトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等があげられる。
【0074】
有機酸のエステル類として好ましくは、モノ及び多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルがあげられる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル等があげられる。好ましくはメタクリル酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステル、マレイン酸エステル及びフタル酸エステルであり、更に好ましくはフタル酸ジエステルである。
【0075】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル等のジアルキルエーテルがあげられる。好ましくはジブチルエーテルと、ジイソアミルエーテルである。
【0076】
有機酸ハライド類としては、モノ及び多価のカルボン酸ハライド等があげられ、例えば、脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライド等があげられる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等をあげることができる。好ましくは塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドであり、更に好ましくはフタル酸クロライドである。
【0077】
触媒成分(A)の調製方法としては、例えば、下記の方法があげられる。
(1)液状のマグネシウム化合物、あるいはマグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯化合物を析出化剤と反応させたのち、チタン化合物、あるいはチタン化合物及び電子供与体で処理する方法。
(2)固体のマグネシウム化合物、あるいは固体のマグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯化合物をチタン化合物、あるいはチタン化合物及び電子供与体で処理する方法。
(3)液状のマグネシウム化合物と、液状チタン化合物とを、電子供与体の存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法。
(4)(1)、(2)あるいは(3)で得られた反応生成物をチタン化合物、あるいは電子供与体及びチタン化合物で更に処理する方法。
(5)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の共存下アルコキシチタン化合物をグリニャール試薬等の有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物、エーテル化合物及び四塩化チタンで処理する方法。
(6)有機ケイ素化合物又は有機ケイ素化合物及びエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物、次いで有機酸ハライド化合物の順で加えて処理したのち、該処理固体をエーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理する方法。
(7)金属酸化物、ジヒドロカルビルマグネシウム及びハロゲン含有アルコ−ルとの接触反応物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体及びチタン化合物と接触する方法。
(8)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体及びチタン化合物と接触する方法。
(9)(1)〜(8)で得られる化合物を、ハロゲン、ハロゲン化合物又は芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。
【0078】
これらの触媒成分(A)の調製方法のうち、好ましくは、(1)〜(6)の方法である。これらの調製は通常、全て窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行われる。
【0079】
触媒成分(A)の調製において、チタン化合物、有機ケイ素化合物及びエステル化合物は、適当な溶媒に溶解もしくは希釈して使用するのが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物等があげられる。
【0080】
触媒成分(A)の調製において、有機マグネシウム化合物を用いる還元反応の温度は、通常、−50〜70℃であり、触媒活性及びコストを高める観点から、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃である。有機マグネシウム化合物の滴下時間は、特に制限はないが、通常30分〜12時間程度である。また、還元反応終了後、更に20〜120℃の温度で後反応を行ってもよい。
【0081】
触媒成分(A)の調製において、還元反応の際に、無機酸化物、有機ポリマー等の多孔質物質を共存させ、固体生成物を多孔質物質に含浸させてもよい。かかる多孔質物質としては、細孔半径20〜200nmにおける細孔容積が0.3ml/g以上であり、平均粒径が5〜300μmであるものが好ましい。該多孔質無機酸化物としては、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、ZrO2又はこれらの複合酸化物等があげられる。また、多孔質ポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のポリスチレン系多孔質ポリマー;ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体等のポリアクリル酸エステル系多孔質ポリマー;ポリエチレン、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系多孔質ポリマーがあげられる。これらの多孔質物質のうち、好ましくはSiO2、Al2O3、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0082】
チーグラー系固体触媒の触媒の調製に用いられる有機アルミニウム化合物成分は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものであり、代表的なものを一般式で下記に示す。
R4mAlY3−m
R5R6Al−O−AlR7R8
(R4〜R8は炭素数が1〜8個の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素又はアルコキシ基を表す。R4〜R8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、mは2≦m≦3で表される数である。)
【0083】
有機アルミニウム化合物成分の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド;トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物;テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサン等があげられる。これらの有機アルミニウム化合物のうち、好ましくはトリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物、アルキルアルモキサンであり、更に好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、又はテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
【0084】
チーグラー系固体触媒の調製に用いられる電子供与体成分としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体等の一般的に使用されるものをあげることができる。これらの電子供与体成分のうち好ましくは無機酸のエステル類及びエ−テル類である。
【0085】
該無機酸のエステル類として好ましくは、一般式R9nSi(OR10)4−n(式中、R9は炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子、R10は炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは0≦n<4である)で表されるケイ素化合物である。具体例としては、テトラブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
【0086】
該エ−テル類として好ましくは、ジアルキルエーテル、一般式
【化1】
(式中、R11〜R14は炭素数1〜20の線状又は分岐状のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基であり、R11又はR12は水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物があげられる。具体例としては、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等をあげることができる。
【0087】
これらの電子供与体成分のうち一般式R15R16Si(OR17)2で表される有機ケイ素化合物が特に好ましく用いられる。ここで式中、R15はSiに隣接する炭素原子が2級もしくは3級である炭素数3〜20の炭化水素基であり、具体的には、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等があげられる。また式中、R16は炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等があげられる。更に式中、R17は炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基である。このような電子供与体成分として用いられる有機ケイ素化合物の具体例としては、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
【0088】
チーグラー系固体触媒の調製において、有機アルミニウム化合物成分の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、通常、1〜1000モルであり、好ましくは5〜800モルである。また、電子供与体成分の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、通常、0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、更に好ましくは0.5〜800モルである。
【0089】
触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物成分及び電子供与体成分は、多段重合反応装置に供給する前に予め接触させてもよく、多段重合反応装置に別々に供給して、多段重合反応装置内で接触させてもよい。また、これら成分の内の任意の2つの成分を接触させて、その後にもう1つの成分を接触させてもよく、各成分は、複数回に別けて接触させてもよい。
【0090】
メタロセン系固体触媒の調製に用いられるメタロセン化合物としては、下記一般式で表される遷移金属化合物があげられる。
LxM
(式中、Mは遷移金属を表す。xは遷移金属Mの原子価を満足する数を表す。Lは遷移金属に配位する配位子であり、Lのうち少なくとも一つはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。)
【0091】
上記Mとしては、元素の周期律表(IUPAC1989年)第3〜6族の原子が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウムがより好ましい。
【0092】
Lのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、(置換)シクロペンタジエニル基、(置換)インデニル基、(置換)フルオレニル基などであり、具体的には、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチル−メチルシクロペンタジエニル基、メチル−イソプロピルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、2−メチルインデニル基、3−メチルインデニル基、4−メチルインデニル基、5−メチルインデニル基、6−メチルインデニル基、7−メチルインデニル基、2−tert−ブチルインデニル基、3−tert−ブチルインデニル基、4−tert−ブチルインデニル基、5−tert−ブチルインデニル基、6−tert−ブチルインデニル基、7−tert−ブチルインデニル基、2,3−ジメチルインデニル基、4,7−ジメチルインデニル基、2,4,7−トリメチルインデニル基、2−メチル−4−イソプロピルインデニル基、4,5−ベンズインデニル基、2−メチル−4,5−ベンズインデニル基、4−フェニルインデニル基、2−メチル−5−フェニルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、2−メチル−4−ナフチルインデニル基、フルオレニル基、2,7−ジメチルフルオレニル基、2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル基、及びこれらの置換体等があげられる。また、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子が複数ある場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0093】
Lのうち、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン原子、炭化水素基(但し、ここではシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を含まない。)があげられる。
【0094】
ヘテロ原子を含有する基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等があげられ、かかる基の例としてはアルコキシ基;アリールオキシ基;チオアルコキシ基;チオアリールオキシ基;アルキルアミノ基;アリールアミノ基;アルキルホスフィノ基;アリールホスフィノ基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子から選ばれる少なくとも一つの原子を環内に有する芳香族もしくは脂肪族複素環基などがあげられる。ハロゲン原子の具体例としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。また、炭化水素基としてはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等があげられる。
【0095】
二つ以上のLは、直接連結されていてもよく、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。かかる残基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基などの置換アルキレン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基、ジメトキシシリレン基などの置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子などがあげられ、特に好ましくはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基又はジメトキシシリレン基などがあげられる。
【0096】
メタロセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド等があげられる。また、ジクロライドをジメトキシドやジフェノキシドといった基に置き換えた化合物も例示することができる。
【0097】
メタロセン系固体触媒の調製に用いられる助触媒成分としては、有機アルミニウムオキシ化合物、有機アルミニウム化合物、ホウ素化合物などをあげることができる。
【0098】
該有機アルミニウムオキシ化合物としては、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアルミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサンなどがあげられる。
【0099】
該有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウムなどをあげることができる。
【0100】
該ホウ素化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができる。
【0101】
メタロセン系固体触媒の調製に用いられる粒子状担体としては、多孔性の物質が好ましく、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土や粘土鉱物;ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機ポリマーなどが使用される。
【0102】
メタロセン系固体触媒としては、例えば、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−108610号公報、特開昭61−276805号公報、特開昭61−296008号公報、特開昭63−89505号公報、特開平3−234709号公報、特表平5−502906号公報や特開平6−336502号公報、特開平7−224106号公報等に記載されているものを用いることができる。
【0103】
また、メタロセン系固体触媒は、オレフィンの重合において、必要に応じて、有機アルミニウム化合物、ホウ素化合物などの助触媒成分を併用してもよく、併用する場合、メタロセン系固体触媒及び助触媒成分は、重合反応装置に供給する前に予め接触させてもよく、重合反応装置に別々に供給して、重合反応装置内で接触させてもよい。また、各成分は、複数回に別けて接触させてもよい。
【0104】
以上のオレフィン重合用触媒の質量平均粒径は、通常、5〜150μmである。特に気相重合反応装置では、装置外への粒子飛散を抑制する観点から、10μm以上であるものが好ましく用いられ、15μm以上であるものがより好ましく用いられる。なお、本実施形態の重合触媒は、流動化助剤、静電気除去添加剤のような添加剤を含んでいてもよい。また、本実施形態の重合触媒は、重合体の分子量を調整するために水素などの連鎖移動剤を併用することも可能である。
【0105】
以上のオレフィン重合用触媒は、予め少量のオレフィン類で重合させたいわゆる予備重合触媒であってもよい。予備重合において用いられるオレフィン類としては、上述した重合で用いられるオレフィンがあげられる。この場合1種類のオレフィンを単独で用いてもよく、2種類以上のオレフィンを併用してもよい。
【0106】
予備重合触媒の製造方法としては、特に制限されないが、スラリー重合、気相重合等があげられる。この中でも好ましくはスラリー重合である。この場合、製造において経済的に有利となることがある。また、回分式、半回分式、連続式のいずれを用いて製造してもよい。
【0107】
予備重合触媒の質量平均粒径は、通常、5〜1000μmである。特に気相重合反応装置では、装置外への飛散を抑制する観点から、10μm以上であるものが好ましく用いられ、15μm以上であるものがより好ましく用いられる。また、粒径が20μm以下、特に10μm以下の予備重合触媒は少ない方が好ましい。
【0108】
なお、重合触媒の反応装置への導入は炭化水素溶媒等に懸濁させて導入してもよく、更にいはモノマーガス、窒素等の不活性ガスに同伴させて導入してもよい。
【0109】
(ポリオレフィンの製造方法)
続いて、このようなシステムを用いてポリオレフィンを製造する方法について説明する。まず、オレフィン事前重合反応装置5において、公知の方法によりオレフィン重合用触媒を用いて、重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子を生成する。
【0110】
一方、オレフィン重合反応装置10AにおいてラインL30を介してノズル38からオレフィンモノマーガスを供給し、重合圧力にまで昇圧すると共に、円筒12内を加温する。重合圧力は、反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、より好ましくは0.2〜8MPaG、更に好ましくは0.5〜5MPaGである。重合圧力が常圧未満であると、生産性が低下することがあり、反応圧力が10MPaGを超えると、反応装置の設備コストが高くなることがあるためである。重合温度は、モノマーの種類、製品の分子量等によっても異なるが、オレフィン重合体の融点以下、好ましくは融点よりも10℃以上低い温度である。具体的には、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましく、40〜100℃が更に好ましい。また、実質的に水分が存在しない環境下で重合を行うことが好ましい。水分が存在すると、重合触媒の重合活性が低下することがある。また、重合反応系内に酸素、一酸化酸素、二酸化炭素が過剰に存在すると重合活性が低下することがある。
【0111】
その後、公知の方法により別途得られた粒径0.5〜5.0mm程度のポリオレフィン粒子を、ラインL5に接続された供給ライン(図示せず)を介して円筒12内へと供給する。通常、円筒12内へと供給されるポリオレフィン粒子は重合活性のある触媒成分を含んでいないものを用いる場合が多いが、重合活性のある触媒成分を含んでいても差支えない。
【0112】
