説明

オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体及びその製造方法

【課題】新規なオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を提供すること。
【解決手段】オレフィンを重合させることにより得られるポリオレフィンセグメントと(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させることにより得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルセグメントが共有結合により結合し、モルフォロジーがミクロ相分離構造を有するオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンと極性モノマーのブロック共重合はポリオレフィン化学の中で特に望まれている材料である。オレフィン/極性モノマーブロック共重合体は接着性、染色性、水分吸着能力にすぐれた親水性材料として知られている。
近年、オレフィンに代表される非極性モノマーと(メタ)アクリル酸エステルに代表される極性モノマーを共重合させる試みが報告されている。
【0003】
有機ランタノイド錯体を用いた1−ヘキセンや1−ペンテンなどのα−オレフィンとメチルメタクリレートのブロック共重合が報告されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。ここで得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体は、ホモポリマーの混合物との比較として、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと略す。)によりモルフォロジーの観察が行われているが、明らかなミクロ相分離構造は示していない。
【0004】
第4族遷移金属錯体を重合触媒成分として用い、エチレンとメチルメタクリレートとのブロック共重合(例えば非特許文献3参照)、プロピレンとメチルメタクリレートとのブロック共重合(例えば非特許文献4参照)が報告されているが、生成したブロック共重合体のモルフォロジー観察は行われていない。
【特許文献1】特開平9−87313号公報
【非特許文献1】Macromolecules 2000,33,7679.
【非特許文献2】Polymer International 2004,53,1017.
【非特許文献3】Macromol.Rapid.Commun.2001,22,1147.
【非特許文献4】Macromol.Chem.Phys.2002,203,2329.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況において、本発明は、新規なオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、モルフォロジーがミクロ相分離構造を有する新規なオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体及びその製造方法を見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記[1]〜[10]を提供するものである。
[1]:
オレフィンを重合させることにより得られるポリオレフィンセグメントと(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させることにより得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルセグメントが共有結合により結合し、モルフォロジーがミクロ相分離構造を有するオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
[2]:
オレフィンが炭素原子数2〜20のオレフィンである[1]に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
[3]:
オレフィンが1−ヘキセンである[1]又は[2]に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
[4]:
(メタ)アクリル酸エステル化合物がメチルメタクリレートである[1]から[3]のいずれかに記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
[5]:
オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を構成する各モノマーの組成比が、オレフィン≦27mol%、(メタ)アクリル酸エステル化合物≧73mol%の範囲である[1]から[4]のいずれかに記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
[6]:
オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の分子量を示す値が以下の範囲である[1]から[5]のいずれかに記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
Mn≧22,000かつ1.5>Mw/Mn>1.1
(式中、Mnはポリスチレン換算数平均分子量Mnを表し、Mwはポリスチレン換算重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分子量分布を表す。)
[7]:
式(1)

(式中、Mは元素の周期律表の第4族元素を表し、Aは元素の周期律表の第14族元素を表し、Dは元素の周期律表の第16族元素を表し、Cpはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基を表し、R、R、R、R、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたシリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基を表し、
ここで、R〜Rにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又は炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい、
とRは結合して環を形成していてもよく、RとR、RとR、RとRは、それぞれ任意に結合して環を形成していてもよく、
及びXは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、X及びXにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、それぞれ、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属錯体と下記化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物とを接触させることにより得られる重合用触媒を用いることを特徴とする[1]から[6]のいずれかに記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法。
(B1)式 BQ
(B2)式 G(BQで表されるホウ素化合物;
(B3)式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は2置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。)
[8]:
最初にオレフィンを重合させて、次に(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させることを特徴とする[7]に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法。
[9]:
[7]又は[8]に記載の製造方法により製造されるオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
[10]:
