説明

オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるためのコーティング組成物

【課題】基体からオーバーコートされたフォトレジスト層に戻る照射放射線の反射を減少させることができ、および/または平坦化もしくはビア充填層として機能し得る反射防止コーティング組成物を含む、有機コーティング組成物を提供する。
【解決手段】本発明の好ましい有機コーティング組成物は分裂生成物の生成なしに熱処理で硬化可能な1種類以上の樹脂を含む。本発明の特に好ましい有機コーティング組成物は無水物およびヒドロキシ部分を含む1種類以上の成分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体からオーバーコートされたフォトレジスト層に戻る照射放射線の反射を減少させることができ、および/または平坦化もしくはビア充填層として機能し得る組成物(反射防止コーティング組成物(すなわち、「ARC」)を含む)に関する。より詳細にはには、本発明は、別の架橋性成分を用いることなしに、熱処理で硬化可能である1種類以上の樹脂を含む有機コーティング組成物、特には、反射防止コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは画像を基体に転写するために用いられる感光性フィルムである。フォトレジストのコーティング層を基体上に形成した後、フォトマスクを通して活性化放射線の源に露出する。フォトマスクは活性化放射線に対して不透明である領域および活性化放射線に対して透明である他の領域を有する。活性化放射線に露出することでフォトレジストコーティングの光誘起もしくは化学的変化がもたらされ、それによりフォトマスクのパターンが、フォトレジストコーティングされた基体に転写される。露出の後、フォトレジストは現像され、基体の選択的処理を可能にするレリーフ画像がもたらされる。
【0003】
フォトレジストの主要用途は半導体製造におけるものであり、その目的は高度に研磨された半導体スライス、例えば、ケイ素もしくはヒ化ガリウムを、回路機能を果たす、好ましくはミクロンもしくはサブミクロン構造の、電子伝導路の複合マトリックスに変換することである。適正なフォトレジスト処理がこの目的を達成する鍵である。様々なフォトレジスト処理工程の間には強い相互依存が存在するものの、露光が高解像度フォトレジスト画像の獲得における最も重要な工程の1つであるものと考えられる。
【0004】
フォトレジストの露光に用いられる活性化放射線の反射は、多くの場合、フォトレジスト層にパターン化される画像の解像度の限界をもたらす。基体/フォトレジスト界面からの放射線の反射はフォトレジスト内での放射線強度の空間的変動を生じる可能性があり、これは現像の際に不均一なフォトレジスト線幅を生じる。放射線は基体/フォトレジスト界面から、露光しようとはしていないフォトレジストの領域内に散乱する可能性もあり、これもまた線幅の変動を生じさせる。散乱および反射の量は、典型的には、領域間で変化し、さらなる線幅の不均一性を生じる。基体のトポグラフィー変動も解像度制限の問題を生じさせる可能性がある。
【0005】
反射放射線の問題を軽減するのに用いられるアプローチの1つは、基体表面とフォトレジストコーティング層との間に挿入される放射線吸収層の使用である。特定の樹脂、グリコールウリル架橋剤および酸を含有する反射防止組成物を報告する米国特許出願公開第2005/0112494号を参照されたし。
【0006】
多くの高性能リソグラフィー用途には、望ましい性能特性、例えば、最適な吸収特性およびコーティング特性をもたらすため、特定の反射防止組成物が用いられる。それにもかかわらず、電子装置製造者は反射防止コーティング層上にパターン化されるフォトレジスト画像の解像度の増加を絶えず求め、言い換えれば、反射防止組成物のさらに向上した性能を要求している。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0112494号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるための新規反射防止組成物を生み出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、オーバーコートされるフォトレジスト層と共に用いるための、反射防止組成物(「ARC」)を包含する新規有機コーティング組成物を最近見出した。本発明の好ましい有機コーティング組成物および系は、オーバーコートされるフォトレジスト画像のリソグラフィー結果(例えば、解像度)の向上をもたらすことができる。
【0009】
より具体的には、一態様において、オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるための有機コーティング組成物、特には、反射防止組成物であって、従来用いられている架橋剤、例えば、アミン系物質(例えば、メラミン、グリコウリルもしくはベンゾグナミン)もしくはエポキシ物質を使用しないことを含めて、別の架橋剤成分を用いることなしに熱処理で硬化可能である1種類以上の樹脂を含む組成物が提供される。
【0010】
別の態様においては、オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるための有機コーティング組成物、特には、反射防止組成物であって、無水物およびヒドロキシ(例えば、アルコール)部分を含む1種類以上の樹脂を含有する組成物が提供される。
【0011】
本発明のこの態様の好ましい組成物は、従来用いられている架橋剤、例えば、アミン系物質(例えば、メラミン、グリコウリルもしくはベンゾグアナミン)もしくはエポキシ物質を用いないことを含めて、如何なる別の架橋剤成分を用いることなしに熱処理で硬化することができる。かかる好ましい組成物においては、無水物およびヒドロキシ部分が反応してその組成物を硬化させる。
【0012】
本発明のさらなる態様においては、オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるための有機コーティング組成物、特には、反射防止組成物であって、いかなる揮発性種、すなわち、架橋反応において分裂(共有結合切断)する基(特に、分裂生成物が500、400、300、200、もしくは100以下の分子量を有する場合)の遊離もなしに、熱処理で硬化可能である1種類以上の成分を含む組成物が提供される。
【0013】