ノズル38からオレフィンモノマーガスを供給しながら、円筒12内にポリオレフィン粒子を供給すると、図2に示すように、反応領域25内にはポリオレフィン粒子の噴流層が形成される。すなわち、ガス導入用開口からのガスの作用によって、反応領域25における円筒12の中心軸付近に粒子濃度が希薄であり且つこのガスと共に上向きに粒子が流れる噴流が形成される一方、その周囲を粒子が重力の影響で移動層状に下降する環状構造が形成され、反応領域25内で粒子の循環運動が生じる。
【0113】
各反応領域25内に噴流層が形成された段階で、事前重合反応装置5において生成された重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子を、単位時間あたり一定量でラインL5から円筒12内に供給し、オレフィン重合反応装置10Aの定常運転を開始する。重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子は、各反応領域25内で成長しながら、ダウンカマー管35aを通じて下方の反応領域25内へと順次降下し、最終的にダウンカマー管35bから排出される。
【0114】
他方、オレフィンモノマーを含むガスは、その一部が噴流を形成して粒子層を吹き抜け、残りは環状構造の粒子層の部分に拡散する。このようにオレフィン含有ガスとポリオレフィン粒子とが固気接触することとなり、ポリオレフィン粒子内の触媒の作用によりオレフィン重合反応が進行し、ポリオレフィン粒子が成長することとなる。
【0115】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、以下の運転条件を満足することが好ましい。すなわち、ガス空塔速度U0が噴流層を形成し得る最小ガス空塔流速Ums以上であることである。最小ガス空塔速度Umsは取扱い粉体やガスの物性に加え、重合反応装置の形状に影響される。最小ガス空塔速度Umsの推算式は各種提案されているが、一例として下記式(1)をあげることができる。
【数1】
式中、dPは粒径を、ρSは粒子の密度を、ρGは反応領域の圧力・温度条件下におけるガスの密度を、ρAIRは室温条件下における空気の密度を、LSは噴流層高さを、それぞれ示す。
【0116】
また、反応領域25内における噴流層高さLSは、噴流層を形成し得る最大噴流層高さLsMAXm以下であり、最大噴流層高さLsMAX以下であれば特に制限はない。最大噴流層高さLsMAXの推算式は各種提案されているが、一例として下記式(2)をあげることができる。
【数2】
式中、utは粒子の終末速度を、umfは最小流動化速度を、それぞれ示す。
【0117】
なお、噴流層高さLSは、容積効率やより安定な噴流層を形成させる観点から、筒状バッフル30よりも高い方が好ましい。
【0118】
また、図1に示すように、オレフィン重合反応装置より抜き出したオレフィンを含むガスの全部又は一部を凝縮させて凝縮液を得た後、その凝縮液を円筒12の中段のノズル50から円筒12に供給してもよい。この場合、重合反応により消費されるオレフィンモノマーの補給ができる。これに加え、円筒12内で液状のオレフィンモノマーが蒸発する際に、蒸発潜熱によりポリオレフィン粒子の除熱も可能である。円筒12内の複数の反応領域25にあっては、上方の反応領域25ほど反応熱によって高温となりやすく、下方の反応領域25と温度差が生じる。そこで、円筒12の中段に設けられたノズル50から液状のオレフィンモノマーを供給することによってその温度差を最小限に抑制でき、温度の均一化が図られる。
【0119】
本実施形態に係るオレフィン重合反応装置10Aによれば、反応領域25内にドラフトチューブT1を配置したことで、噴流層の高い安定性及び圧力損失の低減化の両方を達成できる。更に、ドラフトチューブT1の径、長さ及びクリアランスなどを適宜設定することで、環状粒子層への高いガス拡散性も達成できる。
【0120】
オレフィン重合反応装置10Aによれば、円筒12内に多段の噴流層が形成され、粒子の滞留時間分布を狭化させることができる。従って、連続的にオレフィン重合体を製造する際に、重合体構造上の均一性に優れたものを製造できる。また、製造条件を変更するに際し、条件変更前に重合されたポリオレフィン粒子を容器内から容易に排出できるため、規格外品の発生量を十分に削減できる。また、噴流した粒子の飛散を抑制するそらせ板20を具備するため、フリーボードゾーンを短縮することができ、高い容積効率を達成できる。
【0121】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、上流側の反応領域から下流側の反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段として、ダウンカマー管35aを採用する場合を例示したが、これの代わりに、エジェクタ方式でポリオレフィン粒子を移送してもよい。図3に示すポリオレフィン製造システム100Bのオレフィン重合反応装置10Bは、エジェクタ方式の移送手段を備える。また、図示しないが、開閉弁を流通路に離間して2つ設けて粉体の移送を行う、ダブルダンパー又はダブルバブルシステムと呼ばれる移送手段を用いてもよい。
【0122】
オレフィン重合反応装置10Bの移送手段は、上流側の反応領域25からポリオレフィン粒子を抜き出す粒子抜出管L31と、この粒子抜出管L31の先端に設けられたエジェクタ32と、エジェクタ32からのポリオレフィン粒子を下流側の反応領域25に供給する粒子供給管L33とを備える。なお、粒子抜出管L31の途中には、開閉弁が配設されている。また、エジェクタ32と気液分離器66とは、途中にコンプレッサ(図示せず)が配設されたラインL36によって連結されており、気液分離器66で分離されたリサイクルガスの一部がエジェクタ作動用のガスとして供給される。なお、図3ではポリオレフィン粒子を上段から下段へと移送することを例示したが、エジェクタで生じる差圧を調整することにより、例示とは鉛直方向逆向きの下段から上段へ移送することも可能である。すなわち、この場合には、上流側の反応領域が下段に、下流側の反応領域が上段にそれぞれ配されることになる。
【0123】
なお、上記実施形態においては、5段の噴流層が鉛直方向に形成されるオレフィン重合反応装置を例示したが、噴流層の段数はこれに限定されず、単段であってもよい。但し、十分なプラグフロー化を実現する観点から、噴流層の段数は、3段以上であることが好ましく、6段以上であることがより好ましい。更に、多段の噴流層は、必ずしも鉛直方向に形成されていなくてもよく、例えば、単段の噴流層が内部に形成される反応装置を水平方向に複数設置し、これらの反応装置を直列に連結してもよい。なお、装置設計や運転制御法については、ポリオレフィン粒子の滞留時間分布が狭くなるように、各段(オレフィン事前重合反応装置5を含む)でのポリオレフィン生成量がより均一となるように、装置各段の容量を設計し、ポリオレフィン粒子のホールドアップや滞留時間を制御することが好ましい。
【0124】
また、上記実施形態においては、液体供給ノズル50を上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設する場合を例示したが、液体供給ノズル50の配設箇所及び個数は、製造するポリオレフィン粒子の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、他の手段によって各反応領域25の温度の均一化が図れれば、必ずしも液体供給ノズル50を配設しなくてもよく、あるいは、全ての筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に液体供給ノズル50をそれぞれ配設してもよい。
【0125】
更に、上記実施形態で例示したダウンカマー管35a,35bは、上端部が筒状バッフル30の上方にまで突出したものであるが、これらのダウンカマー管35a,35bの外面と円筒12の内面又は筒状バッフル30の内面との間のポリオレフィン粒子の流動が阻害されるような場合は、ダウンカマー管35a,35bが各筒状バッフル30の内面よりも上方に突出しないように構成してもよい。この場合、上段の反応領域25から下段の反応領域25に降下させる粒子の量を調整するための機構(例えば、開閉弁)をダウンカマー管に適宜設ければよい。
【0126】
図4を参照しながら、オレフィン事前重合反応装置として塊状重合反応装置を採用すると共に、移送手段としてエジェクタ方式を採用したポリオレフィン製造システムの好適な構成を詳細に説明する。図4に示すポリオレフィン製造システム100Cは、塊状重合反応装置5と、上段及び下段の反応領域25を内部に有するオレフィン重合反応装置10Cとを備える。
【0127】
塊状重合反応装置5は、オレフィン重合用触媒を含有する液相においてオレフィンを重合させ、ポリオレフィン粒子を形成する。塊状重合反応装置5で生じたポリオレフィン粒子は液状オレフィンと共にラインL5を通じてオレフィン重合反応装置10Cへと供給される。ノズル68は上段の反応領域25にスラリーを供給するためのものであり、図4に示すように、噴流層の粉面85よりも低い位置に設けられている。粉面85よりも低い位置からスラリーを反応領域25内に供給する場合、スラリーに含まれる液状オレフィンのガス化後の空塔速度が反応領域25内に収容されたポリオレフィン粒子の最小流動化速度(Umf)を超えないように、スラリーの供給量を調節することが好ましい。このようにスラリーの供給量を調節することにより、反応領域25内における液状オレフィンのガス化に伴って噴流層の流動状態が不安定になるのを十分に防止できる。なお、「液状オレフィンのガス化後の空塔速度」とは、オレフィン重合反応装置に供給される液状オレフィンの体積流量をガス化後の体積流量に換算し、これをオレフィン重合反応装置の円筒部の断面積A(A=πDR2/4、DRは円筒部の内径)で除して算出される値を意味する。
【0128】
なお、ここでは、粉面85よりも低い位置からスラリーを供給する構成を例示したが、スラリーを供給する位置はこれに限定されるものではない。例えば、ノズル68を粉面85よりも高い位置に設けてもよい。この場合、単位時間当たりに供給するスラリー量を比較的多くしても液状オレフィンのガス化に伴って噴流層の流動状態が不安定になるのを抑制できるという利点がある。
【0129】
図4に示すように、円筒12の下部には、ガス供給ノズル38が設けられており、ラインL30を介して、オレフィンモノマーが円筒12の下部に供給される。一方、円筒12の上部には、ガス排出ノズル61が設けられている。円筒12内を上昇したガスは、ラインL40を介して外部に排出され、必要に応じて設置されるサイクロン62によりガス同伴粒子が排出される。ガスは、コンプレッサ64、熱交換器65を経た後、ラインL35を介してラインL30内に導入されてリサイクルされる。
【0130】
オレフィン重合反応装置10Cは、上述の通り、エジェクタ方式の移送手段を備える。この移送手段は、上段の反応領域25からポリオレフィン粒子を抜き出す粒子抜出管L31と、この粒子抜出管L31の先端に設けられたエジェクタ32と、エジェクタ32からのポリオレフィン粒子を下段の反応領域25に供給する粒子供給管L33とを有する。粒子抜出管L31の途中には開閉弁80が設けられている。この開閉弁80の上流側及び下流側において粒子抜出管L31にラインL38がそれぞれ接続されており、ガス供給管L38を通じて粒子抜出管L31内に目詰まり防止用のガスを供給できるようになっている。
【0131】
エジェクタ32にはラインL37を通じてコンプレッサ64で昇圧されたガスの一部が供給されるようになっている。このガスがエジェクタ作動用のガスとして使用される。また、開閉弁80の上流側及び下流側の粒子抜出管L31には、コンプレッサ64で昇圧されたガスの一部がラインL38を通じて供給されるようになっている。このガスが開閉弁80及びエジェクタ32の目詰まり防止用のガスとして使用される。
【0132】
なお、図4ではポリオレフィン粒子を上段から下段へと移送することを例示したが、エジェクタで生じる差圧を調整することにより、例示とは鉛直方向逆向きの下段から上段へ移送することも可能である。すなわち、この場合には、上流側の反応領域が下段に、下流側の反応領域が上段にそれぞれ配されることになる。
【0133】
エジェクタ作動用のガスの流量は、ポリオレフィン粒子を排出可能な量以上であれば特に制限はない。一方、目詰まり防止用のガスは、エジェクタ作動用のガス100体積部に対して10体積部程度であることが好ましい。なお、開閉弁80及びエジェクタ32の目詰まりを確実に防止する観点から、オレフィン重合反応装置10Cで運転している間、開閉弁80の開閉状態に関わらず、ラインL38を通じて開閉弁80の上流側及び下流側にガスを常時供給することが好ましい。
【0134】
オレフィン重合反応装置10Cは、噴流層の高さ(粉面85の位置)を測定するための静電容量式レベル計93及び差圧計90を備える。静電容量式レベル計93及び差圧計90を併用することにより、粉面85の変位をより正確に把握することができる。なお、差圧計90の接続ラインの閉塞防止のため、常時又は定期的にラインブローを行なうことが好ましい。
【0135】
図5に示すオレフィン重合反応装置10Dは、反応領域25内のドラフトチューブT1を利用し、ドラフトチューブT1内をドラフトチューブT1外のガス組成と異なるガス組成にできるようになっている。オレフィン重合反応装置10Dは、ドラフトチューブT1内と連通する配管L25を備え、これを通じてドラフトチューブT1内にガス又は液体が供給される。例えば、ドラフトチューブT1内側を外側と比較して水素量が少ないガス組成とすることによって、ドラフトチューブT1内において比較的分子量が大きいポリマーを製造することが可能となる。ガス組成が異なる領域を粒子が繰り返し通過し、粒子を徐々に成長させることによって、重合体の分子量分布を制御できるとともに、重合体構造上の均一性に優れた粒子を製造できる。
【0136】
オレフィン重合反応装置10Dは、単段の噴流層を形成できるように構成されたものであり、主として、鉛直方向に伸びる円筒12A、円筒12Aの上端を閉鎖する閉鎖板15、円筒12A内に配置されたそらせ板20、及び、円筒12Aの下端に設けられた筒状バッフル30を備えている。そらせ板20及び筒状バッフル30は、いずれも円筒12Aの軸と同軸に配置されることが好ましい。閉鎖板15の下面と、円筒12Aの内面と、筒状バッフル30の内面とによって反応領域25が形成されている。筒状バッフル30の下端のガス導入用開口から反応領域25内にガスを供給できるようになっている。なお、ラインL30の途中にはコンプレッサ54及び熱交換器65が配設されている。
【0137】
反応領域25の側壁面をなす円筒12Aには、ガス排出孔70が形成されており、反応領域25内のガスを排出できるようになっている。本実施形態に係るオレフィン重合反応装置10Dにあっては、円筒12Aの円周方向に沿って略等間隔となるように4つのガス排出孔70が形成されている。筒状バッフル30のガス導入用開口から上方に向けて流入したガスを、そのまま反応領域25の上方から排出するのではなく、4つのガス排出孔70から側方に排出することで、噴流層の環状粒子層に拡散するガス量を増大できる。その結果、噴流層の環状粒子層において、粒子とオレフィン含有ガスの固気接触効率が向上する。ガス排出孔70は、反応領域25内のそらせ板20の下端20bよりも上方であることが好ましく、そらせ板20の上端20aよりも上方であることがより好ましい。このような高さにガス排出孔70を設けることで、ガスと共にガス排出孔70から排出される粒子を十分に低減できる。なお、ここではガス排出孔70を4つ設置することを例示したが、ガス排出孔70の設置数はこれに限定されない。ガス排出孔70の設置数は、4を超えても4未満であってもよいが、より均一なガス排出を行うために、2以上であることが好ましい。また、オレフィン重合反応装置10Dは、単段の噴流層を形成するものであるが、多段の噴流層を形成する構成とすることもできる。この場合、少なくとも1つの反応領域内にドラフトチューブT1及びこれに連通する配管L25を設けてもよく、あるいは、各反応領域内にドラフトチューブT1及び配管L25をそれぞれ設けてもよい。
【0138】
上記実施形態においては、直管からなるドラフトチューブT1(図6(a)参照)を採用する場合を例示したが、以下のような構成のドラフトチューブを採用してもよい。例えば、図6(b)に示すドラフトチューブT2は、上端開口から下方に一定の径で伸びる直管部T2aと、この直管部T2aの縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部T2bとを有する。このような構成のドラフトチューブを使用することにより、噴流層の安定性及び環状部へのガス拡散性を向上させてもよい。なお、ガス拡散性をより一層向上させる観点から、ドラフトチューブT1の内側から外側にかけて貫通する貫通孔を複数設けてもよい。また、ドラフトチューブT2に複数の貫通孔を設ける場合、全体に設けてもよいが拡径部T2bのみに設けてもよい。
【0139】
また、上記実施形態においては、筒状バッフル30の下端にガス導入用開口が単に形成されている構成の装置を例示したが、噴流層の安定性をより一層向上させる観点から、ガス導入部を以下の構成としてもよい。例えば、筒状バッフル30のガス導入用開口の縁から下方に伸びる延長管(管状部)40を設けてもよい(図7参照)。更に、延長管40の内部に延長管40の長手方向に延在し且つ管路40aを水平方向に区画する隔壁等を設けてもよい。かかる延長管の具体的な態様を図8(a)−(c)に示す。図8(a)−(c)は、それぞれ延長管の長手方向に垂直な断面図を示しており、図8(a)に示す延長管41の隔壁40bは格子構造をなしている。図8(b)に示す延長管42の隔壁40cはハニカム構造をなしている。図8(c)に示す延長管43の隔壁40dは接円構造をなしている。この延長管43は、管路内に複数の円筒管が並行に配置された構造であり、他の構造と比較し、施工しやすいという利点がある。
【0140】
延長管の管路に設ける隔壁は、図8(a)−(c)に示した形態に限定されるものではなく、例えば、図9、10に示すような形態であってもよい。図9(a)及び(b)に示した隔壁40b,40cは、延長管の中心部に開口が形成されるように形成されている。図10(a)及び(b)に示した延長管44,45は、管路内に1つ又は2つの円筒部材が同軸に配置されたものであり、これらによって隔壁40e,40fが形成されている。
【0141】
延長管40の管路40aに隔壁を設ける代わりに、図11に示すように、管路40a内に上端が閉じられた円筒部材46を同軸に配置することによってガス導入部を形成してもよい。管路40a内に円筒部材46を配置することで、円筒部材46の外面と延長管40の内面とによってアニュラス部46aが形成される。かかる構成を採用することにより、管路40aの水平方向の断面をリング形状とすることができる。その結果、アニュラス部46aと断面積が同一であり且つ断面が円形の管路を採用した場合と比較し、ガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。アニュラス部46aの開口面積と同一の面積を有する円の直径をDOEとすると、直径DOEの円筒12の内径DRに対する比率(DOE/DR)は0.35以下であることが好ましい。ガス流の乱れを抑制する観点から、図11に示すように、円筒部材46の上側はテーパー状であることが好ましい。なお、円筒部材46は、少なくとも一端が閉じられたものであればよく、下端又は両端が閉じられたものを使用してもよい。
【0142】
また、ガス導入部の構成を図12に示すようなものにしてもよい。図12に示す延長管40は、その下端を閉じる閉鎖板47と、管路40aよりも細い管路48aを有し、閉鎖板47を貫通するように設けられたガス導入管48とを備える。更に、ガス導入管48の上端の直上には円錐バッフル(第2の円錐バッフル)23が配設されている。この円錐バッフル23は、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が延長管40の内面から離間されている。かかる構成を採用することにより、円錐バッフル23が粒子の落下防止板としての役割を果たすため、ガスの供給を停止した場合であってもガス導入用開口を通じて粒子が落下するのを十分に防止できる。また、噴流層の流動状態をより一層安定化させる観点から、図13に示すように、円錐バッフル23は、その下端の周縁部から下方に延在する筒状部23cを有することが好ましい。
【0143】
また、延長管40〜45の下端部をベルマウス形状としてもよい。図14にベルマウス形状を有する下端部40gを備えた延長管49を示す。上記のような隔壁、アニュラス部及び/又はベルマウス形状の下端部を有する延長管を採用することにより、筒状バッフル30のガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。
【0144】
本発明においては、ガスと接触させる粒子の特性(平均粒径、比重、形状等)や反応条件(温度、圧力、ガス供給量等)に応じて、適した形状のドラフトチューブ及びガス導入部の構成を適宜組み合わせて使用することができる。
【実施例】
【0145】
本発明に係るオレフィン重合反応装置の反応領域内に形成される噴流層の安定性、圧力損失及び環状粒子層における粒子とガスとの固気接触効率を評価するため、実施例及び比較例を行った。噴流層の安定性は、圧力変動の平均偏差から評価した。また、粒子とガスとの固気接触効率の評価は、環状粒子層内のガス流速(Ua)を粒子の最小流動化速度(Umf)で除して求めた値(Ua/Umf)を比較することによって行った。
【0146】
<実施例1a〜3a及び比較例1a>
(実施例1a)
単段の噴流層を形成できる透明塩化ビニル樹脂製の円筒コールドモデル装置を準備した。この装置は、ガス導入オリフィスを有する逆円錐形状の筒状バッフルと円錐形状のそらせ板(第1の円錐バッフル)とからなる組み合わせ1組が円筒内に配置されている。ガス導入部の構成は、図7に示すものを使用した。
【0147】