溶媒分別によりオレフィン単独重合体又は(メタ)アクリル酸エステル単独重合体を除去することを特徴とする[1]から[6]のいずれか1項に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の精製方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により得られるオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体は、例えば、極性基を有さないポリオレフィンと、金属をはじめとする種々の極性物質とのいずれとも親和性がよく、相溶化剤、接着剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
〔オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体〕
本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体とは、オレフィンが重合した部分(以下、ポリオレフィンセグメントと略す。)と(メタ)アクリル酸エステル化合物が重合した部分(以下、ポリ(メタ)アクリル酸エステルセグメントと略す。)とが、共有結合して1つのポリマー鎖を形成している共重合体のことを表す。
【0010】
このような共重合体は、疎水性部であるポリオレフィンセグメントと極性官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルセグメントを含むことから、非極性材料と極性材料との相溶化剤として利用することができる。
【0011】
また、本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体は、疎水性材料であるポリオレフィンの表面改質剤として利用することにより、ポリオレフィン表面を親水性化し、極性材料との接着性を改良することができる。
【0012】
また、本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体は、炭酸カルシウムや酸化チタン及び水酸化マグネシウム等のフィラー改質剤としても利用することができる。
【0013】
オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体は、フィルムや繊維、発泡体シート及び各種成形体として用いることができる。また、得られたオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を他の重合体への添加剤として用いることができる。
【0014】
本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体は、2種の互いに非相溶なポリマーセグメントから形成されるため、化学的に異なるポリマーセグメント間の反発から生じる短距離相互作用により、それぞれのポリマーセグメントからなる領域(ミクロドメイン)に相分離する。ここで、ポリマーセグメントは互いに共有結合していることから生じる長距離相互作用の効果により、各ミクロドメインが特定の秩序をもって配置する。各ポリマーセグメントからなるミクロドメインが集合して作り出す構造は、ミクロ相分離構造と呼ばれる。
【0015】
本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体のモルフォロジーは、細かなミクロ相分離構造を有することが特徴である。該モルフォロジーはポリオレフィン部とポリ(メタ)アクリル酸エステル部の組成比により種々の構造をとることがあり、例えば、球状ミセル構造、ラメラ構造、シリンダー構造、ジャイロイド構造等の結晶状構造が挙げられる。
【0016】
オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体のモルフォロジーを観察する方法としては特に限定はされないが、例えば、フィルムを染色剤を用いて染色した後、薄片化して、TEMにより観察する方法が挙げられる。
かかる染色に用いられる染色剤としては、例えば、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム、りんタングステン酸、クロロスルフィン酸/酢酸ウラニル、四酸化オスミウム/ヒドラジン、硫化銀等が挙げられる。より具体的には、ポリエチレンやポリプロピレン等の飽和炭化水素の染色には、四酸化ルテニウム、りんタングステン酸、クロロスルフィン酸/酢酸ウラニルが用いられる。不飽和炭化水素の染色には、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウムが用いられる。エステル類の染色には、四酸化オスミウム/ヒドラジン、りんタングステン酸、硫化銀等が用いられる。
【0017】
〔オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法〕
本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法としては、例えば、オレフィン及び(メタ)アクリル酸エステル化合物のいずれをも重合することが可能な重合用触媒を用いて製造する方法が挙げられる。
【0018】
かかる重合用触媒としては、例えば、式(1)

(式中、Mは元素の周期律表の第4族元素を表し、Aは元素の周期律表の第14族元素を表し、Dは元素の周期律表の第16族元素を表し、Cpはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基を表し、R、R、R、R、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたシリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基を表し、
ここで、R〜Rにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基及び炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい、
とRは結合して環を形成していてもよく、RとR、RとR、RとRは、それぞれ任意に結合して環を形成していてもよく、
及びXは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、X及びXにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属錯体と下記化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物とを接触させることにより得られる重合用触媒が挙げられる。
(B1)式 BQ
(B2)式 G(BQで表されるホウ素化合物;
(B3)式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は2置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。)
【0019】
前記式(1)で示される遷移金属錯体(以下、遷移金属錯体(1)と略す。)においてCpで示されるシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基としては、例えば、置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基が挙げられる。
具体的には、シクロぺンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロぺンタジエニル基、n−プロピルシクロペンタジエニル基、イソプロピルシクロペンタジエニル基、n−ブチルシクロペンタジエニル基、sec−ブチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロぺンタジエニル基、テトラヒドロインデニル基、オクタヒドロフルオレニル基、フェニルシクロぺンタジエニル基、トリメチルシリルシクロぺンタジエニル基、tert−ブチルジメチルシリルシクロぺンタジエニル基などの置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基、
