説明

オンオフ制御装置、オンオフ制御方法、及びコンピュータプログラム

【課題】複雑かつ高価な装置を用いることなく、人間の特定の往復運動を検出して通信装置等をオンオフ制御することができるオンオフ制御装置、オンオフ制御方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサを備え、該センサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御する。センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号の周期を検出する。検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数し、計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断する。所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が体の正面で手を前後に動かす往復運動を認識し、所定の動作を開始又は停止するオンオフスイッチとして機能させることができるオンオフ制御装置、オンオフ制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ技術の急速な進展に伴い、人間の動き、特に人間の手の動きを検出する技術が多々開発されている。一つの方法として、人間の手、腕等に加速度センサを装着し、人間が手を振る等の動作を、加速度の変動、変動回数等に基づいて容易に検出することができる(非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、加速度センサのような特別なデバイスを体に装着することは、オフィス、工場等で用いる場合はともかく、家庭内では現実的ではない。すなわち、加速度センサを何らかのスイッチ手段として用いる場合、日常生活において、腕等に加速度センサを装着することは、円滑な生活を阻害するため好ましくない。斯かる種類のスイッチ手段は、例えば突発的な何らかの事象が発生したことによって人間が移動することができない場合等に用いることが多く、その時点で加速度センサを装着している可能性を高めることは、日常生活では困難である。
【0004】
そこで、人間が手を振った動作を、特別なデバイスを装着することなく検出するため、例えば特許文献1では、ビデオカメラにより撮像した画像から画像認識技術を用いて人間の指の向きを検出し、所定の画像認識パターンに合致した指の向きを検出した場合に所定の操作の実行を指示するリモート操作装置が開示されている。操作者は、手、腕等に特別なデバイスを装着することなく、指の向きを上下左右に変更するだけで、選局操作等のリモート操作を実現することができる。
【特許文献1】特開2004−356819号公報
【非特許文献1】澤田秀之、橋本周司、「加速度センサを用いたジェスチャー認識と音楽制御への応用」、1996年2月、電子情報通信学会論文誌A、Vol.J79−A、No.2、p.452−459)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているリモート操作装置では、ビデオカメラ等の撮像装置を用いて人間を撮像するため、被撮像者のプライバシーを侵害する可能性が高い。特に家庭用として用いる場合、風呂場、寝室、トイレ等にビデオカメラを設置することは現実問題として困難である。一方で、例えば心臓発作等の突発事故は、風呂場、寝室等のプライバシー空間で発生する可能性が高く、緊急連絡手段として特許文献1に開示されているリモート操作装置は用いることができないという問題点があった。
【0006】
また、撮像装置を用いている以上、何らかの照明手段が必要であり、コスト高要因となる。通常の撮像装置の代わりに、夜間でも撮像することが可能な赤外線カメラを用いることも考えられるが、高価であることからコスト高要因となり、現実解とはならない。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、複雑かつ高価な装置を用いることなく、人間の特定の往復運動を検出して通信装置等をオンオフ制御することができるオンオフ制御装置、オンオフ制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係るオンオフ制御装置は、物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサを備え、該センサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御するオンオフ制御装置であって、前記センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングするフィルタ手段と、該フィルタ手段でフィルタリングされた信号の周期を検出する周期検出手段と、該周期検出手段で検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する計数手段と、該計数手段で計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断する判断手段と、該判断手段で所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2発明に係るオンオフ制御装置は、第1発明において、前記センサを複数備え、前記周期検出手段は、フィルタリングされた複数の信号ごとの信号強度も併せて検出するようにしてあり、複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号から抽出された複数の信号について、前記周期検出手段で検出された信号強度相互間の差異を算出する強度差算出手段と、該強度差算出手段で算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断する存否判断手段と、該存否判断手段で存在すると判断した場合、前記計数手段は、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、第3発明に係るオンオフ制御装置は、第2発明において、複数の前記センサは、検出対象となる物体に対して互いに略直交する方向に設けてあり、前記物体の接近及び離隔の繰り返しを往復運動として検出するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
