説明

オレフィン重合用の触媒成分

本発明は、エチレン及びそのオレフィンCH=CHR(式中、Rは1−12個の炭素原子をもつアルキル、シクロアルキル又は炭化水素基である)との混合物の重合用の触媒成分であって、Ti、Mg、ハロゲン及び内部電子供与体化合物としての1,2−ジエーテルに属する電子供与体を含むものに関する。本発明の触媒は、狭い分子量分布(MWD)と高い嵩密度をもつ(コ)ポリマーを製造するためのエチレンの(共)重合プロセスで好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンとそのオレフィンCH2=CHR(式中、Rは、1〜12個の炭素原子をもつアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)との混合物の重合用の、TiとMgとハロゲンを含む触媒成分で、特定の粒度と空孔率の組合せに特徴があるものに関する。本発明の触媒成分は、エチレンをスラリー(共)重合して非常に高収率と高嵩密度で(コ)ポリマーを与えるプロセスでの使用に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
エチレンポリマー製造のためのスラリー重合は既知の方法であり、この方法では、非重合性の炭化水素希釈剤が反応媒体に用いられている。この種の重合は、一般的には乱流反応器中で行われ、例えばループ状の連続管反応器あるいは連続攪拌槽反応器中で行われる。このいわゆるループ反応器はよく知られており、Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版 16巻、390頁に記載されている。これにより、同一種類の装置中でLLDPE樹脂とHDPE樹脂の両方を製造できる。
【0003】
この種の重合では、触媒のキーとなる性質は、高収率活高嵩密度で重合可能な能力である。各単一のステージでそれぞれ異なる分子量のポリマー分画の生産を行う多段プロセスが関係する場合、これが特に重要である。
【0004】
この場合には実際、低分子量分画は、通常触媒活性に悪影響を与える水素の存在下で行われる重合工程で製造される。これらの条件下では、もし触媒が十分な活性を持たない場合、全体のプロセス生産性が低くなる。
【0005】
他方、高いプラント生産性を得るためには、ポリマーの高嵩密度が必要である。EP1611175B1によると、粒度分布D50が20μm未満で5μmより大きなチーグラー−ナッタ触媒を用いてスラリーループ反応器技術でエチレンを重合すると、少量の大きなポリマー粒子と大きなポリマー嵩密度を得ることができ、この結果より大きな沈降効果を得ることができる。EP1611175B1に記載の実験例には、大きさ以外に、触媒の形状についての情報はまったく含まれていない。事実、この出願人は、高活性触媒を得るには、上記文書に提案されている解決法が不完全であることを経験している。
【0006】
WO2007/096255には、MgとTiとハロゲンを必須元素として含み、式(I)の電子供与体化合物を含む、実質的に球状の触媒が開示されている。
aCR1(OR4)−CR23(OR5)(I)
【0007】
式中、Raは、メチル基または水素であるか、R4と縮合して環を形成しており、R1とR2とR3は独立して、水素またはヘテロ原子を含んでいてもよいC1−C20炭化水素基であり、R4とR5は、C1−C20アルキル基もしくはR6CO−基(式中、R6はC1−C20アルキル基である)であるか、またはこれらがR及びR3とそれぞれ結合して環を形成していてもよい;ただし、Raが水素の場合にはR4とR5は同時にメチルではなく、RaとR4が環を形成する場合にはR5はC1−C20アルキル基である。このような触媒は、スラリーPE重合に有用であるといわれる。実施例1では、粒度が12μの触媒が使用されている。この出願人は、上記触媒を再生させて適当な条件下で試験し、その活性が改善されることを見出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP1611175B1
【特許文献2】WO2007/096255