インデニル基、メチルインデニル基、ジメチルインデニル基、エチルインデニル基、n−プロピルインデニル基、イソプロピルインデニル基、n−ブチルインデニル基、sec−ブチルインデニル基、tert−ブチルインデニル基、フェニルインデニル基などの置換もしくは無置換のインデニル基、
フルオレニル基、2−メチルフルオレニル基、2,7−ジメチルフルオレニル基、2−エチルフルオレニル基、2,7−ジエチルフルオレニル基、2−n−プロピルフルオレニル基、2,7−ジ−n−プロピルフルオレニル基、2−イソプロピルフルオレニル基、2,7−ジイソプロピルフルオレニル基、2−n−ブチルフルオレニル基、2−sec−ブチルフルオレニル基、2−tert−ブチルフルオレニル基、2,7−ジ−n−ブチルフルオレニル基、2,7−ジ−sec−ブチルフルオレニル基、2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル基、3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル基、2−フェニルフルオレニル基、2,7−ジ−フェニルフルオレニル基、2−メチルフェニルフルオレニル基などの置換もしくは無置換のフルオレニル基が挙げられ、
好ましくはシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0020】
遷移金属錯体(1)においてAで示される元素の周期律表の第14族元素としては、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子などが例示され、好ましくは炭素原子、ケイ素原子が例示される。
【0021】
遷移金属錯体(1)においてDで示される元素の周期律表の第16族元素としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子などが例示され、好ましくは酸素原子が例示される。
【0022】
遷移金属錯体(1)においてMで示される元素の周期律表の第4族元素としては、例えば、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子などが例示され、好ましくはチタン原子が例示される。
【0023】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示され、好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0024】
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びn−エイコシル基が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基等が挙げられる。
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、ハロゲン置換の炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、これらのアルキル基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0025】
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、炭素原子数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが例示され、好ましはフェニル基が挙げられる。
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、ハロゲン置換の炭素原子数6〜20のアリール基の具体例としては、これらのアリール基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0026】
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、炭素原子数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(4,6−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが例示され、好ましくはベンジル基が挙げられる。
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいてハロゲン置換の炭素原子数7〜20のアラルキル基の具体例としてはこれらのアラルキル基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0027】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭化水素基で置換されたシリル基の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが例示される。かかる炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基の具体例としては、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の一置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換された二置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換された三置換シリル基などが例示され、好ましくはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
これらの置換シリル基を構成する炭化水素基としては、上記のような炭化水素基のほかにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換された炭化水素基が例示される。
【0028】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭素原子数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基などが例示され、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
ハロゲン置換炭素原子数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、これらのアルコキシ基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0029】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基などの炭素原子数6〜20のアリールオキシ基などが例示される。又はハロゲン置換の炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、上記炭素原子数6〜20のアリールオキシ基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0030】
置換基R、R、R、R、R及びRおいて、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基などが例示され、好ましくはベンジルオキシ基が挙げられる。