円筒コールドモデル装置の内径DRを500mmとし、筒状バッフル下端のガス導入オリフィスの開口径DOを75mmとした。従って、本実施例においては、ガス導入用オリフィスの開口径DOの円筒の内径DRに対する比率(DO/DR)は、0.15である。また、逆円錐形状の筒状バッフルの内面と水平面とがなす傾斜角、及び、そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角は、いずれも65°とした。また、円錐状のそらせ板は、下端の外径が300mmであり、その内部は空洞となっている。この円筒装置の中心軸に、ガス導入オリフィスの開口径DOと同一となる内径75mm、長さ550mmのドラフトチューブをガス導入オリフィス部から60mm上方の位置に設置した。
【0148】
この装置内に、平均粒径900μmのポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスからガスを供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、上記ポリプロピレン粒子の最小流動化速度(Umf)は0.20m/sであった。また、導入するガスは室温の空気であり、毎分5.4m3供給した。
【0149】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。この状態にて、筒状バッフルの上端(円筒と筒状バッフルとの接合部)から下方50mmの位置における円筒内ガス供給部の圧力(噴流層全体の圧力損失に相当)を測定した。圧力は、変動幅も含めて定量的に評価できるように、高性能な差圧変換器((株)共和電業製差圧変換器PD−200GA)を用い、大気圧との差圧から200Hzの頻度で測定した。圧力はその測定値を平均化したものを採用し、圧力変動幅を測定値の平均偏差で評価した。また、筒状バッフルの上端(円筒と筒状バッフルとの接合部)から上方50mmの位置における円筒内(内面近傍)の圧力も同様の方法で測定するとともに、この位置の上方に形成されている粒子層の高さを測定し、環状粒子層における単位高さ当たりの圧力損失を算出した。なお、環状粒子層における単位高さ当たりの圧力損失を算出するに際しては、形成される環状粒子層を粒子充填層と見なし、粒子充填層の圧力損失を推算できるErgunの式を用いた。測定された圧力損失に対応するガス空塔速度を算出し、このガス空塔速度を環状粒子層におけるガス流速(Ua)とした。
【0150】
その結果、本実施例においては、噴流層の圧力損失は1.3kPa、圧力変動の平均偏差は0.023kPaであり、形成された噴流層は圧力損失が少なく、圧力変動幅が狭い非常に安定なものであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.023m/sと算出され、最小流動化速度の0.12倍であった。
【0151】
(実施例2a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを460mmとし、ガス導入オリフィス部から150mm上方の位置に設置したことの他は、実施例1aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.9kPa、圧力変動の平均偏差は0.10kPaであり、実施例1aには劣るものの、形成された噴流層は圧力損失が少なく、圧力変動幅が狭い安定なものであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.046m/sと算出され、最小流動化速度の0.23倍と、この面では実施例1aを上回る性能であった。
【0152】
(実施例3a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを150mmとし、ガス導入オリフィス部から460mm上方の位置に設置したことの他は、実施例1aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は2.3kPa、圧力変動の平均偏差は0.31kPaであり、実施例1aには劣るものの、形成された噴流層は圧力損失が少なく、圧力変動幅が狭い安定なものであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.080m/sと算出され、最小流動化速度の0.40倍と、この面では実施例1aを上回る性能であった。
【0153】
(比較例1a)
反応領域内にドラフトチューブを設置しなかったことの他は、実施例1aと同様にして、評価を行った。その結果、環状部ガス速度は0.110m/sと高い値を示したが、形成された噴流層は圧力損失が大きく、圧力変動幅も広く比較的不安定なものであった。
【0154】
【表1】
【0155】
<実施例1b〜3b及び比較例1b>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.59m/sとしたことの他は、上記実施例1a〜3a及び比較例1aと同様の条件で実施例1b〜3b及び比較例1bをそれぞれ実施した。表2に結果を示す。
【0156】
【表2】
【0157】
<実施例1c〜3c及び比較例1c>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.34m/sとしたことの他は、上記実施例1a〜3a及び比較例1aと同様の条件で実施例1c〜3c及び比較例1cをそれぞれ実施した。表3に結果を示す。
【0158】
【表3】
【0159】
<実施例4a〜7a及び比較例2a>
(実施例4a)
ガス導入部を図11に示す構成としたことの他は、実施例1aで使用したものと同様の構成の円筒コールドモデル装置を準備した。すなわち、筒状バッフル下端のガス導入オリフィス(開口径DO:150mm)の縁から下方に伸びる延長管(長さ:100mm、内径:150mm)を設けた。更に、この延長管内に上端が閉じられた円筒部材(外径:110mm)を装着し、延長管の内面と筒状部材の外面とによって形成されるアニュラス部を通じて装置内に空気が供給されるようにした。
【0160】
円筒コールドモデル装置の内径DRを500mmとし、従って、本実施例においては、ガス導入用オリフィスの開口径DOの円筒の内径DRに対する比率(DO/DR)は、0.30である。なお、ガス導入用オリフィスのアニュラス部開口面積基準の相当直径DOEは102mmであり、直径DOEの円筒の内径DRに対する比率(DOE/DR)は0.20である。また、逆円錐形状の筒状バッフルの内面と水平面とがなす傾斜角、及び、そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角は、いずれも65°とした。また、円錐状のそらせ板は、下端の外径が300mmであり、その内部は空洞となっている。この円筒装置の中心軸に、ガス導入オリフィスの開口径DOと同一となる内径150mm、長さ590mmのドラフトチューブをガス導入オリフィス部から120mm上方の位置に設置した。
【0161】
この装置内にポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスから室温の空気を毎分5.4m3で供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、ポリプロピレン粒子として、上述の実施例1aと同様、平均粒径が900μmであり且つ最小流動化速度Umfが0.20m/sのものを使用した。
【0162】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。本実施例においては、噴流層の圧力損失は0.71kPa、圧力変動の平均偏差は0.21kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.015m/sと算出され、最小流動化速度の0.08倍であった。
【0163】
(実施例5a)
下端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを420mmとしたことの他は、実施例4aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は0.72kPa、圧力変動の平均偏差は0.15kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.021m/sと算出され、最小流動化速度の0.11倍であった。
【0164】
(実施例6a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを300mmとしたことの他は、実施例5aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.1kPa、圧力変動の平均偏差は0.17kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.044m/sと算出され、最小流動化速度の0.22倍であった。
【0165】
(実施例7a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを150mmとしたことの他は、実施例6aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.7kPa、圧力変動の平均偏差は0.56kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.091m/sと算出され、最小流動化速度の0.46倍であった。
【0166】
(比較例2a)
反応領域内にドラフトチューブを設置しなかったことの他は、実施例4aと同様にして、評価を行った。その結果、環状部ガス速度は0.120m/sと高い値を示したが、形成された噴流層は圧力損失が大きく、圧力変動幅も広く比較的不安定なものであった。
【0167】
【表4】
【0168】
<実施例4b〜7b及び比較例2b>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.59m/sとしたことの他は、上記実施例4a〜7a及び比較例2aと同様の条件で実施例4b〜7b及び比較例2bをそれぞれ実施した。表5に結果を示す。
【0169】
【表5】
【0170】
<実施例4c〜7c及び比較例2c>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.34m/sとしたことの他は、上記実施例4a〜7a及び比較例2aと同様の条件で実施例4c〜7c及び比較例2cをそれぞれ実施した。表6に結果を示す。
【0171】
【表6】
【0172】
<実施例8a〜11a>
(実施例8a)
直管のドラフトチューブの代わりに、上端から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有するドラフトチューブを使用したことの他は、実施例1aで使用したものと同様の構成の円筒コールドモデル装置を準備した(図6(b)及び図7参照)。本実施例においては、円筒装置の中心軸に、表7の実施例8aの欄に示す構成のドラフトチューブをガス導入オリフィスから270mm上方の位置に設置した。
【0173】
この装置内に、平均粒径900μmのポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスからガスを供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、上記ポリプロピレン粒子の最小流動化速度(Umf)は0.20m/sであった。また、導入するガスは室温の空気であり、毎分5.4m3供給した。
【0174】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。本実施例においては、噴流層の圧力損失は1.9kPa、圧力変動の平均偏差は0.14kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.059m/sと算出され、最小流動化速度の0.30倍であった。
【0175】
(実施例9a)
直管のドラフトチューブの代わりに、上端から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有するドラフトチューブを使用したことの他は、実施例4aで使用したものと同様の構成の円筒コールドモデル装置を準備した(図6(b)及び図11参照)。本実施例においては、円筒装置の中心軸に、表7の実施例9aの欄に示す構成のドラフトチューブをガス導入オリフィスから270mm上方の位置に設置した。
【0176】
この装置内に、平均粒径900μmのポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスからガスを供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、上記ポリプロピレン粒子の最小流動化速度(Umf)は0.20m/sであった。また、導入するガスは室温の空気であり、毎分5.4m3供給した。
【0177】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。本実施例においては、噴流層の圧力損失は1.2kPa、圧力変動の平均偏差は0.37kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.129m/sと算出され、最小流動化速度の0.65倍であった。
【0178】
(実施例10a)
下端の設置位置は変えずにドラフトチューブの構成を表7の実施例10aの欄に示すものに変更したことの他は、実施例9aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.1kPa、圧力変動の平均偏差は0.36kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.143m/sと算出され、最小流動化速度の0.72倍であった。
【0179】
(実施例11a)
下端の設置位置は変えずにドラフトチューブの構成を表7の実施例11aの欄に示すものに変更したことの他は、実施例9aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.3kPa、圧力変動の平均偏差は0.40kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.152m/sと算出され、最小流動化速度の0.76倍であった。
【0180】
【表7】
【0181】
<実施例8b〜11b>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.59m/sとしたことの他は、上記実施例8a〜11aと同様の条件で実施例8b〜11bをそれぞれ実施した。表8に結果を示す。
【0182】
【表8】
【0183】
<実施例8c〜11c>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.34m/sとしたことの他は、上記実施例8a〜11aと同様の条件で実施例8c〜11cをそれぞれ実施した。表9に結果を示す。
【0184】
【表9】
【符号の説明】
【0185】
10A,10B,10C,10D…オレフィン重合反応装置、12,12A…円筒(円筒部)、20…そらせ板(第1の円錐バッフル)、23…第2の円錐バッフル、25…反応領域、30…筒状バッフル(縮径部)、L31…粒子抜出管(移送手段)、32…エジェクタ(移送手段)、L33…粒子供給管(移送手段)、35a,35b…ダウンカマー管(移送手段)、L38…ガス供給管、80…開閉弁、100A,100B,100C…ポリオレフィン製造システム、T1,T2…ドラフトチューブ、T2a…ドラフトチューブの直管部、T2b…ドラフトチューブの拡径部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流層を用いたオレフィン重合反応装置及びポリオレフィン製造システム、並びに、これらを用いてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器内で、気体や液体として供給されたオレフィンモノマーを触媒の存在下で重合させ、粒状のポリオレフィン粒子を形成させるオレフィン重合反応装置が知られている。しかし、1つの容器内ではポリオレフィン粒子は完全混合状態に近くなるため、十分に成長していない粒子が排出されるショートパスや、成長しすぎた粒子が容器内に蓄積されることが起こりやすい。
【0003】
この場合、生成粒子の構造上の均一性が悪く、また、触媒コストの上昇、触媒残渣の増大、複数の反応領域で重合して得られた多段重合体を成形して得られる成形品の欠陥(魚の目の形状に似ていることから、「フィッシュアイ」と称される。)の増加等の問題が発生しやすい。また、完全混合であると、重合条件を変化させて異なるロットの重合を行う場合に、条件変更前に重合されたポリオレフィン粒子を容器内から完全排出させるのに時間がかかるため、規格外品が大量に生成されることとなる。これに対して、完全混合型の装置を直列に複数接続して全体としてプラグフローとすることも考えられるが、多数の装置を直列にするのでは設備コストがかかる。そこで、1つの装置において、滞留時間分布を小さくしてプラグフロー化することが求められている。このような装置として、特許文献1〜3のような装置が知られている。
【0004】
他方、流動層を用いて種々の改良を加えた装置として、特許文献4〜10や非特許文献1のような装置が知られている。このような装置の中でも、特許文献4〜6や非特許文献1のような装置を使用した場合に、ポリオレフィン粒子が循環する領域において他の領域と比較してガス組成が異なる区域を部分的に設けることによって、分子量分布や共重合組成分布の広いポリオレフィンを製造することができるとされている。
【0005】
ところで、ポリオレフィン製造の分野ではないが、噴流層と呼ばれる流動を利用して固体粒子と流体とを接触させる技術が知られている(非特許文献2を参照)。また、噴流層の安定化策としてドラフトチューブを使用する技術も知られている(特許文献11〜13及び非特許文献3〜5を参照)。なお、流動層を用いるものであれば、ポリオレフィン製造においてもドラフトチューブを使用する技術は知られている(特許文献10を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2675919号公報
【特許文献2】米国特許5235009号明細書
【特許文献3】特表2002−537420号公報
【特許文献4】特表2002−520426号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第1484343号明細書
【特許文献6】特表2006−502263号公報
【特許文献7】特開昭59−42039号公報
【特許文献8】特表2002−515516号公報
【特許文献9】特開昭58−216735号公報
【特許文献10】国際公開第02/40547号
【特許文献11】特公平6−76239号公報
【特許文献12】米国特許4373272号明細書
【特許文献13】特許3352059号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G.Weickert、Chemie Ingenieur Technik2005、77、no.8、p.977
【非特許文献2】横川明、粉体工学会誌、1997年、vol.21、No.11、p.715−p.723
【非特許文献3】幡手泰雄ら、粉体工学会誌、1997年、vol.34、No.5、p.343−p.360
【非特許文献4】竹中草平ら、化学工学会第71回年会講演要旨J123、2006年
【非特許文献5】石蔵利文ら、化学工学論文集、1996年、VOL.22、No.3、p.615−p.621
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、容器内に水平方向に複数のゾーンを形成する特許文献1の方法では容器内に攪拌パドル等を設ける必要があり、構造が複雑となると共に粒子の攪拌に要するエネルギーが大きいといった問題があった。また、流動層を上下方向に直列に多数接続した特許文献2の方法では、各段にフリーボード部を設ける必要があるので装置の高さが巨大になる恐れがある。また、管型反応器内においてワンパスで重合させる特許文献3では、十分な滞留時間をとるためには極めて管を長くする必要がある。
【0009】
また、特許文献4、5のような循環流動層型の装置では、各ポリオレフィン粒子の分子量分布や共重合組成分布は広く、且つ、均質なものが得られるものの、装置内の循環回数までは制御できず、装置内でのポリオレフィン粒子の滞留時間分布を実質的に狭くすることはできない。また、分散板を用いる流動層の場合には、圧力損失の面では不利となる。なお、特許文献6〜8に記載の流動層装置は、必ずしもガス分散板を必要としないものであるが、容積効率の点で改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粒子の滞留時間分布が狭く且つ圧力損失が小さいオレフィン重合反応装置及びこれを備えたポリオレフィン製造システムを提供することを目的とする。また、上記オレフィン重合反応装置又はポリオレフィン製造システムを用いたポリオレフィン製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るオレフィン重合反応装置は、鉛直方向に伸びる円筒部と、この円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部と、円筒部内に設けられ、ガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びるドラフトチューブとを備え、縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の円筒部の内面とによって囲まれた反応領域内に噴流層が形成されるものである。
【0012】