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版 16巻、390頁
【発明を実施するための形態】
【0010】
この出願人は、驚くべきことに、一定の粒度と空孔率をもつ触媒成分が改善された活性を示し、スラリーPE重合に好適であることを見出した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、MgとTiとハロゲンを必須元素として含み、粒度が6〜11μmであり、水銀法で測定した1μm以下の空孔による空孔率(Pf)が少なくとも0.3cm3/gである、実質的に球状の触媒成分を提供することである。
【0012】
この空孔率(Pf)は、好ましくは0.4cm3/gより大きく、好ましくは0.4〜0.9cm3/gの範囲、より好ましくは0.4〜0.7cm3/gの範囲である。
【0013】
上記固体触媒成分(A)の、BET法で測定した表面積が100m2/g未満であることが、好ましくは30〜80m2/gの範囲であることが好ましくは、BET法で求めた空孔率は、一般的には0.1〜0.7m3/gに収まる。
【0014】
一つの好ましい側面では、本発明の触媒成分が、塩化マグネシウム(好ましくはマグネシウムジクロリド、より好ましくは活性型マグネシウムジクロリド)上に担持された、少なくとも一個のTi−ハロゲン結合をもつTi化合物を含んでいる。本出願において、「塩化マグネシウム」は、少なくとも一個の塩化マグネシウム結合を有するマグネシウム化合物を意味する。
【0015】
本発明の触媒成分において、最大1μmの空孔による空孔率の平均空孔半径は0.06μmより大きく、好ましくは0.08μmより大きく、より好ましくは0.085〜0.18μmの範囲である。
【0016】
好ましくは、この固体触媒成分は、7〜10μmに収まる平均径をもつ。実質的に球状の形状を持つ粒子とは、長軸と短軸の比が1であるか1.5より小さいことを、好ましくは1.3より小さいことを意味する。このような値は、既知の方法で、例えば光学顕微鏡または電子顕微鏡で決定できる。
【0017】
そのTi原子が少なくとも一個のTi−ハロゲン結合を含むチタン化合物に由来し、そのMg原子が塩化マグネシウムに由来する固体触媒成分が特に好ましい。本発明の触媒中のチタン原子の少なくとも70%が、より好ましくは少なくとも90%が、+4の原子価状態であることが好ましい。ある特定の実施様態においては、このマグネシウムジクロリドが活性型である。本発明の触媒成分中に活性型マグネシウムジクロリドが存在することは、触媒成分のエックス線スペクトルにおいて、非活性化マグネシウムジクロリド(通常、表面積が3m2/gより小さい)のスペクトル中に現れる主な強度反射が消失し、代わりに、上記主な強度反射の位置から移動した最大強度の位置にハローが存在することで、あるいは主な強度反射が、非活性化Mgジクロリドの相当する反射の一つより少なくとも30%大きな半値幅を持つことで、確認される。最も高活性な型は、固体触媒成分のエックス線スペクトル中にハローが現れるものである。
【0018】
最も高活性な型のマグネシウムジクロリドでは、非活性化塩化マグネシウムのスペクトルにおいて、面間距離が2.56Aに位置する反射に代えてハローが出現する。
【0019】
好ましいチタン化合物は、式TiXn(OR74-nのハロゲン化物または化合物である。なお、式中、1≦n≦3であり、Xは、ハロゲン、好ましくは塩素であり、R7は、C1−C10炭化水素基である。特に好ましいチタン化合物は、四塩化チタンとTiCl3OR7の化合物である。なお、式中、R7は、上と同じ意味を持ち、特にメチル、n−ブチルまたはイソプロピルから選ばれる。
【0020】
分子量分布を制御するため、本発明の触媒成分が電子供与体を含んでいてもよい。特に内部供与体の存在は、通常MWDを狭くする。
【0021】