好ましい実施形態において、本発明のコーティング組成物の熱処理は、1種類以上の組成物成分の付加反応、例えば、1種類以上の組成物成分(例えば、樹脂成分)に存在し得る、無水物とアルコール基との付加反応、を促進する。例示的なアルコール部分には、例えば、アルコール(例えば、C1−12アルコール)、カルボキシ、および芳香族アルコール、例えば、フェノールおよびナフトールが含まれる。例示的な無水物基には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、および無水コハク酸が含まれる。
【0014】
さらなる態様においては、オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるための有機コーティング組成物、特に反射防止組成物は、添加される酸もしくは酸発生剤化合物(例えば、熱的酸発生剤化合物および/またはフォト酸発生剤化合物)を含まないか、もしくは少なくとも本質的に含まない。
【0015】
本発明の反射防止コーティング組成物は、好ましくは、オーバーコートされるフォトレジスト層の画像形成に用いられる照射放射線を有効に吸収することができる1種類以上の発色団基を含有する成分を含む。典型的な発色団基は芳香族基であり、例えば、任意に置換されていてもよいフェニル、アントラセンおよびナフチルをはじめとする任意に置換されていてもよい炭素環式アリール基である。248mmで画像形成されるオーバーコートされるフォトレジスト組成物と共に用いられる反射防止コーティング組成物の場合には、好ましい発色団基には、任意に置換されていてもよいアントラセンおよび任意に置換されていてもよいナフチルが包含され得る。193mmで画像形成されるオーバーコートされるフォトレジストと共に用いられる反射防止コーティング組成物の場合は、好ましい発色団基には、任意に置換されていてもよいフェニルが包含され得る。
【0016】
かかる発色団基は様々なアプローチによって本発明の反射防止コーティング組成物に組み込むことができる。好ましい組成物は、1種類以上の発色団基、例えば、樹脂主鎖からペンダントしていても、もしくはそれと一体化されていてもよい、任意に置換されていてもよい炭素環式アリール基を含む1種類以上の樹脂を含有する樹脂成分を含むことができる。その代わりに、もしくはかかる吸収性樹脂の使用に加えて、反射防止組成物はさらなる成分、例えば、かかる発色団基を含む1種類以上の非ポリマー性染料化合物、例えば、1種類以上の発色団部分(例えば、1種類以上の任意に置換されていてもよいフェニル、任意に置換されていてもよいアントラセンもしくは任意に置換されていてもよいナフチル基)を含む小分子(例えば、約1000もしくは500未満のMW)を含むことができる。
【0017】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、その組成物コーティング層の熱処理によって硬化させることができる。例示的な熱硬化条件としては、150℃以上で30秒以上の組成物コーティング層の処理が挙げられる。
【0018】
反射防止コーティング組成物に加えて他の用途、例えば、ビア充填として用いる場合には、好ましくは、この組成物の層上にフォトレジスト組成物層を適用する前にこの組成物を硬化させる。
【0019】
本発明のコーティング組成物は、典型的には、有機溶媒溶液として配合され、好適にはスピンコーティングによって(すなわち、スピンオン組成物)、基体に適用される。
【0020】
様々なフォトレジストを本発明のコーティング組成物と組み合わせて(すなわち、オーバーコートして)用いることができる。本発明の反射防止組成物と共に用いるのに好ましいフォトレジストは、化学増幅型レジストであり、特に、1種類以上のフォト酸発生剤化合物と、光発生酸の存在下で脱保護もしくは分裂反応を受ける単位(例えば、フォト酸不安定性エステル、アセタール、ケタールもしくはエーテル単位)を含む樹脂成分とを含むポジ型フォトレジストである。ネガ型フォトレジスト、例えば、活性化放射線への曝露で架橋(すなわち、硬化若しくは硬質化)する樹脂も本発明のコーティング組成物と共に用いることができる。本発明のコーティング組成物と共に用いるのに好ましいフォトレジストは、比較的短い波長の放射線、例えば、300nm未満もしくは260nm未満、例えば、約248nmの波長を有する放射線、または約200nm未満、例えば、193nmの波長を有する放射線で画像形成することができる。
【0021】
本発明は、さらに、フォトレジストレリーフ画像の形成方法および、本発明のコーティング組成物単独で、もしくはフォトレジスト組成物との組み合わせでコーティングされた基体(例えば、マイクロエレクトロニクスウェハ基体)を含む、電子装置並びに新規製造物品を提供する。
【0022】
本発明の他の態様は以下に開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
上述のように、一態様において、オーバーコートされるフォトレジストと共に用いるための有機コーティング組成物、特には、反射防止組成物であって、いかなる揮発性種、すなわち、架橋反応において分裂(共有結合切断)する基(特に、分裂生成物が比較的低分子量、例えば、約500、400、300、200、もしくは100以下の分子量である場合)の生成もなしに、熱処理で硬化可能である1種類以上の成分を含む組成物が提供される。好ましい実施形態において、熱処理は、1種類以上の組成物成分の付加反応、例えば、1種類以上の組成物成分、例えば、樹脂成分に存在し得る、無水物とアルコール基との付加反応を促進する。
【0024】
本発明の好ましい組成物は、従来用いられている架橋剤、例えば、アミン系物質(例えば、メラミン、グリコールウリルもしくはベンゾカナミン)もしくはエポキシ物質を含めて、いかなる別の架橋剤成分を用いることもなしに熱処理で硬化可能である。
【0025】
下地コーティング組成物
本発明の好ましいコーティング組成物は1種類以上の樹脂を好適に含むことができる。この1種類以上の樹脂は、1種類以上の発色団基と、熱処理で組成物コーティング層の硬化を生じ得る1種類以上の部分とを好適に含むことができる。
【0026】
好ましい樹脂は2種類以上の異なる反復単位を有する共重合体であり得る。アクリレート樹脂が多くの用途に特に好適であり得る。ターポリマー(3種類の異なる反復単位)およびテトラポリマー(4種類の異なる反復単位)を含む高次樹脂も好ましい。
【0027】
