説明

オーディオ機器の出力回路とその制御方法、及びそれを備えた電子機器

【課題】外部の負荷とDCカット容量とで決まる時定数が長くなるケースにおいてもポップ音を発生させないオーディオ機器の出力回路とその制御方法及びそれを備えたオーディオ機器を提供する。
【解決手段】出力アンプ1を備えたオーディオ機器の出力回路において、前記出力アンプ1の接地レベルへの遷移終了後に、前記出力アンプ1の出力端子1aを接地に短絡するスイッチ素子をさらに備える。ここで、前記スイッチ素子を前記出力アンプ1のNチャネルドライバトランジスタ5により代用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ機器の出力アンプの停止時に発生するポップ音を低減するポップ音低減回路とそれを具備したオーディオ機器の出力回路とその制御方法、及びそれを備えた電子機器に関し、特に、より安定したポップ音低減動作を行うのに好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ機器の音声出力をオン/オフさせるときに耳障りなポップ音が発生することがある。そのポップ音の発生を防止するため、オン/オフ時に音声出力用アンプ回路に対して、出力電圧をライズドコサイン波やランプ波などの滑らかな波形で遷移させ、ポップ音の発生を防止する回路技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、今までのポップ音対策回路では、音声出力をオフ時に出力にDC成分をカットするための容量(以下、DCカット容量という。)3が付加されている場合において、外部の抵抗負荷4の抵抗RLと、DCカット容量3のキャパシタンスC1とで決まる時定数が出力電圧の遷移時間に対して大きい場合、出力電圧の遷移が終了してもDCカット容量に残留電荷があるため、この状態で出力電圧をオフにしてしまうと残留電荷を放電する経路が遮断され、DCカット後の波形に大きな段差(図4の11,12)が生じ、ポップ音が発生してしまう不具合があった。以下、具体例について、図3及び図4を参照して説明する。
【0004】
図3は従来例に係るオーディオ機器の出力アンプ1の出力回路の構成を示す回路図であり、図4は図3の出力アンプ1の出力回路の動作を示す各信号のタイミングチャートである。図3において、出力アンプ1は音声出力制御信号PDによりオン/オフされ、その出力端子1aはオーディオ機器の出力端子2に接続される。さらに、出力端子2はDCカット容量3及び負荷抵抗4を介して接地される。
【0005】
図3の従来例の出力回路では、出力アンプ1がオフする直前に、従来例に係る前段のポップ音対策回路(図示せず。)により、出力電圧VOUTを接地レベルにゆっくり遷移させ、接地レベルに到達後に出力アンプ1をオフし、その出力端子1aはハイインピーダンス状態となる。ここで、出力負荷4の抵抗RLとDCカット容量3のキャパシタンスC1とで決まる時定数が長い場合を考えてみる。その場合における出力端子2の出力電圧VOUT及び抵抗負荷4の出力電圧(誘起電圧)VOUTRLの波形を図4に示す。
【0006】
図4において、DCカット後の出力負荷4の出力電圧VOUTRLは、出力負荷4の抵抗RLとDCカット容量3のキャパシタンスC1とで決まる時定数による1次遅れ要素が支配的となり、出力電圧VOUTの波形に対して遅れて遷移する。そして、出力電圧VOUTの遷移が終了し、接地レベルに到達してもDCカット後の出力電圧VOUTRLはDCカット容量3のキャパシタンスC1に残留している電荷により、まだ接地レベルには到達しない。また、この状態において、出力アンプ1をオフし、その出力端子がハイインピーダンス状態としてしまうと、DCカット容量3のキャパシタンスC1に残留した電荷を放電する経路が遮断され、出力電圧波形に大きな段差(図4の11,12)が生じてしまい、ポップ音が発生してしまう不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、外部の負荷とDCカット容量とで決まる時定数が長くなるケースにおいてもポップ音を発生させないオーディオ機器の出力回路とその制御方法、及びそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係るオーディオ機器の出力回路は、出力アンプを備えたオーディオ機器の出力回路において、前記出力アンプの接地レベルへの遷移終了後に、前記出力アンプの出力端子を接地に短絡するスイッチ素子をさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明に係る電子機器は、上記オーディオ機器の出力回路を備えたことを特徴とする。
【0010】
さらに、第3の発明に係るオーディオ機器の出力回路の制御方法は、出力アンプを備えたオーディオ機器の出力回路の制御方法において、前記出力アンプの接地レベルへの遷移終了後に、スイッチ素子が、前記出力アンプの出力端子を接地に短絡するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明によれば、オーディオ機器の出力アンプをオフする際に、外部の負荷とDCカット容量とで決まる時定数が長くなるケースにおいても、ポップ音の発生を防ぐことができる。また、接地短絡用スイッチ素子を、例えば出力アンプのNチャネルドライバトランジスタで代用することにより、新たな回路要素を追加せずにポップ音対策が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るオーディオ機器の出力アンプ1の出力回路の構成を示す回路図である。
【図2】図1の出力アンプ1の出力回路の動作を示す各信号のタイミングチャートである。
【図3】従来例に係るオーディオ機器の出力アンプ1の出力回路の構成を示す回路図である。