MWDは、流動学的挙動に影響を与え、このため加工性や最終的な機械的性質に影響を与えるため、エチレンポリマーの重要な特徴の一つである。特に、狭いMWDのポリマーは、製品の変形や収縮率の問題を最小限にすることができるため、塗膜や射出成型に好適である。エチレンポリマーの分子量分布の幅は、一般的には、荷重が21.6Kgで測定したメルトインデックス(メルトインデックスF)と荷重が2.16Kgで測定した(メルトインデックスE)との間の比率であるメルトフローレートF/Eで表わされる。メルトインデックスの測定は、ASTM−D1238により190℃で行った。
【0022】
狭い分子量分布をもつポリマーを与えることのできる触媒成分は、広い分子量分布をもつポリマー組成物を製造するのにも有用である。事実、最もよく使用される広いMWDのポリマーの製造方法の一つは、触媒粒子上で異なる長さの高分子を順次形成しながら各工程で異なる分子量のポリマー画分を製造する多段階プロセスである。
【0023】
電子供与体化合物(ED)は、エーテルやエステル、アミンから選ぶことができる。この電子供与体は、最終の固体触媒成分中のED/Tiモル比が0.01〜5の範囲となる、好ましくは0.05〜1、特に0.1〜0.5の範囲となるような量で存在できる。
【0024】
この電子供与体は、式(I)のものから選ばれることが好ましい。
aCR1(OR4)−CR23(OR5)(I)
【0025】
式中、Raは、メチル基または水素であるか、R4と縮合して環を形成しており、R1とR2とR3は独立して、水素またはヘテロ原子を含んでいてもよいC1−C20炭化水素基であり、R4とR5は、C1−C20アルキル基もしくはR6CO−基(式中、R6はC1−C20アルキル基である)であるか、またはこれらがR及びR3とそれぞれ結合して環を形成していてもよい;ただし、Raが水素の場合にはR4とR5は同時にメチルではなく、RaとR4が環を形成する場合にはR5はC1−C20アルキル基である。
【0026】
好ましくは、式(I)の電子供与体化合物中のRaはメチルである。
【0027】
好ましくは、式(I)の電子供与体化合物中のR1〜R3は水素である。R4とR5がアルキル基である場合、これらは、C1−C5アルキル基から選ばれることが好ましく、メチルまたはエチルから選ばれることがより好ましい。これらが両方ともにメチルであることが好ましい。R6CO基中では、アセチルが好ましい。
【0028】
具体的な式(I)の電子供与体化合物は、エチレングリコールジアセテート、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、メチルテトラヒドロフルフリルエーテルである。1,2−ジメトキシプロパンが最も好ましい。
【0029】
実質的に球状の触媒成分を製造するための一つの好ましい方法は、必要なら式(I)の電子供与体の存在下で、少なくとも一個のTi−ハロゲン結合をもつチタン化合物を、十分に小さなサイズの実質的に球状粒子状の、式MgCl2・nROH付加物(式中、nは一般的には1から6であり、ROHはアルコールである)と反応させることである。この球状のMgCl2・nROH付加物は、溶融付加物から、これらの付加物を液状の炭化水素中に乳化させた後、急冷固化させて製造できる。
【0030】
混合機内の条件を、レイノルズ(REM)数で10,000〜80,000、好ましくは30,000〜80,000に維持しながらこの系に高エネルギーの剪断応力をかけることで、適度に小さな平均粒度が得られる。混合機中の液体の流動の種類は、式Re=NL2・d/ηで定義される上述の修正レイノルズ数(ReM)で記述される(式中、Nは、単位時間当たりの攪拌器の回転数であり、Lは、攪拌器の長さ、dは、エマルジョンの密度、ηは動的粘度である)。上述の理由で、付加物の粒度を下げる方法の一つは、系に加わる剪断応力を増加させることであるということとなる。これは、一般に攪拌器の回転数の増加により行うことができ、あるいはWO05/039745に記載のように(なお、本文献の内容を引用として組み込む)、適度に微細な大きさの分散相粒子を含むエマルジョンを製造する特定の装置を用いて行うことができる。
【0031】
WO02/051544によると(なお、本文献の内容を引用として組み込む)、急冷ステージでのエマルジョンの移動の間に、また急冷の間に高レイノルズ数を維持することで特に良い結果が得られる。系に十分なエネルギーを加えると、付加物の所望微細度の球状粒子を得ることができる。