本発明の噴流層型オレフィン重合反応装置においては、触媒を含むポリオレフィン粒子を収容して粒子層が形成される反応領域に、縮径部下端のガス導入用開口から上方に向かってオレフィン含有ガスを高速で流入させ、反応領域内に噴流層を形成する。ここで、噴流層とは、ガス導入用開口からのオレフィン含有ガスの作用によって、ポリオレフィン粒子(以下、場合により単に「粒子」という。)からなる粒子層において円筒部の中心軸付近に粒子濃度が希薄であり且つ当該ガスと共に上向きに粒子が流れる噴流(噴流部)が形成される一方、その周囲を粒子が重力の影響で移動層状に下降する環状構造が形成され、粒子の循環運動が生じている粒子層の状態をいう。
【0013】
ガス導入用開口から吹込まれたオレフィン含有ガスの一部は、噴流を形成して粒子層及びドラフトチューブを吹き抜け、残りは環状構造の粒子層の部分に拡散する。このようにオレフィン含有ガスとポリオレフィン粒子とが固気接触することによって、ポリオレフィン粒子は反応領域内でオレフィンの重合によって成長する。本発明においては、反応領域内の所定の位置に鉛直方向に伸びるドラフトチューブを設置したことで、十分に高い安定性を有し且つ圧力損失も低減し得る噴流層を形成できる。
【0014】
ドラフトチューブは、上端開口から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有し、当該拡径部がガス導入用開口から離隔した位置まで伸びていることが好ましい。かかる構成のドラフトチューブを採用することで、ポリオレフィン粒子の重合熱除去に寄与する環状粒子層へ流入するガス量を増加させることができる。これにより、安定的にポリオレフィン粒子を成長させることができる。
【0015】
なお、一般に、噴流層は、流動層と比較すると、圧力損失の点において優れた性能を発揮し得ること、及び、粒子の循環運動によって若干プラグフローに近い混合が生じることが知られている。従って、本発明に係る噴流層型オレフィン重合反応装置は、流動層を利用した従来の装置と比較すると、反応領域における粒子の滞留時間分布を小さくできるという利点がある。また、流動層では流動化に過大なガス流速が必要となる粒径数mm程度の比較的大きなポリオレフィン粒子を製造する際にも、噴流層では流動層に比して低ガス流速にて粒子の流動化が可能となる利点もある。
【0016】
本発明のオレフィン重合反応装置は、反応領域内において、ドラフトチューブの上端開口の上方に配設され、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が円筒部の内壁から離間されている第1の円錐バッフルを更に備えることが好ましい。
【0017】
従来の流動層型の装置にあっては、粒子飛散を抑制するのに一定のフリーボードゾーンを確保する必要がある。本発明の装置においては、ドラフトチューブの上方に配設される第1の円錐バッフルは、噴流した粒子の飛散を抑制するそらせ板の役割を果たす。従って、フリーボードゾーンを短縮することができ、流動層型の装置と比較し、高い容積効率を達成できる。
【0018】
本発明のオレフィン重合反応装置は、複数の上記反応領域を有し、当該反応領域をポリオレフィン粒子が順次通過することが好ましい。また、装置の省スペース化の観点から、複数の反応領域は、鉛直方向に並ぶようにそれぞれ形成され、上方の反応領域から下方の反応領域へとポリオレフィン粒子が順次通過することがより好ましいが、エジェクタ等を利用して、下方から上方へとポリオレフィン粒子を通過させることもできる。反応領域を複数設けて噴流層を多段化することで、粒子の滞留時間分布を十分に小さくすることができる。また、上述のように、噴流層は従来の流動層とは異なり若干プラグフローに近い混合が生じることから、流動層を多段化するよりも少ない段数で同等に滞留時間分布を狭化し得る。
【0019】
上記のように複数の反応領域が直列に設けられ、多段の噴流層を備えるオレフィン重合反応装置にあっては、上流側の反応領域から下流側の反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段を備えることが好ましい。
【0020】
本発明のオレフィン重合反応装置は、縮径部のガス導入用開口の縁から下方に延びる管状部を更に備えることが好ましい。この管状部からガスを反応領域内に導入すると、このような管状部が設けられておらず、単にガス導入用開口からガスを導入する場合と比較して反応領域内におけるガスの上方への流れが十分に安定化する。その結果、導入されるガスの流速や反応領域内の粒子量が多少変動しても、噴流層の流動状態を十分に維持できる。また、上記管状部が設けられていると、粒子が重力によってガス導入用開口から下方に落下しそうになっても、その管路内において下方から流入するガスによって押し上げられ、再び反応領域内に戻りやすいという利点もある。
【0021】
上記管状部は、その管路内を水平方向に区画する隔壁を更に有することが好ましい。隔壁を有する管状部を採用することにより、ガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。
【0022】
本発明に係るオレフィン重合反応装置は、少なくとも一端が閉じられ且つ管状部の内部に配設された円筒部材を更に備え、ガス導入用開口に至るまでの管路が円筒部材の外面と管状部の内面とによって形成されるアニュラス部を有することもできる。かかる構成を採用することにより、管路の水平方向の断面をリング形状とすることができ、これと断面積が同一であり且つ断面が円形の管路を採用した場合と比較して以下のような利点がある。まず、円形の管路と比較してガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。また、上記構成は当該反応装置をスケールアップする際に有効である。つまり、ガス導入用開口を拡大した場合であっても、これに至るまでの流路の断面がリング形状であることで、断面が円形である場合と比較し、開口間隔を狭くすることができ、安定した噴流層を形成しやすい。
【0023】
本発明のオレフィン重合反応装置は、管状部の下端を閉じる閉鎖板と、管状部の管路よりも細い管路を有し、閉鎖板を貫通するように設けられたガス導入管と、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が管状部の内面から離間されている第2の円錐バッフルとを更に備え、当該第2の円錐バッフルがガス導入管の上端の直上に配設されたものであってもよい。上記構成の反応装置によれば、第2の円錐バッフルが粒子の落下防止板としての役割を果たすため、ガスの供給を停止した場合であってもガス導入用開口を通じて粒子が落下するのを十分に防止できる。
【0024】
本発明のオレフィン重合反応装置は、ドラフトチューブ内と連通しており、ドラフトチューブ内にガス又は液体を供給する配管を更に備えることが好ましい。この配管を通じてドラフトチューブ内にガス又は液体を供給することにより、ドラフトチューブ内のガス組成をドラフトチューブ外のガス組成と異なるものとすることができる。これにより、分子量分布や共重合組成分布が広く且つ均質なポリオレフィン粒子を製造することが可能となる。
【0025】
本発明に係るポリオレフィン製造方法は、上述のオレフィン重合反応装置を用い、ポリオレフィン粒子による噴流層を反応領域内に形成させてオレフィンの重合を行うものである。本発明に係るポリオレフィン製造方法は、オレフィン重合反応装置にオレフィンを連続的に供給するとともに、オレフィン重合反応装置から未反応のオレフィンを含むガスを連続的に抜き出し、抜き出したガスをオレフィン重合反応装置に返送する工程と、抜き出したガスの全部又は一部を冷却し、オレフィンを含む凝縮液を得る工程とを備えたものであってもよい。この場合、オレフィン重合反応装置の反応領域内に形成された噴流層の噴流部に凝縮液を供給することが好ましい。これにより、凝縮液の蒸発潜熱の利用が可能となり、凝縮液のオレフィン重合反応装置の除熱を効率よく行うことができる。また、オレフィン重合反応装置が第1の円錐バッフルを具備したものである場合、凝縮液を第1の円錐バッフルの下部に供給してもよい。この場合、第1の円錐バッフルの治具を利用して凝縮液供給用のラインを配設できるという利点がある。
【0026】
本発明のポリオレフィン製造システムは、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させてポリオレフィン粒子を形成するオレフィン事前重合反応装置と、オレフィン事前重合反応装置の後段に接続された上述のオレフィン重合反応装置とを備える。本発明のポリオレフィン製造方法は、上述のポリオレフィン製造システムを用いてオレフィンの多段重合を行うものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、十分に高い安定性を有し且つ圧力損失も低減し得る噴流層を形成できると共に、粒子の滞留時間分布を小さくすることができる。従って、連続的にオレフィン重合体を製造する際に、重合体構造上の均一性に優れたものを製造できると共に、製造条件変更に伴う反応装置内の重合体置換が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るポリオレフィン製造システムの実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のオレフィン重合反応装置10Aの拡大概略断面図である。
【図3】本発明に係るポリオレフィン製造システムの他の実施形態を示す概略構成図である。
【図4】本発明に係るポリオレフィン製造システムの更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明に係るポリオレフィン製造システムの更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】(a)及び(b)はドラフトチューブの構成を示す断面図である。
【図7】ガス導入用開口の縁から下方に伸びる管状部を示す断面図である。
【図8】(a)−(c)はガス導入部の構成を示す図である。
【図9】(a)及び(b)はガス導入部の構成を示す図である。
【図10】(a)及び(b)はガス導入部の構成を示す図である。
【図11】円筒部材が配設された管状部を示す模式断面図である。
【図12】ガス導入管及び第2の円錐バッフルが配設された管状部を示す模式断面図である。
【図13】管状部に配設されたガス導入管及び第2の円錐バッフルを示す模式断面図である。
【図14】ベルマウス形状の下端部を有する延長管を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
(ポリオレフィン製造システム)
図1に本実施形態に係るポリオレフィン製造システム100Aを示す。この製造システム100Aは、オレフィン事前重合反応装置5と、このオレフィン事前重合反応装置5の後段に接続されたオレフィン重合反応装置10Aとを備える。
【0031】
(オレフィン事前重合反応装置)
オレフィン事前重合反応装置5は、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させてポリオレフィン粒子を形成する。
【0032】
オレフィン事前重合反応装置5としては、特に限定されないが、例えば、スラリー重合反応装置、塊状重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、流動床式気相重合反応装置が挙げられる。なお、これらの装置は、1種を単独で用いてもよく、同一種類の複数の装置を組み合わせて用いてもよく、異なる種類の装置を2以上の組み合わせて用いてもよい。
【0033】
スラリー重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。なお、スラリー重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒に、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体を添加したものを重合溶媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒をスラリー状に分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度及び圧力で行う。重合温度は、通常、30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは、0.3〜5MPaGである。
【0034】
塊状重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。なお、塊状重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒が実質的に存在せず、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体を重合溶媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒を分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度及び圧力で行う。重合温度は、通常、30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは、0.5〜5MPaGである。
【0035】
攪拌槽式気相重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭46−31969号公報、特公昭59−21321号公報に記載の反応装置を用いることができる。なお、攪拌槽式気相重合は、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体を攪拌機によって流動状態に保ちながら、気体状態の単量体を重合する方法である。重合温度は、通常、50〜110℃であり、好ましくは60〜100℃である。重合圧力は、攪拌槽式気相重合反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜5MPaG、好ましくは、0.5〜3MPaGである。
【0036】
流動床式気相重合反応装置としては、公知の反応装置、例えば、特開昭58−201802号公報、特開昭59−126406号公報、特開平2−233708号公報に記載の反応装置を用いることができる。なお、流動床式気相重合は、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体を主として媒体の流れによって流動状態に保ちながら、気体状態の単量体を重合する方法である。流動化を促進するため、補助的に攪拌装置を設ける場合もある。重合温度は、通常、0〜120℃であり、より好ましくは20〜100℃であり、更に好ましくは40〜100℃である。重合圧力は、流動床式反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、より好ましくは0.2〜8MPaG、更に好ましくは0.5〜5MPaGである。
【0037】
各反応装置の組み合わせとしては、例えば、スラリー重合反応装置又は塊状重合反応装置の後段に、流動床式気相重合反応装置又は攪拌槽式気相重合反応装置を接続した態様があげられる。
【0038】
また、スラリー重合反応装置又は塊状重合反応装置と、その後段に接続される、例えば、流動床式気相重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、又は、後述するオレフィン重合反応装置10A等の気相重合反応装置との間には、通常、未反応のオレフィンや重合溶媒とオレフィン重合体粒子とを分離するフラッシング槽が設けられる。但し、当該フラッシング槽は必ずしも必要ではなく、特に、塊状重合反応器を用いた場合には、フラッシング槽を設置しない場合も少なくない。
【0039】
(オレフィン重合反応装置)
オレフィン重合反応装置10Aは、オレフィン事前重合反応装置5によって生成したポリオレフィン粒子に対して、実質的に気相状態でオレフィン重合反応を行わせる装置である。
【0040】
図1に示すように、オレフィン重合反応装置10Aは、主として、鉛直方向に伸びる円筒12、円筒12内に複数設けられたそらせ板(第1の円錐バッフル)20、及び、円筒12内に複数設けられた筒状バッフル(縮径部)30を備えている。そらせ板20及び筒状バッフル30は、円筒の軸方向に交互に配置されている。なお、そらせ板20及び筒状バッフル30は、いずれも円筒12の軸と同軸に配置されることが好ましい。また、噴流層の安定化の観点からは、円筒12の内径は5m以下であることが好ましく、3.5m以下であることがより好ましい。
【0041】
オレフィン重合反応装置10Aにおいては、円筒12内に5段の反応領域25が鉛直方向に並ぶように形成される。反応領域25は、筒状バッフル30の外面と、その直下の筒状バッフル30の内面と、これらの筒状バッフル30の間の円筒12の部分(円筒部)の内面とによって囲まれた領域である。但し、最上段の反応領域25は、円筒12の頭頂部の内面と、その直下の筒状バッフル30の内面と、これらの間の円筒12の部分(円筒部)の内面とによって囲まれた領域である。
【0042】
各反応領域25内においては、筒状バッフル30の下端30bに形成されたガス導入用開口から上方に向かってオレフィン含有ガスが高速で流入することによって、ポリオレフィン粒子の噴流層が形成されるようになっている。
【0043】
各反応領域25内には、円筒12の軸と同軸にドラフトチューブT1が設置されている。ドラフトチューブT1を使用することにより、噴流層の安定性を向上させることができる。ドラフトチューブT1は、筒状バッフル30のガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びる直管である。
【0044】
ドラフトチューブT1の下端T1aと筒状バッフル30のガス導入用開口との距離(クリアランス)Lcと、筒状バッフル30のガス導入用開口の径Doとの比率(Lc/Do)は、0.5〜5であることが好ましく、0.7〜4であることがより好ましい。比率Lc/Doが0.5未満であると、噴流層の環状部へのガス拡散が不十分となる傾向にあり、他方、5を越えると噴流層の安定性が不十分となる傾向にある。
【0045】
ドラフトチューブT1は、上端T1bが噴流層の粉面から突出する長さとすることができる。これにより、噴流層における圧力損失がより一層低減される。他方、ドラフトチューブT1は、上端T1bが噴流層の粉面よりも低い位置となる長さであってもよい。これにより、環状粒子層へガス拡散性を高めることができる。ドラフトチューブの長さLtの円筒12の内径DRに対する比率(Lt/DR)は、噴流層の安定性及びガス拡散性の点から、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0046】
ドラフトチューブT1の内径Dtのガス導入用開口の径Doに対する比率(Dt/Do)は、噴流層の安定性及びガス拡散性の点から、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。
【0047】
図2に示すように、各反応領域25における筒状バッフル30の上方であり、そのガス導入用開口と対向する位置には、そらせ板20がそれぞれ配設されている。そらせ板20は噴流したポリオレフィン粒子が飛散するのを防止する役割を果たしている。これによって、フリーボードゾーンを短縮することができ、高い容積効率が達成される。
【0048】
そらせ板20は、上端20aが閉じられると共に下方に向かうほど外径が大きくなる円錐形状をなし、下端20bは、円筒12の内壁からは離間されている。これにより、吹き上げられた粒子は、そらせ板20の内面に衝突し、噴流層の環状構造へと取り込まれる。一方、ガスは下端20bと円筒12の内壁との間を通って上方に流通することとなる。
【0049】
筒状バッフル30は、下方に向かうほど内径が小さくなるようにされたテーパー円筒であり、上端30aが円筒12の内壁に接している。これにより、ガスは、下端30bの円形状のガス導入用開口から上方に流通し、上端30aと円筒12との間からは流通しないようにされている。なお、下端30bに形成されたガス導入用開口には、オレフィン重合反応装置10Aの起動時や一時停止時などに反応領域25内のポリオレフィン粒子がガス導入用開口から下方に流出しないように逆止弁(図示せず)を配設してもよい。
【0050】
図1に示すように、円筒12内に設けられた上方4つの筒状バッフル30には、これを貫通するようにダウンカマー管35aが設けられ、最下段の筒状バッフル30にはダウンカマー管35bが設けられている。ダウンカマー管35aは、上方の反応領域25から下方の反応領域25へとポリオレフィン粒子を降下させる。ダウンカマー管35bは、最下段の反応領域からポリオレフィン粒子を抜き出して円筒12外へと排出するためのものである。このダウンカマー管35bには2つのバルブV71,V72が直列に配設されており、これらのバルブを逐次開閉することにより、ポリオレフィン粒子を次工程に排出することができる。
【0051】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、筒状バッフル30は以下の条件を満足することが好ましい。すなわち、筒状バッフル30は、筒状バッフル30の下端30bのガス導入用開口の開口径DOの円筒12の内径DRに対する比率(DO/DR)が0.35以下であることが好ましい。また、図2における筒状バッフル30の傾斜角α30すなわち、筒状バッフル30の内面の水平面とのなす角は、円筒12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましく、傾斜角α30は、安息角以上であって、ポリオレフィン粒子が重力により全量自然に排出され得る角度以上とすることがより好ましい。これにより、ポリオレフィン粒子のスムーズな下方への移動が達成される。
【0052】