【図4】図3の出力アンプ1の出力回路の動作を示す各信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係るオーディオ機器の出力アンプ1の出力回路の構成を示す回路図であり、図2は図1の出力アンプ1の出力回路の動作を示す各信号のタイミングチャートである。本実施形態に係るオーディオ機器の出力アンプ1の出力回路は、オーディオ機器の音声出力をオフさせるときのポップ音対策回路として、出力アンプ1の接地レベルへの遷移終了後にその出力端子1aを接地に短絡するスイッチ素子を備え、当該スイッチ素子を出力アンプ1のNチャネルドライバトランジスタ5により代用し、これにより、DCカット容量3のキャパシタンスC1に残留電荷を放電する経路を確保し、DCカット後の出力電圧波形に段差(図3の11,12)を生じさせないようにし、ポップ音の発生を防止することを特徴としている。以下、本実施形態の特徴について、以下の図面を用いて詳細に説明するする。
【0015】
図1において、出力アンプ1は音声出力制御信号PDによりオン/オフされ、その出力端子1aはオーディオ機器の出力端子2に接続される。さらに、出力端子2はDCカット容量3及び負荷抵抗4を介して接地される。また、出力アンプ1の接地レベルへの遷移終了後にその出力端子1aを接地に短絡するスイッチ素子として、出力アンプ1のNチャネルドライバトランジスタ5により代用する。すなわち、本実施形態に係る出力回路は、図3の従来例に係る出力回路に比較して、出力アンプ1がオフした際にNチャネルドライバトランジスタ5をオンにし、出力アンプ1の出力端子1aを接地に短絡させるように制御される。
【0016】
図1の出力回路では、従来のポップ音対策回路と同様に、出力電圧VOUTを接地レベルに滑らかに遷移させるところは変わらないが、図2に示すように、出力電圧VOUTが接地レベルに到達後に出力アンプ1のNチャネルドライバトランジスタ5がオンとなり、出力端子1aが接地に短絡される。これにより、DCカット容量3のキャパシタンスC1に残留した電荷は放電され、出力電圧波形に段差(図4の11,12)を生じることなく最終的にDCカット後の電位も接地レベルとなる。以上のメカニズムによりポップ音の発生は解消される。
【0017】
従って、オーディオ機器の出力アンプ1をオフする際に、外部の負荷とDCカット容量とで決まる時定数が長くなるケースにおいても、ポップ音の発生を防ぐことができる。また、接地短絡用スイッチを出力アンプ1のNチャネルドライバトランジスタ5代用することにより、新たな回路要素を追加せずにポップ音対策が可能である。
【0018】
以上説明したように、本実施形態によれば、出力アンプ1の接地レベルへの遷移終了後にその出力端子1aを接地に短絡するスイッチ素子を備え、当該スイッチ素子を出力アンプ1のNチャネルドライバトランジスタ5により代用し、これにより、DCカット容量3のキャパシタンスC1に残留電荷を放電する経路を確保し、DCカット後の出力電圧波形に段差(図4の11,12)を生じさせないようにし、ポップ音の発生を防止することができる。
【0019】
以上のように構成されたオーディオ機器の出力回路を、例えば、オーディオ機器のみならず、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビジョン受像機などの電子機器に広く適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上詳述したように、本発明によれば、オーディオ機器の出力アンプをオフする際に、外部の負荷とDCカット容量とで決まる時定数が長くなるケースにおいても、ポップ音の発生を防ぐことができる。また、接地短絡用スイッチ素子を、例えば出力アンプのNチャネルドライバトランジスタで代用することにより、新たな回路要素を追加せずにポップ音対策が可能である。
【0021】
本発明は、オーディオ機器の出力回路に適用され、それは、例えば、オーディオ機器のみならず、携帯電話、パーソナルコンピュータ、テレビジョン受像機などの電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…出力アンプ、
1a…出力アンプの出力端子、
2…オーディオ機器の出力端子、
3…DCカット容量、
4…負荷抵抗、
5…Nチャネルドライバトランジスタ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2011−029683号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力アンプを備えたオーディオ機器の出力回路において、
前記出力アンプの接地レベルへの遷移終了後に、前記出力アンプの出力端子を接地に短絡するスイッチ素子をさらに備えたことを特徴とするオーディオ機器の出力回路。
【請求項2】
前記スイッチ素子を前記出力アンプのNチャネルドライバトランジスタにより代用したことを特徴とする請求項1記載のオーディオ機器の出力回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオーディオ機器の出力回路を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
出力アンプを備えたオーディオ機器の出力回路の制御方法において、
前記出力アンプの接地レベルへの遷移終了後に、スイッチ素子が、前記出力アンプの出力端子を接地に短絡するステップを含むことを特徴とするオーディオ機器の出力回路の制御方法。
【請求項5】
前記スイッチ素子を前記出力アンプのNチャネルドライバトランジスタにより代用したことを特徴とする請求項4記載のオーディオ機器の出力回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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