次に、上記目的を達成するために第4発明に係るオンオフ制御方法は、物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御するオンオフ制御装置で実行することが可能なオンオフ制御方法であって、前記センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号の周期を検出し、検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数し、計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断し、所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力することを特徴とする。
【0012】
また、第5発明に係るオンオフ制御方法は、第4発明において、複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、周期に加えて信号ごとの信号強度も検出し、検出された信号強度相互間の差異を算出し、算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断し、存在すると判断した場合、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数することを特徴とする。
【0013】
また、第6発明に係るオンオフ制御方法は、第5発明において、複数の前記センサは、検出対象となる物体に対して互いに略直交する方向に設けてあり、前記物体の接近及び離隔の繰り返しを往復運動として検出することを特徴とする。
【0014】
次に、上記目的を達成するために第7発明に係るコンピュータプログラムは、物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御するオンオフ制御装置で実行することが可能なコンピュータプログラムであって、前記オンオフ制御装置を、前記センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングするフィルタ手段、該フィルタ手段でフィルタリングされた信号の周期を検出する周期検出手段、該周期検出手段で検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する計数手段、該計数手段で計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断する判断手段、及び該判断手段で所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力する出力手段として機能させることを特徴とする。
【0015】
また、第8発明に係るコンピュータプログラムは、第7発明において、前記周期検出手段を、複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、信号ごとの周期に加えて信号強度も検出する手段として機能させ、前記オンオフ制御装置を、複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、前記周期検出手段で検出された信号強度相互間の差異を算出する強度差算出手段、該強度差算出手段で算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断する存否判断手段、及び該存否判断手段で存在すると判断した場合、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する計数手段として機能させることを特徴とする。
【0016】
第1発明、第4発明、及び第7発明では、物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御する。センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号の周期を検出する。検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数し、計数された回数が所定の範囲内に属する場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力する。これにより、人間の手、腕等に特別なセンサを取り付けておくことなく、所定の往復運動及びその回数を確実に検出することができ、往復する回数に応じて外部機器をオンオフ制御することが可能となる。したがって、例えば心臓発作等の突発的な事故により移動することも、声を発することもできない状態となった場合であっても、手を前後に一定回数往復させることにより緊急連絡先へ緊急連絡することができ、一命を取り留めることも可能となる。また、ドップラー信号を検出するドップラーセンサは、撮像装置と比べて電力消費量が小さく安価であることから、装置全体のコストダウンを図ることが可能となる。
【0017】
第2発明、第5発明、及び第8発明では、複数のセンサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、周期に加えて信号ごとの信号強度も検出する。検出された信号強度相互間の差異を算出し、算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在する場合、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する。複数のセンサを用いることにより、いずれかのセンサによって人間の所定の往復運動、例えば手を体正面で前後に往復させる運動を確実に検出することができ、検出漏れが生じるおそれがない。したがって、例えば心臓発作等の突発的な事故により移動することも、声を発することもできない緊急状態であっても、手を前後に一定回数往復させる運動を確実に検出することができるので、緊急連絡漏れ等が生じることなく、確実に連絡することが可能となる。