ハロゲン置換の炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基の具体例としては、これらのアラルキルオキシ基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0031】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基とは、2つの炭化水素基で置換されたアミノ基であって、ここで炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数1〜20のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが例示され、これらの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。かかる炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、tert−ブチルイソプロピルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビストリメチルシリルアミノ基、ビス−tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、カルバゾリル基、ジヒドロインドリル基、ジヒドロイソインドリル基などが例示され、好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基等が挙げられる。
これらの置換アミノ基を構成する炭化水素基としては、上記のような炭化水素基のほかにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換された炭化水素基が例示される。
【0032】
とRは結合して環を形成していてもよく、R、R、R及びRのうち置換部位が隣接する2つの置換基は、任意に結合して環を形成していてもよい。
【0033】
とRが結合して形成される環、及び、R、R、R及びRのうち置換部位が隣接する2つの置換基が結合して形成される環としては、炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換された、飽和もしくは不飽和の炭化水素環などが例示される。その具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが例示される。
【0034】
本発明の遷移金属錯体(1)としては、例えば、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
【0035】
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
【0036】
ジメチルシリレン(インデニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
【0037】
ジメチルシリレン(フルオレニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
などが挙げられ、ジメチルシリレンをジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンに変更した化合物、シクロペンタジエニルをメチルシクロペンタジエニル、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル、3,4−ジメチルシクロペンタジエニル、2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニルに変更した化合物、ジメチルチタニウムをジフェニルチタニウム、ジベンジルチタニウムに変更した化合物、チタニウムをジルコニウム、ハフニウムに変更した化合物も同様に例示される。
【0038】
遷移金属錯体(1)と化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物(以下、ホウ素化合物(B)と略す。)を反応させる方法においては、通常、溶媒に遷移金属錯体(1)を加えた後、ホウ素化合物(B)を加えることによって行うことができる。
【0039】
ホウ素化合物(B)の使用量は、遷移金属錯体(1)1モルあたり、通常、0.5〜5モルの範囲であり、好ましくは0.7〜1.5モルである。
【0040】
反応温度は、通常、−100℃から溶媒の沸点までであり、好ましくは−80℃から60℃の範囲である。
【0041】
反応は、通常、反応に対して不活性な溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒といった非プロトン性溶媒などが例示される。かかる溶媒はそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して用いられ、その使用量は、遷移金属錯体(1)1重量部あたり、通常、1〜200重量部、好ましくは3〜50重量部である。
【0042】
反応終了後、得られた反応混合物を、例えば、そのままオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合用触媒として利用することができる。また、反応混合物から、溶媒を濃縮してオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合用触媒を析出させた後、これを濾取する方法などによって単離した後に使用することもできる。オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合用触媒が溶媒に不溶性のオイル状となる場合は、分液操作により該オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合用触媒を分離して用いてもよい。
【0043】
遷移金属錯体(1)は、例えば、公知のジハロゲン化チタン錯体(例えば、特許文献1参照)から公知の技術に従って、アルキルリチウム化合物又はアルキルマグネシウム化合物との反応により得ることができる。
【0044】
本発明で用いられるホウ素化合物(B)とは、下記(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物である。
(B1):式 BQで表されるホウ素化合物、
(B2):式 G(BQで表されるホウ素化合物、
(B3):式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は二置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。)
【0045】
(B1):式BQで表されるホウ素化合物において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子である。Q〜Qは、好ましくは、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20の置換シリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基又は炭素原子数2〜20の2置換アミノ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基又は炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0046】
(B1):式BQで表されるホウ素化合物としては、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等があげられ、好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0047】
(B2):式G(BQで表されるホウ素化合物において、Gは無機又は有機のカチオンであり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q〜Qは上記の(B1)におけるQ〜Qと同様である。
【0048】
(B2):G(BQで表されるホウ素化合物において、無機のカチオンであるGには、例えば、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどが、有機のカチオンであるGには、例えば、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。また、(BQとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0049】
(B2):式G(BQで表されるホウ素化合物としては、例えば、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどをあげることができ、好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0050】