なお、筒状バッフル30の代わりにガス導入用開口が形成された平板を採用した場合でも噴流層を形成することはできるが、この平板上における円筒12の内面近傍には粒子が流動化しない領域が生じる。そうすると、この領域では除熱不良により粒子同士が溶融塊化するおそれがある。従って、かかる事態を避けるためにも、筒状バッフル30の傾斜角α30は、上記の通り、所定の角度以上であることが好ましい。
【0053】
図2におけるそらせ板20の傾斜角α20すなわち、そらせ板20の外面の水平面とのなす角も円筒12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましい。これにより、そらせ板20にポリオレフィン粒子が付着することを十分に防止できる。
【0054】
ポリオレフィン粒子の安息角は、例えば、35〜50°程度であり、傾斜角α30及α20は、55°以上とすることが好ましい。
【0055】
なお、そらせ板20及び筒状バッフル30は、それぞれ、図示しないサポートにより、円筒12に固定されており、このサポートによるガス流れやポリオレフィン流れへの影響はほとんどない。円筒12、そらせ板20及び筒状バッフル30の材質としては、例えば、カーボンスチール、SUS304及びSUS316Lなどを用いることができる。なお、SUSは、JIS(日本工業規格)で規定されるステンレス規格である。腐食成分(例えば、塩素などのハロゲン成分)を多く含む触媒を使用する場合にあっては、SUS316Lを用いることが好ましい。
【0056】
図1に示すように、円筒12の下部には、ガス供給ノズル38が設けられており、ラインL30を介して、オレフィンモノマーが円筒12の下部に供給される。一方、円筒12の上部には、ガス排出ノズル61が設けられている。円筒12内を上昇したガスは、ラインL40を介して外部に排出され、必要に応じて設置されるサイクロン62によりガス同伴粒子が排出される。ガスは、熱交換器63、コンプレッサ64、熱交換器65及び気液分離器66における処理を経た後、ラインL35を介してラインL30内に導入されてリサイクルされる。なお、円筒12の装置下部には、ガス供給ノズル38以外に運転終了時にポリオレフィン粒子を排出できる排出ノズル(図示せず)を設けてもよい。また、運転終了時のオレフィン重合反応装置10A内の粉体残存量を軽減することを目的に、円筒12の下部のガス流れを阻害しない位置に、逆円錐形状の内装物(図示せず)を設置してもよい。
【0057】
また、円筒12には、気液分離器66で分離された液体オレフィンを円筒12の外から所定の反応領域25内に供給する液体供給ノズル50が設けられている。より具体的には、図1に示すように、液体供給ノズル50は上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設され、噴流に向けて液体オレフィンが噴射されるようになっている。この液体供給ノズル50には、液化されたオレフィンモノマーを必要に応じて供給するポンプ52及びラインL20が接続されている。また、図1においては、液体供給ノズル50は筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設されているが、当該液体供給ノズル50の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、そらせ板20の下端近傍に配設してもよい。なお、液体供給ノズル50は、噴流が形成される噴流部のような、高ガス流速となる領域に設置されることが好ましい。
【0058】
更に、円筒12における筒状バッフル30の外面に面する部分には、ガス排出ノズル60が複数設けられている。より具体的には、図1に示すように、ガス排出ノズル60は上から2段目の筒状バッフル30の外面に面する部分に設けられている。このガス排出ノズル60は、ラインL41を介してラインL40に接続されている。ガス排出ノズル60から排出されるガス量は、液体供給ノズル50から供給されて気化したガス量とほぼ同じとなるようにそれぞれバルブ等により制御される。したがって、液体供給ノズル50から液化されたオレフィンモノマーが円筒12内に供給された場合でも、円筒12内のガス空筒速度は上下でほぼ一定に維持される。
【0059】
また、円筒12における最上段の筒状バッフル30よりも高い位置には、ラインL5が接続され、オレフィン重合触媒固体粒子を含有するポリオレフィン粒子が最上段の反応領域25に供給される。
【0060】
このようにして本実施形態では、オレフィン事前重合反応装置5、及び、オレフィン重合反応装置10Aにより2段の重合工程が実現されている。このようにオレフィン事前重合反応装置5によりポリオレフィン粒子を重合して成長させて、好ましくは粒径500μm以上、より好ましくは700μm以上、特に好ましくは粒径850μm以上の比較的大きなポリオレフィン粒子とすることにより、より安定な噴流層が形成できる。しかし、オレフィン事前重合反応装置5を有さない1段の重合工程とすることも可能である。この場合には、オレフィン重合用触媒又は予備重合触媒が直接オレフィン重合反応装置10Aに供給され、オレフィンの重合がなされることとなる。また、オレフィン事前重合反応装置5やオレフィン重合反応装置10Aのような追加のオレフィン重合反応装置を、オレフィン重合反応装置10Aの後段に更に、1又は複数設け、3段以上の重合工程を実現してもよい。
【0061】
(オレフィン、ポリオレフィン、触媒等)
続いて、このようなシステムにおける、オレフィン、ポリオレフィン、触媒等について詳しく説明する。
【0062】
本発明のオレフィン重合反応装置、ポリオレフィン製造方法、ポリオレフィン製造システムでは、オレフィンを重合(単独重合、共重合)して、ポリオレフィンすなわちオレフィン重合体(オレフィン単独重合体、オレフィン共重合体)の製造を行う。本発明で用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどがあげられる。
【0063】
これらオレフィンは1種以上用いられ、また、用いるオレフィンを各重合工程において変更してもよく、多段重合法でおこなわれる場合は、用いるオレフィンを各段において互いに異ならせてもよい。オレフィンを2種以上用いる場合のオレフィンの組み合わせとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテンなどがあげられる。また、オレフィンに加え、ジエンなどの他の共重合体成分を併用してもよい。
【0064】
本発明では、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン重合体(単独重合体、共重合体)を好適に製造できる。特に、重合体成分を構成する単量体単位の含有割合が異なる多段重合によって得られるオレフィン系重合体の製造に好適であり、例えば、オレフィン事前重合反応装置5、及び、オレフィン重合反応装置10Aにて1種のオレフィンの供給によりホモ重合体粒子を、あるいは少量の別種のオレフィンとを共重合したランダム共重合体粒子を形成し、更に後段にオレフィン事前重合反応装置5やオレフィン重合反応装置10Aのような追加のオレフィン重合反応装置にてこれら重合体粒子に対して2種以上のオレフィンを供給して多段重合オレフィン系共重合体を生成することができる。こうすると、オレフィン重合反応装置10Aにおける滞留時間分布が狭いので、重合体粒子内の組成比率を一定にしやすく、成形時の不良低減に特に効果的である。
【0065】
該重合体としては、例えば、プロピレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン−プロピレン・エチレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン・エチレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン−プロピレン・エチレン・1−ブテン重合体などをあげることができる。なお、ここでは、「−」は重合体間の境界を、「・」は重合体内で二種以上のオレフィンが共重合していることを示す。これらの中でも、プロピレンに基づく単量体単位を有する重合体であり、ハイインパクトポリプロピレンと称す(日本国内では慣用的にポリプロピレンブロックコポリマーとも称す)、結晶性プロピレン系重合部と非晶性プロピレン系重合部とを有する多段重合プロピレン系共重合体の製造に好適である。多段重合プロピレン系共重合体は、結晶性のホモポリプロピレン部あるいは少量のプロピレン以外のオレフィンを共重合したランダム共重合体部と、非晶性のエチレンとプロピレン、任意成分としてエチレン、プロピレン以外のオレフィンを共重合したゴム部とを、それぞれの重合体の存在下で、任意の順番で連続して多段に重合して得られるものであり、135℃の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン中で測定される極限粘度が、好ましくは0.1〜100dl/gの範囲内であるものである。この多段重合プロピレン系共重合体は、耐熱性、剛性及び耐衝撃性に優れるため、バンパーやドアトリムなどの自動車部品、レトルト食品包装容器などの各種包装容器などに用いることができる。
【0066】
また、本発明のオレフィン重合反応装置及び製造方法では、オレフィン重合体の分子量分布を広げるために、各重合工程で製造されるオレフィン重合体成分の分子量を異なるものとしてもよい。本発明は、広分子量分布のオレフィン重合体の製造にも好適であり、例えば、最も分子量が高い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の上記測定で得られる極限粘度が、好ましくは0.5〜100dl/g、より好ましくは1〜50dl/gの範囲内であり、特に好ましくは2〜20dl/gであり、該極限粘度は、最も分子量が低い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の極限粘度の5倍以上であり、最も分子量が高い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の量が、オレフィン重合体中に0.1〜80重量%含有するオレフィン重合体を好適に製造できる。
【0067】
本発明に用いるオレフィン重合用触媒としては、オレフィン重合に用いられる公知の付加重合用触媒を使用することができる。具体例としては、チタンとマグネシウムとハロゲン及び電子供与体を含有する固体触媒成分(以下、触媒成分(A)と称する。)と有機アルミニウム化合物成分と電子供与体成分とを接触してなるチーグラー系固体触媒、メタロセン化合物と助触媒成分とを粒子状担体に担持してなるメタロセン系固体触媒などをあげることができる。また、これらの触媒を組み合わせて用いることもできる。
【0068】
チーグラー系固体触媒の調製に用いられる触媒成分(A)としては、一般にチタン・マグネシウム複合型触媒と呼ばれているものを使用することができ、下記のようなチタン化合物、マグネシウム化合物、及び、電子供与体を接触させることにより得ることができる。
【0069】
触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物としては、例えば、一般式Ti(OR1)aX4−a(R1は炭素数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0≦a≦4の数を表す。)で表されるチタン化合物があげられる。具体的には、四塩化チタン等のテトラハロゲン化チタン化合物;エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド等のトリハロゲン化アルコキシチタン化合物;ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン化合物;トリエトキシチタンクロライド、トリブトキシチタンクロライド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン化合物;テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン化合物をあげることができる。これらチタン化合物は、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を持ち、還元能を有するマグネシウム化合物、あるいは、還元能を有さないマグネシウム化合物等があげられる。還元能を有するマグネシウム化合物の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム化合物;ブチルマグネシウムクロライド等のアルキルマグネシウムハライド化合物;ブチルエトキシマグネシム等のアルキルアルコキシマグネシウム化合物;ブチルマグネシウムハイドライド等のアルキルマグネシウムハイドライド等があげられる。これらの還元能を有するマグネシウム化合物は、有機アルミニウム化合物との錯化合物の形態で用いてもよい。
【0071】
一方、還元能を有さないマグネシウム化合物の具体例としては、マグネシウムジクロライド等のジハロゲン化マグネシウム化合物;メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライド等のアルコキシマグネシウムハライド化合物;ジエトキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム化合物;ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩等があげられる。これらの還元能を有さないマグネシウム化合物は、予め又は触媒成分(A)の調製時に、還元能を有するマグネシウム化合物から公知の方法で合成したものであってもよい。
【0072】
触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体;有機酸ハライド類をあげることができる。これらの電子供与体のうち、好ましくは、無機酸のエステル類、有機酸のエステル類及びエーテル類が用いられる。
【0073】
無機酸のエステル類としては好ましくは、一般式R2nSi(OR3)4−n(R2は炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を表し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、nは0≦n<4の数を表す。)で表されるケイ素化合物があげられる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ブチルエチルジエトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等があげられる。
【0074】
有機酸のエステル類として好ましくは、モノ及び多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルがあげられる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル等があげられる。好ましくはメタクリル酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステル、マレイン酸エステル及びフタル酸エステルであり、更に好ましくはフタル酸ジエステルである。
【0075】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル等のジアルキルエーテルがあげられる。好ましくはジブチルエーテルと、ジイソアミルエーテルである。
【0076】
有機酸ハライド類としては、モノ及び多価のカルボン酸ハライド等があげられ、例えば、脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライド等があげられる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等をあげることができる。好ましくは塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドであり、更に好ましくはフタル酸クロライドである。
【0077】
触媒成分(A)の調製方法としては、例えば、下記の方法があげられる。
(1)液状のマグネシウム化合物、あるいはマグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯化合物を析出化剤と反応させたのち、チタン化合物、あるいはチタン化合物及び電子供与体で処理する方法。
(2)固体のマグネシウム化合物、あるいは固体のマグネシウム化合物及び電子供与体からなる錯化合物をチタン化合物、あるいはチタン化合物及び電子供与体で処理する方法。
(3)液状のマグネシウム化合物と、液状チタン化合物とを、電子供与体の存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法。
(4)(1)、(2)あるいは(3)で得られた反応生成物をチタン化合物、あるいは電子供与体及びチタン化合物で更に処理する方法。
(5)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の共存下アルコキシチタン化合物をグリニャール試薬等の有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物、エーテル化合物及び四塩化チタンで処理する方法。
(6)有機ケイ素化合物又は有機ケイ素化合物及びエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物、次いで有機酸ハライド化合物の順で加えて処理したのち、該処理固体をエーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理する方法。
(7)金属酸化物、ジヒドロカルビルマグネシウム及びハロゲン含有アルコ−ルとの接触反応物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体及びチタン化合物と接触する方法。
(8)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体及びチタン化合物と接触する方法。
(9)(1)〜(8)で得られる化合物を、ハロゲン、ハロゲン化合物又は芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。
【0078】
これらの触媒成分(A)の調製方法のうち、好ましくは、(1)〜(6)の方法である。これらの調製は通常、全て窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行われる。
【0079】
触媒成分(A)の調製において、チタン化合物、有機ケイ素化合物及びエステル化合物は、適当な溶媒に溶解もしくは希釈して使用するのが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物等があげられる。
【0080】
触媒成分(A)の調製において、有機マグネシウム化合物を用いる還元反応の温度は、通常、−50〜70℃であり、触媒活性及びコストを高める観点から、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃である。有機マグネシウム化合物の滴下時間は、特に制限はないが、通常30分〜12時間程度である。また、還元反応終了後、更に20〜120℃の温度で後反応を行ってもよい。
【0081】
触媒成分(A)の調製において、還元反応の際に、無機酸化物、有機ポリマー等の多孔質物質を共存させ、固体生成物を多孔質物質に含浸させてもよい。かかる多孔質物質としては、細孔半径20〜200nmにおける細孔容積が0.3ml/g以上であり、平均粒径が5〜300μmであるものが好ましい。該多孔質無機酸化物としては、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、ZrO2又はこれらの複合酸化物等があげられる。また、多孔質ポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のポリスチレン系多孔質ポリマー;ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体等のポリアクリル酸エステル系多孔質ポリマー;ポリエチレン、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系多孔質ポリマーがあげられる。これらの多孔質物質のうち、好ましくはSiO2、Al2O3、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0082】
チーグラー系固体触媒の触媒の調製に用いられる有機アルミニウム化合物成分は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものであり、代表的なものを一般式で下記に示す。
R4mAlY3−m
R5R6Al−O−AlR7R8
(R4〜R8は炭素数が1〜8個の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素又はアルコキシ基を表す。R4〜R8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、mは2≦m≦3で表される数である。)
【0083】
有機アルミニウム化合物成分の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド;トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物;テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサン等があげられる。これらの有機アルミニウム化合物のうち、好ましくはトリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物、アルキルアルモキサンであり、更に好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、又はテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