【0018】
第3発明及び第6発明では、複数のセンサが、検出対象となる物体に対して互いに略直交する方向に設けてあり、物体の接近及び離隔の繰り返しを往復運動として検出する。これにより、体の正面で手を前後に往復させる運動を、いずれかのセンサで確実に検出することができ、例えば心臓発作等の突発的な事故により移動することも、声を発することもできない緊急状態であっても、手を前後に一定回数往復させる運動を確実に検出することができるので、緊急連絡漏れ等が生じることなく、確実に連絡することも可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、人間の手、腕等に特別なセンサを取り付けておくことなく、所定の往復運動及びその回数を確実に検出することができ、往復する回数に応じて外部機器をオンオフ制御することが可能となる。したがって、例えば心臓発作等の突発的な事故により移動することも、声を発することもできない状態となった場合であっても、手を前後に一定回数往復させることにより緊急連絡先へ緊急連絡することができ、一命を取り留めることも可能となる。また、ドップラー信号を検出するドップラーセンサは、撮像装置と比べて電力消費量が小さく安価であることから、装置全体のコストダウンを図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るオンオフ制御装置について図面に基づいて具体的に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るオンオフ制御装置の構成の概要を示すブロック図である。図1において、手の動きを検出する対象となる人間40は、体の正面にて手を前後に運動させる。図1では、手は胸の前の位置41と腕を伸ばした位置41’との間を往復運動する。
【0022】
手の往復運動は、ドップラー信号を検出するセンサ20で検出する。センサ20は、マイクロ波を用いるセンサであっても良いし、超音波を用いるセンサであっても良い。本実施の形態1では、新日本無線株式会社製のマイクロ波センサを採用し、24.15GHzのマイクロ波を送信し、反射波と送信波との混合波をショットキバリアダイオードにより検波してドップラー信号(周波数信号)を出力する。
【0023】
オンオフ制御装置10のフィルタ手段101は、センサ20で検出されたドップラー信号を受信し、特定の周波数帯域の成分を取り出した信号へとフィルタリングする。具体的にはハードウェアによるバンドパスフィルタであっても良いし、ウェーブレット変換、フーリエ変換等を用いた演算処理によってソフトウェア処理にて取り出しても良い。本実施の形態1では、ウェーブレット変換を用いたソフトウェア処理によりフィルタリングする。
【0024】
周期検出手段102は、フィルタリングされた信号を用いて、往復運動の周期性を抽出して往復運動の周期を検出する。具体的には、フィルタリングされた信号の絶対値に対して、例えば移動平均を算出することによりスムージング処理を実行し、自己相関係数を算出する。算出された自己相関係数から周期性を抽出して、往復運動の周期を検出する。
【0025】
計数手段103は、検出された周期に基づいて、自己相関係数が何回検出されるか、すなわち往復運動が何回実行されたか計数する。判断手段104は、計数された回数が、事前に定められた所定の回数より大きいか否かを判断し、出力手段105は、所定の回数に到達した時点でオン信号又はオフ信号を外部の機器、例えば警報装置等へ出力する。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態1に係るオンオフ制御装置10を、CPU11を用いて具現化した場合のハードウェア構成を示すブロック図である。図2において、本実施の形態1に係るオンオフ制御装置10は、少なくとも、CPU(中央演算装置)11、RAM12、記憶装置13、入力装置14、出力装置15、通信装置16、可搬型ディスクドライブ17及び上述したハードウェアを接続する内部バス18で構成されている。
【0027】
CPU11は、内部バス18を介してオンオフ制御装置10の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置13に記憶されているコンピュータプログラム100に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。RAM12は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム100の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム100の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0028】
記憶装置13は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)、ROM等で構成されている。記憶装置13に記憶されているコンピュータプログラム100は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体90から、可搬型ディスクドライブ17によりダウンロードされ、実行時には記憶装置13からRAM12へ展開して実行される。もちろん、通信装置16を介して外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0029】
また記憶装置13は、出力するための条件、例えば計数値に基づいて出力するべき信号に関する情報を記憶している出力条件記憶部131を備えている。図3は、出力条件記憶部131のデータ構成の例示図である。図3に示すように、出力条件記憶部131には、少なくとも計数値に対応付けて、出力信号の出力先に関する情報と出力するべき信号の内容とが記憶されている。CPU11は、計数値をキー情報として出力条件記憶部131を照会し、合致する条件が記憶されていた場合には、出力条件記憶部131に記憶されている出力信号を出力する。