【0032】
このようにして得られた付加物粒子は、下の特性評価の部に記載の方法で求めた平均粒度として6〜11μm、好ましくは6〜10mをもち、式(P90−P10)/P50で計算した粒度分布(SPAN)が1.2より小さいことが好ましい。なお、上記の式において、同一の方法で求めた粒度分布曲線において、P90は、粒子全量の90%がこの値より小さな直径をもつ直径の値であり、P10は、粒子全量の10%がこの値より小さな直径をもつ直径の値であり、P50は、粒子全量の50%がこの値より小さな直径をもつ直径の値である。
【0033】
WO05/039745とWO02/051544の記述通りに行うと、この粒度分布は生得的に狭くなりうる。しかしながら、この方法に代えて、あるいはこのSPANをさらに狭くするために、適当な手段で、例えば機械的篩い及び/又は流体流中での湿式粉砕で、最も大きな画分及び/又は最も小さな分画を除くこともできる。
【0034】
特に、必要なら炭化水素系溶媒の存在下で、MgCl2・nROHが、過剰量の、式(I)の電子供与体を含む液体TiCl4と反応させられる。反応温度は当初0〜25℃であり、その後80〜135℃に上げられる。次いで、この固体をもう一度TiCl4と反応させ、洗液中に塩素イオンが検出できなくなるまで液状炭化水素で洗浄することができる。使用する場合、式(I)の電子供与体化合物をチタン化合物とともに反応系に加えることが好ましい。しかしながら、これをまず付加物のみと反応させ、次いで得られる生成物をチタン化合物と反応させてもよい。あるいは、この電子供与体化合物を、付加物とチタン化合物の間の反応が完了した後で添加することができる。
【0035】
この反応は、各工程の後で固体中間産物を単離しながら回分式に行うことができ、あるいは固体出発付加物が回分的に添加され、液体反応物が連続的に供給される、液体供給口と濾過手段とを備えた反応装置中で半連続的な方式で行うことができる。このような技術が、例えばWO02/48208に開示されている(なお、本文献の内容を引用として組み込む)。
【0036】
本発明の一つの好ましい側面においては、チタン化合物との反応の前に、この球状化付加物を、50〜150℃の範囲の温度での熱的な脱アルコール化にかけ、アルコール含量を、塩化マグネシウム1モルに対して2モル未満の値に、好ましくは0.3〜1.5モルの値とする。
【0037】
必要なら、上記の脱アルコール後の付加物を、最後に、アルコールのOH基と反応しこの付加物をさらに脱アルコール化することの可能な化学反応剤で処理し、アルコール含量を一般的には0.5モル未満の値にまで下げることができる。
【0038】
本発明の固体触媒成分は、既知の方法により有機アルミニウム化合物との反応で、オレフィン重合用触媒に変換される。
【0039】
特に、本発明の目的は、オレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12個の炭素原子をもつ炭化水素基である)の重合用触媒であって、
(a)上述の固体触媒成分と、
(b)アルキルアルミニウム化合物と、必要なら、
(c)外部電子供与体化合物との反応の生成物を含む触媒である。
【0040】
このアルキルAl化合物は、トリメチルアルミニウム(TMA)やトリエチルアルミニウム(TEAL)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA))、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物から選ばれることが好ましい。また、アルキルアルミニウムハロゲン化物、また特にアルキルアルミニウムクロリド、具体的にはジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)やジイソブチルアルミニウムクロリド、Al−セスキクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド(DMAC)が使用できる。トリアルキルアルミニウムとアルキルアルミニウムハロゲン化物の混合物を使用することもできるし、また特定の場合は使用が好ましい。