本発明のコーティング組成物、特に、反射制御用途のためのものは、オーバーコートされるフォトレジスト層の露光に用いられる放射線を吸収する、追加の染料化合物を含むこともできる。他の任意の添加物には、表面平滑剤、例えば、Silwet 7604の商品名でUnion Carbideから入手可能な平滑剤、または3M Companyから入手可能な界面活性剤FC171もしくはFC431が包含される。
【0028】
アクリレート系樹脂は公知の方法、例えば、1種類以上のアクリレートモノマー、例えば、ヒドロキシエチルメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート メチルアントラセンメタクリレートもしくは他のアントラセンアクリレート等の重合(例えば、ラジカル開始剤の存在下における)によって調製することができる。無水物(例えば、無水マレイン酸)を包含する他のモノマーをアクリレートモノマーと共重合させることができる。反射防止組成物において用いるため、1種類以上の共重合したモノマーが好適な発色団基、例えば、248nm放射線で画像形成されるオーバーコートされるフォトレジストと共に用いられる反射防止コーティング組成物において用いるためのアントラセン、もしくは193nm放射線で画像形成される反射防止コーティング組成物において用いるためのフェニルを含むことができる。本発明のコーティング組成物において有用な樹脂の好適な合成については下記例も参照のこと。
【0029】
本発明の特に好ましいコーティング組成物は、無水物およびヒドロキシル部分を含む1種類以上の成分を含む。かかる好ましい組成物において、無水物およびヒドロキシル部分は1つの組成物成分に共存し得る。例えば、樹脂に、例えば、ヒドロキシル基を含むモノマーを無水物モノマーと共重合させることにより、共存することができる。あるいは、無水物およびヒドロキシル部分は、別々の組成物成分、例えば、別々の樹脂に存在していてもよく、その場合、例えば、一方の樹脂が無水物基を含み、かつ別の樹脂がヒドロキシル基を含んでもよい。
【0030】
上述のように、反射防止用途には、好適には、反応して樹脂を形成する1種類以上の化合物は、オーバーコートされるフォトレジストコーティング層の露光に用いられる放射線を吸収するための発色団として機能することができる部分を含む。例えば、フェニル化合物、例えば、スチレンもしくはフェニルアクリレート(例えば、ベンジルアクリレートもしくはベンジルメタクリレート)を他のモノマーと重合させ、200nm未満の波長、例えば、193nmで画像形成されるフォトレジストと共に用いられる反射防止組成物において特に有用である樹脂を得ることができる。同様に、樹脂を300nm未満の波長もしくは200nm未満の波長(例えば、248nmもしくは193nm)で画像形成されるオーバーコートされるフォトレジストと共の場合の組成物において用いるには、ナフチル化合物、例えば、1つもしくは2つ以上のカルボキシル置換基を含むナフチル化合物(例えば、ジアルキル、特にジ−C1−6アルキルナフタレンジカルボキシレート)を重合させることができる。反応性アントラセン化合物、例えば、1つ以上のカルボキシもしくはエステル基(例えば、1つ以上のメチルエステルもしくはエチルエステル基)を有するアントラセン化合物も好ましい。
【0031】
深UV(deep UV)用途(すなわち、オーバーコートされるレジストを深UV放射線で画像形成する)には、反射防止組成物のポリマーは、好ましくは、深UV範囲(典型的には、約100から300nm)における反射を吸収する。したがって、そのポリマーは、好ましくは、深UV発色団である単位、すなわち、深UV放射線を吸収する単位を含む。一般的には、高度に共役した部分が好適な発色団である。典型的には、芳香族基、特には、多環式炭化水素もしくは複素環単位(例えば、各環に3から8個の構成要素を含み環あたり0から3個のN、OもしくはS原子を有する、2から3、4つの、融合したもしくは別々の環を有する基)が好ましい深UV発色団である。かかる発色団には、任意に置換されていてもよいフェナントリル、任意に置換されていてもよいアントラシル、任意に置換されていてもよいアクリジン、任意に置換されていてもよいナフチル、任意に置換されていてもよいキノリニルおよび環置換キノリニル、例えば、ヒドロキシキノリニル基が含まれる。オーバーコートされるレジストの248nm画像形成には、任意に置換されていてもよいアントラセニル基が特に好ましい。好ましい反射防止組成物樹脂はペンダントアントラセン基を有する。好ましい樹脂には、Shipley Companyの欧州公開出願第813114A2号の第4頁に開示される式Iのものが含まれる。
【0032】
別の好ましい樹脂結合剤は、任意に置換されていてもよいキノリニル基もしくは1個以上のN、OもしくはS環原子を有するキノリニル誘導体(例えば、ヒドロキシキノリニル)を含む。このポリマーは他の単位、例えば、ポリマー主鎖からペンダントするカルボキシおよび/もしくはアルキルエステル単位を含むことができる。特に好ましい反射防止組成物樹脂はかかる単位を含むアクリルであり、例えば、Shipley Companyの欧州公開出願第813114A2号の第4〜5頁に開示される式IIの樹脂である。
【0033】
上述のように、193nmでの画像形成には、反射防止組成物は、好ましくは、フェニル発色団単位を有する樹脂を含み得る。例えば、193nmで画像形成されるフォトレジストと共に用いるのに好適な反射防止樹脂の1つは、スチレン、無水マレイン酸、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートの重合単位で構成されたターポリマーである。
【0034】
好ましくは、本発明の反射防止組成物の樹脂は約1,000から約10,000,000ダルトン、より典型的には、約5,000から約1,000,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)、および約500から約1,000,000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。本発明のポリマーの分子量(MwもしくはMnのいずれも)は、好適には、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0035】