【0084】
チーグラー系固体触媒の調製に用いられる電子供与体成分としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体;アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体等の一般的に使用されるものをあげることができる。これらの電子供与体成分のうち好ましくは無機酸のエステル類及びエ−テル類である。
【0085】
該無機酸のエステル類として好ましくは、一般式R9nSi(OR10)4−n(式中、R9は炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子、R10は炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは0≦n<4である)で表されるケイ素化合物である。具体例としては、テトラブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
【0086】
該エ−テル類として好ましくは、ジアルキルエーテル、一般式
【化1】
(式中、R11〜R14は炭素数1〜20の線状又は分岐状のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、又はアラルキル基であり、R11又はR12は水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物があげられる。具体例としては、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等をあげることができる。
【0087】
これらの電子供与体成分のうち一般式R15R16Si(OR17)2で表される有機ケイ素化合物が特に好ましく用いられる。ここで式中、R15はSiに隣接する炭素原子が2級もしくは3級である炭素数3〜20の炭化水素基であり、具体的には、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等があげられる。また式中、R16は炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等があげられる。更に式中、R17は炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基である。このような電子供与体成分として用いられる有機ケイ素化合物の具体例としては、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等をあげることができる。
【0088】
チーグラー系固体触媒の調製において、有機アルミニウム化合物成分の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、通常、1〜1000モルであり、好ましくは5〜800モルである。また、電子供与体成分の使用量は、触媒成分(A)に含まれるチタン原子1モル当たり、通常、0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、更に好ましくは0.5〜800モルである。
【0089】
触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物成分及び電子供与体成分は、多段重合反応装置に供給する前に予め接触させてもよく、多段重合反応装置に別々に供給して、多段重合反応装置内で接触させてもよい。また、これら成分の内の任意の2つの成分を接触させて、その後にもう1つの成分を接触させてもよく、各成分は、複数回に別けて接触させてもよい。
【0090】
メタロセン系固体触媒の調製に用いられるメタロセン化合物としては、下記一般式で表される遷移金属化合物があげられる。
LxM
(式中、Mは遷移金属を表す。xは遷移金属Mの原子価を満足する数を表す。Lは遷移金属に配位する配位子であり、Lのうち少なくとも一つはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。)
【0091】
上記Mとしては、元素の周期律表(IUPAC1989年)第3〜6族の原子が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウムがより好ましい。
【0092】
Lのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、(置換)シクロペンタジエニル基、(置換)インデニル基、(置換)フルオレニル基などであり、具体的には、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチル−メチルシクロペンタジエニル基、メチル−イソプロピルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、2−メチルインデニル基、3−メチルインデニル基、4−メチルインデニル基、5−メチルインデニル基、6−メチルインデニル基、7−メチルインデニル基、2−tert−ブチルインデニル基、3−tert−ブチルインデニル基、4−tert−ブチルインデニル基、5−tert−ブチルインデニル基、6−tert−ブチルインデニル基、7−tert−ブチルインデニル基、2,3−ジメチルインデニル基、4,7−ジメチルインデニル基、2,4,7−トリメチルインデニル基、2−メチル−4−イソプロピルインデニル基、4,5−ベンズインデニル基、2−メチル−4,5−ベンズインデニル基、4−フェニルインデニル基、2−メチル−5−フェニルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、2−メチル−4−ナフチルインデニル基、フルオレニル基、2,7−ジメチルフルオレニル基、2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル基、及びこれらの置換体等があげられる。また、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子が複数ある場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0093】
Lのうち、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、ヘテロ原子を含有する基、ハロゲン原子、炭化水素基(但し、ここではシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を含まない。)があげられる。
【0094】
ヘテロ原子を含有する基におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子等があげられ、かかる基の例としてはアルコキシ基;アリールオキシ基;チオアルコキシ基;チオアリールオキシ基;アルキルアミノ基;アリールアミノ基;アルキルホスフィノ基;アリールホスフィノ基;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子から選ばれる少なくとも一つの原子を環内に有する芳香族もしくは脂肪族複素環基などがあげられる。ハロゲン原子の具体例としてフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。また、炭化水素基としてはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等があげられる。
【0095】
二つ以上のLは、直接連結されていてもよく、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。かかる残基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基などの置換アルキレン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基、ジメトキシシリレン基などの置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子などがあげられ、特に好ましくはメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、ジフェニルメチレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基又はジメトキシシリレン基などがあげられる。
【0096】
メタロセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド等があげられる。また、ジクロライドをジメトキシドやジフェノキシドといった基に置き換えた化合物も例示することができる。
【0097】
メタロセン系固体触媒の調製に用いられる助触媒成分としては、有機アルミニウムオキシ化合物、有機アルミニウム化合物、ホウ素化合物などをあげることができる。
【0098】
該有機アルミニウムオキシ化合物としては、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアルミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサンなどがあげられる。
【0099】
該有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウムなどをあげることができる。
【0100】
該ホウ素化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができる。
【0101】
メタロセン系固体触媒の調製に用いられる粒子状担体としては、多孔性の物質が好ましく、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土や粘土鉱物;ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの有機ポリマーなどが使用される。
【0102】
メタロセン系固体触媒としては、例えば、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−108610号公報、特開昭61−276805号公報、特開昭61−296008号公報、特開昭63−89505号公報、特開平3−234709号公報、特表平5−502906号公報や特開平6−336502号公報、特開平7−224106号公報等に記載されているものを用いることができる。
【0103】
また、メタロセン系固体触媒は、オレフィンの重合において、必要に応じて、有機アルミニウム化合物、ホウ素化合物などの助触媒成分を併用してもよく、併用する場合、メタロセン系固体触媒及び助触媒成分は、重合反応装置に供給する前に予め接触させてもよく、重合反応装置に別々に供給して、重合反応装置内で接触させてもよい。また、各成分は、複数回に別けて接触させてもよい。
【0104】
以上のオレフィン重合用触媒の質量平均粒径は、通常、5〜150μmである。特に気相重合反応装置では、装置外への粒子飛散を抑制する観点から、10μm以上であるものが好ましく用いられ、15μm以上であるものがより好ましく用いられる。なお、本実施形態の重合触媒は、流動化助剤、静電気除去添加剤のような添加剤を含んでいてもよい。また、本実施形態の重合触媒は、重合体の分子量を調整するために水素などの連鎖移動剤を併用することも可能である。
【0105】
以上のオレフィン重合用触媒は、予め少量のオレフィン類で重合させたいわゆる予備重合触媒であってもよい。予備重合において用いられるオレフィン類としては、上述した重合で用いられるオレフィンがあげられる。この場合1種類のオレフィンを単独で用いてもよく、2種類以上のオレフィンを併用してもよい。
【0106】
予備重合触媒の製造方法としては、特に制限されないが、スラリー重合、気相重合等があげられる。この中でも好ましくはスラリー重合である。この場合、製造において経済的に有利となることがある。また、回分式、半回分式、連続式のいずれを用いて製造してもよい。
【0107】
予備重合触媒の質量平均粒径は、通常、5〜1000μmである。特に気相重合反応装置では、装置外への飛散を抑制する観点から、10μm以上であるものが好ましく用いられ、15μm以上であるものがより好ましく用いられる。また、粒径が20μm以下、特に10μm以下の予備重合触媒は少ない方が好ましい。
【0108】
なお、重合触媒の反応装置への導入は炭化水素溶媒等に懸濁させて導入してもよく、更にいはモノマーガス、窒素等の不活性ガスに同伴させて導入してもよい。
【0109】
(ポリオレフィンの製造方法)
続いて、このようなシステムを用いてポリオレフィンを製造する方法について説明する。まず、オレフィン事前重合反応装置5において、公知の方法によりオレフィン重合用触媒を用いて、重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子を生成する。
【0110】
一方、オレフィン重合反応装置10AにおいてラインL30を介してノズル38からオレフィンモノマーガスを供給し、重合圧力にまで昇圧すると共に、円筒12内を加温する。重合圧力は、反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、より好ましくは0.2〜8MPaG、更に好ましくは0.5〜5MPaGである。重合圧力が常圧未満であると、生産性が低下することがあり、反応圧力が10MPaGを超えると、反応装置の設備コストが高くなることがあるためである。重合温度は、モノマーの種類、製品の分子量等によっても異なるが、オレフィン重合体の融点以下、好ましくは融点よりも10℃以上低い温度である。具体的には、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましく、40〜100℃が更に好ましい。また、実質的に水分が存在しない環境下で重合を行うことが好ましい。水分が存在すると、重合触媒の重合活性が低下することがある。また、重合反応系内に酸素、一酸化酸素、二酸化炭素が過剰に存在すると重合活性が低下することがある。
【0111】
その後、公知の方法により別途得られた粒径0.5〜5.0mm程度のポリオレフィン粒子を、ラインL5に接続された供給ライン(図示せず)を介して円筒12内へと供給する。通常、円筒12内へと供給されるポリオレフィン粒子は重合活性のある触媒成分を含んでいないものを用いる場合が多いが、重合活性のある触媒成分を含んでいても差支えない。
【0112】
ノズル38からオレフィンモノマーガスを供給しながら、円筒12内にポリオレフィン粒子を供給すると、図2に示すように、反応領域25内にはポリオレフィン粒子の噴流層が形成される。すなわち、ガス導入用開口からのガスの作用によって、反応領域25における円筒12の中心軸付近に粒子濃度が希薄であり且つこのガスと共に上向きに粒子が流れる噴流が形成される一方、その周囲を粒子が重力の影響で移動層状に下降する環状構造が形成され、反応領域25内で粒子の循環運動が生じる。
【0113】
各反応領域25内に噴流層が形成された段階で、事前重合反応装置5において生成された重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子を、単位時間あたり一定量でラインL5から円筒12内に供給し、オレフィン重合反応装置10Aの定常運転を開始する。重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子は、各反応領域25内で成長しながら、ダウンカマー管35aを通じて下方の反応領域25内へと順次降下し、最終的にダウンカマー管35bから排出される。
【0114】
他方、オレフィンモノマーを含むガスは、その一部が噴流を形成して粒子層を吹き抜け、残りは環状構造の粒子層の部分に拡散する。このようにオレフィン含有ガスとポリオレフィン粒子とが固気接触することとなり、ポリオレフィン粒子内の触媒の作用によりオレフィン重合反応が進行し、ポリオレフィン粒子が成長することとなる。
【0115】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、以下の運転条件を満足することが好ましい。すなわち、ガス空塔速度U0が噴流層を形成し得る最小ガス空塔流速Ums以上であることである。最小ガス空塔速度Umsは取扱い粉体やガスの物性に加え、重合反応装置の形状に影響される。最小ガス空塔速度Umsの推算式は各種提案されているが、一例として下記式(1)をあげることができる。
【数1】
式中、dPは粒径を、ρSは粒子の密度を、ρGは反応領域の圧力・温度条件下におけるガスの密度を、ρAIRは室温条件下における空気の密度を、LSは噴流層高さを、それぞれ示す。
【0116】
また、反応領域25内における噴流層高さLSは、噴流層を形成し得る最大噴流層高さLsMAXm以下であり、最大噴流層高さLsMAX以下であれば特に制限はない。最大噴流層高さLsMAXの推算式は各種提案されているが、一例として下記式(2)をあげることができる。
【数2】
式中、utは粒子の終末速度を、umfは最小流動化速度を、それぞれ示す。
【0117】
なお、噴流層高さLSは、容積効率やより安定な噴流層を形成させる観点から、筒状バッフル30よりも高い方が好ましい。
【0118】
また、図1に示すように、オレフィン重合反応装置より抜き出したオレフィンを含むガスの全部又は一部を凝縮させて凝縮液を得た後、その凝縮液を円筒12の中段のノズル50から円筒12に供給してもよい。この場合、重合反応により消費されるオレフィンモノマーの補給ができる。これに加え、円筒12内で液状のオレフィンモノマーが蒸発する際に、蒸発潜熱によりポリオレフィン粒子の除熱も可能である。円筒12内の複数の反応領域25にあっては、上方の反応領域25ほど反応熱によって高温となりやすく、下方の反応領域25と温度差が生じる。そこで、円筒12の中段に設けられたノズル50から液状のオレフィンモノマーを供給することによってその温度差を最小限に抑制でき、温度の均一化が図られる。
【0119】
本実施形態に係るオレフィン重合反応装置10Aによれば、反応領域25内にドラフトチューブT1を配置したことで、噴流層の高い安定性及び圧力損失の低減化の両方を達成できる。更に、ドラフトチューブT1の径、長さ及びクリアランスなどを適宜設定することで、環状粒子層への高いガス拡散性も達成できる。
【0120】
オレフィン重合反応装置10Aによれば、円筒12内に多段の噴流層が形成され、粒子の滞留時間分布を狭化させることができる。従って、連続的にオレフィン重合体を製造する際に、重合体構造上の均一性に優れたものを製造できる。また、製造条件を変更するに際し、条件変更前に重合されたポリオレフィン粒子を容器内から容易に排出できるため、規格外品の発生量を十分に削減できる。また、噴流した粒子の飛散を抑制するそらせ板20を具備するため、フリーボードゾーンを短縮することができ、高い容積効率を達成できる。
【0121】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、上流側の反応領域から下流側の反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段として、ダウンカマー管35aを採用する場合を例示したが、これの代わりに、エジェクタ方式でポリオレフィン粒子を移送してもよい。図3に示すポリオレフィン製造システム100Bのオレフィン重合反応装置10Bは、エジェクタ方式の移送手段を備える。また、図示しないが、開閉弁を流通路に離間して2つ設けて粉体の移送を行う、ダブルダンパー又はダブルバブルシステムと呼ばれる移送手段を用いてもよい。
【0122】
オレフィン重合反応装置10Bの移送手段は、上流側の反応領域25からポリオレフィン粒子を抜き出す粒子抜出管L31と、この粒子抜出管L31の先端に設けられたエジェクタ32と、エジェクタ32からのポリオレフィン粒子を下流側の反応領域25に供給する粒子供給管L33とを備える。なお、粒子抜出管L31の途中には、開閉弁が配設されている。また、エジェクタ32と気液分離器66とは、途中にコンプレッサ(図示せず)が配設されたラインL36によって連結されており、気液分離器66で分離されたリサイクルガスの一部がエジェクタ作動用のガスとして供給される。なお、図3ではポリオレフィン粒子を上段から下段へと移送することを例示したが、エジェクタで生じる差圧を調整することにより、例示とは鉛直方向逆向きの下段から上段へ移送することも可能である。すなわち、この場合には、上流側の反応領域が下段に、下流側の反応領域が上段にそれぞれ配されることになる。
【0123】
なお、上記実施形態においては、5段の噴流層が鉛直方向に形成されるオレフィン重合反応装置を例示したが、噴流層の段数はこれに限定されず、単段であってもよい。但し、十分なプラグフロー化を実現する観点から、噴流層の段数は、3段以上であることが好ましく、6段以上であることがより好ましい。更に、多段の噴流層は、必ずしも鉛直方向に形成されていなくてもよく、例えば、単段の噴流層が内部に形成される反応装置を水平方向に複数設置し、これらの反応装置を直列に連結してもよい。なお、装置設計や運転制御法については、ポリオレフィン粒子の滞留時間分布が狭くなるように、各段(オレフィン事前重合反応装置5を含む)でのポリオレフィン生成量がより均一となるように、装置各段の容量を設計し、ポリオレフィン粒子のホールドアップや滞留時間を制御することが好ましい。
【0124】
また、上記実施形態においては、液体供給ノズル50を上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に配設する場合を例示したが、液体供給ノズル50の配設箇所及び個数は、製造するポリオレフィン粒子の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、他の手段によって各反応領域25の温度の均一化が図れれば、必ずしも液体供給ノズル50を配設しなくてもよく、あるいは、全ての筒状バッフル30のガス導入用開口近傍に液体供給ノズル50をそれぞれ配設してもよい。