(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物において、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)はブレンステッド酸であり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q〜Qは上記の(B1)におけるQ〜Qと同様である。
【0051】
(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物において、(L−H)には、例えば、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどがあげられ、(BQには、前述と同様のものが挙げられる。
【0052】
(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物としては、例えば、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができ、好ましくは、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0053】
ホウ素化合物(B)としては、通常、(B1):式BQで表されるホウ素化合物、(B2):式G(BQで表されるホウ素化合物又は(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物のいずれかを用いる、あるいは、(B1)、(B2)又は(B3)で表されるホウ素化合物の任意の2つ以上の混合物を用いることができる
【0054】
本発明のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法は、例えば、遷移金属錯体(1)とホウ素化合物(B)の存在下、オレフィンを重合させた後、連続的に(メタ)アクリル酸エステルを加えて(メタ)アクリル酸エステルを重合することにより、オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を得る方法が挙げられる。
【0055】
重合の開始方法は、特に限定されるものではないが、例えば、予め遷移金属錯体(1)とホウ素化合物(B)を接触させておいた溶液に、オレフィンを加えて重合を開始させる方法、又は、ホウ素化合物(B)とオレフィンを予め接触させておいた溶液に、遷移金属錯体(1)を加えて重合を開始させる方法が挙げられる。
【0056】
各触媒成分の使用量としては、ホウ素化合物(B)/遷移金属錯体(1)のモル比は、通常0.1〜100、好ましくは0.5〜10、より好ましくは0.8〜2である。
【0057】
各触媒成分を溶液状態で使う場合の濃度については、遷移金属錯体(1)の濃度は、通常0.0001〜5ミリモル/リットル、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルであり、ホウ素化合物(B)の濃度は、通常0.0001〜5ミリモル/リットル、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルである。
【0058】
重合に使用するオレフィンとしては、鎖状オレフィン、環状オレフィン等を用いることができ、1種類のオレフィンを用いて単独重合を行ってもよく、2種類以上のオレフィンを用いて共重合を行ってもよい。通常、該オレフィンとしては、炭素原子数2〜20のオレフィンが用いられる。
【0059】
鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテンなどの炭素原子数3〜20のα−オレフィン;1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,9−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、1,13−テトラデカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−エチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンなどの共役ジエンなどを挙げることができる。
【0060】
環状オレフィンとしては、脂環式化合物として、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセンなどのモノオレフィン;5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、7−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7−エチル−2,5−ノルボルナジエン、7−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、7−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ペンチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ヘキシル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−メチルエチル−2,5−ノルボルナジエン、7−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、7−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン、7−フルオロ−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジクロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−メチル−2,5−ノルボルナジエン、1−エチル−2,5−ノルボルナジエン、1−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、1−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、1−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン、ビニルシクロヘキセンなどの非共役ジエン;1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどの共役ジエンなどをあげることができる。また、芳香族化合物として、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0061】
オレフィンの共重合を行う場合のオレフィンの組み合わせとしては、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセンなどの鎖状オレフィン/鎖状オレフィンの組み合わせ;エチレン/ビニルシクロヘキサン、エチレン/ノルボルネン、エチレン/テトラシクロドデセン、エチレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン、プロピレン/ビニルシクロヘキサン、プロピレン/ノルボルネン、プロピレン/テトラシクロドデセン、プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの鎖状オレフィン/環状オレフィンの組み合わせなどをあげることができる。
【0062】
重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族炭化水素(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン等)、エーテル(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、又はハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)を溶媒として用いる溶媒重合又はスラリー重合、ガス状のモノマー中での気相重合等が可能であり、連続式重合又は回分式重合のどちらでも可能である。