【0030】
通信装置16は内部バス18に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワーク網に接続されることにより、外部のコンピュータ、外部の機器等とデータ送受信を行うことが可能となっている。例えばオン信号、オフ信号等を外部の機器へ出力することにより、オンオフ制御装置10が外部の機器のスイッチとして機能することができる。
【0031】
入力装置14は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体であり、出力装置15は、CRTモニタ、LCD等の表示装置、あるいはレーザプリンタ、ドットプリンタ等の印刷装置等である。なお、入力装置14及び出力装置15が一体化されたタッチパネルであっても良い。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態1に係るオンオフ制御装置10のCPU11の処理手順を示すフローチャートである。オンオフ制御装置10のCPU11は、センサ20からのドップラー信号を受信する(ステップS401)。ドップラー信号は、いわゆるIF信号であるドップラー周波数信号として受信し、図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換され、出力電圧信号の時間関数として受信する。
【0033】
CPU11は、受信したドップラー信号から所定の周波数近傍の成分をフィルタリングして抽出する(ステップS402)。図5は、ウェーブレット変換を用いて250Hz近傍の成分を抽出した受光信号を示すグラフである。なお、抽出するべき周波数を250Hz近傍としたのは、センサ20で用いるマイクロ波の周波数が24GHzであるドップラーセンサを用いているからであり、利用する周波数が変わった場合には、抽出するべき周波数は変動する。例えばマイクロ波の周波数が12GHzと半減した場合には、抽出するべき周波数も125Hzと半減する。
【0034】
図5に示すように、10本の大きなエンベロープ(包絡線)の一群の存在を識別することができ、各群にて物体の往復運動が検出されていると予想することができる。なお、フィルタリングする方法としては、ウェーブレット変換を用いる方法に限定されるものではなく、窓を設定して、窓の中を高速デジタルフーリエ変換した後、所定の周波数帯域のフーリエ級数成分を抽出して、逆フーリエ変換する方法であっても良い。
【0035】
図4に戻って、オンオフ制御装置10のCPU11は、抽出された信号の絶対値についてスムージング処理を実行する(ステップS403)。絶対値をとるのは、波形の包絡線を求めるためである。また、スムージング処理は、例えば所定のサンプリング数ごとに移動平均を算出することにより、波形の振幅を取得する。図6は、スムージング処理を実行した波形を示すグラフである。図6に示すように、スムージング処理を実行することにより、往復運動をしている時点で電圧値が大きい波形の包絡線を得ることができる。
【0036】
CPU11は、スムージング処理実行後の波形に対して自己相関係数を算出する(ステップS404)。自己相関係数の算出方法は特に限定されるものではなく、周知の算出方法であれば何でも良い。
【0037】
図7は、算出された自己相関係数(ACF)を示すグラフである。図7に示すように、自己相関係数は、原点にて最大値1となり、ピーク値は次第に減少していく。これは、原点では原点における値相互間の自己相関係数を算出することになるからである。そして、時間をずらしていくことによって、周期性がある場合にはピーク値が一定の時間間隔で生じる。
【0038】
図7の例では、5個のピーク値が次第に減少する組み合わせが2つグラフ上に現れている。これは、手を体の正面で前後に動かした場合に、前方向に押し出すスピードと、体の方へ戻すスピードとが相違することにより生ずる現象である。したがって、ピーク値を5個ずつ交互に選択することにより、手が体の正面で前後に往復運動した回数を計数することができる。
【0039】
図4に戻って、オンオフ制御装置10のCPU11は、算出された自己相関係数のピーク値の出現回数を計数し(ステップS405)、計数値が所定値であるか否か又は所定の範囲内であるか否かを判断する(ステップS406)。判断の基準となる所定値は、出力条件記憶部131に記憶されている計数値であり、所定の範囲は、出力条件記憶部131に記憶されている計数値の範囲である。
【0040】
CPU11が、計数値が所定値ではない又は所定の範囲内ではないと判断した場合(ステップS406:NO)、CPU11は、出力信号を出力しない。CPU11が、計数値が所定値である又は所定の範囲内であると判断した場合(ステップS406:YES)、CPU11は、出力条件記憶部131に記憶されている出力先へ、記憶されている出力信号としてオン信号又はオフ信号を出力する(ステップS407)。
【0041】
以上のように本実施の形態1によれば、人間の手、腕等に特別なセンサを取り付けておくことなく、人間が手を体の正面で前後に往復させる往復運動及びその回数を確実に検出することができ、往復回数に応じて外部機器をオンオフ制御することが可能となる。したがって、例えば心臓発作等の突発的な事故により移動することも、声を発することもできない状態となった場合であっても、手を体の正面で前後に一定回数往復させることにより緊急連絡先へ緊急連絡することができ、一命を取り留めることも可能となる。
【0042】
また、比較的高価な撮像装置による画像処理を実行する必要も無く、ドップラー信号を検出する安価なドップラーセンサを用いることができ、低コスト、低ランニングコストであるオンオフ制御装置を具現化することが可能となる。
【0043】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係るオンオフ制御装置の構成の概要を示すブロック図である。図8において、手の動きを検出する対象となる人間40は、体の正面にて手を前後に運動させる。図8では、手は胸の前の位置41と腕を伸ばした位置41’との間を往復運動する。
