説明

オートフォーカス装置及び撮像装置

【課題】 測距不能な被写体を撮影した場合でもユーザーの目的に応じて最適な合焦状態を得ることが可能なオートフォーカス装置及び撮像装置の提供。
【解決手段】 被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時のフォーカス位置を外部から設定可能な設定手段と、フォーカスレンズを駆動する駆動手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定したフォーカス位置へフォーカスレンズを駆動することを特徴とするオートフォーカス装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオートフォーカス装置及び撮像装置に関し、特に、被写体距離の測距が可能か否かを判別し、それに応じてフォーカスレンズの焦点位置を設定するオートフォーカスカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オートフォーカスカメラにおいては、コントラストの低いものなど測距不可能な被写体を撮影した場合、ピント位置が決定できないため、例えば、予め決められたフォーカス位置にレンズ駆動を行い撮影するよう制御される。
【0003】
上記測距不能時のフォーカス位置は単純な固定値を用いると、シーンによって合焦状態が得られる場合や得られない場合があり完全ではなかった。この問題に対しては、例えば、下記特許文献1のように、人物撮影を行っているかどうかや、レンズの焦点距離や、撮影モードによってフォーカス位置を変更することで、より細かく制御する方法が知られている。
【特許文献1】特開平08−054558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法を用いても、例えば人物を撮影している場合にいつも同じ距離で撮影するわけではなく、また、レンズの焦点距離によっていつも同じ距離の被写体を撮影するわけではなく、また、撮影モード毎にいつも同じ距離の被写体を撮影するわけではないことから、必ずしも完全なフォーカス位置の制御を行えていなかった。
【0005】
本発明の目的は、測距不能な被写体を撮影した場合でもユーザーの目的に応じて最適な合焦状態を得ることを可能とするオートフォーカス装置及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明のオートフォーカス装置は、被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時のフォーカス位置を外部から設定可能な設定手段と、フォーカスレンズを駆動する駆動手段とを備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定したフォーカス位置へフォーカスレンズを駆動することを特徴とする。
【0007】
本出願に係る第2の発明のオートフォーカス装置は、被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時のフォーカス位置を外部から設定可能な設定手段と、表示手段と、フォーカスレンズを駆動する駆動手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定したフォーカス位置へフォーカスレンズを駆動するとともに、フォーカス位置を前記表示手段に表示することを特徴とする。
【0008】
本出願に係る第3の発明の撮像装置は、被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時の撮像動作を外部から設定可能な設定手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定した撮像動作を行うよう設定することを特徴とする。
【0009】
本出願に係る第4の発明は、被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時の撮像動作を外部から設定可能な設定手段と、表示手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定した撮像動作を行うよう設定するとともに、設定した撮像動作を前記表示手段に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、測距不能時でもユーザーの撮影したいシーンに最適な合焦状態を得ることが可能なオートフォーカス装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
(第1の実施例)
図1は、本発明の実施形態に従うオートフォーカス装置を利用したデジタルカメラの概略図である。
【0013】
本実施例におけるデジタルカメラは、光学系01およびフォーカスレンズ02を持ち、これらにより結像した光を撮像素子03により光電変換し、出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路を備えた前置処理回路04とA/D変換器05を通してデジタル化した信号をメモリコントローラ06を介してメモリ07に格納し、図示していない信号処理回路によって画像に変換してから記録媒体08に記録する。
【0014】
フォーカス動作は、制御部11により制御される。フォーカスレンズ駆動回路12によりフォーカスレンズ02が駆動され、各位置において撮像した画像信号を用いて画像のコントラストに応じた信号をAF評価値演算回路14において演算する。上記演算は測距枠設定手段13により設定された測距枠について行われる。次に、上記AF評価値を用いて測距判定手段15により測距可能か否かを判定し、測距可能な場合には合焦位置決定手段16において合焦位置を決定後、その位置にフォーカスレンズを駆動するよう動作する。測距不可能な場合にはフォーカス位置設定手段17において設定されたフォーカス位置へフォーカスレンズを駆動するよう動作する。なお、SW1スイッチ09が操作された場合にフォーカス動作が行われ、SW2スイッチ10が操作された場合に撮像および画像の記録が行われる。
【0015】
コントラストに応じた信号(AF評価値)の演算は次のように行う。測距枠内の画像データの各ラインに水平方向のバンドパスフィルタを適用する。次に、ライン毎にバンドパス出力信号の絶対値の最も大きいものを選択する。選択した信号を垂直方向に積分する。上記構成により、水平方向のコントラストの大きいものが検出され、垂直方向に積分することで信号のS/Nの向上につながる。以上のように構成することで、合焦状態で最も値が大きくなり、デフォーカス状態にすると値が小さくなるような信号を得ることが可能である。したがって、上記信号の極大値位置で撮影を行うことで合焦した画像を得ることができる。
【0016】
以上のようなカメラにおいて、測距不能時の動作について図2のフローを用いて詳しく説明する。
【0017】
ステップS1において、測距不能時のフォーカス位置をユーザーが設定する。この動作はSW1スイッチ09を押す前に設定されるものである。設定方法としては、例えば、設定モードに入り、図3に示したような距離をバー表示してバーの調整によってフォーカス位置を設定すればよい。これにより、ユーザーは撮影したいシーンが遠景なのか、近距離のものなのか、などに応じて自由に設定可能となり、測距不能となった場合でもユーザーの撮影したいシーンに対応したフォーカス位置ですばやく撮影可能とするものである。フォーカス位置の設定方法としては、バー表示による設定に限られるわけではなく、例えば、「遠景」、「人物全身」、「人物バストアップ」などのような言葉を選択させるようにしてもよい。