【0125】
更に、上記実施形態で例示したダウンカマー管35a,35bは、上端部が筒状バッフル30の上方にまで突出したものであるが、これらのダウンカマー管35a,35bの外面と円筒12の内面又は筒状バッフル30の内面との間のポリオレフィン粒子の流動が阻害されるような場合は、ダウンカマー管35a,35bが各筒状バッフル30の内面よりも上方に突出しないように構成してもよい。この場合、上段の反応領域25から下段の反応領域25に降下させる粒子の量を調整するための機構(例えば、開閉弁)をダウンカマー管に適宜設ければよい。
【0126】
図4を参照しながら、オレフィン事前重合反応装置として塊状重合反応装置を採用すると共に、移送手段としてエジェクタ方式を採用したポリオレフィン製造システムの好適な構成を詳細に説明する。図4に示すポリオレフィン製造システム100Cは、塊状重合反応装置5と、上段及び下段の反応領域25を内部に有するオレフィン重合反応装置10Cとを備える。
【0127】
塊状重合反応装置5は、オレフィン重合用触媒を含有する液相においてオレフィンを重合させ、ポリオレフィン粒子を形成する。塊状重合反応装置5で生じたポリオレフィン粒子は液状オレフィンと共にラインL5を通じてオレフィン重合反応装置10Cへと供給される。ノズル68は上段の反応領域25にスラリーを供給するためのものであり、図4に示すように、噴流層の粉面85よりも低い位置に設けられている。粉面85よりも低い位置からスラリーを反応領域25内に供給する場合、スラリーに含まれる液状オレフィンのガス化後の空塔速度が反応領域25内に収容されたポリオレフィン粒子の最小流動化速度(Umf)を超えないように、スラリーの供給量を調節することが好ましい。このようにスラリーの供給量を調節することにより、反応領域25内における液状オレフィンのガス化に伴って噴流層の流動状態が不安定になるのを十分に防止できる。なお、「液状オレフィンのガス化後の空塔速度」とは、オレフィン重合反応装置に供給される液状オレフィンの体積流量をガス化後の体積流量に換算し、これをオレフィン重合反応装置の円筒部の断面積A(A=πDR2/4、DRは円筒部の内径)で除して算出される値を意味する。
【0128】
なお、ここでは、粉面85よりも低い位置からスラリーを供給する構成を例示したが、スラリーを供給する位置はこれに限定されるものではない。例えば、ノズル68を粉面85よりも高い位置に設けてもよい。この場合、単位時間当たりに供給するスラリー量を比較的多くしても液状オレフィンのガス化に伴って噴流層の流動状態が不安定になるのを抑制できるという利点がある。
【0129】
図4に示すように、円筒12の下部には、ガス供給ノズル38が設けられており、ラインL30を介して、オレフィンモノマーが円筒12の下部に供給される。一方、円筒12の上部には、ガス排出ノズル61が設けられている。円筒12内を上昇したガスは、ラインL40を介して外部に排出され、必要に応じて設置されるサイクロン62によりガス同伴粒子が排出される。ガスは、コンプレッサ64、熱交換器65を経た後、ラインL35を介してラインL30内に導入されてリサイクルされる。
【0130】
オレフィン重合反応装置10Cは、上述の通り、エジェクタ方式の移送手段を備える。この移送手段は、上段の反応領域25からポリオレフィン粒子を抜き出す粒子抜出管L31と、この粒子抜出管L31の先端に設けられたエジェクタ32と、エジェクタ32からのポリオレフィン粒子を下段の反応領域25に供給する粒子供給管L33とを有する。粒子抜出管L31の途中には開閉弁80が設けられている。この開閉弁80の上流側及び下流側において粒子抜出管L31にラインL38がそれぞれ接続されており、ガス供給管L38を通じて粒子抜出管L31内に目詰まり防止用のガスを供給できるようになっている。
【0131】
エジェクタ32にはラインL37を通じてコンプレッサ64で昇圧されたガスの一部が供給されるようになっている。このガスがエジェクタ作動用のガスとして使用される。また、開閉弁80の上流側及び下流側の粒子抜出管L31には、コンプレッサ64で昇圧されたガスの一部がラインL38を通じて供給されるようになっている。このガスが開閉弁80及びエジェクタ32の目詰まり防止用のガスとして使用される。
【0132】
なお、図4ではポリオレフィン粒子を上段から下段へと移送することを例示したが、エジェクタで生じる差圧を調整することにより、例示とは鉛直方向逆向きの下段から上段へ移送することも可能である。すなわち、この場合には、上流側の反応領域が下段に、下流側の反応領域が上段にそれぞれ配されることになる。
【0133】
エジェクタ作動用のガスの流量は、ポリオレフィン粒子を排出可能な量以上であれば特に制限はない。一方、目詰まり防止用のガスは、エジェクタ作動用のガス100体積部に対して10体積部程度であることが好ましい。なお、開閉弁80及びエジェクタ32の目詰まりを確実に防止する観点から、オレフィン重合反応装置10Cで運転している間、開閉弁80の開閉状態に関わらず、ラインL38を通じて開閉弁80の上流側及び下流側にガスを常時供給することが好ましい。
【0134】
オレフィン重合反応装置10Cは、噴流層の高さ(粉面85の位置)を測定するための静電容量式レベル計93及び差圧計90を備える。静電容量式レベル計93及び差圧計90を併用することにより、粉面85の変位をより正確に把握することができる。なお、差圧計90の接続ラインの閉塞防止のため、常時又は定期的にラインブローを行なうことが好ましい。
【0135】
図5に示すオレフィン重合反応装置10Dは、反応領域25内のドラフトチューブT1を利用し、ドラフトチューブT1内をドラフトチューブT1外のガス組成と異なるガス組成にできるようになっている。オレフィン重合反応装置10Dは、ドラフトチューブT1内と連通する配管L25を備え、これを通じてドラフトチューブT1内にガス又は液体が供給される。例えば、ドラフトチューブT1内側を外側と比較して水素量が少ないガス組成とすることによって、ドラフトチューブT1内において比較的分子量が大きいポリマーを製造することが可能となる。ガス組成が異なる領域を粒子が繰り返し通過し、粒子を徐々に成長させることによって、重合体の分子量分布を制御できるとともに、重合体構造上の均一性に優れた粒子を製造できる。
【0136】
オレフィン重合反応装置10Dは、単段の噴流層を形成できるように構成されたものであり、主として、鉛直方向に伸びる円筒12A、円筒12Aの上端を閉鎖する閉鎖板15、円筒12A内に配置されたそらせ板20、及び、円筒12Aの下端に設けられた筒状バッフル30を備えている。そらせ板20及び筒状バッフル30は、いずれも円筒12Aの軸と同軸に配置されることが好ましい。閉鎖板15の下面と、円筒12Aの内面と、筒状バッフル30の内面とによって反応領域25が形成されている。筒状バッフル30の下端のガス導入用開口から反応領域25内にガスを供給できるようになっている。なお、ラインL30の途中にはコンプレッサ54及び熱交換器65が配設されている。
【0137】
反応領域25の側壁面をなす円筒12Aには、ガス排出孔70が形成されており、反応領域25内のガスを排出できるようになっている。本実施形態に係るオレフィン重合反応装置10Dにあっては、円筒12Aの円周方向に沿って略等間隔となるように4つのガス排出孔70が形成されている。筒状バッフル30のガス導入用開口から上方に向けて流入したガスを、そのまま反応領域25の上方から排出するのではなく、4つのガス排出孔70から側方に排出することで、噴流層の環状粒子層に拡散するガス量を増大できる。その結果、噴流層の環状粒子層において、粒子とオレフィン含有ガスの固気接触効率が向上する。ガス排出孔70は、反応領域25内のそらせ板20の下端20bよりも上方であることが好ましく、そらせ板20の上端20aよりも上方であることがより好ましい。このような高さにガス排出孔70を設けることで、ガスと共にガス排出孔70から排出される粒子を十分に低減できる。なお、ここではガス排出孔70を4つ設置することを例示したが、ガス排出孔70の設置数はこれに限定されない。ガス排出孔70の設置数は、4を超えても4未満であってもよいが、より均一なガス排出を行うために、2以上であることが好ましい。また、オレフィン重合反応装置10Dは、単段の噴流層を形成するものであるが、多段の噴流層を形成する構成とすることもできる。この場合、少なくとも1つの反応領域内にドラフトチューブT1及びこれに連通する配管L25を設けてもよく、あるいは、各反応領域内にドラフトチューブT1及び配管L25をそれぞれ設けてもよい。
【0138】
上記実施形態においては、直管からなるドラフトチューブT1(図6(a)参照)を採用する場合を例示したが、以下のような構成のドラフトチューブを採用してもよい。例えば、図6(b)に示すドラフトチューブT2は、上端開口から下方に一定の径で伸びる直管部T2aと、この直管部T2aの縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部T2bとを有する。このような構成のドラフトチューブを使用することにより、噴流層の安定性及び環状部へのガス拡散性を向上させてもよい。なお、ガス拡散性をより一層向上させる観点から、ドラフトチューブT1の内側から外側にかけて貫通する貫通孔を複数設けてもよい。また、ドラフトチューブT2に複数の貫通孔を設ける場合、全体に設けてもよいが拡径部T2bのみに設けてもよい。
【0139】
また、上記実施形態においては、筒状バッフル30の下端にガス導入用開口が単に形成されている構成の装置を例示したが、噴流層の安定性をより一層向上させる観点から、ガス導入部を以下の構成としてもよい。例えば、筒状バッフル30のガス導入用開口の縁から下方に伸びる延長管(管状部)40を設けてもよい(図7参照)。更に、延長管40の内部に延長管40の長手方向に延在し且つ管路40aを水平方向に区画する隔壁等を設けてもよい。かかる延長管の具体的な態様を図8(a)−(c)に示す。図8(a)−(c)は、それぞれ延長管の長手方向に垂直な断面図を示しており、図8(a)に示す延長管41の隔壁40bは格子構造をなしている。図8(b)に示す延長管42の隔壁40cはハニカム構造をなしている。図8(c)に示す延長管43の隔壁40dは接円構造をなしている。この延長管43は、管路内に複数の円筒管が並行に配置された構造であり、他の構造と比較し、施工しやすいという利点がある。
【0140】
延長管の管路に設ける隔壁は、図8(a)−(c)に示した形態に限定されるものではなく、例えば、図9、10に示すような形態であってもよい。図9(a)及び(b)に示した隔壁40b,40cは、延長管の中心部に開口が形成されるように形成されている。図10(a)及び(b)に示した延長管44,45は、管路内に1つ又は2つの円筒部材が同軸に配置されたものであり、これらによって隔壁40e,40fが形成されている。
【0141】
延長管40の管路40aに隔壁を設ける代わりに、図11に示すように、管路40a内に上端が閉じられた円筒部材46を同軸に配置することによってガス導入部を形成してもよい。管路40a内に円筒部材46を配置することで、円筒部材46の外面と延長管40の内面とによってアニュラス部46aが形成される。かかる構成を採用することにより、管路40aの水平方向の断面をリング形状とすることができる。その結果、アニュラス部46aと断面積が同一であり且つ断面が円形の管路を採用した場合と比較し、ガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。アニュラス部46aの開口面積と同一の面積を有する円の直径をDOEとすると、直径DOEの円筒12の内径DRに対する比率(DOE/DR)は0.35以下であることが好ましい。ガス流の乱れを抑制する観点から、図11に示すように、円筒部材46の上側はテーパー状であることが好ましい。なお、円筒部材46は、少なくとも一端が閉じられたものであればよく、下端又は両端が閉じられたものを使用してもよい。
【0142】
また、ガス導入部の構成を図12に示すようなものにしてもよい。図12に示す延長管40は、その下端を閉じる閉鎖板47と、管路40aよりも細い管路48aを有し、閉鎖板47を貫通するように設けられたガス導入管48とを備える。更に、ガス導入管48の上端の直上には円錐バッフル(第2の円錐バッフル)23が配設されている。この円錐バッフル23は、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が延長管40の内面から離間されている。かかる構成を採用することにより、円錐バッフル23が粒子の落下防止板としての役割を果たすため、ガスの供給を停止した場合であってもガス導入用開口を通じて粒子が落下するのを十分に防止できる。また、噴流層の流動状態をより一層安定化させる観点から、図13に示すように、円錐バッフル23は、その下端の周縁部から下方に延在する筒状部23cを有することが好ましい。
【0143】
また、延長管40〜45の下端部をベルマウス形状としてもよい。図14にベルマウス形状を有する下端部40gを備えた延長管49を示す。上記のような隔壁、アニュラス部及び/又はベルマウス形状の下端部を有する延長管を採用することにより、筒状バッフル30のガス導入用開口から下方に落下しそうになった粒子に対する押し上げ効果が向上し、落下する粒子を一層低減できる。
【0144】
本発明においては、ガスと接触させる粒子の特性(平均粒径、比重、形状等)や反応条件(温度、圧力、ガス供給量等)に応じて、適した形状のドラフトチューブ及びガス導入部の構成を適宜組み合わせて使用することができる。
【実施例】
【0145】
本発明に係るオレフィン重合反応装置の反応領域内に形成される噴流層の安定性、圧力損失及び環状粒子層における粒子とガスとの固気接触効率を評価するため、実施例及び比較例を行った。噴流層の安定性は、圧力変動の平均偏差から評価した。また、粒子とガスとの固気接触効率の評価は、環状粒子層内のガス流速(Ua)を粒子の最小流動化速度(Umf)で除して求めた値(Ua/Umf)を比較することによって行った。
【0146】
<実施例1a〜3a及び比較例1a>
(実施例1a)
単段の噴流層を形成できる透明塩化ビニル樹脂製の円筒コールドモデル装置を準備した。この装置は、ガス導入オリフィスを有する逆円錐形状の筒状バッフルと円錐形状のそらせ板(第1の円錐バッフル)とからなる組み合わせ1組が円筒内に配置されている。ガス導入部の構成は、図7に示すものを使用した。
【0147】
円筒コールドモデル装置の内径DRを500mmとし、筒状バッフル下端のガス導入オリフィスの開口径DOを75mmとした。従って、本実施例においては、ガス導入用オリフィスの開口径DOの円筒の内径DRに対する比率(DO/DR)は、0.15である。また、逆円錐形状の筒状バッフルの内面と水平面とがなす傾斜角、及び、そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角は、いずれも65°とした。また、円錐状のそらせ板は、下端の外径が300mmであり、その内部は空洞となっている。この円筒装置の中心軸に、ガス導入オリフィスの開口径DOと同一となる内径75mm、長さ550mmのドラフトチューブをガス導入オリフィス部から60mm上方の位置に設置した。
【0148】
この装置内に、平均粒径900μmのポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスからガスを供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、上記ポリプロピレン粒子の最小流動化速度(Umf)は0.20m/sであった。また、導入するガスは室温の空気であり、毎分5.4m3供給した。
【0149】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。この状態にて、筒状バッフルの上端(円筒と筒状バッフルとの接合部)から下方50mmの位置における円筒内ガス供給部の圧力(噴流層全体の圧力損失に相当)を測定した。圧力は、変動幅も含めて定量的に評価できるように、高性能な差圧変換器((株)共和電業製差圧変換器PD−200GA)を用い、大気圧との差圧から200Hzの頻度で測定した。圧力はその測定値を平均化したものを採用し、圧力変動幅を測定値の平均偏差で評価した。また、筒状バッフルの上端(円筒と筒状バッフルとの接合部)から上方50mmの位置における円筒内(内面近傍)の圧力も同様の方法で測定するとともに、この位置の上方に形成されている粒子層の高さを測定し、環状粒子層における単位高さ当たりの圧力損失を算出した。なお、環状粒子層における単位高さ当たりの圧力損失を算出するに際しては、形成される環状粒子層を粒子充填層と見なし、粒子充填層の圧力損失を推算できるErgunの式を用いた。測定された圧力損失に対応するガス空塔速度を算出し、このガス空塔速度を環状粒子層におけるガス流速(Ua)とした。
【0150】
その結果、本実施例においては、噴流層の圧力損失は1.3kPa、圧力変動の平均偏差は0.023kPaであり、形成された噴流層は圧力損失が少なく、圧力変動幅が狭い非常に安定なものであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.023m/sと算出され、最小流動化速度の0.12倍であった。
【0151】
(実施例2a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを460mmとし、ガス導入オリフィス部から150mm上方の位置に設置したことの他は、実施例1aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.9kPa、圧力変動の平均偏差は0.10kPaであり、実施例1aには劣るものの、形成された噴流層は圧力損失が少なく、圧力変動幅が狭い安定なものであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.046m/sと算出され、最小流動化速度の0.23倍と、この面では実施例1aを上回る性能であった。
【0152】
(実施例3a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを150mmとし、ガス導入オリフィス部から460mm上方の位置に設置したことの他は、実施例1aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は2.3kPa、圧力変動の平均偏差は0.31kPaであり、実施例1aには劣るものの、形成された噴流層は圧力損失が少なく、圧力変動幅が狭い安定なものであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.080m/sと算出され、最小流動化速度の0.40倍と、この面では実施例1aを上回る性能であった。
【0153】
(比較例1a)
反応領域内にドラフトチューブを設置しなかったことの他は、実施例1aと同様にして、評価を行った。その結果、環状部ガス速度は0.110m/sと高い値を示したが、形成された噴流層は圧力損失が大きく、圧力変動幅も広く比較的不安定なものであった。
【0154】
【表1】
【0155】
<実施例1b〜3b及び比較例1b>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.59m/sとしたことの他は、上記実施例1a〜3a及び比較例1aと同様の条件で実施例1b〜3b及び比較例1bをそれぞれ実施した。表2に結果を示す。
【0156】
【表2】
【0157】
<実施例1c〜3c及び比較例1c>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.34m/sとしたことの他は、上記実施例1a〜3a及び比較例1aと同様の条件で実施例1c〜3c及び比較例1cをそれぞれ実施した。表3に結果を示す。
【0158】
【表3】
【0159】
<実施例4a〜7a及び比較例2a>
(実施例4a)
ガス導入部を図11に示す構成としたことの他は、実施例1aで使用したものと同様の構成の円筒コールドモデル装置を準備した。すなわち、筒状バッフル下端のガス導入オリフィス(開口径DO:150mm)の縁から下方に伸びる延長管(長さ:100mm、内径:150mm)を設けた。更に、この延長管内に上端が閉じられた円筒部材(外径:110mm)を装着し、延長管の内面と筒状部材の外面とによって形成されるアニュラス部を通じて装置内に空気が供給されるようにした。
【0160】
円筒コールドモデル装置の内径DRを500mmとし、従って、本実施例においては、ガス導入用オリフィスの開口径DOの円筒の内径DRに対する比率(DO/DR)は、0.30である。なお、ガス導入用オリフィスのアニュラス部開口面積基準の相当直径DOEは102mmであり、直径DOEの円筒の内径DRに対する比率(DOE/DR)は0.20である。また、逆円錐形状の筒状バッフルの内面と水平面とがなす傾斜角、及び、そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角は、いずれも65°とした。また、円錐状のそらせ板は、下端の外径が300mmであり、その内部は空洞となっている。この円筒装置の中心軸に、ガス導入オリフィスの開口径DOと同一となる内径150mm、長さ590mmのドラフトチューブをガス導入オリフィス部から120mm上方の位置に設置した。
【0161】
この装置内にポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスから室温の空気を毎分5.4m3で供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、ポリプロピレン粒子として、上述の実施例1aと同様、平均粒径が900μmであり且つ最小流動化速度Umfが0.20m/sのものを使用した。