【0044】
本実施の形態2では、手の往復運動に対応するドップラー信号を検出するセンサ20が複数個、例えば2個設置されている点で実施の形態1と相違している。センサ20、20は、実施の形態1と同様、マイクロ波を用いるセンサであっても良いし、超音波を用いるセンサであっても良い。本実施の形態2でも、新日本無線株式会社製のマイクロ波センサを採用し、24.15GHzのマイクロ波を送信し、反射波と送信波との混合波をショットキバリアダイオードにより検波してドップラー信号(周波数信号)を出力する。
【0045】
オンオフ制御装置10のフィルタ手段101は、センサ20で検出されたドップラー信号を受信し、特定の周波数帯域の成分を取り出した信号へとフィルタリングする。具体的にはハードウェアによるバンドパスフィルタであっても良いし、ウェーブレット変換、フーリエ変換等を用いた演算処理によってソフトウェア処理にて取り出しても良い。本実施の形態2では、ウェーブレット変換を用いたソフトウェア処理によりフィルタリングする。
【0046】
周期検出手段102は、フィルタリングされた信号を用いて、往復運動の周期性を抽出して往復運動の周期を検出する。具体的には、フィルタリングされた信号の絶対値に対して、例えば移動平均を算出することによりスムージング処理を実行し、自己相関係数を算出する。算出された自己相関係数から周期性を抽出して、往復運動の周期を検出する。また、フィルタリングされた複数の信号の絶対値を、信号強度として検出する。
【0047】
強度差算出手段201は、複数のセンサ20、20で検出されたドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、周期検出手段102で検出された信号強度相互間の差異を算出する。本実施の形態2では、2個のセンサ20、20で検出された信号の信号強度の差異を算出すれば足りるが、センサ20が多数存在する場合には、全てのセンサ20の組み合わせについて信号強度の差異を算出する。
【0048】
存否判断手段202は、強度差算出手段201で算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断する。本実施の形態2では、2個のセンサ20、20で算出された信号強度の差異が所定値より大きいか否かを判断すれば足りる。
【0049】
存否判断手段202で、信号強度の差異が所定値より大きい組み合わせが存在すると判断した場合、計数手段103は、該組み合わせに係る信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて、自己相関係数が何回検出されるか、すなわち往復運動が何回実行されたか計数する。本実施の形態2では、2個のセンサ20、20で算出された信号強度の差異が所定値より大きいと判断した場合には、信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて、自己相関係数が何回検出されるか、すなわち往復運動が何回実行されたか計数する。
【0050】
判断手段104は、計数された回数が、事前に定められた所定の回数より大きいか否かを判断し、出力手段105は、所定の回数に到達した時点でオン信号又はオフ信号を外部の機器、例えば警報装置等へ出力する。
【0051】
本実施の形態2に係るオンオフ制御装置10の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0052】
図9は、本発明の実施の形態2に係るオンオフ制御装置10のCPU11の処理手順を示すフローチャートである。オンオフ制御装置10のCPU11は、センサ20、20からの複数のドップラー信号を受信する(ステップS901)。ドップラー信号は、いわゆるIF信号であるドップラー周波数信号として受信し、図示しないA/D変換器によりデジタル信号に変換され、出力電圧信号の時間関数として受信する。
【0053】
CPU11は、受信した複数のドップラー信号のそれぞれから所定の周波数近傍の成分をフィルタリングして抽出する(ステップS902)。図10は、手の往復運動方向と略直交する方向に設置されているセンサ20でのフィルタリングの結果を示すグラフである。なお、フィルタリングする方法としては、ウェーブレット変換を用いる方法に限定されるものではなく、窓を設定して、窓の中を高速デジタルフーリエ変換した後、所定の周波数帯域のフーリエ級数成分を抽出して、逆フーリエ変換する方法であっても良い。
【0054】
実施の形態1の図5のように、手の往復運動方向の略正面に設置されているセンサ20でのフィルタリングの結果では、10本の大きなエンベロープ(包絡線)の一群の存在を識別することができ、各群にて物体の往復運動が検出されていると予想することができる。一方、図10では、エンベロープ(包絡線)の一群の存在を識別することができず、周期を検出することができない。
【0055】
すなわち、図10では、フィルタリングされた波形の振幅は最大でも略0.5乃至0.6と非常に小さく、ノイズと信号との区別がつかない。一方、実施の形態1の図5では、フィルタリングされた波形の振幅は最大7乃至8と図10と比較して格段に大きく、ノイズと信号とを明確に区別することができるので、信号が存在する位置を明確に特定することができる。したがって、本実施の形態2では、振幅の大小を信号強度の差異の大小で検出し、信号強度の差異が所定値より大きい信号を検出したセンサ20の信号を正として実施の形態1と同様の処理を実行する。
【0056】
図9に戻って、オンオフ制御装置10のCPU11は、抽出された信号の絶対値についてスムージング処理を実行する(ステップS903)。絶対値をとるのは、波形の包絡線を求めるためである。また、スムージング処理は、例えば所定のサンプリング数ごとに移動平均を算出することにより、波形の振幅を取得する。
【0057】
CPU11は、スムージング処理実行後の複数の波形に基づいて、信号強度相互間の差異を算出する(ステップS904)。本実施の形態2では、2個のセンサ20、20で検出された信号の信号強度の差異を算出する。