【0018】
ステップS2において、フォーカス動作を行いAF評価値を演算する。通常SW1スイッチ09をトリガーとして本動作を行うよう構成される。
【0019】
ステップS3において、上記AF評価値を用いて測距可能なシーンであるかどうかを判定する。判定の方法は、例えば、AF評価値の最大値と最小値の差が所定値以上であれば測距可能と判定し、所定値未満であれば測距不可能と判定するようにすればよい。
【0020】
測距可能と判定された場合には、ステップS4に進み、上記AF評価値より合焦位置を決定し、ステップS5において合焦位置にフォーカスレンズを駆動する。測距不可能と判定された場合には、ステップS6に進み、図4のように予め設定した測距不能時のフォーカス位置を図示していない画面に表示し、ステップS7において、上記フォーカス位置にフォーカスレンズを駆動する。
【0021】
以上の動作により、ユーザーが予め撮影したい被写体に応じたフォーカス位置を設定しておくことにより、測距不可能な場合であっても、最適なフォーカス位置で撮影を行うことが可能である。
【0022】
なお、上記測距不可能時のフォーカス位置は1つのみとは限らず、例えば、ズームレンズを搭載したカメラにおいて、焦点距離に応じて変更可能としてもよいし、風景撮影モードや人物撮影モードなど撮影モードを複数持つカメラにおいて、それぞれフォーカス位置を設定可能としてもよい。
【0023】
また、本実施例ではユーザーに距離を設定させる例を用いて説明したが、カメラのデフォルト位置で撮影や、前回合焦位置で撮影などを選択可能としても良い。
【0024】
(第2の実施例)
本実施形態においては、第1の実施形態における測距不能時のフォーカス位置の設定可能な部分について、フォーカス位置ではなく撮像動作を選択可能としたものである。
【0025】
第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図5に示したとおり第1の実施形態におけるデジタルカメラの概略構成とは、フォーカス位置設定手段17の代わりに撮像動作設定手段18に変更されている部分のみ異なる。
【0026】
撮像動作設定手段18では、例えば、図6のように次のような撮像動作を選択可能である。
【0027】
1.カメラでデフォルト設定されているフォーカス位置へレンズ駆動して撮影する、
2.オートフォーカスを再起動したのち撮影する、
3.絞って撮影する、
4.Wide側へ画角を変更して撮影する、
など。
【0028】
例えば、1を選択した場合には、測距不能時には予め決定された、例えば、過焦点位置などで撮影するよう設定される。2を選択した場合には、自動的にオートフォーカスを再起動した後撮影するよう設定される。3を選択した場合には、測光値から決定した絞り値よりも絞りを絞って撮影する用設定される。4を選択した場合には、画角をWide側に変更して撮影を行うよう設定される。3,4はいずれも被写界深度を深くして撮影することにより、ピントのあった画を得るのが目的である。
【0029】
以上のように構成することで、ユーザーの撮影したいシーンに応じた撮影方法を予めユーザーにより設定可能となるため、測距不能時においてもより確実に合焦状態を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施例に係るデジタルカメラの概略を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるフォーカス動作を示すフローである。
【図3】測距不能時のフォーカス位置設定画面の例を示す図である。
【図4】測距不能時のフォーカス位置画面表示の例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係るデジタルカメラの概略を説明する図である。
【図6】測距不能時の撮影動作設定画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
01 光学系
02 フォーカスレンズ
03 撮像素子
04 前置処理回路
05 A/D変換器
06 メモリコントローラ
07 メモリ
08 記録媒体
09 SW1スイッチ
10 SW2スイッチ
11 制御部
12 フォーカスレンズ駆動回路
13 測距枠設定手段
14 AF評価値演算回路
15 測距判定手段
16 合焦位置決定手段
17 フォーカス位置設定手段
18 撮像動作設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時のフォーカス位置を外部から設定可能な設定手段と、フォーカスレンズを駆動する駆動手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定したフォーカス位置へフォーカスレンズを駆動することを特徴とするオートフォーカス装置。
【請求項2】
被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時のフォーカス位置を外部から設定可能な設定手段と、表示手段と、フォーカスレンズを駆動する駆動手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定したフォーカス位置へフォーカスレンズを駆動するとともに、フォーカス位置を前記表示手段に表示することを特徴とするオートフォーカス装置。
【請求項3】
前記フォーカス位置を撮影レンズの焦点距離に応じて変更可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項4】
前記フォーカス位置を撮影モードに応じて変更可能とすることを特徴とする請求項1または2に記載のオートフォーカス装置。
【請求項5】
被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時の撮像動作を外部から設定可能な設定手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定した撮像動作を行うよう設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
被写体までの距離を測定する測距手段と、前記測距手段による測距が不能であるか否かを判定する測距不能検出手段と、測距不能時の撮像動作を外部から設定可能な設定手段と、表示手段と、を備え、前記測距不能検出手段により測距が不能であると判別された時に前記設定手段により設定した撮像動作を行うよう設定するとともに、設定した撮像動作を前記表示手段に表示することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−4005(P2007−4005A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186389(P2005−186389)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】