吸収性発色団を有するコーティング組成物樹脂が一般に好ましくはあるが、本発明の反射防止組成物は他の樹脂を共存樹脂(co−resin)もしくは単独の樹脂(sole−resin)結合剤成分として含むことができる。例えば、フェノール化合物、例えば、ポリ(ビニルフェノール)およびノボラックを用いることができる。かかる樹脂は、組み込まれるShipley Companyの欧州特許出願公開EP542008に開示される。フォトレジスト樹脂結合剤として以下で説明される他の樹脂を本発明の反射防止組成物の樹脂結合材組成物において用いることもできる。
【0036】
本発明のコーティング組成物のかかる樹脂性分の濃度は比較的広範囲で変化することができ、一般には、樹脂結合剤はコーティング組成物の乾燥成分の総量の約50から95重量パーセント、より典型的には、全乾燥成分(溶媒担体を除くすべての成分)の約60から90重量パーセントの濃度で用いられる。
【0037】
酸もしくは酸発生剤化合物(任意成分)
本発明のコーティング組成物はさらなる任意の成分を含むことができる。したがって、例えば、コーティング組成物は添加された酸源、例えば、酸もしくは酸発生剤化合物、特には、熱酸発生剤化合物を好適に含むことができ、それにより適用されたコーティング組成物を、例えば熱処理により、オーバーコートされるフォトレジストの適用に先立って硬化させることができる。
【0038】
しかしながら、上述のように、好ましい態様において、本発明のコーティング組成物はかかる添加された酸もしくは酸発生剤化合物(1種類以上)なしに配合することができる。いかなる添加された酸もしくは酸発生剤化合物をも含まないか、もしくは少なくとも本質的に含まないかかる組成物は、貯蔵寿命の向上をはじめとする性能上の利益をもたらし得る。本明細書において言及される場合、添加された酸もしくは酸発生剤化合物を本質的に含まない組成物は、配合された溶媒系コーティング組成物の総重量を基準にして、3、2もしくは1重量パーセント未満の添加された酸もしくは酸発生剤化合物を有する。また、本明細書において言及される場合、添加された酸は、組成物中に存在し得る残留酸、例えば、樹脂合成から留まる、樹脂中に捕捉された残留酸とは区別される。
【0039】
添加された酸もしくは酸発生剤化合物が用いられる場合、コーティング組成物は、好適には、熱酸発生剤化合物(すなわち、熱処理で酸を生成する化合物)、例えば、イオン性もしくは実質的に中性の熱酸発生剤剤、例えば、アンモニウムアレーンスルホネート塩を、反射防止組成物コーティング層の硬化過程における架橋を触媒もしくは促進するために含む。典型的には、1種類以上の熱酸発生剤が反射防止組成物中に、組成物の乾燥成分(溶媒担体を除くすべての成分)の合計の約0.1から10重量パーセント、より好ましくは、全乾燥成分の約2重量パーセントの濃度で存在する。
【0040】
本発明のコーティング組成物は、典型的には1種類以上のフォト酸発生剤化合物を、それ以外の酸源(例えば、酸もしくは熱酸発生剤化合物)に加えて、含むこともできる。かかるフォト酸発生剤化合物(PAG)の使用においては、フォト酸発生剤は架橋反応を促進するための酸源としては用いられず、したがって、好ましくは、フォト酸発生剤はコーティング組成物の架橋の過程において実質的に活性化されない(架橋性コーティング組成物の場合)。かかるフォト酸発生剤の使用はShipley Companyに与えられた米国特許第6,261,743号に開示される。特には、熱的に架橋するコーティング組成物に関しては、コーティング組成物のPAGは、その後のに続くオーバーコートされるレジスト層の露光過程においてPAGを活性化して酸を生成させることができるように、架橋反応の条件に対して実質的に安定でなければならない。詳細には、好ましいPAGは、約140もしくは150から190℃の温度に5から30分以上曝露したときに実質的に分解もしくはその他の劣化されない。
【0041】
一般には、本発明の反射防止組成物もしくは他のコーティングにおけるかかる使用に好ましいフォト酸発生剤としては、例えば、オニウム塩(例えば、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロオクタンスルホネート)、ハロゲン化非イオン性フォト酸発生剤(例えば、1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン)、およびフォトレジスト組成物における使用について開示される他のフォト酸発生剤が挙げられる。本発明の少なくとも幾つかの反射防止組成物については、界面活性剤として作用し、かつ反射防止組成物/レジストコーティング層界面に近接して反射防止組成物層の最上部近傍に集合することができる、反射防止組成物のフォト酸発生剤が好ましい。したがって、例えば、かかる好ましいPAGは、伸張した脂肪族基、例えば、4個以上の炭素原子、好ましくは、6から15個以上の炭素原子を有する置換もしくは非置換アルキルもしくは脂環式基、またはフッ素化された基、例えば、1つもしくは、好ましくは、2つ以上のフルオロ置換基を有するC1−15アルキルもしくはC2−15アルケニルを含み得る。
【0042】
下地コーティング組成物の配合
本発明の液状コーティング組成物を作製するには、下地コーティング組成物の成分を好適な溶媒、例えば、1種類以上のオキシイソ酪酸エステル、特には、上述のようなメチル−2−ヒドロキシイソブチレート、乳酸エチルもしくは1種類以上のグリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル;エーテルおよびヒドロキシ部分の両者を有する溶媒、例えば、メトキシブタノール、エトキシブタノール、メトキシプロパノール、およびエトキシプロパノール;エーテル、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート並びに他の溶媒、例えば、二塩基性エステル、炭酸プロピレンおよびガンマ−ブチロラクトンに溶解する。本発明の反射防止組成物に好ましい溶媒は、メチル−2−ヒドロキシイソブチレート(任意にアニソールと混合されていてもよい)である。溶媒中の乾燥成分の濃度は幾つかの要素、例えば、適用方法に依存する。一般には、反射防止組成物の固形分含有率はコーティング組成物の総重量の約0.5から20重量パーセントで変化し、好ましくは、固形分含有率はコーティング組成物の約2から10重量パーセントで変化する。
【0043】
例示的フォトレジスト系