中でもTEALとDEACの混合物が特に好ましい。TEALとTIBAの単独での利用、あるいは混合物としての利用も好ましい。外部電子供与体化合物は、エーテル、エステル、アミン、ケトン、ニトリル、シラン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。特に、C2−C20の脂肪族エーテル、特に好ましくは3〜5個の炭素原子をもつ環状エーテルや、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテルから選ばれることが好ましい。
【0041】
上述の成分(a)〜(c)は、重合条件下にある反応器に個別に供給して、その活性を活用してもよい。0.1〜120分間の範囲の、好ましくは1〜60分間の範囲の時間、必要なら少量のオレフィンの存在下で、上記成分を前接触させることも好ましい。この前接触は、温度が0〜90℃の範囲にある、好ましくは20〜70℃の範囲にある液体希釈剤中で行うことができる。
【0042】
上述のように、本発明の触媒は、いかなる種類のスラリー重合プロセスでも使用できる。これらは、不活性媒体中でのスラリー重合に特に適しており、この重合は攪拌槽反応器中あるいはループ反応器中で連続的に実施できる。ある好ましい実施様態においては、上述の小さな平均粒度をもつ固体触媒成分は、各反応器中で異なる分子量及び/又は異なる組成のポリマーを製造する、2個以上のカスケードループまたは攪拌槽反応器での使用に特に適している。これらの触媒は、いずれのオレフィンも重合できることが好ましく、α−オレフィン、例えばエチレンやプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等を重合できることが好ましい。しかしながら上述のように、本発明の触媒は、高嵩密度で、場合によっては狭い分子量分布をもつエチレンポリマーを、非常に高収率で製造するのに特に適している。
【0043】
上述のエチレンホモポリマーやコポリマーに加えて、本発明の触媒は、また、エチレンと一種以上の3〜12個の炭素原子をもつα−オレフィンのコポリマーで、エチレン由来単位のモル含量が80%を越えるものと、エチレンとプロピレンの弾性コポリマーと、エチレンとプロピレンと少量のジエンからなる弾性三元重合体で、エチレン由来単位の重量含量が約30〜70%であるものとからなる非常に低密度のポリエチレン、また超低密度のポリエチレン(0.920g/cm3〜0.880g/cm3のVLDPEとULDPE)の製造に適している。
【0044】
以下に、本発明をさらに説明するために実施例を示すが、これらは本発明を制限するのではない。
【実施例】
【0045】
特性評価
特性は以下の方法で測定する:
付加物と触媒の平均粒度:「マルベルンマスターサイザー2000」装置を使用し、単色レーザー光の光回折の原理を基に測定する。平均径はP50である。
窒素での空孔率と表面積:BET法で測定する(使用装置は、カルロエルバ社製ソープトマチック1900)。
水銀での空孔率と表面積:カルロエルバ社製「ポロシメーター2000シリーズ」を使用して測定。空孔率は、加圧下での水銀の吸収で測定する。この測定のために、水銀貯槽と高真空ポンプ(1×10-2mbar)に連結した校正済みの膨張計CD3(直径:3mm、カルロエルバ社製)を使用する。一定重量の試料をこの膨張計に入れる。次いでこの装置を高真空(<0.1mmHg)下におき、これらの条件下に20分間維持する。次いで、この膨張計を水銀貯槽に連結し、膨張計の高さが10cmのレベルに達するまで、その中に水銀をゆっくりと流入させる。膨張計と真空ポンプをつなぐバルブを閉め、次いで水銀圧力を窒素で徐々に140Kg/cm2にまで上げる。圧力効果のため水銀が空孔中に入り、そのレベルが材料の空孔率に応じて低下する。空孔率(cm3/g)、総空孔率と1μmまでの空孔による空孔率の両方と、空孔分布曲線、平均孔径は、水銀の体積減少量と印加圧力との関数である積分空孔分布曲線から直接計算する(これらのデータの全て、ポロシメーターに連結したコンピューターにより得られる。)