【0063】
重合温度は、−50℃〜300℃の範囲を採り得るが、特に、−20℃〜250℃の範囲が好ましい。重合圧力は、常圧〜90MPaが好ましい。重合時間は、一般的に、目的とする重合体の種類、反応装置によって適宜決定されるが、1分間〜20時間の範囲を採ることができる。
【0064】
重合に使用する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル化合物が挙げられる。
【0065】
これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は単独で重合させることもできるが、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物を共重合させることもできる。
【0066】
2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物を共重合させる方法は特に限定されないが、例えば、オレフィン部の重合を行った後に、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルを同時に加えてランダム共重合体を得る方法、オレフィン部の重合を行った後に、1番目の(メタ)アクリル酸エステルを重合させておいて、さらに、2番目以降の(メタ)アクリル酸エステルを加えることによりブロック共重合体を得る方法が挙げられる。
【0067】
重合反応は窒素やアルゴンのような不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。本発明は(メタ)アクリル酸エステルとのブロック共重合を行うために、オレフィン部の重合形式はリビング重合であることが好ましく、不活性ガスや(メタ)アクリル酸エステルモノマーは十分に乾燥し、水分を含まないことが、効率よくブロック共重合体を得るために重要である。
【0068】
オレフィン部の重合形式はリビング重合でない場合、得られたオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体はオレフィンの単独重合体を含む。この場合、オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体とオレフィン単独重合体の溶媒への溶解度の差を利用して分別することができる。溶媒による分別方法は特に限定されないが、例えば、オレフィン単独重合体のみが溶解する溶媒にオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体とオレフィン単独重合体の混合物を浸漬し、不溶部としてオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を得る方法が挙げられる。また、オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体のみが溶解する溶媒にオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体とオレフィン単独重合体の混合物を浸漬し、可溶部としてオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を得る方法が挙げられる。具体的には、ソックスレー抽出器を利用したソックスレー抽出法が挙げられる。
【0069】
得られたオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体は、金属触媒成分を含むが、重合度が高い場合はその金属触媒成分の含有量は小さいため、除去しなくてもよい。除去する必要がある場合は、水や希塩酸等でオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を洗浄することにより金属触媒成分を除去した後、乾燥することによりオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実験例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0071】
分子量及び分子量分布の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって次の方法で行った。
装置:HLC−8120GPC(RI)
カラム:TSKgel、GMH HR−M
流量:0.5mL/min
測定温度:40℃
移動相:THF
標準物質:ポリスチレン
【0072】
ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比の測定はカーボン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)、inverse gated decouplingによって行った。
装置:BRUKER社製 AV600型NMR
試料セル:5mmΦチューブ
測定溶媒:CDCl
試料濃度:20mg/0.6mL(CDCl
測定温度:室温(約25℃)
測定パラメータ:5mmΦプローブ、EXMOD zgig30、OBNUC 13C、OBFRQ 151MHz、積算回数9200回
繰り返し時間:ACQTM 0.9秒、PD 2秒
内部標準:13C:CHCl(77ppm)
【0073】
[実験例1]
「エチレン/メチルメタクリレートのブロック共重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(184.5mg、0.20mmol)、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(83.7mg、0.20mmol)をトルエン(5mL)中で10分間攪拌した。ここに、トルエン(95mL)を加えて、オートクレーブに仕込んだ。ここに、エチレンを0.2MPaになるように加えて重合を開始した。1分後、メチルメタクリレート(4.04g、40.35mmol)を一気に加えて、さらに30℃で重合を続けた。3時間重合を行い、メタノール(15mL)を加えて重合を停止した。塩酸のメタノール溶液(5wt%)(25mL)及びメタノール(500mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。真空乾燥(80℃、重量が一定になるまで)することにより白色固体としてポリエチレン/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体とポリエチレンの混合物を得た(1.50g)。
【0074】
[実験例2]
「プロピレン/メチルメタクリレートのブロック共重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(184.5mg、0.20mmol)、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(83.7mg、0.20mmol)をトルエン(5mL)中で10分間攪拌した。ここに、トルエン(95mL)を加えて、オートクレーブに仕込んだ。ここに、プロピレンを0.2MPaになるように加えて重合を開始した。1分後、メチルメタクリレート(4.12g、41.15mmol)を一気に加えて、さらに30℃で重合を続けた。3時間重合を行い、メタノール(15mL)を加えて重合を停止した。塩酸のメタノール溶液(5wt%)(25mL)及びメタノール(500mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。真空乾燥(80℃、重量が一定になるまで)することにより淡黄色固体としてポリプロピレン/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体とポリプロピレンの混合物を得た(2.09g)。
【0075】
[実験例3]