ポジ型およびネガ型フォト酸発生組成物をはじめとして、様々なフォトレジストを本発明のコーティング組成物と共に用いることができる。本発明の下地組成物と共に用いられるフォトレジストは、典型的には、樹脂結合剤および光活性成分、典型的には、フォト酸発生剤化合物を含む。好ましくは、フォトレジスト樹脂結合剤は、画像形成されたレジスト組成物にアルカリ性水溶液現像性を付与する官能基を有する。
【0044】
本発明の下地組成物と共に用いるのに特に好ましいフォトレジストは化学増幅型レジスト、特には、ポジ型化学増幅型レジスト組成物であり、ここでは、レジスト層中の光活性化酸が1種類上の組成物成分の脱保護型反応を誘導し、それにより、レジストコーティング層の露光および非露光領域間の溶解度の差をもたらす。幾つかの化学増幅型レジスト組成物が、例えば、米国特許第4,968,581号、第4,883,740号;第4,810,613号;第4,491,628号および第5,492,793号に記載されており、これらのすべては、それらの化学増幅型ポジ型レジストの製造および使用の教示について、参照により本明細書に組み込まれる。本発明のコーティング組成物は、フォト酸の存在下で脱保護を受けるアセタール基を有するポジ型化学増幅型フォトレジストと共に用いるのに特に好適である。かかるアセタール系レジストは、例えば、米国特許第5,929,176号および第6,090,526号に記載されている。
【0045】
本発明の下地組成物は、極性官能基、例えば、ヒドロキシルもしくはカルボキシレートを含む樹脂結合剤を含有するものをはじめとする他のポジ型レジストと共に用いることもでき、その樹脂結合剤はレジスト組成物中に、そのレジストを水性アルカリ性溶液で現像可能とするのに十分な量で用いられる。一般的には、好ましいレジスト樹脂結合剤はフェノール樹脂であり、これには、当該技術分野においてノボラック樹脂として公知であるフェノールアルデヒド縮合体、アルケニルフェノールのホモポリマーおよび共重合体並びにN−ヒドロキシフェニル−マレイミドのホモポリマーおよび共重合体が含まれる。
【0046】
本発明の下地コーティング組成物と共に用いるのに好ましいポジ型フォトレジストは画像形成有効量のフォト酸発生剤化合物および以下の群から選択される1種類以上の樹脂を含有する。
1)248nmでの画像形成に特に適する化学増幅型ポジ型レジストをもたらし得る酸不安定性基を含有するフェノール樹脂。この種の特に好ましい樹脂には以下が含まれる。i)ビニルフェノールおよびアルキルアクリレートの重合単位を含み、重合したアルキルアクリレート単位がフォト酸の存在下で脱保護反応を受けることができるポリマー。フォト酸誘導脱保護反応を受けることができる例示的なアルキルアクリレートには、例えば、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、並びにフォト酸誘導反応を受けることができる他の非環状アルキルおよび脂環式アクリレート、例えば、米国特許第6,042,997号および第5,492,793号におけるポリマーが含まれる。ii)ビニルフェノール、ヒドロキシもしくはカルボキシ環置換基を含まない、任意に置換されていてもよいビニルフェニル(例えば、スチレン)、およびアルキルアクリレート、たとえば、上記ポリマーi)に関して記載される脱保護性基の重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第6,042,997号(これは参照により本願明細書に組み込まれる)に記載されるポリマー、並びにiii)フォト酸と反応するアセタールもしくはケタール部分を含む反復単位、および、任意に、芳香族反復単位、例えば、フェニルもしくはフェノール基を含有するポリマー、かかるポリマーは米国特許第5,929,176号および第6,090,526号に記載されている。
2)200nm未満の波長、例えば、193nmでの画像形成に特に好適なる化学増幅型ポジ型樹脂をもたらし得る、フェニルもしくは他の芳香族基を実質的に、もしくは完全に含まない樹脂。この種の特に好ましい樹脂には以下が含まれる。i)非芳香族環状オレフィン(環内二重結合)、例えば、任意に置換されていてもよいノルボルネンの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第5,843,624号および第6,048,664に記載されるポリマー、ii)アルキルアクリレート単位、例えば、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、並びに他の非環状アルキルおよび脂環式アクリレートを含むポリマー、かかるポリマーは米国特許第6,057,083号、欧州公開出願EP01008913A1およびEP00930542A1、並びに米国係属特許出願第09/143,462号に記載されている、並びにiii)重合された無水物単位、特には、重合された無水マレイン酸および/もしくは無水イタコン酸単位を含むポリマー、例えば、欧州特許出願公開EP01008913A1および米国特許第6,048,662号に開示されるもの。
3)ヘテロ原子、特には、酸素および/もしくはイオウを含む反復単位(しかしながら、無水物以外、すなわち、この単位はケト環原子を含まない)を含有し、好ましくは、いかなる芳香族単位をも実質的に、もしくは完全に含まない樹脂。好ましくは、このヘテロ脂環式単位は樹脂主鎖に融合し、樹脂が融合炭素脂環式単位、例えば、ノルボルネン基の重合によってもたらされるものおよび/または無水物単位、例えば、無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸の重合によってもたらされるものを含むことがさらに好ましい。かかる樹脂はPCT/US01/14914に開示されている。
4)フッ素置換を含む樹脂(フルオロポリマー)、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化芳香族基、例えば、フルオロ−スチレン化合物等の重合によってもたらされ得るもの。かかる樹脂の例は、例えば、PCT/US99/21912に開示される。
【0047】
本発明のコーティング組成物上にオーバーコートされるポジ型もしくはネガ型フォトレジストにおいて用いるのに適するフォト酸発生剤には、イミドスルホネート、例えば、下記式の化合物が含まれる。
【0048】
【化1】

【0049】