嵩密度:DIN−53194
MgとTi(tot)の測定:「ICPスペクトロメーターARLアキュリス」を使用し高周波プラズマ発光分光法(ICP)で行った。試料は、「溶融」白金るつぼ中で、0.1÷0.3gの触媒と3gのメタホウ酸/テトラホウ酸リチウム(1/1)混合物を精秤して作製した。このるつぼを、燃焼工程のための弱いブンゼン火炎の上におき、次いで数滴のKI溶液を添加後に、完全燃焼のための特別な装置「クライセフラキシ」に入れた。残渣を、5%(v/v)のHNO3溶液で捕集し、次いで、以下の波長でICP分析を行った:マグネシウム、279.08nm;チタン、368.52nm;アルミニウム、394.40nm。
Clの測定:電位差滴定で行った。
OR基の測定:ガスクロマトグラフィー分析
窒素での空孔率と表面積:BET法(使用装置:カルロエルバ社製ソープトマチック1900)。
メルトインデックス:メルトインデックス(M.I.)は、190℃でASTM−D1238に準じて、荷重が:
2.16Kg(MIE=MI2.16)と
21.6Kg(MIF=MI21.6)で測定した。
比率F/E、即ちMIF/MIE=MI21.6/MI2.16を、メルトフローレート(MFR)と定義する。
HDPE重合試験のための一般的な方法:70℃でN2流で脱気した4.5リットルのステンレス鋼オートクレーブに、1.6リットルの無水ヘキサンと、報告量の触媒成分と0.5gのトリエチルアルミニウム(TEAL)を投入した。全体を攪拌し、50℃に加熱し、その後4barのH2と8barのエチレンを供給した。反応器温度を75℃にまで上げて重合を3時間続けた。この間はエチレンを供給して圧力を一定に保った。最後に反応器の圧力を下げ、回収されたポリマーを真空下60℃で乾燥させた。
【0046】
比較例1
球状のMgCl2・EtOH付加物の調整
球状での平均径が約12μmの、約3モルのアルコールを含む塩化マグネシウム/アルコール付加物を、EP1673157の実施例2に記載の方法により作製した。
固体成分の調整
一般的な方法で製造した球状の支持体をN2流下で50〜150℃の温度範囲で熱処理して、残留エタノール含量が約35%(各MgCl2モル当り1.1モルのエタノール)である球状粒子を得た。
【0047】
攪拌器を備えた2lのガラス反応器に、1LのTiCl4と70gの上記のようにして作製した支持体を投入し、また0℃の温度で3.6mlの1,2−ジメトキシプロパン(1,2−DMP)を投入した(Mg/DMP:16mol/mol)。全体の混合物を加熱し、攪拌下で60分間100℃に維持した。その後攪拌を停止し、液体をサイホンで除いた。60℃でフレッシュなヘキサン(1リットル)で二回洗浄し、ついで、さらに二回、室温でヘキサン洗浄を行った。球状の固体成分を取り出し、真空下、約50℃で乾燥させた。
【0048】
この固体の組成は次の通りである。
【0049】
合計チタン 4.2重量%
Mg 18.3重量%
1,2−DMP 2.4重量%
次いで、このようにして調整した触媒を、一般的な重合方法でのエチレンの重合に用いた。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例2
球状のMgCl2・EtOH付加物の調整
EP1673157の実施例3の方法で、溶融付加物/鉱油の重量供給比率が0.06であり、球状で平均径が約9μmである、約3モルのアルコールを含む塩化マグネシウム/アルコール付加物を調整した。実施例1に開示したのと同じ方法及び手順で、アルコール含量を低下させ触媒を調製した。最終の個体組成は次のとおりである。
合計チタン 6重量%
Mg 17.7重量%
1,2−DMP 2.7重量%
本明細書に記載の方法で求めた空孔率は0.5cm3/gであった。表1に、実施例1の触媒と比較の上で、重合データを報告する。
【0051】
実施例3