【0058】
CPU11は、算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断する(ステップS905)。本実施の形態2では、2個のセンサ20、20で算出された信号強度の差異が所定値より大きいか否かを判断する。CPU11が、算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在しないと判断した場合(ステップS905:NO)、CPU11は、手の往復運動を検出していないものと判断して、出力信号を出力しない。
【0059】
CPU11が、算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在すると判断した場合(ステップS905:YES)、CPU11は、手の往復運動を検出したものと判断して、差異が所定値より大きい組み合わせに係る信号のうち信号強度が大きい方の信号に基づいて、自己相関係数を算出する(ステップS906)。自己相関係数の算出方法は特に限定されるものではなく、周知の算出方法であれば何でも良い。
【0060】
CPU11は、算出された自己相関係数のピーク値の出現回数を計数し(ステップS907)、計数値が所定値であるか否か又は所定の範囲内であるか否かを判断する(ステップS908)。判断の基準となる所定値は、出力条件記憶部131に記憶されている計数値であり、所定の範囲は、出力条件記憶部131に記憶されている計数値の範囲である。
【0061】
CPU11が、計数値が所定値ではない又は所定の範囲内ではないと判断した場合(ステップS908:NO)、CPU11は、出力信号を出力しない。CPU11が、計数値が所定値である又は所定の範囲内であると判断した場合(ステップS908:YES)、CPU11は、出力条件記憶部131に記憶されている出力先へ、記憶されている出力信号としてオン信号又はオフ信号を出力する(ステップS909)。
【0062】
以上のように本実施の形態2によれば、複数のセンサ20、20を用いることにより、いずれかのセンサ20によって人間の所定の往復運動、例えば手を体の正面で前後に往復させる運動を確実に検出することができ、検出漏れが生じるおそれがない。したがって、例えば心臓発作等の突発的な事故により移動することも、声を発することもできない緊急状態であっても、手を前後に一定回数往復させる運動を確実に検出することができるので、緊急連絡漏れ等が生じることなく、確実に連絡することも可能となる。
【0063】
上述した実施の形態2は、例えば部屋の照明器具ごとにセンサ20を複数装着しておき、緊急連絡時には、身近な照明器具に向かって、手を体の正面で前後方向に所定回数、例えば3回往復運動させることにより、救急病院への緊急連絡、警察への緊急連絡等を実行することができる。
【0064】
なお、日常生活において手を振る動作というと、体の正面で左右に手を振る往復運動が考えられる。体の正面で左右に振る往復運動を、体の正面のセンサ20及び体の側面のセンサ20で検出した場合、両センサ20、20で検出されるドップラー信号は、非常に信号強度が弱い信号として検出され、両者の差異は、実施の形態1及び2で示す、体の正面で手を前後に往復運動させる場合に比べて小さい。
【0065】
これは、日常生活において手を横に振る往復運動は、腕自体を大きく移動させること無く、手首での曲げ伸ばしのみの動作となることが多く、側面に配置されているセンサ20に対する手の相対位置が大きく変動しないことに起因する。したがって、手を横に振る往復運動では、信号強度に差異が生じにくく、オンオフのスイッチ手段として機能させることができない。逆に言うと、日常的な手を横に振る往復運動ではスイッチ機能が誤作動しないようにすることができる。
【0066】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。したがって、センサの数も少なくとも2個あれば複数個配置しても良いし、配置する位置についても三次元的に互いに略直交する位置であれば自由に配置することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1に係るオンオフ制御装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るオンオフ制御装置を、CPUを用いて具現化した場合のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】出力条件記憶部のデータ構成の例示図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るオンオフ制御装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】ウェーブレット変換を用いて250Hz近傍の成分を抽出した受光信号を示すグラフである。
【図6】スムージング処理を実行した波形を示すグラフである。
【図7】算出された自己相関係数(ACF)を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態2に係るオンオフ制御装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るオンオフ制御装置のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】手の往復運動方向と略直交する方向に設置されているセンサでのフィルタリングの結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
10 オンオフ制御装置
11 CPU
12 RAM
13 記憶装置
14 入力装置
15 出力装置
16 通信装置
17 可搬型ディスクドライブ
18 内部バス
20 センサ
90 可搬型記録媒体
100 コンピュータプログラム
131 出力条件記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサを備え、該センサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御するオンオフ制御装置であって、