式中、Rはカンファ、アダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)およびペルフルオロアルキル、例えば、ペルフルオロ(C1−12アルキル)、特には、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロノナンスルホネート等である。特に好ましいPAGはN−[(ペルフルオロオクタンスルホニル)オキシ]−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドである。
【0050】
スルホネート化合物、特にスルホネート塩も、本発明のコーティング組成物にオーバーコートされるレジストに好適なPAGである。193nmおよび248nm画像形成に適する2種類の作用物質は以下のPAGS1および2である。
【0051】
【化2】

【0052】
かかるスルホネート化合物は、上記PAG1の合成を詳述する、欧州特許出願第96118111.2号(公開番号第0783136号)に開示される通りに調製することができる。
【0053】
上述のカンファスルホネート基以外のアニオンと複合体を形成する上記2種類のヨードニウム化合物も好適である。特には、好ましいアニオンには式RSOのものが含まれ、式中、Rはアダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)およびペルフルオロアルキル、例えば、ペルフルオロ(C1−12アルキル)、特には、ペルフルオロオクタンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネート等である。
【0054】
他の公知PAGも、下地コーティング組成物と共に用いられるフォトレジストにおいて用いることができる。
【0055】
本発明のコーティング組成物にオーバーコートされるフォトレジストの好ましい任意添加物は、追加塩基、特には、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、もしくはテトラブチルアンモニウムラクテートであり、これらは現像されたレジストレリーフ画像の解像度を向上することができる。193nmで画像形成されるレジストについては、好ましい追加塩基はヒンダードアミン、例えば、ジアザビシクロウンデセンもしくはジアザビシクロノネンである。追加塩基は比較的少量で、例えば、全固形分に対して約0.03から5重量パーセントで好適に用いられる。
【0056】
オーバーコートされる本発明のコーティング組成物と共に用いるのに好ましいネガ型レジスト組成物は、酸への曝露で硬化、架橋もしくは硬質化する材料と、フォト酸発生剤との混合物を含む。
【0057】
特に好ましいネガ型レジスト組成物は、樹脂結合剤、例えば、フェノール樹脂、架橋剤成分および本発明の光活性成分を含む。かかる組成物およびそれらの使用は欧州特許出願第0164248号および第0232972号並びにThackerayらの米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂結合剤成分として用いるのに好ましいフェノール樹脂には、ノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)、例えば、上で論じられるものが含まれる。好ましい架橋剤にはアミン系物質が含まれ、これにはメラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン系物質および尿素系物質が含まれる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が一般に最も好ましい。かかる架橋剤は商業的に入手可能であり、例えば、Cytec Industriesによって商品名Cymel300、301および303で販売されるメラミン樹脂がある。グリコールウリル樹脂はCytec Industriesによって商品名Cymel1170、1171、1172、Powderlink1174で販売され、ベンゾグアナミン樹脂はCymel1123および1125の商品名で販売される。
【0058】
本発明の下地組成物と共に用いるのに好適なレジストのフォト酸発生剤化合物には、オニウム塩、例えば、米国特許第4,442,197号、第4,603,10号、および第4,624,912号(各々参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるもの、並びに非イオン性有機光活性化合物、例えば、Thacherayらの米国特許第5,128,232号におけるようなハロゲン化光活性化合物および、スルホン化エステルおよびスルホニルオキシケトンをはじめとするスルホネートフォト酸発生剤が含まれる。ベンゾイントシレート、t−ブチルフェニルアルファ−(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテートおよびt−ブチルアルファ(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセテートをはじめとして、好適なスルホネートPAGについてはJ.of Photopolymer Science and Technology,4(3):337−340(1991)を参照のこと。好ましいスルホネートPAGはSintaらの米国特許第5,344,742号にも開示される。上記カンファスルホネートPAG1および2も本発明の下地組成物と共に用いられる(特に、本発明の化学増幅レジスト)レジスト組成物に好ましいフォト酸発生剤である。
【0059】
本発明の反射防止組成物と共に用いるためのフォトレジストは他の物質を含むこともできる。例えば、他の任意添加物には、化学線もしくはコントラスト染料、ストリエーション防止剤、可塑剤、速度促進剤等が含まれる。かかる任意添加物は、典型的には、比較的高濃度、例えば、レジスト乾燥成分の総重量の約5から50重量パーセントの量で存在し得る充填剤および染料を除いて、微小濃度でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0060】
リソグラフィー処理
使用において、本発明のコーティング組成物は、様々な方法のうちのいずれかにより(例えば、スピンコーティングにより)コーティング層として基体に塗布される。このコーティング組成物は、一般には、基体上に約0.02から0.5μmの乾燥層厚、好ましくは、約0.04から0.20μmの乾燥層厚で適用される。基体は、好適には、フォトレジストを含む処理において用いられる任意の基体である。例えば、基体はケイ素、二酸化ケイ素もしくはアルミニウム−酸化アルミニウムマイクロエレクトロニクスウェハであり得る。ヒ化ガリウム、炭化ケイ素、セラミック、石英もしくは銅基体も用いることができる。液晶ディスプレイもしくは他のフラットパネルディスプレイ用途の基体、例えば、ガラス基体、酸化スズインジウムがコーティングされた基体等も好適に用いられる。光学および光学電子装置(例えば、導波路)のための基体も用いることができる。