「1−ヘキセン/メチルメタクリレートのブロック共重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(461.2mg、0.50mmol)、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(209.3mg、0.50mmol)をトルエン(91mL)中で10分間攪拌し、−30℃に冷却した。ここに、1−ヘキセン(8.20g、97.43mmol)を一気に加えて重合を開始した。10分後、メチルメタクリレート(19.51g、194.87mmol)を一気に加えて、さらに室温で重合を続けた。6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(45.3mL)を加えて重合を停止した。メタノール(1360mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーをトルエン(200mL)に溶解させた後、メタノール(1360mL)に滴下してポリマーを析出させ、1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。真空乾燥(80℃、重量が一定になるまで)することにより白色固体としてポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体とポリ(1−ヘキセン)の混合物を得た(27.4g、収率98.9%)。得られたポリマー混合物はポリスチレン換算数平均分子量Mn=28,700、Mw/Mn=1.42であった。ポリマー混合物中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は41/59であった。
得られたポリマー混合物を45℃でヘキサンで洗浄することにより、ポリ(1−ヘキセン)(5.6g、収率20.3%)を除去し、ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(21.2g、収率76.7%)を得た。
除去されたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=13,500、Mw/Mn=1.75であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は100/0であった。
得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=38,200、Mw/Mn=1.19であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は17/83であった。
【0076】
[実験例4]
実験例3で得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体を220℃でプレス成形することにより厚さ0.1cmのプレスシートを得た。
得られたプレスシートをRuOによる染色処理を施した後、クライオミクロトームで薄片化してTEMによりモルフォロジー観察を実施した(図1参照)。
シリンダー構造を示すミクロ相分離構造が観測され、ブロック共重合体であることが確認された。
【0077】
[実験例5]
「1−ヘキセン/メチルメタクリレートのブロック共重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(461.2mg、0.50mmol)、ジエチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(223.3mg、0.50mmol)をトルエン(91mL)中で10分間攪拌した。ここに、1−ヘキセン(7.78g、92.44mmol)を一気に加えて重合を開始した。1分後、メチルメタクリレート(19.19g、191.67mmol)を一気に加えて、さらに室温で重合を続けた。3時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(45.3mL)を加えて重合を停止した。メタノール(1360mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーをトルエン(200mL)に溶解させた後、メタノール(1360mL)に滴下してポリマーを析出させ、1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。真空乾燥(80℃、重量が一定になるまで)することにより白色固体としてポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体とポリ(1−ヘキセン)の混合物を得た(25.9g、収率95.9%)。得られたポリマー混合物はポリスチレン換算数平均分子量Mn=29,200、Mw/Mn=1.56であった。ポリマー混合物中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は41/59であった。
得られたポリマー混合物を45℃でヘキサンで洗浄することにより、ポリ(1−ヘキセン)(2.4g、収率8.7%)を除去し、ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(22.9g、収率84.9%)を得た。
除去されたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=13,200、Mw/Mn=1.82であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は100/0であった。
得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=32,400、Mw/Mn=1.47であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は33/67であった。
【0078】
[実験例6]
実験例5で得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体をプレス成形することにより厚さ0.1cmのプレスシートを得た。得られたプレスシートは白く凝集した部分が存在し、ポリ(1−ヘキセン)の残存が示唆された。
得られたプレスシートをRuOによる染色処理を施した後、クライオミクロトームで薄片化してTEMによりモルフォロジー観察を実施した(図2参照)。
黒い部分はRuOの残存する部分であり、ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体の周りにポリ(1−ヘキセン)が凝集している様子が観察された。
【0079】
[実験例7]
実験例5で得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体15.0gからポリ(1−ヘキセン)を除去するため、ヘキサンを溶媒としてソックスレー抽出器によりソックスレー抽出を行った。ポリ(1−ヘキセン)(1.0g、収率6.7%)を除去し、ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(14.4g、収率95.9%)を得た。
除去されたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=8,700、Mw/Mn=1.70であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は100/0であった。
得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=37,400、Mw/Mn=1.31であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は23/77であった。
【0080】
[実験例8]
実験例7で得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体14.2gからさらにポリ(1−ヘキセン)を除去するため、ヘプタンを溶媒としてソックスレー抽出器によりソックスレー抽出を行った。ポリ(1−ヘキセン)(0.6g、収率4.1%)を除去し、ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(12.9g、収率90.4%)を得た。