攪拌器とフィルターを備えた2lのガラス反応器に、1.6LのTiCl4を入れた。内温を0℃とし、320gの上記のようにして調整した支持体と15.4mlの1,2−ジメトキシプロパン(1,2−DMP)とを投入した(Mg/DMP:20mol/mol)。全体の混合物を加熱し、攪拌下で120分間100℃で維持した。その間、前もって加熱したTiCl4を1.6L/hの速度で投入し、この液体を反応器から連続的に抜き出し、この懸濁液の初期の体積を一定に保った。60℃で三回フレッシュなヘキサン(1.6L)で洗浄し、さらに二回、室温でヘキサン洗浄を行った。球状の固体成分を取り出し、真空下約50℃で乾燥させた。
【0052】
この固体の組成は次の通りであった。
【0053】
合計チタン 5.6重量%
Mg 18.5重量%
1,2−DMP 2.8重量%
この重合結果を表1に報告する。
【0054】
比較例4
平均径が約5ミクロンで空孔率が0.3cm3/g未満である市販の触媒を、7barのエチレンのみを供給し、重合時刻が2時間であった以外は、上記の一般的な手法に記載のものと同じ条件下での重合試験に使用した。この重合結果を表1に報告する。
【0055】
実施例5
実施例2の触媒を、比較例4に記載のものと同じ条件下での重合試験に使用した。このデータを表1に報告する。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgとTiとハロゲンとを含み、平均粒度が6〜11μmで、水銀法で測定した1μm以下の空孔による空孔率(Pf)が少なくとも0.3cm3/gである実質的に球状の触媒成分。
【請求項2】
上記空孔率(Pf)が0.4cm3/gより大きい請求項1の触媒成分。
【請求項3】
BET法で求めた表面積が100m2/g未満である請求項1の触媒成分。
【請求項4】
上記平均粒度が7〜10μmの範囲にある請求項1の触媒成分。
【請求項5】
さらに式(I)の電子供与体化合物を含む請求項1の触媒成分:
aCR1(OR4)−CR23(OR5)(I)
(式中、Raは、メチル基もしくは水素であるか、またはR4と縮合して環を形成しており、
1とR2とR3は独立して、水素であるか、またはヘテロ原子を含んでいてもよいC1−C20炭化水素基であり、
4とR5は、C1−C20アルキル基もしくはR6CO−基(式中、R6はC1−C20アルキル基である)であるか、またはこれらがR及びR3とそれぞれ結合して環を形成していてもよい;ただし、Raが水素の場合にはR4とR5は同時にメチルではなく、RaとR4が環を形成する場合にはR5はC1−C20アルキル基である)。
【請求項6】
4とR5が、C1−C5アルキル基から選ばれるアルキル基である請求項5の触媒成分。
【請求項7】
1〜R3が水素である請求項5の触媒成分。
【請求項8】
4とR5がメチルである請求項5の触媒成分。
【請求項9】
式(I)の電子供与体が、エチレングリコールジアセテート、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、メチルテトラヒドロフルフリルエーテルから選ばれる請求項5の触媒成分。
【請求項10】
Ti原子が少なくとも一個のTi−ハロゲン結合を含むチタン化合物に由来し、Mg原子が塩化マグネシウムに由来することを特徴とする請求項5の触媒成分。
【請求項11】
式CH2=CHR(式中、Rは水素または1−12個の炭素原子をもつ炭化水素基である)のオレフィンの重合用の触媒であって、該触媒が、
(a)前記請求項のいずれか一項に記載の固体触媒成分と
(b)アルキルアルミニウム化合物との間の反応生成物を含む触媒。
【請求項12】
オレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素または1−12個の炭素原子をもつ炭化水素基である)の重合方法であって、該方法が請求項11に記載の触媒の存在下で行われる方法。

【公表番号】特表2013−521388(P2013−521388A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556440(P2012−556440)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052985
【国際公開番号】WO2011/110444
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】