【0061】
好ましくは、適用されたコーティング層は、フォトレジスト組成物がその反射防止組成物上に適用される前に硬化させる。硬化条件はコーティング組成物の成分に従って変化する。典型的な硬化条件は約150℃から250℃で約0.5から5分である。硬化条件は、好ましくは、そのコーティング組成物コーティング層を、フォトレジスト溶媒並びにアルカリ性水性現像液に対して実質的に不溶性にする。
【0062】
かかる硬化の後、フォトレジストが、最上部コーティング組成物の表面上に適用される。底部コーティング組成物層(1以上)の塗布と同様に、オーバーコートされるフォトレジストは任意の標準手段、例えば、スピニング、浸漬、メニスカスもしくはローラーコーティングによって適用され得る。適用の後、フォトレジストコーティング層を、典型的には、加熱によって乾燥させ、好ましくはレジスト層が粘着性を失うとなるまで、溶媒を除去する。最適には、底部組成物層とオーバーコートされるフォトレジスト層との混合は本質的に生じてはならない。
【0063】
次に、レジスト層を、活性化放射線でマスクを通して通常の方法で画像形成する。露光エネルギーは、レジスト系の光活性成分を有効に活性化してパターン化された画像をレジストコーティング層に生じるのに十分なものである。典型的には、露光エネルギーは約3から300mJ/cmの範囲であり、露光ツールおよびそのレジストおよび用いられるレジスト処理に部分的に依存する。露光されたレジスト層は、所望であれば、露光後ベーキングに処してコーティング層の露光および非露光領域間の溶解度の差を創出もしくは向上することができる。例えば、ネガ型酸硬化性フォトレジストは、典型的には、酸促進架橋反応を誘起するのに露光後加熱を必要とし、多くの化学増幅型ポジ型レジストは酸促進脱保護反応を誘起するのに露光後加熱を必要とする。典型的には、露光後ベーキング条件としては、約50℃以上の温度、より具体的には、約50℃から約160℃の範囲の温度が挙げられる。
【0064】
フォトレジスト層は液浸リソグラフィー系、すなわち、露光ツール(詳細には、投射レンズ)とフォトレジストがコーティングされた基体との間の空間が浸漬液、例えば、水もしくは1種類以上の添加物(例えば、屈折率が高められた液体をもたらし得る硫酸セシウム)と混合された水で占められる系において露光することもできる。好ましくは、浸漬液(例えば、水)は泡を回避するように処理され、例えば、水を脱気してナノバブルを回避することができる。
【0065】
本明細書での「液浸露光」もしくは他の類似の用語への言及は、露光ツールとコーティングされたフォトレジスト組成物層との間に挿入されたかかる液層(例えば、水もしくは添加物を含有する水)を用いて露光を行うことを示す。
【0066】
次に、露光したレジストコーティング層を、好ましくは、水系現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等によって例示されるアルカリで現像する。あるいは、有機現像液を用いることもできる。一般には、現像は当該技術分野で認められる手順に従うものである。現像の後、現像された露光したコーティング層領域をさらに硬化するため、約100℃から約150℃の温度で数分間の酸硬化フォトレジストの最終ベーキングがしばしば用いられる。
【0067】
次に、現像した基体を、フォトレジストが除去された基体領域に対して選択的に処理することができ、例えば、フォトレジストが除去された基体領域を当該技術分野において公知の手順に従って化学的にエッチングまたはメッキすることができる。好適なエッチャントにはフッ化水素酸エッチング液およびプラズマガスエッチング、例えば、酸素プラズマエッチングが含まれる。
【0068】
以下の非限定的な実施例は本発明を説明するものである。
【実施例】
【0069】
実施例1〜10:樹脂合成
実施例1〜10において用いられる無水物−ポリマー合成の一般的手順
反応装置は、磁気式攪拌棒を含み、かつ温度プローブ、滴下ロート、水冷凝縮器、シリンジポンプに装着されたシリンジに取り付けられた分配ライン、および窒素導入口(ブランケット)を備える、適切なサイズの三首丸底フラスコからなるものであった。温度はホットプレート/ステアプレートと縦列配置の油浴を用いて制御した。まず、モノマーおよび溶媒をフラスコに投入した。滴下ロートに開始剤溶液を添加した。モノマーおよび溶媒を含む供給溶液をシリンジに入れ、シリンジポンプに固定した。フラスコ内の混合物を約70℃まで加熱した後、開始剤溶液を添加した。次に、シリンジ内のモノマー溶液を連続速度で3〜3.5時間にわたって反応混合物に配送した。その添加が完了したとき、反応混合物の攪拌を70℃でさらに30分間継続した。その後、熱源を取り外すことによって反応を熱的に抑えて溶媒で希釈し、混合物を室温に冷却した。
【0070】
GPCはポリスチレン標準に対してRI検出(495ダルトン・カットオフ)および溶離溶媒としてのTHFを用いて決定した。下記例における幾つかのポリマーは光学密度(OD)についてさらに特徴付けた。これらのポリマーを溶液からケイ素および石英ウェハの両者にスピンコートした。ケイ素上の膜の厚みを測定した。石英上の膜の吸光率をUV分光光度計によって決定した。ブランク石英ウェハに対して吸光率を測定した。これらの厚みおよび吸光率測定から、ODを13nmで算出した。
【0071】
【表1】

【0072】
下記実施例1〜10においては、上記無水物樹脂合成手順を個々の例において指定される試薬と共に用いた。上に列挙される試薬は指定される略語で指示される通りに用いた。ここでの実施例では生成される樹脂の反復単位のモル比が指定され、したがって、実施例においては、生成樹脂35/35/30 DHP/MA/HEMAは35モルパーセントの重合された3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、35モルパーセントの無水マレイン酸および30モルパーセントの2−ヒドロキシエチルメタクリレートを有していた。
【0073】
【表2】

【0074】