前記センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングするフィルタ手段と、
該フィルタ手段でフィルタリングされた信号の周期を検出する周期検出手段と、
該周期検出手段で検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する計数手段と、
該計数手段で計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断する判断手段と、
該判断手段で所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力する出力手段と
を備えることを特徴とするオンオフ制御装置。
【請求項2】
前記センサを複数備え、
前記周期検出手段は、フィルタリングされた複数の信号ごとの信号強度も併せて検出するようにしてあり、
複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、前記周期検出手段で検出された信号強度相互間の差異を算出する強度差算出手段と、
該強度差算出手段で算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断する存否判断手段と、
該存否判断手段で存在すると判断した場合、前記計数手段は、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数するようにしてあることを特徴とする請求項1記載のオンオフ制御装置。
【請求項3】
複数の前記センサは、検出対象となる物体に対して互いに略直交する方向に設けてあり、前記物体の接近及び離隔の繰り返しを往復運動として検出するようにしてあることを特徴とする請求項2記載のオンオフ制御装置。
【請求項4】
物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御するオンオフ制御装置で実行することが可能なオンオフ制御方法であって、
前記センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングし、
フィルタリングされた信号の周期を検出し、
検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数し、
計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断し、
所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力することを特徴とするオンオフ制御方法。
【請求項5】
複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、周期に加えて信号ごとの信号強度も検出し、
検出された信号強度相互間の差異を算出し、
算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断し、
存在すると判断した場合、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数することを特徴とする請求項4記載のオンオフ制御方法。
【請求項6】
複数の前記センサは、検出対象となる物体に対して互いに略直交する方向に設けてあり、前記物体の接近及び離隔の繰り返しを往復運動として検出することを特徴とする請求項5記載のオンオフ制御方法。
【請求項7】
物体の往復運動をドップラー信号として検出するセンサで検出されたドップラー信号に基づいて、外部機器のオンオフを制御するオンオフ制御装置で実行することが可能なコンピュータプログラムであって、
前記オンオフ制御装置を、
前記センサで検出されたドップラー信号から所定の周波数帯の信号をフィルタリングするフィルタ手段、
該フィルタ手段でフィルタリングされた信号の周期を検出する周期検出手段、
該周期検出手段で検出された周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する計数手段、
該計数手段で計数された回数が所定の範囲内に属するか否かを判断する判断手段、及び
該判断手段で所定の範囲内に属すると判断した場合、オン情報又はオフ情報を外部へ出力する出力手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記周期検出手段を、
複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、信号ごとの周期に加えて信号強度も検出する手段として機能させ、
前記オンオフ制御装置を、
複数の前記センサで検出された複数のドップラー信号からフィルタリングされた複数の信号について、前記周期検出手段で検出された信号強度相互間の差異を算出する強度差算出手段、
該強度差算出手段で算出された差異が所定値より大きい組み合わせが存在するか否かを判断する存否判断手段、及び
該存否判断手段で存在すると判断した場合、該組み合わせの信号のうち信号強度が大きい方の信号の周期に基づいて物体の往復運動の回数を計数する計数手段
として機能させることを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−237839(P2009−237839A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82309(P2008−82309)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 2008年度修士論文発表会 情報システム学研究室 主催者名 同志社大学 開催日 平成20年1月24,25日 発行所名 社団法人 情報処理学会 刊行物名 情報処理学会第70回全国大会(平成20年) 講演論文集 発行日 平成20年 3月13日
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】