除去されたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=11,800、Mw/Mn=1.82であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は100/0であった。
得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体は、ポリスチレン換算数平均分子量Mn=41,700、Mw/Mn=1.23であった。ポリマー中の1−ヘキセン/メチルメタクリレートの組成比は17/83であった。
【0081】
[実験例9]
実験例8で得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体を200℃でプレス成形することにより厚さ0.05cmのプレスシートを得た。
得られたプレスシートを0.5%のRuO水溶液中50℃に6時間浸漬して染色した。室温で100nmの超薄切片を作製後、20kV低加速電圧STEM(日立製S5500FE−SEM)によりモルフォロジー観察を実施した(図3参照)。
微小な球状構造を示すミクロ相分離構造が観測され、ブロック共重合体であることが確認された。
【0082】
[実験例10]
実験例8で得られたポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体625mgをトルエンに溶解させ5重量%のトルエン溶液とした。この溶液を直径5cmのテフロンシャーレに流し込み、室温でトルエンを蒸発させた。80℃で真空乾燥した後、150℃で12時間保温し、ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体を透明なシートとして得た。
得られたシートを0.5%のRuO水溶液中50℃に6時間浸漬して染色した。室温で100nmの超薄切片を作製後、20kV低加速電圧STEM(日立製S5500FE−SEM)によりモルフォロジー観察を実施した(図4参照)。
微小なヘキサゴナル構造を示すミクロ相分離構造が観測され、ブロック共重合体であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(17/83)のTEM写真(×50,000)(実施例4)
【図2】ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(33/67)のTEM写真(×5,000)(実施例6)
【図3】ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(17/83)のSTEM写真(×50,000)(実施例9)
【図4】ポリ(1−ヘキセン)/ポリ(メチルメタクリレート)ブロック共重合体(17/83)のSTEM写真(×30,000)(実施例10)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを重合させることにより得られるポリオレフィンセグメントと(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させることにより得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルセグメントが共有結合により結合し、モルフォロジーがミクロ相分離構造を有するオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
【請求項2】
オレフィンが炭素原子数2〜20のオレフィンである請求項1に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
【請求項3】
オレフィンが1−ヘキセンである請求項1又は2に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル化合物がメチルメタクリレートである請求項1から3のいずれか1項に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
【請求項5】
オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体を構成する各モノマーの組成比が、オレフィン≦27mol%、(メタ)アクリル酸エステル化合物≧73mol%の範囲である請求項1から4のいずれか1項に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
【請求項6】
オレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の分子量を示す値が以下の範囲である請求項1から5のいずれか1項に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
Mn≧22,000かつ1.5>Mw/Mn>1.1
(式中、Mnはポリスチレン換算数平均分子量Mnを表し、Mwはポリスチレン換算重量平均分子量を表し、Mw/Mnは分子量分布を表す。)
【請求項7】
式(1)

(式中、Mは元素の周期律表の第4族元素を表し、Aは元素の周期律表の第14族元素を表し、Dは元素の周期律表の第16族元素を表し、Cpはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基を表し、R、R、R、R、R及びRは、同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたシリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基を表し、
ここで、R〜Rにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又は炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい、
とRは結合して環を形成していてもよく、RとR、RとR、RとRは、それぞれ任意に結合して環を形成していてもよく、
及びXは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、X及びXにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、それぞれ、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属錯体と下記化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物とを接触させることにより得られる重合用触媒を用いることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法。
(B1)式 BQ
(B2)式 G(BQで表されるホウ素化合物;
(B3)式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は2置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。)
【請求項8】
最初にオレフィンを重合させて、次に(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させることを特徴とする請求項7記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の製造方法により製造されるオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体。
【請求項10】
溶媒分別によりオレフィン単独重合体又は(メタ)アクリル酸エステル単独重合体を除去することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のオレフィン/(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−67924(P2009−67924A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239163(P2007−239163)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】