反応の後、溶液をIPA中で沈殿させ、IPAで洗浄し、濾過して風乾した後、真空中、40℃で一晩乾燥させて38g(67%)の乾燥粉末を得た。
Mw=18,817、Mn=5347
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
【表9】

【0082】
【表10】

【0083】
【表11】

【0084】
実施例11〜22(ポリマー溶液)
下記表1および2における実施例はポリマーおよびHBM溶媒のみを含む。他の添加物は用いなかった。実施例11〜15は表1に指示される1種類のポリマーのみを含む。実施例16〜22については、3種類の独自のポリマーを表2に指示される量で配合し、それらは以下の通りである。
【0085】
【表12】

【0086】
ウェハのコーティングの一般的手順
配合された試料でスピンコートされたすべてのウェハ(ケイ素もしくは石英)について、回転時間は2000rpmで30秒であった。その後、ウェハをホットプレート上で60秒間、下記表に指示される温度でベークした。シリコンウェハ上の膜の厚みは偏光解析法(ナノ仕様)によって測定した。
【0087】
溶媒耐性の測定の一般手順
溶媒耐性を試験する試料溶液の各々をシリコンウェハ上にスピンコートした。ウェハの厚みを偏光解析法(ナノ仕様)を用いて測定した。HBMをウェハの表面上に注ぎ、60秒間放置した。次に、そのウェハを4000rpmで60秒間回転乾燥させ、再度厚みを測定した。
【0088】
【表13】

【0089】
【表14】

【0090】
実施例22〜25:追加のコーティング組成物処理
下記表3における実施例22〜25は、典型的なレジスト溶媒および現像液に対する熱処理後のポリマー不溶性を示す。ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、約1,600の典型的なMnで終止したクメンおよび約1,200の典型的なMnを有するポリ(スチレン−co−アリルアルコール)(両者ともAldrich Chemical Companyから購入)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに同時溶解し、異なる量の各ポリマーを含有する数個の10重量パーセント溶液を形成した。これらの溶液を0.2μmフィルターを通して濾過し、各々、2枚1組の6インチウェハ上にDNSトラックを用いて3000rpmでスピンコートした。次に、コートしたウェハをホットプレートを用いて指示される温度に60秒間加熱し、架橋を誘起した。各々の組の一方のウェハを乳酸エチル(EL)溜まり(puddle)で60秒間覆った後、回転乾燥させた。第2のウェハは0.26N水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液の浴に60秒間浸漬した後、水ですすいで窒素ブロー乾燥した。ベークおよび溶媒もしくは現像液露出の後、Thermowave機器を用いて膜厚(FT)を測定した。
【0091】
【表15】

【0092】
実施例26:リソグラフィー処理
この実施例は、本発明の下地コーティング組成物の193nmレジストに対する下地/反射防止層としての使用を示す。
【0093】
処理条件
1)下地層:真空ホットプレート上、200℃/60秒で硬化させた、実施例26の215nmコーティング層、
2)フォトレジスト:真空ホットプレート上、120℃/60秒でソフトベークした、アクリレート系193nmフォトレジストの260nmコーティング層、
3)露光:適用したフォトレジスト層をパターン化された193nm放射線で露光した、
4)露光後ベーク:120℃/60秒、
5)現像:潜像を0.26N水性アルカリ現像液で現像してフォトレジストレリーフ画像を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた基体であって、
1種類以上の樹脂を含む有機コーティング組成物層を含み、該1種類以上の樹脂が、分裂生成物の発生なしに熱処理で硬化する、コーティングされた基体。
【請求項2】
無水物およびヒドロキシ部分を含む1種類以上の成分を含む有機コーティング組成物層を含む、コーティングされた基体。
【請求項3】
コーティングされた基体であって、
1種類以上の樹脂を含む反射防止有機コーティング組成物層を含み、該コーティング組成物層が少なくとも酸もしくは酸発生剤化合物を本質的に含まない、コーティングされた基体。
【請求項4】
コーティング組成物層が、アミン系もしくはエポキシ架橋剤成分を含まない、請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティングされた基体。
【請求項5】
フォトレジストコーティング層が反射防止コーティング層上に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載のコートされた基体。
【請求項6】
フォトレジストコーティング層が、フォト酸不安定基を有する樹脂であって芳香族基を実質的に含まない1種類以上の樹脂を含む、請求項5に記載のコーティングされた基体。
【請求項7】
有機コーティング組成物が反射防止コーティング組成物である、請求項1から6のいずれか1項に記載のコーティングされた基体。
【請求項8】
マイクロエレクトロニクス基体の処理方法であって、
有機コーティング組成物を該基体上に適用し、該有機コーティング組成物は1種類以上の樹脂を含む有機コーティング組成物層を構成し、該1種類以上の樹脂は分裂生成物の発生なしに熱処理で硬化し、および
フォトレジスト組成物層を反射防止組成物層上に適用すること、
を含む方法。
【請求項9】
マイクロエレクトロニクス基体の処理方法であって:
有機コーティング組成物を基体に適用し、該コーティング組成物は無水物およびヒドロキシ部分を含む1種類以上の成分を含み;および
フォトレジスト組成物層を該反射防止組成物層上に適用する、
ことを含む方法。
【請求項10】
オーバーコートされるフォトレジスト層と共に用いるための反射防止コーティング組成物であって、無水物およびヒドロキシ部分を含む1種類以上の成分を含む反射防止コーティング組成物。

【公開番号】特開2007−233386(P2007−233386A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−46770(P2007−46770)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】