【0162】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。本実施例においては、噴流層の圧力損失は0.71kPa、圧力変動の平均偏差は0.21kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.015m/sと算出され、最小流動化速度の0.08倍であった。
【0163】
(実施例5a)
下端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを420mmとしたことの他は、実施例4aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は0.72kPa、圧力変動の平均偏差は0.15kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.021m/sと算出され、最小流動化速度の0.11倍であった。
【0164】
(実施例6a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを300mmとしたことの他は、実施例5aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.1kPa、圧力変動の平均偏差は0.17kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.044m/sと算出され、最小流動化速度の0.22倍であった。
【0165】
(実施例7a)
上端の設置位置は変えずにドラフトチューブの長さを150mmとしたことの他は、実施例6aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.7kPa、圧力変動の平均偏差は0.56kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.091m/sと算出され、最小流動化速度の0.46倍であった。
【0166】
(比較例2a)
反応領域内にドラフトチューブを設置しなかったことの他は、実施例4aと同様にして、評価を行った。その結果、環状部ガス速度は0.120m/sと高い値を示したが、形成された噴流層は圧力損失が大きく、圧力変動幅も広く比較的不安定なものであった。
【0167】
【表4】
【0168】
<実施例4b〜7b及び比較例2b>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.59m/sとしたことの他は、上記実施例4a〜7a及び比較例2aと同様の条件で実施例4b〜7b及び比較例2bをそれぞれ実施した。表5に結果を示す。
【0169】
【表5】
【0170】
<実施例4c〜7c及び比較例2c>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.34m/sとしたことの他は、上記実施例4a〜7a及び比較例2aと同様の条件で実施例4c〜7c及び比較例2cをそれぞれ実施した。表6に結果を示す。
【0171】
【表6】
【0172】
<実施例8a〜11a>
(実施例8a)
直管のドラフトチューブの代わりに、上端から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有するドラフトチューブを使用したことの他は、実施例1aで使用したものと同様の構成の円筒コールドモデル装置を準備した(図6(b)及び図7参照)。本実施例においては、円筒装置の中心軸に、表7の実施例8aの欄に示す構成のドラフトチューブをガス導入オリフィスから270mm上方の位置に設置した。
【0173】
この装置内に、平均粒径900μmのポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスからガスを供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、上記ポリプロピレン粒子の最小流動化速度(Umf)は0.20m/sであった。また、導入するガスは室温の空気であり、毎分5.4m3供給した。
【0174】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。本実施例においては、噴流層の圧力損失は1.9kPa、圧力変動の平均偏差は0.14kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.059m/sと算出され、最小流動化速度の0.30倍であった。
【0175】
(実施例9a)
直管のドラフトチューブの代わりに、上端から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有するドラフトチューブを使用したことの他は、実施例4aで使用したものと同様の構成の円筒コールドモデル装置を準備した(図6(b)及び図11参照)。本実施例においては、円筒装置の中心軸に、表7の実施例9aの欄に示す構成のドラフトチューブをガス導入オリフィスから270mm上方の位置に設置した。
【0176】
この装置内に、平均粒径900μmのポリプロピレン粒子30kgを充填させて、上記ガス導入オリフィスからガスを供給して、ポリプロピレン粒子の流動状態を評価した。なお、上記ポリプロピレン粒子の最小流動化速度(Umf)は0.20m/sであった。また、導入するガスは室温の空気であり、毎分5.4m3供給した。
【0177】
本実施例においては、円筒の中心軸に設置したドラフトチューブ内に粒子濃度が希薄で、ガスとともに上向きに粒子が流れる噴流(スパウト)が形成され、その周囲を粒子が環状粒子層を形成して下降する、噴流層の流動状態が観察された。本実施例においては、噴流層の圧力損失は1.2kPa、圧力変動の平均偏差は0.37kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.129m/sと算出され、最小流動化速度の0.65倍であった。
【0178】
(実施例10a)
下端の設置位置は変えずにドラフトチューブの構成を表7の実施例10aの欄に示すものに変更したことの他は、実施例9aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.1kPa、圧力変動の平均偏差は0.36kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.143m/sと算出され、最小流動化速度の0.72倍であった。
【0179】
(実施例11a)
下端の設置位置は変えずにドラフトチューブの構成を表7の実施例11aの欄に示すものに変更したことの他は、実施例9aと同様にして、評価を行った。その結果、噴流層の圧力損失は1.3kPa、圧力変動の平均偏差は0.40kPaであった。また、環状粒子層におけるガス流速は0.152m/sと算出され、最小流動化速度の0.76倍であった。
【0180】
【表7】
【0181】
<実施例8b〜11b>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.59m/sとしたことの他は、上記実施例8a〜11aと同様の条件で実施例8b〜11bをそれぞれ実施した。表8に結果を示す。
【0182】
【表8】
【0183】
<実施例8c〜11c>
ガス空塔速度Uを0.46m/sとする代わりに、0.34m/sとしたことの他は、上記実施例8a〜11aと同様の条件で実施例8c〜11cをそれぞれ実施した。表9に結果を示す。
【0184】
【表9】
【符号の説明】
【0185】
10A,10B,10C,10D…オレフィン重合反応装置、12,12A…円筒(円筒部)、20…そらせ板(第1の円錐バッフル)、23…第2の円錐バッフル、25…反応領域、30…筒状バッフル(縮径部)、L31…粒子抜出管(移送手段)、32…エジェクタ(移送手段)、L33…粒子供給管(移送手段)、35a,35b…ダウンカマー管(移送手段)、L38…ガス供給管、80…開閉弁、100A,100B,100C…ポリオレフィン製造システム、T1,T2…ドラフトチューブ、T2a…ドラフトチューブの直管部、T2b…ドラフトチューブの拡径部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に伸びる円筒部と、
前記円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部と、
前記円筒部内に設けられ、前記ガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びるドラフトチューブと、
を備え、
前記縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の前記円筒部の内面とによって囲まれた反応領域内に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応装置。
【請求項2】
前記ドラフトチューブは、上端開口から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有し、当該拡径部が前記ガス導入用開口から離隔した位置まで伸びている、請求項1に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項3】
前記反応領域内において、前記ドラフトチューブの上端開口の上方に配設され、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が前記円筒部の内壁から離間されている第1の円錐バッフルを更に備える、請求項1又は2に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項4】
複数の前記反応領域を有し、当該反応領域をポリオレフィン粒子が順次通過する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項5】
前記複数の反応領域は、鉛直方向に並ぶようにそれぞれ形成され、上方の前記反応領域から下方の前記反応領域へとポリオレフィン粒子が順次通過する、請求項4に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項6】
前記複数の反応領域は、鉛直方向に並ぶようにそれぞれ形成され、下方の前記反応領域から上方の前記反応領域へとポリオレフィン粒子が順次通過する、請求項4に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項7】
上流側の前記反応領域から下流側の前記反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段を備える、請求項4〜6のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項8】
上流側の前記反応領域から下流側の前記反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段を備え、
前記移送手段は、前記上流側の反応領域からポリオレフィン粒子を抜き出す粒子抜出管と、前記粒子抜出管に設けられたエジェクタと、前記エジェクタからのポリオレフィン粒子を前記下流側の反応領域に供給する粒子供給管と有する、請求項4〜7のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項9】
前記縮径部の前記ガス導入用開口の縁から下方に伸びる管状部を更に備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項10】
前記管状部は、その管路内を水平方向に区画する隔壁を更に有する、請求項9に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項11】
少なくとも一端が閉じられ且つ前記管状部の内部に配設された円筒部材を更に備え、ガス導入用開口に至るまでの管路が前記円筒部材の外面と前記管状部の内面とによって形成されるアニュラス部を有する、請求項9に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項12】
前記管状部の下端を閉じる閉鎖板と、前記管状部の管路よりも細い管路を有し、前記閉鎖板を貫通するように設けられたガス導入管と、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が前記管状部の内面から離間されている第2の円錐バッフルとを更に備え、当該第2の円錐バッフルが前記ガス導入管の上端の直上に配設されている、請求項11に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項13】
前記第2の円錐バッフルは、当該第2の円錐バッフルの下端の周縁部から下方に延在する筒状部を有する、請求項12に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項14】
前記ドラフトチューブ内と連通しており、前記ドラフトチューブ内にガス又は液体を供給する配管を更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置を用い、ポリオレフィン粒子による噴流層を前記反応領域内に形成させてオレフィンの重合を行うポリオレフィン製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載のオレフィン重合反応装置を用い、ポリオレフィン粒子による噴流層を前記反応領域内に形成させてオレフィンの重合を行うポリオレフィン製造方法であり、前記配管を通じて前記ドラフトチューブ内にガス及び/又は液体を供給することにより、前記反応領域内において前記ドラフトチューブの内部及び外部に存在するガスの組成を互いに異なるものとするポリオレフィン製造方法。
【請求項17】
前記オレフィン重合反応装置にオレフィンを連続的に供給するとともに、前記オレフィン重合反応装置から未反応のオレフィンを含むガスを連続的に抜き出し、抜き出したガスを前記オレフィン重合反応装置に返送する工程と、
抜き出したガスの全部又は一部を冷却し、オレフィンを含む凝縮液を得る工程と、
を備える、請求項15又は16に記載のポリオレフィン製造方法。
【請求項18】
前記反応領域内に形成された噴流層の噴流部に前記凝縮液を供給する工程を更に備える、請求項17に記載のポリオレフィン製造方法。
【請求項19】
オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させて、ポリオレフィン粒子を形成するオレフィン事前反応装置と、
前記オレフィン事前反応装置の後段に接続された請求項1〜14のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置と、
を備えるポリオレフィン製造システム。
【請求項20】
請求項19に記載のポリオレフィン製造システムを用いてオレフィンの多段重合を行うポリオレフィン製造方法。
【請求項1】
鉛直方向に伸びる円筒部と、
前記円筒部に形成され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端にガス導入用開口を有する縮径部と、
前記円筒部内に設けられ、前記ガス導入用開口と離隔した位置から上方に伸びるドラフトチューブと、
を備え、
前記縮径部の内面と当該縮径部よりも上方の前記円筒部の内面とによって囲まれた反応領域内に噴流層が形成される噴流層型オレフィン重合反応装置。
【請求項2】
前記ドラフトチューブは、上端開口から下方に一定の径で伸びる直管部及び当該直管部の縁から下方に行くほど径が大きくなる拡径部を有し、当該拡径部が前記ガス導入用開口から離隔した位置まで伸びている、請求項1に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項3】
前記反応領域内において、前記ドラフトチューブの上端開口の上方に配設され、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が前記円筒部の内壁から離間されている第1の円錐バッフルを更に備える、請求項1又は2に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項4】
複数の前記反応領域を有し、当該反応領域をポリオレフィン粒子が順次通過する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項5】
前記複数の反応領域は、鉛直方向に並ぶようにそれぞれ形成され、上方の前記反応領域から下方の前記反応領域へとポリオレフィン粒子が順次通過する、請求項4に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項6】
前記複数の反応領域は、鉛直方向に並ぶようにそれぞれ形成され、下方の前記反応領域から上方の前記反応領域へとポリオレフィン粒子が順次通過する、請求項4に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項7】
上流側の前記反応領域から下流側の前記反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段を備える、請求項4〜6のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項8】
上流側の前記反応領域から下流側の前記反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段を備え、
前記移送手段は、前記上流側の反応領域からポリオレフィン粒子を抜き出す粒子抜出管と、前記粒子抜出管に設けられたエジェクタと、前記エジェクタからのポリオレフィン粒子を前記下流側の反応領域に供給する粒子供給管と有する、請求項4〜7のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項9】
前記縮径部の前記ガス導入用開口の縁から下方に伸びる管状部を更に備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項10】
前記管状部は、その管路内を水平方向に区画する隔壁を更に有する、請求項9に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項11】
少なくとも一端が閉じられ且つ前記管状部の内部に配設された円筒部材を更に備え、ガス導入用開口に至るまでの管路が前記円筒部材の外面と前記管状部の内面とによって形成されるアニュラス部を有する、請求項9に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項12】
前記管状部の下端を閉じる閉鎖板と、前記管状部の管路よりも細い管路を有し、前記閉鎖板を貫通するように設けられたガス導入管と、下方に行くほど外径が大きくなると共に上端が閉じられ且つ下端が前記管状部の内面から離間されている第2の円錐バッフルとを更に備え、当該第2の円錐バッフルが前記ガス導入管の上端の直上に配設されている、請求項11に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項13】
前記第2の円錐バッフルは、当該第2の円錐バッフルの下端の周縁部から下方に延在する筒状部を有する、請求項12に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項14】
前記ドラフトチューブ内と連通しており、前記ドラフトチューブ内にガス又は液体を供給する配管を更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置を用い、ポリオレフィン粒子による噴流層を前記反応領域内に形成させてオレフィンの重合を行うポリオレフィン製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載のオレフィン重合反応装置を用い、ポリオレフィン粒子による噴流層を前記反応領域内に形成させてオレフィンの重合を行うポリオレフィン製造方法であり、前記配管を通じて前記ドラフトチューブ内にガス及び/又は液体を供給することにより、前記反応領域内において前記ドラフトチューブの内部及び外部に存在するガスの組成を互いに異なるものとするポリオレフィン製造方法。
【請求項17】
前記オレフィン重合反応装置にオレフィンを連続的に供給するとともに、前記オレフィン重合反応装置から未反応のオレフィンを含むガスを連続的に抜き出し、抜き出したガスを前記オレフィン重合反応装置に返送する工程と、
抜き出したガスの全部又は一部を冷却し、オレフィンを含む凝縮液を得る工程と、
を備える、請求項15又は16に記載のポリオレフィン製造方法。
【請求項18】
前記反応領域内に形成された噴流層の噴流部に前記凝縮液を供給する工程を更に備える、請求項17に記載のポリオレフィン製造方法。
【請求項19】
オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させて、ポリオレフィン粒子を形成するオレフィン事前反応装置と、
前記オレフィン事前反応装置の後段に接続された請求項1〜14のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置と、
を備えるポリオレフィン製造システム。
【請求項20】
請求項19に記載のポリオレフィン製造システムを用いてオレフィンの多段重合を行うポリオレフィン製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−280867(P2010−280867A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137330(P2009−137330)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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